特許第6625024号(P6625024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6625024アミノアルキル基含有シロキサン、アミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサン、及びこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625024
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】アミノアルキル基含有シロキサン、アミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサン、及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/388 20060101AFI20191216BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20191216BHJP
   C08G 77/46 20060101ALI20191216BHJP
   C08G 77/50 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   C08G77/388
   C07F7/10 XCSP
   C08G77/46
   C08G77/50
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-131317(P2016-131317)
(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公開番号】特開2018-2874(P2018-2874A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】安藤 裕司
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0280148(US,A1)
【文献】 特開2016−074831(JP,A)
【文献】 特開平03−095228(JP,A)
【文献】 特開平10−017578(JP,A)
【文献】 特表2005−523359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアミノアルキル基含有シロキサンの製造方法であって
[式中、Rは、互いに独立に、水酸基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は下記式(2)、下記式(3)、又は下記式(6)で表される基であり、但し、Rの少なくとも1つは下記式(2)で表される基であり、且つ、Rの少なくとも1つは下記式(3)で表される基であり、k、p、q、及びrは、互いに独立に、0以上の整数であり、但し、k+p+q>0であり、上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は制限されない
−(CRH)−(NHCHCH−NH
(2)
(式(2)中、aは2〜11の整数であり、bは0〜10の整数であり、Rは、互いに独立に、水素原子、又は、非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基である)
−(CRH)−O−(CO)−(CO)−R
(3)
(式(3)中、cは2〜11の整数であり、dは0〜100の整数であり、eは0〜100の整数であり、d+e>0であり、Rは上記の通りであり、Rは、非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、水素原子、又は−CORであり、Rは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基である)
−(CRH)−(RSiO)−SiR
(6)
(式中、Rは、互いに独立に、水酸基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、Rは上記の通りであり、fは2〜11の整数であり、sは0〜1000の整数である)]
下記化合物(A)と、化合物(B)及び化合物(C)と、任意で化合物(D)とを付加反応させる工程と
(A)下記一般式(9)で表されるハイドロジェンシロキサン:
(式(9)中、Rは、互いに独立に、水素原子、水酸基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、但し、Rの少なくとも1つは水素原子であり、k、p、q、及びrは上記の通りであり、上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は制限されない)
(B)下記式(10)で表される、保護されたアミノ基を有する化合物:
CHR=CR−(CRH)a’−(NQCHCH−NQ
(10)
(式(10)中、a’は(a−2)であり、b及びRは上記の通りであり、Qは−SiRで表されるシリル基であり、Rは、互いに独立に、非置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基である)
(C)下記式(11)で表されるポリエーテル:
CHR=CR−(CRH)c’−O−(CO)−(CO)−R
(11)
(式(11)中、c’は(c−2)であり、d、e、R、及びRは上記の通りである)
(D)下記式(12)で表される(ポリ)シロキサン:
CHR=CR−(CRH)f’−(RSiO)−SiR
(12)
(式中、f’は(f−2)であり、R、R、及びsは上記の通りである)
次いで、上記保護されたアミノ基からシリル基を除去(以下、脱保護という)させて上記式(1)で表されるアミノアルキル基含有シロキサンを得る工程
とを含む、前記製造方法。
【請求項2】
前記アミノアルキル基含有シロキサン(1)が下記一般式(5)で表される化合物であり、前記ハイドロジェンシロキサン(A)が下記一般式(13)で表される化合物(A’)である、請求項1記載の製造方法
(式(5)中、Rは、互いに独立に、水酸基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は上記式(2)又は式(3)で表される基であり、Rは、互いに独立に、水酸基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は上記式(6)で表される基、又は下記式(7)で表される基であり、
−O−(RSiO)−SiR (7)
(式中、Rは上記の通りであり、tは0〜1000の整数である)
Bは上記式(2)で表される基であり、Pは上記式(3)で表される基であり、x、y、及びzは、互いに独立に、0〜2000の整数であり、x+y+z>0であり、y=0の場合は、Rの少なくとも1つは式(2)で表される基であり、上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は制限されない)
(A’) R11−(R10SiO)−SiR11
(13)
(式(13)中、R11は、互いに独立に、水素原子、水酸基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R10は、互いに独立に、水素原子、水酸基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は上記式(7)で示される基であり、但し、R10及びR11の少なくとも1は水素原子であり、vはx+y+zであり、上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は制限されない)。
【請求項3】
前記付加反応が金属触媒存在下で行われ、該金属触媒の量は、前記化合物(A)又は(A’)100質量部に対し、金属元素換算量として0.02質量部以下となる量である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法であって、脱保護させて得られたアミノアルキル基含有シロキサンに含有される不純物としての下記一般式(4)で表される環状シロキサンの量が、該アミノアルキル基含有シロキサン100質量部あたり0〜1質量部である、前記製造方法
(SiBMeO)(SiMeO) (4)
(式中、mは0〜4の整数であり、nは3〜20の整数であり、Bは上記式(2)で表される基である)。
【請求項5】
脱保護して得られたアミノアルキル基含有シロキサンがシラザンを含有しない、請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
脱保護して得られたアミノアルキル基含有シロキサンがヒドロシリル基を有する化合物を含有しない、請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
上記付加反応に付される式(A)又は(A’)で表されるハイドロジェンシロキサンに含有される下記一般式(8)で表される環状シロキサン
(SiHMeO)(SiMeO) (8)
(式(8)中、mは0〜4の整数であり、nは3〜20の整数である)
の量が、前記ハイドロジェンシロキサン100質量部あたり0〜1質量部である、請求項1〜のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
下記一般式(1)で表されるアミノアルキル基含有シロキサンであり、
[式中、Rは、互いに独立に、水酸基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は下記式(2)、下記式(3)、又は下記式(6)で表される基であり、但し、Rの少なくとも1つは下記式(2)で表される基であり、且つ、Rの少なくとも1つは下記式(3)で表される基であり、k、p、q、及びrは、互いに独立に、0以上の整数であり、但し、k+p+q>0であり、上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は制限されない
−(CRH)−(NHCHCH−NH
(2)
(式(2)中、aは2〜11の整数であり、bは0〜10の整数であり、Rは、互いに独立に、水素原子、又は、非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基である)
−(CRH)−O−(CO)−(CO)−R
(3)
(式(3)中、cは2〜11の整数であり、dは0〜100の整数であり、eは0〜100の整数であり、d+e>0であり、Rは上記の通りであり、Rは、非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、水素原子、又は−CORであり、Rは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基である)
−(CRH)−(RSiO)−SiR
(6)
(式中、Rは、互いに独立に、水酸基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、Rは上記の通りであり、fは2〜11の整数であり、sは0〜1000の整数である)]
該アミノアルキル基含有シロキサンに不純物として含有する下記一般式(4)で表される環状シロキサンの量が、該アミノアルキル基含有シロキサン100質量部あたり0〜1質量部であることを特徴とする、前記アミノアルキル基含有シロキサン
(SiBMeO)(SiMeO) (4)
(式中、mは0〜4の整数であり、nは3〜20の整数であり、Bは上記式(2)で表される基である)。
【請求項9】
下記一般式(5)で表される、請求項記載のアミノアルキル基含有シロキサン。
(式(5)中、Rは、互いに独立に、水酸基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は上記式(2)又は式(3)で表される基であり、Rは、互いに独立に、水酸基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は上記式(6)で表される基、又は下記式(7)で表される基であり、
−O−(RSiO)−SiR (7)
(式中、Rは上記の通りであり、tは0〜1000の整数である)
Bは上記式(2)で表される基であり、Pは上記式(3)で表される基であり、x、y、及びzは、互いに独立に、0〜2000の整数であり、x+y+z>0であり、y=0の場合は、Rの少なくとも1つは式(2)で表される基であり、上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は制限されない)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノアルキル基含有シロキサン及びその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、アミノアルキル基含有シロキサンに不純物として含有する環状シロキサンの量を低減できる製造方法、及び、該環状シロキサンの量が低減されたアミノアルキル基含有シロキサンに関する。さらに特には、アミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ基及びポリオキシアルキレン基を有するポリオルガノシロキサンは、ヘアケア組成物、化粧料組成物、及び洗浄剤組成物に使用できる化合物として知られている(特許文献1及び2)。特許文献1には、ハイドロジェンポリジオルガノシロキサンとアリルアミンとを付加反応させ、次いで、残留SiH基にアリル基を有するポリエーテル化合物をさらに付加反応させて、アミノ基及びポリオキシアルキレン基を有するポリオルガノシロキサンを得る方法が記載されている。特許文献2には、ポリエーテル変性シロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、および3−アミノプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物をKOH触媒下で平衡化反応させてアミノアルキル基含有シロキサン又はアミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサンを得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−81609号公報
【特許文献2】特表2008−536957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1に記載のアリルアミンのようなアルケニル基を有するアミノ化合物を使用すると、アミノ基が付加反応触媒(白金触媒等)を阻害し、それにより未反応のヒドロシリル基が残存する問題や付加反応中にアミノ基とヒドロシリル基が脱水素反応し、シラザンが生成し生成物の純度の低下を招く問題がある。特許文献2に記載のように平衡化反応により製造する方法では、ポリエーテル基の末端が水酸基であるとき、平衡化によりアルコキシシリルが生じる。そのためポリエーテルの末端はアルキル基等で封鎖されている必要があり、得られるアミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサンの構造が制限される。また、平衡化反応の前に原料であるポリエーテル変性シロキサンを製造する必要があるため工程が多くなり、生産性が低下する問題がある。さらに、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサンやアミノアルキル基を有する環状シロキサンが生じる問題がある。
【0005】
そのため、ヒドロシリル基やアルコキシシリル基を有さず、環状シロキサンを付随しない、純度の高いアミノアルキル基含有シロキサン、特にはアミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサンが強く求められている。また、得られるアミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサンの構造が制限されず、付加反応工程のみで調製することができ、さらに付加反応が阻害されることなく未反応のヒドロシリル基が残存しない製造方法が強く求められている。
【0006】
本発明は従って、アミノアルキル基含有シロキサン、特にはアミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサンであって、不純物として含まれる環状シロキサンの量が低減されたシロキサン、及びその製造方法を提供することを目的とする。また、得られるアミノアルキル基含有シロキサン、特にはアミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサンの構造が制限されず、付加反応工程のみで調製することができ、さらに付加反応が阻害されることなく未反応のヒドロシリル基が残存しない製造方法を提供することを目的とする。特には、少ない触媒量であっても十分反応させることができ、未反応のヒドロシリル基を残存させない製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討し、アミノアルキル基含有シロキサンの製造方法であって、下記式(A)で表されるハイドロジェンシロキサンと、下記式(B)で表される、保護されたアミノ基と不飽和基とを有する化合物とを付加反応させ、次いでアミンから保護基を除く(脱保護)ことにより、上記課題を達成できることを見出した。特に、下記式(B)で表される、アミノ基がシリル基で保護された化合物を使用することにより、アミノ基による付加反応の阻害を防ぐことができ、低触媒量であっても十分に付加反応を進行させることができることを見出し、本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表されるアミノアルキル基含有シロキサンの製造方法であって
[式中、Rは、互いに独立に、水酸基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は下記式(2)、下記式(3)、又は下記式(6)で表される基であり、但し、Rの少なくとも1つは下記式(2)で表される基であり、且つ、Rの少なくとも1つは下記式(3)で表される基であり、k、p、q、及びrは、互いに独立に、0以上の整数であり、但し、k+p+q>0であり、上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は制限されない
−(CRH)−(NHCHCH−NH
(2)
(式(2)中、aは2〜11の整数であり、bは0〜10の整数であり、Rは、互いに独立に、水素原子、又は、非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基である)
−(CRH)−O−(CO)−(CO)−R
(3)
(式(3)中、cは2〜11の整数であり、dは0〜100の整数であり、eは0〜100の整数であり、d+e>0であり、Rは上記の通りであり、Rは、非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、水素原子、又は−CORであり、Rは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基である)
−(CRH)−(RSiO)−SiR
(6)
(式中、Rは、互いに独立に、水酸基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、Rは上記の通りであり、fは2〜11の整数であり、sは0〜1000の整数である)]
下記化合物(A)と、化合物(B)及び化合物(C)と、任意で化合物(D)とを付加反応させる工程と
(A)下記一般式(9)で表されるハイドロジェンシロキサン:
(式(9)中、Rは、互いに独立に、水素原子、水酸基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、但し、Rの少なくとも1つは水素原子であり、k、p、q、及びrは上記の通りであり、上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は制限されない)
(B)下記式(10)で表される、保護されたアミノ基を有する化合物:
CHR=CR−(CRH)a’−(NQCHCH−NQ
(10)
(式(10)中、a’は(a−2)であり、b及びRは上記の通りであり、Qは−SiRで表されるシリル基であり、Rは、互いに独立に、非置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基である)
(C)下記式(11)で表されるポリエーテル:
CHR=CR−(CRH)c’−O−(CO)−(CO)−R
(11)
(式(11)中、c’は(c−2)であり、d、e、R、及びRは上記の通りである)
(D)下記式(12)で表される(ポリ)シロキサン:
CHR=CR−(CRH)f’−(RSiO)−SiR
(12)
(式中、f’は(f−2)であり、R、R、及びsは上記の通りである)
次いで、上記保護されたアミノ基からシリル基を除去(以下、脱保護という)させて上記式(1)で表されるアミノアルキル基含有シロキサンを得る工程
とを含む、前記製造方法を提供する。
【0009】
さらに本発明は、上記式(1)で表されるアミノアルキル基含有シロキサンであり、該アミノアルキル基含有シロキサンに不純物として含有する下記式(4)で表される環状シロキサンの量が、アミノアルキル基含有シロキサン100質量部あたり0〜1質量部であることを特徴とする、前記アミノアルキル基含有シロキサンを提供する。
(SiBMeO)(SiMeO) (4)
(式中、mは0〜4の整数であり、nは3〜20の整数であり、Bは上記式(2)で表される基である)
【0010】
本発明の製造方法において、より好ましくは、上記付加反応に付される式(A)で表されるハイドロジェンシロキサンに不純物として含有する下記式(8)で表される環状シロキサンの量が、該ハイドロジェンシロキサン100質量部あたり0〜1質量部である。
(SiHMeO)(SiMeO) (8)
(式(8)中、mは0〜4の整数であり、nは3〜20の整数である)
このようなハイドロジェンシロキサンを原料化合物として使用することにより、得られるアミノアルキル基含有シロキサンに不純物として含有する上記式(4)で示される環状シロキサン、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンや、アミノアルキル基を有する環状シロキサンの量を、より少なくすることができる。
【0011】
さらに本発明は、得られるアミノアルキル基含有シロキサンに残存する金属触媒量が金属元素換算量として200ppm以下(アミノアルキル基含有シロキサン100質量物に対して金属換算量として0.02質量部以下)である、上記製造方法を提供する。
さらに本発明は、得られるアミノアルキル基含有シロキサンが原料化合物及び副生成物(特には、ヒドロシリル基を含有する化合物)を含有しない、上記製造方法を提供する。
【0012】
さらに本発明は、得られるアミノアルキル基含有シロキサンに含有する環状シロキサン1種以上の各々の量が、該アミノアルキル基含有シロキサン100質量部あたり0〜0.1質量部である、上記製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法は、含有する不純物量が少なく純度が高いアミノアルキル基含有シロキサン、特にはアミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサンを提供することができる。より詳細には、本発明の製造方法は、得られるアミノアルキル基含有シロキサン、特にはアミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサンに不純物として含有する、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサンやアミノアルキル基を有する環状シロキサンの量を低減することができる。
【0014】
また、原料としてアミノ基が保護された化合物を用いることで、付加反応時にシラザンを生成しない。また、アミノ基による反応の阻害が無いため低触媒量、例えば、原料であるハイドロジェンシロキサン100質量部に対し金属換算量で0.02質量部以下という少ない量であっても、未反応のヒドロシリル基を残存させることなく目的化合物を生成することができる。さらに、本発明の製造方法においては、付加反応に供するポリエーテル化合物の末端はアルキル基で封鎖されている必要はなく水酸基であってよい。そのため、ポリエーテル鎖の末端に水酸基を有するアミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサンを製造することもできる。また、本発明の製造方法は工程数が少ないため、生産性を向上することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で目的とする化合物は、下記一般式(1)で表されるアミノアルキル基含有シロキサンである。
一般式:
【0016】
上記式(1)において、k、p、q、及びrは互いに独立に、0以上の整数である。但し、k+p+q+r>0である。kは好ましくは、2〜42の整数であり、より好ましくは、2〜22の整数であり、特に好ましくは、2〜13の整数である。pは好ましくは、1〜6000の整数であり、より好ましくは、5〜1500の整数であり、特に好ましくは10〜300の整数である。qは好ましくは、0〜20の整数であり、より好ましくは、0〜10の整数であり、特に好ましくは、0〜5の整数である。rは好ましくは、0〜10の整数であり、より好ましくは、0〜5の整数であり、特に好ましくは、0〜3の整数である。該アミノアルキル基含有シロキサンは、好ましくは重量平均分子量500〜200,000、特には1,000〜40,000を有する。該重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算による値である。上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は特に制限されず、ランダムに結合していても、ブロック構造を形成していてもよい。
【0017】
上記式(1)において、Rは、互いに独立に、水酸基、アルコキシル基、置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は、下記式(2)で表される基、下記式(3)で表される基、又は下記式(6)で表される基であり、但し、Rの少なくとも1つは下記式(2)で表される基である。

−(CRH)−(NHCHCH−NH (2)

−(CRH)−O−(CO)−(CO)−R (3)

−(CRH)−(RSiO)−SiR (6)
【0018】
本発明において炭素原子数1〜20の一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基が挙げられる。非置換の一価炭化水素基としてより詳細には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル、アリル等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。また置換された一価炭化水素基としては、上記炭化水素基が有する炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、アミノ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、及びヒドロキシル基等で置換されたものが挙げられる。
【0019】
は、好ましくは、炭素原子数1〜6の、非置換の一価炭化水素基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、又は、上記式(2)で表される基、又は上記式(3)で表される基、又は上記式(6)で表される基である。更に好ましくは、メチル基、ブチル基、フェニル基、又は上記式(2)で表される基、又は上記式(3)で表される基、又は上記式(6)で表される基であり、特に好ましくは、メチル基、フェニル基、又は上記式(2)で表される基、又は上記式(3)で表される基、又は上記式(6)で表される基である。但し、Rの少なくとも1つは上記式(2)で表される基である。特に好ましくは、上記アミノアルキル基含有シロキサンは少なくとも1のポリオキシアルキレン基を有する。従って、特に好ましい態様としては、Rの少なくとも1が上記式(2)で表される基であり、且つRの少なくとも1が上記式(3)で表される基である。
【0020】
上記式(2)、(3)及び(6)において、Rは互いに独立に、水素原子、又は非置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基である。非置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基が挙げられ、より詳細には上記に例示した通りである。Rは好ましくは、水素原子、又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びフェニル基等の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基であり、中でも特に好ましくは、水素原子又はメチル基である。
【0021】
式(2)において、aは2〜11の整数である。好ましくは2又は3であり、特に好ましくは3である。bは0〜10の整数である。好ましくは0〜5の整数であり、特に好ましくは、0又は1である。また特には、式(2)において−(CRH)−で表される構造が以下のいずれかであるのが好ましい。
−CHCHCH−, −CMeHCH−, −CHCMeHCH

−CHCMeH−,−CMeHCHCH−,−CHCHCMeH−
【0022】
式(3)において、Rは、非置換の、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜6の一価炭化水素基、水素原子、又は−CORである。Rは、非置換の、炭素数1〜20の、好ましくは炭素数1〜6の一価炭化水素基である。前記一価炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、及びアラルキル基が挙げられ、より詳細には上記に例示したものが挙げられる。Rは、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基であり、より好ましくはメチル基又はブチル基である。Rは、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又は−CORである。特に好ましくは、水素原子、メチル基、ブチル基、−COMe、又は−COBuである。後述する本発明の製造方法によれば、ポリエーテル鎖の末端(すなわち、R)が水素原子である化合物も製造することができる。
【0023】
式(3)においてcは2〜11の整数である。好ましくは2又は3であり、特に好ましくは3である。dは0〜100の整数である。好ましくは0〜50の整数、特に好ましくは0〜25の整数である。eは0〜100の整数である。好ましくは0〜50の整数、特に好ましくは0〜25の整数である。ただし、d+e>0である。また特には、式(3)において、−(CRH)−で表される部分の構造は以下のいずれかであるのが好ましい。
−CHCHCH−, −CMeHCH−, −CHCMeHCH

−CHCMeH−,−CMeHCHCH−,−CHCHCMeH−
【0024】
また特に好ましくは、上記式(3)における−(CO)−で表される構造は、以下のいずれかであるのがよい。
−(CHCHCHO)
−(CMeHCHO)
−(CHCMeHO)
また、式(3)において−(CO)−と−(CO)−で表される構造の配列は、ブロックでもランダムでもよい。
【0025】
式(6)において、Rは、互いに独立に、水酸基、アルコキシル基、置換又は非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基である。炭素原子数1〜20の一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基が挙げられる。より詳細には上記に例示したものが挙げられる。Rは、好ましくは、炭素原子数1〜6の、非置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はフェニル基である。更に好ましくは、メチル基、ブチル基、又はフェニル基であり、特に好ましくはメチル基、又はフェニル基である。
【0026】
式(6)において、fは2〜11の整数である。好ましくは2又は3であり、特に好ましくは3である。sは0〜1000の整数である。好ましくは4〜100の整数であり、特に好ましくは4〜30の整数である。特には、式(6)において−(CRH)−で表される構造は以下のいずれかであるのが好ましい。
−CHCHCH−, −CMeHCH−, −CHCMeHCH

−CHCMeH−,−CMeHCHCH−,−CHCHCMeH−
【0027】
上述した通り従来の製造方法によりアミノアルキル基含有シロキサンを製造すると、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及びアミノアルキル基含有環状シロキサン等の副生成物が生じ、高純度を有するアミノアルキル基含有シロキサンが得られない。これに対し、後述する本発明の製造方法に従えば、得られるアミノアルキル基含有シロキサンに不純物として含有する環状シロキサンの量を低減することできる。すなわち、本発明の製造方法によれば、得られるアミノアルキル基含有シロキサンに不純物として含有する下記式(4)で示される環状シロキサンの量を該アミノアルキル基含有シロキサン100質量部に対し1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以下、さらに好ましくは0.01質量部以下とすることができる。下限値は0質量部である。
(SiBMeO)(SiMeO) (4)
式(4)において、mは0〜4の整数であり、さらには0〜3の整数であり、さらには1又は2であり、特には1である。nは3〜20の整数であり、さらにはは3〜10の整数であり、さらには3〜8の整数であり、特には3〜6の整数である。Bは上記式(2)で表される基である。該環状シロキサンは1種単独又は2種以上である。2種以上の場合は、得られるアミノアルキル基含有シロキサンに含有する環状シロキサンの合計量が、アミノアルキル基含有シロキサン100質量部に対し1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以下、さらに好ましくは0.01質量部以下とすることができる。特には、環状シロキサン2種以上の各々の量が、アミノアルキル基含有シロキサン100質量部あたり0.1質量部以下、更には0.01質量部以下とすることができる。これらの下限値は0質量部である。
【0028】
上記一般式(1)で表されるアミノアルキル基含有シロキサンは、直鎖状、分岐状、環状、又は三次元網目状のいずれを有するものであってもよい。特に好ましくは直鎖状または分岐状のシロキサンである。該直鎖又は分岐状のシロキサンは、下記一般式(5)で表される。
上記式(5)において、Rは、互いに独立に、水酸基、アルコキシル基、置換又は非置換の、炭素数1〜20の、好ましくは炭素数1〜6の一価炭化水素基、又は上記式(2)又は式(3)で表される基である。置換又は非置換の一価炭化水素基としては上述したものが挙げられる。Rは、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、上記式(2)で表される基、又は式(3)で表される基であり、特に好ましくは、メチル基、フェニル基、上記式(2)で表される基、又は式(3)で表される基である。Bは上記式(2)で表される基であり、Pは上記式(3)で表される基である。該アミノアルキル基含有シロキサンは上記式(2)で表される基を少なくとも1つ有する。特に好ましくは、上記式(2)で表される基を少なくとも1つ有し、且つ、上記式(3)で表されるポリオキシアルキレン基を少なくとも1つ有する。上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は特に制限されず、ランダムに結合していても、ブロック構造を形成していてもよい。
【0029】
式(5)において、Rは、互いに独立に、水酸基、アルコキシル基、置換又は非置換の、炭素数1〜20の、好ましくは炭素数1〜6の一価炭化水素基、上記式(6)で表される基、又は下記式(7)で表される基である。置換又は非置換の一価炭化水素基としては上述したものが挙げられる。Rは、好ましくは、炭素原子数1〜6の炭化水素基、上記式(6)で表される基、又は下記式(7)で表される基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、上記式(6)で表される基、又は下記式(7)で表される基である。更に好ましくは、メチル基、ブチル基、フェニル基、上記式(6)で表される基、又は下記式(7)で表される基、特に好ましくは、メチル基、フェニル基、式(6)で表される基、又は下記式(7)で表される基である。
【0030】
−O−(RSiO)−SiR (7)
式(7)中、Rは上記の通りであり、tは0〜1000の整数である。好ましくは、tは0〜100の整数であり、特に好ましくは4〜30の整数である。
【0031】
式(5)において、xは0〜2000の整数である。好ましくは0〜500の整数、特に好ましくは5〜100の整数、更に好ましくは5〜50の整数である。yは0〜2000の整数である。好ましくは0〜500の整数、特に好ましくは1〜100の整数、更に好ましくは2〜20の整数である。zは0〜2000の整数である。好ましくは0〜500の整数、特に好ましくは1〜100の整数、更に好ましくは2〜20の整数である。但し、x+y+z>0を満たす。好ましくはx+y+z≧10である。また、yが0の場合、Rの少なくとも1つは上記式(2)で表される基である。さらに好ましい態様としては、yが0の場合、Rの少なくとも1つは上記式(2)で表される基であり、且つ、zが0の場合、Rの少なくとも1つは上記式(3)で表される基である。該アミノアルキル基含有シロキサンは、好ましくは重量平均分子量500〜200,000、特には1,000〜40,000を有する。該重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算による値である。
【0032】
本発明の製造方法は、i)付加反応工程とii)脱保護工程を含む。以下、詳細に説明する。
【0033】
i)付加反応工程
該工程は、下記化合物(A)と、化合物(B)と、任意で化合物(C)及び/又は化合物(D)とを付加反応させる工程である。
化合物(A):下記一般式(9)で表されるハイドロジェンシロキサン
(式中、Rは、互いに独立に、水素原子、水酸基、アルコキシル基、置換又は非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、但し、Rの少なくとも1つは水素原子であり、k、p、q、及びrは上記の通りである。上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は特に制限されず、ランダムに結合していても、ブロック構造を形成していてもよい。)
化合物(B):下記式(10)で表される、保護されたアミノ基を有する化合物
CHR=CR−(CRH)a’−(NQCHCH−NQ
(10)
(式中、a’は(aー2)であり、すなわち0〜9の整数であり、b及びRは上記の通りであり、Qは−SiRで表されるシリル基であり、Rは、互いに独立に、非置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基である)
化合物(C):下記式(11)で表されるポリエーテル
CHR=CR−(CRH)c’−O−(CO)−(CO)−R
(11)
(式中、c’は(c−2)であり、すなわち0〜9の整数であり、d、e、R、及びRは上記の通りである)
化合物(D):下記式(12)で表される(ポリ)シロキサン
CHR=CR−(CRH)f’−(RSiO)−SiR (12)
(式中、R、R、及びsは上記の通りであり、f’は(f−2)であり、すなわち0〜9の整数である)
【0034】
上記化合物(A)と化合物(B)とを付加反応させることによりアミノアルキル基を有するシロキサンを得る。本発明の製造方法において、上記化合物(C)及び(D)は任意成分である。化合物(A)と、化合物(B)及び化合物(C)とを付加反応させることにより、アミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基を有するシロキサンを得る。また、化合物(A)と、化合物(B)及び化合物(D)とを付加反応させることにより、アミノアルキル基及び上記式(6)で表される分岐鎖を有するシロキサンを得る。特に好ましい態様としては、化合物(A)と、化合物(B)及び(C)と任意で化合物(D)とを付加反応させて、アミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基を有し、任意で上記式(6)で表される分岐鎖を有するシロキサンを製造する。
【0035】
上記式(9)で表されるハイドロジェンシロキサン(A)は、好ましくは下記一般式(13)で表される直鎖状又は分岐を有するハイドロジェンシロキサン(A’)である。該ハイドロジェンシロキサン(A’)を原料として使用することにより、上記一般式(5)で表される、直鎖状又は分岐を有するアミノアルキル基含有シロキサンが得られる。
(A’) R11−(R10SiO)−SiR11
(13)
式(13)中、R11は、互いに独立に、水素原子、水酸基、アルコキシル基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R10は、互いに独立に、水素原子、水酸基、アルコキシル基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は上記式(7)で示される基であり、但し、R10及びR11の少なくとも1は水素原子であり、vはx+y+zであり、すなわち1〜6000の整数であり、好ましくは1〜1500の整数であり、特に好ましくは7〜300の整数であり、更に好ましくは9〜90の整数である。上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は特に制限されず、ランダムに結合していても、ブロック構造を形成していてもよい。
【0036】
上記ハイドロジェンシロキサン(A)及び(A’)は、少なくとも1つのSiH基を有する。上記式(9)及び(13)において、R及びR11は、互いに独立に、水素原子、水酸基、アルコキシル基、置換又は非置換の、炭素数1〜20の、好ましくは炭素数1〜6の一価炭化水素基である。R10は、互いに独立に、水素原子、水酸基、アルコキシル基、置換又は非置換の、炭素数1〜20の、好ましくは炭素数1〜6の一価炭化水素基、又は上記式(7)で示される基である。置換又は非置換の一価炭化水素基としては上記に例示したものが挙げられる。好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はフェニル基であり、特に好ましくは、水素原子、メチル基、又はフェニル基である。但し、Rの少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、特に好ましくは、5つ以上が水素原子であり、R10及びR11の少なくとも1、好ましくは2つ以上、特に好ましくは、5つ以上が水素原子である。
【0037】
上記ハイドロジェンシロキサン(A)及び(A’)は、これらの化合物の製造過程で生じる下記式(8)で示される環状シロキサンが含有されていてもよい。
(SiHMeO)(SiMeO) (8)
(式(8)中、mは0〜4の整数であり、nは3〜20の整数である)
但し、本発明の製造方法における特に好ましい態様としては、上記化合物(A)及び(A’)に付随する該環状シロキサンの量が、ハイドロジェンシロキサン(A)又は(A’)100質量部あたり1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以下、さらに好ましくは0.01質量部以下である。下限値は0質量部である。このようなハイドロジェンシロキサン(A)及び(A’)を原料として使用することにより、得られるアミノアルキル基含有シロキサンに付随する環状シロキサンの量をより少なくすることができる。
【0038】
化合物(B)は、−SiRで表されるシリル基で保護されたアミノ基と、不飽和基を持つ化合物である。上記式(10)において、Rは上記の通りであり、Qは−SiRである。Rは、互いに独立に、非置換の、炭素数1〜20の、好ましくは炭素数1〜6の一価炭化水素基である。該非置換の一価炭化水素基としては上記に例示したものが挙げられる。Rは、好ましくは炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はフェニル基が好ましく、より好ましくはメチル基又はブチル基である。このようなシリル基としては、より詳細には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、及びトリイソプロピルシリル基等が挙げられる。特に好ましくはトリメチルシリル基である。
上記式(10)においてa’は(a−2)であり、すなわち0〜9の整数であり、好ましくは1又は0であり、特に好ましくは1である。bは0〜10の整数であり、好ましくは0〜5の整数、特に好ましくは0又は1である。
【0039】
特には上記式(10)において「CHR=CR−(CRH)a’−」で表される構造は下記のいずれかが好ましい。
CH=CHCH−, CMeH=CHCH−, CH=CMeCH
該構造を有する化合物としては、例えばビストリメチルシリルアリルアミンが好ましい。
【0040】
化合物(C)は、不飽和基を持つポリエーテル化合物である。上記式(11)において、R及びRは上記の通りである。c’は(c−2)であり、すなわち0〜9の整数であり、好ましくは1又は0であり、特に好ましくは1である。dは0〜100の整数であり、好ましくは0〜50の整数であり、特に好ましくは0〜25の整数である。eは0〜100の整数であり、好ましくは0〜50の整数であり、特に好ましくは0〜25の整数である。ただし、d+e>0である。
【0041】
特には上記式(11)において「CHR=CR−(CRH)c’−」で表される構造は下記のいずれかが好ましい。
CH=CHCH−, CMeH=CHCH−, CH=CMeCH
【0042】
化合物(D)は、不飽和基を持つ(ポリ)シロキサンである。上記式(12)において、R及びRは上記の通りである。f’は(f−2)であり、すなわち0〜9の整数であり、好ましくは1又は0であり、特に好ましくは1である。sは上記の通りであり、0〜1000の整数であり、好ましくは0〜100の整数であり、特に好ましくは4〜30の整数である。
【0043】
特には上記式(12)において「CHR=CR−(CRH)c’−」で表される構造は下記のいずれかが好ましい。
CH=CHCH−, CMeH=CHCH−, CH=CMeCH
【0044】
付加反応は触媒下で行われるのがよく、公知の付加反応触媒を使用することができる。例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、金、ニッケル等を有する金属触媒が挙げられる。特には、白金、パラジウム、又はロジウムを有する触媒が好ましい。さらに好ましくは白金を有する触媒であり、より詳細には、PtCl、HPtCl・6HO、Pt−エーテル錯体、Pt−オレフィン錯体、PdCl(PPh、PdCl(PhCN)、RhCl(PPh(前記式中、Phはフェニル基である)が使用できる。触媒は1種単独でも2種以上の混合物であってもよい。触媒は必要に応じて、アルコール類、芳香族類、炭化水素類、ケトン類、又は塩基性溶媒などの溶媒で希釈して用いることができる。特には、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンと塩化白金酸の重曹中和物との錯体(カルステッド触媒)が、付加反応触媒として最も好適である。
【0045】
触媒の量は触媒量であればよい。触媒量とは上記付加反応を進行させるのに十分な量である。化合物(A)又は(A’)100質量部に対して、上記金属触媒の主金属換算量で0.02質量部以下、好ましくは0.0001質量部〜0.02質量部、好ましくは0.00003質量部〜0.01質量部、特に好ましくは0.0005質量部〜0.005質量部である。触媒は、反応の初めから添加しても、反応途中に数回に分けて添加しても良い。本発明の製造方法は低触媒量であっても十分に反応を進行することができる。しかし触媒の量が少なすぎると反応速度が遅くなりすぎるため、上記下限値以上とするのが好ましい。また触媒の量が多すぎても反応速度性は格別に向上せず、不経済となるので好ましくない。
【0046】
得られるアミノアルキル基含有シロキサンに残存金属触媒が多く含まれていると、着色の原因となる。そのため、残存金属触媒量は少ない方がよい。本発明の製造方法では、得られるアミノアルキル基含有シロキサン、特にはアミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサンに含有する金属触媒の量を、該シロキサン100質量部に対して、主金属原子の換算量として0.02質量部以下、好ましくは0.005質量部以下、特に好ましくは0.002質量部以下とすることができる。
【0047】
反応に供する化合物(B)、(C)及び(D)の量は、化合物(A)が有するSiH基の個数に対し化合物(B)及び任意の(C)及び(D)が有するアルケニル基の合計個数が過剰となる量比が好ましい。例えば、SiH基1個に対しアルケニル基の合計個数が1〜5個、好ましくは1〜2個、特に好ましくは1〜1.5個となる量比がよい。
【0048】
化合物(B)及び任意の化合物(C)及び(D)を付加させる順序は特に決まりはなく、化合物(B)の付加が終わった後に化合物(C)及び(D)を付加させても、化合物(C)の付加が終わった後に化合物(B)及び(D)を付加させても、化合物(D)の付加が終わった後に化合物(B)及び(D)を付加させても、化合物(B)と化合物(C)と化合物(D)とを同時に付加させても良い。多くの場合、化合物(B)の未反応物は、後の工程で除去することが可能であるため、化合物(C)と化合物(D)を先に付加反応させてから化合物(B)を付加反応させる方が好ましい。この場合、反応の様子を見ながら化合物(B)を足し、ヒドロシリル基を完全に反応させることができる。
【0049】
付加反応には溶剤を用いてもよい。溶剤は、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、THF、ジエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、DMF、アセトニトリル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等を用いることができる。溶剤は、付加反応終了後に留去しても、しなくても良い。
【0050】
付加反応温度は、20〜250℃、好ましくは、40℃〜180℃、特に好ましくは、80℃〜120℃である。反応時間は、20時間以内、好ましくは、12時間以内、特に好ましくは、8時間以内である。
【0051】
上記付加反応により下記式(14)で表される化合物が得られる。
上記式(14)において、Rは、互いに独立に、水酸基、アルコキシル基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、下記式(B’)で表される基、又は上記式(3)で表される基、又は上記式(6)で表される基である。k、p、q、及びrは上記の通りである。
−(CRH)−(NQCHCH−NQ (B’)
式(B’)において、Qは−SiRで表されるシリル基であり、Rは上記の通りである。
【0052】
またハイドロジェンシロキサンが化合物(A’)である場合には、上記付加反応により下記式(15)で表される化合物が得られる。
上記式(15)において、R及びRは上記の通りであり、又は、上記式(B’)で表される基であり、B’は上記式(B’)で表される基である。R、x、y、z、及びPは上記の通りである。
【0053】
ii)脱保護工程
上記式(14)又は(15)で表される化合物におけるアミンに結合しているシリル基Qをアミンから除く(以下、脱保護という)ことで、上記式(1)又は(5)で表されるアミノアルキル基含有シロキサンが得られる。
【0054】
脱保護反応は触媒存在下で行い、公知の触媒が使用できる。好ましくは酸性触媒であり、酢酸又はそのアミン塩、塩酸又はそのアミン塩、硫酸又はそのアミン塩、硝酸又はそのアミン塩、メタンスルホン酸又はそのアミン塩、トリフルオロメタンスルホン酸又はそのアミン塩、p−トルエンスルホン酸又はそのアミン塩、ベンゼンスルホン酸又はそのアミン塩、陽イオン交換樹脂等が使用される。アミン塩としては、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩等が例示される。好ましくは酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、特に好ましくは酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸である。酸触媒の量は、上記式(14)又は式(15)で示される化合物が有するアミンに対して、0.01〜1モル当量使用する。好ましくは0.05〜0.5モル当量であり、特に好ましくは0.1〜0.3モル当量が良い。
【0055】
脱保護反応は溶剤下で行う。溶剤はプロトン性溶剤が好ましい。例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、及び2−ブタノール等が使用される。さらに好ましくは、エタノール、1−プロパノール、または2−プロパノールであり、特に好ましくはエタノール、または2−プロパノールである。
【0056】
脱保護の反応温度は適宜選択されればよいが、好ましくは20〜200℃であり、さらに好ましくは40〜120℃であり、特に好ましくは60〜90℃である。反応時間も適宜選択されればよいが、好ましくは10時間以内であり、さらに好ましくは7時間以内であり、特に好ましくは4時間以内である。
【0057】
iii)中和工程
本発明の方法はさらに、上記工程ii)の後に、脱保護に使用した酸性触媒を中和する工程を含む。酸性触媒の中和は、中和剤の添加あるいは水洗により行えばよい。中和剤としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属塩を用いることができる。また、陰イオン交換樹脂やキョーワード(登録商標)200、500、2000(協和科学工業社製)のような吸着剤も使用することができる。好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、キョーワード200、500、2000であり、特に好ましくはキョーワード(登録商標)200、500、2000である。尚、キョーワード(登録商標)200は水酸化アルミニウムであり、キョーワード(登録商標)500とは合成ハイドロタルサイトMg1−xAl(OH)(COx/2・mHOであり、キョーワード(登録商標)2000はマグネシウム・アルミニウム系固溶体である。
【0058】
中和剤の使用温度は、0℃〜100℃、好ましくは、10℃〜80℃、特に好ましくは20℃〜50℃である。系に不溶の中和剤を使用した場合や系に不溶の中和塩が出る場合は、濾過によってそれを取り除くことができる。系に中和塩が溶解する場合は、水を入れて水洗を行うことでそれを取り除くことができる。中和塩の除去はしてもしなくてもどちらでもよい。
【0059】
本発明の製造方法は、上記工程i)〜iii)に加え、さらにiv)溶剤の留去工程、v)着色がある場合の脱色工程、vi)臭気がある場合の脱臭工程、及びvii)異物が入っている場合のろ過工程の1以上を含むことができる。これらの工程は必要に応じて行えばよく、その順番は制限されない。
【0060】
iv)溶剤の留去工程
アミンは酸化されると黄色に着色することがある。そのため溶剤の留去は不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、及びヘリウム等が例示される。また、温度が高くなると着色しやすくなるため、減圧下で行う方が望ましい。温度としては、40℃〜200℃、好ましくは50℃〜150℃、特に好ましくは70℃〜120℃である。減圧度は300mmHg以下、好ましくは100mmHg以下、特に好ましくは10mmHg以下である。
【0061】
v)脱色工程
得られた生成物が着色を有する場合、吸着剤を用いて脱色することができる。吸着剤としては、活性炭、活性アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、メソポーラスシリカ、及びカーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0062】
vi)脱臭工程
得られた生成物が臭気を有する場合、吸着剤を用いて脱臭することができる。吸着剤としては、活性炭、活性アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、メソポーラスシリカ、及びカーボンナノチューブ等が挙げられる。あるいは、不活性ガスを吹き込むことで脱臭することができる。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が例示される。加熱、減圧下の方が脱臭されやすく、温度としては20℃〜150℃、好ましくは30℃〜100℃、特に好ましくは40℃〜70℃である。減圧度は、300mmHg以下、好ましくは100mmHg以下、特に好ましくは10mmHg以下である。
【0063】
vii)ろ過工程
得られた生成物に異物が混在している場合、ろ紙、またはストレーナー等でろ過することで異物を取り除くことができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。下記においてH−NMR分析は、ECX−500II(日本電子株式会社製)を用い、測定溶媒として重クロロホルムを使用して実施した。
尚、下記実施例及び比較例において、付加反応に付したハイドロジェンシロキサンに不純物として含有していた環状シロキサン((MeSiO)(MeHSiO)、(MeSiO)(MeHSiO)、(MeSiO)(MeHSiO)、及び(MeSiO)(MeHSiO)で表される化合物)の総量は10ppm以下(ハイドロジェンシロキサン100質量部に対して0.001質量部以下)であった。
【0065】
[実施例1]
一般式Me−(MeSiO)30−(MeHSiO)−SiMeで表されるハイドロジェンシロキサン100質量部に、CH=CH−(CH)−O−(CO)−Hで表されるアリルポリエーテル32.27質量部、塩化白金酸重曹中和物・ビニルシロキサン錯体のエタノール溶液(白金含有量3.0wt%)0.0167質量部を添加して、100℃で2時間、加熱撹拌した。その後、CH=CH−(CH)−NTMSで表されるビストリメチルシリルアリルアミン16.16質量部と、塩化白金酸重曹中和物・ビニルシロキサン錯体のエタノール溶液(白金含有量3.0wt%)0.0333質量部を添加して、更に100℃で4時間加熱撹拌した。その後、酢酸を0.96質量部とイソプロピルアルコールを100質量部添加し、80℃で3時間加熱撹拌した。中和剤としてキョーワード500を8質量部添加し、室温で2時間撹拌した後、100℃、10mmHgにて溶剤を除去し、濾過板(NA−500、アドバンテック社製)でキョーワード(登録商標)500(協和科学工業株式会社製)を濾過して生成物を得た。上記反応で使用した触媒の総量は、ハイドロジェンシロキサン100質量部に対し白金金属換算量として0.0015質量部であった。得られた生成物はH−NMRより、下記一般式で表される化合物であった(括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されない)。
Me−(MeSiO)30−(MeBSiO)−(MePSiO)−SiMe

式中、Bは−CNHであり、Pは−CO(CO)−Hである。

得られた生成物をH−NMRで分析して、ヒドロシリル基が無いこと、また、トリメチルシリル基が完全に脱保護されていることを確認した。また、上記生成物に含有していたオクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンの量は、生成物の総質量に対してそれぞれ検出限界(5ppm)以下であり、白金原子の残存量は生成物の総質量に対して15ppm以下であった。
さらに、GC分析の結果より、該生成物に含有していた(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、及び(MeSiO)(MeBSiO)で表される環状シロキサン(いずれもBは−CNH)の総量は、10ppm以下(生成物100質量部に対して0.001質量部以下)であった。
【0066】
[実施例2]
CH=CH−(CH)−O−(CO)−Hで表されるアリルポリエーテルの量を20.17質量部にし、CH=CH−(CH)−NTMSで表されるビストリメチルシリルアリルアミンの量を24.23質量部にし、酢酸の量を1.44質量部にし、キョーワード500の量を12質量部にした他は上記実施例1を繰り返して生成物を得た。得られた生成物はH−NMRより、下記一般式で表される化合物であった(括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されない)。
Me−(MeSiO)30−(MeBSiO)−(MePSiO)3−SiMe

式中、Bは−CNHであり、Pは−CO(CO)−Hである。

得られた生成物をH−NMRで分析して、ヒドロシリル基が無いこと、また、トリメチルシリル基が完全に脱保護されていることを確認した。また、上記生成物に含有していたオクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンの量は、生成物の総質量に対してそれぞれ検出限界(5ppm)以下であり、白金原子の残存量は生成物の総質量に対して15ppm以下であった。
さらに、GC分析の結果より、該生成物に含有していた(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、及び(MeSiO)(MeBSiO)で表される環状シロキサン(いずれもBは−CNH)の総量は、10ppm以下(生成物100質量部に対して0.001質量部以下)であった。
【0067】
[実施例3]
CH=CH−(CH)−O−(CO)−Hで表されるアリルポリエーテル20.17質量部を、CH=CH−(CH)−O−(CO)−Hで表されるアリルポリエーテル46.83質量部に変えた他は上記実施例2を繰り返して生成物を得た。得られた生成物はH−NMRより、下記一般式で表される化合物であった(括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されない)。
Me−(MeSiO)30−(MeBSiO)−(MePSiO)3−SiMe

式中、Bは−CNHであり、Pは−CO(CO)−Hである。

得られた生成物をH−NMRで分析して、ヒドロシリル基が無いこと、また、トリメチルシリル基が完全に脱保護されていることを確認した。また、上記生成物に含有していたオクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンの量は、生成物の総質量に対してそれぞれ検出限界(5ppm)以下であり、白金原子の残存量は生成物の総質量に対して15ppm以下であった。
さらに、GC分析の結果より、該生成物に含有していた(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、及び(MeSiO)(MeBSiO)で表される環状シロキサン(いずれもBは−CNH)の総量は、10ppm以下(生成物100質量部に対して0.001質量部以下)であった。
【0068】
[実施例4]
CH=CH−(CH)−O−(CO)−Hで表されるアリルポリエーテルの量を18.73質量部にし、CH=CH−(CH)−NTMSで表されるビストリメチルシリルアリルアミンの量を40.39質量部にし、酢酸の量を2.41質量部にし、キョーワード500の量を20質量部にした他は上記実施例3を繰り返して生成物を得た。得られた生成物はH−NMRより、下記一般式で表される化合物であった(括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されない)。
Me−(MeSiO)30−(MeBSiO)−(MePSiO)−SiMe

式中、Bは−CNHであり、Pは−CO(CO)−Hである。

得られた生成物をH−NMRで分析して、ヒドロシリル基が無いこと、また、トリメチルシリル基が完全に脱保護されていることを確認した。また、上記生成物に含有していたオクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンの量は、生成物の総質量に対してそれぞれ検出限界(5ppm)以下であり、白金原子の残存量は生成物の総質量に対して15ppm以下であった。
さらに、GC分析の結果より、該生成物に含有していた(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、及び(MeSiO)(MeBSiO)で表される環状シロキサン(いずれもBは−CNH)の総量は、10ppm以下(生成物100質量部に対して0.001質量部以下)であった。
【0069】
[実施例5]
実施例3の一般式ハイドロジェンシロキサンを一般式(MeSiO1/2(MeSiO2/238(MeHSiO2/2(MeSiO3/2で表されるハイドロジェンシロキサンにし、アリルポリエーテルを32.42質量部、ビストリメチルシリルアリルアミンを17.24質量部、酢酸を1.03質量部、キョーワード500を8.5質量部にした他は上記実験例3を繰り返して生成物を得た。得られた生成物は、H−NMRより下記一般式で表される化合物であった(括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されない)。
(MeSiO1/2(MeSiO2/238(MeBSiO2/2(MePSiO2/23(MeSiO3/2
式中、Bは−CNHであり、Pは−CO(CO)−Hである。

得られた生成物をH−NMRで分析して、ヒドロシリル基が無いこと、また、トリメチルシリル基が完全に脱保護されていることを確認した。また、上記生成物に含有していたオクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンの量は、生成物の総質量に対してそれぞれ検出限界(5ppm)以下であり、白金原子の残存量は生成物の総質量に対して15ppm以下であった。
さらに、GC分析の結果より、該生成物に含有していた(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、及び(MeSiO)(MeBSiO)で表される環状シロキサン(いずれもBは−CNH)の総量は10ppm以下(生成物100質量部に対して0.001質量部以下)であった。
【0070】
[実施例6]
実施例5のハイドロジェンシロキサンを、一般式(MeSiO1/2(MeSiO2/247(MeHSiO2/2(SiO4/2で表されるハイドロジェンシロキサンにし、アリルポリエーテルを26.29質量部、ビストリメチルシリルアリルアミンを11.65質量部、酢酸を0.70質量部、キョーワード500を5.8質量部にした他は上記実施例5を繰り返して生成物を得た。得られた生成物はH−NMRより、下記一般式で表される化合物であった(括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されない)。
(MeSiO1/2(MeSiO2/247(MeBSiO2/2(MePSiO2/23(SiO4/2
式中、Bは−CNHであり、Pは−CO(CO)−Hである。

得られた生成物をH−NMRで分析して、ヒドロシリル基が無いこと、また、トリメチルシリル基が完全に脱保護されていることを確認した。また、上記生成物に含有していたオクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンの量は、生成物の総質量に対してそれぞれ検出限界(5ppm)以下であり、白金原子の残存量は生成物の総質量に対して15ppm以下であった。
さらに、GC分析の結果より、該生成物に含有していた(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、及び(MeSiO)(MeBSiO)で表される環状シロキサン(いずれもBは−CNH)の総量は10ppm以下(生成物100質量部に対して0.001質量部以下)であった。
【0071】
[実施例7]
一般式Me−(MeSiO)30−(MeHSiO)−SiMeで表されるハイドロジェンシロキサン100質量部に、CH=CH−(CH)−O−(CO)−Hのアリルポリエーテル18.73質量部、CH=CH−(MeSiO)10Buの片末端ビニルシロキサン31.59質量部、塩化白金酸重曹中和物・ビニルシロキサン錯体のエタノール溶液(白金含有量3.0wt%)を0.0167添加して、100℃で2時間、加熱撹拌した。その後、CH=CH−(CH)−NTMSのビストリメチルシリルアリルアミンを27.75質量部と塩化白金酸重曹中和物・ビニルシロキサン錯体のエタノール溶液(白金含有量3.0wt%)を0.0333質量部添加して、更に100℃で4時間加熱撹拌した。その後、酢酸を1.66質量部とイソプロピルアルコールを100質量部添加し、80℃で3時間、加熱撹拌した。中和剤として、キョーワード500を13.7質量部添加し、室温で2時間撹拌した後、100℃、10mmHgにて溶剤を除去し、濾過板(NA−500、アドバンテック社製)でキョーワード(登録商標)500(協和科学工業株式会社製)を濾過して生成物を得た。
得られた生成物はH−NMRより下記一般式で表される化合物であった(括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されない)。
Me−(MeSiO)30−(MeBSiO)−(MePSiO)−(MeRSiO)−SiMe
式中、Bは−CNHであり、Pは−CO(CO)−H、Rは−O(MeSiO)10Buである。

得られた生成物をH−NMRで分析して、ヒドロシリル基が無いこと、また、トリメチルシリル基が完全に脱保護されていることを確認した。また、上記生成物に含有していたオクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンの量は、生成物の総質量に対してそれぞれ検出限界(5ppm)以下であり、白金原子の残存量は生成物の総質量に対して15ppm以下であった。
さらに、GC分析の結果より、該生成物に含有していた(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、及び(MeSiO)(MeBSiO)で表される環状シロキサン(いずれもBは−CNH)の総量は10ppm以下(生成物100質量部に対して0.001質量部以下)であった。
【0072】
[実施例8]
一般式Me−(MeSiO)30−(MeHSiO)−SiMeで表されるハイドロジェンシロキサン100質量部に、CH=CH−(CH)−NTMSのビストリメチルシリルアリルアミンを55.5質量部と塩化白金酸重曹中和物・ビニルシロキサン錯体のエタノール溶液(白金含有量3.0wt%)を0.0333質量部添加して、100℃で4時間加熱撹拌した。その後、酢酸を3.32質量部とイソプロピルアルコールを100質量部添加し、80℃で3時間、加熱撹拌した。中和剤として、キョーワード500を27.4質量部添加し、室温で2時間撹拌した後、100℃、10mmHgにて溶剤を除去し、濾過板(NA−500、アドバンテック社製)でキョーワード(登録商標)500(協和科学工業株式会社製)を濾過して生成物を得た。
得られた生成物はH−NMRより、下記一般式で表される化合物であった(括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されない)。
Me−(MeSiO)30−(MeBSiO)−SiMe
式中、Bは−CNHである。
得られた生成物をH−NMRで分析して、ヒドロシリル基が無いこと、また、トリメチルシリル基が完全に脱保護されていることを確認した。また、上記生成物に含有していたオクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンの量は、生成物の総質量に対してそれぞれ検出限界(5ppm)以下であり、白金原子の残存量は生成物の総質量に対して15ppm以下であった。
さらに、GC分析の結果より、該生成物に含有していた(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、及び(MeSiO)(MeBSiO)で表される環状シロキサン(いずれもBは−CNH)の総量は、10ppm以下(生成物100質量部に対して0.001質量部以下)であった。
【0073】
[比較例1]
一般式Me−(MeSiO)30−(MeHSiO)−SiMeで表されるハイドロジェンシロキサン100質量部に、CH=CH−(CH)−O−(CO)−Hで表されるアリルポリエーテル20.17質量部、塩化白金酸重曹中和物・ビニルシロキサン錯体のエタノール溶液(白金含有量3.0wt%)を0.0167質量部添加して、100℃で2時間加熱撹拌した。その後、CH=CH−(CH)−NHで表されるアリルアミンを4.58質量部と塩化白金酸重曹中和物・ビニルシロキサン錯体のエタノール溶液(白金含有量3.0wt%)を0.0333質量部添加して、更に100℃で4時間加熱撹拌し生成物を得た。上記反応で使用した触媒の総量は、ハイドロジェンシロキサン100質量部に対し白金金属換算量として0.0015質量部であった。
得られた生成物はH−NMRより、下記一般式で表される化合物であった(括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されない)。
Me−(MeSiO)30−(MeHSiO)−(MePSiO)−SiMe
しかし、得られた生成物をH−NMRで分析したところ、未反応ヒドロシリル基の存在が確認された。これはアリルアミンにより付加反応が阻害されたことを意味する。
【0074】
[比較例2]
アリルアミン添加時に加える塩化白金酸重曹中和物・ビニルシロキサン錯体のエタノール溶液(白金含有量3.0wt%)の量0.0333質量部を0.6667質量部に変えた他は比較例1を繰り返し生成物を得た。当該反応で使用した触媒の総量は、ハイドロジェンシロキサン100質量部に対し白金金属換算量として0.0205質量部であった。
得られた生成物はH−NMRより、下記一般式で表される化合物であった(括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されない)。
Me−(MeSiO)30−(MeHSiO)−(MeBSiO)−(MePSiO)−SiMe
しかし、得られた生成物をH−NMRで分析したところ、未反応ヒドロシリル基の存在が確認された。これはアリルアミンにより付加反応が阻害されたことを意味する。
比較例2に示す通り、アリルアミンを使用する方法では、触媒の量を増やしたとしても十分に反応が進まず、未反応のヒドロシリル基が残存する。
【0075】
[比較例3]
オクタメチルシクロテトラシロキサン 1450質量部、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物 50質量部、Me−(MeSiO)11−SiMe50質量部、水酸化カリウム 0.2質量部を145℃で5時間加熱することで、平衡化を行った。その後、80℃まで冷却後、2−クロロエタノール 2質量部を加えて、80℃で2時間加熱した。得られた生成物を120℃、35mmHg下で3時間かけて揮発成分を留去し、目的物を得た。
得られた生成物はH−NMRより、下記一般式で表される化合物であった(括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されない)。
Me−(MeSiO)450−(MeBSiO)10−SiMe
式中、Bは−CNHである。

GC分析の結果より、該生成物に含有していた(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、及び(MeSiO)(MeBSiO)で表される環状シロキサン(いずれもBは−CNH)の総量は10,000ppm超(生成物100質量部に対して1質量部超)であった。
【0076】
[比較例4]
オクタメチルシクロテトラシロキサン 222質量部、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物 352質量部、Me−(MeSiO)28−(MePSiO)−SiMe(P=−CO(CO)H) 50質量部、テトラ n−ブチルホスホニウムハイドロキサイド 1.7質量部を120℃で6時間加熱することで、平衡化を行った。その後、160℃で3時間加熱し、120℃、35mmHg下で3時間かけて揮発成分を留去したところ、ゲル状物が得られた。そのため、目的物を得ることができなかった。
【0077】
[比較例5]
オクタメチルシクロテトラシロキサン 2002質量部、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物 469質量部、Me−(MeSiO)−(MePSiO)−SiMe(P=−CO(CO)11Me) 1001質量部、テトラ n−ブチルホスホニウムハイドロキサイド 10.4質量部を120℃で6時間加熱することで、平衡化を行った。その後、160℃で3時間加熱し、120℃、35mmHg下で3時間かけて揮発成分を留去し、目的物を得た。
得られた生成物はH−NMRより、下記一般式で表される化合物であった(括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されない)。
Me−(MeSiO)31−(MeBSiO)−(MePSiO)−SiMe
式中、Bは−CNHであり、Pは−CO(CO)11Meである。

GC分析の結果より、該生成物に含有していた(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、及び(MeSiO)(MeBSiO)で表される環状シロキサン(いずれもBは−CNH)の総量は10,000ppm超(生成物100質量部に対して1質量部超)であった。
【0078】
実施例1〜8に示す通り、本発明の製造方法によれば、付加反応が阻害されることはなく、低触媒量であっても十分に反応が進み、未反応ヒドロシリル基を残存させない。また、得られる生成物に不純物として含有する、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、(MeSiO)(MeBSiO)、及び(MeSiO)(MeBSiO)(B=−CNH)の量を、それぞれ1000ppm以下(生成物100質量部に対して0.1質量部以下)に低減することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の製造方法によれば、不純物として含まれる環状シロキサンの量を低減したアミノアルキル基含有シロキサン、特にはアミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサンを効率よく生成することができる。また、ポリエーテル鎖の末端がアルキル基で封鎖されている構造だけでなく、ポリエーテル鎖の末端に水酸基を有する化合物も製造することができる。本発明の製造方法により得られるアミノアルキル基含有シロキサン及びアミノアルキル基及びポリオキシアルキレン基含有シロキサンは、例えば化粧料、繊維処理剤、撥水剤、撥油剤、離型剤、塗料添加剤に有用である。