特許第6623760号(P6623760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623760
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】透明粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/20 20180101AFI20191216BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20191216BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20191216BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20191216BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20191216BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20191216BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   C09J7/20
   C09J7/38
   C09J201/00
   C09J133/04
   C08F297/04
   B32B27/00 M
   B32B27/30 A
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-559938(P2015-559938)
(86)(22)【出願日】2015年1月27日
(86)【国際出願番号】JP2015052123
(87)【国際公開番号】WO2015115397
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2017年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-14104(P2014-14104)
(32)【優先日】2014年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】小原 禎二
(72)【発明者】
【氏名】石黒 淳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大輔
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−013378(JP,A)
【文献】 特開2003−342542(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/132115(WO,A1)
【文献】 特開2013−067737(JP,A)
【文献】 特開2013−227427(JP,A)
【文献】 特表2011−523668(JP,A)
【文献】 特開2002−105151(JP,A)
【文献】 特開2006−283010(JP,A)
【文献】 特表2011−503342(JP,A)
【文献】 国際公開第01/081957(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を90重量%以上含有する重合体ブロック[B]の両端に、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする重合体ブロック[A]が結合してなり、
全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が40:60〜80:20であるトリブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したトリブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムの両面に、透明粘着剤[E]からなる層が形成されていることを特徴とする透明粘着シート。
【請求項2】
透明粘着剤[E]からなる層が、炭素数が4以上〜18以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル30重量%以上を含むモノマー成分を重合することにより得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤により形成されている請求項1記載の透明粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの光学部材(被着体)を貼着固定する際に用いられる両面粘着性を有する、シートの位相差が小さく光学特性に優れた透明粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に使用される各種光学部材の貼合せには、透明粘着シートが用いられる。
例えば、タッチパネルを備えた液晶表示装置では、外部からの衝撃が表示パネルやタッチパネルに伝わらないように、これらのパネルを保護するために、アクリル板やガラス板等の保護パネルが所定の間隙をおいて配置されている。しかし、この間隙が空気層である場合は、保護パネルを構成する材料と空気層との屈折率差に起因して光の反射損失が大きく、良好な視認性が得られない。そのため、この間隙を透明粘着シートにより埋めて、視認性を向上させると共に、保護パネルの強度を高め、衝撃で破損し破片が飛散するのを防止している。
【0003】
また、実際の製造工程においては、保護パネルを積層する際において、貼り合わせ不良が生じ光学特性の劣るものとなった場合は、貼り合わせ不良となったパネルを剥がし、再利用するのが一般的である。
この観点から、透明粘着シートには、パネル等の部材から粘着シートを剥がし、それらを再度使用するリワーク性が求められる。特許文献1〜4に記載されるように、粘着剤を残り難くするために、透明粘着シートとして、透明フィルムを基材としてその両面に粘着剤層が設けられた多層構造のものが好ましく使用されている。
また、透明フィルム基材としては、ポリエステル、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリカーボネート、環状オレフィン系ポリマー等のプラスチック材料が開示されている。
これらの透明フィルム基材の中でも、光学的に等方性であるものが望ましく、位相差では10nm程度以下であるものが好ましく、0nmであることがより好ましい。
しかしながら、工業的に有利な溶融押出し成形法により、位相差の小さい透明フィルムを生産することは必ずしも容易とはいえない。
【0004】
芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする重合体ブロックと、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を含む重合体ブロックからなるブロック共重合体の芳香環及びジエン由来の二重結合を水素化したブロック共重合体水素化物は、透明性、低複屈折性、耐熱性、低吸湿性等に優れるため、押出し成形によってフィルム成形され、液晶表示装置の偏光フィルムや位相差フィルム等の光学フィルムに使用できることは既に開示されている(例えば、特許文献5〜7)。溶融押出し成形法により位相差の小さいフィルムを成形するには、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位の含有率を高めることが有効であるが、反面、硬く脆くなるため機械的強度が低下するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−342542号公報
【特許文献2】特開2009−185124号公報
【特許文献3】特開2012−193264号公報
【特許文献4】特開2013−227427号公報
【特許文献5】特開2002−105151号公報(US2003207983A1)
【特許文献6】国際公開WO2009/067290号(US2010290117A1)
【特許文献7】国際公開WO2009/137278号(US2011038045A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、2つの光学部材(被着体)を貼着固定する際に用いられる両面粘着性を有する透明粘着シートとして、透明性、低複屈折性に優れた光学的性質及び粘着性とリワーク性を有する透明粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のブロック共重合体水素化物からなるシートの両面に特定の高分子粘着剤を積層して多層の粘着シートとすることにより、光学特性及び粘着性とリワーク性の良好な透明粘着シートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が40:60〜85:15であるブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムの両面に、透明粘着剤[E]からなる層が形成されていることを特徴とする透明粘着シートが提供される。
また、この透明粘着シートは、透明粘着剤[E]からなる層が、炭素数が4以上〜18以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル30重量%以上を含むモノマー成分を重合することにより得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤により形成されているものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、透明性、低複屈折性に優れた光学的性質及びリワーク性を有する、2つの光学部材(被着体)を貼着固定する際に用いられる両面粘着性を有する透明粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の透明粘着シートは、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化した特定のブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムの両面に、透明粘着剤層が形成されてなる透明粘着シートである。
【0011】
1.ブロック共重合体[C]
本発明に係るブロック共重合体[C]は、ブロック共重合体水素化物[D]の前駆体であり、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と少なくとも1つの重合体ブロック[B]を含有する高分子である。
【0012】
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とするものである。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位が上記範囲にあると、本発明の多層フィルムは耐熱性が高くなるため好ましい。
【0013】
また、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位以外の成分を含有していてもよい。芳香族ビニル化合物由来の構造単位以外の成分としては、鎖状共役ジエン由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位を含むことができる。その含有量は通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
複数の重合体ブロック[A]は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていても良い。
【0014】
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とするものである。重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位が上記範囲にあると、本発明の多層フィルムは柔軟性が良好になるため好ましい。
【0015】
また、重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分を含有していてもよい。鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分としては、芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位を含むことができる。その含有量は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。 重合体ブロック[B]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量が増加すると、フィルムの複屈折発現性は低下するが、低温での柔軟性が低下し易くなる。
重合体ブロック[B]が複数有る場合には、重合体ブロック[B]は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていても良い。
【0016】
芳香族ビニル化合物としては、具体的には、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン等の、置換基としてアルキル基を有するスチレン類;4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン等の、置換基としてハロゲン原子を有するスチレン類;4−フェニルスチレン等の、置換基としてアリール基を有するスチレン類;等が挙げられる。これらの中でも、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく、工業的な入手の容易さからスチレンが特に好ましい。
【0017】
鎖状共役ジエン系化合物としては、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく、工業的な入手の容易さから1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0018】
その他のビニル系化合物としては、鎖状ビニル化合物、環状ビニル化合物、不飽和の環状酸無水物、不飽和イミド化合物等が挙げられる。これらの化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、又はハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の環状オレフィン;等が挙げられる。これらの中でも、極性基を含有しないものが吸湿性の面で好ましく、鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
【0019】
ブロック共重合体[C]中の重合体ブロック[A]の数は、通常5個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下であり、ブロック[B]の数は、通常4個以下、好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下である。重合体ブロック[A]及び/又は重合体ブロック[B]が複数存在する際、重合体ブロック[A]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(A1)及びMw(A2)とし、重合体ブロック[B]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(B1)及びMw(B2)とした時、該Mw(A1)とMw(A2)との比(Mw(A1)/Mw(A2))、及び、該Mw(B1)とMw(B2)との比(Mw(B1)/Mw(B2))は、それぞれ2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下である。
【0020】
ブロック共重合体[C]のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでも良いが、鎖状型ブロックであるものが、機械的強度に優れ好ましい。ブロック共重合体[C]の最も好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体、及び、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体である。
【0021】
ブロック共重合体[C]中の、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとした時に、wAとwBとの比(wA:wB)は、40:60〜85:15、好ましくは50:50〜80:20、より好ましくは60:40〜75:25である。wAが高過ぎる場合は、本発明で使用するブロック共重合体水素化物[D]の耐熱性は高く、押出しフィルムの位相差は小さくなるが、柔軟性が低く、硬く脆くなるためリワーク時にフィルムが破断し易くなる。また、wAが低過ぎる場合は、光学用フィルムとして押出しフィルムの位相差が大きくなり過ぎ、また耐熱性も不十分となるおそれがある。
【0022】
ブロック共重合体[C]の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000〜200,000、好ましくは50,000〜150,000、より好ましくは60,000〜100,000である。また、ブロック共重合体[C]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。
【0023】
ブロック共重合体[C]の製造方法は、特に限定されない。例えば、リビングアニオン重合等の方法により、芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を交互に重合させる方法;芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を順に重合させた後、重合体ブロック[B]の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせる方法;等が挙げられる。
【0024】
2.ブロック共重合体水素化物[D]
本発明に係るブロック共重合体水素化物[D]は、上記のブロック共重合体[C]の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化して得られるものである。その水素化率は通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、成形したフィルムの耐光性、耐熱性が良好である。ブロック共重合体水素化物[D]の水素化率は、H−NMRによる測定において求めることができる。
【0025】
不飽和結合の水素化方法や反応形態等は特に限定されず、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、国際公開2011/096389号、国際公開2012/043708号等に記載された方法を挙げることができる。
【0026】
ブロック共重合体水素化物[D]は、ブロック共重合体水素化物[D]を含む反応溶液から水素化触媒及び/又は重合触媒を除去した後、反応溶液から回収される。回収されたブロック共重合体水素化物[D]の形態は限定されるものではないが、通常はペレット形状にして、その後のフィルムの成形加工に供することができる。
【0027】
ブロック共重合体水素化物[D]の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000〜200,000、好ましくは50,000〜150,000、より好ましくは60,000〜100,000である。また、ブロック共重合体水素化物[D]の分子量分布(Mw/Mn)を、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下にする。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、成形したフィルムの耐熱性や機械的強度が維持される。
【0028】
ブロック共重合体水素化物[D]には、耐熱安定性、耐光安定性、加工性等を高めるために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤等が配合されてもよい。これらの配合剤は、単独でも、2種以上併用して配合してもよい。これらの配合剤の配合量は、ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。
【0029】
3.透明粘着剤[E]
本発明の透明粘着シートは、ブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムの両面に、透明粘着剤[E]からなる層が形成されたものである。透明粘着剤[E]からなる層を形成する粘着剤としては、例えばタッチパネルを備えた液晶表示装置では、表示装置の視認性を低下させない透明性を有するものが必要とされる。透明粘着剤[E]の具体例としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、イソブチレンと無水マレイン酸との共重合体系粘着剤等の粘着剤が挙げられる。これらの中でも、透明性、低複屈折性の観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0030】
アクリル系粘着剤としては、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主モノマー成分とするアクリル系ポリマーを主成分として構成されているアクリル系粘着剤が好ましい。
【0031】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、[4.3.12,5.0]トリシクロデカン−3−イル(メタ)アクリレート、[4.3.12,5.0]トリシクロデカー7−エン−3−イルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0032】
これらの(メタ)アクリル酸エステルの中でも、ブロック共重合体水素化物[D]のフィルムに対して良好な粘着性を付与できるアクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等の炭素数が4以上〜18以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを使用することが好ましい。炭素数が4以上〜18以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、モノマー成分全量に対して、通常30重量%以上であり、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。
【0033】
また、本発明の基材として使用するブロック共重合体水素化物[D]のフィルムに対してより良好な粘着性を付与するために、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等のエステル末端に5員環以上の環状構造を含有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを使用することができる。エステル末端に5員環以上の環状構造を含有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの割合は、モノマー成分全量に対して、通常70重量%以下、好ましくは10重量%〜60重量%、より好ましくは20重量%〜50重量%である。
【0034】
上記モノマー成分は、更に、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等のカルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー等のモノマーから選ばれる少なくとも1つの官能基含有モノマーを含むことができる。これらの官能基含有モノマーの割合は、モノマー成分全量に対して、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0035】
アクリル系ポリマーを得るための重合方法としては、アゾ系化合物や過酸化物等のラジカル重合開始剤を用いて行う溶液重合方法;エマルジョン重合方法や塊状重合方法;光開始剤を用いて光や放射線を照射して行う重合方法;等を採用することができる。
本発明では、ラジカル重合開始剤を使用するラジカル重合方法によるアクリル系ポリマーを好適に採用することができる。
【0036】
ラジカル重合では、通常のラジカル重合に用いられる重合開始剤を使用できる。重合開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエート等の過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物等が用いられる。ラジカル重合において、ラジカル重合開始剤の使用量は、アクリル系モノマーの総量100重量部に対して、0.005〜1重量部程度、好ましくは0.1〜0.5重量部程度である。
【0037】
本発明では、前記モノマー成分を用いて重合させて得られたアクリル系ポリマーはそのまま乾燥させて用いることができる。また、アクリル系ポリマーを架橋剤により架橋させて用いることも可能である。アクリル系ポリマーにカルボキシル基、ヒドロキシル基等の官能基を導入した場合は、多官能性イソシアネート化合物、多官能性エポキシ化合物、多官能性メラミン化合物等の架橋剤を配合して使用することができる。
【0038】
透明粘着剤[E]からなる層を形成するアクリル系粘着剤には、アクリル系ポリマーとともに、耐熱安定性、耐光安定性等を高めるために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が配合されてもよい。これらの配合剤は、単独でも、2種以上併用して配合してもよい。これらの配合剤の配合量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。
【0039】
本発明に使用する透明粘着剤[E]からなる層は、各種光学部材に対する粘着性と、リワークのために光学部材からの剥離性を有するものである。各種光学部材に対する粘着性は、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」と略記する)、トリアセチルセルロースフィルム(以下、「TACフィルム」と略記する)等に対する180°ピール剥離強度[剥離速度300mm/分、23℃]が、通常1〜10N/cm、好ましくは2〜8N/cm、より好ましくは3〜6N/cmとなるようにすることが望ましい。
【0040】
4.透明粘着シート
本発明の透明粘着シートは、ブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムの両面に透明粘着剤[E]からなる層が形成されている。これにより、例えば、得られた透明粘着シートを介してタッチパネルを表示装置の表示面に貼着固定した後、透明粘着シートをタッチパネルや表示装置の表示面から剥離させたりすることができ、タッチパネルや表示装置を再度利用することが可能となる。
【0041】
ブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムは、透明粘着シートの引張り強度を維持するためのフィルムであり、透明粘着シートを、例えば、タッチパネルや表示装置の表面から剥離する際に、粘着剤[E]からなる層が破断してタッチパネルや表示装置の表面に残らないようにするものである。また、液晶表示装置では表示機能を損なわないために透明で位相差が小さいことが望まれる。ブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムの面内位相差Reは、通常10nm以下、好ましくは3nm以下、より好ましくは1nm以下である。
【0042】
ブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムの厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜50μm、より好ましくは15〜30μmである。ブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムの厚さをこの範囲にすることにより、被着体から剥離する際に透明粘着シートが破断することを抑制でき、透明粘着シート全体の厚さを抑制することができるため好ましい。
【0043】
透明粘着剤[E]からなる層は、例えば、タッチパネルと保護カバーの間やタッチパネルと表示装置の間の空隙を充填するための粘着剤層であり、その厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜50μm、好ましくは15〜30μmである。透明粘着剤[E]からなる層の厚さをこの範囲にすることにより、被着体との間に空隙を残さず充填することができるため好ましい。
【0044】
本発明に使用するブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムは、製造方法に特に制限は無く、公知の溶融押出し成形法等で製造することができる。フィルムの成形条件は、成形方法により適宜選択される。例えば、溶融押出し成形法による場合は、樹脂温度は、通常180〜260℃、好ましくは190〜250℃、より好ましくは200〜240℃の範囲で適宜選択される。樹脂温度が低過ぎる場合は、流動性が悪化し、成形されたフィルムの面内位相差Reが大きくなり過ぎたり、フィルムの表面平滑性が低下し、また、フィルムの押出し速度が上げられず工業生産性に劣る傾向がある。樹脂温度が高過ぎる場合は、面内位相差Reは小さくできるが、ブロック共重合体水素化物[D]の熱安定性が不良となり、得られるフィルムの機械的強度が低下する場合がある。
【0045】
本発明においては、ブロック共重合体水素化物[D]を押出機内で溶融して、当該押出機に取り付けられたダイスから押出す前に、溶融状態の樹脂をギヤーポンプやフィルターを通すことが好ましい。ギヤーポンプを使用することにより、樹脂の押出量の均一性を向上させ、厚さむらを低減させることができる。また、フィルターを使用することにより、樹脂中の異物を除去し、欠陥の無い外観に優れた光学用に適した透明フィルムを得ることができる。
【0046】
本発明の透明粘着シートの製造方法は、特に制限は無い。例えば、ブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムへ粘着剤[E]を溶液で塗布し、乾燥して溶剤を除去する方法; 離形用フィルムのPETフィルムへ粘着剤[E]を溶液で塗布し、乾燥して溶剤を除去した後、ブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルム上に加熱ラミネートする方法;等が挙げられる。
【0047】
粘着剤[E]を溶液で基材フィルム上に塗布する方法としては、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等を用いる方法が挙げられる。ブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムの両面に塗布する粘着剤[E]は、互いに同一であっても異なっても良い。表裏で異なる粘着剤[E]からなる層を形成することにより、被着体からの剥離性を表裏で変えることもできる。粘着剤[E]を溶液で塗布する方法によると、粘着剤[E]からなる層の面内位相差Reをほぼゼロにすることができるため好ましい。
【0048】
本発明の透明粘着シートは、ブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムの両面に、透明粘着剤[E]からなる層が形成されたものである。本発明の透明粘着シートは、取り扱いを容易にするために、透明粘着シートの片面又は両面に、例えば、離形性のPETフィルムやポリオレフィンフィルム等を重ねて保存することができる。
【0049】
本発明の透明粘着シートは、タッチパネルと表示装置の貼り合わせやタッチパネルと透明カバーの貼り合せの他、合せガラスの貼り合せ、薄膜ガラスの貼り合せ、薄膜ガラスの液晶表示装置への貼り合せ、照明装置の透明樹脂基板への薄膜ガラスの貼り合せ等に使用することもできる。
【実施例】
【0050】
次に、本発明を、実施例を示しながらさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
【0051】
本実施例における評価は、以下の方法によって行う。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体及びブロック共重合体水素化物の分子量は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として38℃において測定した。測定装置としては、東ソー社製、HLC8020GPCを用いた。
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物[D]の主鎖、側鎖及び芳香環の水素化率は、H−NMRスペクトルを測定して算出した。
(3)透明粘着シートの透明性
透明粘着シートを厚さ0.7mm、長さ50mm、幅50mmの2枚の白板ガラスの間に挟み、真空ラミネータを使用して、温度50℃で、5分間真空脱気した後、10分間真空加圧成形して白板ガラスで挟まれた試験片を作製した。この試験片を、紫外可視分光光度計(製品名「V−570」、日本分光社製)を使用して、波長470nm、550nm及び650nmでの光線透過率を測定した。
【0052】
(4)透明粘着シートの面内位相差(Re)
透明粘着シートを厚さ0.5mm、長さ100mm、幅100mmの2枚の白板ガラスの間に挟み、真空ラミネータを使用して脱気しながら重ね合わせた後、オートクレーブに移設して、温度50℃、圧力0.9MPaの条件で20分処理して、白板ガラスで挟まれた試験片を作製した。自動複屈折計(製品名「KOBLA−21ADH」、王子計測機器社製)を使用して、波長550nmにおける、試験片の面内位相差Reを測定し、別途測定した白板ガラスの面内位相差Reとの差を透明粘着シートの面内位相差Reとして算出した。
(5)透明粘着シートの粘着性
透明粘着シートをPETフィルム(製品名「ルミラー(登録商標)S10」、厚さ100μm、東レ社製)に重ね合わせた後、オートクレーブに投入して、温度50℃、圧力0.9MPaの条件下で10分処理して貼り合せた。オートクレーブから取り出し、常温(25℃)にて120分間静置した後、幅20mm、長さ100mmに切断して剥離試験用の試験片を作製した。オートグラフ(製品名「AGS−10KNX」、島津製作所社製)を使用して、引張速度300mm/分で、透明粘着シートをPETフィルムから剥離させたときの180°ピール剥離強度を測定した。ピール剥離強度が3〜6N/cmの場合を「○」(良好)、1N/cm以上〜3N/cm未満の場合及び6N/mを超え〜10N/m以下の場合を「△」(適用可)、1N/cm未満及び10N/cmを超える場合を「×」(不良)として評価した。また、透明粘着シートのブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムが破断し、透明粘着シートが剥離できない場合も「×」(不良)として評価した。
(6)透明シートのリワーク性
透明粘着シートを介して、片面にITO膜を蒸着した、縦125cmm、横125mm、厚さ0.1mmのPETフィルムのITO膜面と、表面がトリアセチルセルロース(以降、「TAC」と略記する)保護フィルムである、縦12.5cm、横12.5cm、厚さ0.2mmの偏光フィルム(テックジャム社販売)とを重ね合わせた。次いで、このものを、オートクレーブに投入して、温度50℃、圧力0.9MPaの条件で10分処理して貼り合せた。オートクレーブから取り出し、常温(25℃)にて120分間静置した後、偏光フィルム及びITO蒸着PETフィルムと透明粘着シートを剥がした。偏光フィルム表面、ITO蒸着PETフィルム表面及び透明粘着シートを目視で観察し、偏光フィルム表面及びITO蒸着PETフィルム表面に粘着剤[E]が残っていない場合を「○」(良好)、粘着剤[E]の剥離残りがある場合を「×」(不良)として評価した。
【0053】
[参考例1]
ブロック共重合体水素化物[D1]
(ブロック共重合体[C1]の製造)
内部が充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン 550部、脱水スチレン 35.0部、及びn−ジブチルエーテル 0.475部を入れた。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウムの15重量%シクロヘキサン溶液 0.70部を加えて、重合反応を開始させた。その後、全容を攪拌しながら60℃で60分反応させた。この時点における、ガスクロマトグラフィーにより測定した重合転化率は99.5%であった。
次に、反応液に脱水イソプレン 30.0部を加え。そのまま30分攪拌を続けた。この時点での重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、脱水スチレンを35.0部加え、60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。
次いで、反応液にイソプロピルアルコール0.5部を加えて、反応を停止させた。得られたブロック共重合体[C1]の重量平均分子量(Mw)は61,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.05、wA:wB=70:30であった。
【0054】
(ブロック共重合体水素化物[D1]の製造)
次に、上記で得られた重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「E22U」、ニッケル担持量60%、日揮触媒化成社製)8.0部、及び脱水シクロヘキサン 100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。
水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D1]の重量平均分子量(Mw)は65,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0055】
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「Songnox1010」(登録商標)、コーヨ化学研究所社製)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にてろ過して、微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。連続して溶融ポリマーを、濃縮乾燥器に連結した孔径5μmのステンレス製焼結フィルターを備えたポリマーフィルター(富士フィルター社製)により、温度260℃でろ過した後、ダイから溶融ポリマーをストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりブロック共重合体水素化物[D1]のペレット95部を作製した。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D1]の重量平均分子量(Mw)は64,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.11、水素化率はほぼ100%であった。
【0056】
[参考例2]
ブロック共重合体水素化物[D2]
(ブロック共重合体[C2]の製造)
スチレンとイソプレンを5回に分け、スチレン 28.0部、イソプレン 9.0部、スチレン 26.0部、イソプレン 9.0部、及びスチレン 28.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウムの15重量%シクロヘキサン溶液を0.58部とする以外は参考例1と同様に重合反応を行い、反応を停止させた。
得られたブロック共重合体[C2]の重量平均分子量(Mw)は76,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.07、wA:wB=82:18であった。
【0057】
(ブロック共重合体水素化物[D2]の製造)
次に、上記重合体溶液を、参考例1と同様にして水素化反応を行った。
水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D2]の重量平均分子量(Mw)は80,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。
【0058】
水素化反応終了後、参考例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[D2]のペレット96部を作製した。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D2]の重量平均分子量(Mw)は80,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.13、水素化率は99.5%であった。
【0059】
[参考例3]
ブロック共重合体水素化物[D3]
(ブロック共重合体[C3]の製造)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン 25.0部、イソプレン 50.0部、スチレン 25.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウムの15重量%シクロヘキサン溶液を0.78部に変えて、重合を開始する以外は、参考例1と同様に重合反応を行い、反応を停止させた。
得られたブロック共重合体[C3]の重量平均分子量(Mw)は53,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=50:50であった。
【0060】
(ブロック共重合体水素化物[D3]の製造)
次に、上記重合体溶液を、参考例1と同様にして水素化反応を行った。
水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D3]の重量平均分子量(Mw)は56,400、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
【0061】
水素化反応終了後、参考例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[D3]のペレット95部を作製した。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D3]の重量平均分子量(Mw)は55,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.12、水素化率は99.5%であった。
【0062】
[参考例4]
ブロック共重合体水素化物[D4]
(ブロック共重合体[C4]の製造)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン 45.0部、イソプレン 10.0部、スチレン 45.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウムの15重量%シクロヘキサン溶液を0.58部とする以外は、参考例1と同様に重合反応を行い、反応を停止させた。
得られたブロック共重合体[C4]の重量平均分子量(Mw)は77,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.05、wA:wB=90:10であった。
【0063】
(ブロック共重合体水素化物[D4]の製造)
次に、上記重合体溶液を、参考例1と同様にして水素化反応を行った。
水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D4]の重量平均分子量(Mw)は81,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0064】
水素化反応終了後、参考例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[D4]のペレット92部を作製した。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D’4]の重量平均分子量(Mw)は80,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.18、水素化率はほぼ100%であった。
【0065】
[参考例5]
ブロック共重合体水素化物[D5]
(ブロック共重合体[C5]の製造)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン 15.0部、イソプレン 70.0部、スチレン 15.0部をこの順に加える以外は、参考例1と同様に重合反応を行い、反応を停止させた。
得られたブロック共重合体[C5]の重量平均分子量(Mw)は58,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=30:70であった。
【0066】
(ブロック共重合体水素化物[D5]の製造)
次に、上記重合体溶液を、参考例1と同様にして水素化反応を行った。
水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D5]の重量平均分子量(Mw)は62,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
【0067】
水素化反応終了後、参考例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[D5]のペレット90部を作製した。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D5]の重量平均分子量(Mw)は61,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.17、水素化率はほぼ100%であった。
【0068】
[参考例6]アクリル系粘着剤[E1]
内部が充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、酢酸エチル 150部、イソボルニルアクリレート 40.0部、2−エチルヘキシルアクリレート 58.0部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 2.0部、及び、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.1部を仕込み、温度55℃で10時間重合反応を行った。その後、反応液に酢酸エチル83部を加えて、重量平均分子量(Mw)82万のアクリル系ポリマーの溶液(ポリマー濃度:30重量%)を得た。
【0069】
次いで、得られたアクリル系ポリマー溶液に、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(製品名「コロネート(登録商標)L」、日本ポリウレタン工業社製)0.5部を配合してアクリル系粘着剤[E1]の溶液を調製した。
【0070】
[参考例7]アクリル系粘着剤[E2]
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの組成を、n−ブチルアクリレート 79.0部、メチルアクリレート 19.0部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 2.0部に変える以外は、参考例6と同様にして、重量平均分子量(Mw)70万のアクリル系ポリマーの溶液(ポリマー濃度:30重量%)を得た。
【0071】
次いで、得られたアクリル系ポリマー溶液に、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート0.5部を配合して、アクリル系粘着剤[E2]の溶液を調製した。
【0072】
[実施例1]
参考例1で得られたブロック共重合体水素化物[D1]を、20mmφのスクリューを備えた単軸押出し機を有するTダイ式フィルム成形機(Tダイ幅300mm)、及びキャストロールを備えたシート引取機を使用し、樹脂温度230℃、Tダイ温度230℃、キャストロール温度70℃の条件で押出し、厚さ50μm、幅230mmのフィルム[D1F]を作製した。
【0073】
得られたフィルム[D1F]の一方の面に、乾燥後の厚さが約25μmとなるように、参考例6で製造したアクリル系粘着剤[E1]の溶液をバーコーターにより塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して、粘着剤[E1]層を形成した。
粘着剤[E1]層の上に離型処理したPETフィルム(厚さ40μm)を貼り合せた後、さらにフィルム[D1F]のもう一方の面に、乾燥後の厚さが約25μmとなるように参考例6で製造したアクリル系粘着剤[E1]の溶液を、同様に塗布し、再度100℃で10分間加熱乾燥して、フィルム[D1F]の両面に粘着剤[E1]層が形成された透明粘着シート[E1/D1F/E1]を作製した。
【0074】
得られた溶融押出しフィルム[D1F]、透明粘着シート[E1/D1F/E1]を使用して、透明粘着シートの透明性、面内位相差Re、粘着性、リワーク性を評価した。
評価結果を表1に示した。
【0075】
[実施例2]
実施例1で作製したブロック共重合体水素化物[D1]のフィルム[D1F]の両面を、コロナ処理装置(出力300W、電極長240mm、ワーク電極間3.0mm、春日電機社製)を用いて、搬送速度4m/minの条件で放電処理したこと、及び、参考例7で作製したアクリル系粘着剤[E2]の溶液を使用すること以外は、実施例1と同様にして、フィルム[D1F]の両面に粘着剤[E2]層(厚さ25μm)を形成した透明粘着シート[E2/D1F/E2]を作製した。
得られた透明粘着シート[E2/D1F/E2]を使用して、透明粘着シートの透明性、面内位相差(Re)、粘着性、リワーク性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0076】
[実施例3]
参考例2で得られたブロック共重合体水素化物[D2]を使用し、樹脂温度240℃、Tダイ温度240℃、キャストロール温度80℃とする以外は、実施例1と同様にして、厚さ50μm、幅230mmのフィルム[D2F]を作製した。
【0077】
得られたフィルム[D2F]を使用して実施例2と同様にコロナ放電処理した後、参考例7で作成したアクリル系粘着剤[E2]の溶液を使用する以外は、実施例1と同様にして、フィルム[D2F]の両面に粘着剤[E2]層(厚さ25μm)を形成した透明粘着シート[E2/D2F/E2]を作製した。
得られた透明粘着シート[E2/D2F/E2]を使用して、透明粘着シートの透明性、面内位相差(Re)、粘着性、リワーク性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0078】
[実施例4]
参考例3で得られたブロック共重合体水素化物[D3]を使用し、樹脂温度220℃、Tダイ温度220℃、キャストロール温度50℃とする以外は、実施例1と同様にして、厚さ50μm、幅230mmのフィルム[D3F]を作製した。
【0079】
得られたフィルム[D3F]及び参考例6で作成したアクリル系粘着剤[E1]の溶液を使用する以外は実施例1と同様にして、フィルム[D3F]の両面に粘着剤[E1]層(厚さ25μm)を形成した透明粘着シート[E1/D3F/E1]を作製した。得られた透明粘着シート[E1/D3F/E1]を使用して、透明粘着シートの透明性、面内位相差(Re)、粘着性、リワーク性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0080】
[実施例5]
実施例4で得られたフィルム[D3F]を使用して実施例2と同様にコロナ放電処理した後、参考例7で作成したアクリル系粘着剤[E2]の溶液を使用する以外は、実施例1と同様にして、フィルム[D3F]の両面に粘着剤[E2]層(厚さ25μm)を形成した透明粘着シート[E2/D3F/E2]を作製した。
得られた透明粘着シート[E2/D3F/E2]を使用して、透明粘着シートの透明性、面内位相差(Re)、粘着性、リワーク性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0081】
[比較例1]
参考例4で得られたブロック共重合体水素化物[D4]を使用し、樹脂温度250℃、Tダイ温度250℃、キャストロール温度80℃とする以外は、実施例1と同様にして、厚さ50μm、幅230mmのフィルム[D4F]を作製した。
【0082】
得られたフィルム[D4F]を使用して実施例1と同様に参考例6で作成したアクリル系粘着剤[E1]の溶液を使用する以外は実施例1と同様にして、フィルム[D4F]の両面に粘着剤[E1]層(厚さ25μm)を形成した透明粘着シート[E1/D4F/E1]を作成した。得られた透明粘着シート[E1/D4F/E1]を使用して、透明粘着シートの透明性、面内位相差(Re)、粘着性、リワーク性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0083】
[比較例2]
比較例1で作成したブロック共重合体水素化物[D4]のフィルム[D4F]を使用して実施例2と同様にコロナ放電処理した後、参考例7で作成したアクリル系粘着剤[E2]の溶液を使用する以外は実施例1と同様にして、フィルム[D4F]の両面に粘着剤[E2]層(厚さ25μm)を形成した透明粘着シート[E2/D4F/E2]を作成した。得られた透明粘着シート[E2/D4F/E2]を使用して、透明粘着シートの透明性、面内位相差(Re)、粘着性、リワーク性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0084】
[比較例3]
参考例5で得られたブロック共重合体水素化物[D5]を使用し、樹脂温度200℃、Tダイ温度200℃、キャストロール温度30℃とする以外はとする以外は実施例1と同様にして、厚さ50μm、幅230mmのフィルム[D5F]を作成した。
【0085】
得られたフィルム[D5F]及び参考例6で作成したアクリル系粘着剤[E1]の溶液を使用する以外は実施例1と同様にして、フィルム[D5F]の両面に粘着剤[E1]層(厚さ25μm)を形成した透明粘着シート[E1/D5F/E1]を作成した。得られた透明粘着シート[E1/D5F/E1]を使用して、透明粘着シートの透明性、面内位相差(Re)、粘着性、リワーク性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0086】
[比較例4]
比較例3で作成したブロック共重合体水素化物[D5]のフィルム[D5F]を使用して実施例2と同様にコロナ放電処理した後、参考例7で製造したアクリル系粘着剤[E2]の溶液を使用する以外は実施例1と同様にして、フィルム[D5F]の両面に粘着剤[E2]層(厚さ25μm)を形成した透明粘着シート[E2/D5F/E2]を作製した。得られた透明粘着シート[E2/D5F/E2]を使用して、透明粘着シートの透明性、面内位相差(Re)、粘着性、リワーク性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0087】
【表1】
【0088】
[実施例6]
参考例1で得られたブロック共重合体水素化物[D1]使用し、実施例1と同様にして、厚さ30μm、幅230mmのフィルム[D1F2]を作製した。得られたフィルム[D1F2]に、実施例1と同様にして、両面にそれぞれ厚さ25μmの粘着剤[E1]層が形成された透明粘着シート[E1/D1F2/E1]を作製した。
得られた溶融押出しフィルム[D1F2]、透明粘着シート[E1/D1F2/E1]を使用して、透明粘着シートの透明性、面内位相差Re、粘着性、リワーク性を評価した。面内位相差Reは0.7nm、粘着性の評価は「○」、リワーク性の評価は「○」であった。
【0089】
本実施例及び比較例の結果から以下のことがわかる。
本発明の透明粘着シートは、可視光領域での光線透過率が高く、且つ、面内位相差が小さく光学特性に優れている他、PETフィルムやTACフィルムに対する粘着性も良好で、リワークも可能である(実施例1〜6)。
一方、本発明の範囲よりも共役ジエンの含有率が少ないブロック共重合体水素化物[D4]からなるフィルム[D4F]を使用した透明粘着シートの場合(比較例1、2)は、PETフィルム及びTACフィルムを保護層とする偏光フィルムに貼り合せた後で、これらのフィルムから剥離しようとすると、フィルム[D4F]が破断し、粘着剤[E]がPETフィルム表面及びTACフィルム表面から除去し難くなり、リワーク性が劣る。また、本発明の範囲よりも共役ジエンの含有率が多いブロック共重合体水素化物[D5]からなるフィルム[D5F]を使用した透明粘着シートの場合(比較例3、4)は、透明粘着シートの面内位相差が大きくなり過ぎ、光学用透明粘着シートとしては使用困難となる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の透明粘着シートは、透明性、低複屈折性に優れ、十分な粘着性とリワーク性を有しており、タッチパネルと偏光フィルム、タッチパネルとカバーガラス等を貼着固定する光学用透明粘着シートとして有用である。