特許第6624833号(P6624833)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6624833マイクロ波プラズマ源およびプラズマ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624833
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】マイクロ波プラズマ源およびプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20191216BHJP
   C23C 16/511 20060101ALI20191216BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20191216BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20191216BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   H05H1/46 B
   C23C16/511
   C23C16/44 B
   H01L21/302 101D
   H01L21/31 C
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-152169(P2015-152169)
(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公開番号】特開2017-33749(P2017-33749A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】原田 保
(72)【発明者】
【氏名】原 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】池田 太郎
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−158127(JP,A)
【文献】 特開2013−110302(JP,A)
【文献】 特開2013−157520(JP,A)
【文献】 特開2009−146837(JP,A)
【文献】 特開平07−130713(JP,A)
【文献】 特開平10−247598(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0060759(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00−1/54
C23C 16/00−16/56
H01L 21/3065
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置のチャンバ内にマイクロ波を放射して表面波プラズマを形成するマイクロ波プラズマ源であって、
前記チャンバの天壁に設けられ、前記チャンバ内にマイクロ波を放射する複数のマイクロ波放射機構と、
前記複数のマイクロ波放射機構のマイクロ波放射面から前記チャンバ内へマイクロ波を放射した際にプラズマが生成される領域となる前記マイクロ波放射面の直下の領域に設けられた、多数の孔を有し、接地電位に設定された導電性材料からなる多孔板と
を有し、
前記マイクロ波放射面と前記多孔板の上面との距離が2〜30mmの範囲内であり、
前記多孔板は、前記マイクロ波放射機構からマイクロ波が放射された際に、前記マイクロ波放射面の直下に形成される表面波を、前記マイクロ波放射面と前記多孔板とで囲まれた空間に閉じ込め、前記空間に生成されるプラズマの電力吸収効率を高く維持する機能を有し、
前記空間を、前記複数のマイクロ波放射機構のうち少なくとも一つのマイクロ波放射機構に対応する空間と、他のマイクロ波放射機構に対応する空間とに区画し、前記多孔板と電気的に導通する導電性材料からなる区画壁をさらに有することを特徴とするマイクロ波プラズマ源。
【請求項2】
前記空間の前記チャンバ側面に対応する部分に設けられた絶縁性被覆を有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波プラズマ源。
【請求項3】
前記多孔板の上面に絶縁性被覆を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマイクロ波プラズマ源。
【請求項4】
前記マイクロ波放射機構は、前記チャンバの天壁の中心部に一つ、周縁部に複数配置されており、前記区画壁は、前記空間を、前記中心部のマイクロ波放射機構に対応する空間と、前記周縁部のマイクロ波放射機構に対応する空間とに区画することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のマイクロ波プラズマ源。
【請求項5】
前記区画壁は、前記空間を、全てのマイクロ波放射機構に対応する空間に区画することを特徴とする請求項請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のマイクロ波プラズマ源。
【請求項6】
前記区画壁は、電界波形が通過しない大きさの多数の孔を有する多孔構造であることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載のマイクロ波プラズマ源。
【請求項7】
前記孔の孔径dは、マイクロ波の周波数をfとすると、2.58×10/f以下であることを特徴とする請求項に記載のマイクロ波プラズマ源。
【請求項8】
被処理基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内で被処理体を載置する載置台と、
前記チャンバ内にガスを供給するガス供給機構と、
前記チャンバ内にマイクロ波を放射して表面波プラズマを形成するマイクロ波プラズマ源と
を具備し、前記表面波プラズマにより被処理基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、
前記マイクロ波プラズマ源は、
前記チャンバの天壁に設けられ、前記チャンバ内にマイクロ波を放射する複数のマイクロ波放射機構と、
前記複数のマイクロ波放射機構のマイクロ波放射面から前記チャンバ内へマイクロ波を放射した際にプラズマが生成される領域となる前記マイクロ波放射面の直下の領域に設けられた、多数の孔を有し、接地電位に設定された導電性材料からなる多孔板と
を有し、
前記マイクロ波放射面と前記多孔板の上面との距離が2〜30mmの範囲内であり、
前記多孔板は、前記マイクロ波放射機構からマイクロ波が放射された際に、前記マイクロ波放射面の直下に形成される表面波を、前記マイクロ波放射面と前記多孔板とで囲まれた空間に閉じ込め、前記空間に生成されるプラズマの電力吸収効率を高く維持する機能を有し、
前記空間を、前記複数のマイクロ波放射機構のうち少なくとも一つのマイクロ波放射機構に対応する空間と、他のマイクロ波放射機構に対応する空間とに区画し、前記多孔板と電気的に導通する導電性材料からなる区画壁をさらに有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記空間の前記チャンバ側面に対応する部分に設けられた絶縁性被覆を有することを特徴とする請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記多孔板の上面に絶縁性被覆を有することを特徴とする請求項8または請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記マイクロ波放射機構は、前記チャンバの天壁の中心部に一つ、周縁部に複数配置されており、前記区画壁は、前記空間を、前記中心部のマイクロ波放射機構に対応する空間と、前記周縁部のマイクロ波放射機構に対応する空間とに区画することを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記区画壁は、前記空間を、全てのマイクロ波放射機構に対応する空間に区画することを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記区画壁は、電界波形が通過しない大きさの多数の孔を有する多孔構造であることを特徴とする請求項から請求項12のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記孔の孔径dは、マイクロ波の周波数をfとすると、2.58×10/f以下であることを特徴とする請求項13に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記ガス供給機構は、前記チャンバの天壁に設けられた、第1のガスを導入する第1のガス導入部と、前記多孔板と前記載置台との間にプラズマ処理に用いる第2のガスを導入する第2のガス導入部とを有することを特徴とする請求項から請求項14のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波プラズマ源およびそれを用いたプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理は、半導体デバイスの製造に不可欠な技術であるが、近時、LSIの高集積化、高速化の要請からLSIを構成する半導体素子のデザインルールが益々微細化され、また、半導体ウエハが大型化されており、それにともなって、プラズマ処理装置においてもこのような微細化および大型化に対応するものが求められている。
【0003】
ところが、従来から多用されてきた平行平板型や誘導結合型のプラズマ処理装置では、大型の半導体ウエハを均一かつ高速にプラズマ処理することは困難である。
【0004】
そこで、高密度で低電子温度の表面波プラズマを均一に形成することができるRLSA(登録商標)マイクロ波プラズマ処理装置が注目されている(例えば特許文献1)。
【0005】
RLSA(登録商標)マイクロ波プラズマ処理装置は、表面波プラズマを発生させるためのマイクロ波を放射するマイクロ波放射アンテナとしてチャンバの上部に所定のパターンで複数のスロットが形成された平面スロットアンテナであるラジアルラインスロットアンテナを設け、マイクロ波発生源から導かれたマイクロ波を、アンテナのスロットから放射させるとともに、その下に設けられた誘電体からなるマイクロ波透過板を介して真空に保持されたチャンバ内に放射し、このマイクロ波電界によりチャンバ内で表面波プラズマを生成し、これにより半導体ウエハ等の被処理体を処理するものである。
【0006】
このようなRLSA(登録商標)マイクロ波プラズマ装置において、プラズマ分布を調整する場合、スロット形状およびパターン等が異なる複数のアンテナを用意しておき、アンテナを交換する必要があり、極めて煩雑である。
【0007】
これに対し、特許文献2には、マイクロ波を複数に分配し、上記のような平面アンテナとインピーダンス整合を行うチューナとを有しマイクロ波をチャンバ内に放射するマイクロ波放射機構を複数設け、それらから放射されたマイクロ波をチャンバ内に導いてチャンバ内で空間合成するプラズマ源が開示されている。
【0008】
このように複数のマイクロ波放射機構を用いてマイクロ波を空間合成することにより、各マイクロ波放射機構から放射されるマイクロ波の位相や強度を個別に調整することができ、プラズマ分布の調整を比較的容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−294550号公報
【特許文献2】国際公開第2008/013112号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献2の技術のように、複数のマイクロ波放射機構からチャンバ内にマイクロ波を放射してマイクロ波を空間合成する場合、実際のプロセス条件において、異常放電が発生し、プラズマが安定しない現象が生じることがある。また、プラズマ着火性が低下し、着火電力が大きくなる場合もある。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、マイクロ波放射機構を複数有しても、広いプロセス条件で異常放電が発生し難く、プラズマ着火性が良好なマイクロ波プラズマ源およびそれを用いたプラズマ処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、プラズマ処理装置のチャンバ内にマイクロ波を放射して表面波プラズマを形成するマイクロ波プラズマ源であって、前記チャンバの天壁に設けられ、前記チャンバ内にマイクロ波を放射する複数のマイクロ波放射機構と、前記複数のマイクロ波放射機構のマイクロ波放射面から前記チャンバ内へマイクロ波を放射した際にプラズマが生成される領域となる前記マイクロ波放射面の直下の領域に設けられた、多数の孔を有し、接地電位に設定された導電性材料からなる多孔板とを有し、前記マイクロ波放射面と前記多孔板の上面との距離が2〜30mmの範囲内であり、前記多孔板は、前記マイクロ波放射機構からマイクロ波が放射された際に、前記マイクロ波放射面の直下に形成される表面波を、前記マイクロ波放射面と前記多孔板とで囲まれた空間に閉じ込め、前記空間に生成されるプラズマの電力吸収効率を高く維持する機能を有し、前記空間を、前記複数のマイクロ波放射機構のうち少なくとも一つのマイクロ波放射機構に対応する空間と、他のマイクロ波放射機構に対応する空間とに区画し、前記多孔板と電気的に導通する導電性材料からなる区画壁をさらに有することを特徴とするマイクロ波プラズマ源を提供する。
【0013】
本発明の第2の観点は、被処理基板を収容するチャンバと、前記チャンバ内で被処理体を載置する載置台と、前記チャンバ内にガスを供給するガス供給機構と、前記チャンバ内にマイクロ波を放射して表面波プラズマを形成するマイクロ波プラズマ源とを具備し、前記表面波プラズマにより被処理基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、前記マイクロ波プラズマ源は、前記チャンバの天壁に設けられ、前記チャンバ内にマイクロ波を放射する複数のマイクロ波放射機構と、前記複数のマイクロ波放射機構のマイクロ波放射面から前記チャンバ内へマイクロ波を放射した際にプラズマが生成される領域となる前記マイクロ波放射面の直下の領域に設けられた、多数の孔を有し、接地電位に設定された導電性材料からなる多孔板とを有し、前記マイクロ波放射面と前記多孔板の上面との距離が2〜30mmの範囲内であり、前記多孔板は、前記マイクロ波放射機構からマイクロ波が放射された際に、前記マイクロ波放射面の直下に形成される表面波を、前記マイクロ波放射面と前記多孔板とで囲まれた空間に閉じ込め、前記空間に生成されるプラズマの電力吸収効率を高く維持する機能を有し、前記空間を、前記複数のマイクロ波放射機構のうち少なくとも一つのマイクロ波放射機構に対応する空間と、他のマイクロ波放射機構に対応する空間とに区画し、前記多孔板と電気的に導通する導電性材料からなる区画壁をさらに有することを特徴とするプラズマ処理装置を提供する。
【0015】
前記空間の前記チャンバ側面に対応する部分に設けられた絶縁性被覆を有することが好ましい。また、前記多孔板の上面に絶縁性被覆を有することが好ましい。これらの絶縁性被覆はいずれか一つでも両方でもよい。
【0017】
記マイクロ波放射機構は、前記チャンバの天壁の中心部に一つ、周縁部に複数配置されており、前記区画壁は、前記空間を、前記中心部のマイクロ波放射機構に対応する空間と、前記周縁部のマイクロ波放射機構に対応する空間とに区画する構成をとることができる。また、前記区画壁は、前記空間を、全てのマイクロ波放射機構に対応する空間に区画するものであってもよい。さらに、前記区画壁は、電界波形が通過しない大きさの多数の孔を有する多孔構造であってもよい。この場合に、前記孔の孔径dは、マイクロ波の周波数をfとすると、2.58×10/f以下であることが好ましい。
【0018】
上記プラズマ処理装置において、前記ガス供給機構は、前記チャンバの天壁に設けられた、第1のガスを導入する第1のガス導入部と、前記多孔板と前記載置台との間にプラズマ処理に用いる第2のガスを導入する第2のガス導入部とを有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、マイクロ波放射面の直下の領域に接地電位に設定された多孔板を設けたので、マイクロ波放射機構からマイクロ波を放射した際に、マイクロ波放射面と多孔板とで形成される空間がプラズマが生成される領域となる。このとき、マイクロ波放射面直下に形成された表面波がマイクロ波放射面と多孔板とで形成される空間に閉じ込められる。このため、その空間中ではプラズマの電力吸収効率を高く維持することができる。したがって、マイクロ波放射面と多孔板とで形成される空間中で安定した放電が生じやすくなり、異常放電を生じ難くすることができる。また、このようにマイクロ波放射面と多孔板とで形成される空間に表面波を閉じ込めてプラズマの電力吸収効率を高く維持することにより、プラズマの着火電力を小さくしてプラズマの着火性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
図2図1のプラズマ処理装置に用いられるマイクロ波プラズマ源の構成を示すブロック図である。
図3図1のプラズマ処理装置に用いられるマイクロ波プラズマ源におけるマイクロ波放射機構の配置を模式的に示す平面図である。
図4図1のプラズマ処理装置のマイクロ波プラズマ源におけるマイクロ波放射板およびマイクロ波放射機構を示す断面図である。
図5】電磁界シミュレーションにより求めたマイクロ波放射面からの距離Zと電界強度との関係を示す図である。
図6】マイクロ波放射板の外周壁内側および多孔板の上面に絶縁性被覆を設けた状態を示す図である。
図7】マイクロ波放射機構を示す断面図である。
図8】マイクロ波放射機構の給電機構を示す図7のAA′線による横断面図である。
図9】マイクロ波放射機構におけるスラグと滑り部材を示す図7のBB′線による横断面図である。
図10】多孔板を用いた図1に示すプラズマ処理装置と、多孔板なしのプラズマ処理装置を用い、マイクロ波パワーとチャンバ内の圧力を変化させて表面波プラズマを形成した場合の異常放電の有無を示した図であり、(a)は多孔板ありの場合、(b)は多孔板なしの場合である。
図11】多孔板を用いた図1に示すプラズマ処理装置と、多孔板なしのプラズマ処理装置を用い、チャンバ内圧力を変化させた際の着火電力(プラズマが着火する電力)を示す図である。
図12】本発明の第2の実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
図13図12のプラズマ処理装置のCC′線による断面図である。
図14】区画壁を設けない図1のプラズマ処理装置および区画壁を設けた図12のプラズマ処理装置を用いて、中心のマイクロ波放射機構のみをパワーオンにした場合および周縁の6本のマイクロ波放射機構のみをパワーオンにした場合についてチャンバ径方向の電子密度分布を評価した結果を示す図である。
図15】区画壁の他の配置を示す断面図である。
図16】マイクロ波放射機構の他の配置例を示す図である。
図17図16のマイクロ波放射機構に区画壁を設けた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
<第1の実施形態>
最初に第1の実施形態について説明する。
【0023】
(プラズマ処理装置の構成)
図1は本発明の第1の実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図であり、図2図1のプラズマ処理装置に用いられるマイクロ波プラズマ源の構成を示すブロック図、図3図1のプラズマ処理装置に用いられるマイクロ波プラズマ源におけるマイクロ波放射機構の配置を模式的に示す平面図である。
【0024】
プラズマ処理装置100は、マイクロ波により表面波プラズマを形成してウエハに対して所定のプラズマ処理を行うものである。プラズマ処理としては、成膜処理またはエッチング処理が例示される。
【0025】
プラズマ処理装置100は、気密に構成されたアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属材料からなる略円筒状の接地されたチャンバ1と、チャンバ1内にマイクロ波を導入して表面波プラズマを形成するためのマイクロ波プラズマ源2とを有している。チャンバ1の上部には開口部1aが形成されており、マイクロ波プラズマ源2はこの開口部1aからチャンバ1の内部に臨むように設けられている。
【0026】
また、プラズマ処理装置100は、マイクロプロセッサを備えた全体制御部3を有している。全体制御部3は、プラズマ処理装置100の各部を制御するようになっている。全体制御部3はプラズマ処理装置100のプロセスシーケンスおよび制御パラメータであるプロセスレシピを記憶した記憶部や、入力手段およびディスプレイ等を備えており、選択されたプロセスレシピに従って所定の制御を行うことが可能である。
【0027】
チャンバ1内には被処理体である半導体ウエハW(以下ウエハWと記述する)を水平に支持するためのサセプタ(載置台)11が、チャンバ1の底部中央に絶縁部材12aを介して立設された筒状の支持部材12により支持された状態で設けられている。サセプタ11および支持部材12を構成する材料としては、表面をアルマイト処理(陽極酸化処理)したアルミニウム等の金属や内部に高周波用の電極を有した絶縁性部材(セラミックス等)が例示される。
【0028】
また、図示はしていないが、サセプタ11には、ウエハWを静電吸着するための静電チャック、温度制御機構、ウエハWの裏面に熱伝達用のガスを供給するガス流路、およびウエハWを搬送するために昇降する昇降ピン等が設けられている。さらに、サセプタ11には、整合器13を介して高周波バイアス電源14が電気的に接続されている。この高周波バイアス電源14からサセプタ11に高周波電力が供給されることにより、ウエハW側にプラズマ中のイオンが引き込まれる。なお、高周波バイアス電源14はプラズマ処理の特性によっては設けなくてもよい。この場合は、サセプタ11としてAlNのようなセラミックス等からなる絶縁性部材を用いても電極は不要である。
【0029】
チャンバ1の底部には排気管15が接続されており、この排気管15には真空ポンプを含む排気装置16が接続されている。そしてこの排気装置16を作動させることによりチャンバ1内が排気され、チャンバ1内を所定の真空度まで高速に減圧することが可能となっている。また、チャンバ1の側壁には、ウエハWの搬入出を行うための搬入出口17と、この搬入出口17を開閉するゲートバルブ18とが設けられている。
【0030】
マイクロ波プラズマ源2は、複数経路に分配してマイクロ波を出力するマイクロ波出力部30と、マイクロ波出力部30から出力されたマイクロ波を伝送しマイクロ波をチャンバ1内に放射するマイクロ波伝送・放射部40と、チャンバ1の天壁を構成するとともにマイクロ波放射面を有するマイクロ波放射板50と、マイクロ波放射板50の直下位置に、マイクロ波放射板50と対向するように設けられた多孔板151とを有する。多孔板151は導電性材料からなり、多数の孔151aを有しており、チャンバ1の側壁に支持されるとともに接地されている。マイクロ波放射面となるマイクロ波放射板50の下面と多孔板151の上面との間には後述するような微小な空間152が形成されている。
【0031】
マイクロ波放射板50には、シャワー構造の第1ガス導入部21が設けられている。第1ガス導入部21には、第1ガス供給源22から、プラズマ生成用のガス、例えばArガスや、高エネルギーで分解させたいガス、例えばOガスやNガス等の第1のガスが供給され、第1ガス導入部21から第1のガスがチャンバ1内に導入されるようになっている。
【0032】
また、チャンバ1内の多孔板151の下方でかつサセプタ11の上方の位置には円環状をなす第2ガス導入部23が設けられている。この第2ガス導入部23には、第2ガス供給源24から、成膜処理やエッチング処理等のプラズマ処理の際に、極力分解させずに供給したい処理ガス、例えばSiHガスやCガス等の第2の処理ガスが供給されるようになっている。第1ガス供給源22および第2ガス供給源24から供給されるガスとしては、プラズマ処理の内容に応じた種々のガスを用いることができる。
【0033】
次に、マイクロ波プラズマ源2の詳細な構造について説明する。
マイクロ波プラズマ源2は、上述したように、マイクロ波出力部30と、マイクロ波伝送・放射部40と、マイクロ波放射板50と、多孔板151とを有する。
【0034】
図2に示すように、マイクロ波出力部30は、マイクロ波電源31と、マイクロ波発振器32と、発振されたマイクロ波を増幅するアンプ33と、増幅されたマイクロ波を複数に分配する分配器34とを有している。
【0035】
マイクロ波発振器32は、所定周波数(例えば、860MHz)のマイクロ波を例えばPLL発振させる。分配器34では、マイクロ波の損失ができるだけ起こらないように、入力側と出力側のインピーダンス整合を取りながらアンプ33で増幅されたマイクロ波を分配する。なお、マイクロ波の周波数としては、860MHzの他に、915MHz等、700MHzから3GHzの範囲の種々の周波数を用いることができる。
【0036】
マイクロ波伝送・放射部40は、分配器34にて分配されたマイクロ波を主に増幅する複数のアンプ部42と、アンプ部42に対応して設けられた複数のマイクロ波放射機構43とを有する。図3に示すように、マイクロ波伝送・放射部40は、アンプ部42とマイクロ波放射機構43とを7個ずつ有している。7個のマイクロ波導入機構43は、周縁部に円周状に6個およびそれらの中心部に1個、円形をなすマイクロ波放射板50に設けられている。
【0037】
マイクロ波伝送・放射部40のアンプ部42は、図2に示すように、分配器34にて分配されたマイクロ波を増幅して各マイクロ波放射機構43に導く。アンプ部42は、位相器46と、可変ゲインアンプ47と、ソリッドステートアンプを構成するメインアンプ48と、アイソレータ49とを有している。
【0038】
位相器46は、マイクロ波の位相を変化させることができるように構成されており、これを調整することにより放射特性を変調させることができる。例えば、マイクロ波放射機構毎に位相を調整することにより指向性を制御してプラズマ分布を変化させることができる。また、隣り合うマイクロ波放射機構において90°ずつ位相をずらすようにして円偏波を得ることができる。また、位相器46は、アンプ内の部品間の遅延特性を調整し、マイクロ波放射機構内での空間合成を目的として使用することができる。ただし、このような放射特性の変調やアンプ内の部品間の遅延特性の調整が不要な場合には位相器46は設ける必要はない。
【0039】
可変ゲインアンプ47は、メインアンプ48へ入力するマイクロ波の電力レベルを調整し、プラズマ強度調整するためのアンプである。可変ゲインアンプ47を各アンテナモジュール毎に変化させることによって、発生するプラズマに分布を生じさせることもできる。
【0040】
ソリッドステートアンプを構成するメインアンプ48は、例えば、入力整合回路と、半導体増幅素子と、出力整合回路と、高Q共振回路とを有する構成とすることができる。
【0041】
アイソレータ49は、後述するスロットアンテナで反射してメインアンプ48に向かう反射マイクロ波を分離するものであり、サーキュレータとダミーロード(同軸終端器)とを有している。サーキュレータは、反射したマイクロ波をダミーロードへ導き、ダミーロードはサーキュレータによって導かれた反射マイクロ波を熱に変換する。
【0042】
図4に示すように、マイクロ波放射機構43はチューナ60を有している。チューナ60は、アンプ部42から給電されたマイクロ波を伝送するとともにインピーダンスを整合する機能を有している。チューナ60はマイクロ波放射板50の上面に取り付けられている。
【0043】
マイクロ波放射板50は、金属製の本体部120を有しており、その上面および下面にそれぞれ、マイクロ波放射機構43の一部を構成する遅波材121とマイクロ波透過部材122が嵌め込まれている。遅波材121およびマイクロ波透過部材122は誘電体からなり、円板状をなしており、各チューナ60に対応する位置に設けられている。本体部120の遅波材121とマイクロ波透過部材122との間の部分にはスロット123が形成されており、マイクロ波放射機構43の一部である平面状のスロットアンテナ124を構成している。
【0044】
遅波材121は、真空よりも大きい誘電率を有しており、例えば、石英、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂により構成されており、真空中ではマイクロ波の波長が長くなることから、マイクロ波の波長を短くしてアンテナを小さくする機能を有している。
【0045】
マイクロ波透過部材122は、マイクロ波を透過する材料である誘電体材料で構成されており、周方向に均一な表面波プラズマを形成する機能を有している。マイクロ波透過部材122は、遅波材121と同様、例えば、石英、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂により構成することができる。
【0046】
スロット123は、図4に示すように、本体部120の遅波材121に接する上面位置からマイクロ波透過部材122に接する下面位置まで貫通して設けられており、所望のマイクロ波放射特性になるような形状、例えば円弧状や円周状をなしている。本体部120とマイクロ波透過部材122との間のスロット123の周囲部分は、シールリング(図示せず)によりシールされており、マイクロ波透過部材122がスロット123を覆って密閉し、真空シールとして機能する。
【0047】
スロット123内は真空であってもよいが、誘電体が充填されていることが好ましい。スロット123に誘電体を充填することにより、マイクロ波の実効波長が短くなり、スロットの厚さを薄くすることができる。スロット123に充填する誘電体としては、例えば、石英、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂を用いることができる。
【0048】
マイクロ波放射板50の本体部120には、上述した第1ガス導入部21が設けられている。第1ガス導入部21は、中心のマイクロ波放射機構43の周囲に環状に設けられた内側ガス拡散空間141と、内側ガス拡散空間141の外側でかつ周辺のマイクロ波放射機構43の配置領域の内側に環状に設けられた中間ガス拡散空間142と、周辺のマイクロ波放射機構43の配置領域の外周部分に環状に設けられた外側ガス拡散空間143とが同心円状に形成されている。内側ガス拡散空間141の上面には、本体部120の上面から繋がるガス導入孔144が形成されており、内側ガス拡散空間141の下面には、本体部120の下面に至る複数のガス吐出孔145が形成されている。一方、中間ガス拡散空間142の上面には、本体部120の上面から繋がるガス導入孔146が形成されており、中間ガス拡散空間142の下面には、本体部120の下面に至る複数のガス吐出孔147が形成されている。さらに、外側ガス拡散空間143の上面には、本体部120の上面から繋がるガス導入孔148が形成されており、外側ガス拡散空間143の下面には、本体部120の下面に至る複数のガス吐出孔149が形成されている。ガス導入孔144、146および148には、第1ガス供給源22からの第1のガスを供給するためのガス供給配管111が接続されている。
【0049】
本体部120を構成する金属としては、アルミニウムや銅のような熱伝導率の高い金属が好ましい。
【0050】
チューナ60をTEM波として伝送されたマイクロ波は、マイクロ波放射板50の内部に導入され、遅波材121を透過した後、スロットアンテナ124のスロット123に伝送されてTE波にモード変換され、さらにマイクロ波透過部材122を透過してチャンバ1内に放射され、マイクロ波透過部材122の表面に表面波が形成される。この表面波により第1ガス導入部21からチャンバ1内に導入された第1のガスがプラズマ化され、チャンバ1の空間に表面波プラズマが生成される。したがって、マイクロ波透過部材122の下面がマイクロ波放射面となる。マイクロ波放射板50の本体部120の下面はマイクロ波透過部材122の下面と同一平面を形成しており、マイクロ波放射板50の下面がマイクロ波放射面を有している。
【0051】
このとき、マイクロ波放射面からマイクロ波が放射された際のチャンバ1内の電界強度は、マイクロ波放射面であるマイクロ波透過部材122の下面位置で最も大きく、マイクロ波放射面から離れるほど急激に小さくなる。すなわち、マイクロ波放射面を含むマイクロ波放射板50の直下部分が、マイクロ波が放射されたときに高電界領域が形成される高電界形成領域となる。
【0052】
マイクロ波放射板50の直下に設けられた多孔板151は、このような高電界形成領域に配置されている。マイクロ波放射板50は、マイクロ波放射面を含む下面の周囲に下方に延びるチャンバ1の側壁の一部を構成する外周壁を有しており、多孔板151はマイクロ波放射板50の外周壁とチャンバ1の側壁部との間に取り付けられている。そして、マイクロ波放射板50と多孔板151とで空間152が形成される。マイクロ波放射機構43からマイクロ波が放射された際に空間152が高電界領域となり、空間152にプラズマが形成される。すなわち、空間152はプラズマ生成空間となる。
【0053】
多孔板151は、接地電位に設定されており、マイクロ波放射機構43のマイクロ波放射面からマイクロ波が放射された際にマイクロ波放射面の直下に形成される表面波を高電界領域となる空間152に閉じ込めてプラズマの電力吸収効率を高く維持する機能を有している。このように表面波を空間152に閉じ込めてプラズマの電力吸収効率を高く維持すことにより、その領域で安定した放電が生じやすくなり、異常放電を生じ難くすることができるとともに、プラズマの着火性を良好にすることができる。多孔板151を構成する導電性材料としては、アルミニウムや銅等の電気伝導性の良好な金属を好適に用いることができる。また、多孔板151の厚さは10〜30mm程度が好ましく、多孔板151の孔151aの孔径は10〜20mm程度が好ましい。
【0054】
多孔板151の上記機能を有効に発揮するためには、マイクロ波放射面から多孔板151の上面までの距離が2〜30mmが好ましく、2〜20mmがより好ましい。図5は、電磁界シミュレーションにより求めたマイクロ波放射面からの距離Zと電界強度との関係を示す図であるが、距離Zが30mm以下、好ましくは20mm以下の領域で高電界強度が得られることがわかる。一方、マイクロ波放射面から多孔板151の上面までの距離が近すぎても上記効果が有効に発揮されないおそれがあり、その点からマイクロ波放射面から多孔板151の上面までの距離の好ましい範囲を2mm以上とした。
【0055】
プラズマ生成空間となる空間152は、マイクロ波放射面を含むマイクロ波放射板50と多孔板151の上面とで囲まれているが、プラズマ生成空間の側面および底面の金属部分によりプラズマ中のラジカルが消失する可能性がある。このようなことを回避するためには、図6に示すように、プラズマ生成空間である空間152のチャンバ側面に対応するマイクロ波放射板50の外周壁内側に絶縁性被覆153を設けること、および、プラズマ生成空間の下面を構成する多孔板151の上面に絶縁性被覆154を設けることが好ましい。絶縁性被覆153および154は、溶射等により形成された誘電体皮膜であってもよいし、石英板等の板状のものであってもよい。なお、図6に示すように絶縁性被覆153および154を両方設けてもよいが、これらのいずれか一方のみでもよい。
【0056】
次に、マイクロ波放射機構の詳細な構成について説明する。
図7はマイクロ波放射機構43を示す断面図、図8はマイクロ波放射機構43の給電機構を示す図7のAA′線による横断面図、図9はマイクロ波放射機構43におけるスラグと滑り部材を示す図7のBB′線による横断面図である。
【0057】
上述したように、マイクロ波放射機構43は、チューナ60を有している。チューナ60は、筒状の外側導体52およびその中心に設けられた筒状の内側導体53が同軸状に配置されてなるマイクロ波伝送路44と、外側導体52と内側導体53との間を上下に移動する第1スラグ61a、第2スラグ61bとを有している。第1スラグ61aは上側に設けられ、第2スラグ61bは下側に設けられている。そして、内側導体53が給電側、外側導体52が接地側となっている。外側導体52および内側導体53の上端は反射板58となっており、下端はスロットアンテナ部124に接続されている。第1スラグ61aおよび第2スラグ61bを移動させることにより、チャンバ1内の負荷(プラズマ)のインピーダンスをマイクロ波出力部30におけるマイクロ波電源の特性インピーダンスに整合させる機能を有する。
【0058】
マイクロ波伝送路44の基端側には、アンプ部42からのマイクロ波(電磁波)を給電する給電機構54が設けられている。給電機構54は、マイクロ波伝送路44(外側導体52)の側面に設けられたマイクロ波電力を導入するためのマイクロ波電力導入ポート55を有している。マイクロ波電力導入ポート55には、アンプ部42から増幅されたマイクロ波を供給するための給電線として、内側導体56aおよび外側導体56bからなる同軸線路56が接続されている。そして、同軸線路56の内側導体56aの先端には、外側導体52の内部に向けて水平に伸びる給電アンテナ90が接続されている。
【0059】
給電アンテナ90は、例えば、アルミニウム等の金属板を削り出し加工した後、テフロン(登録商標)等の誘電体部材の型にはめて形成される。反射板58から給電アンテナ90までの間には、反射波の実効波長を短くするためのテフロン(登録商標)等の誘電体からなる遅波材59が設けられている。このとき、給電アンテナ90から反射板58までの距離を最適化し、給電アンテナ90から放射される電磁波を反射板58で反射させることで、最大の電磁波を同軸構造のマイクロ波伝送路44内に伝送させる。
【0060】
給電アンテナ90は、図8に示すように、マイクロ波電力導入ポート55において同軸線路56の内側導体56aに接続され、電磁波が供給される第1の極92および供給された電磁波を放射する第2の極93を有するアンテナ体91と、アンテナ体91の両側から、内側導体53の外側に沿って延び、リング状をなす反射部94とを有し、アンテナ体91に入射された電磁波と反射部94で反射された電磁波とで定在波を形成するように構成されている。アンテナ体91の第2の極93は内側導体53に接触している。
【0061】
給電アンテナ90からマイクロ波(電磁波)が放射されることにより、外側導体52と内側導体53との間の空間にマイクロ波電力が給電される。そして、給電機構54からに供給されたマイクロ波電力がスロットアンテナ124に向かって伝播する。
【0062】
内側導体53の内部空間には、その長手方向に沿って例えば台形ネジが形成された螺棒からなるスラグ移動用の2本のスラグ移動軸64a,64bが設けられている。
【0063】
図9に示すように、第1スラグ61aは、誘電体からなる円環状をなし、その内側に滑り性を有する樹脂からなる滑り部材63が嵌め込まれている。滑り部材63にはスラグ移動軸64aが螺合するねじ穴65aとスラグ移動軸64bが挿通される通し穴65bが設けられている。一方、第2スラグ61bも同様に、ねじ穴65aと通し穴65bとを有しているが、スラグ61aとは逆に、ねじ穴65aはスラグ移動軸64bに螺合され、通し穴65bにはスラグ移動軸64aが挿通されるようになっている。これによりスラグ移動軸64aを回転させることにより第1スラグ61aが昇降移動し、スラグ移動軸64bを回転させることにより第2スラグ61bが昇降移動する。すなわち、スラグ移動軸64a,64bと滑り部材63とからなるねじ機構により第1スラグ61aおよび第2スラグ61bが昇降移動される。
【0064】
内側導体53には長手方向に沿って等間隔に3つのスリット53aが形成されている。一方、滑り部材63は、これらスリット53aに対応するように3つの突出部63aが等間隔に設けられている。そして、これら突出部63aが第1スラグ61aおよび第2スラグ61bの内周に当接した状態で滑り部材63が第1スラグ61aおよび第2スラグ61bの内部に嵌め込まれる。滑り部材63の外周面は、内側導体53の内周面と遊びなく接触するようになっており、スラグ移動軸64a,64bが回転されることにより、滑り部材63が内側導体53を滑って昇降するようになっている。すなわち内側導体53の内周面が第1スラグ61aおよび第2スラグ61bの滑りガイドとして機能する。
【0065】
上記スラグ移動軸64a,64bは、反射板58を貫通してスラグ駆動部70に延びている。スラグ移動軸64a,64bと反射板58との間にはベアリング(図示せず)が設けられている。
【0066】
スラグ駆動部70は筐体71を有し、スラグ移動軸64aおよび64bは筐体71内に延びており、スラグ移動軸64aおよび64bの上端には、それぞれ歯車72aおよび72bが取り付けられている。また、スラグ駆動部70には、スラグ移動軸64aを回転させるモータ73aと、スラグ移動軸64bを回転させるモータ73bが設けられている。モータ73aの軸には歯車74aが取り付けられ、モータ73bの軸には歯車74bが取り付けられており、歯車74aが歯車72aに噛合し、歯車74bが歯車72bに噛合するようになっている。したがって、モータ73aにより歯車74aおよび72aを介してスラグ移動軸64aが回転され、モータ73bにより歯車74bおよび72bを介してスラグ移動軸64bが回転される。なお、モータ73a,73bとしては例えばステッピングモータが用いられる。
【0067】
なお、スラグ移動軸64bはスラグ移動軸64aよりも長く、より上方に達しており、したがって、歯車72aおよび72bの位置が上下にオフセットしており、モータ73aおよび73bも上下にオフセットしている。このため、モータおよび歯車等の動力伝達機構のスペースが小さくすることができる。モータ73aおよび73bの上には、これらの出力軸に直結するように、それぞれスラグ61aおよび61bの位置を検出するためのエンコーダ75aおよび75bが設けられている。
【0068】
第1スラグ61aおよび第2スラグ61bの位置は、スラグコントローラ68により制御される。具体的には、図示しないインピーダンス検出器により検出された入力端のインピーダンス値と、エンコーダ75aおよび75bにより検知された第1スラグ61aおよび第2スラグ61bの位置情報に基づいて、スラグコントローラ68がモータ73aおよび73bに制御信号を送り、第1スラグ61aおよび第2スラグ61bの位置を制御することにより、インピーダンスを調整するようになっている。スラグコントローラ68は、終端が50Ωになるようにインピーダンス整合を実行させる。2つのスラグのうち一方のみを動かすと、スミスチャートの原点を通る軌跡を描き、両方同時に動かすと位相のみが回転する。
【0069】
マイクロ波伝送路44の先端部には、インピーダンス調整部材140が設けられている。インピーダンス調整部材140は、誘電体で構成することができ、その誘電率によりマイクロ波伝送路44のインピーダンスを調整するようになっている。マイクロ波伝送路44の先端の底板67には円柱部材82が設けられており、この円柱部材82がスロットアンテナ部124に接続されている。遅波材121は、その厚さによりマイクロ波の位相を調整することができ、スロットアンテナ部124の上面(マイクロ波放射面)が定在波の「はら」になるようにその厚さが調整される。これにより、反射が最小で、マイクロ波の放射エネルギーが最大となるようにすることができる。
【0070】
本実施形態において、メインアンプ48と、チューナ60と、スロットアンテナ部124とは近接配置している。そして、チューナ60とスロットアンテナ部124とは1/2波長内に存在する集中定数回路を構成しており、かつスロットアンテナ部124および遅波材121は合成抵抗が50Ωに設定されているので、チューナ60はプラズマ負荷に対して直接チューニングしていることになり、効率良くプラズマへエネルギーを伝達することができる。
【0071】
(プラズマ処理装置の動作)
次に、以上のように構成されるプラズマ処理装置100における動作について説明する。
【0072】
まず、ウエハWをチャンバ1内に搬入し、サセプタ11上に載置する。そして、第1ガス供給源22からプラズマ生成ガス、例えばArガスや、高エネルギーで分解させたい第1のガスをガス供給配管111およびマイクロ波放射板50の第1ガス導入部21を介してチャンバ1内へ吐出する。
【0073】
具体的には、第1ガス供給源22からガス供給配管111を介してプラズマ生成ガスや処理ガスを、ガス導入孔144、146および148を経て第1ガス導入部21の内側ガス拡散空間141、中間ガス拡散空間142、および外側ガス拡散空間143に供給し、ガス吐出孔145、147および149からチャンバ1へ吐出する。
【0074】
一方、マイクロ波プラズマ源2のマイクロ波出力部30から出力されたマイクロ波は、分配器34で分配された後、マイクロ波伝送・放射部40の複数のアンプ部42で増幅され、各マイクロ波放射機構43に供給される。具体的には、各アンプ部42からのマイクロ波は、給電機構54を介してチューナ60内に給電され、チューナ60をTEM波として伝送され、伝送される過程でインピーダンス整合がなされる。そして、チューナ60を伝送されたマイクロ波は、マイクロ波放射板50の内部に導入され、遅波材121を透過した後、スロットアンテナ124のスロット123に伝送されてTE波にモード変換され、さらにマイクロ波透過部材122を透過してマイクロ波透過部材122の下面のマイクロ波放射面からチャンバ1内に放射され、マイクロ波透過部材122の表面に表面波が形成される。
【0075】
この表面波により第1ガス導入部21からチャンバ1内に導入された第1のガスがプラズマ化され、チャンバ1の空間に表面波プラズマが生成される。このとき、マイクロ波放射面からマイクロ波が放射された際のチャンバ1内の電界強度は、マイクロ波放射面であるマイクロ波透過部材122の下面位置で最も大きく、マイクロ波放射面の直下部分に高電界領域が形成される。
【0076】
ここで、多孔板151を設けずに、複数のマイクロ波放射機構からマイクロ波を放射してチャンバ1内に高電界領域が形成されると、チャンバ1内の側壁等で異常放電が発生し、プラズマが不安定になる場合があり、また、プラズマ着火性が不十分になる場合もある。
【0077】
これに対して、本実施形態では、チャンバ1内において、マイクロ波放射面を有するマイクロ波放射板50の直下の高電界形成領域に接地電位の多孔板151を設けたので、マイクロ波放射機構43からマイクロ波を放射した際に、マイクロ波放射板50と多孔板151とで形成される空間152が高電界領域となり、空間152にプラズマが生成される。このとき、マイクロ波放射面直下に形成された表面波が高電界領域である空間152に閉じ込められる。このため、空間152中ではプラズマの電力吸収効率を高く維持することができる。したがって、空間152中で安定した放電が生じやすくなり、異常放電を生じ難くすることができる。また、このように空間152に表面波を閉じ込めてプラズマの電力吸収効率を高く維持することにより、プラズマの着火電力を小さくしてプラズマの着火性を良好にすることができる。
【0078】
このことを検証した結果を図10および図11に基づいて説明する。
図10は、多孔板を用いた図1に示すプラズマ処理装置と、多孔板なしのプラズマ処理装置を用い、マイクロ波パワーとチャンバ内の圧力を変化させて表面波プラズマを形成した場合の異常放電の有無を示したものであり、(a)は多孔板ありの場合、(b)は多孔板なしの場合である。マイクロ波パワーは、マイクロ波放射機構一本当たりのパワーを400Wとし、マイクロ波を出力するマイクロ波放射機構の数を変化させることにより調節した。なお、図10中の○は異常放電が発生しなかった場合、×は異常放電が発生した場合である。
【0079】
図10に示すように、多孔板がない場合は、低圧側および高パワー側で異常放電が発生しているのに対し、多孔板を設けることにより、いずれの条件でも異常放電が発生せず、安定したプラズマが生成されることがわかる。
【0080】
また、図11は、多孔板を用いた図1に示すプラズマ処理装置と、多孔板なしのプラズマ処理装置を用い、チャンバ内圧力を変化させた際の着火電力(プラズマが着火する電力)を示す図である。
【0081】
図11に示すように、多孔板を設けることにより着火電力を小さくすることができ、その効果は特に低圧側で大きいことがわかる。
【0082】
このように高電界領域である空間152で生成された表面波プラズマは、多孔板151の孔151aを通過して多孔板151の下方の領域に至る。多孔板151の下方の領域には、第2ガス供給源24から極力分解せずに供給したい処理ガス等の第2のガスが第2ガス導入部23を介して供給される。第2ガス導入部23から吐出された第2のガスは、空間152から多孔板151を通過してきた第1のガスのプラズマにより励起される。このとき、第2のガス吐出位置はマイクロ波放射面から離れており、高電界領域である空間152よりも電界強度が低い位置であるため、第2のガスは不要な分解が抑制された状態で励起される。そして、励起された第2のガスによりウエハWに所定のプラズマ処理、例えば成膜処理やエッチング処理が施される。
【0083】
<第2の実施形態>
次に第2の実施形態について説明する。
図12は本発明の第2の実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図であり、図13図12のプラズマ処理装置のCC′線による断面図である。
【0084】
第2の実施形態では、高電界領域に形成されたプラズマ生成空間となる空間152において、中心のマイクロ波放射機構43に対応する空間と周辺のマイクロ波放射機構43に対応する空間とを区画する区画壁160を有する点のみが第1の実施形態と異なっており、他の構成は第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と同じものについては同じ符号を付して説明を省略する。
【0085】
第1の実施形態においては、多孔板151を介してウエハWにプラズマを供給するため、複数のマイクロ波放射機構43によるプラズマ密度の制御(例えば中心のプラズマ密度を低く、周縁のプラズマ密度を高くするような制御)が難しい。これに対し、本実施形態では、空間152を、中心のマイクロ波放射機構43に対応する空間と周縁の6本のマイクロ波放射機構43に対応する空間とに区画する導電性材料からなる区画壁160を多孔板151と電気的に導通した状態で設ける。これにより、中心のマイクロ波放射機構43と、周縁の6本のマイクロ波放射機構43とで別個に電界を形成して電界強度を制御することができるので、中心部と周縁部とでプラズマ密度の制御性を良好にすることができる。なお、区画壁160を構成する導電性材料としては、アルミニウムや銅等の電気伝導性の良好な金属を好適に用いることができる。
【0086】
次に、以上のことを検証した結果を図14に示す。
図14は、区画壁を設けない図1のプラズマ処理装置および区画壁を設けた図12のプラズマ処理装置を用いて、中心のマイクロ波放射機構のみをパワーオンにした場合および周縁の6本のマイクロ波放射機構のみをパワーオンにした場合についてチャンバ径方向の電子密度分布を評価した結果を示す図である。
【0087】
図14(a)に示すように、区画壁を設けない場合は、中心のマイクロ波放射機構のみをパワーオンにした際には、チャンバ中心部のみ電子密度が高くなっているが、周縁のマイクロ波放射機構のみをパワーオンにした際には、プラズマを生成させたくない中心部の電子密度が周縁部と同等となっており、電子密度を十分に制御できていないことがわかる。これに対して、図14(b)に示すように、区画壁を設けた場合は、中心のマイクロ波放射機構のみをパワーオンにした際および周縁のマイクロ波放射機構のみをパワーオンにした際のいずれも電子密度を制御できていることがわかる。
【0088】
区画壁160は、メッシュ構造やパンチング構造等の多数の孔を設けた多孔構造であってもよい。区画壁160を多孔構造にすることにより、プラズマ生成ガス等の第1のガスを区画壁160で区画された一方側の空間から他方側の空間へ供給することができ、第1のガスがいずれかの空間だけにしか供給することができない制約がある場合でも空間152の全体でプラズマを生成することができるというメリットがある。
【0089】
ここで、区画壁160を多孔構造にした場合に、上述した電界制御機能を有効に発揮するためには、区画壁160に形成される孔の孔径を電界波形が通過しない大きさにすることが好ましい。例えばマイクロ波の周波数を860MHzにした場合、波長λは349mmであり、区画壁160付近の電界波形の1波長の長さ(λ′)は約24mmである。この電界波形が区画壁160の孔を通過せずに閉じ込められた状態になるためには、孔径がλ′/8以下であることが必要であるから、マイクロ波の周波数が860MHzである場合の透過しない孔径は、24/8=3mm以下ということになる。マイクロ波の周波数fと電界波形の波長λ′は反比例の関係(λ′∝1/f)であるため、周波数を変数とした場合の区画壁160の孔の孔径dは、1/860MHz:3mm=1/f:dの関係となり、周波数fを変数としたときのdは、以下の(1)式のような一般式で表すことができる。
d=2.58×10/f ・・・(1)
したがって、区画壁160を多孔構造とする際の孔径dは2.58×10/f以下であることが好ましい。
【0090】
なお、上記例では、空間152のうち、中心のマイクロ波放射機構に対応する空間のみを周縁の6本のマイクロ波放射機構に対応する空間から区画するようにしたが、図15に示すように、全てのマイクロ波放射機構43に対応する空間を区画壁160で区画するようにしてもよい。
【0091】
<他の適用>
以上、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記2つの実施形態に限定されることなく、本発明の思想の範囲内において種々変形可能である。
【0092】
例えば、上記実施形態では、チャンバの中心に対応する部分に1本、周縁に対応する部分に6本のマイクロ波放射機構を設けた例を示したが、マイクロ波放射機構の数や配置は限定されず、マイクロ波放射機構を複数本設ける場合であれば本発明を適用することができる。マイクロ波放射機構の他の配置例としては、図16(a)、(b)に示すようなものを挙げることができる。また、マイクロ波放射機構が図16(a)、(b)のように配置される場合には、区画壁160を図17(a)、(b)に示すように配置することができる。
【0093】
また、マイクロ波出力部やマイクロ波伝送・放射部の構成等は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、スロットアンテナ部から放射されるマイクロ波の指向性制御を行ったり円偏波にしたりする必要がない場合には、位相器は不要である。また、マイクロ波放射機構の構成も上記実施形態に限定されるものではない。
【0094】
また、上記実施形態においては、プラズマ処理装置として成膜装置およびエッチング装置を例示したが、これに限らず、酸化処理および窒化処理を含む酸窒化膜形成処理、アッシング処理等の他のプラズマ処理にも用いることができる。さらに、被処理体は半導体ウエハWに限定されず、LCD(液晶ディスプレイ)用基板に代表されるFPD(フラットパネルディスプレイ)基板や、セラミックス基板等の他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1;チャンバ
2;マイクロ波プラズマ源
3;全体制御部
11;サセプタ
12;支持部材
15;排気管
16;排気装置
17;搬入出口
21;第1ガス導入部
22;第1ガス供給源
23;第2ガス導入部
24;第2ガス供給源
30;マイクロ波出力部
31;マイクロ波電源
32;マイクロ波発振器
40;マイクロ波伝送・放射部
42;アンプ部
43;マイクロ波放射機構
44;マイクロ波伝送路
50;マイクロ波放射板
52;外側導体
53;内側導体
54;給電機構
55;マイクロ波電力導入ポート
60;チューナ
100;プラズマ処理装置
121;遅波材
122;マイクロ波透過部材
123;スロット
124;スロットアンテナ部
151;多孔板
151a;孔
152;空間
160;区画壁
W;半導体ウエハ
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