(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可撓性を有し回転可能に支持された無端状の定着部材の内部に設けられ、前記定着部材と該定着部材に対向する対向部材との間に記録媒体を挟持して搬送するニップを形成するためのニップ形成部材と、
前記定着部材の長手方向における通紙領域の少なくとも中央部を加熱する定着熱源と、
前記ニップ形成部材に設けられ、前記定着部材の前記長手方向における端部の内面を加熱する端部熱源とを有し、
前記定着熱源は前記ニップ形成部材を除く部位に設けられ、前記端部熱源は前記ニップ形成部材の両端部近傍に位置した段差部に取り付けられているニップ形成ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明の実施形態を説明する。
先ず、本実施形態を説明する前に従来の構成及び問題点について説明する。
小サイズ用紙を定着する場合は中央部の配光分布が密なハロゲンヒータを点灯し、大サイズ用紙を定着する場合は端部付近の配光分布が密なハロゲンヒータを一緒に、かつ適当なオン・オフ配分で点灯することで様々なサイズの用紙に対応している。
【0010】
ここで用紙サイズと使用頻度について言及すると、通常使用される用紙は最大A3サイズまでがほとんどであり、A3サイズの用紙は縦方向に通紙される。
特に使用頻度が高いA4またはLTサイズの用紙に関しても生産性を上げるべく横方向に通紙されることが多い。
このため定着の加熱幅としては、約300mmを確保しておけばほとんどの場合、機種によっては99%以上を網羅することができる。
一方で、全体に対する使用頻度はごく少ないがA3ノビや13インチといったA3幅よりも大サイズの用紙対応が要求されている。
【0011】
ハロゲンヒータによる加熱方式の場合、直径30mm程度の定着ローラ内部に小サイズに対応した複数のヒータを設けるため、ヒータ本数を容易に増やせない。このため、A3幅よりも大サイズの用紙幅に合わせて端部配光分布が密なハロゲンヒータを長くせざるを得ない。
上述のように、使用頻度で考えると300mm幅程度の加熱が圧倒的に多いが、上記長いハロゲンヒータを用いた場合には330mm幅近辺まで加熱されてしまい、差分の消費エネルギが無駄になる。
さらには、A3またはA4横(A4Y)サイズでの通紙時の330mm幅の端部付近が温度上昇してしまい、これを冷やすために生産性を落としたりファンを設けたりする必要があった。
反射板を設けた場合には、ヒータ端部が異常に温度上昇するといった不具合も発生していた。
このような問題に対処すべく、特許文献1に記載の装置が提案された経緯となっている。
【0012】
図1ないし
図9に基づいて、上述した特許文献1の問題点を解消する本発明の第1の実施形態を説明する。
先ず、
図1に基づいて本実施形態に係る画像形成装置の構成の概要を説明する。
画像形成装置100は、複数の色画像を形成する作像部が中間転写ベルトの移動方向に沿って並置されたタンデム方式のカラープリンタである。
【0013】
画像形成装置100は、イエロ(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色に分解された色にそれぞれ対応する像を形成可能な像担持体としての感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkを有している。
各感光体ドラム20Y,20C,20M,20Bkに形成された可視像としてのトナー像は、各感光体ドラムに対向しながら矢印A1方向に移動可能な中間転写体としての中間転写ベルト11に重ね合わせて1次転写される。
その後、記録媒体としての用紙Sに対して2次転写工程によりトナー像が一括転写される。
各感光体ドラム20の周囲には、感光体ドラムの回転に従い画像形成処理するための装置が配置されている。
【0014】
ブラック画像の形成を行う感光体ドラム20Bkを代表して、画像形成処理するための装置を説明する。
感光体ドラム20Bkの周囲には、感光体ドラム20Bkの回転方向に沿って、画像形成処理を行う帯電装置30Bk、現像装置40Bk、1次転写ローラ12Bk及びクリーニング装置50Bkが順に配置されている。
帯電装置30Bkによる帯電後、感光体ドラム20Bkの表面に光書込装置8により画像情報に基づく光書き込みが行われ、静電潜像が形成される。
静電潜像は現像装置40Bkによりトナー像として可視化される。
【0015】
各感光体ドラム20に形成されたトナー像は、中間転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、中間転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写される。
上記1次転写は、中間転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20に対向して配設された1次転写ローラ12による電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
各感光体ドラム20Y,20C,20M,20Bkは、中間転写ベルト11の移動方向の上流側からこの色順で並んでいる。
各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、イエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの画像をそれぞれ形成するための画像ステーションに備えられている。
【0016】
画像形成装置100は、色毎の画像形成処理を行う4つの画像ステーションと、各感光体ドラム20の上方に対向して配設され、中間転写ベルト11及び1次転写ローラ12Y,12C,12M,12Bkを備えた中間転写ベルトユニット10とを有している。
また、画像形成装置100は、中間転写ベルト11に対向して配設され中間転写ベルト11に従動して連れ回りする2次転写手段としての2次転写ローラ5を有している。
また、画像形成装置100は、中間転写ベルト11に対向して配設され中間転写ベルト11上をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置13を有している。
光書込装置8は、4つの画像ステーションの下方に、これらに対向して配設されている。
【0017】
光書込装置8は、光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、折り返しミラー及び偏向手段としての回転多面鏡等を装備している。
光書込装置8は、各感光体ドラム20に対して、色毎に対応した書き込み光Lbを出射して各感光体ドラム20に静電潜像を形成する。
図1では、便宜上、ブラック画像の画像ステーションのみを対象として書き込み光に符号Lbを付けているが、その他の画像ステーションにおいても同様である。
【0018】
画像形成装置100の下部には、各感光体ドラム20と中間転写ベルト11との間に向けて搬送される用紙Sを積載した給紙カセットとしてのシート給送装置61が設けられている。
シート給送装置61から搬送されてきた用紙Sは、画像ステーションによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、レジストローラ対4により中間転写ベルト11と2次転写ローラ5との間の2次転写部に向けて繰り出される。
用紙Sの先端がレジストローラ対4に到達したことは、図示しないセンサによって検知される。
【0019】
トナー像が転写された用紙Sは定着装置150に送られ、ここで熱と圧力を加えられてトナー像を定着される。
定着済みの用紙Sは、排紙ローラ対7により排紙トレイとしての画像形成装置本体の上面に排出される。
画像形成装置本体の上面の下方には、イエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9C、9M、9Bkが備えられている。
【0020】
中間転写ベルトユニット10は、中間転写ベルト11、1次転写ローラ12Y,12C,12M,12Bkの他に、中間転写ベルト11が掛け回されている駆動ローラ72及び従動ローラ73を有している。
従動ローラ73は、中間転写ベルト11に対する張力付勢手段としての機能も備えており、このため従動ローラ73にはバネ等を用いた付勢手段が設けられている。
中間転写ベルトユニット10と、1次転写ローラ12Y,12C,12M,12Bkと、2次転写ローラ5と、中間転写ベルトクリーニング装置13とで転写装置71が構成されている。
シート給送装置61は、最上位の用紙Sの上面に当接する給送ローラ3を有しており、給送ローラ3が反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の用紙Sをレジストローラ対4に向けて給送する。
【0021】
転写装置71に装備されている中間転写ベルトクリーニング装置13は、中間転写ベルト11に対向及び当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有している。
中間転写ベルトクリーニング装置13は、中間転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取って除去する。
中間転写ベルトクリーニング装置13はまた、中間転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための排出手段を有している。
【0022】
図2ないし
図9に基づいて、定着装置150の構成を詳細に説明する。
図2に示すように、定着装置150は、薄肉で可撓性を有する無端状の定着部材としての定着ベルト14と、定着ベルト14に対向して配置された対向部材としての加圧ローラ16とを有している。
定着ベルト14の内部には、定着ベルト14と加圧ローラ16との間に用紙Sを挟持して搬送するニップNを形成するためのニップ形成ユニット18が設けられている。
ニップ形成ユニット18は、加圧ローラ16に対向して定着ベルト14の内側に配置されたニップ形成部材22と、ニップ形成部材22の両端部に一体に設けられた端部熱源としての端部ヒータ24と、ニップ形成部材22を加圧ローラ16からの加圧力に対抗して保持するステー部材26とを有している。
【0023】
ニップ形成部材22は、
図17に示すように摺動シートとしての低摩擦シート6を介して定着ベルト14の内面と摺動する。
低摩擦シート6にフッ素グリースやシリコーンオイル等の潤滑剤を塗布することで、摺動トルクを低減することができる。
低摩擦シート6を設けることなく、ニップ形成部材22が定着ベルト14の内面に直に接触する構成としてもよい。
【0024】
ステー部材26は、ニップN側と反対側が開口されたボックス形状を有し、その内部には定着熱源としてのハロゲンヒータ28a,28bが配置されている。
定着ベルト14は、ステー部材26の開口側において、ハロゲンヒータ28a,28bにより内面側から輻射熱で直接加熱される。
【0025】
ハロゲンヒータ28a,28bによる加熱効率を上げるために、ステー部材26の内面には、ハロゲンヒータ28a,28bから放射される光を定着ベルト14へ反射する板状の反射部材31が設けられている。
反射部材31は、ハロゲンヒータ28a,28bからの輻射熱等によりステー部材26が加熱されてしまうことによる無駄なエネルギ消費を抑制するために設けられている。
反射部材31を設ける代わりに、ステー部材26の内面に断熱もしくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることができる。
【0026】
加圧ローラ16は、
図3に示すように、中空の金属ローラ16aにシリコーンのゴム層16bを設けた構成を有している。
離型性を得るためにゴム層16bの表面には、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)またはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる層厚5〜50μmの離型層が設けてある。
加圧ローラ16は、画像形成装置に設けられたモータ等の駆動源からギヤを介して駆動力が伝達されて回転する。
また、加圧ローラ16はスプリング等により定着ベルト14側に押し付けられており、加圧ローラ16のゴム層16bが押し潰されて変形することにより、用紙搬送方向に所定のニップ幅Nwが形成される。
【0027】
加圧ローラ16は中実のローラであってもよいが、中空のほうが熱容量は少なくてよい。加圧ローラ16は内部にハロゲンヒータ等の加熱源を有していてもよい。
ゴム層16bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ内部にヒータが無い場合はスポンジゴムを用いてもよい。
スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト14の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。
【0028】
定着ベルト14は、層厚30〜50μmのニッケルやSUS等の金属ベルトやポリイミド等の樹脂材料を用いた無端ベルト、もしくはフィルムである。
ベルトの表層はPFAまたはPTFE層等の離型層を有し、トナーが付着しないように離型性を持たせている。
ベルトの基材とPFAまたはPTFE層との間には、他にシリコーンゴムの層等で形成する弾性層があってもよい。
シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着画像を押し潰して定着するときにベルト表面の微妙な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に含む定着ムラ(光沢ムラ)が残るという不具合が生じる。
【0029】
これを改善するにはシリコーンゴム層を100μm以上設ける必要がある。シリコーンゴム層の変形により、微妙な凹凸が吸収され定着ムラが改善する。
定着ベルト14は、加圧ローラ16の回転により接触摩擦で連れ回り回転する。
定着ベルト14はニップNで挟み込まれて回転するが、ニップN以外では両端部を円筒状のまま保持されており、定着ベルト14の断面形状は安定的に円形状に維持される。
また、
図2に示すようにニップNの用紙搬送方向下流側には、定着ベルト14から用紙Sを分離する分離部材32が設けられている。
【0030】
本実施形態では、
図1、
図3に示すようにニップNの形状を平坦状にしているが、加圧ローラ16側から見て定着ベルト14側に凸となる凹形状やその他の形状であってもよい。
ニップNの形状は、凹形状の方が用紙先端の排出方向が加圧ローラ16寄りになり、分離性が向上するのでジャムの発生が抑制される。
この場合、ニップ形成部材22のニップ形成面が凹形状に形成されるが、この場合にはニップ形成部材22に一体に設けられた端部ヒータ24a,24bの接触面もニップ形成面に沿った形状としてもよい。
【0031】
ステー部材26は、加圧ローラ16から圧力を受けるニップ形成部材22の撓みを防止し、軸方向で均一なニップ幅が得られる働きをしている。
本実施形態では、加圧ローラ16を定着ベルト14側へ押圧してニップNを形成する構成としたが、ニップ形成ユニット18を加圧ローラ16側へ押圧してニップNを形成する構成としてもよい。
ステー部材26は、ニップ形成部材22を支持するために十分な撓み強度を備えており、材質としてはステンレスや鉄といった金属材料、セラミックス等の金属酸化物が用いられる。
【0032】
図4に示すように、定着ベルト14はその軸方向における両端側を、側板34から軸方向に突出する支持部材としてのフランジ36により回転可能に支持されている。
図4では定着ベルト14の軸方向における一方側の支持構成を示しているが、他方側も同様に構成されている。
定着ベルト14の両端部をガイドするフランジ36は、定着ベルト14の内径とほぼ同等の外径を有し、定着ベルト14の両端から内側に5〜10mm入り込む長さを有している。
定着ベルト14は、フランジ36によりガイドされることにより、走行中(回転中)においてもその断面形状を円形状に維持される。
フランジ36のニップNに対応する部分は、ニップ形成ユニット18を所定の位置に配置するために開口されている。
ステー部材26は、定着ベルト14の軸方向全体にわたって延びる長さを有し、両側を側板34に固定され位置決めされた状態で支持されている。
【0033】
図5に示すように、ハロゲンヒータ28aは定着ベルト14の長手方向における中央部の配光分布が密な小サイズ対応のハロゲンヒータである。
ハロゲンヒータ28bは、長手方向における両端部の配光分布が密なA3サイズ等のサイズに対応したハロゲンヒータである。
用紙Sが小サイズのときはハロゲンヒータ28aのみが点灯され、非通紙部が無駄に加熱されることが防止される。
【0034】
A3サイズの幅やA4サイズを横向きにしたA4Yの幅と、A3ノビ(329mm)及び13インチ(330mm)との差は32〜33mmである。
従って、定着ベルト14の軸方向両端部のみを加熱する方式であれば、上記の半分である16〜16.5mmの幅だけ端部を加熱できれば、
図5に示すようにA3サイズからA3ノビ等へと用紙対応幅が広がる。
換言すれば、ハロゲンヒータ28bの端部における配光分布が密でない部分を加熱できれば、A3ノビ等の大サイズの用紙にも対応可能となる。
よって、端部ヒータ24a,24bの軸方向の長さは20mm程度の小型なヒータで済む。
【0035】
A3ノビや13インチ等の大サイズの用紙を通紙する場合には、ハロゲンヒータ28a,28b及び端部ヒータ24a,24bに通電する。
A3サイズ以下の用紙を通紙する場合には、ハロゲンヒータ28a及び28b、あるいはハロゲンヒータ28aのみ通電し、端部ヒータ24a,24bには通電しない。
ハロゲンヒータ28bをA3ノビ等の大サイズの用紙に対応可能な加熱構成とすると、大サイズの用紙を通紙しない場合にもその部分を加熱することになって無駄なエネルギを消費することになる。
本実施形態の構成によれば、定着ベルト14の両端部ないし両端近傍に端部ヒータ24a,24bを追加するという簡単な構成の付加によって上記問題を解消することができる。
【0036】
図6に示すように、ステー部材26の加圧ローラ16側の側面26aには定着ベルト14の長手方向に延びる2つの突条26b,26cが形成されている。
直方体状のニップ形成部材22は、突条26b,26c間に収容されて位置決めされ、接着等の手段により側面26aに固定されている。
ニップ形成部材22の長手方向の両端部には、段差部としての凹部22a,22bが形成され、これらには端部ヒータ24a,24bが収容されて接着等の手段により固定されている。
ニップ形成部材22の加圧ローラ16に対向する面はニップ形成面22cとしてなる。
【0037】
ここで端部ヒータ24a,24bについて説明する。本実施形態に用いられる端部ヒータ24a,24bはそれぞれ同じものであり、
図18に端部ヒータ24aを代表して示す。
端部ヒータ24aは、外形が10mm×20mm程度のセラミック基材51に発熱部材である抵抗発熱体52をパターニングし、その上に薄膜のガラス層による絶縁層53を積層して構成されている。端部ヒータ24aの端部には、電源及びスイッチング素子と接続される端子54が設けられている。
【0038】
上述のように、端部ヒータ24a,24bはその一方の面側に抵抗発熱体52を有しており、抵抗発熱体52を有する一方の面側が主に発熱して他方の面側にはあまり熱が届かないように構成されている。
本実施形態に用いられる端部ヒータ24a,24bは、凹部22a,22bと接する側に抵抗発熱体52を有しており、その面側にそれぞれ端子54が設けられている。
端部ヒータ24a,24bは、
図19に示すように、定着ベルト14と接しない側に抵抗発熱体52を配置することにより、万が一絶縁層53が破損しても供給される電力が定着ベルト14に到達しないように構成されている。特に定着ベルト14が後述のように金属で構成されている場合には、定着ベルト内の金属を通じて画像形成装置内の他の部品、一例として公知の定着ベルトに対する接触サーミスタに悪影響が及ぶ可能性が高まる。従って、定着ベルト14と抵抗発熱体52との沿面距離確保のために、上述した構成がより好適となる。
【0039】
図7(a)に示すように、端部ヒータ24a,24bの定着ベルト14の内面に接触する面とニップ形成面22cとは、定着ベルト14の内面を押す方向である矢印F方向(抗力方向)の高さが同一となっている。
換言すれば、端部ヒータ24a,24bの定着ベルト14の内面に接触する面は、ニップ形成面22cの長手方向の延長面としてなる。
本実施形態では、ニップを形成するために必要なニップ形成部材22に端部ヒータ24a,24bを一体に設ける構成としたので、端部ヒータ24a,24bを定着ベルト14の内側に省スペースで配置できる。
【0040】
また、端部ヒータ24a,24bの定着ベルト14の内面に接触する面と、ニップ形成面22cとは同一高さ(同一平面上)に位置するので、加圧ローラ16による充分な加圧力が定着ベルト14と端部ヒータ24a,24bとの間に加えられる。
これにより、定着ベルト14と端部ヒータ24a,24bとが密着した状態でのベルト走行が得られ、伝熱性の向上によって端部ヒータ24a,24bによる良好な加熱効率を維持できる。
端部ヒータ24a,24bによる定着ベルト14に対する加熱部位がニップ領域内に存在するので、特許文献1のようにニップとは異なる部位で加熱することによる未転写トナーの再溶融の問題も生じない。
【0041】
また、伝熱性を向上させるために端部ヒータ24a,24bと定着ベルト14とを密着させるための付勢手段を加圧ローラ16が兼ねる構成であるので、端部ヒータのみを加圧する構成が不要となり、特許文献1の構成に比べて構成が簡易となる。
換言すれば、ニップを形成するための加圧力を利用して端部ヒータ24a,24bと定着ベルト14とを密着させているので、特許文献1のような構成における走行性と伝熱不良とのトレードオフの問題も生じない。
【0042】
本実施形態では、ニップ形成部材22に形成する凹部の形状を軸方向の端部が開放された形状としたが、
図7(b)に示すように、四方が囲まれた凹部22a,22bとしてもよい。さらに、軸方向の前後が塞がれ、軸方向と直交する両側が開放された構成としてもよい。
【0043】
図8に示すように、ニップ形成部材22の凹部22a,22bにおいて、端部ヒータ24a、24bを弾性部材38で支持する構成としてもよい。
この構成では
図8(a)に示すように、加圧ローラ16による加圧力が掛かっていない状態では、端部ヒータ24a,24bの定着ベルト14の内面に接触する面とニップ形成面22cとは同一の高さにない。
しかし、
図8(b)に示すように加圧ローラ16による加圧力が掛かってニップが形成されると、弾性部材38が変形して端部ヒータ24a,24bの定着ベルト14の内面に接触する面がニップ形成面22cと同一の高さとなる。
弾性部材38としては、ゴム系のものやバネを採用することができる。
【0044】
上記のように、端部ヒータ24a,24bは別部材としてのニップ形成部材22に固定して位置決めされるため、定着ベルト14の内面に対する端部ヒータ24a,24bの接触面とニップ形成面22cの高さが組み付け段階でずれる可能性がある。
このような場合でも、端部ヒータ24a,24bが弾性部材で支持されている構成とすれば、製造誤差を吸収してニップ形成時に面高さを同一にすることができる。
【0045】
本実施形態では、端部ヒータ24a,24bをニップ形成ユニット18に一体に設ける構成としたが、本発明はこれに限定されない。
図9に示すように、端部ヒータ24a,24bをニップ形成ユニットとは独立してニップ領域に設けてもよい。
例えば側板34に固定された支持部材42a,42bに固定する構成を採用できる。
この場合にも、端部ヒータ24a,24bの定着ベルト14の内面に接触する面とニップ形成面22cとは同一高さに設定される。
本例においても、端部ヒータ24a,24bが弾性部材によって変位する構成としてもよい。
【0046】
また本実施形態では、ニップ形成ユニットとしてステー部材26やハロゲンヒータ28a,28bを一体に備えた構成を示したが、ニップ形成部材22と端部ヒータ24a,24bとの一体構成からなる単品も本発明に係るニップ形成ユニットである。
【0047】
本実施形態における端部ヒータ24a,24bはPTC特性を有していてもよい。PTC特性を有していれば、設定温度以上で抵抗値が増加するため設定温度以上に上がることがない。これにより、燃焼やベルト破損の虞がなく安全な定着装置を実現できる。
また本実施形態では、端部ヒータ24a,24bを定着ベルト14の内方に設ける構成としたので、定着ベルト14の回転を妨げることなく内側からベルト端部を加熱することができる。
さらに、端部ヒータ24a,24bの定着ベルト14の内面に接触する部分を別な滑らかな材料で構成すれば、摺動抵抗を低く抑えることができベルト走行を安定に保つことができる。
【0048】
上述の構成によれば、定着ベルト14の内部に設けられたニップ形成ユニット18がニップ形成部材22と定着ベルト14の長手方向における通紙領域の少なくとも中央部を加熱するハロゲンヒータ28a,28bとを有し、ニップ形成部材22が定着ベルト14の長手方向端部の内面を加熱する端部ヒータ24a,24bを有している。
この構成により、定着ベルト14が圧力を受けるニップNに端部ヒータ24a,24bが設けられていることから定着ベルト14が圧力を受ける箇所を1箇所とすることができ、定着ベルトが走行不良となる虞を低減することが可能なニップ形成ユニットを提供することができる。これにより良好な画像形成動作を継続して行うことが可能な定着装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【0049】
図10ないし
図12に基づいて第2の実施形態を説明する。上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、既出の構成上及び機能上の説明は適宜省略する。
ハロゲンヒータにて加熱する方式の場合、
図10(a)に示すように、長手方向におけるヒータの最端部は配熱出力が低下する。
ハロゲンヒータ28aの配熱出力についてみると、両端部の配熱出力は台形状となっており最端部は出力が低下している。これは、最端部には配光分布が密な部分と疎な部分との境界が存在するからであり、ハロゲンヒータ特有の特性である。
このため、A3サイズの用紙では端部を十分に加熱できず、定着不良を来たす場合があった。
【0050】
用紙幅の長手方向最端部まで必要十分に加熱するためには、ハロゲンヒータの発光部(配光分布が密な部分)の長さを用紙幅よりも長くする必要がある。
しかしながら、そのようにした場合には連続通紙したときに非通紙部の温度上昇が避けられない。
この課題解決のために、非通紙部にハロゲンヒータの長くした部分から発光される余分な光を遮光するための部材を設ける対策等も見られるが、連続通紙中に遮光部材の過度の温度上昇が発生する問題がある。
また、非通紙部までハロゲンヒータを発光させなければならないことは、必要以上にエネルギを要していることとなり、省エネの観点からも望ましくない。
【0051】
本実施形態では上記問題を解消すべく、
図11に示すように、端部ヒータ24a,24bを、その長手方向における加熱範囲の少なくとも一部がハロゲンヒータ28bの加熱範囲の同方向における端部と重なるように配置している。
換言すれば、ハロゲンヒータ28bの配熱出力の低下部分を補完するように端部ヒータ24a,24bを配置している。
この構成によれば、
図10(b)にハッチングで示すように、ハロゲンヒータ28bの配熱出力の低下部分が端部ヒータ24a,24bの加熱で補完される。
端部ヒータ24a,24bは、ハロゲンヒータ28bの最端部における配熱出力の低下部分を補完するためのヒータであるため、その長さは20mm程度の小型なヒータで済む。
本実施形態の構成によれば、定着ベルト14の両端部ないし端部近傍に端部ヒータ24a,24bを追加するという簡単な構成の付加によって上記問題を解消することができる。
【0052】
定着ベルト14や加圧ローラ16がまだ十分に温まっていないような、ウォームアップ直後の連続通紙における最初のある程度の時間には、ハロゲンヒータ28a,28b及び端部ヒータ24a,24bに通電する。
定着ベルト14及び加圧ローラ16が十分温まり、端部の温度低下が減少してきた場合には、ハロゲンヒータ28a及び28b、あるいはハロゲンヒータ28aのみ通電し、端部ヒータ24a,24bには通電しない。
このように加熱制御することで、非通紙部における温度上昇現象を最小限にすることができ、必要以上に定着ベルトを加熱することがないので効率的で省エネとなる。
【0053】
図12に示すように、端部ヒータ24a,24bの長さを、ハロゲンヒータ28bの最端部における配熱出力の低下部分を補完し、かつA3ノビ等のサイズの用紙にも対応できる大きさとしてもよい。
また、端部ヒータ24a,24bについては、両端1対の配置構成にとどまらず、例えば様々な紙サイズに応じて複数対あってもよい。
端部ヒータ24a,24bはハロゲンヒータ28bよりもさらに軸方向外側に設けてもよい。このような場合にはより多くの紙サイズに対応することができ、また高精度に加熱することが可能となり、より望ましい。
【0054】
端部ヒータ24a,24bとしてPTC特性を有するヒータを用いた場合には、通常、ハロゲンヒータを用いた場合に比べ昇温時間が長くかかる。
このため、端部ヒータ24a,24bとハロゲンヒータ28a,28bとを一緒のタイミングで加熱すると中央部側の内側だけ先に加熱されてしまい、無駄なエネルギを消費することになる。
また、通紙により熱が奪われると、PTCの特性上、目標温度に復帰するための加熱時間が端部ヒータ24a,24bはハロゲンヒータよりも長くかかる。
【0055】
このため、端部ヒータ24a,24bの加熱サイクルに合わせて生産性を落として対応することで、中央部と端部とで温度バラツキのない加熱制御を行うことができる。
すなわち、定着ベルト14の両端部ないし両端近傍を加熱する端部ヒータ24a,24bを使用するときは、端部の温度上昇に合わせてその他の通常サイズ紙に対応したハロゲンヒータ28a,28bを加熱制御する。
これにより、端部ヒータ24a,24bの発熱量が低い場合、通常サイズ紙に対応したヒータ加熱部のみが先に昇温されてしまい、必要以上にエネルギが消費されることを防ぐことができる。
また、端部ヒータを使用するサイズの用紙を搬送する場合の搬送速度を、それ以外のサイズの用紙の搬送速度よりも遅くする。
このようにして使用頻度の低い大サイズの用紙の生産性を落とすことで、両端部の加熱ヒータ(端部ヒータ24a、24b)を簡略化ないし低コスト化でき、効率的となる。
【0056】
本実施形態では、定着熱源としてのハロゲンヒータを二本有する構成を示したが、これに限定される趣旨ではなく、小サイズ紙対応のための三本以上のハロゲンヒータを有する構成でも構わない。
【0057】
図20は、ニップ形成ユニットの変形例を示している。
ニップ形成ユニット63は、ニップ形成部材22と、端部ヒータ24a,24bと、ニップ形成部材22を加圧ローラ16からの加圧力に対抗して保持するステー部材64とを有している。
ステー部材64は、ニップ形成部材22を受けるべくステー部材26と同様に構成された受け部64aと、ほぼ三角形の断面形状を呈した脚部64bとを一体的に有している。
脚部64bと定着ベルト14との間には、輻射熱により定着ベルト14をその内面側から直接加熱する定着熱源としてのハロゲンヒータ28a,28bが配置されている。
ハロゲンヒータ28a,28bによる加熱効率を上げるため、ハロゲンヒータ28a,28bから放射される光を定着ベルト14へ反射する円弧形状の板材からなる反射部材65が、脚部64bとハロゲンヒータ28a,28bとの間に設けられている。
【0058】
上述のニップ形成ユニット63をニップ形成ユニット18に代えて用いても、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、反射部材65を設ける代わりに、脚部64bの外面に断熱もしくは鏡面処理を行ってもよい。この場合は、反射部材65を設ける場合に比して加熱効率が若干低下することとなる。
【0059】
ここで、金属製の定着ベルトについて説明する。
図2、
図17、
図19、
図20に示した定着ベルト14は、その外周面に接する加圧ローラ16の回転に従動回転して熱源からの熱をニップNに向けて搬送する。このような構成の定着装置では定着ベルト14に掛かる負荷が大きく、ポリイミド等の樹脂材料では強度が不足する場合がある。
このため、強度に優れたステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属材料が定着ベルト14の基材材料として用いられる場合が多い。
【0060】
図22にモデル的に示すように、金属材料を含む基材46を用い、その外周面に弾性層47を、さらにその外周面に離型層48を周知の方法によって形成し、本実施形態で示した定着ベルト14を構成することができる。
ここで基材46に求められる性能としては、定着ベルト14を構成した際の耐久性、柔軟性、及び定着温度での使用に耐え得る耐熱性が挙げられ、弾性層47、離型層48もこれ等の性能を満足するように形成する。
さらに、定着ベルト14の基材46としては、ステンレスよりもニッケルの方が適している。これは、強度が高く、耐久性にも優れ、また電鋳プロセスにより無端状ベルトの製造が容易であるためである。
【0061】
上記各実施形態におけるハロゲンヒータ28と端部ヒータ24の電気的接続構成を
図13ないし
図16に示す。
用紙をセンター基準で搬送する場合、端部ヒータ24a,24bは常に同時に通電するので、
図13に示すように、端部ヒータ24a,24bは電源44に直列に電気接続されている。
このような接続構成とすることで、端部ヒータ24a,24bを個別にオン・オフする構成に比べて電気制御が簡単になる。
また、片側の端部ヒータが故障したときとき、両者の電気接続を同時に絶つことができて安全性を確保できる。
ハロゲンヒータ28aはスイッチSW1により、ハロゲンヒータ28bはスイッチSW2により、端部ヒータ24a,24bはスイッチSW3により通電をオン・オフされる。
【0062】
小サイズの用紙を通紙する場合には、
図14(a)に示すようにハロゲンヒータ28aのみが通電される。A3サイズの用紙を通紙する場合には、
図14(b)に示すようにハロゲンヒータ28a,28bが共に通電される。
A3サイズより大きいサイズの用紙を通紙する場合には、
図14(c)に示すようにハロゲンヒータ28a,28b及び端部ヒータ24a,24bが同時に通電される。
【0063】
ニップ部の反対側を加熱する非ニップ部の熱源としてのハロゲンヒータ28a,28bと、端部ヒータ24a,24bとを独立に加熱制御することで、長手方向の最端部の温度制御をより高精度に行うことができる。
また、非通紙部の温度上昇も回避することが可能となる。
【0064】
端部ヒータ24a,24bによる加熱は、A3サイズより大きいサイズの用紙を通紙する場合であり、そのときは両端部を加熱するハロゲンヒータ28bが同時に点灯される。
従って、
図15に示すように、ハロゲンヒータ28bを端部ヒータ24a,24bと直列に繋ぐ配線を施し、スイッチSW1,SW4によって経路を切り換えながら電力供給を制御しても同様の効果を発揮することができる。
このようにすれば制御装置をさらに簡素化することができる。
ここでは、ハロゲンヒータ28bと端部ヒータ24a,24bとは温度特性が異なるので、経路の切り換えで両者の温度を調整している。
【0065】
小サイズの用紙を通紙する場合には、
図16(a)に示すようにハロゲンヒータ28aのみが通電される。この場合、スイッチSW4はハロゲンヒータ28bと端部ヒータ24a,24bの何れの端子にも接触しない位置に設定される。
A3サイズの用紙を通紙する場合には、
図16(b)に示すようにハロゲンヒータ28a,28bが共に通電される。
A3サイズより大きいサイズの用紙を通紙する場合には、
図16(c)に示すようにハロゲンヒータ28a,28b及び端部ヒータ24a,24bが同時に通電される。
図13、
図15において、ハロゲンヒータ28bと端部ヒータ24とを直列に繋ぐ配線を例示したが、大サイズの用紙のときはハロゲンヒータ28aも同時に点灯しているので、ハロゲンヒータ28aと端部ヒータ24とを直列に繋ぐ配線でも同様の効果を発揮できる。
【0066】
図21は、上記実施形態の他の変形例に用いられるハロゲンヒータ28と端部ヒータ24の電気的接続構成を示す回路図である。
図21に示した構成では、端部ヒータ24aと端部ヒータ24bとは並列に接続されている。このため、スイッチSW3がオフの場合、端部ヒータ24a,24bにはマイナス電極のみが接続されているので電流は流れない。
スイッチSW3をオンに切り替えると端部ヒータ24a,24bにはプラス電極がそれぞれ接続され、電源44からの電力が端部ヒータ24a,24bにそれぞれ供給されて端部ヒータ24a,24bが発熱する。
このような構成とすれば、一方の端部ヒータがショートした場合には、図示しないヒューズを加えることによって過電流による熱暴走を阻止することができ、安全性を向上することができる。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。