特許第6624437号(P6624437)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624437
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】樹脂製歯車の製造法
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/14 20060101AFI20191216BHJP
   F16H 55/06 20060101ALI20191216BHJP
   F16F 15/126 20060101ALI20191216BHJP
   B29D 15/00 20060101ALI20191216BHJP
   B29C 70/28 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   F16H55/14
   F16H55/06
   F16F15/126 B
   B29D15/00
   B29C70/28
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-251504(P2015-251504)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-115969(P2017-115969A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮介
(72)【発明者】
【氏名】森尾 洋一
【審査官】 木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−056923(JP,A)
【文献】 特開2004−034874(JP,A)
【文献】 特開2012−219852(JP,A)
【文献】 特開2014−051097(JP,A)
【文献】 特開2012−006326(JP,A)
【文献】 特開2009−097700(JP,A)
【文献】 特開2003−207029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/14
B29C 70/28
B29D 15/00
F16F 15/126
F16H 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のA〜Eの工程を経ることを特徴とする樹脂製歯車の製造法。
A工程:外周部に1以上の回り止め部が形成されて回転軸を中心にして回転される金属製ブッシュを用意する工程。
B工程:前記1以上の回り止め部に第一のゴム弾性層を装着する工程。
C工程:補強繊維と熱硬化性樹脂前駆体の粉末を液中に分散させてシート状補強繊維基材を抄造し当該シート状補強繊維基材を歯車状に裁断して前記金属製ブッシュの外周に嵌め合せるための円形の穴を有する歯車状補強繊維基材を用意する工程。
D工程:前記歯車状補強繊維基材を、その歯形を揃えて軸方向に所定枚数積層して歯車用素形体とする工程。
E工程:前記歯車用素形体を成形金型により軸方向に圧縮する加熱加圧成形に供して、前記A工程、B工程を経た金属製ブッシュの外周にリング状の樹脂部と当該樹脂部の外周に歯部を成形し、前記成形において、前記第一のゴム弾性層は、回り止め部とリング状の樹脂部の一方又は双方と固着せずに当接した状態にあり、前記金属製ブッシュの外周面は、リング状の樹脂部の内周面に固着せずに当接した状態にあるようにする工程。
【請求項2】
歯車状補強繊維基材の内周には回り止め部に嵌り合う切欠部を設けておくことを特徴とする請求項1記載の樹脂製歯車の製造法。
【請求項3】
次のa〜fの工程を経ることを特徴とする樹脂製歯車の製造法。
a工程:外周部に1以上の回り止め部が形成されて回転軸を中心にして回転される金属製ブッシュを用意する工程。
b工程:前記1以上の回り止め部に第一のゴム弾性層を装着する工程。
c工程:補強繊維と熱硬化性樹脂前駆体の粉末を液中に分散させてシート状補強繊維基材を抄造し当該シート状補強繊維基材をリング状に裁断して前記金属製ブッシュの外周に嵌め合せるための円形の穴を有するリング状補強繊維基材を用意する工程。
d工程:前記リング状補強繊維基材を、軸方向に所定枚数積層して歯車用素形体とする工程。
e工程:前記歯車用素形体を成形金型により軸方向に圧縮する加熱加圧成形に供して、前記a工程、b工程を経た金属製ブッシュの外周部にリング状の樹脂部を成形し、前記成形において、前記第一のゴム弾性層は、回り止め部とリング状の樹脂部の一方又は双方と固着せずに当接した状態にあり、前記金属製ブッシュの外周面は、リング状の樹脂部の内周面に固着せずに当接した状態にあるようにする工程。
f工程:前記リング状の樹脂部の外周に切削加工により歯部を形成する工程。
【請求項4】
リング状補強繊維基材の内周には回り止め部に嵌り合う切欠部を設けておくことを特徴とする請求項3記載の樹脂製歯車の製造法。
【請求項5】
第一のゴム弾性層を前記1以上の回り止め部に装着するステップに、前記金属製ブッシュの外周面に第二のゴム弾性層を装着するステップを付加して、リング状の樹脂部の成形において、前記第一のゴム弾性層は、回り止め部とリング状の樹脂部の一方又は双方と固着せずに当接した状態にあり、第二のゴム弾性層は、金属製ブッシュの外周面とリング状の樹脂部の内周面のそれぞれに固着せず当接した状態にあるようにすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂製歯車の製造法。
【請求項6】
第一のゴム弾性層と第二のゴム弾性層は連結されて環状体に構成されていることを特徴とする請求項5記載の樹脂製歯車の製造法。
【請求項7】
前記環状体は、第一のゴム弾性層と第二のゴム弾性層が連結された円弧状部材の組合せで構成されていることを特徴とする請求項6記載の樹脂製歯車の製造法。
【請求項8】
複数個の回り止め部の一部については、第一のゴム弾性層をリング状の樹脂部の回転面に露出させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂製歯車の製造法。
【請求項9】
第一のゴム弾性層は、回り止め部とリング状の樹脂部の双方に固着せずに当接した状態にあるようにすることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂製歯車の製造法。
【請求項10】
前記D工程又はd工程において、金属製ブッシュを挟んでその両側から、歯車状補強繊維基材又はリング状補強繊維基材を軸方向に所定枚数積層し、熱と圧力で仮成形して中央に金属製ブッシュを配置した状態で歯車状補強繊維基材又はリング状補強繊維基材を一体にした歯車用素形体とする請求項1又は3に記載の樹脂製歯車の製造法。
【請求項11】
所定枚数積層した歯車状補強繊維基材又はリング状補強繊維基材は、積層方向中央には回り止め部に嵌り合う切欠部を設けた当該補強繊維基材を用い、前記切欠部を設けた補強繊維基材の層を挟んでその両側には前記切欠部を設けていない当該補強繊維基材を用いることを特徴とする請求項10記載の樹脂製歯車の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰機構を内蔵した樹脂製歯車の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2001−193794号公報)は、減衰機構を備えた歯車を開示している。この減衰機構(特に図22)は、回転軸と、その外周を覆うようにして配置された略円筒状をなす歯車とを備えて構成されている。前記回転軸の外周面にはその径方向外側へ放射状に延びる複数の第1突片が設けられている。前記歯車の内周面にもその径方向内側へ向かって延びる複数の第2突片が設けられている。これら第1突片と第2突片は、第2突片が第1突片の間に位置するようにして設けられている。この配置により、第1突片と第2突片との間にダンパ室が形成され、当該ダンパ室に弾性部材が収容されている。また、ダンパ室に収容された弾性部材と第1突片、第2突片それぞれとの間には、隙間Aが形成されている。また、第1突片の先端と歯車の内周面との間ならびに第2突片の先端と回転軸の外周面との間にも、それぞれ隙間Bが形成されている。
【0003】
上記のように構成された減衰機構においては、回転軸が歯車に対して相対回動すると、まず、その相対回動に伴って前記隙間Aが減少し、その後に第1突片或いは第2突片が弾性部材に当接するようになる。そして、回転軸と歯車との間における相対回動量が更に大きくなると、弾性部材が弾性変形し、相対回動量の大きさに応じた弾性力が発生するようになる。従って、この弾性力によって回転軸と歯車との相対回動が反付勢されるようになる。
【0004】
特許文献1と類似する技術が、特許文献2(特開平04−054347号公報)、特許文献3(特開昭60−192145号公報)にも開示されている。
【0005】
上記各特許文献に開示された技術は、減衰機構を構成するための部品・部材が多く使用されており、これら部品・部材が回転軸回りに装着されて減衰機構が組み立てられている。
【0006】
一方、特許文献4(特開2007−056923号公報)は、歯車自体に減衰機構が内蔵された樹脂製歯車を開示している。この樹脂製歯車は、金属製ブッシュをインサートとし、金属製ブッシュの周囲にリング状の樹脂部が一体に成形され、リング状の樹脂部の外周に歯部が形成されている。前記金属製ブッシュは、その外周面に径方向へ突出する複数個の回り止め部を有しており当該回り止め部がゴム弾性層で被覆された構成となっている。そして、前記ゴム弾性層で被覆された回り止め部は、露出しないようにリング状の樹脂部に埋設され、ゴム弾性層とリング状の樹脂部とは固着した状態となっている。また、ゴム弾性層と回り止め部も、固着した状態となっている。
駆動中の歯車に相手歯車との噛み合いにより過剰の衝突エネルギが加わると、前記ゴム弾性層はリング状の樹脂部に閉じ込められた内部で変形(圧縮変形)することにより、前記エネルギを吸収する。従って、この樹脂製歯車は回転軸に装着するだけで衝撃の減衰機能を発揮する。
【0007】
特許文献4と類似する技術が、特許文献5(実開平01−098964号全文明細書)にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−241352号公報
【特許文献2】特開平04−054347号公報
【特許文献3】特開昭60−192145号公報
【特許文献4】特開2007−056923号公報
【特許文献5】実開平01−098964号全文明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献4に開示された技術を検証したところ、前記ゴム弾性層は、圧縮変形の応力を受けると当該応力を受けている箇所以外の部位では前記圧縮変形の動きに追随しようとする。ところが、ゴム弾性層とリング状の樹脂部ならびにゴム弾性層と回り止め部とはそれぞれ固着した状態となっているので、圧縮変形の応力を受けている箇所以外の部位は前記圧縮変形の動きに追随できずに引張りの応力が発生することになる。一般に、ゴム弾性材は、圧縮に対しては強いが引張りに対しては比較的弱いので、圧縮変形と復元が繰り返される間に、引張りの応力が繰り返し発生する前記部位に破断が生じる懸念が見出された。一旦破断が生じると、当該破断部位からゴム弾性層の早期劣化が進む。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、相手歯車との噛み合いにより発生する衝撃の減衰機構を内蔵し、減衰機能の長期維持を図るとともにその構造も単純な樹脂製歯車の製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る第一の樹脂製歯車の製造法は、次のA〜Eの工程を経る。
A工程:外周部に1以上の回り止め部が形成されて回転軸を中心にして回転される金属製ブッシュを用意する工程。
B工程:前記1以上の回り止め部に第一のゴム弾性層を装着する工程。
C工程:補強繊維と熱硬化性樹脂前駆体の粉末を液中に分散させてシート状補強繊維基材を抄造し当該シート状補強繊維基材を歯車状に裁断して前記金属製ブッシュの外周に嵌め合せるための円形の穴を有する歯車状補強繊維基材を用意する工程。
D工程:前記歯車状補強繊維基材を、その歯形を揃えて軸方向に所定枚数積層して歯車用素形体とする工程。
E工程:前記歯車用素形体を成形金型により軸方向に圧縮する加熱加圧成形に供して、前記A工程、B工程を経た金属製ブッシュの外周にリング状の樹脂部と当該樹脂部の外周に歯部を成形し、前記成形において、前記第一のゴム弾性層は、回り止め部とリング状の樹脂部の一方又は双方と固着せずに当接した状態にあり、前記金属製ブッシュの外周面は、リング状の樹脂部の内周面に固着せずに当接した状態にあるようにする工程。
【0012】
本発明による樹脂製歯車は、第一のゴム弾性層が回り止め部とリング状の樹脂部の一方又は双方と固着していないので、駆動中の歯車に相手歯車との噛み合いにより過剰の衝突エネルギが加わると、第一のゴム弾性層が回り止め部とリング状の樹脂部の間で圧縮変形したとき、圧縮変形している箇所以外の部位は前記圧縮変形の動きに追随できる。また、この追随の動作の中で、第一のゴム弾性層とこれに固着していない回り止め部の間で、また、第一のゴム弾性層とこれに固着していないリング状の樹脂部の間で歯車の回転方向と反対方向の摩擦力も発生する。
【0013】
本発明に係る第二の樹脂製歯車の製造法は、次のa〜fの工程を経る。
a工程:外周部に1以上の回り止め部が形成されて回転軸を中心にして回転される金属製ブッシュを用意する工程。
b工程:前記1以上の回り止め部に第一のゴム弾性層を装着する工程。
c工程:補強繊維と熱硬化性樹脂前駆体の粉末を液中に分散させてシート状補強繊維基材を抄造し当該シート状補強繊維基材をリング状に裁断して前記金属製ブッシュの外周に嵌め合せるための円形の穴を有するリング状補強繊維基材を用意する工程。
d工程:前記リング状補強繊維基材を、軸方向に所定枚数積層して歯車用素形体とする工程。
e工程:前記歯車用素形体を成形金型により軸方向に圧縮する加熱加圧成形に供して、前記a工程、b工程を経た金属製ブッシュの外周部にリング状の樹脂部を成形し、前記成形において、前記第一のゴム弾性層は、回り止め部とリング状の樹脂部の一方又は双方と固着せずに当接した状態にあり、前記金属製ブッシュの外周面は、リング状の樹脂部の内周面に固着せずに当接した状態にあるようにする工程。
f工程:前記リング状の樹脂部の外周に切削加工により歯部を形成する工程。
【0014】
上記の第一の樹脂製歯車の製造法において、歯車状補強繊維基材の内周には回り止め部に嵌り合う切欠部を設けておくことが好ましい(請求項2)。また、上記の第二の樹脂製歯車の製造法において、リング状補強繊維基材の内周には回り止め部に嵌り合う切欠部を設けておくことが好ましい(請求項4)。
上記のように切欠部を設けておくと、E工程又はe工程の加熱加圧成形において、積層されている歯車状補強繊維基材あるいはリング状補強繊維基材がその積層方向に圧縮されたときに、第一のゴム弾性層に過剰の圧力が加わらないようにすることできる。
【0015】
上記の第一又は第二の樹脂製歯車の製造法において、第一のゴム弾性層を前記1以上の回り止め部に装着するステップに、前記金属製ブッシュの外周面に第二のゴム弾性層を装着するステップを付加することができる。そして、リング状の樹脂部の成形において、前記第一のゴム弾性層は、回り止め部とリング状の樹脂部の一方又は双方と固着せずに当接した状態にあり、第二のゴム弾性層は、金属製ブッシュの外周面とリング状の樹脂部の内周面のそれぞれに固着せず当接した状態にあるようにする(請求項5)。
第二のゴム弾性層は、金属製ブッシュの外周面とリング状の樹脂部の内周面に固着していないので、駆動中の歯車に相手歯車との噛み合いにより過剰の衝突エネルギが加わると、第一のゴム弾性層の圧縮変形に伴い第二のゴム弾性層と金属製ブッシュの外周面の間および第二のゴム弾性層とリング状の樹脂部の内周面の間で歯車の回転方向と反対方向の摩擦力が発生する。加えて、第二のゴム弾性層は、樹脂製歯車に加わる径方向の衝撃により圧縮変形する。
【0016】
前記第一のゴム弾性層と第二のゴム弾性層は連結されて環状体に構成されていてもよい(請求項6)。第一のゴム弾性層と第二のゴム弾性層が連結されていることにより部品点数が少なくなり取り扱いやすくなる。
前記環状体は、第一のゴム弾性層と第二のゴム弾性層が連結された円弧状部材の組合せで構成されてもよい(請求項7)。第一のゴム弾性層が回り止め部とリング状の樹脂部の間で圧縮変形したとき、第二のゴム弾性層には周方向の引張の応力が発生するが、前記円弧状部材の組合せにより環状体を分割しておくことにより前記引張の応力が分断され応力の発生が緩和される。
【0017】
上記第一又は第二の樹脂製歯車の製造法において、複数個の回り止め部の一部については、第一のゴム弾性層がリング状の樹脂部の回転面に露出していてもよい(請求項8)。第一のゴム弾性層が回り止め部とリング状の樹脂部の間で圧縮変形したとき、前記露出している部位から第一のゴム弾性層を膨出させることができるので、圧縮変形をより大きくできる。また、好ましくは、第一のゴム弾性層は、回り止め部とリング状の樹脂部の双方に固着せずに当接した状態にあるようにする(請求項9)。
【発明の効果】
【0018】
上述のように、本発明によれば、第一のゴム弾性層が回り止め部とリング状の樹脂部の間で圧縮変形したとき、圧縮変形している箇所以外の部位は前記圧縮変形の動きに追随できるので、圧縮変形している箇所以外の部位で引張りの応力が発生することを低減でき、第一のゴム弾性層の劣化を抑えて衝撃の減衰機能の長期維持を図かった樹脂製歯車を製造することができる。また、歯車自体に減衰機構を内蔵し構造も単純な樹脂製歯車とすることができる。この樹脂製歯車を回転軸に装着するだけで衝撃減衰機能を発揮させることができ、歯車を回転軸に装着するに際しての減衰機構の組立工数も不要である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る樹脂製歯車の製造法を適用して製造される樹脂製歯車を示す斜視図(a)と軸方向に切断したその断面斜視図(b)、径方向に切断したその断面図(c)である。
図2】本発明に係る樹脂製歯車の製造法を適用して製造される他の樹脂製歯車(第一のゴム弾性層に第二のゴム弾性層を付加した場合)を示す斜視図(a)と軸方向に切断したその断面斜視図(b)、径方向に切断したその断面図(c)である。
図3図2において、第二のゴム弾性層の他の例を示す樹脂製歯車を径方向に切断したその断面図である。
図4】本発明に係る第一の樹脂製歯車の製造法の実施の形態において、歯車状補強繊維基材を用意する工程を示す説明図である。
図5】本発明に係る第一の樹脂製歯車の製造法の実施の形態において、図4(b)に示す歯車状補強繊維基材を歯車用素形体とする様子を示す説明図である。
図6】本発明に係る第一の樹脂製歯車の製造法の実施の形態において、図4(c)に示す歯車状補強繊維基材を歯車用素形体とする様子を示す説明図である。
図7】本発明に係る第一の樹脂製歯車の製造法の実施の形態により製造した樹脂製歯車の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、その説明に先立ち、まず、本発明を適用して製造される樹脂製歯車について説明する。
【0021】
図1は、その樹脂製歯車を示す斜視図(a)とこの樹脂製歯車を軸方向に切断したその断面斜視図(b)、径方向に切断したときの断面図(c)である。
外周面に径方向へ突出する複数個の回り止め部1を有する金属製ブッシュ2と、外周に歯部3が形成されたリング状の樹脂部4とが、回り止め部1がリング状の樹脂部4に埋設された状態で嵌め合され構成されている。各回り止め部1は、等角度間隔で配置されている。尚、複数個の回り止め部1は、各回り止め部が均等に応力を負担するように、等角度間隔にて設けることが好ましいが、必ずしも等角度間隔である必要はない。
複数個の回り止め部1のそれぞれは、第一のゴム弾性層5を介してリング状の樹脂部4に嵌め合されている。第一のゴム弾性層5は、回り止め部1とリングの状樹脂部4に固着せずに当接しており、金属製ブッシュ2の外周面は、リング状の樹脂部4の内周面に固着せずに当接している。
第一のゴム弾性層5は、キャップ形状をしたものが回り止め部1に装着されており、回り止め部1の全体(突出した部分)を覆っている。第一のゴム弾性層5の材質はブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴムなどであり、好ましくは耐久性・耐熱性の面よりフッ素ゴム又はシリコーンゴムを選択する。
【0022】
上記樹脂製歯車は、金属製ブッシュ2が図示しない回転軸に固着されて使用される。一方、金属製ブッシュ2と第一のゴム弾性層5の表面は、リング状の樹脂部4の成形においてリング状の樹脂部4と固着しておらず当接しているだけであり、リング状の樹脂部4の内周面は金属製ブッシュ2の外周面と固着しておらず当接しているだけある。従って、駆動中の歯車に相手歯車との噛み合いにより過剰の衝突エネルギが加わると、第一のゴム弾性層5は金属製ブッシュ2に一体の回り止め部1とリング状の樹脂部4との間に挟まれて圧縮変形し衝突エネルギを吸収する。第一のゴム弾性層5は、同様に回り止め部1に当接しているだけであり固着していないので、前記圧縮変形している箇所以外の部位が圧縮変形の動きに容易に追随できる。この追随の動作の中で、第一のゴム弾性層5と回り止め部1の間および第一のゴム弾性層5とリング状の樹脂部4の間で摩擦力も発生する。第一のゴム弾性層5は、圧縮変形している箇所以外の部位が前記圧縮変形の動きに追随できるので、第一のゴム弾性層5に引張り応力が発生するのを低減して第一のゴム弾性層5の劣化を抑える。そして、前記摩擦力の発生が、第一のゴム弾性層5の圧縮応力と相俟って衝撃の減衰作用を奏する。
【0023】
図2は、別の樹脂製歯車を示す斜視図(a)とこの樹脂製歯車を軸方向に切断したその断面斜視図(b)、径方向に切断したときの断面図(c)である。
回り止め部1とリング状の樹脂部4の間に第一のゴム弾性層5が介在している点は、図1を参照して説明した樹脂製歯車と同様である。図2を参照して説明する樹脂製歯車では、加えて、金属製ブッシュ2の外周面とリング状の樹脂部4の内周面の間に第二のゴム弾性層6が介在している。第二のゴム弾性層6は、金属製ブッシュ2の外周面とリング状の樹脂部4の内周面の双方に固着せずに当接している。第二のゴム弾性層6の材質は、第一のゴム弾性層5の材質と同様である。
第二のゴム弾性層6は、金属製ブッシュ2の外周面とリング状の樹脂部4の内周面の相対している周面全体に当接しているだけあり固着していない。また、この例では、第二のゴム弾性層6の厚み方向端面は、樹脂製歯車の回転面に露出している。
第二のゴム弾性層6は、回り止め部1の外周面とリング状の樹脂部4の内周面に固着していないので、駆動中の歯車に相手歯車との噛み合いにより過剰の衝突エネルギが加わると、第一のゴム弾性層5の圧縮変形に伴い、第二のゴム弾性層6と金属製ブッシュ2の外周面の間および第二のゴム弾性層6とリング状の樹脂部4の内周面の間で周方向にわずかながら摺動し摩擦力が発生する。加えて、第二のゴム弾性層6は、樹脂製歯車に加わる径方向の衝撃により圧縮変形する。前記摩擦力が加わることにより衝撃の減衰作用が高まる。また、第二のゴム弾性層6が、樹脂製歯車に加わる径方向の衝撃により圧縮変形することによりその衝撃も緩和することができる。
【0024】
上記第一のゴム弾性層5と第二のゴム弾性層6は連結されて環状体に構成されていてもよい。第一のゴム弾性層5と第二のゴム弾性層6が連結されることにより、ゴム弾性層の部品点数が少なくなり取り扱いやすくなる。
さらに、前記環状体は、第一のゴム弾性層5と第二のゴム弾性層6が連結された円弧状部材を組合せで環状体に構成されてもよい。図3は、円弧状部材を組合せて構成した環状体の例を示す。第一のゴム弾性層5の周方向片側に第二のゴム弾性層6が連結されており、第二のゴム弾性層6は、隣り合う回り止め部1に装着されている第一のゴム弾性層5同士を連結した形状となっている。このように中間位置で分割された形状にしておくと、第一のゴム弾性層5が回り止め部1とリング状の樹脂部4の間で圧縮変形したとき、第二のゴム弾性層6には周方向の引張りの応力が発生するが、第一のゴム弾性層5と第二のゴム弾性層6が連続して繋がっていないので前記引張の応力が分断されて緩和される。
【0025】
≪第一の樹脂製歯車の製造法の実施の形態≫
上記樹脂製歯車を製造する第一の製造法について以下説明する。
A工程では、外周部に1以上の回り止め部1が形成されて回転軸を中心にして回転される金属製ブッシュ2を用意し、B工程では、前記1以上の回り止め部1に第一のゴム弾性層5を装着し、あるいは、第一のゴム弾性層5と第二のゴム弾性層6を、金属製ブッシュ2の前記1以上の回り止め部1と外周面に装着する。第一のゴム弾性層5あるいは第一のゴム弾性層5と第二のゴム弾性層6は、予め金型により成形し準備しておく。
後述するE工程において、金属製ブッシュ2の外周面とリング状の樹脂部4の内周面が固着しないように、また、第一のゴム弾性層5の表面あるいは第一のゴム弾性層5と第二のゴム弾性層6の表面と金属製ブッシュ2(回り止め部)およびリング状の樹脂部4とが固着しないように、必要に応じて金属製ブッシュ2と第一のゴム弾性層5、第二のゴム弾性層6に離型剤による処理をしておく。
【0026】
C工程では、補強繊維と熱硬化性樹脂前駆体の粉末を液中に分散させた抄造用スラリを用いシート状補強繊維基材を抄造し、これを加圧プレス機に投入して脱水を行ない乾燥等の手段により水分を除去する。図4(a)は、当該シート状補強繊維基材7を抜きプレス機に投入し、シート状補強繊維基材7から複数個の歯車状補強繊維基材8を得るところを示している。この抜きプレス機による裁断のときに、金属製ブッシュ2の外周に嵌め合せる円形の穴9も穿設しておく。図4(b)は、このようにして製造した歯車状補強繊維基材8のひとつを拡大して示している。また。図4(c)に示すように、歯車状補強繊維基材の内周には金属製ブッシュ2の回り止め部1と対応する位置に回り止め部1を嵌め合せる切欠部10を穿設した歯車状補強繊維基材8’としてもよい。
このような切欠部10を有する歯車状補強繊維基材8’を用いると、後述するE工程における加熱加圧成形の時に第1のゴム弾性層5に対し歯車状補強繊維基材8,8’の圧縮に伴う過剰の圧力が加わるのを回避することができる。
【0027】
シート状補強繊維基材7を抄造するために用いる補強繊維は、種々のものを選択することができる。そして補強繊維の長さは、長すぎても抄造用スラリの均一分散を妨げる原因となり、強度の増強に寄与しない不均一な繊維分布になる。そのため補強繊維の繊維長は、好ましくは2mmから6mmであり、さらに好ましくは3mm前後である。繊維長が2mm未満の場合、リング状の樹脂部4の機械特性が低下する。また、繊維長が6mmを超えると、繊維束を水中で解離し分散させるときに、繊維束の解離が困難になる。また、補強繊維として繊維チョップのほかに、アラミド繊維等のパルプを併用してもよい。これにより、繊維同士の絡み合いが増すので好ましい。
【0028】
使用する補強繊維は、融点あるいは分解温度が250℃以上の繊維からなるものが好ましい。このような補強繊維を用いてシート状補強繊維基材7を抄造することで、リング状の樹脂部4の成形時の成形温度や加工温度、実使用時の雰囲気温度において、リング状の樹脂部4内の補強繊維が熱劣化を起こすことなく、耐熱性に優れた歯車とすることができる。このような繊維としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、バサルト繊維、ステンレス繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、およびポリビニルアルコール系繊維から選ばれた少なくとも1種以上の繊維を使用するのが好ましい。
また、補強繊維には、引張強度15cN/dtex以上、引張弾性率350cN/dtex以上の高強度高弾性率繊維を、使用する補強繊維全体の少なくとも20体積%以上含むことが好ましい。このようにして得られるシート状補強繊維基材7を用いた歯車は、リング状の樹脂部4を採用しつつ使用中にかかる高負荷に耐え得るものとすることができる。
また、リング状の樹脂部4に強度を付与するためには、補強繊維にアラミド繊維をフィブリル化処理した微細繊維(パルプ)を含み、微細繊維のフリーネスが100ml以上400ml以下であって、微細繊維の含有量が使用する補強繊維全体の30質量%以下になるように配合することが望ましい。望ましい態様としては、パラ系アラミド繊維に機械的剪断処理を施し繊維軸方向に裂開させたフィブリル化処理のアラミド微細繊維を混合することが好ましい。フリーネスが400mlを超えるとフィブリル化が不充分のためリング状の樹脂部4に強度を付与する上で好ましいものでなくなる。またフリーネスが100ml未満になると繊維軸方向に裂開させるだけでなく、径方向に剪断されて粉末状態になってしまうために繊維の絡みが悪くなって、リング状の樹脂部4に強度を付与する上で好ましいものでなくなる。好ましくは、適度な強度を付与することができるように、使用する補強繊維全体の5〜10質量%のフィブリル化した微細繊維を配合するのが好ましい。
【0029】
上記補強繊維を水中に分散させる際の補強繊維濃度は、0.3g/リットル以上20g/リットル以下が好ましい。繊維長が短い繊維を使用する場合、繊維同士の絡みが少なく、分散が良いため濃度20g/リットルの高濃度のスラリで分散させることができる。一方、繊維長が長い繊維を使用する場合、繊維長が長すぎるため0.3g/リットルの低濃度でないと充分分散させることができない。
【0030】
上記抄造の際に、補強繊維とともに分散させる熱硬化性樹脂前駆体の粉末は、フェノール樹脂前駆体の粒子等である。リング状の樹脂部4に含まれる樹脂成分の割合は、所望するリング状の樹脂部4の強度等によって異なるが、40体積%以上70体積%以下であることが好ましい。リング状の樹脂部4に占める樹脂成分の割合が70体積%を超える場合、樹脂を繊維で補強する効果が十分に発揮されず、また回り止め部1への繊維の充填も不充分となる。また、樹脂成分の割合が40体積%未満の場合は、繊維の占める割合が高すぎるため、加熱加圧成形時に液状となった熱硬化性樹脂前駆体が補強用繊維基材9全体に浸透せず樹脂不足部分が発生しやすくなるなどの問題がおこる。そのためシート状補強繊維基材7に含まれる熱硬化性樹脂前駆体の割合はリング状の樹脂部4の強度があり、回り止め部1の周囲に繊維が良好に充填され、しかも樹脂の浸透を阻害しない55〜65体積%がさらに好ましい。
リング状の樹脂部4を構成する樹脂としては、既に例示したものを含み熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂など種々の材料を選択することができる。例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂から選ばれた1以上の樹脂を組み合わせたものが使用できる。これらの中でも樹脂硬化物の強度、耐熱性等の点からフェノール樹脂が好ましい。
【0031】
D工程では、C工程を経た歯車状補強繊維基材8あるいは8’を、その歯形を揃えて軸方向に所定枚数積層した歯車用素形体を用意する。この歯車用素形体は、後述するE工程の加熱加圧成形により、金属製ブッシュ2の外周にリング状の樹脂部4と当該樹脂部4の外周に歯部3を成形するためのものであるが、例えば、以下に説明するようにいくつかの手段により用意することができる。
【0032】
最も単純な手段は、歯車状補強繊維基材8を、その歯形を揃えて軸方向に所定枚数積層し若干の熱と圧力で仮成形して一体にした歯車用素形体とする方法である。これをE工程に供し歯車用素形体の中央に配置した金属製ブッシュ2(A工程、B工程を経た金属製ブッシュ2)とともに加熱加圧成形する。
別の手段は、図5(a)に示すように、A工程、B工程を経た金属製ブッシュ2の回り止め部1を挟んでその両側から、歯車状補強繊維基材8を、その歯形を揃えて軸方向に所定枚数積層する。そして、若干の熱と圧力で仮成形し、図5(b)に示すように、中央に金属製ブッシュ2を配置した状態で歯車状補強繊維基材8を一体にした歯車用素形体11とする方法である。図5(b)から理解できるように、歯車状補強繊維基材8が回り止め1と第一のゴム弾性層5を避けた状態で仮成形されているので、この歯車用素形体10を後述するE工程に供すると、第一のゴム弾性層5に歯車用素形体11の圧縮による過剰の圧力が加わることを低減でき、E工程における加熱加圧成形による第一のゴム弾性層5の異常変形に注意を払わなくてもよくなる。
さらに別の手段は、図6(a)に示すように、A工程、B工程を経た金属製ブッシュ2の回り止め部1を挟んでその両側から、歯車状補強繊維基材8を、その歯形を揃えて軸方向に所定枚数積層するに際し、積層方向中央には、歯車状補強繊維基材8’を、その歯形を揃えるとともに切欠部9を回り止め部1の位置に合せて積層する。そして、若干の熱と圧力で仮成形して、図6(b)に示すように、中央に金属製ブッシュ2を配置した状態で歯車状補強繊維基材8,8’を一体にした歯車用素形体11’とする方法である。図6(b)から理解できるように、歯車状補強繊維基材8’が回り止め1と第一のゴム弾性層5を確実に避けた状態で、また、回り止め1の周辺に極力空隙を残さないように歯車状補強繊維基材8’が仮成形されているので、この歯車用素形体11’をE工程に供すると、第一のゴム弾性層5に歯車用素形体11’の圧縮による過剰の圧力が加わることをさらに低減でき、第一のゴム弾性層5の異常変形を回避する上で好ましいものである。尚、複数個の回り止め部1の一部について、第一のゴム弾性層5をリング状の樹脂部4の回転面に露出させる場合は、表面に積層する歯車状補強繊維基材にも対応する位置に切欠部10を形成しておく。
【0033】
ちなみに、金属製ブッシュ2の厚みが13mmの場合、積層された歯車状補強繊維基材8,8’は、厚み寸法(軸線方向寸法)が約10cmから約2cm程度まで圧縮されて歯車用素形体11,11’へ仮成形される。
【0034】
E工程では、上記の歯車用素形体11あるいは11’を成形金型により軸方向に圧縮する加熱加圧成形に供して、図7に示すように、A工程、B工程を経た金属製ブッシュ2の外周にリング状の樹脂部4と当該樹脂部の外周に歯部3を成形した樹脂製歯車とする。前記成形において、第一のゴム弾性層5は、回り止め部1とリング状の樹脂部4に固着せずに当接した状態にあり、金属製ブッシュ2の外周面は、リング状の樹脂部4の内周面に固着せずに当接した状態にあるようにする。このとき、歯車用素形体11あるいは11’は、金属製ブッシュ2と同厚みに圧縮され、リング状の樹脂部4と歯部3になる。
前記成形された歯部3は、必要に応じ切削加工により形状を整える。
【0035】
上記のようにして製造した樹脂製歯車は、樹脂製歯車の金属製ブッシュ2が、図示しない回転軸に固着されて使用される。一方、金属製ブッシュ2の外周面と第一のゴム弾性層5の表面は、リング状の樹脂部4の成形においてリング状の樹脂部4と固着しておらず、リング状の樹脂部4の内周面は金属製ブッシュ2の外周面と当接しているだけある。従って、駆動中の歯車に相手歯車との噛み合いにより過剰の衝突エネルギが加わると、第一のゴム弾性層5は金属製ブッシュ2に一体の回り止め部1とリング状の樹脂部4との間に挟まれて圧縮変形し衝突エネルギを吸収する。第一のゴム弾性層5は、同様に回り止め部1とリングの状樹脂部4に当接しているだけであり固着していないので、前記圧縮変形している箇所以外の部位が圧縮変形の動きに容易に追随できる。この追随の動作の中で、第一のゴム弾性層5と回り止め部1の間および第一のゴム弾性層5とリング状の樹脂部4の間で摩擦力も発生する。第一のゴム弾性層5は、圧縮変形している箇所以外の部位が前記圧縮変形の動きに追随できるので、第一のゴム弾性層5に引張り応力が発生するのを低減して第一のゴム弾性層5の劣化を抑える。そして、前記摩擦力の発生が、第一のゴム弾性層5の圧縮応力と相俟って衝撃の減衰作用を奏する。
【0036】
≪第二の樹脂製歯車の製造法の実施の形態≫
本実施の形態による樹脂製歯車の製造は、上述した第一の樹脂製歯車の製造法の実施の形態に準じて実施する。A工程、B工程と同様にa工程、b工程を実施するが、異なる点は、C工程に代わるc工程において、歯車状補強繊維基材8に代えて歯形のないリング状補強繊維基材を用意する点である。
前記リング状補強繊維基材を用いて、D工程、E工程に準じd工程、e工程を実施する。そして、e工程の後に、f工程として、リング状の樹脂部4の外周に切削加工により歯部3を形成する。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例を説明する。
実施例1
フッ素ゴム(旭硝子(株)製「AFLAS(登録商標)150P」)を金型成形してキャップ形状をした第一のゴム弾性層5を準備する。焼結金属製の金属製ブッシュ2の外周面と前記第一のゴム弾性層5の表面に耐熱性の離型剤((株)オーデック製「ホワイティルブ(商品名)」)を塗布し乾燥した上で、第一のゴム弾性層5を回り止め部1に被せ、回り止め部1の全体を覆っておく。
抄造用スラリを製造するために、補強繊維投入時の補強繊維濃度が4g/リットルとなる量の水を満たしたタンクを用意する。そしてこのタンク内に、リング状の樹脂部4中の補強繊維の繊維総量が40体積%となる量の補強繊維と残りが樹脂成分となる量のフェノール樹脂前駆体の粒子を入れる。具体的には、補強繊維として用いる繊維チョップとして、アスペクト比200のパラ系アラミド繊維(帝人(株)製「テクノーラ(登録商標)」)を50質量%、アスペクト比200のメタ系アラミド繊維(帝人(株)製「コーネックス(登録商標)」)を45質量%、そしてフリーネス値300mlまでフィブリル化処理した微細繊維(デュポン(株)製「ケブラー(登録商標)」)を5質量%となる量をそれぞれ投入する。次に攪拌機でタンク内の水を攪拌し繊維を分散させる。
上記スラリを用いてシート状補強繊維基材7を抄造し、これを加圧プレス機に投入して脱水を行なった後に乾燥して水分を除去する。当該シート状補強繊維基材7を抜きプレス機に投入し、歯形と中央に円形の穴9を穿設した歯車状補強繊維基材8を製造する。また、歯形と中央に円形の穴9および切欠部10を穿設した歯車状補強繊維基材8’を製造する。そして、歯車状補強繊維基材8,8’を用いて、図6に基づいて説明した方法により厚み20mmの歯車用素形体11’得る。
次に、歯車用素形体11’を200℃に加熱した成形金型20に配置して型締めする。そして、加熱加圧成形してフェノール樹脂前駆体を架橋反応させ硬化させたリング状の樹脂部4と歯部3とする。歯車用素形体11’は、金属製ブッシュ2とほぼ同厚みの13mmとなる。
この樹脂製歯車は、金属製ブッシュ2の外周面とリング状の樹脂部4の内周面の間は、固着していないが密着状態となっている。また、第一のゴム弾性層5とリング状の樹脂部4の間は、固着していないが密着状態となっている。
【0038】
実施例2
上記実施例1において図2に基づいて説明したように第一のゴム弾性層5に加えて第二のゴム弾性層6を装着し、金属製ブッシュ2の外周面と第一のゴム弾性層5および第二のゴム弾性層6とリング状の樹脂部4の内周面とは固着しないよう、実施例1と同様の耐熱性の離型剤による処理をしておき、そのほかは実施例1と同様とした。
【0039】
比較例1
上記実施例2において、まわり止め部1と嵌め合せるための切欠部を有するリング状の樹脂部4のみを成形する。そして、リング状の樹脂部4の中央に金属製ブッシュ2を配置しリング状の樹脂部4の内周と金属製ブッシュ2の外周の隙間にフッ素ゴムを隙間なく充填し加硫して、金属製ブッシュ2の外周面と第一のゴム弾性層5および第二のゴム弾性層6とリング状の樹脂部4の内周面とが固着された状態とした。
【0040】
第一のゴム弾性層の耐久評価
3次元CADソフトウェアによるモデリングにより、比較例1による樹脂製歯車の応力解析を実施した。すなわち、金属製ブッシュ2を固定した状態でリング状の樹脂部4の外周面を周方向にねじる応力解析を行ない、金属製ブッシュ2とリング状の樹脂部4に接着されている第一のゴム弾性層5が引張りにより破断する限界の引張り部に発生する応力(引張り部応力)とその時のトルクを求め、表1に示すとおりとなった。
表1の条件にて、各実施例と比較例における第一のゴム弾性層5の圧縮部に発生する応力(圧縮部応力)と引張部応力を解析し表2の結果を得た。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
上記表2の結果より、実施例1、2の回り止め部1の圧縮部応力と引張り部応力は、双方とも比較例1より低い値となり良好な結果が得られた。特に、引張り部応力に関しては、実施例1、2において比較例1よりも低い値が得られ、引張りによるゴム弾性層の劣化進行を遅らせて、衝撃減衰機能の長期維持を図ることを期待できる。
【符号の説明】
【0044】
1 回り止め部
2 金属製ブッシュ
3 歯部
4 リング状の樹脂部
5 第一のゴム弾性層
6 第二のゴム弾性層
7 シート状補強繊維基材
8,8’ 歯車状補強繊維基材
9 穴
10 切欠部
11,11’ 歯車用素形体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7