特許第6623632号(P6623632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6623632絶縁樹脂フィルム及び多層プリント配線板
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  • 特許6623632-絶縁樹脂フィルム及び多層プリント配線板 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623632
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】絶縁樹脂フィルム及び多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20191216BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20191216BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   H05K1/03 630D
   H05K1/03 610R
   H05K1/03 610L
   H05K3/46 T
   H05K3/46 B
   B32B27/20 Z
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-179972(P2015-179972)
(22)【出願日】2015年9月11日
(65)【公開番号】特開2017-55069(P2017-55069A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100193976
【弁理士】
【氏名又は名称】澤山 要介
(72)【発明者】
【氏名】山田 薫平
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小関 裕太
【審査官】 鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−179888(JP,A)
【文献】 特開2005−298740(JP,A)
【文献】 特開2014−013854(JP,A)
【文献】 特開2015−067626(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/208352(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/03
B32B 27/20
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)硬化性樹脂としてビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、(B1)硬化剤、(C1)硬化促進剤及び(D1)無機充填材を含有してなる熱硬化性樹脂組成物(1)であって、該熱硬化性樹脂組成物(1)の固形分に対する(D1)無機充填材の含有量が20〜40質量%である熱硬化性樹脂組成物(1)を含有してなる第一層、及び
(A2)硬化性樹脂としてビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、(B2)硬化剤、(C2)硬化促進剤及び(D2)無機充填材を含有してなる熱硬化性樹脂組成物(2)であって、該熱硬化性樹脂組成物(2)の固形分に対する(D2)無機充填材の含有量が60〜80質量%である熱硬化性樹脂組成物(2)を含有してなる第二層を前記第一層上に形成してなり、第一層と第二層の全体の膜厚が15〜35μmである、絶縁樹脂フィルム。
【請求項2】
第一層の膜厚の割合が、第一層と第二層の全体の膜厚に対して10〜80%である、請求項1に記載の絶縁樹脂フィルム。
【請求項3】
(D1)無機充填材及び(D2)無機充填材が、それぞれ独立に、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、マイカ、カオリン、ベーマイト、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ガラス短繊維、ガラス粉及び中空ガラスビーズからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の絶縁樹脂フィルム。
【請求項4】
(D1)無機充填材及び(D2)無機充填材の体積平均粒子径が、いずれも0.01〜3μmである、請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁樹脂フィルム。
【請求項5】
(D1)無機充填材及び(D2)無機充填材が、いずれもシランカップリング剤で表面処理された無機充填材である、請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁樹脂フィルム。
【請求項6】
第一層において、第二層を有さない面に支持体を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁樹脂フィルム。
【請求項7】
(A)硬化性樹脂としてビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤及び(D)無機充填材を含有してなる絶縁樹脂フィルムであって、該絶縁樹脂フィルムの厚み方向の中央から下方を下層とし、中央から上方を上層としたとき、下層中の(D)無機充填材の含有量が20〜40質量%であり、且つ上層中の(D)無機充填材の含有量が60〜80質量%であり、膜厚が15〜35μmである、絶縁樹脂フィルム。
【請求項8】
下層側の面に支持体を有する、請求項に記載の絶縁樹脂フィルム。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁樹脂フィルムを含有する多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁樹脂フィルム及び多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
導体回路を有する構造体の一つであるプリント配線板は、コア基板上に複数の配線層が形成されたものであり、コア基板となる銅張積層体と、各配線層間に設けられる層間絶縁材と、最表面に設けられるソルダーレジストとを備えている。プリント配線板上には、通常、ダイボンディング材又はアンダーフィル材を介して半導体素子が実装される。必要に応じて、トランスファー封止材によって全面封止される場合もあり、また、放熱性の向上を目的とした金属キャップ(蓋)が装着される場合もある。
近年、半導体装置の軽薄短小化は留まるところを知らず、半導体素子や多層プリント配線板のさらなる高密度化が進んでいる。また、半導体装置の上に半導体装置を積むパッケージ・オン・パッケージといった実装形態も盛んに行われており、今後、半導体装置の実装密度は一段と高くなると予想される。
【0003】
ここで、従来の多層プリント配線板の製造方法を図1に示す。図1(f)に示す多層プリント配線板100は、表面及び内部に配線パターンを有する。多層プリント配線板100は、銅張積層体、層間絶縁材及び金属箔等を積層すると共に、エッチング法又はセミアディティブ法によって配線パターンを適宜形成することによって得られる。
【0004】
まず、表面に配線パターン102を有する銅張積層体101の両面に層間絶縁層103を形成する(図1(a)参照)。層間絶縁層103は、熱硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷機又はロールコータを用いて印刷してもよいし、熱硬化性樹脂組成物からなるフィルムを予め準備し、ラミネータを用いて、このフィルムをプリント配線板の表面に貼り付けることもできる。次いで、外部と電気的に接続することが必要な箇所に、YAGレーザ又は炭酸ガスレーザを用いて開口104を形成し、開口104周辺のスミア(残渣)をデスミア処理により除去する(図1(b)参照)。次いで、無電解めっき法によりシード層105を形成する(図1(c)参照)。上記シード層105上に感光性樹脂組成物をラミネートし、所定の箇所を露光及び現像処理して感光性樹脂層のパターン106を形成する(図1(d)参照)。次いで、電解めっき法により配線パターン107を形成し、はく離液により感光性樹脂組成物の硬化物を除去した後、上記シード層105をエッチングにより除去する(図1(e)参照)。以上を繰り返し行い、最表面にソルダーレジスト108を形成することで多層プリント配線板100を製造することができる(図1(f)参照)。このようにして得られた多層プリント配線板100は、対応する箇所に半導体素子が実装され、電気的な接続を確保することが可能である。
【0005】
ところで、多層プリント配線板の層間絶縁層には、上下の配線層を電気的に接続するためのビア(開口)を設ける必要がある。多層プリント配線板上に実装されるフリップチップのピン数が増加すれば、そのピン数に対応する開口を設ける必要がある。従来の多層プリント配線板は実装密度が低く、また、実装する半導体素子のピン数も数千ピンから一万ピン前後の設計となっているため、開口を小径で狭ピッチなものとする必要性はなかった。しかし、半導体素子の微細化が進展し、ピン数が数万ピンから数十万ピンに増加するに従って、多層プリント配線板の層間絶縁層に形成する開口も半導体素子のピン数に合わせて、狭小化する必要性が高まっている。
これまで、熱硬化性樹脂組成物を用いた層間絶縁層へレーザにより開口を設けた多層プリント配線板の開発が進められてきた(例えば、特許文献1〜4参照)。しかし、図1に示す方法で製造された多層プリント配線板100は、レーザ等の新規な設備導入が必要であること、比較的大きな開口又は60μm以下の微小な開口を設けることが困難であること、開口径に合わせて使用するレーザを使い分ける必要があること、特殊な形状を設けることが困難であること等の問題がある。また、レーザを用いて開口を形成する場合、各開口を一つずつ形成しなければならないため、多数の微細な開口を設ける必要がある場合に時間が掛かることや、開口部周辺に樹脂の残渣が残るため、残渣を除去しない限り、得られる多層プリント配線板の信頼性が低下することといった問題もある。
そこで、上述した問題を解決するために、レーザを用いずに開口を設ける方法として、感光性樹脂組成物を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−279678号公報
【特許文献2】特開平11−054913号公報
【特許文献3】特開2001−217543号公報
【特許文献4】特開2003−017848号公報
【特許文献5】国際公開第2013/054790号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献5に記載の方法では、絶縁樹脂フィルムを積層後、感光性樹脂層を熱硬化性樹脂層から露出させるための頭出し工程と、露出した感光性樹脂層を除去する工程とを含むため、従来の配線板工程に用いられている粗化工程と比較して、絶縁層の膜厚減少量が大きくなる。そのため、従来の絶縁樹脂フィルムを用いた場合、膜厚減少量が多くなるほどフィルム中の無機充填材が露出及び/又は脱落するために表面粗さが大きくなり、その結果、導体層との接着強度が低下して、微細配線が困難となる。そこで、表面粗さを小さくし、導体層との接着強度を向上するために、熱硬化性樹脂層中の無機充填材の含有量を低減する手法を用いた場合、絶縁樹脂フィルムの熱膨張率が増加してしまうため、基板の薄型化に対応するのが困難であった。
そこで、本発明の課題は、低熱膨張率でありながら低表面粗さで導体層との高い接着強度を発現する絶縁樹脂フィルム、及び該絶縁樹脂フィルムを含有する多層プリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、無機充填材の含有量を特定の範囲とした第一層と、無機充填材の含有量を特定の範囲とした第二層を前記第一層上に有する絶縁樹脂フィルムであれば上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、係る知見に基づいて完成したものである。
【0009】
本発明は下記[1]〜[10]に関する。
[1](A1)熱硬化性樹脂、(B1)硬化剤、(C1)硬化促進剤及び(D1)無機充填材を含有してなる熱硬化性樹脂組成物(1)であって、該熱硬化性樹脂組成物(1)の固形分に対する(D1)無機充填材の含有量が1〜40質量%である熱硬化性樹脂組成物(1)を含有してなる第一層、及び
(A2)熱硬化性樹脂、(B2)硬化剤、(C2)硬化促進剤及び(D2)無機充填材を含有してなる熱硬化性樹脂組成物(2)であって、該熱硬化性樹脂組成物(2)の固形分に対する(D2)無機充填材の含有量が50〜80質量%である熱硬化性樹脂組成物(2)を含有してなる第二層を前記第一層上に形成してなる、絶縁樹脂フィルム。
[2]第一層と第二層の全体の膜厚が10〜100μmであり、且つ第一層の膜厚の割合が、第一層と第二層の全体の膜厚に対して10〜80%である、上記[1]に記載の絶縁樹脂フィルム。
[3](A1)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、上記[1]又は[2]に記載の絶縁樹脂フィルム。
[4](D1)無機充填材及び(D2)無機充填材が、それぞれ独立に、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、マイカ、カオリン、ベーマイト、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ガラス短繊維、ガラス粉及び中空ガラスビーズからなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の絶縁樹脂フィルム。
[5](D1)無機充填材及び(D2)無機充填材の体積平均粒子径が、いずれも0.01〜3μmである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の絶縁樹脂フィルム。
[6](D1)無機充填材及び(D2)無機充填材が、いずれもシランカップリング剤で表面処理された無機充填材である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の絶縁樹脂フィルム。
[7]第一層において、第二層を有さない面に支持体を有する、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の絶縁樹脂フィルム。
[8](A)熱硬化性樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤及び(D)無機充填材を含有してなる絶縁樹脂フィルムであって、該絶縁樹脂フィルムの厚み方向の中央から下方を下層とし、中央から上方を上層としたとき、下層中の(D)無機充填材の含有量が1〜40質量%であり、且つ上層中の(D)無機充填材の含有量が50〜80質量%である絶縁樹脂フィルム。
[9]下層側の面に支持体を有する、上記[8]に記載の絶縁樹脂フィルム。
[10]上記[1]〜[9]のいずれかに記載の絶縁樹脂フィルムを含有する多層プリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、低熱膨張率でありながら低表面粗さで導体層との高い接着強度を発現する絶縁樹脂フィルム、及び該絶縁樹脂フィルムを含有する多層プリント配線板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来の多層プリント配線板の製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
[絶縁樹脂フィルム]
本発明の絶縁樹脂フィルムは、(A1)熱硬化性樹脂、(B1)硬化剤、(C1)硬化促進剤及び(D1)無機充填材を含有してなる熱硬化性樹脂組成物(1)であって、該熱硬化性樹脂組成物(1)の固形分に対する(D1)無機充填材の含有量が1〜40質量%である熱硬化性樹脂組成物(1)を含有してなる第一層、及び
(A2)熱硬化性樹脂、(B2)硬化剤、(C2)硬化促進剤及び(D2)無機充填材を含有してなる熱硬化性樹脂組成物(2)であって、該熱硬化性樹脂組成物(2)の固形分に対する(D2)無機充填材の含有量が50〜80質量%である熱硬化性樹脂組成物(2)を含有してなる第二層を前記第一層上に形成してなる、絶縁樹脂フィルムである。
熱硬化性樹脂組成物(1)と熱硬化性樹脂組成物(2)の各成分は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。第一層と第二層との密着性の観点からは、熱硬化性樹脂組成物(1)中の(A1)熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂組成物(2)中の(A2)熱硬化性樹脂は、同一であることが好ましい。同様の観点から、熱硬化性樹脂組成物(1)中の各成分と、熱硬化性樹脂組成物(2)中の各成分は、いずれも同一であることが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物(1)中の熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び無機充填材、並びに、熱硬化性樹脂組成物(2)中の熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び無機充填材について、以下に順に説明する。
【0013】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。また、特にこれらに制限されず、公知の熱硬化性樹脂を使用できる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
これらの中でも、成形性及び電気絶縁性に優れる点で、エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、それぞれ、好ましくは100〜500g/eq、より好ましくは150〜400g/eq、さらに好ましくは200〜350g/eqである。ここで、エポキシ当量は、エポキシ基あたりの樹脂の質量(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法に従って測定することができる。具体的には、自動滴定装置「GT−200型」(株式会社三菱化学アナリテック製)を用いて、200mlビーカーにエポキシ樹脂2gを秤量し、メチルエチルケトン90mlを滴下し、超音波洗浄器溶解後、氷酢酸10ml及び臭化セチルトリメチルアンモニウム1.5gを添加し、0.1mol/Lの過塩素酸/酢酸溶液で滴定することにより求められる。
【0014】
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。ここで、エポキシ樹脂は、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等に分類される。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
1分子中に2個のエポキシ基を有する樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;脂肪族鎖状エポキシ樹脂が挙げられる。
また、分子中に、平均で2個よりも大きなエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂を使用してもよい。該多官能エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂(以上、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。特に、導体層との接着強度及び絶縁信頼性の観点から、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。なお、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂とは、1分子中にビフェニル誘導体の芳香族環を含有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂をいう。
エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
エポキシ樹脂としては、下記式(1)で表されるエポキシ樹脂も好ましい。
【化1】

(式中、pは1〜5を示す。)
pは、好ましくは1.2〜5、より好ましくは1.4〜3である。
【0016】
ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、「NC−3000」(上記式(1)においてp=1.7のエポキシ樹脂、エポキシ当量=275g/eq)、「NC−3000H」(上記式(1)においてp=2.8のエポキシ樹脂、エポキシ当量=290g/eq)[以上、日本化薬株式会社製]が挙げられる。
【0017】
(硬化剤)
硬化剤としては、前記熱硬化性樹脂を硬化し得るものであれば特に制限はなく、公知の硬化剤を使用することができる。
例えば、エポキシ樹脂の硬化剤としては、フェノール樹脂、酸無水物、アミン、ヒドラジド化合物、ジシアンジアミド及びシアネート樹脂等が挙げられる。これらの中でも、絶縁信頼性の観点から、フェノール樹脂が好ましい。
フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂であれば特に制限はない。例えば、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF及び置換又は非置換のビフェノール等の1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物;アラルキル型フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;トリフェニルメタン型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、アミノトリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;レゾール型フェノール樹脂;ベンズアルデヒド型フェノールとアラルキル型フェノールとの共重合型フェノール樹脂;p−キシリレン及び/又はm−キシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂などが挙げられる。フェノール樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、絶縁信頼性の観点から、ノボラック型フェノール樹脂が好ましく、フェノールノボラック樹脂、アミノトリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂がより好ましく、フェノールノボラック樹脂及びアミノトリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂を併用することがさらに好ましい。
酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及びメチルハイミック酸等が挙げられる。酸無水物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
アミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の鎖状脂肪族ポリアミン;N−アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン等の環状脂肪族ポリアミン;m−キシリレンジアミン等の脂肪芳香族ジアミン;m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン;グアニル尿素などが挙げられる。アミンは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ヒドラジド化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、サリチル酸ジヒドラジド等が挙げられる。ヒドラジド化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
シアネート樹脂としては、例えば、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物、フェノールノボラック型シアネートエステル化合物及びクレゾールノボラック型シアネートエステル化合物等が挙げられる。シアネート樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
(硬化促進剤)
硬化促進剤、特に、エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、例えば、リン系化合物;イミダゾール化合物及びその誘導体;第3級アミン化合物;第4級アンモニウム化合物等が挙げられる。前記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、硬化反応促進の観点から、リン系化合物が好ましい。
リン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン等のトリアリールホスフィン;トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン;該有機ホスフィンと有機ボロンとの錯体;第三級ホスフィンとキノン系化合物との付加物などが挙げられる。
【0021】
イミダゾール化合物及びその誘導体の具体例としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−1−メチルイミダゾール、1,2−ジエチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−エチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4'−メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン等のイミダゾール化合物;前記イミダゾール化合物とトリメリト酸との付加反応物;前記イミダゾール化合物とイソシアヌル酸との付加反応物;前記イミダゾール化合物と臭化水素酸との付加反応物;前記イミダゾール化合物とエポキシ樹脂との付加反応物などが挙げられる。イミダゾール化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
第三級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルアニリン及びN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。第三級アミンは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
第四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムブロミド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。第四級アンモニウム塩は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
(無機充填材)
無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、マイカ、カオリン、ベーマイト、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、ガラス短繊維、ガラス粉及び中空ガラスビーズ等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく使用される。ガラスとしては、Eガラス、Tガラス、Dガラス等が好ましく挙げられる。これらの中でも、絶縁樹脂層の熱膨張率低減の観点から、シリカが好ましい。
前記シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられる。乾式法シリカとしては、さらに、製造法の違いにより破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ(溶融球状シリカ)が挙げられる。無機充填材に用いられるシリカは、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の高流動性の観点から、溶融シリカが好ましい。
【0024】
シリカは、シランカップリング剤によって表面処理されたシリカが好ましい。シランカップリング剤によって表面処理されたシリカを用いると、シリカと樹脂成分との接着力が向上し、シリカの脱落が抑制され、表面粗さが低下する傾向にある。
前記シランカップリング剤としては、例えば、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、フェニルシラン系カップリング剤、アルキルシラン系カップリング剤、アルケニルシラン系カップリング剤、アルキニルシラン系カップリング剤、ハロアルキルシラン系カップリング剤、シロキサン系カップリング剤、ヒドロシラン系カップリング剤、シラザン系カップリング剤、アルコキシシラン系カップリング剤、クロロシラン系カップリング剤、(メタ)アクリルシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、イソシアヌレートシラン系カップリング剤、ウレイドシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、スルフィドシラン系カップリング剤及びイソシアネートシラン系カップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、アルケニルシラン系カップリング剤が好ましく、ビニルシラン系カップリング剤がより好ましい。
【0025】
無機充填材の平均粒子径は、0.01〜3μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがより好ましく、0.1〜1μmであることがさらに好ましい。特に、無機充填材としてシリカを用いる場合、シリカの平均粒子径は前記範囲であることが好ましい。
無機充填材の平均粒子径を前記範囲にすることで、フィルム成形性を良好に保ちながら、絶縁層の表面粗さが低減する傾向にある。
なお、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、ちょうど体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0026】
(その他の成分)
熱硬化性樹脂組成物(1)及び熱硬化性樹脂組成物(2)はいずれも、さらにその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、有機充填材、難燃剤、熱可塑性樹脂、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び接着性向上剤等が挙げられる。
有機充填材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等よりなる樹脂粒子;アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、共役ジエン系樹脂等よりなるゴム状態のコア層と、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、シアン化ビニル系樹脂等よりなるガラス状態のシェル層とを有する、いわゆるコアシェル構造の樹脂粒子等が挙げられる。
難燃剤としては、例えば、臭素及び/又は塩素を含有するハロゲン系難燃剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、赤リン等のリン系難燃剤;スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤;シクロホスファゼン、ポリホスファゼン等のホスファゼン系難燃剤などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等が挙げられる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系の光重合開始剤等が挙げられる。蛍光増白剤としては、例えば、スチルベン誘導体の蛍光増白剤が挙げられる。接着性向上剤としては、例えば、尿素シラン等の尿素化合物;シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等のカップリング剤などが挙げられる。
【0027】
〔熱硬化性樹脂組成物における各成分の含有割合〕
熱硬化性樹脂組成物(1)においては、(D1)無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂組成物(1)の固形分に対して1〜40質量%である。一方、熱硬化性樹脂組成物(2)においては、(D2)無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂組成物(2)の固形分に対して50〜80質量%である。(D1)無機充填材及び(D2)無機充填材の含有量がそれぞれ前記範囲にあることで、低熱膨張率でありながら低表面粗さで導体層との高い接着強度を発現する絶縁樹脂フィルムが得られる傾向にある。
(D1)無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂組成物(1)の固形分に対して好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜40質量%、さらに好ましくは30〜40質量%である。また、(D2)無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂組成物(2)の固形分に対して、好ましくは55〜75質量%、より好ましくは60〜75質量%、さらに好ましくは60〜70質量%である。
なお、前記した(D1)無機充填材の含有量の数値範囲と、前記した(D2)無機充填材の含有量の数値範囲とは、任意に組み合わせることができる。
【0028】
(D1)無機充填材の含有量と(D2)無機充填材の含有量が上記範囲にあれば、それ以外の成分の含有量に特に制限はなく、当業者の常識の範囲で適宜選択することができる。
例えば、熱硬化性樹脂組成物(1)における(A1)熱硬化性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物(1)の固形分(無機充填材を含む。)に対して好ましくは20〜65質量%、より好ましくは30〜65質量%、さらに好ましくは40〜60質量%である。熱硬化性樹脂組成物(2)における(A2)熱硬化性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物(2)の固形分(無機充填材を含む。)に対して好ましくは15〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%、さらに好ましくは20〜30質量%である。
また、熱硬化性樹脂組成物(1)における(C1)硬化促進剤の含有量は、(A1)熱硬化性樹脂の含有量に対して、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。同様に、熱硬化性樹脂組成物(2)における(C2)硬化促進剤の含有量は、(A2)熱硬化性樹脂の含有量に対して、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。
【0029】
(有機溶剤)
熱硬化性樹脂組成物(1)及び熱硬化性樹脂組成物(2)には、希釈することによって取り扱いを容易にし、絶縁樹脂フィルムを形成し易くするという観点から、有機溶剤を含有させてもよい。本明細書では、有機溶剤を含有する熱硬化性樹脂組成物は、樹脂ワニスと称されることがある。なお、該有機溶剤は、前記各成分と混合された状態で用いられたものであってもよいし、前記各成分とは別に、任意に用いたものであってもよい。
該有機溶剤としては、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤などが挙げられる。
これらの中でも、溶解性及び塗布後の外観の観点から、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤、又はこれらの混合溶媒が好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンがより好ましい。また、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はシクロヘキサノンと、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド又はN−メチルピロリドンとの混合溶媒もより好ましい。
有機溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂組成物(1)及び熱硬化性樹脂組成物(2)における有機溶剤の含有量はいずれも、塗布時の膜厚を安定化し、且つ外観が良好となる観点から、固形分濃度(有機溶剤以外の成分の濃度)が好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜75質量%、さらに好ましくは40〜75質量%、特に好ましくは50〜70質量%となるようにする。
【0030】
〔各層の膜厚〕
本発明の絶縁樹脂フィルムは、前述の通り、前記第一層、及び該第一層上に前記第二層を形成してなるものである。
本発明の絶縁樹脂フィルムは、第一層と第二層の全体の膜厚が好ましくは10〜100μmであり、且つ第一層の膜厚の割合が、第一層と第二層の全体の膜厚に対して好ましくは10〜80%の絶縁樹脂フィルムである。第一層と第二層の全体の膜厚は、より好ましくは10〜70μm、さらに好ましくは10〜50μm、特に好ましくは15〜40μm、最も好ましくは15〜35μmである。また、第一層の膜厚の割合は、第一層と第二層の全体の膜厚に対して、より好ましくは20〜80%、さらに好ましくは30〜70%、特に好ましくは40〜60%である。第一層と第二層の全体の膜厚の数値範囲と、第一層の膜厚の割合の数値範囲とは、任意に組み合わせることができる。
ここで、膜厚は、乾燥して得られた(乾燥条件については後述する。)絶縁樹脂フィルムの膜厚を示す。
【0031】
〔支持体〕
本発明の絶縁樹脂フィルムの第一層において、第二層を有さない面に支持体を有していてもよい。この場合、支持体、第一層及び第二層は、「支持体/第一層/第二層」という構成を採ることになる。
支持体としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等の有機フィルム;銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などが挙げられる。離型層付き有機フィルム、離型層付き金属箔も使用できる。
支持体の剥離容易性、価格及び取扱性の観点から、離型層付き有機フィルムが好ましく、離型層付きPETフィルムがより好ましい。離型層付きPETフィルムの市販品としては、例えば、「ユニピール(登録商標)TR−1」(ユニチカ株式会社製)、「セラピール(登録商標)」(東レフィルム加工株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
なお、本発明の絶縁樹脂フィルムには、保護フィルムを積層することができる。保護フィルムは、主に、本発明の絶縁樹脂フィルムへ異物が付着すること及びキズが付くことを防止する目的で使用されるものである。保護フィルムは、ラミネート又は熱プレスの前に剥離される。保護フィルムとしては、支持体と同じ材料であってもよい。保護フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、通常、好ましくは1〜40μmである。
【0033】
[絶縁樹脂フィルムの製造方法]
本発明の絶縁樹脂フィルムの製造方法に特に制限はないが、以下の2つの製造方法が挙げられる。
製造方法1:支持体上に第一層用の熱硬化性樹脂組成物(1)を塗布し、次いで第二層用の熱硬化性樹脂組成物(2)を第一層上に塗布した後、乾燥工程を経る方法。
製造方法2:支持体上に第一層用の熱硬化性樹脂組成物(1)を塗布し、乾燥工程を経た後、第二層用の熱硬化性樹脂組成物(2)を第一層上に塗布し、乾燥工程を経る方法。
製造方法1及び2の中でも、量産性の観点からは、製造方法1が好ましい。
【0034】
前記乾燥工程の条件としては、いずれの場合も、温度60〜180℃で30〜600秒乾燥する条件が好ましい。温度は70〜140℃であることがより好ましい。
熱硬化性樹脂組成物(1)及び(2)の塗布方法に特に制限はなく、公知の方法を利用できる。例えば、リバースコーター、グラビアコーター、エアドクターコーター、ダイコーター、リップコーター等の塗布装置を用いて塗布することができる。
【0035】
本発明の絶縁樹脂フィルムの1態様として、以下の態様を挙げることができる。
(A)熱硬化性樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤及び(D)無機充填材を含有してなる絶縁樹脂フィルムであって、該絶縁樹脂フィルムの厚み方向の中央から下方を下層とし、中央から上方を上層としたとき、下層中の(D)無機充填材の含有量が1〜40質量%であり、且つ上層中の(D)無機充填材の含有量が50〜80質量%である絶縁樹脂フィルム。
上記絶縁樹脂フィルムは、前記(A1)熱硬化性樹脂と(A2)熱硬化性樹脂が同一である場合に採り得る態様である。つまり、第一層と第二層との境界が不明瞭となる場合に、見かけ上、第一層と第二層とが1つの層になるが、その場合でも、該層中の中央を境とした上下において無機充填材の存在割合が異なっているため、その態様を表している。
下層中の(D)無機充填材の含有量は、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜40質量%、さらに好ましくは30〜40質量%である。また、上層中の(D)無機充填材の含有量は、好ましくは55〜75質量%、より好ましくは60〜75質量%、さらに好ましくは60〜70質量%である。
なお、上記絶縁樹脂フィルムの下層側の面に支持体を有していてもよい。この場合、絶縁樹脂フィルムは、「支持体/(下層/上層)」の構成をとることになる。
【0036】
[多層プリント配線板及びその製造方法]
本発明は、前記絶縁樹脂フィルムを含有する多層プリント配線板をも提供する。
本発明の多層プリント配線板の製造方法に特に制限はないが、例えば、下記工程(a)〜(f)を有する製造方法により製造することができる。
工程(a):導体回路形成を施した内層基板に感光性樹脂組成物を積層し、感光性樹脂組成物層を形成する工程(以下、感光性樹脂層形成工程(a)とも称する。)
工程(b):前記感光性樹脂層に露光処理及び現像処理を施してパターン化する工程(以下、感光性樹脂層パターン(ポスト)形成工程(b)とも称する。)
工程(c):前記ポストを覆うように前記内層基板上に本発明の絶縁樹脂フィルムを積層し、絶縁層を形成する工程(以下、絶縁層形成工程(c)とも称する。)
工程(d):前記絶縁層の一部を除去して前記ポストを露出させる工程(以下、頭出し工程(d)とも称する。)
工程(e):前記ポストを除去し、前記内層基板の導体回路を露出させる工程(以下、開口形成工程(e)とも称する。)
工程(f):絶縁層及び開口部に導体回路を形成する工程(以下、導体回路形成工程(f)とも称する。)
【0037】
(感光性樹脂層形成工程(a))
感光性樹脂層形成工程(a)において、導体回路形成を施した内層基板上に感光性樹脂組成物層を形成する方法としては、特に制限されるわけではないが、前記内層基板に、キャリア付き感光性樹脂フィルムをキャリアが外側になるように重ねる方法が簡便であり好ましい。内層基板にキャリア付き感光性樹脂フィルムを重ねる方法は、真空ラミネータ、ホットロールラミネータ等の装置を利用し、例えば、温度100〜130℃、圧力0.3〜0.5MPaの条件で実施できる。
なお、感光性樹脂組成物としては特に制限はなく、公知の感光性樹脂組成物を用いることができる。
【0038】
(感光性樹脂層パターン(ポスト)形成工程(b))
感光性樹脂層パターン(ポスト)形成工程(b)は、例えば、キャリア上に、直径60μm以下(例えば直径30μm)の円状パターンが100μmピッチに配置されたデザインを有するフォトツールを配置し、その上から露光した後、キャリアを除去し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液等を用いて未露光部を除去することにより実施される。
露光条件としては、使用する感光性樹脂組成物により適宜決定される。例えば、活性光線の光源としては、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、アルゴンレーザ等のガスレーザ、YAGレーザ等の固体レーザ、半導体レーザ等の、紫外線、可視光等を有効に放射するものを用いて行う。活性光線の波長(露光波長)としては、例えば、340〜430nmが用いられる。
【0039】
(絶縁層形成工程(c))
内層基板上に絶縁層を形成するのに用いる装置としては、例えば、真空ラミネータ、ホットロールラミネータ、真空プレス等が挙げられる。これらの中でも、成形性及び量産性の観点から、真空ラミネータを用いるのが好ましい。真空ラミネータを用いて、例えば、温度60〜140℃、圧力0.2〜1MPaの条件で20〜60秒加圧する方法が好ましい。真空ラミネータとしては、例えば「MVLP500−600」(株式会社名機製作所製)等が用いられる。
また、絶縁層を形成した基板は、必要に応じて加熱処理を施してもよい。加熱処理の方法としては、例えば、乾燥機を用いて140〜190℃の温度で15〜120分加熱する方法が挙げられる。
【0040】
(頭出し工程(d))
頭出し工程(d)は、絶縁層の一部を除去するために、例えば、セラミックロールによる研磨処理、サンドブラスト処理、従来の配線板工程で用いられるデスミア処理、ウェットブラスト処理、プラズマ処理等を用いることができる。これらの中でも、表面平滑性及び量産性の観点から、プラズマ処理を用いることが好ましい。
プラズマ処理の条件は、ポストを露出できる限り特に制限はない。例えば、プラズマ装置「プラズマアッシャーPB−1000S」(株式会社モリエンジニアリング製)を用いて、酸素ガス10〜20%、アルゴンガス2〜8%の導入ガスにより、圧力300〜500Pa、RFパワー300〜500W、5〜20分の条件でプラズマ処理できる。
【0041】
(開口形成工程(e))
開口形成工程(e)において、ポストを除去するのに用いられる方法としては、例えば、配線形成に用いられる公知のめっきレジスト用剥離液による処理方法、及びプリント配線板製造工程で用いられる公知のデスミア液による処理方法等を用いることができる。量産性並びに絶縁層と後述の導体回路との密着性の観点から、デスミア液を用いることが好ましい。デスミア液としては、過マンガン酸水溶液を含むデスミア液が好ましい。
デスミア液としては、市販のデスミア原液を用いてもよく、例えば、「コンセントレートコンパクトCP」(アトテック社製)等を用いることができる。
【0042】
(導体回路形成工程(f))
導体回路形成工程(f)において、絶縁層及び開口部に導体回路を形成する方法としては、プリント配線板製造工程における公知の導体回路形成方法を用いることができる。例えば、従来のセミアディティブプロセスを用いることができる。セミアディティブプロセスにおける導体層形成手法としては、スパッタ法、無電解めっき、CVD(Chemical Vapor Deposition)等を用いることができる。価格及び量産性の観点から、導体層の形成は、無電解めっきにより行うことが好ましい。無電解めっき液としては市販のものを用いることができ、例えば、アトテック社製の無電解銅めっき液等が用いられる。
【実施例】
【0043】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。なお、各例で製造した絶縁樹脂フィルム又は評価基板を用いて、下記方法に従って、熱膨張率、表面粗さ、導体層との接着強度を測定した。
【0044】
[1.熱膨張率の測定方法]
各例で製造した絶縁樹脂フィルムを、PETフィルムが外側になるように重ね、真空ラミネータを用いて80℃、0.5MPaの条件で貼り合わせた。次に、PETフィルムを片面除去し、銅箔「YGP−12」(日本電解株式会社製)の光沢面にPETフィルムが外側になるように重ね、ラミネートした。次いで、キャリアフィルムを除去し、180℃90分で硬化した後、銅箔をエッチング処理により除去し、厚さ50μmの硬化物フィルムを製造した。製造した硬化物フィルムを、長さ30mm、幅4mmの大きさに切断し、熱分析システム「EXSTAR6000」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて熱膨張率(線膨張率)を測定した。なお、試料が有する熱歪みの影響を除去するため、昇温−冷却サイクルを2回繰り返し、2回目の温度変位チャートの、50℃〜120℃の熱膨張率[ppm/℃]を測定し、低熱膨張性の指標とした。値が小さいほど、低熱膨張性に優れている。
測定条件 1st Run:室温→210℃(昇温速度10℃/min)
nd Run:0℃→270℃(昇温速度10℃/min)
【0045】
[2.表面粗さ(Ra)の測定方法]
各例で得た評価用基板の導体層をエッチング処理によって除去し、露出した樹脂表面の表面粗さ(Ra)を表面形状測定装置「WykoNT9100」(Veeco社製)を用いて、下記測定条件にて測定した。
−測定条件−
内部レンズ:1倍
外部レンズ:50倍
測定範囲:0.120×0.095mm
測定深度:10μm
測定方式:垂直走査型干渉方式(VSI方式)
【0046】
[3.接着強度の測定方法]
各例で得た評価用基板の回路層の一部に、銅エッチング液「過硫酸アンモニウム(APS)」(三菱ガス化学社製)に浸漬することにより、幅10mm、長さ100mmの部位を形成した。オートグラフ「AG−100C」(株式会社島津製作所製)を用いて、この一端を回路層と樹脂の界面で剥がしてつかみ具でつかみ、室温中、垂直方向に引張り速度約50mm/分で引き剥がした時の荷重(kN/m)を測定した。
【0047】
(調製例1)熱硬化性樹脂組成物(1)の調製
(A1)成分としてビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂「NC3000」(日本化薬株式会社製、エポキシ当量275g/eq、式(1)中のp=1.7)50.0gに、メチルエチルケトン25.0gを配合した。これに、(B1)成分としてフェノールノボラック樹脂「フェノライト(登録商標)TD−2131」(DIC株式会社製、水酸基当量104g/eq)4.1g及びアミノトリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂「フェノライト(登録商標)LA3018−50P」(DIC株式会社製)27.4gを加え、さらに(C1)成分としてトリフェニルホスフィン1.4−ベンゾキノン付加体「P2」(北興化学工業株式会社製)0.15gを添加した後、メチルエチルケトンで希釈した。これに、(D1)成分としてシリカスラリー「SC2050KNK」(アドマテックス社製、70質量%)44.5gを加え、分散機「ナノマイザー」(吉田機械興業株式会社製)を用いて混合し、熱硬化性樹脂組成物(1)(固形分濃度約60質量%、固形分中の無機充填材含有量31.4質量%)を得た。
【0048】
(調製例2)熱硬化性樹脂組成物(2)の調製
(A2)成分としてビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂「NC3000」(日本化薬株式会社製、エポキシ当量275g/eq、式(1)中のp=1.7)50.0gに、メチルエチルケトン25.0gを配合した。これに、(B2)成分としてフェノールノボラック樹脂「フェノライト(登録商標)TD−2131」(DIC株式会社製、水酸基当量104g/eq)4.1g及びアミノトリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂「フェノライト(登録商標)LA3018−50P」(DIC株式会社製)27.4g加え、さらに(C2)成分としてトリフェニルホスフィン1.4−ベンゾキノン付加体「P2」(北興化学工業株式会社製)0.15gを添加した後、メチルエチルケトンで希釈した。(D2)成分としてシリカスラリー「SC2050KNK」(アドマテックス社製、70質量%)177.9gを加え、分散機「ナノマイザー」(吉田機械興業株式会社製)を用いて混合し、熱硬化性樹脂組成物(2)(固形分濃度約60質量%、固形分中の無機充填材含有量64.7質量%)を得た。
【0049】
(調製例3)熱硬化性樹脂組成物(3)の調製
(A1)成分としてビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂「NC3000」(日本化薬株式会社製、エポキシ当量275g/eq、式(1)中のp=1.7)50.0gに、メチルエチルケトン25.0gを配合した。これに、(B1)成分としてフェノールノボラック樹脂「フェノライト(登録商標)TD−2131」(DIC株式会社製、水酸基当量104g/eq)4.1g及びアミノトリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂「フェノライト(登録商標)LA3018−50P」(DIC株式会社製)27.4gを加え、さらに(C1)成分としてトリフェニルホスフィン1.4−ベンゾキノン付加体「P2」(北興化学工業株式会社製)0.15gを添加した後、メチルエチルケトンで希釈した。これに、(D1)成分としてシリカスラリー「SC2050KNK」(アドマテックス社製、70質量%)91.6gを加え、分散機「ナノマイザー」(吉田機械興業株式会社製)を用いて混合し、熱硬化性樹脂組成物(3)(固形分濃度約60質量%、固形分中の無機充填材含有量48.6質量%)を得た。
【0050】
(実施例1)
支持体である離型剤付きPETフィルム「ユニピール(登録商標)TR−1」(ユニチカ株式会社製)上に、調製例1で得た第一層用の熱硬化性樹脂組成物(1)をバーコーター(第一理化株式会社製)で塗布し、その上に、調製例2で得た第二層用の熱硬化性樹脂組成物(2)をアプリケーター「YBA−6」型(ヨシミツ精機株式会社製)で塗布し、乾燥機を用いて80℃、5分の条件で乾燥し、第一層の厚み12μm、第二層の厚み13μmの絶縁樹脂フィルム1(第一層及び第二層中の無機充填材の合計含有量:48.7質量%)を得た。
得られた絶縁樹脂フィルム1を用い、以下の様にして評価用基板を製造した。
【0051】
<評価用基板の製造>
まず、厚さ12μmの銅箔が両面に貼着された銅張積層体「MCL−E−679FG」(日立化成株式会社製)を準備した。銅張積層体の厚さは400μmであった。この銅表面を、CZ処理液「メックエッチボンド(登録商標)CZ−8100」(メック株式会社製)で粗化し、内層基板を製造した。
次いで上記絶縁樹脂フィルム1を内層基板上に、PETフィルムが外側になるように重ね、真空ラミネータを用いて、80℃、0.5MPaの条件で積層した(絶縁層形成工程(c)に相当する)。その後、PETフィルムを除去し、乾燥機を用いて160℃、30分の条件で加熱し、絶縁層付き基板を製造した。
−めっき法−
得られた絶縁層付き基板の絶縁層表面を、「プラズマアッシャーPB−1000S」(株式会社モリエンジニアリング製)を用いて、酸素ガス16%、アルゴンガス5%の導入ガスにより圧力400Pa、RFパワー400W、10分の条件でプラズマ処理を行った(頭出し工程(d)に相当する)。
次いで,膨潤液として,スウェリングディップセキュリガントP(アトテック社製)500mLと水酸化ナトリウム3gと純水500mLとの混合液を80℃に加温し、絶縁層付き基板をこれに5分間浸漬させた。次いで、絶縁層付き基板を水洗後,粗化液(デスミア液)として、コンセントレートコンパクトCP(アトテック社製)640mLと水酸化ナトリウム40gと純水360mLとの混合液を80℃に加温し、絶縁層付き基板をこれに10分間浸漬させた(開口形成工程(e)に相当する)。引き続き、中和液として、リダクションソリューションセキュリガントP500(アトテック社製)200mL/L、と98%硫酸100mLと純水700mLとの混合液を40℃に加熱し、絶縁層付き基板をこれに5分間浸漬させた。
次いで,絶縁層付き基板を水洗後,無電解めっきの前処理として、コンディショナー液としてクリーナーセキュリガント902(アトテック社製)40mLと純水960mLとの混合液を60℃に加温し、絶縁層付き基板を5分間浸漬させ、その後、絶縁層付き基板を水洗し、次にプレディップ工程としてプレディップネオガントB(アトテック社製)20mLと98%硫酸1mLと純水979mLとの混合液に25℃で1分浸漬させた。次に、触媒付与工程として、アクチベーターネオガント834コンク(アトテック社製)40mLと水酸化ナトリウム4gとホウ酸5gと純水960mLとの混合液に35℃で5分浸漬し、次に絶縁層付き基板を水洗後,還元工程として、リデューサーネオガントWA(アトテック社製)5mLとリデューサーアクセラレーター810mod(アトテック社製)100mLと純水895mLとの混合液に30℃で1分、絶縁層付き基板を浸漬させた。絶縁層付き基板を水洗後,最後に無電解銅めっき工程として、ベーシックソリューションプリントガントMSK−DK(アトテック社製)80mLとカッパーソリューションプリントガントMSK−DK(アトテック社製)40mLとスタビライザープリントガントMSK−DK(アトテック社製)3mLとリデューサーCu(アトテック社製)14mLと,純水853mLとの混合液に28℃で15分、絶縁層付き基板を浸漬させ、厚み約0.5μmの銅めっき被膜を形成した。絶縁層付き基板を水洗後,得られた絶縁層付き基板を乾燥機を用いて80℃で15分間乾燥した後、さらに硫酸銅電解めっきを行った。その後、アニール処理を170℃で30分間行い、絶縁層表面上に厚さ30μmの導体層を形成し(導体回路形成工程(f)に相当する)、評価用基板1を得た。
絶縁樹脂フィルム1又は評価用基板1を用いて、前述の方法に従って、熱膨張率、表面粗さ及び導体層との接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
(比較例1)
支持体である離型剤付きPETフィルム「ユニピール(登録商標)TR−1」(ユニチカ株式会社製)上に、調製例1で得た熱硬化性樹脂組成物(1)をバーコーター(第一理化株式会社製)で塗布し、乾燥機を用いて80℃、5分の条件で乾燥し、厚み25μmの絶縁樹脂フィルム2(無機充填材の含有量:31.4質量%)を得た。
得られた絶縁樹脂フィルム2を用い、実施例1と同様にして評価用基板2を製造した。
絶縁樹脂フィルム2又は評価用基板2を用いて、前述の方法に従って、熱膨張率、表面粗さ及び導体層との接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
(比較例2)
支持体である離型剤付きPETフィルム「ユニピール(登録商標)TR−1」(ユニチカ株式会社製)上に、調製例3で製造した熱硬化性樹脂組成物(3)をバーコーター(第一理化株式会社製)で塗布し、乾燥機を用いて80℃、5分の条件で乾燥し、厚み25μmの絶縁樹脂フィルム3(無機充填材の含有量:48.6質量%)を得た。
得られた絶縁樹脂フィルム3を用い、実施例1と同様にして評価用基板3を製造した。
絶縁樹脂フィルム3又は評価用基板3を用いて、前述の方法に従って、熱膨張率、表面粗さ及び導体層との接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1中の実施例1から、本発明の構成を有する絶縁樹脂フィルムは、低熱膨張率でありながら、低表面粗さで、導体層との高い接着強度を示すことが確認できた。
一方、比較例1より、無機充填材の含有量が少ない単層の絶縁樹脂フィルムを用いた場合、実施例1と同等の接着強度を有するが、熱膨張率が大きくなることが確認できた。また、比較例2に示すように、実施例1と同等量の無機充填材を含む絶縁樹脂フィルムを単層で用いた場合、実施例1と比較して表面粗さが大きくなり、且つ接着強度が大幅に低下することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の絶縁樹脂フィルムは、低熱膨張率でありながら低表面粗さで導体層との高い接着強度を有するため、電子機器用の多層プリント配線板の製造に有用である。
図1