(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づき本発明を実施するための形態の一例について説明する。
本発明を実施するための形態に係る用紙搬送装置の一例及びこれを組み込んだ定着装置を用いる画像形成装置100は、プリンタを対象としている。しかし、本発明ではこれに限ることなく、複写機やファクシミリ機及びこれら機能を併せ持つ複合機も対象となり得る。
【0009】
図1において画像形成装置100は、第1の方向としての前後方向(矢印Xで示す方向)、これと直角な第2の方向としての左右方向(矢印Yで示す方向)、第3の方向としての上下方向(矢印Zで示す方向)を有する直方体状の筐体で本体が構成されている。上記各方向において、矢印Xで示す方向は画像形成装置100の幅方向と後述する定着装置20に用いられる定着部材及び対向回転体の長手方向(軸方向)とに平行し、かつ記録媒体としての用紙の幅方向に対応している。
【0010】
画像形成装置100は、Z方向において画像形成部の上部に原稿走査装置200が搭載され、原稿走査装置200の下方に位置する本体正面には胴内排紙部として用いられる排紙トレイ17が備えられている。
図1において、画像形成装置100の左右方向であるY方向の一方側には、開閉可能な開閉部材である外装カバー100Aが設けられている。外装カバー100Aが開放されると、外部から
図2に示す定着装置20を視認可能となる。
【0011】
画像形成装置100の内部には、
図2に示す各装置が備えられている。以下、画像形成装置100の構成を作用と共に説明する。なお
図2では、
図1に示した原稿走査装置200が省略されている。
図2において画像形成装置100では、周知の電子写真複写工程を用いて各感光体ドラム120Y,120C,120M,120Bkに形成された可視像が、矢印A1で示す方向に走行移動する転写ベルト11上に順次転写される。この転写工程は1次転写工程に相当しており、転写ベルト11上に各画像が順次転写されて重畳転写画像が形成される。転写ベルト11上に担持されている重畳転写画像は、記録シート等が用いられる用紙Pに対して2次転写工程により一括転写される。
【0012】
各感光体ドラム120Y,120C,120M,120Bkの周囲には、各感光体ドラム120Y,120C,120M,120Bkの回転時に画像形成処理を行うための各種装置が配置されている。ブラック画像形成を行う感光体ドラム120Bkを対象として各種装置を説明すると次の通りである。感光体ドラム120Bkの周囲には、回転方向に沿って画像形成処理を行う帯電装置30Bk、現像装置40Bk、1次転写ローラ12Bk及びクリーニング装置50Bkが配置されている。帯電後に行われる書き込みは、後述する光走査装置8を用いて行われる。
【0013】
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム120Y,120C,120M,120Bkに対向して配設された1次転写ローラ12Y,12C,12M,12Bkを用いた転写バイアス印加により順次行われる。各感光体ドラム120Y,120C,120M,120Bkは、矢印A1方向の上流側から順に並べられた図示しないプロセスカートリッジの内部にそれぞれ収容されている。各感光体ドラム120Y,120C,120M,120Bkは、イエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの画像をそれぞれ形成するための画像ステーションに備えられている。
【0014】
1次転写工程を実行する装置として、転写ベルト11及び転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム120Y,120C,120M,120Bkに対向する1次転写ローラ12Y,12C,12M,12Bkを備えた転写ベルトユニット10が用いられる。転写ベルト11上に重畳転写された画像は、転写ベルト11に連れ回るローラで構成された2次転写ローラ5によって用紙Pに対し2次転写工程を実施されて一括転写される。
【0015】
画像形成装置100には、上述したプロセスカートリッジ及び転写ベルトユニット10に加えて、4つの画像ステーションの下方に対向して配設された光書き込み装置としての光走査装置8と、転写ベルト11のクリーニング装置13とが設けられている。
【0016】
光走査装置8は、光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、ミラー及び回転多面鏡等を装備している。光走査装置8は、各感光体ドラム120Y,120C,120M,120Bkに対して色毎に対応した書き込み光Lb(
図2では便宜上ブラック画像の画像ステーションのみを対象として符号を付しているが、その他の画像ステーションも同様である)を出射する。これにより、各感光体ドラム120Y,120C,120M,120Bk上に静電潜像が形成される。
【0017】
画像形成装置100は、2次転写工程において画像を一括転写される用紙Pを給送するシート給送装置61と、シート給送装置61から繰り出された用紙Pのレジストタイミングを設定して2次転写位置に繰り出すレジストローラ対4とを有している。画像形成装置100には、用紙Pの先端がレジストローラ対4に到達したことを検知する図示しないセンサも備えられている。
【0018】
2次転写工程において転写ベルト11上のトナー像Tが一括転写された用紙Pは、後述する定着装置20に搬送されてトナー像の定着が行われる。定着後の用紙Pは、排紙ローラ7を介して画像形成装置100の装置本体外部に設けられている排紙トレイ17に向けて排出される。なお
図2中、符号9Y,9C,9M,9Bkは各色の画像ステーションに備えられている現像装置に対する新規トナーの補給タンクをそれぞれ示している。
【0019】
定着装置20は、
図3に示すように、用紙Pに担持された転写後のトナー像Tを熱と圧力とにより融解及び浸透させて定着するために用いられ、加熱されながら回転可能な可撓性を有する定着ベルト21を備えている。定着装置20には、定着ベルト21に加えて、定着ベルト21と当接した状態で定着ベルト21との間に圧力を作用させてニップ部Nを形成する対向回転体である加圧ローラ22が設けられている。定着ベルト21の内部には、ニップ部N以外の箇所、本形態ではニップ部Nとは反対側を周回移動する定着ベルト21の領域を対象として加熱するハロゲンランプを熱源とするヒータ23が備えられている。
【0020】
定着ベルト21の内部には、定着ベルト21の内側に配設されたニップ形成用のベース部材であるニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持するステー25と、ヒータ23から放射される光を定着ベルト21へ反射する反射部材26とが設けられている。ニップ形成用のベース部材であるニップ形成部材24は、ベースパッドを巻いている摺動シート(低摩擦シート)を定着ベルト21に当接する部材として有する。ニップ形成部材24は、ニップ部Nの形状が平坦状であるが、この形状には限定されない。例えば、加圧ローラ22の周面に沿って凹状に形成した場合には、ニップ部Nを通過する用紙Pの先端が加圧ローラ22側に寄るので、定着ベルト21からの分離性が向上する利点がある。定着ベルト21の温度は、用紙Pがニップ部に進入する側に設けられた温度センサ27によって検出され、ヒータ23のフィードバック処理に用いられる。なお、
図3、
図4において矢印Fは用紙Pの搬送方向を示している。
【0021】
定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有するスリーブ状に形成された無端状のベルトであり、基材とその表面に位置する離型層とにより構成されている。基材には、ニッケルもしくはSUS等の金属材料またはポリイミド等の樹脂材が用いられる。また離型層には、トナーに対する離型性を有するテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が用いられる。
【0022】
加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、またはフッ素ゴム等からなる弾性層22bと、弾性層22bの表面に設けられたPFAまたはPTFE等からなる離型層22cとによって構成されている。加圧ローラ22は図示しない加圧手段によって定着ベルト21側へ加圧され、定着ベルト21と当接状態でベース部材としてのニップ形成部材24に定着ベルト21を介して当接している。この加圧ローラ22と定着ベルト21とが当接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押し潰されることで、定着ベルト21との間に圧力を受けてニップ形成部材24が所定の幅のニップ部Nを確保するように構成されている。
【0023】
加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられた図示しないモータ等の駆動源によって回転駆動される。加圧ローラ22が回転駆動されると、その駆動力がニップ部Nにおいて定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転する。
図3に示す構成では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部に、輻射熱を用いるハロゲンヒータ等の加熱源を配設することも可能である。
【0024】
また、弾性層22bがない場合は熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナーを押し潰して定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。中空ローラに用いられるパイプ状金属として、アルミニウム、鉄、あるいはステンレス等が選択できる。加圧ローラ22内に熱源を設ける場合には、熱源からの輻射熱により支持体が加熱されるのを抑制するために、支持体表面に断熱層を設けることや鏡面処理による熱線反射面を設けることが望ましい。この場合の熱源には、上述したハロゲンヒータに限らず、IHヒータや抵抗発熱体、あるいはカーボンヒータを用いることも可能である。
【0025】
以上の構成を備えた定着装置20が用いられる画像形成装置100には、用紙Pを搬送するための用紙搬送装置300が設けられている。用紙搬送装置300の一例は、
図3に示すように、定着装置20のニップ部Nを通過する用紙Pを対象としている。用紙搬送装置300は、
図3に示すように、定着装置20の出口側に連続してニップ部Nを通過した用紙Pを排紙トレイ17(
図2参照)に向けて搬送可能にするために設けられている搬送路を構成している。
【0026】
図3に示すように、用紙搬送装置300は用紙Pを搬送するための搬送面301A、302Aを有し、定着出口側のガイドを兼ねた搬送部材として用いられ、搬送路L1を形成する一対の搬送ガイド301,302を有している。搬送ガイド301,302のうちの一方の搬送ガイド301は固定され、他方の搬送ガイド302は
図4において符号302Bで示す揺動支点をなす回転軸を設けられた端部を基端として揺動可能に構成されている。以下、搬送ガイド302を揺動可能な搬送ガイド302と称する。
【0027】
搬送ガイド301,302は、定着装置20の出口側に配置されていることから、熱の影響による変形等を起こしにくい材質が用いられている。この材質としては、例えば、ガラス繊維を含む樹脂材料が挙げられる。これにより、熱変形しにくい搬送ガイド302が得られる。また、揺動支点に用いられる回転軸302Bは、その先端周縁がCカットあるいはラウンドカット(Rカット)されて
軸受部400(
図5参照)に対して挿入し易い形状を持たせてある。なお、以下の説明において矢印X,Y,Zは、
図1において示した矢印X,Y,Zと同じ意味を持つ。特に、各矢印のうちで矢印Xは、対向回転体として用いられる加圧ローラ22の軸方向に平行な用紙幅方向に相当している。
【0028】
揺動可能な搬送ガイド302は、
図4に示すように、画像形成装置100内で第1の方向であるX方向に延在されて用紙Pを搬送する搬送面302Aを有し、用紙搬送方向Fに沿って用紙Pを案内する。
図4において符号EXは、画像形成装置100の外装カバー100A(
図1参照)が開放された際に外部に露呈する面を示しており、この面は矢印R1で示す開放方向下流側で搬送面302Aの裏側に位置している。
【0029】
図4において揺動可能な搬送ガイド302には、画像形成装置100の外装カバー100Aが開放状態のときに、X方向を中心として揺動させる際に揺動支点となる回転軸302Bが設けられている。揺動支点である回転軸302Bは、X方向である搬送ガイド302の幅方向両側において、それぞれ幅方向外側に向けてX方向に突出させて一対で設けられている。回転軸302Bの突出量は、搬送ガイド302の幅方向端縁から、
図6(B)に示すように
軸受部400の支持面400Aに向けて挿入される長さとなるように設定されている。
【0030】
搬送ガイド302は、回転軸302Bを支点として
図4に示した矢印R1方向に回転することで、次のように揺動する。すなわち、
図9(A)に示す状態である、用紙Pの搬送路に対向する対向位置、すなわち搬送路を形成する第1の位置と、
図9(C)に示す状態である、搬送路から遠ざかって退避する揺動位置としての第2の位置とに揺動することができる。第2の位置への揺動時には搬送路が開放され、搬送路内においてジャム等の搬送不良を生じている用紙Pの取り出しが可能となる。第1の位置から第2の位置への揺動には、
図3、
図4に示す露出面EXに設けられている取手部303が用いられる。
【0031】
図4に示すように取手部303は、X方向中央よりも多少前側に偏った位置で搬送面302Aの裏面から張り出したリブ303Aと、リブ303Aの張り出し方向先端に一体化された指掛け片303Bとを備えている。X方向中央よりも前側に偏らせた位置に取手部303が位置しているので、例えば
図1に示す外装カバー100Aを開放した後、X方向手前側から手を差し入れる際に取手部303の位置に早く手を到達させて操作することができる。また、取手部303においてリブ303Aと指掛け部303Bとの間に、
図3、
図4に示すように指を差し入れる空間303Cを設けることで、搬送ガイド302を開放方向へ揺動させる際の操作が容易となる。
【0032】
搬送ガイド302は、
図5に示すように、定着装置20の筐体側に設けられた
軸受部400に対し、回転軸302Bの軸方向両側が軸方向に移動可能な状態で挿通支持されることにより矢印R1方向に揺動可能に構成されている。
軸受部400は、一対の回転軸302Bの軸方向両側を支持するために定着装置20の筐体の一部に樹脂成形部によって一対形成され、当該筐体と一体となっている。このため、樹脂成形の際の型抜き方向の制約により、
図6に示すように、回転軸302Bの下半周を支持する支持面400Aと回転軸302Bの上半周を支持する支持面400BとがX方向で隣り合うように構成されている。
図6に示す構成では、回転軸302Bの軸方向中央側に支持面400Bが、そしてこれの外側に隣り合うように支持面400Aが設けられている。このことはもう一方の
軸受部400についても同様である。
【0033】
このように、回転軸302Bの全周を支持できる単一の軸受けを定着装置20の筐体側に成形することが困難な場合に、本形態のように垂直方向への半割が可能な金型による成形を可能とすることで、金型の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0034】
軸受部400では、
図6(B)に示すように、支持面400Aにおいて回転軸302Bの上半周を受ける面が存在しておらず、支持面400Bにおいて回転軸302Bの下半周を受ける面が存在していないことになる。従って、回転軸302Bの下周面を受ける面が存在していない支持面400Bの位置に回転軸302Bの軸端が位置した場合には、下支えがないことにより回転軸302Bが脱落する虞がある。
【0035】
そこで
図6(C)に示すように、回転軸302Bの軸方向一方側にスプリング等の付勢部材としての弾性体SPを配置すると共に、何れの回転軸302Bも支持面400Aから脱落しない位置に保持する構成とする。この構成としては、一対の回転軸302Bの端部間の長さを一対の支持面400Aの間の距離よりも長くすること等が挙げられる。弾性体SPは、搬送ガイド302を回転軸302Bに平行な第1の方向、具体的にはX方向のうちの前方に向かう第1の方向X0への付勢部材として用いられる。なお、
図6(C)に示した
軸受部400は、回転軸302Bの軸方向において
図6(A)に示した
軸受部400の逆側に設けられている。
【0036】
ところで、このような弾性体SPを設けることなく回転軸302Bの軸端が支持面400Bに位置した場合の脱落防止を行える方が、回転軸302Bの脱落防止のみを目的とした構成による部品点数の増加等を防ぐ意味で有利となる。そこで本実施形態では、一対の回転軸302Bの軸方向両端間に、
図7に示すように、
軸受部400による回転軸302Bの支持位置とは異なる位置において下方から搬送ガイド302に対向した離脱規制部材500が備えられている。離脱規制部材500は、
軸受部400が設けられた定着装置20の筐体の一部であって、搬送ガイド302の搬送面302Aと対向する側の端部に対向した用紙搬送装置300の搬送ガイド対向面300Aに配設されている。
【0037】
離脱規制部材500は、搬送ガイド302に下方から当接することで
軸受部400からの回転軸302Bの離脱を規制するために用いられる部材であり、回転軸302Bを中心とする円弧に倣った曲面500Aを有する凸部で構成されている。
図7において符号Rは、回転軸302Bの回転中心CHから曲面500Aまでの半径を示している。離脱規制部材500は、本実施形態では搬送ガイド302の幅方向においてほぼ中央に設けられ、搬送ガイド302をX方向で2等分する位置に設けられている。しかし、回転軸302Bの軸方向において等間隔で複数位置に離脱規制部材500を設け、搬送ガイド302を離脱規制部材500によってX方向において等分するように構成してもよい。離脱規制部材500が搬送ガイド302のX方向で複数の位置に等分されて設けられる場合には、離脱規制部材500が搬送ガイド302に当接した際に搬送ガイド302が受ける集中荷重を均等に少なくすることができる。これにより、搬送ガイド302に変形や損傷が生じることを防止及び抑制することができる。
【0038】
以上の構成においては、
図8に示すように、回転軸302Bの上半周の支持面400Bのみの位置に回転軸302Bの先端が位置するように回転軸302Bが位置ずれすると、矢印Dで示すように回転軸302Bの先端が支持面400Bから離脱しようとする。しかし、回転軸302Bが離脱しようとした際の搬送ガイド302の脱落は、離脱規制部材500による下支えにより防止される。
【0039】
一方、回転軸302Bの先端が
図8に示したようにずれる場合として、回転軸302B等の寸法公差による場合の他に、回転軸302BをX方向に強制的にずらす構成を採用した場合がある。つまり、搬送ガイド302を、前述した第1の位置と第2の位置との何れかに保持するために搬送ガイド302のX方向における側面、すなわち幅方向側面を押圧して幅方向に移動させる構成である。この場合、第1の位置は
図9(A)に示す搬送路L1(
図3参照)を形成する位置であり、第2の位置は
図9(C)に示す搬送路L1(
図3参照)から遠ざかって退避する位置である。この構成では、
図6(C)に示した弾性体SPを採用し、弾性体SPの付勢力によりX方向において弾性体SPを設けた側とは逆側の定着装置20の筐体側面に搬送ガイド302を圧接させる。この圧接により搬送ガイド302の揺動が規制され、搬送ガイド302を第1の位置または第2の位置に保持することができる。
【0040】
具体的には、
図8に示すように、定着装置20の筐体側に不動状態で設けられた係合突起401を搬送ガイド302の当該逆側の側壁302Gに当接させ、この当接によって搬送ガイド302の揺動を規制する。搬送ガイド302の側壁302Gには、
図7に示すように、側壁302Gの一部を欠如した係合部302G1と、欠如されていない側壁302Gとの間を接続する傾斜面302G2が設けられている。これら係合部302G1及び傾斜面302G2は、
図7及びこの作用を説明する
図9におい
て、回転軸302Bを挟んで表側と反対側にも同様に形成されている。
【0041】
係合突起401は、搬送ガイド302の第1の位置と第2の位置との間の中間位置を占め、搬送ガイド302の揺動を規制可能な規制部材として用いられる(以下、便宜上、係合突起401と称する場合もある)。回転軸302Bの回転中心CHを中心とした搬送ガイド302の回動位置、すなわち位相に応じた係合部302G1,傾斜面302G2と係合突起401との対向関係は、
図9に示す通りである。なお、
図9において右側には搬送ガイド302の位相が、左側には搬送ガイド302の位相に応じた上記対向関係が示されている。
【0042】
図9(A)は、搬送ガイド302が第1の位置、つまり閉じられて用紙Pの搬送路L1(
図3参照)を形成している状態を示している。この状態では、弾性体SPへの外力が非入力な状態であるので、搬送ガイド302はX0方向の最前方に位置し、X方向において係合部302G1内に係合突起401が入り込む。この状態が弾性体SPの付勢(矢印X0で示す付勢方向)により維持される。矢印X0で示す弾性体SPの付勢方向は、弾性体SPへの外力、つまり付勢力に抗した方向への力が入力されていない場合に搬送ガイド302を回転軸302Bと平行に移動させる第1の方向に相当している。このときの搬送ガイド302の位置は、第1の位置と第2の位置との間で揺動を係合突起401により規制される揺動規制位置を占める。
【0043】
図9(B)は、搬送ガイド302が第1の位置から第2の位置に向け揺動する途中の中途位置を占めている状態を示している。この状態では、係合突起401に対して側壁302Gの傾斜面302G2が対向して当接する。このため、弾性体SPの付勢に抗する外力が入力されることになり、矢印X1で示すように、第1の方向であるX0方向とは逆方向の第2の方向に搬送ガイド302が移動する。搬送ガイド302は、第2の方向に移動することにより、第1の位置と第2の位置との間で揺動自在となる揺動許可位置を占めることが可能である。
【0044】
傾斜面302G2がその傾斜に従って係合突起401に押されると、搬送ガイド302が弾性体SPの付勢力に抗して、第2の方向すなわち矢印X1で示すように、
図9の左側の図において右側に移動する。このような外力の入力は、取手部303に指をかけることで行ってもよい。このとき回転軸302Bの軸端は、
図9(A)に示す初期位置に比して支持面400B側に移動することから、回転軸302Bが
図8に示す矢印D方向に移動して搬送ガイド302が脱落する虞がある。しかし、搬送ガイド302の揺動基端が離脱規制部材500に対向しているため搬送ガイド302の脱落前に離脱規制部材500に当接するので、搬送ガイド302の離脱は阻止される。搬送ガイド302が係合突起401による揺動規制を解除されるまでX1方向に移動すると、搬送ガイド302は揺動許可位置を占めて、係合突起401を乗り越えるようにして第1の位置と第2の位置との間で揺動自在となる。
【0045】
図9(C)は、搬送ガイド302が
図9(B)に示した揺動許可位置からさらにR1方向に揺動し、係合突起401が搬送ガイド302の側壁302Gの表面を乗り越えて裏側の係合部に入り込んだ状態を示している。この状態では、
図9(A)に示した場合と同様に、弾性体SPにより搬送ガイド302が第1の方向に移動してX0方向の最前方の位置、つまり
図9(C)の左側の図において最も左側に位置し、係合突起401が係合部に入り込んだ状態を維持される。これにより搬送ガイド302は第2の位置に揺動し、第1の位置と第2の位置との間の揺動を規制される揺動規制位置に位置決めされ、搬送路L1(
図3参照)を開放した状態に維持される。この状態では、搬送ガイド302が用紙Pの搬送路L1(
図3参照)から遠ざかった状態で開放されているので、ジャムを生じている用紙Pを搬送路L1(
図3参照)から取り除くことができる。
【0046】
搬送路L1の開放状態を解除する場合には、例えば取手部303を操作して、第2の位置から第1の位置に搬送ガイド302を揺動させる。このように、搬送ガイド302は係合突起401とこれに対向する係合部302G1との関係により、弾性体SPへの抗力となる外力の入力状態に応じて、前述した揺動規制位置を占める場合と揺動を規制されない揺動可能位置を占める場合とを選択される。なお、搬送ガイド302が第1の位置から第2の位置に向けて揺動する際に係合突起401により側壁302Gの外面が押されると、係合突起401の長さや搬送ガイド302の撓みの度合い等によっては、回転軸302Bの軸端が支持面400Bに移動する。この場合には
図8に示した矢印D方向に搬送ガイド302が脱落する虞があるが、離脱規制部材500により搬送ガイド302が下支えされることにより脱落を阻止されることになる。このように、離脱規制部材500は、回転軸302Bが
軸受部400から脱落することを、搬送ガイド302を下支えすることで防止している。
【0047】
離脱規制部材500を配置したため、回転軸302Bの下周面を支える支持面400Aを省略することも考えられる。しかし、支持面400Aは今一つの支持面400Bと共に、回転軸302Bの周方向全域を対象としてZ方向での回転軸302Bの位置決めを搬送ガイド302の揺動が滑らかに行われる状態で行っているため省略しない方が良い。また離脱規制部材500は、
軸受部400からの回転軸302Bの脱落を防止する機能があるだけで、回転軸302Bの中心位置を位置決めする機能までを併せ持つように構成されていない場合もある。このため、Z方向での回転軸302Bの軸心を規定するためにも支持面400Aを備えていた方がよい。
【0048】
上述したように、搬送ガイド302を
図9(C)に示す第2の位置に位置決めすることにより、搬送路L1が開放されてジャムした用紙Pを取り除くことが可能となる。しかし、ジャムした用紙Pを見つける際やジャム処理後に用紙Pが残っていないかを確認する際の視認性を考慮すると、搬送ガイド302をさらに
図9(C)に示す矢印R1方向に揺動させた状態とすることが望ましい。
【0049】
本発明の一実施形態を示す
図10において、用紙Pのジャム処理時において搬送ガイド302は、実線で示す第2の位置から視認性向上のためにさらに開放された二点鎖線で示す第3の位置へと揺動される。第2の位置では、離脱規制部材500と搬送ガイド302の離脱規制部材500に対向している揺動基端とが接触しているため、搬送ガイド302が
軸受部400から脱落することが防止されている。しかし第3の位置では、離脱規制部材500と搬送ガイド302の揺動基端とが接触せず両者間にはΔTの隙間が生じてしまうため、搬送ガイド302が
軸受部400から脱落する虞がある。
【0050】
そこで本実施形態では、回転軸302Bの軸方向(X方向)であって離脱規制部材500が存在しない位置に、
図11に示すような離脱規制部501を搬送ガイド302に一体形成している。離脱規制部501は、搬送ガイド302の揺動中心から搬送ガイド対向面300Aまでの距離CGよりも小さな値を半径Rとした円弧形状となる円弧部501aを有している。
軸受部400に回転軸302Bが支持されている状態において離脱規制部501と搬送ガイド対向面300Aとの間には一定のクリアランスが保たれており、搬送ガイド302の揺動時における動作不良や部品破損が防止されている。
【0051】
この構成により、搬送ガイド302が
図11に示す第3の位置のような初期位置である第1の位置から鈍角以上の角度で揺動した場合に、回転軸302Bが軸受け400から外れても離脱規制部501が搬送ガイド対向面300Aに接触する。このため、どのような角度に搬送ガイド302を揺動させた場合であっても、搬送ガイド302の脱落を確実に防止することができる。
【0052】
上述の構成において、
図12に示すように、離脱規制部501の半径Rは距離CGから回転軸302Bの先端に施されたC面取り加工の高さT1以下の値T2を差し引いた値に設定することが望ましい。この構成とすることにより、回転軸302Bが
軸受部400の支持面400Aからずれた場合に、離脱規制部501と搬送ガイド対向面300Aとの接触で搬送ガイド302の脱落を防止することができる。さらに、弾性体SPの付勢力と回転軸302Bの先端面取り形状により回転軸302Bが支持面400Aに戻ろうとするため、
軸受部400からの回転軸302Bの離脱をより一層抑制することができる。
【0053】
上述の実施形態において、離脱規制部501を回転軸302Bの軸方向(X方向)に複数配設することにより、離脱規制部501への応力集中を抑制することができ離脱規制部501の破損を防止することができる。
【0054】
上記実施形態の変形例として、
図13に示すように、離脱規制部501に代えて離脱規制部502を搬送ガイド302と一体的に形成してもよい。離脱規制部502は、搬送ガイド302が第2の位置を占めたときに搬送ガイド対向面300Aに直接接触可能な距離CGよりもわずかに短い長さに形成され、その長さを半径とする円弧形状502aを有している。この構成により、上記実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、離脱規制部材500を省略することができ装置の簡易化及びコストダウンを図ることができる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。例えば、搬送ガイドは定着装置の出口側に設けられ、搬送面をニップ部の入口側に有する定着入口ガイドであってもよい。このように、搬送ガイドは搬送面を定着装置のニップ部に隣り合うように設けられればよい。さらに用紙搬送装置は、画像形成装置における定着装置と離れた位置で記録媒体を搬送する構成であってもよい。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したものに過ぎず、本発明による効果は本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。