特許第6623817号(P6623817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6623817パイプコンベヤ及びパイプコンベヤの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623817
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】パイプコンベヤ及びパイプコンベヤの運転方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/08 20060101AFI20191216BHJP
   B65G 45/02 20060101ALI20191216BHJP
   B65G 45/22 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   B65G15/08 Z
   B65G45/02
   B65G45/22 C
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-30598(P2016-30598)
(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公開番号】特開2017-149492(P2017-149492A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】近藤 孝史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘志
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 智洋
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 宣幸
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−258011(JP,A)
【文献】 特開2014−031242(JP,A)
【文献】 特開平06−247524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/08
B65G 45/02
B65G 45/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路の始端と終端に配置された2個の回転ドラムを折り返し点とし、上段側の搬送路と下段側の回送路とからなる循環路を走行する無端ベルトと、
前記搬送路における前記始端と前記終端の各近傍域を除く範囲において、前記無端ベルトの側縁部が重なりあうように丸めてパイプ状ベルト部分に変形する変形用ガイドローラーと、前記パイプ状ベルト部分のパイプ形状を保持したままこれを搬送することができる保形用ガイドローラーと、を備えるパイプコンベヤであって、
前記変形用ガイドローラーは、前記搬送路においては、前記無端ベルトの側縁部の重なり部分が上方に向く態様で該無端ベルトをパイプ状ベルト部分に変形し、前記回送路においては、前記重なり部分が下方に向く態様で該無端ベルトをパイプ状ベルト部分に変形することができるように構成されていて、
前記終端の近傍域において前記保形用ガイドローラーによる形状保持から開放されて略平坦な平ベルト部分とされた状態で回送路を走行する無端ベルトが、前記変形用ガイドローラーによってパイプ状ベルト部分に再変形される前に、前記無端ベルトの上面に潤滑液を散布することができる位置に、潤滑液散布装置が設置されているパイプコンベヤ。
【請求項2】
前記潤滑液が水である請求項1に記載のパイプコンベヤ。
【請求項3】
前記搬送路が傾斜角5度以上45度以下の斜め上方に向けた搬送路である請求項1又は2に記載のパイプコンベヤ。
【請求項4】
搬送路の始端と終端に配置された2個の回転ドラムを折り返し点とし、上段側の搬送路と下段側の回送路とからなる循環路を走行する無端ベルトと、
前記搬送路における前記始端と前記終端の各近傍域を除く範囲において、前記無端ベルトの側縁部が重なりあうように丸めてパイプ状ベルト部分に変形する変形用ガイドローラーと、前記パイプ状ベルト部分のパイプ形状を保持したままこれを搬送することができる保形用ガイドローラーと、を備えるパイプコンベヤの運転方法であって、
前記変形用ガイドローラーは、前記搬送路においては、前記無端ベルトの側縁部の重なり部分が上方に向く態様で該無端ベルトをパイプ状ベルト部分に変形し、前記回送路においては、前記重なり部分が下方に向く態様で該無端ベルトをパイプ状ベルト部分に変形することができるように構成されていて、
前記終端の近傍域において前記保形用ガイドローラーによる形状保持から開放されて略平坦な平ベルト部分とされた状態で回送路を走行する無端ベルトが、前記変形用ガイドローラーによってパイプ状ベルト部分に再変形される前に、前記無端ベルトの上面に潤滑液を散布するパイプコンベヤの運転方法。
【請求項5】
前記潤滑液が水である請求項4に記載のパイプコンベヤの運転方法。
【請求項6】
前記搬送路が傾斜角5度以上45度以下の斜め上方に向けた搬送路である請求項4又は5に記載のパイプコンベヤの運転方法。
【請求項7】
前記回送路側のパイプ状ベルト部分の外表面の全体に前記潤滑液からなる潤滑膜を形成する請求項4から6の何れかに記載のパイプコンベヤの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略平坦なベルトを変形用ガイドローラーによりパイプ状に変形して非搬送物を搬送するパイプコンベヤ、及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプコンベヤのベルトは、搬送路の始端と終端の近傍域においては、略平坦な平ベルトの状態であるが、その他の部分においては、変形用ガイドローラーによって丸められて、パイプ状に変形された状態でベルト走行路を走行する。尚、本明細書においては、ベルト全体のうち、略平坦な状態にある部分のことを「平ベルト部分」、又、パイプ状に変形された状態にある部分のことを「パイプ状ベルト部分」と言うものとする。パイプコンベヤは、搬送路の大部分において搬送用のベルトを、パイプ状ベルト部分の状態で走行させることにより、搬送中の被搬送物と外部環境との接触を最小限に止めることができる(特許文献1参照)。
【0003】
パイプコンベヤにおいて、パイプ状ベルト部分は、図1及び図2に示す保形用ガイドローラー14のようなガイドローラーに接触しながら走行する。このような保形用ガイドローラーを適切な間隔で配置することにより、パイプ状ベルト部分はその形状を保持された状態で円滑に走行することができる。この保形用ガイドローラーは、通常、6個程度のローラーがリング状に配置されて形成されており、ベルトの走行路上に0.5〜2m程度の間隔で設置される。例えば、50〜60mの機長を持つ、標準的なパイプコンベヤの場合、約100箇所に、このような保形用ガイドローラーが設置されることとなり、全体では、計600個程度のローラーがベルトの走行路に沿って配置されることになる。
【0004】
このように、極めて多数のローラーが設置されているパイプコンベヤにおいては、その保守管理のための手間とコストが嵩むことが問題となっていた。とりわけ、図1に示すように鉛直方向上下に搬送路と回送路が配置されている構成のパイプコンベヤ1と同様の構成からなるパイプコンベヤにおいては、特に下段側の回送路に設置されているガイドローラーの回転不良が頻発することが問題となっていた。これは、上段側の搬送路の端部等から被搬送物由来の微細な飛沫等が落下することを完全に防ぐことは難しく、この微細な落下物の下段側のガイドローラー各部への付着が、当該ローラーの回転不良の主たる原因となることによるものである。
【0005】
一般的に、パイプコンベヤの操業においては、数百個にも及ぶローラーの個々の軽微な動作不良の度に逐次稼働を停止することはしない。軽微な不具合については個別に対応せず、搬送用の無端ベルトの状態等を監視しながら操業を継続し、定期的に設定した所定の保守作業日に一斉に設備の稼働を停止して、ローラーの交換等、必要な保守作業を行うようにすることが一般的である。
【0006】
上記のような保守管理の態様においては、定期的な保守作業日に至るまでの間、少数の一部ローラーの回転が不良となった状態で、パイプ状のベルトの搬送が継続することとなる場合がある。そのような回転不良の状態にある各ローラーとパイプ状ベルト部分との間の摩擦が大きくなると、搬送用の無端ベルトの偏摩耗や、それに起因するパイプ形状への変形不良による蛇行の発生、ベルトの破断等、致命的な損傷が発生してしまう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−262315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、保守性に優れるパイプコンベヤの提供を目的とする。より具体的には、搬送用の無端ベルトがパイプ状に変形されて、多数のガイドローラーと接触しながら走行するパイプコンベヤにおいて、一部少数のローラーの回転が不良となった状態においても、無端ベルトの偏摩耗やその他の致命的な損傷を回避しながら、一定期間、安定的に稼働を継続することができるパイプコンベヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、パイプコンベヤの搬送用の無端ベルトの走行路の特定箇所において、当該無端ベルトの特定の面に、潤滑剤を散布することによって、パイプコンベヤの稼働を中断することなく、パイプ状ベルト部分の外表面に、その表面摩擦抵抗を低減する潤滑膜を速やかに斑なく形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) 搬送路の始端と終端に配置された2個の回転ドラムを折り返し点とし、上段側の搬送路と下段側の回送路とからなる循環路を走行する無端ベルトと、前記搬送路における前記始端と前記終端の各近傍域を除く範囲において、前記無端ベルトの側縁部が重なりあうように丸めてパイプ状ベルト部分に変形する変形用ガイドローラーと、前記パイプ状ベルト部分のパイプ形状を保持したままこれを搬送することができる保形用ガイドローラーと、を備えるパイプコンベヤであって、前記変形用ガイドローラーは、前記搬送路においては、前記無端ベルトの側縁部の重なり部分が上方に向く態様で該無端ベルトをパイプ状ベルト部分に変形し、前記回送路においては、前記重なり部分が下方に向く態様で該無端ベルトをパイプ状ベルト部分に変形することができるように構成されていて、
前記終端の近傍域において前記保形用ガイドローラーによる形状保持から開放されて略平坦な平ベルト部分とされた状態で回送路を走行する無端ベルトが、前記変形用ガイドローラーによってパイプ状ベルト部分に再変形される前に、前記無端ベルトの上面に潤滑液を散布することができる位置に、潤滑液散布装置が設置されているパイプコンベヤ。
【0011】
(1)の発明によれば、パイプコンベヤの稼働を継続したまま、パイプ状ベルト部分の外表面に、その表面摩擦抵抗を著しく低減することができる潤滑膜を形成することができる。これにより、多数のガイドローラーによってパイプ状ベルト部分が搬送されるパイプコンベヤにおいては、頻繁に生じることが想定されている一部少数のローラーの回転不良発生時に、当該ローラーと、パイプ状ベルト部分の摩擦を低減して、パイプ状ベルト部分の偏摩耗を回避することが可能な潤滑膜を形成することができる。これにより、上記のように一部少数のローラーの回転不良が発生している状態においても、無端ベルトの破断等、搬送装置の致命的な損傷を未然に回避しながら、一定期間、パイプコンベヤの稼働を安定的に継続することができる。これにより、パイプコンベヤを含んでなる生産設備の保守性、生産性の向上に大いに寄与することができる。尚、無端ベルトを備えるパイプコンベヤにおいて、搬送路と回送路の位置関係は、上段と、その直下に配置されている下段との二段構成であることが一般的である。そして、このような二段構成においては、搬送路のみならず、回送路においても無端ベルトをパイプ状に変形して走行させることにより、回送路における無端ベルトの搬送面の汚辱を回避するこができる。又、パイプコンベヤ設置に必要な面積、特には搬送路に直交する方向の幅を最小化することができ、更には、搬送路を曲線状に構成したり、その傾斜角度をより大きくすることも可能となり、搬送路の配置の自由度が高まるというメリットがある。(1)の発明は、そのようなメリットを備えるパイプコンベヤにおいて好ましく適用することができる構造のパイプコンベヤである。
【0012】
(2) 前記潤滑液が水である(1)に記載のパイプコンベヤ。
【0013】
(2)の発明によれば、特殊な潤滑剤を用いる必要がなく、工場内に導入されている工業用水等をそのまま潤滑剤として用いることができる。これにより、(1)の発明を低コストで実施することができる。又、既存の洗浄用の散水スプレー等の設置位置の変更や散水口の追加等により、これをそのまま(1)の発明における潤滑液散布装置とすることもできるため、(1)の発明の既存の設備への導入コストも抑えることができる。
【0014】
(3) 前記搬送路が傾斜角5度以上45度以下の斜め上方に向けた搬送路である(1)又は(2)に記載のパイプコンベヤ。
【0015】
(3)の発明によれば、斜め上方に向けて被搬送物を安定的に搬送することが求められるパイプコンベヤ、即ち、回送路は斜め下方に向けられているパイプコンベヤにおいて、適度な傾斜角を利用して、その表面がより均質で斑のない潤滑膜を形成することができる。これにより、より高い精度で(1)又は(2)の発明の効果を享受することができる。
【0016】
(4) 搬送路の始端と終端に配置された2個の回転ドラムを折り返し点とし、上段側の搬送路と下段側の回送路とからなる循環路を走行する無端ベルトと、前記搬送路における前記始端と前記終端の各近傍域を除く範囲において、前記無端ベルトの側縁部が重なりあうように丸めてパイプ状ベルト部分に変形する変形用ガイドローラーと、前記パイプ状ベルト部分のパイプ形状を保持したままこれを搬送することができる保形用ガイドローラーと、を備えるパイプコンベヤであって、前記変形用ガイドローラーは、前記搬送路においては、前記無端ベルトの側縁部の重なり部分が上方に向く態様で該無端ベルトをパイプ状ベルト部分に変形し、前記回送路においては、前記重なり部分が下方に向く態様で該無端ベルトをパイプ状ベルト部分に変形することができるように構成されていて、前記終端の近傍域において前記保形用ガイドローラーによる形状保持から開放されて略平坦な平ベルト部分とされた状態で回送路を走行する無端ベルトが、前記変形用ガイドローラーによってパイプ状ベルト部分に再変形される前に、前記無端ベルトの上面に潤滑液を散布するパイプコンベヤの運転方法。
【0017】
(4)の発明によれば、パイプコンベヤの通常の稼働を停止することなく、パイプ状ベルト部分の外表面に表面摩擦を低減する潤滑膜を形成することができる。これにより、多数のガイドローラーによってパイプ状ベルト部分が搬送されるパイプコンベヤにおいては、頻繁に生じることが想定されている一部少数のローラーの回転不良発生時に、当該ローラーと、パイプ状ベルト部分の摩擦を低減して、パイプ状ベルト部分の偏摩耗を回避することが可能な潤滑膜を形成することができる。これにより、上記のように一部少数のローラーの回転不良が発生している状態においても、無端ベルトの破断等、搬送装置の致命的な損傷を未然に回避しながら、一定期間、パイプコンベヤの稼働を安定的に継続することができる。これにより、パイプコンベヤを含んでなる生産設備の保守性、生産性の向上に大いに寄与することができる。又、潤滑液の散布の手段や方法は限定されず、設備の規模や装置の配置条件等によっては、必ずしも常設の散布装置を設置せずとも実施が可能である。
【0018】
(5) 前記潤滑液が水である(4)に記載のパイプコンベヤの運転方法。
【0019】
(5)の発明によれば、特殊な潤滑剤を用いる必要がなく、工場内に導入されている工業用水等をそのまま潤滑剤として用いることができるため、(4)の発明を低コストで実施することができる。これにより(4)の発明の経済性を更に高めたものとして、その効果を享受することができる。
【0020】
(6) 前記搬送路が傾斜角5度以上45度以下の斜め上方に向けた搬送路である(4)又は(5)に記載のパイプコンベヤの運転方法。
【0021】
(6)の発明によれば、斜め上方に向けて被搬送物を安定的に搬送することが求められるパイプコンベヤ、即ち、回送路は斜め下方に向けられているパイプコンベヤにおいて、高い精度で上記の潤滑膜の形成を促進して、(4)又は(5)の発明の効果を高い精度で享受することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、搬送用の無端ベルトがパイプ状に変形されて、多数のガイドローラーと接触しながら走行するパイプコンベヤにおいて、一部少数のローラーの回転が不良となった状態においても、無端ベルトの偏摩耗やその他の致命的な損傷を回避しながら、一定期間、安定的に稼働を継続することができるパイプコンベヤ、及び、その運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のパイプコンベヤの構成を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明のパイプコンベヤの搬送路及び回送路における保形用ガイドローラーによるパイプ状ベルト部分の形状保持態様の説明に供する正面模式図である。
図3】本発明のパイプコンベヤにおける潤滑液の散布の態様を模式的に示すパイプコンベヤの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のパイプコンベヤ及びパイプコンベヤの運転方法の好ましい実施形態及び実施態様について説明する。但し、本発明は、以下の実施形態等に限定されるものではない。
【0025】
<パイプコンベヤ>
図1は、本発明のパイプコンベヤ1の構成を模式的に示す斜視図である。パイプコンベヤ1は、搬送路の始端と終端に配置された2個の回転ドラム12A、12B間を循環走行する無端ベルト10、無端ベルト10をパイプ状に変形する機能を有する変形用ガイドローラー13、及び、無端ベルト10を、そのパイプ形状を保持したまま走行させる機能を有する保形用ガイドローラー14を備える。
【0026】
パイプコンベヤ1において、無端ベルト10は、回転ドラム12Aと12Bを折り返し点とし、上段側の搬送路と下段側の回送路とからなる循環路をC方向に走行する。
【0027】
そして、パイプコンベヤ1は、下段側の回送路において、パイプ状に変形された状態で走行する無端ベルト10の外表面に、水等の潤滑液を散布することができる潤滑液散布装置2を備えることを特徴とする。
【0028】
変形用ガイドローラー13は、C方向に走行する無端ベルト10の平ベルト部分11a、11cを、パイプコンベヤ1の稼働を中断することなく、無端ベルト10を任意の搬送速度で走行させながら、パイプ状ベルト部分11b、11dに変形する機能及びそれを可能とする構造を有する。この際、平ベルト部分11aは、変形用ガイドローラー13によって、走行中に徐々に両方の側縁部が持ち上げられ、最終的に搬送路及び回送路の一定の地点においてパイプ状ベルト部分11bへの変形を完了する。
【0029】
保形用ガイドローラー14は、変形用ガイドローラー13によってパイプ状に丸められたパイプ状ベルト部分11b、11dの形状を保持したままC方向に向けて走行させる機能及びそれを可能とする構造を有する。保形用ガイドローラー14は、図2に示すように、支持部材を介して円周上に配置される6個のローラー(14a、14b、14c、14d、14e、14f)を有する構造からなるものであることが一般的である。無端ベルト10は、回転ドラム12A、12Bの各近傍域を除く範囲においては、パイプ状ベルト部分11b、11dに変形された状態で、搬送路及び回送路を走行する。
【0030】
パイプコンベヤ1において、被搬送物は、搬送路の始端の近傍域において、無端ベルト10の平ベルト部分11aに搬入される。その後、変形用ガイドローラー13によってパイプ状ベルト部分11bへの変形された無端ベルト10は、保形用ガイドローラー14によってパイプ状の形状を保持したまま、搬送路の終端に向かって走行する。
【0031】
そして、搬送路の終端の近傍域で、パイプ状ベルト部分11bは、パイプ状の保形から開放されて再び略平坦な平ベルト部分11cに展開される。被搬送物は、無端ベルト10が平ベルト部分11cへと展開された後、搬送路の終端或いはその近傍域で平ベルト部分11cから搬出される。以上の搬送態様であることにより、パイプコンベヤ1においては、被搬送物は、搬送路の大部分において、パイプ状ベルト部分11bの内部に包み込まれた状態で搬送される。よって、パイプコンベヤ1によれば、搬送路の大部分において被搬送物と外部環境との接触を最小限に止めることにより、被搬送物の荷零れ、飛散、外部からの異物混入を防ぎながら被搬送物を搬送することができる。
【0032】
被搬送物を搬出した後、回転ドラム12Bで折り返され方向転換された平ベルト部分11cは、下段側の回送路においても、上段側の搬送路における場合と同様に変形用ガイドローラー13によってパイプ状ベルト部分11dに変形された状態で走行する。
【0033】
パイプコンベヤ1は、搬送路の傾斜角が5度以上45度以下の斜め上方に向けられている構造であることがより好ましい。搬送路の傾斜角が5度以上45度以下の範囲であることにより、斜め上方に向けて被搬送物を安定的に搬送することが求められるパイプコンベヤにおいて、より均質で斑のない潤滑膜を形成することができる。
【0034】
[潤滑液散布装置]
パイプコンベヤ1は、上記の搬送装置としての基本構成に加えて、潤滑液散布装置2を更に備えることを特徴とする。潤滑液散布装置2は、パイプコンベヤ1の下段側の回送路を走行するパイプ状ベルト部分11dの外表面に、その表面摩擦抵抗を低減する潤滑膜を形成するための潤滑液を散布する装置である。
【0035】
上記の潤滑液としては、工場内外の環境に対する影響、被搬送物への混入による品質への影響について、リスクを最小化する観点から、又、工業用水たる水の調達の容易性、経済性の観点から、水を用いることが好ましい。但し、以下に説明する作用により、パイプ状ベルト部分の円筒形の外表面に潤滑膜を形成可能な程度の拡散性を有するものであれば、公知の油性潤滑剤等、水以外のものを用いることもできる。以下においては、本発明の代表的な実施態様として、潤滑液として水を用いる実施態様について説明する。
【0036】
図1及び図3に示す通り、潤滑液散布装置2は、パイプコンベヤ1における上段側の搬送路の終端で折り返されて、下段側の回送路の走行を開始した無端ベルト10の平ベルト部分11cが、上述の通り、下段側の回送路において、パイプ状ベルト部分11dに再変形される前に、平ベルト部分11cの上面(図1及び図3における面A)に水を散布する装置である。潤滑液散布装置2は、単位時間当り任意の量の水を散水できる装置であればよい。例えば、汎用品として用いられている散水ノズル21等の散水可能な機構を備えるものであれば特定の液体散布装置に限定されない。又、このような潤滑液散布装置2の配置位置については、パイプコンベヤ1の本来の搬送機能を妨げない位置である限りにおいて、上記の平ベルト部分11cの上面(面A)に散布可能な位置であればよい。
【0037】
潤滑液散布装置2は、パイプコンベヤ1の稼働中、常時、適量の潤滑液を散水することが可能となる散水量の自動制御機構を備えるものであることが好ましい。この制御は、例えば、任意の時間間隔で間欠的に散水する制御態様であってもよいし、或いは、連続的に散水しながら、散水量を調整する制御態様であってもよい。
【0038】
<パイプコンベヤの運転方法>
次に、パイプコンベヤ1の運転方法について説明する。パイプコンベヤ1は、潤滑液散布装置2によって、上記の通り、下段側の回送路において、平ベルト部分11cの上面(図1及び図3における面A)に水を適切に散布することにより、パイプ状ベルト部分11dの外表面に水膜からなる潤滑膜22を形成する。
【0039】
上記の散水は、パイプコンベヤ1においては、潤滑液散布装置2よることが好ましい。又、潤滑液散布装置2が常設されていない従来のパイプコンベヤにおいても、潤滑液散布装置2による散水と同様の散水態様で、パイプコンベヤの無端ベルトに散水可能な他の手段を用いることにより、本発明のパイプコンベヤの運転方法は実施可能である。このような実施態様によっても、一部少数のローラーの回転が不良となった状態において、無端ベルトの偏摩耗等の損傷を回避しながら、一定期間、安定的に当該パイプコンベヤの稼働を継続することができる。例えば、所定の時間間隔で、定期的に上記態様で散水可能な位置に、他の散水装置を運び込み、その都度、上記同様の態様で無端ベルトに散水する運転方法によっても充分な効果を享受することができる。
【0040】
上記の水膜、即ち、潤滑膜22の形成のメカニズムは以下の通りである。潤滑液散布装置2の散水ノズル21から平ベルト部分11cの上面である面Aに散布された水は、無端ベルト10がパイプ状ベルト部分11dに変形されるまでの間に、曲面となりつつある無端ベルトの面Aに沿って重力により下方に拡散する。これによりパイプ状ベルト部分11dの外表面、即ち面Aの外周に、少量の水で均質で斑のない水膜である潤滑膜22が速やかに形成される。
【0041】
又、パイプコンベヤ1の搬送路と回送路の上下二段構造を前提とする場合、上記散水態様によれば、搬送路側においては被搬送物を載置する面となる、パイプ状ベルト部分11dの内表面(面B)に、被搬送物の搬入時に不要な水が残存して被搬送物に何らかの不利な作用を及ぼすリスクも回避することができる。この点においても、上記メカニズムによる潤滑膜22の形成の方法は非常に好ましい潤滑膜の形成方法である。
【0042】
尚、上述した(1)の発明の構成を備えるパイプコンベヤにおける水膜の形成の実態は、以下の通り確認されている。即ち、搬送路の全長が凡そ52m、無端ベルトのベルト幅が600mm、パイプ状ベルト部分の長さが凡そ28mとなり、搬送路の傾斜角度が上向き6.39°のパイプコンベヤに、毎分20lで散水可能な散水装置を設置し、これに鉄鋼ダスト由来のスラリー状の粗酸化亜鉛ケーキを搬入して、ベルトの搬送速度40m/分で試験的に稼働させながら、回送路側を走行する無端ベルトの平ベルト部分に上方から毎分20lで散水を行ったところ、回送路側のパイプ状ベルト部分の外表面に速やかに斑無く水膜が形成されることが確認された。
【0043】
又、上記の試験操業において、パイプコンベヤの駆動モーターの電流値は、散水前には、30Aであったが、散水後、同電流値は23Aまで低下した。このことから、上記の散水により形成された水膜が、潤滑膜として保形用ガイドローラーとパイプ状ベルト部分との間の摩擦の低減に有意に寄与していることが推認される。
【0044】
そして、上記の試験操業を3月継続したが、無端ベルトの蛇行、切断、パイプコンベアの稼働の停止に繋がるような故障は1度も発生しなかった。尚、散水のための機構を有しないことの他は上記の試験操業用のものと概ね同様の構成からなる従来のパイプコンベヤにおいては、通年で平均すると、1月に1度程度、上記のような故障が発生していた。
【0045】
上述の通り、回送路側の保形用ガイドローラー14においては、上段側の搬送路からの落下物が付着するリスクが上段側の他のガイドローラーよりも高い。好ましくはパイプコンベヤ1を用いて行う本発明のパイプコンベヤの運転方法においては、上記メカニズムにより回送路側で形成された水膜が潤滑膜22となり、パイプ状ベルト部分11dと、回転不良の発生している一部の保形用ガイドローラー14との間の摩擦抵抗を著しく低減させる。又、上記の水膜形成のために散布された水の一部は、この回送路側の保形用ガイドローラー14の軸受部にも回り込むことがある。この場合、この回り込んだ水によっても固渋した回送路側の保形用ガイドローラー14の回転不良が解消されることがある。
【0046】
本発明のパイプコンベヤの運転方法は、特に、鉄鋼製錬等で発生する鉄鋼ダストからの亜鉛回収プロセスにおける、酸化亜鉛焼鉱の製造工程において好ましく用いることができる。この亜鉛回収プロセスは、鉄成分以外に比較的多くの亜鉛が含まれている鉄鋼ダストや鉄鋼ダストペレットに、還元焙焼処理を施すことによって粗酸化亜鉛を得るプロセスであり、この鉄鋼ダストの還元焙焼処理は、一般に、ロータリーキルンによる還元焙焼法(所謂ウェルツ法)により行われる。この方法により鉄鋼ダスト中に含まれる亜鉛が、還元焙焼用のロータリーキルン内において還元揮発されて、粗酸化亜鉛ダストとして回収される。そして、回収された粗酸化亜鉛は、湿式処理を施すことによってハロゲン類等の不純物を除去し、乾燥加熱用のロータリーキルンで熱処理することにより酸化亜鉛焼鉱になる。ここで、上記の湿式処理で得られたスラリー状の粗酸化亜鉛ケーキを、乾燥加熱用のロータリーキルンに装入するための搬送装置として本発明のパイプコンベヤ1、或いは、上記挿入を行うための搬送方法として、本発明のパイプコンベヤの運転方法を、いずれも好ましく用いることができる。これにより、パイプコンベヤを含んでなる亜鉛回収プロセスを行う生産設備の保守性、生産性の向上に大きく寄与することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 パイプコンベヤ
10 無端ベルト
11a、11c 平ベルト部分
11b、11d パイプ状ベルト部分
12(12A、12B) 回転ドラム
13 変形用ガイドローラー
14 保形用ガイドローラー
20 潤滑液散布装置
21 散水ノズル
22 潤滑膜
図1
図2
図3