(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624511
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】コンクリート硬化体の形成方法
(51)【国際特許分類】
B28C 7/02 20060101AFI20191216BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20191216BHJP
C04B 14/06 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
B28C7/02
C04B28/02
C04B14/06 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-39142(P2016-39142)
(22)【出願日】2016年3月1日
(65)【公開番号】特開2017-154357(P2017-154357A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】宮原 健太
(72)【発明者】
【氏名】小田部 裕一
【審査官】
小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−035804(JP,A)
【文献】
特開2005−187286(JP,A)
【文献】
特開2005−178175(JP,A)
【文献】
特開昭62−241882(JP,A)
【文献】
特許第5604015(JP,B1)
【文献】
特開昭55−060076(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102898062(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 7/02
C04B 14/06
C04B 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、粗骨材と、細骨材と、水とを混練してコンクリート混練物を形成し、該コンクリート混練物を硬化させてコンクリート硬化体を形成するコンクリート硬化体の形成方法であって、
前記コンクリート硬化体を構成するセメントの一部と、コンクリート硬化体を構成する粗骨材の全部と、コンクリート硬化体を構成する水の一部とを含む第一原料を混練する第一混練工程と、
コンクリート硬化体を構成するセメントの残部と、コンクリート硬化体を構成する水の残部とを含む第二原料を第一混練工程で形成される第一混練物と混練してコンクリート混練物を形成する第二混練工程とを備えており、
前記第一原料は、コンクリート硬化体を構成するセメントの総量に対して10質量%以上50質量%以下のセメントを含むと共に水セメント比が5質量%を超え20質量%未満となるように構成されており、
前記第一混練工程では、第一混練物の温度が30℃以上50℃以下であって第一原料中の粗骨材の表面温度よりも高温になるように第一原料を混練することを特徴とするコンクリート硬化体の形成方法。
【請求項2】
セメントと、粗骨材と、細骨材と、水とを混練してコンクリート混練物を形成し、該コンクリート混練物を硬化させてコンクリート硬化体を形成するコンクリート硬化体の形成方法であって、
前記コンクリート硬化体を構成するセメントの一部と、コンクリート硬化体を構成する粗骨材の一部と、コンクリート硬化体を構成する水の一部とを含む第一原料を混練する第一混練工程と、
コンクリート硬化体を構成するセメントの残部と、コンクリート硬化体を構成する粗骨材の残部と、コンクリート硬化体を構成する水の残部とを含む第二原料を第一混練工程で形成される第一混練物と混練してコンクリート混練物を形成する第二混練工程とを備えており、
前記第一原料は、コンクリート硬化体を構成するセメントの総量に対して10質量%以上50質量%以下のセメントを含むと共に水セメント比が5質量%を超え20質量%未満となるように構成されており、
前記第一混練工程では、第一混練物の温度が30℃以上50℃以下であって第一原料中の粗骨材の表面温度よりも高温になるように第一原料を混練することを特徴とするコンクリート硬化体の形成方法。
【請求項3】
前記第一原料を構成する水として、40℃以上80℃以下の温水を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化体コンクリート硬化体の形成方法。
【請求項4】
前記粗骨材として、玉砂利を用いることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のコンクリート硬化体の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントと、粗骨材と、細骨材とを混練してコンクリート硬化体を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セメントと、粗骨材と、細骨材とを混練して硬化させることでコンクリート硬化体を製造する方法が知られている。このようなコンクリート硬化体に用いられる粗骨材としては、砕石に代表される人工骨材や、玉砂利に代表される天然骨材等が挙げられる(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、粗骨材の表面性状は、コンクリート硬化体の物性に影響を与えるものとして知られている。具体的には、粗骨材の表面性状は、コンクリート硬化体における粗骨材以外の部分(以下、セメント硬化部とも記す)と粗骨材との付着の強さに影響を与えるものであり、斯かる付着の強さは、コンクリート硬化体の強度の発現に影響を与えることが知られている。
【0004】
具体的には、砕石のような粗骨材では、大小様々な突起が表面にいくつも存在している(表面がゴツゴツしている)ため、突起によるアンカー効果によってセメント硬化部と粗骨材との付着が強固になる。一方、玉砂利のような粗骨材では、粗骨材の表面が滑らかである(突起が少ない)ため、上述のようなアンカー効果が少なくなり、セメント硬化部と粗骨材との付着が弱くなる。このため、砕石のような粗骨材を用いた場合よりも玉砂利のような粗骨材を用いた場合の方がコンクリート硬化体の強度が低くなる。
【0005】
このため、玉砂利のような粗骨材を用いる場合には、砕石のような粗骨材を用いる場合よりも水セメント比を低く(水量を少なく)してコンクリート硬化体を形成することで、コンクリート硬化体の強度低下を抑制する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−145652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように、水セメント比を低くしてコンクリート硬化体を形成すると、コンクリート硬化体が形成される際に発生する熱によって、コンクリート硬化体に温度ひび割れが生じる危険性が増大すると共に、コンクリート硬化体の自己収縮によって収縮ひび割れがコンクリート硬化体に生じる危険性も増大する。このため、水セメント比を調整することでは、コンクリート硬化体の強度を効果的に向上させることは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、粗骨材の表面性状に影響されることなく、良好な強度を有するコンクリート硬化体を形成することができるコンクリート硬化体の形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコンクリート硬化体の形成方法は、セメントと、粗骨材と、細骨材と、水とを混練してコンクリート混練物を形成し、該コンクリート混練物を硬化させてコンクリート硬化体を形成するコンクリート硬化体の形成方法であって、前記コンクリート硬化体を構成するセメントの一部と、コンクリート硬化体を構成する粗骨材の全部と、コンクリート硬化体を構成する水の一部とを含む第一原料を混練する第一混練工程と、コンクリート硬化体を構成するセメントの残部と、コンクリート硬化体を構成する水の残部とを含む第二原料を第一混練工程で形成される第一混練物と混練してコンクリート混練物を形成する第二混練工程とを備えており、前記第一原料は、コンクリート硬化体を構成するセメントの総量に対して10質量%以上50質量%以下のセメントを含むと共に水セメント比が5質量%を超え20質量%未満となるように構成されており、前記第一混練工程では、第一混練物の温度が30℃以上50℃以下であって第一原料中の粗骨材の表面温度よりも高温になるように第一原料を混練することを特徴とする。
【0010】
また、本願発明に係るコンクリート硬化体の形成方法は、セメントと、粗骨材と、細骨材と、水とを混練してコンクリート混練物を形成し、該コンクリート混練物を硬化させてコンクリート硬化体を形成するコンクリート硬化体の形成方法であって、前記コンクリート硬化体を構成するセメントの一部と、コンクリート硬化体を構成する粗骨材の一部と、コンクリート硬化体を構成する水の一部とを含む第一原料を混練する第一混練工程と、コンクリート硬化体を構成するセメントの残部と、コンクリート硬化体を構成する粗骨材の残部と、コンクリート硬化体を構成する水の残部とを含む第二原料を第一混練工程で形成される第一混練物と混練してコンクリート混練物を形成する第二混練工程とを備えており、前記第一原料は、コンクリート硬化体を構成するセメントの総量に対して10質量%以上50質量%以下のセメントを含むと共に水セメント比が5質量%を超え20質量%未満となるように構成されており、前記第一混練工程では、第一混練物の温度が30℃以上50℃以下であって第一原料中の粗骨材の表面温度よりも高温になるように第一原料を混練することを特徴とする。
【0011】
上記の各発明の構成によれば、第一混練工程で、第一混練物の温度が所定の温度となるように第一原料を混練することで、第一原料における粗骨材以外の成分(水とセメントとを含むセメントペースト)が粗骨材の表面で急結するため、セメントペーストが硬化してなるセメント硬化部と粗骨材の表面との付着が強固になる。これにより、第二混練工程で形成されるコンクリート混練物が硬化した際に、粗骨材とセメント硬化部とが強固に付着したコンクリート硬化体が形成される。斯かるコンクリート硬化体は、セメントと、粗骨材と、水とが一度に混練されて形成されるコンクリート硬化体よりも高い強度を有するものとなる。つまり、第一混練工程で、第一混練物の温度が所定の温度となるように第一原料を混練することで、粗骨材の表面性状に影響されることなく、良好な強度を有するコンクリート硬化体を形成することができる。
【0012】
前記第一原料を構成する水として、40℃以上80℃以下の温水を用いることが好ましい。
【0013】
斯かる構成によれば、第一原料を構成する水として、40℃以上80℃以下の温水を用いることで、第一混練工程で第一原料を混練する際に温水の熱によって第一混練物の温度を所定の温度に容易に調整することができる。
【0014】
前記粗骨材として、玉砂利を用いることが好ましい。
【0015】
斯かる構成によれば、前記粗骨材として、玉砂利を用いた場合であっても、砕石のような粗骨材を用いた場合より強度の低いコンクリート硬化体が形成されるのを抑制することができる。具体的には、従来、粗骨材として玉砂利を用いてコンクリート硬化体を形成した場合、コンクリート硬化体におけるセメント硬化部と玉砂利(粗骨材)との付着が強固なものとなり難いため、砕石のような粗骨材を用いた場合よりもコンクリート硬化体の強度が低くなる。しかしながら、前記第一混練工程と第二混練工程とを経て形成されるコンクリート硬化体は、玉砂利(粗骨材)に対するセメント硬化部の付着が強固なものとなるため、コンクリート硬化体の強度が低くなるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、粗骨材の表面性状に影響されることなく、良好な強度を有するコンクリート硬化体を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
本発明に係るコンクリート硬化体の形成方法は、セメントと、粗骨材と、細骨材と、水とを混練してコンクリート混練物を形成し、該コンクリート混練物を硬化させてコンクリート硬化体を形成するものである。
【0019】
コンクリート硬化体を構成するセメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメントや、超速硬セメント、アルミナセメント等の少なくとも一つを用いることができる。
【0020】
コンクリート硬化体を構成する粗骨材としては、特に限定されるものではなく、例えば、砕石、玉砂利(川砂利)、天然軽量粗骨材(パーライト、ヒル石等)、副産軽量粗骨材、人工軽量粗骨材、再生骨材等の少なくとも一つを用いることができる。
【0021】
コンクリート硬化体を構成する細骨材としては、特に限定されるものではなく、例えば、川砂、山砂、海砂、天然軽量細骨材(パーライト、ヒル石等)等の天然細骨材や砕砂、人工軽量細骨材、高炉スラグ細骨材等の人工細骨材、副産軽量細骨材等の少なくとも一つを用いることができる。
【0022】
また、本発明に係るコンクリート硬化体の形成方法は、コンクリート硬化体を構成するセメントの一部と、コンクリート硬化体を構成する粗骨材の全部と、コンクリート硬化体を構成する水の一部とを含む第一原料を混練する第一混練工程と、コンクリート硬化体を構成するセメントの残部と、コンクリート硬化体を構成する水の残部とを含む第二原料を第一混練工程で形成される第一混練物と混練してコンクリート混練物を形成する第二混練工程とを備える。
【0023】
第一原料は、コンクリート硬化体を構成するセメントの総量に対して10質量%以上50質量%以下、好ましくは10質量%以上30質量%以下のセメントを含むものである。また、第一原料は、水セメント比が5質量%を超え20質量%未満、好ましくは8質量%以上15質量%以下となるものである。
【0024】
前記第一混練工程では、第一混練物の温度が所定の温度となるように第一原料が混練される。具体的には、前記第一混練工程では、第一混練物の温度が30℃以上50℃以下、好ましくは35℃以上45℃以下であって第一原料中の粗骨材の表面温度よりも高温になるように第一原料が混練される。つまり、第一原料の混練中に粗骨材の温度が低下しないように第一混練工程が行われる。
【0025】
第一混練工程で形成される第一混練物の温度を調節する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、第一原料を構成する水として温水を用いることで、該温水の熱によって第一混練物の温度を調節することができる。斯かる場合の温水の温度としては、特に限定されるものではないが、第一原料を構成する水(温水)以外の原料の温度に応じて適宜設定することができる。例えば、第一原料を構成する水(温水)以外の原料の温度が20℃以上である場合には、温水の温度が40℃以上60℃以下であることが好ましく、第一原料を構成する水(温水)以外の原料の温度が20℃以下である場合には、温水の温度が50℃以上80℃以下であることが好ましい。
【0026】
前記細骨材は、コンクリート硬化体を構成する細骨材の全部が第二原料に含まれることが好ましい。又は、前記細骨材は、コンクリート硬化体を構成する総量のうちの一部が第一原料を構成するものとして第一原料に含まれ、残部が第二原料を構成するものとして第二原料に含まれてもよい。例えば、前記細骨材は、第二原料に含まれる細骨材は、コンクリート硬化体を構成する細骨材の全量に対して、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0027】
なお、第二原料には、各種の混和剤が含まれてもよい。混和剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、分離低減剤、凝結遅延剤、凝結促進剤、急結剤、収縮低減剤、起泡剤、発泡剤、防水剤等が挙げられる。
【0028】
以上のように、本発明に係るコンクリート硬化体の形成方法によれば、本発明は、粗骨材の表面性状に影響されることなく、良好な強度を有するコンクリート硬化体を形成することができる。
【0029】
即ち、上記の各発明の構成によれば、第一混練工程で、第一混練物の温度が所定の温度となるように第一原料が混練されることで、第一原料における粗骨材以外の成分(水とセメントとを含むセメントペースト)が粗骨材の表面で急結するため、セメントペーストが硬化してなるセメント硬化部と粗骨材の表面との付着が強固になる。これにより、第二混練工程で形成されるコンクリート混練物が硬化した際に、粗骨材とセメント硬化部とが強固に付着したコンクリート硬化体が形成される。
【0030】
斯かるコンクリート硬化体は、セメントと、粗骨材と、水とが一度に混練されて形成されるコンクリート硬化体よりも高い強度を有するものとなる。つまり、第一混練工程で、第一混練物の温度が所定の温度となるように第一原料を混練することで、粗骨材の表面性状に影響されることなく、良好な強度を有するコンクリート硬化体を形成することができる。
【0031】
また、第一原料を構成する水として、40℃以上80℃以下の温水を用いることで、第一混練工程で第一原料を混練する際に温水の熱によって第一混練物の温度を所定の温度に容易に調整することができる。
【0032】
前記粗骨材として、玉砂利を用いた場合であっても、砕石のような粗骨材を用いた場合より強度の低いコンクリート硬化体が形成されるのを抑制することができる。具体的には、従来、粗骨材として玉砂利を用いてコンクリート硬化体を形成した場合、コンクリート硬化体におけるセメント硬化部と玉砂利(粗骨材)との付着が強固なものとなり難いため、砕石のような粗骨材を用いた場合よりもコンクリート硬化体の強度が低くなる。しかしながら、前記第一混練工程と第二混練工程とを経て形成されるコンクリート硬化体は、玉砂利(粗骨材)に対するセメント硬化部の付着が強固なものとなるため、コンクリート硬化体の強度が低くなるのを抑制することができる。
【0033】
なお、本発明に係るコンクリート硬化体の形成方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0034】
例えば、上記では、第一原料の温度を調節する方法として、温水を用いる方法を挙げているが、これに限定されるものではなく、例えば、第一原料における粗骨材以外の材料をヒーター等で加温した後(又は、加温しつつ)第一原料を混練することで、第一混練物の温度を調節してもよい。
【0035】
また、第一混練物の温度を調節する他の方法としては、第一原料におけるセメントを加温しておき、加温されたセメントと、該セメントよりも低温の水及び粗骨材とを混練することで、第一混練物の温度を調節してもよい。
【0036】
また、上記では、第一原料は、コンクリート硬化体を構成する粗骨材の全部を含有するように構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、コンクリート硬化体を構成する粗骨材の一部のみを含有するように構成されてもよい。斯かる場合には、コンクリート硬化体を構成する粗骨材の残部が第二原料に含有される。第一原料に含まれる粗骨材は、コンクリート硬化体を構成する粗骨材の全量に対して、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
=使用材料=
・セメント:早強ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)
・水:上水道水
・細骨材:山砂(掛川産)
・粗骨材1:砕石(岩瀬産)
・粗骨材2:玉砂利(富岡産)
・高性能AE減水剤:マスターグレニウムSP8S(BASFジャパン社製)
【0039】
=コンクリート混練物・コンクリート硬化体=
下記の各実施例及び各比較例によって作製されるコンクリート混練物の水セメント比とコンクリート硬化体の組成については、下記表1に示す。
【0040】
<実施例1〜7、比較例3〜7>
1.第一混練工程
コンクリート硬化体を構成するセメントの一部と、コンクリート硬化体を構成する粗骨材の全部と、コンクリート硬化体を構成する水の一部とを含む第一原料を混練して第一混練物を形成した。第一混練工程における第一原料の水セメント比、セメントの含有率、第一混練物の温度については、下記表2に示す。なお、JIS A 0203「コンクリート用語」で定義された粗骨材の最大寸法についても表2に示す。
2.第二混練工程
コンクリート硬化体を構成するセメントの残部と、コンクリート硬化体を構成する水の残部と、コンクリート硬化体を構成する細骨材の全部と、高性能AE減水剤を含む第二原料を第一混練工程で形成される第一混練物と混練してコンクリート混練物を形成した。
3.供試体(コンクリート硬化体)の作製
前記コンクリート混練物をφ100mm×200mmの円柱型枠に充填して圧縮強度用供試体を作製した。また、前記コンクリート混練物を100mm×100mm×400mmの角柱型枠に充填して曲げ強度用供試体を作製した。そして、これらの供試体を20℃の水中で28日間養生して供試体とした。
【0041】
4.圧縮強度の測定
得られた供試体を用いてJIS A 1108に準拠した圧縮強度の測定を行った。測定結果については、後述する比較例1の測定結果に対する各実施例及び各比較例の測定結果の割合を下記表2に示す。
【0042】
5.曲げ強度の測定
得られた供試体を用いてJIS A 1106に準拠した曲げ強度の測定を行った。測定結果については、後述する比較例1の測定結果に対する各実施例及び各比較例の測定結果の割合を下記表2に示す。
【0043】
<比較例1、2,8,9>
上記の使用材料の全て(粗骨材に関しては、何れか一方)を一度に混練することでコンクリート混練物を形成したこと以外は、実施例1と同一条件で供試体(コンクリート硬化体)を作製し、実施例1と同一条件で圧縮強度及び曲げ強度の測定を行った。測定結果については、比較例1の測定結果に対する各比較例の測定結果の割合を下記表2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
<まとめ>
各実施例と比較例1,2,8,9とを比較すると、圧縮強度及び曲げ強度は、各実施例の方が高くなることが認められる。つまり、本願発明の方法を用いてコンクリート硬化体を形成することで、粗骨材の表面性状に影響されることなくコンクリート硬化体の強度を向上させることが可能となる。
【0047】
また、比較例1と2や比較例8と9を見ると、粗骨材として玉砂利を用いた方(比較例2と9)が粗骨材として砕石を用いた場合(比較例1と8)よりも圧縮強度及び曲げ強度が低くなるが、実施例2と比較例1とを比較し、実施例7と比較例8とを比較すると、粗骨材として玉砂利を用いた各実施例の方が圧縮強度及び曲げ強度が高くなることが認められる。つまり、本願発明の方法でコンクリート硬化体を形成することで、粗骨材として玉砂利を用いた場合であっても、粗骨材として砕石を用いた場合よりもコンクリート硬化体の強度を向上させることが可能となる。
【0048】
なお、比較例3〜7のコンクリート硬化体をJIS A 1106に準じた曲げ強度試験によって破断し、破断面を観察したところ、コンクリート硬化体における粗骨材以外の部分(セメント硬化部)が粗骨材の大半において粗骨材の表面から剥離した状態となることが認められた。一方、実施例2〜5のコンクリート硬化体をJIS A 1106に準じた曲げ強度試験によって破断し、破断面を観察したところ、粗骨材の大半がコンクリート硬化体の破断面で破断した状態となる(即ち、粗骨材の表面からセメント硬化部が剥離していない)ことが認められた。つまり、本願発明の方法でコンクリート硬化体を形成することで、粗骨材の表面に対するセメント硬化部の付着が強固なコンクリート硬化体を得ることができるため、優れた圧縮強度及び曲げ強度を有するコンクリート硬化体を形成することが可能となる。