特許第6624846号(P6624846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624846
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】ターボ機械
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/66 20060101AFI20191216BHJP
   F04D 23/00 20060101ALI20191216BHJP
   F04D 11/00 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   F04D29/66 A
   F04D23/00 B
   F04D11/00 101
   F04D29/66 H
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-161769(P2015-161769)
(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公開番号】特開2017-40188(P2017-40188A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(74)【代理人】
【識別番号】100168594
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】香川 修作
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 高幹
(72)【発明者】
【氏名】辻村 学
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 香織
(72)【発明者】
【氏名】松村 貴司
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−124599(JP,U)
【文献】 特表2015−514906(JP,A)
【文献】 実開昭57−095500(JP,U)
【文献】 特開平06−272697(JP,A)
【文献】 特開平07−279897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/66
F04D 11/00
F04D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、前記ケーシング内に設けられ、複数の羽根を有する羽根車とを備え、流量の増加に対して揚程が減少する特性を備えた斜流ポンプであって、
前記複数の羽根は、前記羽根車の回転軸を含む断面において前記ケーシングの内周面に対向する部分が外側に凸な円弧形状を有し、
前記ケーシングの内周面は、前記複数の羽根に対向する区間の前記断面において内側に凹な円弧形状を有し、
複数の溝が、前記区間の少なくとも一部で前記ケーシングの内周面に形成される、斜流ポンプ。
【請求項2】
前記複数の羽根の取付角度を変化させる角度可変機構をさらに備える、請求項1に記載の斜流ポンプ。
【請求項3】
前記複数の溝は、前記区間以外では前記ケーシングの内周面に形成されない、請求項1または2に記載の斜流ポンプ。
【請求項4】
前記複数の溝のそれぞれの幅は、6mm以上であり、
前記幅の合計は、前記羽根車の入口側の前記複数の溝の端部において、前記ケーシングの内周面の周長の13.4%〜35%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の斜流ポンプ。
【請求項5】
前記複数の溝のそれぞれの深さは、前記羽根車の入口側よりも前記羽根車の出口側で大きい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の斜流ポンプ。
【請求項6】
前記複数の溝は、前記羽根車の回転軸を含む平面に対して傾いて形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の斜流ポンプ。
【請求項7】
前記複数の溝は、前記羽根車の回転軸を含む平面に対して、前記複数の羽根が該平面に対してなす角度に対応する角度をなすように形成される、請求項6に記載の斜流ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械は、ケーシング内に設けられた羽根車を用いて、羽根車の回転の機械的なエネルギーとケーシング内を流れる流体のエネルギーとの変換を実現する機械の総称である。例えば、ターボポンプは、羽根車を回転駆動することによってケーシング内を流れる液体に圧力を与えるターボ機械である。他にも、気体に圧力を与えるターボ機械(例えば、送風機および圧縮機)、および流体の圧力を羽根車の回転に変換するターボ機械(例えば、水車、風車およびタービン)が存在する。
【0003】
上記のようなターボ機械では、さまざまな要因で、機械内の流体の流れに不安定な特性が発生する場合がある。例えば、ターボポンプの場合、通常は流量の増加に対して揚程が減少し、これによって安定的な運転が可能になっているが、ある流量域ではこの関係が逆転し、流量の増加に対して揚程も増加する、いわゆる右上がり特性が生じる。右上がり特性が発生する流量域では運転が不安定化し、さらには機械内で流体の塊が自励振動するサージングが発生する可能性もある。このような不安定な特性が生じる原因の一つは、低流領域において羽根車の入口付近で発生する再循環流である。
【0004】
このような現象を抑制する方法として、従来から、羽根の存在領域でケーシングの内周面に複数の深い溝を形成するケーシングトリートメントと呼ばれる方法が知られていた。さらに、例えば特許文献1〜3では、羽根車の入口を含む領域でケーシングの内周面に複数の浅い溝を形成する技術が提案されている。特許文献1〜3に記載された技術によれば、溝を羽根車の入口付近の再循環流発生場所まで延ばすことによって、浅い溝でも十分に再循環流の発生を抑制する効果を得ることができる。この技術では、従来のケーシングトリートメントに比べて浅く溝が形成されることによって、溝を形成したことによるターボ機械の最高効率の低下幅を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3884880号公報
【特許文献2】特許第3862135号公報
【特許文献3】特許第3841391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば特許文献1の図5などを参照すれば明らかなように、上記のような技術は、縦断面(羽根車の回転軸を含む断面)における羽根の外側の形状がストレートまたは内側に凸である場合に適用される。特許文献1〜3には明示されていないが、この場合、羽根の取付角度を可変にすることはできない。これに対して、羽根の取付角度を可変にする場合には、縦断面における羽根の形状は外側に凸になり、ケーシングの内周面の形状はこれに対応して内側に凹になる。このように羽根および内周面の形状が変化した場合には、再循環流の発生状態も変化する。従って、例えば羽根の取付角度を可変にしたターボ機械において、特許文献1〜3に記載されたような従来の技術によって不安定な特性を効果的に改善できるとは限らない。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされた。本発明の目的の一つは、縦断面において羽根が外
側に凸な形状を有するターボ機械において、再循環流のために生じる不安定な特性を効果的に改善することが可能な、新規かつ改良されたターボ機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある観点によれば、ケーシングと、ケーシング内に設けられ、複数の羽根を有する羽根車とを備えるターボ機械が提供される。上記ターボ機械において、複数の羽根は、羽根車の回転軸を含む断面において外側に凸な形状を有し、ケーシングの内周面は、複数の羽根に対向する区間の断面において内側に凹な形状を有し、複数の溝が、上記区間の少なくとも一部でケーシングの内周面に形成される。
【0009】
上記のターボ機械では、溝が、羽根とケーシングの内周面との間のクリアランスにおける再循環流の発生を抑制し、再循環流が主流と干渉することによる損失を低減することができる。羽根が外側に凸な形状を有するターボ機械では、再循環流による損失が不安定な特性を発生させているため、損失を低減することによって、不安定な特性を効果的に改善することができる。
【0010】
上記のターボ機械は、複数の羽根の取付角度を変化させる角度可変機構をさらに備えてもよい。上述した課題は、羽根およびケーシングの内周面の形状によって生じるものである。従って、上記のターボ機械において羽根の取付角度が可変であることは必須ではなく、羽根の取付角度が可変ではない場合にも、上記のターボ機械の構成は有効でありうる。
【0011】
上記のターボ機械において、複数の溝は、上記区間以外ではケーシングの内周面に形成されなくてもよい。溝を上記区間の外側、例えば羽根車の入口外側まで延長することで羽根車の入口付近での再循環流の発生を抑制することも可能であるが、ターボ機械の最高効率の低下幅を最小化する観点からは、最小限の長さで溝を形成し、上記区間以外では内周面に溝を形成しなくてもよい。
【0012】
上記のターボ機械において、複数の溝のそれぞれの幅は、6mm以上であり、幅の合計は、羽根車の入口側の複数の溝の端部において、ケーシングの内周面の周長の15%〜35%であってもよい。また、複数の溝のそれぞれの深さは、羽根車の入口側よりも羽根車の出口側で大きくてもよい。溝の容積が大きいほどターボ機械の最高効率は低下するため、例えば溝の深さが再循環流の抑制に与える影響が小さい羽根車の入口側では、出口側よりも溝を浅くしてもよい。
【0013】
上記のターボ機械において、複数の溝は、羽根車の回転軸を含む平面に対して傾いて形成されてもよい。この場合、複数の溝は、羽根車の回転軸を含む平面に対して、複数の羽根が該平面に対してなす角度に対応する角度をなすように形成されてもよい。これによって、ターボ機械において再循環流のために生じる不安定な特性を改善しつつ、最高効率の低下幅を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係るターボ機械の縦断面図である。
図2図1に示したターボ機械の透視斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態における右上がり特性の改善について説明するためのグラフである。
図4】本発明の第2の実施形態に係るターボ機械の透視斜視図である。
図5】本発明の第1の実施例における流量および揚程の関係を示す特性曲線のグラフである。
図6図5に示したグラフに、さらに効率および軸動力を示す特性曲線を重畳したグラフである。
図7】本発明の第2の実施例における流量と揚程、効率および軸動力との関係を示す特性曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るターボ機械の縦断面図である。図1を参照すると、本実施形態に係るターボ機械であるターボポンプ1は、ケーシング2と、羽根車3と、角度可変機構5とを含む。ケーシング2内に設けられる羽根車3は、複数の羽根4を有する。羽根4は、図示された縦断面、すなわち回転軸RAを含む断面において、外側に凸な形状を有する。一方、ケーシング2の内周面2sは、縦断面において、羽根4に対向する区間SCで内側に凹な形状を有する。図示されているように、区間SCにおいて、羽根4の凸な形状と、内周面2sの凹な形状とは、互いに対応している。なお、本明細書では、回転軸RAに近い側を内側、回転軸RAから遠い側を外側という。角度可変機構5は、羽根4の取付角度を変化させる。さらに、ターボポンプ1では、区間SCの中央部で、内周面2sに複数の溝6が形成される。
【0017】
図2は、図1に示したターボ機械の透視斜視図である。なお、図2では、ケーシング2は、区間SCの内周面2sを除いて図示されていない。図2には、内周面2sに形成される溝6の長さL、幅W、および深さDが示されている。溝6の長さLは回転軸RAを含む平面内で定義され、幅Wは当該平面に垂直な方向で定義される。また、複数の溝6は、内周面2sの周方向に配列される。従って、回転軸RAに沿った方向で矢視した場合、溝6は、回転軸RAを中心とする放射線上に形成されている。
【0018】
ここで、図示された例において、溝6は矩形断面を有する。また、深さDは、羽根車3の入口側から出口側まで一定である。しかしながら、本実施形態は必ずしもこのような例には限定されない。例えば、深さDは、羽根車3の入口側よりも出口側で大きくなっていてもよい。溝6の容積が大きいほどターボポンプ1の最高効率は低下する。従って、例えば羽根車3の入口側では溝6の深さDが再循環流の抑制に与える影響が小さいのであれば、入口側では出口側よりも溝6を浅くすることによって、ターボポンプ1の最高効率の低下幅を小さくしてもよい。
【0019】
図3は、本発明の第1の実施形態における右上がり特性の改善について説明するためのグラフである。図3には、ターボポンプの流量Qと揚程Hとの関係を示す特性曲線が示されている。実際の揚程Hpumpの特性曲線では、流量Qが限界流量Qよりも少ない流量域において、流量Qの増加に対して揚程Hpumpが増加する右上がり特性がみられる。ここでは、このような特性が発生する原因を、揚程Hpumpを理論揚程Hthおよび揚程損失Hlossを用いて表現した以下の式(1)を用いて説明する。
【0020】
【数1】
【0021】
上記の式(1)において、理論揚程Hthは、以下の式(2)によって表現できる。なお、gは重力加速度、uおよびuは、それぞれターボポンプの羽根車の入口および出口での周速度(羽根車の半径と回転角速度との積)、vu1およびvu2は、それぞれ羽根車の入口および出口での流体の周方向旋回速度である。
【0022】
【数2】
【0023】
羽根車の入口付近で再循環流が発生していない場合、上記の式(2)において、vu1=0である。一方、羽根車の入口付近で旋回速度を有する再循環流が発生するとvu1>0となり、理論揚程Hthは再循環流が発生していない場合に比べて減少する。図3のグラフでは、このような原因で発生する可能性がある理論揚程の減少量ΔHthが示されている。流量Qが限界流量Qよりも少ない流量域で発生する再循環流に伴う理論揚程の減少量ΔHthは、揚程Hpumpの右上がり特性の原因になる。
【0024】
一方、揚程損失Hlossは、ケーシングおよび羽根車などによって形成される流路と流体との間の摩擦抵抗によって生じる。また、揚程損失Hlossは、流路で発生する再循環流と主流とが干渉することによっても生じる。図3のグラフでは、このような揚程損失Hlossが、理論揚程Hthと揚程Hpumpとの差分として示されている。流量Qが限界流量Qよりも少ない流量域で、摩擦抵抗に加えて再循環流と主流との干渉が発生することによって揚程損失Hlossが増大すれば、これも揚程Hpumpの右上がり特性の原因になる。
【0025】
ここで、本発明者らが実施した流体数値解析の結果、本実施形態に係るターボポンプ1では、縦断面において羽根4が外側に凸な形状を有するために、羽根車3の入口付近よりも、羽根4とケーシング2の内周面2sとの間のクリアランスにおける再循環流の発生が顕著であることがわかった。それゆえ、ターボポンプ1では、再循環流が主流と干渉することによる揚程損失Hlossの増大が、揚程Hpumpの右上がり特性の主な原因になる。
【0026】
この知見に従えば、ターボポンプ1では、羽根車3の入口付近における再循環流の発生を抑制することは、揚程Hpumpの右上がり特性を改善するために必ずしも効果的ではない。それよりも、羽根4と内周面2sとの間のクリアランスで発生する再循環流が主流と干渉することによって発生する揚程損失Hlossを低減することによって、効果的に揚程Hpumpの右上がり特性を改善することができると考えられる。
【0027】
そこで、本発明者らは、ターボポンプ1において、羽根4に対向する区間SCでケーシング2の内周面2sに溝6を形成することを考案した。溝6は、羽根4と内周面2sとの間のクリアランスにおける再循環流の発生を抑制し、再循環流が主流と干渉することによって発生する揚程損失Hlossを低減する。
【0028】
なお、溝6を羽根車3の入口外側まで延長し、特許第3884880号公報などと同様に羽根車3の入口付近での再循環流の発生を抑制することも可能である。ただし、溝6が長いほどターボポンプ1の最高効率は低下する。また、上記の通り、ターボポンプ1では、揚程Hpumpの右上がり特性について、理論揚程の減少量ΔHthよりも、揚程損失Hlossの増大の影響が大きい。従って、揚程Hpumpの右上がり特性を改善しつつ、ターボポンプ1の最高効率の低下幅を最小化するのであれば、再循環流の発生を抑制するための最小限の長さLで溝6を形成し、区間SC以外では内周面2sに溝6を形成しなくてもよい。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態の構成は、以下で説明する溝の配置を除いては、上記の第1の実施形態と同様である。従って、重複した説明、例えば図1のような縦断面図を参照した説明は、対応する構成要素に共通の符号を付
することによって省略されている。
【0030】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るターボ機械の透視斜視図である。なお、図4では、図2と同様に、ケーシング2が、区間SCの内周面2sを除いて図示されていない。図2を参照すると、本実施形態に係るターボポンプ11では、区間SCの中央部で、ケーシング2の内周面2sに複数の溝16が形成される。図示されているように、溝16は、回転軸RAを含む平面に対して傾いた方向に延びる。ここで、溝16が回転軸RAを含む平面に対してなす角度は、羽根4の取付角度に対応していてもよい。より具体的には、溝16は、回転軸RAを含む平面に対して、羽根4が該平面に対してなす角度に対応する角度をなすように形成されてもよい。ここで、本実施形態において、羽根4の取付角度は、角度可変機構5(図4には示されない)によって変化しうる。従って、溝16が回転軸RAを含む平面に対してなす角度は、例えば、羽根4の取付角度が可変範囲の中央値、平均値、または可変範囲内で設定される任意の基準角度である場合に、羽根4が回転軸RAを含む平面に対してなす角度に基づいて決定される。
【0031】
また、図4には、溝16の長さL、幅W、および深さDが示されている。上記の通り、溝16は、回転軸RAを含む平面に対して傾いて形成されるため、長さLも当該平面に対して傾いた方向に定義される。長さLに対して垂直な方向で定義される幅Wも、回転軸RAを含む平面に対して傾いている。本実施形態でも、第1の実施形態と同様に複数の溝16は内周面2sの周方向に配列されるが、それぞれの溝16が傾いているために、第1の実施形態とは異なり複数の溝16は幅Wの方向に配列されるわけではない。なお、図示された例では、溝16が第1の実施形態の溝6と同様に矩形断面を有し、深さDは羽根車3の入口側から出口側まで一定である。しかしながら、本実施形態は必ずしもこのような例には限定されない。本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、例えば深さDが羽根車3の入口側よりも出口側で大きくなっていてもよい。
【0032】
本実施形態に係るターボポンプ11に形成される溝16も、上記の第1の実施形態の溝6と同様に、羽根4と内周面2sとの間のクリアランスにおける再循環流の発生を抑制し、再循環流が主流と干渉することによって発生する揚程損失Hlossを低減する。本実施形態でも、溝16を羽根車3の入口外側まで延長し、羽根車3の入口付近での再循環流の発生を抑制することが可能である。ただし、ターボポンプ11の最高効率の低下幅を最小化するのであれば、再循環流の発生を抑制するための最小限の長さLで溝16を形成し、区間SC以外では内周面2sに溝16を形成しなくてもよい。
【0033】
以上、本発明の第1および第2の実施形態について説明した。これらの実施形態において、ターボ機械の例として説明されたターボポンプ1およびターボポンプ11はいずれも斜流ポンプであった。しかしながら、本発明の実施形態は、軸流ポンプなどの他の種類のターボポンプ、およびポンプ以外のターボ機械をも含みうる。このような他の種類のターボ機械においても、上記の実施形態と同様に、ケーシングの内周面が羽根に対向する区間に複数の溝を形成することによって、羽根とケーシングの内周面との間のクリアランスにおける再循環流の発生を抑制し、再循環流が主流と干渉することによって発生する損失を低減することができる。
【0034】
また、上記の実施形態では、羽根の取付角度を変化させる角度可変機構が設けられたが、他の実施形態に係るターボ機械において、羽根の取付角度は必ずしも可変でなくてもよい。上記の実施形態において、ケーシングの内周面に複数の溝を形成することによって解決された課題は、羽根が縦断面において外側に凸な形状を有し、内周面がこれに対応して内側に凹な形状を有することによって発生したものである。つまり、この課題は、羽根の取付角度が可変であるか否かに関わらず発生する。従って、本発明の他の実施形態では、羽根およびケーシングの内周面が上記のような形状を有するのであれば、羽根の取付角度
は可変でなくてもよい。
【実施例】
【0035】
(第1の実施例)
続いて、本発明の第1の実施例について説明する。第1の実施例では、上記の第1の実施形態に係るターボポンプ1において、幅Wが異なる3種類の溝6のいずれかをケーシング2の内周面2sに形成した3つの実施例(実施例1〜実施例3)と、内周面2sに溝6が形成されない比較例とについて、流体数値解析を実施した。本実施例において、ターボポンプ1は比速度680の斜流ポンプであり、溝6の数N、長さL、深さD、および幅Wは下記の表1に示す通りであった。また、表1に示されるWΣ/CLは、羽根車3の入口側の溝6の端部における、複数の溝6の幅Wの合計(つまりW×N)と、ケーシング2の内周面2sの周長CLとの比である。なお、本実施例において上記部分におけるケーシング2の内側半径は142mm、内周面2sの周長CLは2π×142≒892mmであった。
【0036】
【表1】
【0037】
図5は、本発明の第1の実施例における流量Qおよび揚程Hの関係を示す特性曲線のグラフである。なお、図5図7において、縦軸および横軸の数値は相対値で表現されている。従って、それぞれの値の絶対値は表現されないが、相対的な大小関係については正確に表現されている。また、図5図7において、縦軸および横軸は対数目盛ではなく、等間隔の目盛である。図5のグラフを参照すると、溝6が形成されない比較例では、流量Qが限界流量QR0よりも少ない流量域で、揚程Hに右上がり特性が観察される。これに対して、実施例1では、揚程Hの右上がり特性は依然として観察されるものの、限界流量はQR1へと低下する。つまり、実施例1ではQR1〜QR0の流量域において揚程Hの右上がり特性が改善された結果、ターボポンプ1を安定的に運転可能な流量域が拡大されている。さらに、実施例2および実施例3では、流量域の全体において揚程Hの右上がり特性がほとんど観察されていない。
【0038】
つまり、図5のグラフに示された本実施例の結果では、実施例1(WΣ/CL=13.4%)の時点で揚程Hの右上がり特性の有意な改善がみられ、WΣ/CLがより大きい実施例2(WΣ/CL=33.6%)および実施例3(WΣ/CL=53.8%)では右上がり特性がさらに改善されている。従って、本実施例では、WΣ/CLが13.4%以上である場合について、揚程Hの右上がり特性について有意な改善がみられることが示されたといえる。
【0039】
図6は、図5に示したグラフに、さらに効率Eff.および軸動力Psを示す特性曲線を重畳したグラフである。図6のグラフを参照すると、特に流量Qが限界流量QR0よりも少ない流量域では、実施例1〜実施例3の軸動力Psが比較例を上回ることが示されている。その一方で、流量Qが限界流量QR0以上の流量域では、実施例1〜実施例3の効率Eff.が比較例よりも低下することが示されている。より具体的には、ターボポンプ1の最高効率が達成される流量QBEPの前後において、比較例の効率Eff.を100%とすると、実施例1(WΣ/CL=13.4%)では約97%、実施例2(WΣ/CL=33.6%)では約95%、実施例3(WΣ/CL=53.8%)では約92%である。
【0040】
ここで、図6のグラフにも示されているように、実施例2および実施例3について、揚程Hの特性曲線はほぼ一致しており、いずれの例でも右上がり特性はほぼ解消されている。換言すれば、実施例3では、実施例2に比べて最高効率が低下しているものの、揚程Hの右上がり特性の改善についての効果にはほとんど差がない。従って、本実施例では、WΣ/CLは大きくても35%程度に設定すれば十分であり、ターボポンプ1の最高効率の低下幅を最小化する観点からはそれ以上に大きいWΣ/CLを設定する必要がないことが示されたといえる。
【0041】
(第2の実施例)
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例では、上記の第2の実施形態に係るターボポンプ11において、幅Wが異なる3種類の溝16のいずれかをケーシング2の内周面2sに形成した3つの実施例(実施例4〜実施例6)と、内周面2sに溝が形成されない比較例とについて、流体数値解析を実施した。本実施例において、ターボポンプ11は比速度680の斜流ポンプであり、溝16の数N、長さD、および幅Wは下記の表2に示す通りであった。
【0042】
【表2】
【0043】
図7は、本発明の第2の実施例における流量Qと揚程H、効率Eff.および軸動力Psとの関係を示す特性曲線のグラフである。図7のグラフを参照すると、溝16が形成されない比較例では、流量Qが限界流量QR0よりも少ない流量域で、揚程Hに右上がり特性が観察される。これに対して、幅Wが6mm、15mm、および24mmの溝16がそれぞれ形成された実施例4〜実施例6では、幅Wが大きくなるにつれて限界流量が低下し、ターボポンプ11を安定的に運転可能な流量域が拡大されている。この結果から、本実施例では、回転軸RAを含む平面に対して傾いた溝16が形成される場合にも揚程Hの右上がり特性が改善されることが示されたといえる。
【0044】
一方、軸動力Psについては、流量Qが限界流量QR0よりも少ない流量域では実施例4〜実施例6の軸動力が比較例をわずかに上回ることが示されているものの、上記の実施例1〜実施例3に比べると比較例との差は小さい。また、効率Eff.については、流量Qが限界流量QR0以上になる流量域で実施例4〜実施例6の効率Eff.が比較例よりも低下することが示されているものの、上記の実施例1〜実施例3に比べると比較例との差は小さい。より具体的には、ターボポンプ11の最高効率が達成される流量QBEPの前後において、比較例の効率Eff.を100%とすると、実施例4〜実施例6の効率Eff.が94%を超えている。この結果から、本実施例では、傾いた溝16を形成した場合、揚程Hの右上がり特性が改善されるとともに、ターボポンプ11の最高効率の低下幅がより小さくて済むことが示されたといえる。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲はかかる例に限定されない。本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0046】
1,11 ターボポンプ
2 ケーシング
2s 内周面
3 羽根車
4 羽根
5 角度可変機構
6,16 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7