特許第6624078号(P6624078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6624078導電性基板、および導電性基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624078
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】導電性基板、および導電性基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20191216BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   G06F3/041 660
   G06F3/041 495
   B32B15/08 P
   B32B15/08 E
   G06F3/041 490
【請求項の数】6
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-570629(P2016-570629)
(86)(22)【出願日】2016年1月18日
(86)【国際出願番号】JP2016051315
(87)【国際公開番号】WO2016117512
(87)【国際公開日】20160728
【審査請求日】2018年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-8913(P2015-8913)
(32)【優先日】2015年1月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-90017(P2015-90017)
(32)【優先日】2015年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高塚 裕二
(72)【発明者】
【氏名】富樫 亮
(72)【発明者】
【氏名】山岸 浩一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵理子
【審査官】 桜井 茂行
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/035207(WO,A1)
【文献】 特表2016−500853(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/203418(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0103531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
B32B 15/08
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成された銅層と、
前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成され、酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを含有し、前記酸素を5原子%以上60原子%以下含有する黒化層と、を備え
前記黒化層は、
前記黒化層の銅とニッケルとモリブデンとの含有量を100原子%とした場合に、前記モリブデンの含有量が3.3原子%以上70原子%以下である導電性基板。
【請求項2】
前記銅層は厚さが100nm以上であり。
前記黒化層は厚さが20nm以上である請求項1に記載の導電性基板。
【請求項3】
波長550nmの光の反射率が30%以下である請求項1または請求項2に記載の導電性基板。
【請求項4】
メッシュ状の配線を備えた請求項1乃至のいずれか一項に記載の導電性基板。
【請求項5】
透明基材を準備する透明基材準備工程と、
前記透明基材の少なくとも一方の面側に銅層を形成する銅層形成工程と、
前記透明基材の少なくとも一方の面側に、酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを含有し、前記酸素を5原子%以上60原子%以下含有する黒化層を形成する黒化層形成工程と、を有し、
前記黒化層は、
前記黒化層の銅とニッケルとモリブデンとの含有量を100原子%とした場合に、前記モリブデンの含有量が3.3原子%以上70原子%以下である導電性基板の製造方法。
【請求項6】
前記黒化層形成工程は、
銅−ニッケル−モリブデンターゲットを用い、
酸素を5体積%以上45体積%以下の割合で含有するガスをチャンバー内に供給しながらスパッタリング法により、前記黒化層を成膜する請求項に記載の導電性基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性基板、および導電性基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子フィルム上に透明導電膜としてITO(酸化インジウム−スズ)膜を形成したタッチパネル用の透明導電性フィルムが従来から用いられている。(特許文献1参照)
ところで、近年タッチパネルを備えたディスプレイの大画面化が進んでおり、これに対応してタッチパネル用の透明導電性フィルム等の導電性基板についても大面積化が求められている。しかし、ITOは電気抵抗値が高いため、導電性基板の大面積化に対応できないという問題があった。
【0003】
このため、例えば特許文献2、3に開示されているようにITO膜にかえて導電性が優れている銅等の金属箔を用いることが検討されている。しかし、例えば配線層に銅を用いた場合、銅は金属光沢を有しているため、反射によりディスプレイの視認性が低下するという問題がある。
【0004】
そこで、上記の導電性と視認性の両特性の改善を実現するために、銅等の金属箔により構成される配線層と共に、黒色の材料により構成される黒化層を形成した導電性基板が検討されている。
【0005】
しかしながら、配線パターンを有する導電性基板とするためには、配線層と黒化層とを形成した後に、配線層と黒化層とをエッチングして所望のパターンを形成する必要があるが、エッチング液に対する反応性が配線層と黒化層とで大きく異なるという問題があった。すなわち、配線層と黒化層とを同時にエッチングしようとすると、いずれかの層が目的の形状にエッチングできないという問題であった。また、配線層のエッチングと黒化層のエッチングとを別の工程で実施する場合、工程数が増加するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2003−151358号公報
【特許文献2】日本国特開2011−018194号公報
【特許文献3】日本国特開2013−069261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術の種々の問題に鑑み、本発明の一側面では同時にエッチング処理を行うことができる銅層と、黒化層と、を備えた導電性基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の一側面では、
透明基材と、
前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成された銅層と、
前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成され、酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを含有し、前記酸素を5原子%以上60原子%以下含有する黒化層と、を備え
前記黒化層は、
前記黒化層の銅とニッケルとモリブデンとの含有量を100原子%とした場合に、前記モリブデンの含有量が3.3原子%以上70原子%以下である導電性基板を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、同時にエッチング処理を行うことができる銅層と、黒化層と、を備えた導電性基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の実施形態に係る導電性基板の断面図。
図1B】本発明の実施形態に係る導電性基板の断面図。
図2A】本発明の実施形態に係る導電性基板の断面図。
図2B】本発明の実施形態に係る導電性基板の断面図。
図3】本発明の実施形態に係るメッシュ状の配線を備えた導電性基板の上面図。
図4A図3のA−A´線における断面図。
図4B図3のA−A´線における断面図。
図5】実験例2の導電性基板の反射率の波長依存性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の導電性基板、および、導電性基板の製造方法の一実施形態について説明する。
(導電性基板)
本実施形態の導電性基板は、透明基材と、
透明基材の少なくとも一方の面側に形成された銅層と、
透明基材の少なくとも一方の面側に形成され、酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを含有し、酸素を5原子%以上60原子%以下含有する黒化層(以下、単に「黒化層」とも記載する)とを備えた構成とすることができる。
【0012】
なお、本実施形態における導電性基板とは、銅層等をパターニングする前の透明基材の表面に銅層や黒化層を有する基板と、銅層や黒化層をパターニングして配線の形状にした基板、すなわち、配線基板とを含む。
【0013】
ここでまず、本実施形態の導電性基板に含まれる各部材について以下に説明する。
【0014】
透明基材としては特に限定されるものではなく、可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板等を好ましく用いることができる。
【0015】
可視光を透過する絶縁体フィルムとしては例えば、ポリアミド系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、シクロオレフィン系フィルム等の樹脂フィルム、ポリカーボネート系フィルム等を好ましく用いることができる。
【0016】
透明基材の厚さについては特に限定されず、導電性基板とした場合に要求される強度や静電容量、光の透過率等に応じて任意に選択することができる。
【0017】
次に銅層について説明する。
【0018】
銅層についても特に限定されないが、光の透過率を低減させないため、銅層と透明基材との間、または、黒化層との間に接着剤を配置しないことが好ましい。すなわち銅層は、他の部材の上面に直接形成されていることが好ましい。
【0019】
他の部材の上面に銅層を直接形成するため、銅層は銅薄膜層を有することが好ましい。また、銅層は銅薄膜層と銅めっき層とを有していてもよい。
【0020】
例えば透明基材または黒化層上に、乾式めっき法により銅薄膜層を形成し該銅薄膜層を銅層とすることができる。これにより、透明基材または黒化層上に接着剤を介さずに直接銅層を形成できる。
【0021】
また、銅層の膜厚が厚い場合には、該銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法により銅めっき層を形成することにより、銅薄膜層と銅めっき層とを有する銅層とすることもできる。銅層が銅薄膜層と銅めっき層とを有することにより、この場合も透明基材または黒化層上に接着剤を介さずに直接銅層を形成できる。
【0022】
銅層の厚さは特に限定されるものではなく、銅層を配線として用いた場合に、該配線に供給する電流の大きさや配線幅等に応じて任意に選択することができる。特に十分に電流を供給できるように銅層は厚さが100nm以上であることが好ましく、150nm以上とすることがより好ましい。銅層の厚さの上限値は特に限定されないが、銅層が厚くなると、配線を形成するためにエッチングを行う際にエッチングに時間を要するためサイドエッチが生じ、エッチングの途中でレジストが剥離する等の問題を生じ易くなる。このため、銅層の厚さは3μm以下であることが好ましく、700nm以下であることがより好ましい。
【0023】
なお、銅層が上述のように銅薄膜層と、銅めっき層を有する場合には、銅薄膜層の厚さと、銅めっき層の厚さとの合計が上記範囲であることが好ましい。
【0024】
次に、酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを含有する黒化層について説明する。
【0025】
銅層は金属光沢を有するため、透明基材上に銅層をエッチングした配線を形成したのみでは上述のように銅が光を反射し、例えばタッチパネル用の導電性基板として用いた場合、ディスプレイの視認性が低下するという問題があった。そこで、黒化層を設ける方法が検討されてきたが、黒化層がエッチング液に対する反応性を十分に有していない場合があり、銅層と黒化層とを同時に所望の形状にエッチングすることは困難であった。そこで本発明の発明者らが検討を行ったところ、酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを含有する層は黒色であるため黒化層として使用でき、さらに、エッチング液に対して十分な反応性を示すため、銅層と同時にエッチング処理を行えることを見出したものである。
【0026】
黒化層の成膜方法は特に限定されるものではなく、任意の方法により成膜することができる。ただし、比較的容易に黒化層を成膜できることから、スパッタリング法により成膜することが好ましい。
【0027】
黒化層は例えば、銅−ニッケル−モリブデンターゲットを用いてチャンバー内に酸素を含有するガスを供給しながらスパッタリング法により成膜することができる。
【0028】
なお、ここでいう銅−ニッケル−モリブデンターゲットとしては、銅、ニッケル、及びモリブデンを含有するターゲットであれば良く、例えば、銅、ニッケル及びモリブデンの混合焼結ターゲット(以下、「銅−ニッケル−モリブデン混合焼結のターゲット」とも記載する)、または銅−ニッケル−モリブデンの熔解合金ターゲットを好適に用いることができる。
【0029】
また、黒化層は例えば、銅−ニッケル合金ターゲットと、モリブデンのターゲットと、を用い、あるいは銅のターゲットとニッケル−モリブデン合金ターゲットを用い、チャンバー内に酸素を供給しながら2元同時スパッタリング法により成膜することもできる。
【0030】
銅−ニッケル−モリブデンの熔解合金ターゲット、及び銅−ニッケル−モリブデン混合焼結のターゲットの製造方法の一構成例について説明する。
【0031】
銅とモリブデンは熔解することが難しく固溶しないため、熔解法でターゲットを作製する場合はニッケルとモリブデンとが固溶できるように、モリブデン/ニッケル比を25/75以下となるように原料を混合、熔解して熔解合金を作製することが好ましい。なお、モリブデン/ニッケル比を25/75以下にするとは、モリブデンと、ニッケルとの合計の物質量を100とした場合に、モリブデンの物質量比を25以下にすることを意味する。
【0032】
モリブデン/ニッケル比が25/75を超える場合は銅、ニッケル及びモリブデンの混合粉末からホットプレス法や熱間等方圧加工法(HIP)により焼結体を作製することが好ましい。焼結温度は850℃以上1083℃以下が好ましく、より好ましくは950℃以上1050℃である。
【0033】
これは、850℃より低い温度では焼結が十分進行しないため焼結体密度が低く、ターゲット化する平面加工で冷却水が焼結体の気孔に残留する場合があるという問題があるためである。また、1083℃を超えると銅の融点を超えるため銅が流れ出すため好ましくない。
【0034】
そして得られた熔解合金、または焼結体を所定の形状に加工した後、バッキングプレートに貼りつけてターゲットとすることができる。
【0035】
なお、銅−ニッケル−モリブデンの熔解合金ターゲット、及び銅−ニッケル−モリブデン混合焼結のターゲットの製造方法は、上記製造方法に限定されるものではなく、所望の組成を有するターゲットとなるように製造できる方法であれば特に限定されるものではなく、用いることができる。
【0036】
スパッタリング時にチャンバー内に供給するガス中の酸素の含有割合は特に限定されないが、酸素の含有割合が5体積%以上45体積%以下であるガスをチャンバーに供給しながら、黒化層を成膜することが好ましい。
【0037】
上述のようにチャンバー内へ供給するガス中の酸素の含有割合を5体積%以上とすることにより、黒化層の色を十分な黒色とすることができ、黒化層としての機能を十分に発揮できるため好ましい。チャンバー内へ供給するガス中の酸素の含有割合は7.5体積%以上とすることがより好ましい。
【0038】
また、チャンバー内へ供給するガス中の酸素の含有割合を45体積%以下とすることにより、黒化層のエッチング液に対する反応性を特に高めることができる。このため、銅層と共に黒化層のエッチングを行う際、銅層と、黒化層とを容易に所望のパターンとすることができ好ましい。さらに、光学特性の反射率、明度(L)、色度(a、b)のいずれも黒化層として良好となり好ましい。
【0039】
特に色度(a、b)を黒化層として特に良好とする観点からは、チャンバー内へ供給するガス中の酸素の供給割合は42体積%以下とすることがより好ましい。
【0040】
なお、スパッタリングを行う際、チャンバー内に供給するガスは、酸素以外の残部については不活性ガスとすることが好ましい。酸素以外の残部については例えばアルゴン、キセノン、ネオン、ヘリウムから選択された1種類以上のガスを供給することができる。
【0041】
スパッタリングの際に用いるターゲットの組成は特に限定されるものではなく、成膜する黒化層の組成にあわせて任意に選択することができる。なお、スパッタリング中のターゲットからの元素の飛び易さは、元素の種類により異なる。このため、目的とする黒化層の組成と、ターゲット中の元素の飛び易さに応じてターゲットの組成を選択することができる。
【0042】
スパッタリングを行う際用いるターゲットとして、上述のように例えば銅−ニッケル−モリブデン混合焼結のターゲットを用いることができる。この場合、上述のようにターゲットの組成は特に限定されないが、銅−ニッケル−モリブデン混合焼結のターゲットは、モリブデンを4原子%以上75原子%以下の割合で含有することが好ましく、7原子%以上65原子%以下の割合で含有することがより好ましい。ニッケルは10原子%以上80原子%以下が好ましい。これらの場合、残部は銅により構成することができる。
【0043】
成膜した黒化層中には、酸素、銅、ニッケル、及びモリブデンを含有することができる。黒化層中の各成分の含有割合は特に限定されないが、黒化層に含まれる銅とニッケルとモリブデンとの含有量の合計、すなわち金属元素の含有量の合計を100原子%とした場合に、モリブデンの含有量が2原子%以上70%原子以下であることが好ましい。
【0044】
これは、黒化層に含まれる金属元素中のモリブデンの含有量を2原子%以上とすることで、黒化層表面での光の反射率を特に低下させることができるためである。また、黒化層に含まれる金属元素中のモリブデンの含有量を70原子%以下とすることで、黒化層が高いエッチング性を示し、所望のパターンを有する導電性基板を容易に作製することができるためである。
【0045】
また、黒化層中に含まれる酸素は5原子%以上60原子%以下であることが好ましく、20原子%以上55原子%以下であることがより好ましい。
【0046】
これは、黒化層中に酸素が5原子%以上含まれていることにより黒化層が半透明になることで光の干渉効果により十分な黒色とすることができ、光の反射を特に抑制できるためである。また黒化層中の酸素の含有量が60原子%より多くなると黒化層が透明化して銅膜の反射が多くなり黒化しない、また黒化層のシート抵抗が高くなるため、60原子%以下であることが好ましい。
【0047】
成膜した黒化層中において酸素、銅、ニッケル及びモリブデンはどのような形態で含まれていてもよい。例えば銅とモリブデンとが混合焼結体を形成し、酸素を含有する銅−モリブデン混合焼結体が黒化層に含有されていてもよい。また、銅、ニッケルまたはモリブデンが例えば酸化銅(CuO、CuO、Cu)、酸化ニッケル(NiO)、酸化モリブデン(MoO、MoO、Mo)、さらにはCuMoO、CuMoO等の酸化物を生成し、該化合物が黒化層に含まれていてもよい。
【0048】
なお、黒化層は例えば酸素を含有する銅−ニッケル−モリブデン混合物のように、酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを同時に含有する1種類の物質のみで構成される層であってもよい。また、例えば上述した酸素を含有する銅−モリブデン混合焼結体や、銅の酸化物、ニッケルの酸化物、モリブデンの酸化物から選択される1種類以上の物質を含有する層であってもよい。
【0049】
黒化層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば20nm以上であることが好ましく、25nm以上とすることがより好ましい。黒化層は、上述のように黒色をしており、銅層による光の反射を抑制する黒化層として機能するが、黒化層の厚さが薄い場合には、十分な黒色が得られず銅層による光の反射を十分に抑制することができない場合がある。これに対して、黒化層の厚さを上記範囲とすることにより、銅層の反射をより抑制できるため好ましい。
【0050】
黒化層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、黒化層の厚さを厚くすると、光学特性の反射率、明度(L)、色度(a、b)が黒化層としては劣る特性となる場合があり、好ましくない。このため、黒化層の厚さは45nm以下とすることが好ましく、40nm以下とすることがより好ましい。
【0051】
また、黒化層はシート抵抗が十分に小さい場合、黒化層に配線等の電気部材とのコンタクト部を形成することができ、黒化層が最表面に位置する場合でも銅層を露出する必要がなくなるため好ましい。
【0052】
そして、黒化層に配線等の電気部材とのコンタクト部を形成するためには、黒化層のシート抵抗としては、1kΩ/□未満であることが好ましい。
【0053】
次に、本実施形態の導電性基板の構成例について説明する。
【0054】
上述のように、本実施形態の導電性基板は透明基材と、銅層と、酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを含有する黒化層と、を備えている。この際、銅層と、黒化層と、を透明基材上に配置する際の積層の順番は特に限定されるものではない。また、銅層と、黒化層と、はそれぞれ複数層形成することもできる。なお、銅層表面での光の反射の抑制のため、銅層の表面のうち光の反射を特に抑制したい面に黒化層が配置されていることが好ましい。また、銅層は黒化層に挟まれた構造を有していることがより好ましい。
【0055】
さらに、上述のようにシート抵抗の小さい黒化層を含む場合、該シート抵抗の小さい黒化層は導電性基板の最表面に配置されていることが好ましい。これは、シート抵抗の小さい黒化層は配線等の電気部材と接続できるため、接続しやすいように導電性基板の最表面に配置されていることが好ましいためである。
【0056】
具体的な構成例について、図1A図1B図2A図2Bを用いて以下に説明する。図1A図1B図2A図2Bは、本実施形態の導電性基板の、透明基材、銅層、黒化層の積層方向と平行な面における断面図の例を示している。
【0057】
例えば、図1Aに示した導電性基板10Aのように、透明基材11の一方の面11a側に銅層12と、黒化層13と、を一層ずつその順に積層することができる。また、図1Bに示した導電性基板10Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ銅層12A、12Bと、黒化層13A、13Bと、を一層ずつその順に積層することができる。なお、銅層12(12A、12B)、及び、黒化層13(13A、13B)を積層する順は、図1A図1Bの例に限定されず、透明基材11側から黒化層13(13A、13B)、銅層12(12A、12B)の順に積層することもできる。
【0058】
また、例えば黒化層を透明基材11の一方の面11a側に複数層設けた構成とすることもできる。例えば図2Aに示した導電性基板20Aのように、透明基材11の一方の面11a側に、第1の黒化層131と、銅層12と、第2の黒化層132と、をその順に積層することができる。
【0059】
この場合も透明基材11の両面に銅層、第1の黒化層、第2の黒化層を積層した構成とすることができる。具体的には図2Bに示した導電性基板20Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ第1の黒化層131A、131Bと、銅層12A、12Bと、第2の黒化層132A、132Bと、をその順に積層できる。
【0060】
なお、図1B図2Bでは、透明基材の両面に銅層と、黒化層と、を積層した場合において、透明基材11を対称面として透明基材11の上下に積層した層が対称になるように配置した例を示したが、係る形態に限定されるものではない。例えば、図2Bにおいて、透明基材11の一方の面11a側の構成を図1Aの構成と同様に、銅層12と、黒化層13と、をその順に積層した形態とし、透明基材11の上下に積層した層を非対称な構成としてもよい。
【0061】
ここまで、本実施形態の導電性基板について説明してきたが、本実施形態の導電性基板においては、透明基材上に銅層と、黒化層と、を設けているため、銅層による光の反射を抑制することができる。
【0062】
本実施形態の導電性基板の光の反射の程度については特に限定されないが、例えば本実施形態の導電性基板は、波長550nmの光の反射率は30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが特に好ましい。
【0063】
また波長350nm以上780nm以下の範囲の光に対する反射率の平均値である可視光平均反射率は30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが特に好ましい。
【0064】
これは波長550nmの光の反射率、および可視光平均反射率の少なくとも一方が30%以下の場合、例えばタッチパネル用の導電性基板として用いた場合でもディスプレイの視認性の低下をほとんど引き起こさないためである。ディスプレイの視認性の低下を特に抑制する観点から、波長550nmの光の反射率、及び可視光平均反射率は、共に30%以下であることがより好ましい。
【0065】
反射率の測定は、黒化層に光を照射するようにして行うことができる。すなわち、導電性基板に含まれる銅層及び黒化層のうち、黒化層側から測定を行うことができる。
【0066】
具体的には例えば図1Aのように透明基材11の一方の面11aに銅層12、黒化層13の順に積層した場合、黒化層13に光を照射できるように、図中Aで示した表面側から測定できる。
【0067】
また、図1Aの場合と銅層12と黒化層13との配置を換え、透明基材11の一方の面11aに黒化層13、銅層12の順に積層した場合、透明基材11を除いて黒化層13が最表面に位置する側である、透明基材11の面11b側から反射率を測定できる。
【0068】
なお、後述のように導電性基板は銅層及び黒化層をエッチングすることにより配線を形成できるが、上記反射率は導電性基板のうち透明基材を除いた場合に最表面に配置されている黒化層の、光が入射する側の表面における反射率を示している。このため、エッチング処理前、または、エッチング処理を行った後であれば、銅層及び黒化層が残存している部分での測定値が上記範囲を満たしていることが好ましい。
【0069】
また、測定した反射率から、明度(L)、色度(a、b)を算出することができる。明度(L)、及び色度(a、b)については特に限定されないが、明度(L)は60以下であることが好ましく、55以下であることがより好ましい。また、色度(a、b)は少なくとも一方が0未満、すなわち負であることが好ましく、a、b共に0未満であることがより好ましい。
【0070】
これは明度(L)が60以下の場合暗い色調となるために、光の反射を特に抑制できるからである。また、色度(a*、b*)の少なくとも一方が0未満の場合に、黒化層は光の反射を抑制するのに特に適した色となるためである。
【0071】
本実施形態の導電性基板は上述のように例えばタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。この場合導電性基板はメッシュ状の配線を備えた構成とすることができる。
【0072】
メッシュ状の配線を備えた導電性基板は、ここまで説明した本実施形態の導電性基板の銅層及び黒化層をエッチングすることにより得ることができる。
【0073】
例えば、二層の配線によりメッシュ状の配線とすることができる。具体的な構成例を図3に示す。図3はメッシュ状の配線を備えた導電性基板30を銅層、黒化層の積層方向の上面側から見た図を示している。図3に示した導電性基板30は、透明基材11と、図中X軸方向に平行な複数の配線31AとY軸方向に平行な配線31Bとを有している。なお、配線31A、31Bは銅層をエッチングして形成されており、該配線31A、31Bの上面および/または下面には図示しない黒化層が形成されている。また、黒化層は配線31A、31Bと同じ形状にエッチングされている。
【0074】
透明基材11と配線31A、31Bとの配置は特に限定されない。透明基材11と配線との配置の構成例を図4A図4Bに示す。図4A図4B図3のA−A´線での断面図に当たる。
【0075】
まず、図4Aに示したように、透明基材11の上下面にそれぞれ配線31A、31Bが配置されていてもよい。なお、この場合、配線31A、31Bの上面には、配線と同じ形状にエッチングされた黒化層32A、32Bが配置されている。
【0076】
また、図4Bに示したように、1組の透明基材11A、11Bを用い、一方の透明基材11Aを挟んで上下面に配線31A、31Bを配置し、かつ、一方の配線31Bは透明基材11Aと透明基材11Bとの間に配置されてもよい。この場合も、配線31A、31Bの上面には配線と同じ形状にエッチングされた黒化層32A、32Bが配置されている。なお、既述のように、黒化層と、銅層との配置は限定されるものではない。このため、図4A図4Bいずれの場合でも黒化層32A、32Bと配線31A、31Bの配置は上下を逆にすることもできる。また、例えば黒化層を複数層設けることもできる。
【0077】
ただし、黒化層は銅層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。このため、図4Bに示した導電性基板において、例えば、図中下面側からの光の反射を抑制する必要がある場合には、黒化層32A、32Bの位置と、配線31A、31Bの位置とをそれぞれ逆にすることが好ましい。また、黒化層32A、32Bに加えて、配線31Aと透明基材11Aとの間、および/または配線31Bと透明基材11Bとの間に黒化層をさらに設けてもよい。
【0078】
図3及び図4Aに示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は例えば、図1B図2Bのように透明基材11の両面に銅層12A、12Bと、黒化層13A、13B(131A、132A、131B、132B)と、を備えた導電性基板から形成できる。
【0079】
図1Bの導電性基板を用いて形成した場合を例に説明すると、まず、透明基材11の一方の面11a側の銅層12A及び黒化層13Aを、図1B中X軸方向に平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。図1B中のX軸方向とは、図1B中の各層の幅方向と平行な方向を意味している。
【0080】
そして、透明基材11のもう一方の面11b側の銅層12B及び黒化層13Bを図1B中Y軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。なお、図1B中のY軸方向は、紙面と垂直な方向を意味している。
【0081】
以上の操作により図3図4Aに示したメッシュ状の配線を有する導電性基板を形成することができる。なお、透明基材11の両面のエッチングは同時に行うこともできる。すなわち、銅層12A、12B、黒化層13A、13Bのエッチングは同時に行ってもよい。
【0082】
図3に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は、図1Aまたは図2Aに示した導電性基板を2枚用いることにより形成することもできる。図1Aの導電性基板を用いた場合を例に説明すると、図1Aに示した導電性基板2枚についてそれぞれ、銅層12及び黒化層13を、X軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。そして、上記エッチング処理により各導電性基板に形成した線状のパターンが互いに交差するように向きをあわせて2枚の導電性基板を貼り合せることによりメッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。2枚の導電性基板を貼り合せる際に貼り合せる面は特に限定されるものではなく、図4Bのように銅層12等が積層された図1Aにおける面Aと、銅層12等が積層されていない図1Aにおける面11bとを貼り合せてもよい。
【0083】
なお、黒化層は銅層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。このため、図4Bに示した導電性基板において、図中下面側からの光の反射を抑制する必要がある場合には、黒化層32A、32Bの位置と、配線31A、31Bの位置とをそれぞれ逆に配置することが好ましい。また、黒化層32A、32Bに加えて、配線31Aと透明基材11Aとの間、および/または配線31Bと透明基材11Bとの間に黒化層をさらに設けてもよい。
【0084】
また、例えば透明基材11の銅層12等が積層されていない図1Aにおける面11b同士を貼り合せて断面が図4Aに示した構造となるように貼り合せてもよい。
【0085】
なお、図3図4A図4Bに示したメッシュ状の配線を有する導電性基板における配線の幅や、配線間の距離は特に限定されるものではなく、例えば、配線に流す電流量等に応じて選択することができる。
【0086】
また、図3図4A図4Bにおいては、直線形状の配線を組み合わせてメッシュ状の配線(配線パターン)を形成した例を示しているが、係る形態に限定されるものではなく、配線パターンを構成する配線は任意の形状とすることができる。例えばディスプレイの画像との間でモアレ(干渉縞)が発生しないようメッシュ状の配線パターンを構成する配線の形状をそれぞれ、ぎざぎざに屈曲した線(ジグザグ直線)等の各種形状にすることもできる。
【0087】
このように2層の配線から構成されるメッシュ状の配線を有する導電性基板は、例えば投影型静電容量方式のタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。
(導電性基板の製造方法)
次に本実施形態の導電性基板の製造方法の構成例について説明する。
【0088】
本実施形態の導電性基板の製造方法は、
透明基材を準備する透明基材準備工程と、
透明基材の少なくとも一方の面側に銅層を形成する銅層形成工程と、
透明基材の少なくとも一方の面側に酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを含有し、酸素を5原子%以上60原子%以下含有する黒化層を形成する黒化層形成工程と、を有することが好ましい。
【0089】
以下に本実施形態の導電性基板の製造方法について説明するが、以下に説明する点以外については上述の導電性基板の場合と同様の構成とすることができるため一部説明を省略する。
【0090】
上述のように、本実施形態の導電性基板においては、銅層と、黒化層と、を透明基材上に配置する際の積層の順番は特に限定されるものではない。また、銅層と、黒化層と、はそれぞれ複数層形成することもできる。このため、上記銅層形成工程と、黒化層形成工程の順番や、実施する回数については特に限定されるものではなく、形成する導電性基板の構造に合わせて任意の回数、タイミングで実施することができる。
【0091】
透明基材を準備する工程は、例えば可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板等により構成された透明基材を準備する工程であり、具体的な操作は特に限定されるものではない。例えば後段の各工程に供するため必要に応じて任意のサイズに切断等を行うことができる。
【0092】
なお、可視光を透過する絶縁体フィルムとして特に好適に用いることができるフィルムについては既述のため、ここでは説明を省略する。
【0093】
次に銅層形成工程について説明する。
【0094】
銅層は既述のように、銅薄膜層を有することが好ましい。また、銅薄膜層と銅めっき層とを有することもできる。このため、銅層形成工程は、例えば乾式めっき法により銅薄膜層を形成する工程を有することができる。また、銅層形成工程は、乾式めっき法により銅薄膜層を形成する工程と、該銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法により銅めっき層を形成する工程と、を有していてもよい。
【0095】
銅薄膜層の形成に用いる乾式めっき法としては、特に限定されるものではなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法等を用いることができる。特に、銅薄膜層の形成に用いる乾式めっき法としては、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。
【0096】
巻取式スパッタリング装置を用いた場合を例に銅薄膜層を形成する工程を説明する。まず、銅ターゲットをスパッタリング用カソードに装着し、真空チャンバー内に基材、具体的には透明基材や黒化層を形成した透明基材等をセットする。真空チャンバー内を真空排気後、Arガスを導入して装置内を0.13Pa〜1.3Pa程度に保持する。この状態で、巻出ロールから基材を例えば毎分1〜20m程度の速さで搬送しながら、カソードに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給し、スパッタリング放電を行い、基材上に所望の銅薄膜層を連続成膜することができる。
【0097】
湿式めっき法により銅めっき層を形成する工程における条件、すなわち、電気めっき処理の条件は、特に限定されるものではなく、常法による諸条件を採用すればよい。例えば、銅めっき液を入れためっき槽に銅薄膜層を形成した基材を供給し、電流密度や、基材の搬送速度を制御することによって、銅めっき層を形成できる。
【0098】
次に、黒化層形成工程について説明する。
【0099】
黒化層形成工程も特に限定されるものではないが、既述のように、スパッタリング法により、黒化層を成膜する工程とすることができる。
【0100】
この際、ターゲットとしては例えば、銅−ニッケル−モリブデンターゲットを用いることができる。銅−ニッケル−モリブデンターゲットは、銅、ニッケル、及びモリブデンを含有するターゲットであれば良く、銅−ニッケル−モリブデンターゲットとしては、例えば、銅−ニッケル−モリブデン混合焼結のターゲットや、銅−ニッケル−モリブデンの熔解合金ターゲットを好適に用いることができる。



【0101】
また、既述のように銅−ニッケル合金ターゲットと、モリブデンターゲットとを用い、あるいは銅のターゲットとニッケル−モリブデン合金ターゲットとを用いて2元同時スパッタリング法により成膜することもできる。
【0102】
スパッタリングの際に用いるターゲットの組成は特に限定されるものではなく、成膜する黒化層の組成等にあわせて任意に選択することができる。なお、スパッタリング中のターゲットからの元素の飛び易さは、元素の種類により異なる。このため、目的とする黒化層の組成と、ターゲット中の元素の飛び易さに応じてターゲットの組成を選択することができる。
【0103】
例えば、銅−ニッケル−モリブデン混合焼結のターゲットは、モリブデンを4原子%以上75原子%以下、ニッケルを10原子%以上80原子%以下の割合で含んでいることが好ましい。また、モリブデンを7原子%以上65原子%以下の割合で含有することがより好ましい。なお、残部は銅により構成することができる。
【0104】
また、スパッタリング法により黒化層を成膜する際、チャンバー内に酸素を含有するガスを供給しながら黒化層を成膜できる。チャンバー内に供給するガス中の酸素の供給割合は特に限定されないが、酸素を5体積%以上45体積%以下の割合で含有するガスをチャンバー内に供給しながらスパッタリング法により黒化層の成膜を実施することが好ましい。
【0105】
特に、チャンバー内へ供給するガス中の酸素の含有割合は7.5体積%以上42体積%以下とすることがより好ましい。
【0106】
なお、スパッタリングを行う際、チャンバー内に供給するガスは、酸素以外の残部については不活性ガスとすることが好ましい。酸素以外の残部については例えばアルゴン、キセノン、ネオン、ヘリウムから選択される1種類以上を供給することができる。
【0107】
そして、ここで説明した導電性基板の製造方法により得られる導電性基板は、既述の導電性基板と同様に、銅層は厚さが100nm以上であることが好ましく、150nm以上とすることがより好ましい。また、銅層の厚さの上限値は特に限定されないが、3μm以下であることが好ましく、700nm以下であることがより好ましい。
【0108】
また、ここで説明した導電性基板の製造方法により得られる導電性基板においても、黒化層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば20nm以上であることが好ましく、25nm以上とすることがより好ましい。黒化層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、45nm以下とすることが好ましく、40nm以下とすることがより好ましい。
【0109】
成膜した黒化層は酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを含有することができる。黒化層中の各成分の含有割合は特に限定されるものではないが、黒化層に含まれる金属元素である銅、ニッケル及びモリブデンの合計を100原子%とした場合に、モリブデンの含有量が2原子%以上70原子%以下であることが好ましい。これは、黒化層に含まれる金属元素中のモリブデンの含有量を2原子%以上とすることで、黒化層表面での光の反射率を特に低下させることができるためである。また、金属元素中のモリブデンの含有量を70原子%以下とすることで、高いエッチング性を示し、所望のパターンを有する導電性基板を容易に作製することができるためである。
【0110】
また、黒化層中に含まれる酸素は5原子%以上60原子%以下であることが好ましく、20原子%以上55原子%以下であることがより好ましい。
【0111】
これは、黒化層中に酸素が5原子%以上含まれていることにより黒化層を十分な黒色とすることができ、光の反射を特に抑制できるためである。また黒化層中の酸素の含有量が60原子%より多くなると黒化層のシート抵抗が高くなるため、60原子%以下であることが好ましい。
【0112】
成膜した黒化層中において酸素、銅、ニッケル、及びモリブデンはどのような形態で含まれていてもよい。例えば銅とモリブデンとが混合焼結体を形成し、酸素を含有する銅−モリブデン混合焼結体が黒化層に含有されていてもよい。また、銅、ニッケル、またはモリブデンが例えば酸化銅(CuO、CuO、Cu)、酸化ニッケル(NiO)、酸化モリブデン(MoO、MoO、Mo)、さらにはCuMoO、CuMoO等の酸化物を生成し、該化合物が黒化層に含まれていてもよい。
【0113】
なお、黒化層は例えば酸素を含有する銅−ニッケル−モリブデン混合物のように、酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを同時に含有する1種類の物質のみで構成される層であってもよい。また、例えば上述した酸素を含有する銅−モリブデン混合焼結体や、銅の酸化物、ニッケルの酸化物、モリブデンの酸化物から選択される1種類以上の物質を含有する層であってもよい。
【0114】
そして成膜した黒化層はシート抵抗が十分に小さい場合、黒化層に配線等の電気部材とのコンタクト部を形成することができ、黒化層が最表面に位置する場合でも銅層を露出する必要がなくなるため好ましい。
【0115】
そして、黒化層に配線等の電気部材とのコンタクト部を形成するためには、黒化層のシート抵抗としては、1kΩ/□未満であることが好ましい。
【0116】
そして、ここで説明した導電性基板の製造方法により得られる導電性基板は、メッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。この場合、上述の工程に加えて、銅層と、黒化層と、をエッチングすることにより、配線を形成するエッチング工程をさらに有することができる。
【0117】
係るエッチング工程は例えば、まず、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストを、導電性基板の最表面に形成する。図1Aに示した導電性基板の場合、導電性基板に配置した黒化層13の露出した面A上にレジストを形成することができる。なお、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストの形成方法は特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィー法により形成することができる。
【0118】
次いで、レジスト上面からエッチング液を供給することにより、銅層12、黒化層13のエッチングを実施することができる。
【0119】
なお、図1Bのように透明基材11の両面に銅層、黒化層を配置した場合には、導電性基板の最表面A及びBにそれぞれ所定の形状の開口部を有するレジストを形成し、透明基材11の両面に形成した銅層、黒化層を同時にエッチングしてもよい。
【0120】
また、透明基材11の両側に形成された銅層及び黒化層について、一方の側ずつエッチング処理を行うこともできる。すなわち、例えば、銅層12A及び黒化層13Aのエッチングを行った後に、銅層12B及び黒化層13Bのエッチングを行うこともできる。
【0121】
黒化層は銅層とほぼ同様のエッチング液への反応性を示すことから、エッチング工程において用いるエッチング液は特に限定されるものではなく、一般的に銅層のエッチングに用いられるエッチング液を好ましく用いることができる。エッチング液としては例えば、塩化第二鉄と、塩酸と、の混合水溶液をより好ましく用いることができる。エッチング液中の塩化第二鉄と、塩酸との含有量は特に限定されるものではないが例えば、塩化第二鉄を5質量%以上50質量%以下の割合で含むことが好ましく、10質量%以上30質量%以下の割合で含むことがより好ましい。また、エッチング液は例えば、塩酸を1質量%以上50質量%以下の割合で含むことが好ましく、1質量%以上20質量%以下の割合で含むことがより好ましい。なお、残部については水とすることができる。
【0122】
エッチング液は室温で用いることもできるが、反応性を高めるため加温していることが好ましく、例えば40℃以上50℃以下に加熱して用いることが好ましい。
【0123】
上述したエッチング工程により得られるメッシュ状の配線の具体的な形態については、既述のとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0124】
また、既述のように、図1A図2Aに示した透明基材11の一方の面側に銅層、黒化層を有する導電性基板を2枚貼り合せてメッシュ状の配線を備えた導電性基板とする場合には、導電性基板を貼り合せる工程をさらに設けることができる。この際、2枚の導電性基板を貼り合せる方法は特に限定されるものではなく、例えば接着剤等を用いて接着することができる。
【0125】
以上に本実施形態の導電性基板及び導電性基板の製造方法について説明した。係る導電性基板によれば、銅層と黒化層とがエッチング液に対してほぼ同じ反応性を示すことから、同時にエッチング処理を行うことができ、容易に所望の配線を形成することができる。また、黒化層は黒色であるため、銅層による光の反射を抑制することができ、例えばタッチパネル用の導電性基板とした場合に、視認性の低下を抑制することができる。
【実施例】
【0126】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって、なんら限定されるものではない。
【0127】
まず、後述する各実験例において作製した試料の評価方法について説明する。
(評価方法)
(1)光学特性(反射率、明度、色度)
以下の実験例2、実験例3において作製した導電性基板について、光学特性(反射率)の測定を行い、必要に応じて測定した光学特性(反射率)から明度(L)、色度(a、b)を算出した。
【0128】
反射率の測定は、紫外可視分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 型式:U−4000)に反射率測定ユニットを設置して行った。
【0129】
以下の実験例2、実験例3では断面形状が図1Aと同様の構造を有する導電性基板を作製した。そこで、作製した導電性基板の銅層及び黒化層を形成した側の図1Aにおける最表面Aに対して、入射角5°、受光角5°として、波長350nm以上780nm以下の範囲の光を照射した際の反射率を測定した。なお、測定に際しては波長350nm以上780nm以上の範囲で、波長を1nmごとに変化させた光を照射し、各波長についての反射率を測定した。
【0130】
そして、波長が350nm以上780nm以下の範囲の光に対する反射率の平均値を可視光平均反射率とした。また、波長が550nmの光に対する反射率の測定値を波長550nmの光に対する反射率とした。
【0131】
なお、測定の際にはPETフィルムの反りを矯正するためガラス基板上に各実験例の試料を載置しクランプで固定して、黒化層側から光を照射して測定した。
【0132】
測定した反射率から、JIS Z8781−4:2013に準拠した色彩計算プログラムを用いて、光源A、視野2度の条件でCIE 1976(L,a,b)色空間上の座標を計算した。
(2)溶解試験
以下の実験例1、実験例3において作製した、透明基材上に黒化層を形成した試料をエッチング液に浸漬して黒化層の溶解試験を行った。
【0133】
エッチング液としては、銅層のエッチング液として用いられる塩化第二鉄10質量%と、塩酸10質量%と、残部が水からなる水溶液を用い、エッチング液の温度は室温(25℃)として溶解試験を実施した。
【0134】
次に溶解試験の評価方法について説明する。
【0135】
溶解試験の評価を規定するため、実験例1で用いた透明基材である縦5cm、横5cm、厚さ0.05mmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)の一方の面上の全面に、厚さ300nmの銅層を形成した試料をエッチング液に浸漬する予備実験を行った。この場合、銅層は10秒以内に溶解することが確認できた。
【0136】
そこで、各実験例で作製した透明基材上に黒化層を形成した試料を上記エッチング液に浸漬後、黒化層が全量溶解するまでに要した時間により以下のように評価を行った。
【0137】
エッチング液に浸漬後10秒以内に黒化層が全量溶解したものを◎と評価した。また、エッチング液に浸漬後、黒化層が全量溶解するのに要した時間が10秒より長く30秒以内のものを○とし、30秒より長く1分以内のものを◇とし、1分よりも長く3分以内のものを△と評価した。そして、エッチング液に浸漬後、3分を超えても黒化層が全量は溶解せず一部が残存したものを×と評価した。
【0138】
なお、溶解試験において黒化層が1分以内に溶解する場合には、エッチング液に対して銅層と同様の反応性を有しているといえ、係る黒化層と、銅層とを含む導電性基板は同時にエッチング処理できる銅層と黒化層を備えた導電性基板といえる。
(3)EDS分析
実験例1、実験例3において作製した、透明基材上に黒化層を形成した試料の黒化層の組成について、SEM−EDS装置(SEM:日本電子株式会社製 型式:JSM−7001F、EDS:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製 型式:検出器 UltraDry 解析システム NORAN System 7)によりEDS分析を行った。
(4)シート抵抗
実験例1において作製した、透明基材上に黒化層を形成した試料について、黒化層のシート抵抗の評価を行った。
【0139】
シート抵抗は、四探針法を用いて測定を行った。四探針法は測定する試料の表面に四本の針状電極を同一直線上に配置し、外側の二探針間に一定電流を流し、内側の二探針間に生じる電位差を測定して抵抗を測定する方法である。測定に際しては四探針測定器(三菱化学株式会社製 型式:Loresta IP)を用いて測定を行った。
【0140】
以下に各実験例における試料の製造条件、及びその評価結果を説明する。
[実験例1]
実験例1においては、以下に示す実験例1−1−1〜実験例1−1−14の14種の試料を作製し、黒化層の組成についてのEDS分析、溶解試験、及びシート抵抗評価を実施した。また、実験例1−2−1〜実験例1−2−4の4種の試料を作製し、溶解試験を実施した。
【0141】
なお、本実験例は後述する実験例2のための予備実験として実施したものであり、参考例となる。
(1)銅−ニッケル−モリブデン混合焼結ターゲットの作製
実験例1、2において黒化層を成膜する際に用いるためにまず、銅−ニッケル−モリブデン混合焼結のターゲットを作製した。以下に具体的な手順を示す。
【0142】
出発原料粉末として、Cu粉末(高純度化学製 3N CUE13PB <43μm)と、Ni粉末(高純度化学製 3N NIE08PB 63μm)と、Mo粉末(新日本金属製、2次粒子径約200μm〜500μm)とを所定量秤量し、乳鉢で混合した。この際、各実験番号における出発原料粉末の混合比が、原子%で表1に示す値となるように秤量、混合した。
【0143】
次いで、得られた出発原料粉末の混合粉末を内径3インチのグラファイト型に入れてホットプレス法で焼結し、組成の異なる実験No.1〜実験No.7の7種類の焼結体を作製した。なお、ホットプレス法で焼結する際の面圧は136kg重/cm、ホットプレス温度(HP温度)は表1中に示す900℃または1000℃、保持時間は1時間とした。得られた焼結体の相対密度は表1に示すように82.0%から96.8%であり、スパッタターゲットとして使用可能であることが確認できた。
【0144】
作製した焼結体のうち、実験No.3の焼結体についてバッキングプレートに貼り付けてターゲットとし、以下の実験例1−1−1〜実験例1−1−7に供した。また、実験No.4焼結体についてバッキングプレートに貼り付けてターゲットとし、以下の実験例1−1−8〜実験例1−1−12に供した。さらに、実験No.6、実験No.7の焼結体について、バッキングプレートに貼り付けてターゲットとし、以下の実験例1−1−13、実験例1−1−14に供した。
【0145】
【表1】

(2)実験例1−1−1〜実験例1−1−14、実験例1−2−1〜実験例1−2−4の試料の作製条件
(実験例1−1−1〜実験例1−1−7)
まず、透明基材であるPET基材上に、酸素、銅、ニッケル、及びモリブデンを含有する黒化層を形成した試料(実験例1−1−1〜実験例1−1−7)を作製した。具体的な手順について、以下に説明する。
【0146】
なお、実験例1−1−1〜実験例1−1−6は黒化層を成膜する際にチャンバー内に供給するガス中の、酸素ガスと、アルゴンガスとの比が各実験例で異なる点以外は同様にして試料を作製した。また、実験例1−1−7は、実験例1−1−4の条件において、ターゲットに200Wの電力を印加するところ、125Wの電力とした以外は同様にして試料を作製した。
【0147】
まず、縦5cm、横5cm、厚さ0.05mmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET、商品名「ルミラーU48」、東レ株式会社製)製の透明基材を準備した。
【0148】
次に、直流スパッタリング法により黒化層を成膜した。
【0149】
黒化層の成膜はスパッタリング装置(アルバック株式会社製 型式:SIH−450)を用いて行った。
【0150】
黒化層を成膜する際、実験例1−1−1〜実験例1−1−7では、黒化層を成膜する際のターゲットとしていずれも表1に示した実験No.3の組成が42Cu−42Ni−16Mo混合焼結ターゲットを用い、上述のスパッタリング装置にセットした。
【0151】
そして、準備した透明基材をスパッタリング装置の基板ホルダーにセットし、チャンバー内を真空にした。なお、スパッタリング前のチャンバー内の到達真空度は1.5×10−4Paとした。
【0152】
チャンバー内を真空にした後、黒化層をスパッタリングにより成膜している間、チャンバー内には酸素ガスとアルゴンガスとを合計で10SCCMになるように供給した。
【0153】
黒化層の成膜時にチャンバー内に供給する酸素ガスとアルゴンガスとの比は、各実験例について、体積%比で表2に示した値となるように調整した。すなわち、実験例1−1−1〜実験例1−1−6についてそれぞれ体積%比で(O:Ar)=10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、40:60となるように調整した。実験例1−1−7については、実験例1−1−4と同様に、(O:Ar)=25:75としている。なお、表2にはチャンバーに供給したガス中の酸素ガスの比率(体積%)のみを示している。
【0154】
また、黒化層を成膜する際には、透明基材をセットした基板ホルダーを30rpmの速度で回転させた。
【0155】
黒化層の成膜に当たってはまず、ターゲットに200Wの電力を印加して20分スパッタを行い、成膜速度を測定した。そして、測定した成膜速度から膜厚が300nmになるまでの成膜時間を算出し、再度200WのDC電力をターゲットに印加して所定時間スパッタリングを行い、膜厚300nm黒化層を成膜した。
【0156】
なお、実験例1−1−7については既述のようにターゲットに125Wの電力を印加した点以外は、同様にして膜厚300nmの黒化層を成膜した。
【0157】
以上の条件、手順により実験例1−1−1〜実験例1−1−7の試料を作製した。
(実験例1−1−8〜実験例1−1−12)
また、作製した実験No.4の焼結体(組成が60Cu−25Ni−15Mo)から得られた混合焼結ターゲットを使用して、実験例1−1−8〜実験例1−1−12の5種の試料を作製した。なお、実験例1−1−8〜実験例1−1−12では、ターゲットを変更し、黒化層の成膜時にチャンバー内に供給する酸素ガスとアルゴンガスとの比、及びターゲットに供給する電力量を表2に示した値にした点以外は、実験例1−1−1〜実験例1−1−7と同様にして試料を作製した。
(実験例1−1−13)
作製した実験No.6の焼結体(組成が28Cu−67Ni−5Mo)から得られた混合焼結ターゲットを使用して、実験例1−1−13の試料を作製した。なお、実験例1−1−13では、ターゲットを変更し、黒化層の成膜時にチャンバー内に供給する酸素ガスとアルゴンガスとの比、及びターゲットに供給する電力量を表2に示した値にした点以外は、実験例1−1−1〜実験例1−1−7と同様にして試料を作製した。
(実験例1−1−14)
作製した実験No.7の焼結体(組成が20Cu−76Ni−4Mo)から得られた混合焼結ターゲットを使用して、実験例1−1−14の試料を作製した。なお、実験例1−1−14では、ターゲットを変更し、黒化層の成膜時にチャンバー内に供給する酸素ガスとアルゴンガスとの比、及びターゲットに供給する電力量を表2に示した値にした点以外は、実験例1−1−1〜実験例1−1−7と同様にして試料を作製した。
(実験例1−2−1〜実験例1−2−4)
また比較のため、酸素、銅、ニッケル、モリブデンを含有する黒化層にかえて、モリブデンの酸化膜を形成した点以外は、それぞれ上述の実験例1−1−1〜実験例1−1−4と同様にして実験例1−2−1〜実験例1−2−4の試料を作製した。実験例1−2−1〜実験例1−2−4は、使用するターゲットを42Cu−42Ni−16Mo混合焼結ターゲットから、Moターゲットに変更した以外はそれぞれ実験例1−1−1〜実験例1−1−4と同じ条件で試料を作製した。
【0158】
なお、実験例1−2−1〜実験例1−2−4の試料については後述する溶解試験のみを実施した。
(3)評価結果
以下に、実験例1−1−1〜実験例1−1−14、実験例1−2−1〜実験例1−2−4で作製した試料の評価結果を説明する。
(黒化層の組成評価:EDS分析結果)
実験例1−1−1〜実験例1−1−14で作製した試料について、EDSを用いて黒化層の組成分析を行った。測定結果を表2に示す。
【0159】
EDS分析から、実験例1−1−1〜実験例1−1−14で透明基材上に成膜した黒化層はいずれも銅、ニッケル、モリブデン、酸素を含有することが確認できた。特に実験例1−1−1〜実験例1−1−6の比較から、酸素濃度を増加することにより、黒化層中の酸素濃度も増加するが、酸素濃度を変化しても、成膜した黒化層中の金属成分中の銅、ニッケル、モリブデンの比率の変化は少ないことが確認できた。
【0160】
【表2】

(溶解試験結果)
実験例1−1−1〜実験例1−1−5、実験例1−1−8、実験例1−1−10〜実験例1−1−14で作製した試料について、エッチング液として塩化第二鉄10質量%と、塩酸10質量%と、残部が水からなる水溶液を用いて、25℃で溶解試験を行った。その結果を表3に示す。
【0161】
【表3】

表3に示した結果によると、実験例1−1−1〜実験例1−1−5、実験例1−1−8、実験例1−1−10〜実験例1−1−14のいずれの試料においてもエッチング液に試料を浸漬後、30秒以内に黒化層が溶解していることが確認できた。すなわち、これらの実験例の黒化層は、銅層と同等の溶解性を示すことが確認できた。
【0162】
以上の結果から、実験例1−1−1〜実験例1−1−5、実験例1−1−8、実験例1−1−10〜実験例1−1−14で透明基材上に作製した黒化層を銅層の上に形成し、パターニングを行った場合、銅層、及び黒化層を同時にエッチング処理できることを確認できた。このため、後述する実験例2で作製する実験例2−1〜実験例2−11の導電性基板はいずれも同時にエッチング処理を行うことができる銅層と、黒化層と、を備えた導電性基板であることを確認できた。
【0163】
また、実験例1−2−1〜実験例1−2−4の試料についても同様にして溶解試験を実施した。結果を表4に示す。
【0164】
実験例1−2−1〜実験例1−2−4の試料については、表4に示すように、エッチング液に試料を浸漬後、モリブデンの酸化膜が溶解するのに30秒よりもはるかに長い時間要することが確認できた。
【0165】
【表4】

(シート抵抗の評価)
そして、実験例1−1−1〜実験例1−1−5で作製した試料について黒化層のシート抵抗の評価を行った。結果を表5に示す。
【0166】
【表5】

表5から、黒化層を成膜する際にチャンバーへの供給ガス中の酸素比率が10体積%〜25体積%である実験例1−1−1〜実験例1−1−4では、いずれの試料についてもシート抵抗は1kΩ/□未満であり、十分小さいことが確認できた。これに対して、黒化層を成膜する際にチャンバーへの供給ガス中の酸素比率が30体積%である実験例1−1−5では急激にシート抵抗が増加することが確認できた。
[実験例2]
次に、実験例1で行った予備実験の結果を参考に導電性基板を作製し、その評価を行った。
【0167】
本実験例では、実験例2−1〜実験例2−12として、表6に示した12種類の条件で成膜した黒化層、またはモリブデン酸化膜を備え、図1Aに示した構造を有する導電性基板を作製した。すなわち透明基材の片側面上に銅層、さらに黒化層、またはモリブデン酸化膜が形成された構造の導電性基板を作製した。
【0168】
以下に説明する実験例2−1〜実験例2−11は実施例となる。また実験例2−12は比較例となる。
【0169】
以下に実験例2−1〜実験例2−12の導電性基板の作製手順について詳述する。
(実験例2−1)
ここではまず、実験例2−1の導電性基板の作製手順を例に説明する。
【0170】
まず、縦5cm、横5cm、厚さ0.05mmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET、商品名「ルミラーU48」、東レ株式会社製)製の透明基材11を準備した。
【0171】
次に透明基材11の一方の面の全面に銅層12を形成した。銅層12は、銅薄膜層、及び銅めっき層を有している。従ってまず、スパッタリング法により銅薄膜層を形成し、次いで、該銅薄膜層を給電層として湿式めっき法により銅めっき層を形成し、銅層とした。
【0172】
具体的にはまず、Cuターゲット(住友金属鉱山株式会社製)を用いた直流スパッタリング法により、透明基材11の一方の面上に100nmの厚さの銅薄膜層を成膜した。その後、電気めっきにより銅めっき層を0.5μm積層し、銅層12とした。
【0173】
次に、銅層12上の全面に、膜厚を25nmとした点を除いて、実験例1−1−1と同様の条件でスパッタリング法により黒化層13を成膜した。
【0174】
すなわち、黒化層を形成する際に、スパッタリングターゲットは実験例1−1−1と同じ、42Cu−42Ni−16Mo混合焼結ターゲットを使用した。そして、黒化層を成膜する際にチャンバー内に供給する酸素、アルゴンのガス比(体積%)をO:Ar=10:90とし、膜厚のみ300nmではなく25nmに変更した。
【0175】
以上の手順により導電性基板を作製し、以下の評価に供した。
(実験例2−2〜実験例2−4)
実験例2−2〜実験例2−4については黒化層の成膜条件を変更した点以外は実験例2−1と同様にして導電性基板を作製した。
【0176】
具体的には、銅層までは実験例2−1と同様にして作製した後、実験例2−2〜実験例2−4は、黒化層の膜厚を25nmとした点以外はそれぞれ、実験例1−1−2〜実験例1−1−4と同じ条件で銅層上に黒化層を成膜した。
【0177】
すなわち、例えば実験例2−2の場合、黒化層を形成する際に、スパッタリングターゲットは実験例1−1−2と同じ、42Cu−42Ni−16Mo混合焼結ターゲットを使用した。そして、黒化層を成膜する際にチャンバー内に供給する酸素、アルゴンのガス比(体積%)を実験例1−1−2と同じO:Ar=15:85とし、膜厚のみ300nmではなく25nmに変更した。
(実験例2−5)
実験例2−5については、黒化層の膜厚を38nmとした点以外は実験例2−4と同様にして導電性基板を作製した。
(実験例2−6)
実験例2−6については、黒化層の膜厚を50nmとした点以外は実験例2−4と同様にして導電性基板を作製した。
(実験例2−7)
実験例2−7については、銅層までは実験例2−1と同様にして作製した後、銅層上に黒化層の膜厚を25nmとした点以外は、実験例1−1−5と同じ条件で黒化層を成膜した。
【0178】
すなわち、42Cu−42Ni−16Mo混合焼結ターゲットを使用し、黒化層を成膜する際にチャンバー内に供給する酸素、アルゴンのガス比(体積%)をO:Ar=30:70として、膜厚が25nmの黒化層を成膜した。
(実験例2−8)
実験例2−8については黒化層の成膜条件を変更した点以外は実験例2−1と同様にして導電性基板を作製した。
【0179】
具体的には、銅層までは実験例2−1と同様にして作製した後、黒化層の膜厚を32nmとした点以外は、実験例1−1−10と同じ条件で銅層上に黒化層を成膜した。
【0180】
すなわち、黒化層を形成する際に、スパッタリングターゲットは実験例1−1−10と同じ、60Cu−25Ni−15Mo混合焼結ターゲットを使用した。そして、黒化層を成膜する際にチャンバー内に供給する酸素、アルゴンのガス比(体積%)を実験例1−1−10と同じO:Ar=25:75とし、膜厚のみ300nmではなく32nmに変更した。
(実験例2−9)
実験例2−9については黒化層の成膜条件を変更した点以外は実験例2−1と同様にして導電性基板を作製した。
【0181】
具体的には、銅層までは実験例2−1と同様にして作製した後、黒化層の膜厚を30nmとした点以外は、実験例1−1−12と同じ条件で銅層上に黒化層を成膜した。
【0182】
すなわち、黒化層を形成する際に、スパッタリングターゲットは実験例1−1−12と同じ、60Cu−25Ni−15Mo混合焼結ターゲットを使用した。そして、黒化層を成膜する際にチャンバー内に供給する酸素、アルゴンのガス比(体積%)を実験例1−1−12と同じO:Ar=30:70とし、膜厚のみ300nmではなく30nmに変更した。
(実験例2−10)
実験例2−10については黒化層の成膜条件を変更した点以外は実験例2−1と同様にして導電性基板を作製した。
【0183】
具体的には、銅層までは実験例2−1と同様にして作製した後、黒化層の膜厚を25nmとした点以外は、実験例1−1−13と同じ条件で銅層上に黒化層を成膜した。
【0184】
すなわち、黒化層を形成する際に、スパッタリングターゲットは実験例1−1−13と同じ、28Cu−67Ni−5Mo混合焼結ターゲットを使用した。そして、黒化層を成膜する際にチャンバー内に供給する酸素、アルゴンのガス比(体積%)を実験例1−1−13と同じO:Ar=30:70とし、膜厚のみ300nmではなく25nmに変更した。
(実験例2−11)
実験例2−11については黒化層の成膜条件を変更した点以外は実験例2−1と同様にして導電性基板を作製した。
【0185】
具体的には、銅層までは実験例2−1と同様にして作製した後、黒化層の膜厚を25nmとした点以外は、実験例1−1−14と同じ条件で銅層上に黒化層を成膜した。
【0186】
すなわち、黒化層を形成する際に、スパッタリングターゲットは実験例1−1−14と同じ、20Cu−76Ni−4Mo混合焼結ターゲットを使用した。そして、黒化層を成膜する際にチャンバー内に供給する酸素、アルゴンのガス比(体積%)を実験例1−1−14と同じO:Ar=30:70とし、膜厚のみ300nmではなく25nmに変更した。
(実験例2−12)
実験例2−12については、銅層までは実験例2−1と同様にして作製した後、銅層上に黒化層にかえてモリブデンの酸化膜を成膜した。モリブデンの酸化膜は、膜厚を25nmとした点以外は実験例1−2−4と同様にして成膜した。
【0187】
モリブデンの酸化膜は具体的には、Moターゲットを用い、チャンバー内に供給する酸素、及びアルゴンのガス比(体積%)をO:Ar=25:75として、膜厚が25nmとなるように成膜した。
【0188】
以上の工程により得られた各実験例の導電性基板の評価結果について説明する。
(光学特性:反射率の評価)
作製した実験例2−1〜実験例2−12の導電性基板について反射率測定を実施した。その結果を表6にまとめて示す。また、一部の試料の反射率の波長依存性を図5に示す。
【0189】
【表6】

実施例である実験例2−1から実験例2−11の導電性基板における、波長550nmの光の反射率、及び波長が350nm以上780nm以下の範囲の光に対する反射率の平均値である可視光平均反射率はいずれも、30%未満であることが確認できた。
【0190】
また反射率から計算した明度、色度の値は表6に示すとおり、実験例2−1から実験例2−11のうち、実験例2−6については明度Lが55を若干超えたものの、実験例2-6を除く実験例2−1〜実験例2−11はいずれも明度Lは約55以下と低くなっていることを確認できた。特に実験例2−1〜実験例2−5、実験例2−8〜実験例2−11については色度(a,b)はいずれも負であり、黒化層として特に良好な特性であることを確認できた。
【0191】
実施例である実験例2−4〜実験例2−7の波長350nm以上780nm以下の範囲の光に対する反射率の測定結果を図5に示す。
【0192】
実験例2−7は上述のように、黒化層を成膜する際のチャンバーへの供給ガス中の酸素比率が28体積%を超え、膜厚以外は同条件で黒化層を成膜した実験例1−1−5のEDS分析の結果によれば、黒化層中の酸素の含有率が42.6原子%となっている。このように黒化層中の酸素の含有率が40原子%を超える場合、図5に示したように、波長600nm以上の領域で反射率が急激に上昇することが確認できた。ただし、特に反射の抑制が求められる波長600nm以下の光に対する反射率は十分に低く、実用上問題ないことが確認できる。
【0193】
実験例2−1〜実験例2−4においては、上述のようにそれぞれ実験例1−1−1〜実験例1−1−4と膜厚以外は同様の条件で黒化層を成膜している。また実験例2−5、実験例2−6については実験例1−1−4と、実験例2−7については実験例1−1−5と、膜厚以外はそれぞれ同様の条件で黒化層を成膜している。実験例2−8は実験例1−1−10と膜厚以外は同様の条件で黒化層を成膜している。実験例2−9は実験例1−1−12と膜厚以外は同様の条件で黒化層を成膜している。実験例2−10は実験例1−1−13と膜厚以外は同様の条件で黒化層を成膜している。実験例2−11は実験例1−1−14と膜厚以外は同様の条件で黒化層を成膜している。
【0194】
このため、実験例2−1〜実験例2−11で作製した導電性基板に含まれる黒化層は、実験例1−1−1〜実験例1−1−5、実験例1−1−10、実験例1−1−12〜実験例1−1−14で評価を行った黒化層と同様の特性、すなわち同様の「膜組成」、「エッチング性」、「シート抵抗」を有するものといえる。
【0195】
また、実験例1で説明したように実験例1−1−1〜実験例1−1−5、実験例1−1−10、実験例1−1−12〜実験例1−1−14で評価した黒化層は、溶解試験においてエッチング液に対して銅層と同等の溶解性を示すことが確認できた。このことから、実験例2−1〜実験例2−11で作製した導電性基板については、いずれも同時にエッチング処理を行うことができる銅層と、黒化層と、を備えた導電性基板であるといえる。
【0196】
なお、実験例2−12は光学特性は良好であるが、実験例1−2−4で示したように溶解試験の結果が×であるため、同時にエッチング処理を行うことができる銅層と、黒化層と、を備えた導電性基板であるとはいえない。
【0197】
以上のように、透明基材の少なくとも一方の面側に、銅層と、酸素、銅、ニッケル、及びモリブデンを含有し、酸素を5原子%以上60原子%以下含有する黒化層と、を備えた実験例2−1〜実験例2−11の導電性基板は、同時にエッチング処理を行うことができる銅層と、黒化層とを備えた導電性基板であることが確認できた。すなわち、係る導電性基板は、従来よりもエッチング性に優れていることが確認できた。また、係る導電性基板は低反射率、低明度、低色度であるため、タッチパネル用の導電性基板として好適に使用することができることを確認できた。
[実験例3]
実験例3ではまず、透明基材であるPET基材上に、酸素、銅、ニッケル、及びモリブデンを含有する黒化層を形成した試料である、実験例3−1−1〜実験例3−1−4の試料を作製し、黒化層の組成についてのEDS分析、溶解試験を実施した。
【0198】
また、さらに本実験例では、図1Aに示した構造を有する導電性基板である、実験例3−2−1〜実験例3−2−4の試料を作製した。すなわち透明基材の片側面上に銅層、さらに黒化層を備えた導電性基板を作製し、光学特性の評価を行った。以下、具体的に説明する。
(実験例3−1−1、実験例3−1−2)
本実験例では、透明基材であるPET基材上に、酸素、銅、ニッケル、及びモリブデンを含有する黒化層を形成した試料を作製した。
【0199】
試料の作製に当たって、成膜用のスパッタリングターゲットとして、46Cu−46Ni−8Moの組成を有する熔解法で作製した熔解合金ターゲットを使用した。実験例3−1−1、実験例3−1−2では、上述のターゲットを用い、黒化層の成膜時にチャンバー内に供給する酸素ガスとアルゴンガスとの比、及びターゲットに供給する電力量を表7に示した値にした点以外は、実験例1と同様にして試料を作製した。
【0200】
なお、実験例3−1−1は供給ガス中の酸素割合を30体積%、実験例3−1−2は供給ガス中の酸素割合を40体積%とした。そして、200WのDC電力をターゲットに印加して所定時間スパッタリングを行い、膜厚300nmの黒化層を成膜した。
【0201】
作製した試料について黒化層のEDS分析、溶解試験を行った結果を表7、表8に示す。
(実験例3−1−3、実験例3−1−4)
本実験例では、透明基材であるPET基材上に、酸素、銅、ニッケル、及びモリブデンを含有する黒化層を形成した試料を作製した。
【0202】
試料の作製に当たって、成膜用のスパッタリングターゲットとして、49Cu−43Ni−8Moの組成を有する熔解法で作製した熔解合金ターゲットを使用した。実験例3−1−3、実験例3−1−4では、上述のターゲットを用い、黒化層の成膜時にチャンバー内に供給する酸素ガスとアルゴンガスとの比、及びターゲットに供給する電力量を表7に示した値にした点以外は、実験例1と同様にして試料を作製した。
【0203】
なお、実験例3−1−3は供給ガス中の酸素割合を30体積%、実験例3−1−4は供給ガス中の酸素割合を40体積%とした。そして、200WのDC電力をターゲットに印加して所定時間スパッタリングを行い、膜厚300nmの黒化層を成膜した。
【0204】
作製した試料について黒化層のEDS分析、溶解試験を行った結果を表7、表8に示す。
【0205】
【表7】
【0206】
【表8】

表7に示した結果から、46Cu−46Ni−8Moの熔解合金ターゲット、または49Cu−43Ni−8Moの熔解合金ターゲットを用いた場合でも、黒化層はいずれも銅、ニッケル、モリブデン、酸素を含有することが確認できた。
【0207】
また、表8に示した結果から、46Cu−46Ni−8Moの熔解合金ターゲット、または49Cu−43Ni−8Moの熔解合金ターゲットを使用した黒化層においても、いずれも1分以内で溶解するエッチング特性を有することが確認できた。すなわち、本実験例の黒化層についても、銅層と同等の溶解性を示すことが確認できた。
【0208】
次に、実験例3−2−1〜実験例3−2−4として、以下の手順により導電性基板を作製し、評価を行った。実験例3−2−1〜実験例3−2−4いずれについても実施例となる。
(実験例3−2−1、実験例3−2−2)
まず、実験例3−2−1、実験例3−2−2のいずれの導電性基板においても、実験例2−1と同様にして透明基材の一方の面上に銅薄膜層、及び銅めっき層を有する銅層を形成した。
【0209】
次いで、実験例3−2−1、実験例3−2−2の各試料については、黒化層の膜厚を35nmとした点以外は、それぞれ実験例3−1−1、実験例3−1−2と同じ条件で銅層上に黒化層を形成し、図1Aに示した構造を有する導電性基板を作製した。
【0210】
作製した導電性基板について、反射率測定を実施した。また、測定した反射率から明度、及び色度を算出した。結果を表9に示す。
(実験例3−2−3、実験例3−2−4)
まず、実験例3−2−3、実験例3−2−4のいずれの導電性基板においても、実験例2−1と同様にして透明基材の一方の面上に銅薄膜層、及び銅めっき層を有する銅層を形成した。
【0211】
次いで、実験例3−2−3、実験例3−2−4の各試料については、黒化層の膜厚を35nmとした点以外は、それぞれ実験例3−1−3、実験例3−1−4と同じ条件で銅層上に黒化層を形成し、図1Aに示した構造を有する導電性基板を作製した。
【0212】
作製した導電性基板について、反射率測定を実施した。また、測定した反射率から明度、及び色度を算出した。結果を表9に示す。
【0213】
【表9】

表9に示した結果によると、いずれの試料においても波長550nmの光の反射率、及び波長が350nm以上780nm以下の範囲の光に対する反射率の平均値である可視光平均反射率はいずれも、30%未満であることが確認できた。
【0214】
また、実験例3−2−1〜実験例3−2−4においては、上述のようにそれぞれ実験例3−1−1〜実験例3−1−4と膜厚以外は同様の条件で黒化層を成膜している。
【0215】
このため、実験例3−2−1〜実験例3−2−4で作製した導電性基板に含まれる黒化層は、実験例3−1−1〜実験例3−1−4で評価を行った黒化層と同様の特性、すなわち同様の「膜組成」、「エッチング性」を有するものといえる。
【0216】
そして、既述のように実験例3−1−1〜実験例3−1−4で評価した黒化層は、溶解試験においてエッチング液に対して銅層と同等の溶解性を示すことが確認できた。このことから、実験例3−2−1〜実験例3−2−4で作製した導電性基板についても、同時にエッチング処理を行うことができる銅層と、黒化層と、を備えた導電性基板であるといえる。
【0217】
以上のように、透明基材の少なくとも一方の面側に、銅層と、酸素、銅、ニッケル、及びモリブデンを含有し、酸素を5原子%以上60原子%以下含有する黒化層と、を備えた実験例3−2−1〜実験例3−2−4の導電性基板は、同時にエッチング処理を行うことができる銅層と、黒化層とを備えた導電性基板であることが確認できた。すなわち、係る導電性基板は、従来よりもエッチング性に優れていることが確認できた。また、係る導電性基板は低反射率、低明度、低色度であるため、タッチパネル用の導電性基板として好適に使用することができることも確認できた。
【0218】
以上に導電性基板、及び導電性基板の製造方法を、実施形態および実施例等で説明したが、本発明は上記実施形態および実施例等に限定されない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0219】
本出願は、2015年1月20日に日本国特許庁に出願された特願2015−008913号、及び2015年4月27日に日本国特許庁に出願された特願2015−090017号に基づく優先権を主張するものであり、特願2015−008913号、及び特願2015−090017号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0220】
10A、10B、20A、20B、30 導電性基板
11、11A、11B 透明基材
12、12A、12B 銅層
13、13A、13B、131、132、131A、131B、132A、132B、32A、32B 黒化層
31A、31B 配線
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5