特許第6623752号(P6623752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6623752熱可塑性樹脂組成物、及びこれを用いた成形品。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623752
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物、及びこれを用いた成形品。
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20191216BHJP
   C08G 64/06 20060101ALI20191216BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08G64/06
   C08L33/08
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-257017(P2015-257017)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-119776(P2017-119776A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一雄
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−191226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08G 64/06
C08L 33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を含むポリカーボネート樹脂と
個数平均粒子径が1〜20μmのアクリル酸エステル・スチレン共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物。
【化1】
【請求項2】
アクリル酸エステル・スチレン共重合体の屈折率が1.50〜1.58である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリカーボネート樹脂およびアクリル酸エステル・スチレン共重合体の合計量を100重量部としたときに、アクリル酸エステル・スチレン共重合体の含有量が0.1〜5重量部である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
ポリカーボネート樹脂の還元粘度が、0.30dL/g以上、1.20dL/g以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
耐光安定剤を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
酸化防止剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含有するポリカーボネート樹脂と、特定の光拡散剤とからなる樹脂組成物および当該樹脂を成形してなる成形品に関するものであって、光拡散性、透明性に優れた樹脂組成物に関するものである。そして、本発明の樹脂組成物の優れた光学特性を利用した成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは一般的に石油資源から誘導される原料を用いて製造される。しかしながら、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネートの提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が、気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後の廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな、植物由来モノマーを原料としたポリカーボネートの開発が求められている。なかでも、照明カバー、照明看板、透過型のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シート等の、光拡散性が要求される用途に用いるため、ヘイズが高く光の拡散性に優れ、全光線透過率が高く透明性に優れるポリカーボネート樹脂が求められてきている。
【0003】
従来、植物由来モノマーを原料とした種々のポリカーボネートが開発されている。
例えば、植物由来モノマーとしてイソソルビドを使用し、炭酸ジフェニルとのエステル交換により、ポリカーボネートを得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、イソソルビドと脂肪族ジオールとを共重合すること(例えば、特許文献2参照)や脂環式ジヒドロキシ化合物である1,4−シクロヘキサンジメタノールを重合すること(例えば、特許文献3参照)により、イソソルビドからなるホモポリカーボネートの樹脂としての物性を改善する試みがなされている。また、ポリカーボネートの重合温度や触媒を考慮したり、ブルーイング剤を含有することで、イソソルビドを原料としてなるポリカーボネートのヘイズなどを改良することが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
また、イソソルビドを原料としてなるポリカーボネートにビーズ状架橋アクリル粒子などを添加し、耐熱性、熱安定性および耐候性を有し、かつ色相に優れた光拡散性熱可塑性樹脂組成物とすることが記載されている(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
さらには、イソソルビドを原料としてなるポリカーボネートにコア/シェル構造アクリル系ポリマー粒子などを添加し、耐熱性と熱安定性のいずれも良好で、色相、耐候性および剛性に優れた光拡散性熱可塑性樹脂組成物することが記載されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許第1079686号明細書
【特許文献2】国際公開第04/111106号パンフレット
【特許文献3】特開2008−024919号公報
【特許文献4】特開2012−214665号公報
【特許文献5】特開2009−191226号公報
【特許文献6】特開2011−105845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1〜4に記載の発明においては、イソソルビドを原料としてなるポリカーボネートの光拡散性という観点には着目されておらず、また、光拡散性を改善できるような処置もされていないことから、光拡散性の観点から満足できるものではない。
【0008】
また、引用文献5および6については、それぞれ、イソソルビドを原料としてなるポリカーボネートにビーズ状架橋アクリル粒子やコア/シェル構造アクリル系ポリマー粒子を添加することが記載されているものの、光の拡散性および透明性を両立させるようなものではなく、このような構成では、光の拡散性および透明性を満足できるものではない。
【0009】
つまり、本発明の目的は、ヘイズが高く光の拡散性に優れ、全光線透過率が高く透明性に優れるポリカーボネート樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが検討を行った結果、特定のジヒドロキシ化合物由来の構造単位を含有するポリカーボネート樹脂とアクリル酸エステル・スチレン共重合体を含有することで、熱可塑性樹脂組成物の光拡散性および透明性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を含むポリカーボネート樹脂と個数平均粒子径が1〜20μmのアクリル酸エステル・スチレン共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物。
【0012】
【化1】
【0013】
[2] アクリル酸エステル・スチレン共重合体の屈折率が1.50〜1.58である[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3] ポリカーボネート樹脂およびアクリル酸エステル・スチレン共重合体の合計量を100重量部としたときに、アクリル酸エステル・スチレン共重合体の含有量が0.1〜5重量部である[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4] ポリカーボネート樹脂の還元粘度が、0.30dL/g以上、1.20dL/g以下である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5] 耐光安定剤を含有する[1]〜[4]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6] 酸化防止剤を含有する[1]〜[5]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7][1]〜[6]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光拡散性および透明性に優れ、例えば、照明カバー、照明看板、透過
型のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シート等の、光拡散性が要求される用途に好適に用いることができる熱可塑性樹脂組成物及びこれを成形してなる成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
【0016】
<ポリカーボネート樹脂(A)>
本発明に使用するポリカーボネート樹脂(A)は、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂である。
【0017】
【化2】
【0018】
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、成形性、耐熱性、耐衝撃性、表面硬度、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
【0019】
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は、環状エーテル構造を有するため、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管や、製造時には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤等を用いたり、窒素雰囲気下で取り扱うことが肝要である。例えば、イソソルビドが酸化されると、蟻酸等の分解物が発生する場合がある。これら分解物を含むイソソルビドをポリカーボネート樹脂の製造原料として使用すると、得られるポリカーボネート樹脂及び熱可塑性樹脂組成物の着色を招く可能性があり、又、物性を著しく劣化させる可能性があるだけではなく、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られない場合もある。
【0020】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂(A)は、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)以外に、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、芳香族ビスフェノール類及び式(1)で表されるジヒドロキシ化合物以外のエーテル基含有ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる一種以上のジヒドロキシ化合物(以下、「他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位(b)を含む共重合ポリカーボネート樹脂であることが、ポリカーボネート樹脂(A)の耐衝撃性の面で好ましい。中でも、肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、芳香族ビスフェノール類からなる群より選ばれる一種以上のジヒドロキシ化合物が好ましく、ポリカーボネート樹脂の耐光性の観点からは、分子構造内に芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物、即ち脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物がさらに好ましく、耐熱性も加味して考慮すると、脂環式ジヒドロキシ化合物が最も好ましい。
【0021】
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物であっても、分岐鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物であってもよく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオールなどが挙げられる。
【0022】
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノールが挙げられる。
【0023】
芳香族ビスフェノール類としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレンが挙げられる。
【0024】
エーテル基含有ジヒドロキシ化合物としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量150〜2000)、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0025】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂(A)における他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)の含有割合は、ポリカーボネート樹脂(A)中の全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位において、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が特に好ましい。また50モル%以下が好ましく、45モル%以下がより好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)中の他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)が少なすぎると耐衝撃性が不足する可能性があり、多すぎると耐熱性が不足する場合がある。
【0026】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂(A)は、一般に用いられるポリカーボネート樹脂の製造方法で製造することができ、その製造方法は、ホスゲンを用いた溶液重合法、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とを反応させる溶融重合法のいずれの方法でもよいが、重合触媒の存在下に、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物を、より環境への毒性の低い炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法が好ましい。また、溶融重合における重合触媒(エステル交換触媒)としては、公知のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用される。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性ア
ンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。
【0027】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂(A)は、上述のように式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルをエステル交換反応させて製造することができる。より詳細には、エステル交換反応させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、通常、エステル交換反応触媒の存在下でエステル交換反応により溶融重合を行う。
【0028】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂(A)の製造時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、「触媒」と称する場合がある)としては、例えば長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における1族又は2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。これらの中でも、好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用され、透明性、耐候性の点から、特に好ましくは2族金属化合物が使用される。
【0029】
1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
【0030】
1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム,カリウム,リチウム,セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩,2カリウム塩,2リチウム塩,2セシウム塩等が挙げられ、中でもセシウム化合物、リチウム化合物が好ましい。
【0031】
2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられ、中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物、バリウム化合物が好ましく、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更に好ましい。
【0032】
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩,カリウム塩,リチウム塩,カルシウム塩,バリウム塩,マグネシウム塩,あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
【0033】
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0034】
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
【0035】
上記の中でも、第2族金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を触媒として用いるのが、得られるポリカーボネート樹脂(A)の透明性、色相、耐光性等の種々の物性を優れたものとするために好ましい。
また、上記ポリカーボネート樹脂(A)の透明性、色相、耐光性を特に優れたものとするために、触媒が、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、及びバリウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物であるのが好ましく、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物であるのが特に好ましい。
【0036】
前記触媒の使用量は、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の場合、反応に供する全ジヒドロキシ化合物1モルに対して、金属換算量として、好ましくは0.1〜300μモル、より好ましくは0.1〜100μモル、さらに好ましくは0.5〜50μモル、特に好ましくは1〜25μモルの範囲内である。
上記の中でも2族金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、金属換算量として、反応に供する全ジヒドロキシ化合物1モル当たり、好ましくは0.1μモル以上、更に好ましくは0.5μモル以上、特に好ましくは0.7μモル以上とする。また、上限としては、好ましくは20μモル、更に好ましくは10μモル、特に好ましくは3μモル、最も好ましくは2.0μモルである。
【0037】
触媒の使用量が少なすぎると、所望の分子量のポリカーボネート樹脂(A)を製造するのに必要な重合活性が得られず、充分な破壊エネルギーが得られない可能性がある。一方、触媒の使用量が多すぎると、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相が悪化するだ
けでなく、副生成物が発生したりして流動性の低下やゲルの発生が多くなり、脆性破壊の起因となる場合があり、目標とする品質のポリカーボネート樹脂(A)の製造が困難になる可能性がある。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、触媒の金属の使用量は、ポリカーボネート樹脂製造に用いられる触媒に由来して熱可塑性樹脂組成物中に含まれるものである。したがって、熱可塑性樹脂組成物中の触媒の金属の使用量は、上記規定する範囲と同じ使用量である。
【0038】
重合反応の形式は、公知の形式を用いることができ、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
また、本発明に使用するポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には、異物の混入を防止するため、フィルターを設置することが望ましい。フィルターの設置位置は押出機の下流側が好ましく、フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、99%除去の濾過精度として通常100μm以下が好ましい。特に、フィルム用途等で微少な異物の混入を嫌う場合は、40μm以下が好ましく、さらには10μm以下が好ましい。
【0039】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の押出は、押出後の異物混入を防止するために、好ましくはJIS B 9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で実施することが望ましい。
また、押出されたポリカーボネート樹脂(A)を冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが望ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10μm〜0.45μmであることが好ましい。
【0040】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、通常0.30dL/g以上が好ましく、0.35dL/g以上がより好ましい。還元粘度の上限は、通常1.20dL/g以下が好ましく、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度が低すぎると樹脂組成物としたときの靱性が小さい可能性があり、還元粘度が大きすぎると、電気・電子機器部品や自動車内外装部品を成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。また、成形温度を適正以上に高くしなければならず、色調が悪化する場合がある。
尚、ポリカーボネート樹脂の還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート樹脂濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。
【0041】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は、90℃以上145℃以下が好ましく、100℃以上135℃以下がより好ましく、特に110℃以上125℃以下が好ましい。ガラス転移温度が90℃未満では耐熱性が不足し、145℃以上では成形時に流動性が不足し、樹脂組成物が製品の末端まで充填されなかったり、ウエルド部での強度が低下したりすることがある。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の全光線透過率およびヘイズ(Haze)は、以下の方法により測定することができる。
【0042】
(1)ペレット製造
3つのベント口および注水設備を供えた二軸押出機に連続的に溶融状態のポリカーボネート樹脂を供給し、該ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、酸化防止剤としてイルガノックス1010(BASF・ジャパン株式会社製、ペンタエリスリトール−テトラ
キス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])を0.1質量部、アデカスタブ2112(株式会社ADEKA製、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)を0.05質量部および離型剤としてユニスターE−275(日油株式会社製)0.3質量部を連続的に添加するとともに、二軸押出機に具備された各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を減圧脱揮した後、ペレタイザーによりペレット化を行う。
【0043】
(2)射出成形
二軸押出機で混練したペレットについて、80℃で4時間予備乾燥したペレットを日本製鋼所製J75EII型射出成形機で、シリンダー温度230℃、成形サイクル45秒、金型温度60℃で、60mm×60mm×3mmtの平板を成形する。
【0044】
(2)ヘイズ(Haze)および全光線透過率測定
日本電色工業社製ヘイズメーターNDH2000を使用し、D65光源にて上記試験片のヘイズ(Haze(%))および全光線透過率(%)を測定する。 本発明のポリカーボネート樹脂(A)の全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、さらに88%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。この光線透過率が上記下限よりも高いと、熱可塑性樹脂組成物としたときの全光線透過率が高くなる。この光線透過率の測定方法の詳細は実施例の項で記載する。
【0045】
本発明のポリカーボネート樹脂(A)のJIS K7105に準拠したヘイズ(Haze)が、通常2以下、好ましくは1.5以下、最も好ましくは1以下である。ヘイズ(Haze)が上記範囲であれば、熱可塑性樹脂組成物としたときに高い全光線透過率と高いヘイズ(Haze)を両立することができる。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、ポリカーボネート樹脂(A)として、1種を単独で用いてもよく、他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の種類や共重合割合、物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0046】
<アクリル酸エステル・スチレン共重合体>
[3]光拡散剤
本発明の樹脂組成物は、光拡散剤としてアクリル酸エステル・スチレン共重合体を含有する。このように光拡散剤としてアクリル酸エステル・スチレン共重合体を含有することにより、本発明の樹脂組成物、及びそれからなる成形体の光拡散性および透明性を高めることができる。
【0047】
アクリル酸エステル・スチレン共重合体は、アクリルエステル系モノマーとスチレン系モノマーとを共重合して得られる微粒子であって、例えば、アクリルエステル系モノマーとスチレン系モノマーとを懸濁重合法等で重合した微粒子であり、架橋剤を用いて架橋しているものが好ましい。アクリルエステル系モノマーとしては、たとえば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリレート系モノマー、メチルアクリレート、エチルアクリレート等のアクリレート系モノマーやアクリルアミド等をその代表例として例示でき、スチレン系モノマーとしてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等をその代表例として例示できる。またこれらモノマーの共重合にあたっては、これらを主成分として、必要に応じて他のモノマーを共重合したものであっても良い。また、架橋剤としては、一般に使用されるものが挙げられるが、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオール、トリメチルプロパントリメタクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート等の多官能性モノマーを用いることが出来る。
【0048】
アクリル酸エステル・スチレン共重合体の個数平均粒子径は1〜20μm、好ましくは
1.5〜18μm、さらに好ましくは2〜16μm、さらに好ましくは4〜14μm、最も好ましくは6〜12μmである。粒子径が上記範囲であれば、光拡散性および透明性が充分であり、光源が透けて見えることが抑制され、添加量に対する拡散効果が良好であり、またLED光源を用いた場合などに、ぎらつきが防止され、視認性に優れる。
【0049】
アクリル酸エステル・スチレン共重合体の個数平均粒子径は以下の方法によって、測定することができる。
つまり、測定器として、レーザー粒子測定器日機装社製MICROTRAC MT−3000を用いて、測定することができる。
また、該アクリル酸エステル・スチレン共重合体の屈折率は、アクリルエステル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合比を99:1〜1:99の範囲で変化させることによって、1.493〜1.590の範囲で調整できる。ただし、スチレン系モノマーの共重合比が高くなりすぎると、耐光性が低下して黄色味を帯びてしまい、逆にアクリルエステル系モノマーの共重合比が高くなりすぎると、微粒子と芳香族ポリカーボネートとの屈折率の差が開きすぎて、LED光源のぎらつきが目立ち、視認性が低い。従って、アクリル酸エステル・スチレン共重合体の屈折率は、好ましくは1.50〜1.58であり、より好ましくは1.51〜1.57であり、更に好ましくは1.52〜1.56のものを使用する。
【0050】
このような屈折率の微粒子を得るために、アクリルエステル系モノマーとスチレン系モノマーの共重合比を調整する必要がある。調整比率は、使用モノマーにより異なるが、アクリルエステル系モノマーを多く使用すると屈折率は低い方になり、スチレン系モノマーを多く使用すると屈折率が高い方になる。例えば、アクリルエステル系モノマーとしてメチルメタクリレートを使用し、スチレン系モノマーとしてスチレンを使用した場合、屈折率を約1.52に調整する場合はアクリルエステル系モノマーとスチレン系モノマーの比を約7:3、屈折率を約1.56に調整する場合は約3:7であり、通常はこの前後で調整すれば良い。
【0051】
光拡散剤としてのアクリル酸エステル・スチレン共重合体は、乳化重合法により合成可能であり、また市販品も利用可能である。
本発明において使用可能なアクリルエステル酸エステル・スチレン共重合体は、市場より入手可能なものを用いても良い。このような市販品の例としては、例えば、ガンツ化成(株)より、ガンツパール、又はスタフィロイドの商品名で市販されている、GBSシリーズ、あるいはGSMシリーズから、本発明で規定する物性に適合するものが挙げられる。
【0052】
より具体的には、ガンツパール GSM−0853S、ガンツパール GSM−0855S、GSM−0851S、GSM−0858S、GSM−1050Sなどが挙げられる。
なお、光拡散剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、2種以上を混合した場合は、それらを混合した場合に測定された個数平均粒子径が上記のものであれば良い。
【0053】
本発明の光拡散性樹脂組成物における光拡散剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂およびアクリル酸エステル・スチレン共重合体の合計量を100重量部としたときに、アクリル酸エステル・スチレン共重合体の含有量が0.1〜5重量部であることが好ましく、0.25〜4重量部であることがより好ましく、0.5〜3重量部であることが更に好ましい。光拡散剤の含有量が、上記の範囲であれば、樹脂組成物からなる成形体が充分な光拡散性を有し、照明器具部材、拡散板等として使用した場合に光源が透けて見える可能性が抑制される。また、本発明の成形体が良好な光線透過率を有し、照明器具部材、拡散板等
として使用した場合に輝度が過度に低くなる可能性が抑制される。
【0054】
<添加剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、軋み音発生の抑制効果を維持できる範囲において、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、中和剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、充填剤等を添加することも出来る。
【0055】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては樹脂に使用される一般的な酸化防止剤が使用できるが、酸化安定性、熱安定性、漆黒性等の観点から、ホスファイト系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、およびフェノール系酸化防止剤が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、酸化防止剤を添加する場合、その添加量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、通常0.001質量部以上が好ましく、より好ましくは0.002質量部以上、更に好ましくは0.005質量部以上であり、通常5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
酸化防止剤の添加量が5質量部より多いと、成形時、金型を汚染し、優れた表面外観の成形品が得られないことがある。一方、0.001質量部未満であると、耐候試験に対する十分な改良効果が得られない傾向がある。
【0056】
<ホスファイト系酸化防止剤>
ホスファイト系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
これらの中でも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく使用される。
これらの化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
<イオウ系酸化防止剤>
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)等が挙げられる。
これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート
)が好ましい。
これらの化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
<フェノール系酸化防止剤>
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール等の化合物が挙げられる。
【0059】
これらの化合物の中でも、炭素数5以上のアルキル基によって1つ以上置換された芳香族モノヒドロキシ化合物が好ましく、具体的には、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が好ましく、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が更に好ましい。
これらの化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
(光安定剤)
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられ、その分子量は、1000以下が好ましく、900以下がより好ましい。分子量が1000を超えると、成形品としたときに耐候性が十分得られない可能性がある。また分子量は300以上が好ましく、400以上がより好ましい。分子量が300未満では、耐熱性に乏しく、成形時に金型を汚染し、優れた表面外観の成形品が得られないことがある。
さらに、ピペリジン構造を有する化合物が好ましい。ここで規定するピペリジン構造とは、飽和6員環のアミン構造となっていればよく、ピペリジン構造の一部が置換基により置換されているものも含む。置換基としては、炭素数4以下のアルキル基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、特に、ピペリジン構造を複数有する化合物が好ましく、それら複数のピペリジン構造がエステル構造により連結されている化合物が好ましい。
【0061】
そのような光安定剤としては、4−ピペリジノール,2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−カルボン酸)1,2,3,4−ブタンテトライル、2,2,6,6−テトラメチル−ピレリジノールとトリデシルアルコールと1,
2,3,4−ブタンテトラカルボン酸の縮合物、2,2,6,6−テトラメチル−ピレリジノールとメタノールと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸の縮合物、ビス(1,2,3,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、1−[2−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4,4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミンポリマーと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−ジエタノールとの縮合物、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンと2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジンとの縮合物、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの縮合物等が挙げられる。
【0062】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に光安定剤を添加する場合、その添加量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上5質量部以下であり、好ましくは0.005質量部以上3質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上1質量部以下である。 光安定剤の添加量が5質量部より多いと、着色する傾向にあり、着色剤を添加したとしても、例えば深みと清澄感のある漆黒を得難い。一方、0.001質量部未満であると、自動車内外装品としたときに耐候性が十分得られない可能性がある。
【0063】
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記成分を所定の割合で同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。
【0064】
<成形品>
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形品を成形する際、任意の成形法を用いることができるが、射出成形、射出圧縮、射出プレス成形が好適に用いられる。その際に用いるランナーも、通常のコールドランナー方式だけでなく、ホットランナー方式を用いることも可能である。また、インサート成形、インモールドコーティング成形、二色成形、サンドイッチ成形等も可能である。さらに意匠性を得るために、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形を用いることも可能である。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。以下において、光拡散性樹脂組成物の特性評価は次の方法により行った。
【0066】
(1)射出成形
二軸押出機で混練したペレットについて、80℃で4時間予備乾燥したペレットを日本
製鋼所製J75EII型射出成形機で、シリンダー温度230℃、成形サイクル45秒、金型温度60℃で、60mm×60mm×3mmtの平板を成形した。
(2)ヘイズ(Haze)および全光線透過率測定
日本電色工業社製ヘイズメーターNDH2000を使用し、D65光源にて上記試験片のヘイズ(HAZE(%))および全光線透過率(%)を測定した。
(3)総合判定
ヘイズ90%以上、かつ全光線透過率90%以上の場合を合格、それ以外を不合格とした。
また、以下の実施例及び比較例で用いた樹脂は、以下の製造例に記載の方法で製造されたポリカーボネート樹脂を用い、添加剤は下記の市販品を用いた。
【0067】
<ポリカーボネート樹脂>
[製造例1:ポリカーボネート樹脂(A)−1の製造]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、イソソルビド(ISB)と1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたジフェニルカーボネート(DPC)および酢酸カルシウム1水和物を、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物のモル比率を0.7/0.3/1.00/1.3×10−6になるように仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005体積%〜0.001体積%)。続いて熱媒で内容物の加温を行った。内温が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温が100℃になるように制御しながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始し、40分で内温を210℃にした。内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持するように制御すると同時に、減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに60分間保持した。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を、還流冷却器に導いた。還流冷却器で凝縮した成分を重合反応装置に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の温水を冷媒として用いた凝縮器に導いて回収した。
【0068】
上記重合反応装置でオリゴマー化させた内容物を、一旦大気圧にまで復圧させた後、撹拌翼および上記同様に制御された還流冷却器を具備した別の重合反応装置に移し、昇温および減圧を開始して、60分で内温220℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて内温228℃、圧力133Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で復圧し、重合反応装置出口より溶融状態のポリカーボネート樹脂を得た。
更に3つのベント口および注水設備を供えた二軸押出機に連続的に前記溶融状態のポリカーボネート樹脂を供給し、該ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、酸化防止剤としてイルガノックス1010(BASF・ジャパン株式会社製、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])を0.1質量部、アデカスタブ2112(株式会社ADEKA製、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)を0.05質量部および離型剤としてユニスターE−275(日油株式会社製)0.3質量部を連続的に添加するとともに、二軸押出機に具備された各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を減圧脱揮した後、ペレタイザーによりペレット化を行い、ポリカーボネート樹脂(A)−1を得た。ポリカーボネート樹脂(A)−1の還元粘度ηsp/cは、0.44dL/gであった。
また、以下の実施例及び比較例で用いた化合物の略号は次の通りである。
【0069】
<拡散剤>
GM−0853S:アクリル酸エステル・スチレン共重合体、屈折率:1.53、個数平均粒子径:8μm
(アイカ工業製、商品名ガンツパール GM−0853S)
GM−0855S:アクリル酸エステル・スチレン共重合体、屈折率:1.55、個数平
均粒子径:8μm
(アイカ工業製、商品名ガンツパール GM−0855S)
SI−045:ポリメチルシルセスキオキサン、屈折率:1.41、個数平均粒子径:4μm
(アイカ工業製、商品名ガンツパール SI−045)
GM−0806S:ポリアクリル酸エステル、屈折率:1.49、個数平均粒子径:8μm
(アイカ工業製、商品名ガンツパール GM−0855S)
GS−1105:ポリスチレン、屈折率:1.59、個数平均粒子径:11μm
(アイカ工業製、商品名ガンツパール GS−1105)
【0070】
<耐光安定剤>
TINUVIN329:ベンゾトリアゾール系UVA(BASF社製、製品名”TINUVIN”(登録商標)329)
TINUVIN770DF:HALS(BASF社製、製品名”TINUVIN”(登録商標)770DF)
【0071】
[実施例1]
上記の表1に示した組成(重量部)となるようにポリカーボネート樹脂(A)−1と拡散剤GM−0853S、耐光安定剤としてTinuvin329、Tinuvin770DFとを2つのベント口を有する日本製鋼所社製2軸押出機(LABOTEX30HSS−32)を用いて、押出機出口の樹脂温度が250℃になるようにストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化した。この際、ベント口は真空ポンプに連結し、ベント口での圧力が500Paになるように制御した。熱可塑性樹脂組成物の評価を行い、結果を表1に示した。
【0072】
[実施例2]
拡散剤としてGM−0853SをGM−0855に変更した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
[比較例1]
拡散剤としてGM−0853SをSI−045に変更した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0073】
[比較例2]
拡散剤としてGM−0853SをGM−0806Sに変更した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
[比較例3]
拡散剤としてGM−0853SをGS−1105に変更した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
[比較例4]
拡散剤を無添加に変更した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0074】
【表1】