特許第6625227号(P6625227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625227
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】防音構造、及び防音システム
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20191216BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   G10K11/16 110
   G10K11/16 140
   G10K11/172
【請求項の数】23
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2018-537297(P2018-537297)
(86)(22)【出願日】2017年8月29日
(86)【国際出願番号】JP2017030947
(87)【国際公開番号】WO2018043489
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2019年1月29日
(31)【優先権主張番号】特願2016-170244(P2016-170244)
(32)【優先日】2016年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】白田 真也
(72)【発明者】
【氏名】山添 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】大津 暁彦
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−069132(JP,A)
【文献】 特開2010−097149(JP,A)
【文献】 特開2000−234315(JP,A)
【文献】 特開2013−125186(JP,A)
【文献】 特開2011−241583(JP,A)
【文献】 特開2008−215064(JP,A)
【文献】 特開2015−184524(JP,A)
【文献】 特開2010−084509(JP,A)
【文献】 特開2013−109189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16
G10K 11/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の防音ユニットを有する防音構造であって、
各防音ユニットは、
開口部を有する枠と、
該枠の前記開口部に取り付けられた吸音部材と、を有し、
隣接する2つの防音ユニットは、それぞれの前記吸音部材の少なくとも一部同士を対向させて配置され、
少なくとも一部が対向する前記吸音部材は、互いに離間しており、
少なくとも一部が対向する前記吸音部材同士の平均距離は、20mm未満であることを特徴とする防音構造。
【請求項2】
前記吸音部材は、音に対して振動する膜であり、
前記膜は、前記枠の前記開口部を覆い、かつ前記枠に固定されている請求項1に記載の防音構造。
【請求項3】
前記吸音部材は、通気シート構造であることを特徴とする請求項1に記載の防音構造。
【請求項4】
前記吸音部材は、少なくとも一個以上の第1貫通孔が設けられている板、又は膜であり、
前記第1貫通孔は、口径0.25mm超の貫通孔であり、
前記板、又は前記膜は、前記枠の前記開口部を覆い、かつ前記枠に固定されている請求項3に記載の防音構造。
【請求項5】
前記吸音部材は、口径0.1μm〜250μmの微細な第2貫通孔を複数個備える板状部材である請求項3に記載の防音構造。
【請求項6】
前記吸音部材は、繊維シートであることを特徴とする請求項3に記載の防音構造。
【請求項7】
前記2以上の防音ユニットの内の少なくとも一つの防音ユニットは、前記吸音部材を有する面以外は閉じられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項8】
前記2以上の防音ユニットの内の少なくとも一つの防音ユニットにおいては、前記吸音部材を有する面に向かい合う面の少なくとも一部が開放されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項9】
前記2以上の防音ユニットの内の少なくとも一つの防音ユニットは、互いに向かい合う2面に前記吸音部材を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項10】
前記2以上の防音ユニットの内の少なくとも一つの防音ユニットにおいて、前記隣接する2つの防音ユニットの前記吸音部材が向かい合う面の側面の少なくとも一部が塞がれている請求項1〜9のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項11】
前記2以上の防音ユニットの内の少なくとも一つの防音ユニットにおいて、前記枠の内部に多孔質吸音体または繊維状吸音体を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項12】
前記2以上の防音ユニットの内の少なくとも一つの防音ユニットは、構造物の壁に配置されている請求項1〜11のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項13】
前記隣接する2つの防音ユニットを1組の防音ユニットとして、複数組の防音ユニットが組み合わされて防音壁として機能する請求項1〜12のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項14】
前記2以上の防音ユニットは、筒状部材内に配置され、
前記筒状部材の内側の孔部の一部は、開口されている請求項1〜13のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項15】
前記2以上の防音ユニットの内の少なくとも一つの防音ユニットは、前記筒状部材の内側の壁に配置される請求項14に記載の防音構造。
【請求項16】
前記2以上の防音ユニットは、周期的に配列されている請求項1〜15のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項17】
前記隣接する2つの防音ユニットを含む前記2以上の防音ユニットを単位ユニットして、複数の前記単位ユニットが配置されている請求項1〜16のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項18】
更に、前記隣接する2つの防音ユニットの一方の前記吸音部材を他方の前記吸音部材に対して相対的に移動させる移動機構を有し、
該移動機構は、前記隣接する2つの防音ユニットの前記吸音部材同士の距離を変化させる請求項1〜17のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項19】
前記移動機構は、レール、及び前記隣接する2つの防音ユニットの少なくとも一方の防音ユニットを載置して、前記レール上を走行する車輪を備えるレール走行機構である請求項18に記載の防音構造。
【請求項20】
前記移動機構は、ボールねじ、及び前記隣接する2つの防音ユニットの少なくとも一方の防音ユニットが取り付けられ、前記ボールねじに螺合するナットを備えるねじ移動機構、又は前記隣接する2つの防音ユニットの少なくとも一方の防音ユニットが取り付けられたラック、及び該ラックと噛合するラックアンドピニオン機構である請求項18に記載の防音構造。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の防音構造と、前記防音構造の周囲環境の騒音を計測する計測部と、計測部で計測された騒音の周波数を解析する解析部と、を有し、
前記解析部の解析結果に応じて前記隣接する2つの防音ユニットの前記吸音部材同士の距離を変化させることを特徴とする防音システム。
【請求項22】
記移動機構は、更に駆動源、及び該駆動源の駆動を制御する制御部を備える自動移動機構であり、
前記解析部は、前記解析結果に応じて前記隣接する2つの防音ユニットの少なくとも一方の防音ユニットの移動量を決定し、
前記制御部は、決定された前記移動量に応じて前記駆動源の駆動を制御して、前記隣接する2つの防音ユニットの少なくとも一方の防音ユニットを自動的に移動させて、前記隣接する2つの防音ユニットの前記吸音部材同士の距離を変化させる請求項21に記載の防音システム。
【請求項23】
前記計測部を複数備え、
前記解析部は、前記複数の計測部でそれぞれ計測された騒音の前記周波数をそれぞれ解析し、解析結果に応じて、前記隣接する2つの防音ユニットの少なくとも一方の防音ユニットの移動量を決定する請求項22に記載の防音システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音構造、及び防音システムに係る。詳しくは、本発明は、枠と、枠の開口部に取り付けられた吸音部材とをそれぞれ有する2つの防音ユニットを、それぞれの吸音部材が向かい合うように近づけて配置することにより、簡単な構成によって低周波側の音を防音する小型の防音構造に関する。即ち、本発明は、ターゲットとなるより低周波数の音を選択的に強く遮蔽するための小型の防音構造に関する。また、本発明は、このような防音構造を用い、防音の中心周波数を簡単に調整することもできる防音システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防音材においては、遮音材は、質量則に従う。また、吸音材に関しては、ウレタンのような一般的な吸音材は、吸音材のサイズと音波長の長さとの比で吸収率が決まる。また、膜型吸音材、又はヘルムホルツ共振のような共鳴を利用して音を吸収する吸音材においても、背後体積の大きさによって防音周波数が決まっている。これらの法則では、高周波側は、比較的小型軽量でも防音が可能であるが、低周波側は重く大きくすることが必要である(特許文献1参照)。
特許文献1においては、貫通孔が形成された枠体と、貫通孔の一方の開口を覆う吸音材を有し、吸音材の第1の貯蔵弾性率E1が9.7×10以上であり、第2の貯蔵弾性率E2が346以下である吸音体が開示されている(要約、請求項1、段落[0005]〜[0007]、[0034]等参照)。なお、吸音材の貯蔵弾性率は、吸音により吸音材に生じたエネルギのうち内部に保存する成分を意味する。
特許文献1では、実施例では、配合の材料を樹脂、又は樹脂とフィラーとの混合物とする吸音材を用いることにより、吸音体の大型化を招くことなく、500Hz以下の低周波領域において高度な吸音効果を達成することができるとしている。ここで、この実施例では、吸音率のピーク値が0.5〜1.0であり、ピーク周波数が290〜500Hzである。
【0003】
一方、低周波域全域において遮音を可能とし、低周波域から高周波域にわたってより良い防音を可能とする音響パネルも提案されている(特許文献2参照)。
特許文献2は、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板と、微細孔を設けない無孔板とを密着積層、又は所定距離を隔てて相対配置してなる音響パネルを開示している。また、特許文献2は、音響パネルを複数所定距離隔てて音源に対向して配置した吸音、及び遮音装置を開示している(要約、請求項1、段落[0059]、図15等参照)。
特許文献2では、微細孔板に対して無孔板を設けることにより、更には、無孔板の面密度を増大させることにより、吸音率のピークが低周波音域に移行することが分かるとしている。また、特許文献2では、低周波域においても共振を生じることなく、低周波域全域において防音を可能としている。また、特許文献2では、低周波域から高周波域にわたって従来の音響パネル、及び吸音及び遮音装置よりも大きな透過損失を有し、装置全体をよりコンパクトに構成できるため設置場所の制約が少ないと共にコスト低減化を図ることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4832245号公報
【特許文献2】特開2005−273273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、低周波音は、一般のウレタンやグラスウールのような広帯域防音材で吸収することが困難であることはよく知られている。特定音を吸収するためのデバイスとして、特許文献1のような膜型吸音材、又はヘルムホルツ吸音材があるが、これらも低周波になるほど背面体積を大きくする必要があり、構造サイズが大きくなるという問題があった。
また、騒音は、多種多様であり、例えば同じ規格のモータやファンからの騒音であっても、機器ごとの個体差によって騒音周波数には差が現れる。それに対応するために、吸音周波数を変化させる必要がある。しかしながら、特許文献1のような膜型吸音材では膜厚及び膜の張力が、ヘルムホルツ吸音材では貫通孔の大きさ等が吸音周波数の支配パラメータであり、連続的に変化させることは困難であるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2では、微細孔板に対して無孔板を設けた音響パネルとし、2つの音響パネルを所定距離隔てて音源に対向して配置することにより、低周波域においても共振を生じることなく、低周波域全域において防音を可能としている。しかしながら、特許文献2では、無孔板のみにおいて生じる透過損失が0dBとなる共振を無くすことはでき、かつ上述したような機器毎に異なる低周波域における騒音を満遍なくある程度防音できるものの、低周波側の機器毎に異なる特定の周波数を強く遮音することができないという問題があった。
【0007】
また、機器内防音(自動車、及びオフィス機器等)、又は建材等ではスペース、及び軽量化が重要な課題であり、結果として低周波側の防音が困難となっているという問題があった。よって、従来同等のサイズでより低周波側の防音ができる技術が望まれている。
また、機器防音においては、機器の個体差による騒音ばらつきや経年劣化による騒音の周波数変化が、また、一般の騒音においても様々な周波数が存在する。それに対して、従来の防音材では、防音する周波数は、サイズ、張力、及び/又は孔径等の簡単には調整しにくい量を変える必要があるという問題があった。よって、防音する周波数を簡単に調整する機構が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、簡単な構成によって低周波側の音を防音する、即ちターゲットとなるより低周波数の音を選択的に強く遮蔽することができ、かつ小型軽量であるとともに、その周波数特性を容易に変化させることができる防音構造を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記目的に加え、このような防音構造を用い、外部の騒音環境に応じて防音の中心周波数を簡単に調整することができる防音システムを提供することにある。
なお、本発明において、「防音」とは、音響特性として、「遮音」と「吸音」の両方の意味を含むが、特に、「遮音」を言う。「遮音」は、「音を遮蔽する」こと、即ち「音を透過させない」ことをいう。したがって、「遮音」は、音を「反射」すること(音響の反射)、及び音を「吸収」すること(音響の吸収)を含めて言う。(三省堂 大辞林(第三版)、及び日本音響材料学会のウェブページのhttp://www.onzai.or.jp/question/soundproof.html、並びにhttp://www.onzai.or.jp/pdf/new/gijutsu201312_3.pdf参照)
以下では、基本的に、「反射」と「吸収」とを区別せずに、両者を含めて「遮音」及び「遮蔽」と言い、両者を区別する時に、「反射」及び「吸収」と言う。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様の防音構造は、2以上の防音ユニットを有する防音構造であって、各防音ユニットは、開口部を有する枠と、枠の開口部に取り付けられた吸音部材と、を有し、隣接する2つの防音ユニットは、それぞれの吸音部材の少なくとも一部同士を対向させて配置され、少なくとも一部が対向する吸音部材は、互いに離間しており、少なくとも一部が対向する吸音部材同士の平均距離は、20mm未満であることを特徴とする。
【0010】
ここで、吸音部材は、音に対して振動する膜であり、膜は、枠の開口部を覆い、かつ枠に固定されていることが好ましい。
また、吸音部材は、通気シート構造であることが好ましい。
また、吸音部材は、少なくとも一個以上の第1貫通孔が設けられている板、又は膜であり、第1貫通孔は、口径0.25mm超の貫通孔であり、板、又は膜は、枠の開口部を覆い、かつ枠に固定されていることが好ましい。
また、吸音部材は、口径0.1μm〜250μmの微細な第2貫通孔を複数個備える板状部材であることが好ましい。
また、吸音部材は、繊維シートであることが好ましい。
【0011】
また、2以上の防音ユニットの内の少なくとも一つの防音ユニットは、吸音部材を有する面以外は閉じられていることが好ましい。
また、2以上の防音ユニットの内の少なくとも一つの防音ユニットにおいては、吸音部材を有する面に向かい合う面の少なくとも一部が開放されていることが好ましい。
また、2以上の防音ユニットの内の少なくとも一つの防音ユニットは、互いに向かい合う2面に吸音部材を有することが好ましい。
また、2以上の防音ユニットの内の少なくとも一つの防音ユニットにおいて、隣接する2つの防音ユニットの吸音部材が向かい合う面の側面の少なくとも一部が塞がれていることが好ましい。
【0012】
また、2以上の防音ユニットの内の少なくとも一つの防音ユニットにおいて、枠の内部に多孔質吸音体または繊維状吸音体を含むことが好ましい。
また、2以上の防音ユニットの内の少なくとも一つの防音ユニットは、構造物の壁に配置されていることが好ましい。
また、隣接する2つの防音ユニットを1組の防音ユニットとして、複数組の防音ユニットが組み合わされて防音壁として機能することが好ましい。
また、2以上の防音ユニットは、筒状部材内に配置され、筒状部材の内側の孔部の一部は、開口されていることが好ましい。
また、2以上の防音ユニットの内の少なくとも一つの防音ユニットは、筒状部材の内側の壁に配置されることが好ましい。
また、2以上の防音ユニットは、周期的に配列されていることが好ましい。
また、隣接する2つの防音ユニットを含む2以上の防音ユニットを単位ユニットして、複数の単位ユニットが配置されていることが好ましい。
【0013】
また、更に、隣接する2つの防音ユニットの一方の吸音部材を他方の吸音部材に対して相対的に移動させる移動機構を有し、移動機構は、隣接する2つの防音ユニットの吸音部材同士の距離を変化させることが好ましい。
また、移動機構は、レール及び隣接する2つの防音ユニットの少なくとも一方の防音ユニットを載置して、レール上を走行する車輪を備えるレール走行機構であることが好ましい。
また、移動機構は、ボールねじ、及び隣接する2つの防音ユニットの少なくとも一方の防音ユニットが取り付けられ、ボールねじに螺合するナットを備えるねじ移動機構、又は隣接する2つの防音ユニットの少なくとも一方の防音ユニットが取り付けられたラック、及びラックと噛合するラックアンドピニオン機構であることが好ましい。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の態様の防音システムは、上記の防音構造と、防音構造の周囲環境の騒音を計測する計測部と、計測部で計測された騒音の周波数を解析する解析部と、を有し、解析部の解析結果に応じて隣接する2つの防音ユニットの吸音部材同士の距離を変化させることを特徴とする。
【0015】
ここで、移動機構は、更に駆動源、及び駆動源の駆動を制御する制御部を備える自動移動機構であり、解析部は、解析結果に応じて隣接する2つの防音ユニットの少なくとも一方の防音ユニットの移動量を決定し、制御部は、決定された移動量に応じて駆動源の駆動を制御して、隣接する2つの防音ユニットの少なくとも一方の防音ユニットを自動的に移動させて、隣接する2つの防音ユニットの吸音部材同士の距離を変化させることが好ましい。
また、計測部を複数備え、解析部は、複数の計測部でそれぞれ計測された騒音の周波数をそれぞれ解析し、解析結果に応じて、隣接する2つの防音ユニットの少なくとも一方の防音ユニットの移動量を決定することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡単な構成によって低周波側の音を防音する。即ち、本発明によれば、ターゲットとなるより低周波数の音を選択的に強く遮蔽することができ、かつ小型軽量であるとともに、その周波数特性を容易に変化させることができる。
また、本発明によれば、外部の騒音環境に応じて防音の中心周波数を簡単に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る防音構造の一例を模式的に示す断面図である。
図2図1に示す防音構造のII−II線矢視図である。
図3図1に示す防音構造のIII−III線で切断した模式的断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図5A】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図5B】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図5C】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図8A】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図12】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図13】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図14】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図15】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図16】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図17】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図18】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図19】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図20】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図21図1に示す防音構造の防音ユニットとして用いられる振動膜型吸音体の一例の模式的断面図である。
図22】本発明の防音構造に用いられる振動膜型吸音体の他の例の模式的断面図である。
図23図22に示す振動膜型吸音体の模式的平面図である。
図24】本発明の防音構造に用いられるヘルムホルツ吸音体の一例の模式的断面図である。
図25図24に示すヘルムホルツ吸音体の模式的平面図である。
図26】本発明の防音構造に用いられる微細貫通孔吸音体の一例の模式的断面図である。
図27図26に示す微細貫通孔吸音体の模式的平面図である。
図28図26に示す微細貫通孔吸音体の微細穿孔板の製造方法の一例を説明するための模式的な断面図である。
図29図26に示す微細貫通孔吸音体の微細穿孔板の製造方法の一例を説明するための模式的な断面図である。
図30図26に示す微細貫通孔吸音体の微細穿孔板の製造方法の一例を説明するための模式的な断面図である。
図31図26に示す微細貫通孔吸音体の微細穿孔板の製造方法の一例を説明するための模式的な断面図である。
図32図26に示す微細貫通孔吸音体の微細穿孔板の製造方法の一例を説明するための模式的な断面図である。
図33】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図34】本発明の一実施形態に係る防音システムの一例の模式的断面図である。
図35】本発明の他の実施形態に係る防音システムの一例の模式的断面図である。
図36】本発明の実施例1の防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
図37】本発明の実施例1〜4の防音構造の遮音特性を示すグラフである。
図38】本発明の実施例5〜8の防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
図39】本発明の実施例9〜10の防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
図40】本発明の実施例12〜15の防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
図40A】本発明の実施例15A〜15Bの防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
図41】本発明の実施例16〜18の防音構造の遮音特性を示すグラフである。
図42】本発明の実施例4及び19の防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
図43】本発明の実施例16及び20の防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
図44】本発明の実施例21及び22の防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
図45】本発明の他の実施形態に係る防音構造の一例の模式的断面図である。
図46】本発明の実施例23〜27の防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
図47】本発明の実施例51〜54の防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
図48】防音構造の単セルからの周波数シフト量と層間距離との関係を示すグラフである。
図49】本発明の実施例55〜58の防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
図50】本発明の参考例12及び13の防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
図51】本発明の実施例59〜63の防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
図52】本発明の参考例14〜16の防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
図53】本発明の実施例67〜69の防音構造の音の吸収特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る防音構造、及び防音システムを添付の図面に示す好適実施形態を参照して詳細に説明する。
本発明の防音構造は、振動膜型吸音体、ヘルムホルツ吸音体、繊維シート型吸音体、又は微細貫通孔吸音体等の枠に取り付けられた膜、又は板等の吸音部材からなる防音ユニットの膜面又は板面等の吸音部材の表面同士を近接させた配置することで、共鳴周波数が低周波側にシフトし、同一体積で低周波側の音を防音できることを特徴とする。
ここで、振動膜型吸音体は、膜の背面に閉空間体積があり、膜振動を利用する共鳴型吸音体(以下、本明細書では振動膜型防音セルという)である。また、ヘルムホルツ吸音体は、貫通孔の開いた板、又は膜の背面に閉空間体積があり、ヘルムホルツ共鳴を利用する共鳴型吸音体(以下、本明細書ではヘルムホルツ防音セルという)である。また、繊維シート型吸音体は、繊維シートの背面に閉空間体積がある吸音体(以下、本明細書では繊維シート型防音セルという)である。また、微細貫通孔吸音体は、0.1〜250μmの微細貫通孔が複数開いた膜、又は板の背面に閉空間体積がある吸音体(以下、本明細書では微細貫通孔防音セルという)である。
本発明においては、低周波側へシフトする周波数量は、2つの吸音部材間の距離に依存し、距離が小さくなるほど低周波側にシフトする。よって、2つの吸音部材間の距離を調整するだけで、防音周波数を調整可能であるという特徴も有する。したがって、レール等のような距離を調整する機構を防音ユニットの移動機構として組み合わせることで、簡単に防音する周波数を変化させることができる。また、マイクロフォン等で騒音を計測し、解析装置等でその周波数を解析することで、解析結果に応じて2つの吸音部材間の距離を調整することにより、適切な防音を達成することができる。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る防音構造の一例を模式的に示す断面図である。図2は、図1に示す防音構造のII−II線矢視図である。図3は、図1に示す防音構造のIII−III線で切断した模式的断面図である。
図1図2及び図3に示す本発明の防音構造10は、2つの防音ユニット12(12a,12b)を有する。
各防音ユニット12(12a,12b)は、開口部13(13a,13b)を有する枠14(14a,14b)と、枠14の開口部13の一方を覆うように枠14に固定される吸音部材16(16a,16b)と、枠14の開口部13の他方を覆うように枠14に固定される背面板18(18a,18b)とを有する。
【0020】
図示例の防音構造10においては、2つの防音ユニット12aと12bとは、それぞれの吸音部材16aと16bとが近接して対向するように配置され、吸音部材16aと16bの間には直方体形状のスリット20が形成される。なお、本発明では、2つの吸音部材16aと16bとが近接しているとは、2つの吸音部材16a及び16b同士の平均距離が、20mm未満となるように近づいているが、離間していることを言う。
ところで、本発明では、吸音部材同士の距離、例えば2つの吸音部材16a及び16b同士の距離は、2つの吸音部材16a及び16bとの間の距離、又は間隔を言う。しかしながら、2つの吸音部材16a及び16bは、後述するように、両端面同士が完全に対向していなくも良い。例えば、2つの吸音部材16a及び16bは、一方に対して他方が、並進して(平行に位置ずれして)いても良く、回転していても良く、又は位置ずれしていると共に回転していても良い。したがって、本発明においては、吸音部材同士の距離は、吸音部材同士の平均距離で表す。なお、吸音部材同士の平均距離についての詳細については、後述する。
【0021】
本発明は、本発明者らが困難な低周波域での防音について鋭意研究を重ねた結果、従来知られていなかった吸音部材の表面(吸音面)を近づけることで吸音周波数が低周波シフトすることを知見することによりなされたものである。即ち、本発明は、20mm未満で、この低周波シフトの効果が起こり、吸音部材同士の平均距離が小さくなるほど顕著に効果が現れることを知見することによりなされたものである。従来、これらの知見がなされていなかったのは、音響の波長は、このギャップサイズと比較して極めて大きいためであると考えられる。また、吸音体は、主に音に相対して配置されるか、少なくとも音が通過する面を向いて配置される(管内で壁に水平方向に吸音部材を置く構造など)ことが一般的であり、吸音部材同士を近づけて音が通過する面から隠すような配置は一般的ではなかったために、想到することが容易ではなかったためと考えられる。
【0022】
したがって、本発明においては、2つの吸音部材16aと16bとの吸音部材同士の平均距離は、20mm未満に限定する必要がある。
その理由は、2つの吸音部材16a及び16b同士の平均距離が20mm以上になると、吸音周波数の低周波シフトの効果が見られなくなるからである。
なお、本発明においては、吸音部材16a及び16b同士の平均距離は、15mm以下であることが望ましく、10mm以下であることがより望ましく、5mm以下であることが更に望ましく、2mm以下であることが最も望ましい。
【0023】
なお、以下では、防音構造10の2つの防音ユニット12a及び12b、開口部13a及び13b、枠14a及び14b、吸音部材16a及び16b、並びに背面板18a及び18b等の構成要素については、同一の構成であって、特に区別を要しない場合には、区別せずに、まとめて、それぞれ防音ユニット12、開口部13、枠14、吸音部材16、並びに背面板18等として説明する。
本発明において用いられる防音ユニット12は、開口部13を有する枠14と、枠14の開口部13に取り付けられた膜、又は板などの吸音部材16と、を有し、吸音部材16と、その背面に枠14によって形成される空間、好ましくは閉空間とによって吸音できる防音セルであれば、特に限定されずどのような防音セルでも良い。防音ユニット12としては、例えば、膜振動によって吸音する振動膜型防音セル、貫通孔によるヘルムホルツ共鳴によって吸音するヘルムホルツ防音セル、及び微細貫通孔によって吸音する微細貫通孔防音セル等を挙げることができる。
なお、これらの防音セルの構成の詳細については、後述する。
【0024】
図1に示す防音構造10においては、2つの防音ユニット12a及び12bは、吸音部材16a及び16bを対向させて、位置ずれすることなく平行に配置されているが、本発明はこれに限定されない。
例えば、図4に示す防音構造10aのように、吸音部材16aと16bとの少なくとも一部同士が対向して両者の対向部分があれば、所定のシフト量δだけ位置ずれしていても良い。吸音部材16aと16bとの対向部分には、直方体形状のスリット20aが形成されるが、スリット20aの長さ(対向長さ)は、図1に示すスリット20の長さより、位置ずれシフト量δの長さだけ短い。
このように、一方の吸音部材16aに対して他方の吸音部材16bを位置ずれさせることにより、音の吸収がピークとなる吸収ピーク周波数を変化させることができる。しかしながら、吸収ピーク周波数をより低周波化させるためには、シフト量δは小さい方が好ましく、位置ズレが無い方がより好ましい。
【0025】
また、図5に示す防音構造10bのように、一方の吸音部材16aに対して他方の吸音部材16bが所定角度θだけ傾斜していても良い。勿論、吸音部材16aと16bとの少なくとも一部同士が対向していれば、一方の吸音部材に対して他方の吸音部材が、所定のシフト量δだけ位置ずれ(並進)するとともに、所定角度θだけ傾斜していても良い。この場合にも、吸音部材16aと16bとの対向部分には略台形状のスリット20bが形成される。
なお、位置ずれが無く(シフト量δ=0)、所定角度θだけ傾斜している場合には、吸音部材16aに対して吸音部材16bの中央部を中心にして回転させていることになる。このため、吸音部材16aと16b同士の平均距離は、吸音部材16aと16bとが位置ずれ(並進)も回転もしていない場合と同じになり変化しない。このため、吸収ピーク周波数は、変化しない。これは、吸音部材16aと16bが完全に平行でなくとも、低周波化が実現できることを示しており、本発明の防音構造の製造が容易であり、製造適性が高いことを示している。
【0026】
本発明においては、一方の吸音部材に対して他方の吸音部材が、所定のシフト量δだけ位置ずれ(並進)するとともに所定角度θだけ傾斜している場合がある。このような場合であっても、一方の吸音部材に対して他方の吸音部材が対向しているとは、吸音部材間に中心線を引いた時に、一方の吸音部材の端部から中心線に垂直な線が他方の吸音部材に当接し、他方の吸音部材の端部から中心線に垂直な線が一方の吸音部材に当接することを言う。
したがって、本発明においては、吸音部材同士の平均距離を以下のように定義する。
本発明においては、まず、2つの防音ユニットが相対する配置となるように並進操作をした上での、完全に対向する2つの防音ユニットの吸音部材に関する鏡像面を決定する。そして、各吸音部材から鏡像面に垂直な線を下ろした時の2つの吸音部材からの垂線の長さda及びdbで定義する時、2つの吸音部材の間の距離(垂線の長さの和da+db)の、吸音部材面全体における平均値を「吸音部材同士の平均距離」と定義する。
【0027】
したがって、まず、図5Aに示すように、2つの防音ユニット12a及び12bが回転も並進もしていない場合は、吸音部材同士の平均距離は、2つの防音ユニット12aと12bの吸音部材16aと16bとの間の距離(吸音部材16a及び16bの表面から鏡像面21への垂線の長さdaとdbの和=da+db=2da=2db)と一致する。
次に、図5Bに示すように、吸音部材同士の平均距離は、2つの防音ユニット12a及び12bの一方が並進している場合は、図中点線で示すように、並進した分を元に戻した配置を想定し、その場合の鏡像面21aへの垂線の長さda及びdbで定義する。
次に、図5Cに示すように、2つの防音ユニット12a及び12bの一方が回転している場合は、吸音部材16a及び16bに関する鏡像面21bも吸音部材面と平行ではなくなるが、鏡像面21bへの垂線の長さda及びdbで定義する。
【0028】
上記のいずれの場合にも、それぞれ吸音部材面全体で平均距離を取ることで、例えば、2つの防音ユニット12a及び12bの吸音部材16a及び16bのサイズが異なる場合においても、「吸音部材同士の平均距離」を定義できる。
即ち、防音ユニット12aの吸音部材16aから鏡像面(21、21a、21b)への垂線の平均距離をD_A、防音ユニット12bの吸音部材16bから鏡像面(21、21a、21b)への垂線の平均距離をD_Bとした時に、「吸音部材同士の平均距離」は、D_AとD_Bとの和(=D_A+D_B)として定義する。
なお、2つの防音ユニットの一方が、回転かつ並進している場合にも、並進成分は戻したうえで回転込みの鏡像面を決定することで、「吸音部材同士の平均距離」を定義できる。
【0029】
また、図1図4及び図5に示す防音構造10、10a及び10bの防音ユニット12a及び12bでは、枠14a及び14bの各厚みは、どの辺においても一定であり、吸音部材16a及び16bは、それぞれ枠14a及び14bにその厚みの方向に対して垂直に取り付けられているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図6に示す防音構造10cのように、枠14c及び14dの一方の開口部13c1及び13d1を枠の厚み方向に垂直な方向に対して所定角度θ1だけ傾斜させ、傾斜した開口部13c1及び13d1にそれぞれ吸音部材16c及び16dを取り付けて、吸音部材16c及び16dが平行に対向するように、台形状の防音ユニット12c及び12dを配置しても良い。防音ユニット12c及び12dでは、吸音部材16c及び16dの間には、スリット20cが形成されている。なお、枠14c及び14dの他方の開口部13c2及び13d2は、図1に示す防音構造10と同様に、枠の厚み方向に垂直に形成されており、背面板18c及び18dが、それぞれ開口部13c2及び13d2を覆うように枠14に固定されている。
このように、吸音部材16c及び16dを傾斜させて配置することにより、吸音部材16c及び16dのサイズ(面積)が大きくすることができる。その結果、吸収ピーク周波数の低周波化させることができるので、防音構造のサイズを増大させることなく、小型コンパクトな防音構造で、吸収ピーク周波数の低周波化を図ることができる。
なお、この場合にも、一方の吸音部材16cに対して他方の吸音部材16dが、所定のシフト量だけ位置ずれするとともに平行から所定角度だけ傾斜していても良い。
【0030】
図1に示す防音構造10においては、防音ユニット12a及び12bの吸音部材16a及び16bの間のスリット20は、吸音部材16a及び16bの表面を除く全ての方向に開放されているが、本発明はこれに限定されない。
図7に示す防音構造10eのように、吸音部材16aと16bとが向かい合う面の側面の少なくとも一部、例えば吸音部材16aと16bとの間に形成されるスリット20の図中下側の側面が板22によって塞がれているのも好ましい。
また、図8、及び図8Aに示す防音構造10fのように、吸音部材16aと16bとの間に形成されるスリット20への音の侵入方向(例えば図中上側を除く、図中下側)の側面が板22によって、かつ図中前後方向の両側面がそれぞれ板23によって(即ち3方向の面が板22及び23によって)塞がれているのも好ましい。なお、板22及び23は、背面板18と同様な材料で製作することができる。
このように、スリット20に対し、音の侵入方向以外の面を塞ぐことによって、音圧がスリット20内で高まることで状態が変化し、低周波シフトを生じさせることができる。
【0031】
本発明においては、図示例の防音構造10、及び10a〜10fのように、防音ユニット12(12a及び12b)は、吸音部材16(16a及び16b)が取り付けられている面以外は、枠14(14a及び14b)と背面板18(18a及び18b)とによって閉じられていることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。
図9に示す防音構造10gに示すように、防音ユニット12e及び12fは、吸音部材16a及び16bが取り付けられている面(開口部13a及び13bの一方の端面)に向かい合う対向面(開口部13a及び13bの他方の端面)19a及び19bの少なくとも一部、図示例では全部が開放されていることも好ましい。防音構造10gでは、対向面19a及び19bは、全部が開放されており、その構造を単純化することができる。
また、図10に示す防音構造10hに示すように、防音ユニット12g及び12hは、吸音部材16a及び16bが取り付けられている面に向かい合う面にも、それぞれ吸音部材16a及び16bが取り付けられていることも好ましい。防音構造10hでも、図1に示す防音構造10と同様な効果を得ることができる。
【0032】
なお、図示例の防音構造10、及び10a〜10hにおいては、2つの防音ユニット12(12a及び12b、12c及び12d、12e及び12f、並びに12g及び12h)は、同一であるが、本発明はこれに限定されず、一方の防音ユニット12と他方の防音ユニット12とは異なる防音ユニットであっても良い。
ここで、隣接する2つの防音ユニット12が異なる場合とは、2つの防音ユニット12の形状、又は構造が互いに異なる場合であっても良いし、2つの防音ユニット12として用いられる各防音セルが互いに異なる場合であっても良い。ここで、2つの防音ユニット12の形状、又は構造が互いに異なる場合は、例えば2つの防音ユニット12のそれぞれの枠14が異なる、又はそれぞれ対向して配置される2つの吸音部材16が異なる場合である。また、2つの防音ユニット12として用いられる各防音セルが互いに異なる場合は、例えば2つの防音ユニット12のそれぞれの枠14が異なる、又はそれぞれ対向して配置される2つの吸音部材16が異なる場合である。なお、各防音セルが互いに異なる場合については、後述する。
また、図示例の防音構造10、及び10a〜10hにおいては、互いに向き合う、即ち対向して隣接する2つの防音ユニット12からなるものであるが、本発明はこれに限定されない。本発明では、隣接する2つの防音ユニット12を含んでいれば、3つ以上の防音ユニット12からなるものであっても良い。
【0033】
例えば、図11に示す防音構造11のように、図1に示す防音構造10の2つの防音ユニット12a及び12bを1組の防音ユニット組24として構造物の壁26に配置して良い。なお、図11に示す例では、2つの防音ユニット12a及び12bの防音ユニット対を1組の防音ユニット組24として、1組目の防音ユニット組24の防音ユニット12bの背面板18bと、2組目の防音ユニット組24の防音ユニット12aの背面板18aとを接触させて一体化して、2組の防音ユニット組24を壁26に配置しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、2以上の防音ユニットを1組の防音ユニット組としても良いし、また、3組以上の防音ユニット組を壁に配置しても良い。また、隣接する防音ユニット組の背面板同士を離間させて配置しても良いし、完全に一体化させて1つの背面板としても良い。
【0034】
また、図12に示す防音構造11aのように、図1に示す防音構造10の2つの防音ユニット12a、及び12bを1組の防音ユニット組24として複数組(図示例では、4組)の防音ユニット組24を組み合わせることで防音壁28として機能させることが好ましい。
また、図13に示す防音構造11bのように、図10に示す防音構造10の2つの防音ユニット12g及び12hを1組の防音ユニット組24aとして複数組(図示例では、3組)の防音ユニット組24aを組み合わせることで防音壁28aとして機能させることが好ましい。この場合には、2つの防音ユニット12g及び12hは、いずれも枠14の両面の開口部13に吸音部材16を備えているので、隣接する防音ユニット組の防音ユニット12hと12gとは、離間させて配置するのが良い。また、防音壁28aとして機能する全ての防音ユニット12を防音ユニット組24aとして用いる必要はなく、1つの防音ユニット12g又は12hの一方を用いる場合があっても良い。
【0035】
ここで、図11図13に示す防音構造11、11a及び11bにおいては、防音ユニット組24及び24aを周期的に配置することが好ましい。また、これらの防音ユニット組24及び24aを単位ユニットとして、複数の単位ユニットを配置して防音構造とすることが好ましい。
なお、図11及び図12に示す防音構造11、及び11aにおいて、1組の防音ユニット組24とするのは、図1に示す防音構造10の2つの防音ユニット12a及び12bに限定されず、図4図10に示す防音構造10a〜10fの2つの防音ユニット12a及び12b、及び12c及び12d、12e及び12f、又は12g及び12hであっても良い。なお、図9に示す2つの防音ユニット12e及び12fを用いる場合には、裏面の開口部同士を連結すればよい。また、図10に示す2つの防音ユニット12g及び12hを用いる場合には、図13に示す防音構造11bのように、隣接する防音ユニット組の防音ユニット12hと12gとは、離間させて配置するのが良い。
以下の説明においては、図1に示す防音構造10の2つの防音ユニット12a及び12bを代表例として説明するが、上記と同様に、図4図10に示す防音構造10a〜10fの2つの防音ユニット12a及び12b、及び12c及び12d、12e及び12f、又は12g及び12hを用いても良いのは勿論である。
【0036】
また、図14に示す防音構造30のように、図1に示す防音構造10の2つの防音ユニット12a及び12bを管状部材32内に配置しても良い。なお、矢印は、音の侵入方向を示す。この場合には、2つの防音ユニット12a及び12bは、その吸音部材16aと16bとの間のスリット20が、管状部材32の長手方向(即ち、音の侵入方向)に沿って、(好ましくは音の侵入方向に平行になるように)配置されることが好ましい。
なお、図15に示す防音構造30aのように、管状部材32内に、図1に示す防音構造10の2つの防音ユニット12a及び12bからなる防音ユニット組24を複数組(図示例では2組)、長手方向に沿って配置することが好ましい。この場合にも、防音ユニット組24は、そのスリット20が、管状部材32の長手方向(矢印で示す音の侵入方向)に沿って(好ましくは音の侵入方向に平行になるように)配置されることが好ましい。防音ユニット組24を増やすことにより、吸収ピーク周波数における吸収率のピーク値を増大させることができる。
【0037】
更に、図16に示す防音構造30bのように、管状部材32内に、図1に示す防音構造10の2つの防音ユニット12a及び12bからなる防音ユニット組24を複数組(図示例では2組)、長手方向に沿って配置し、一方の防音ユニット組24の2つの防音ユニット12a及び12bの吸音部材16aと16bとの間の間隔(即ちスリット20の幅)を他方の防音ユニット組24と異ならしめても良い。なお、この場合にも、2組の防音ユニット組24のスリット20は、幅が異なるものの、管状部材32の長手方向(矢印で示す音の侵入方向)に沿って伸びる、好ましく音の侵入方向には平行になる。各防音ユニット組24のスリット20の幅が異なるため、各防音ユニット組24の吸収ピーク周波数が少し異なる。その結果、複数(例えば2つ)の吸収ピーク周波数が存在することになり、低周波側において吸収の広帯域化を図ることができる。
【0038】
また、図17に示す防音構造30cのように、図1に示す防音構造10の2つの防音ユニット12a及び12bを、管状部材32内に、その吸音部材16aと16bとの間のスリット20が、管状部材32の長手方向(矢印で示す音の侵入方向)に直交する方向(即ち半径方向)となるように、配置しても良い。
図17に示す防音構造30cのように、図14に示す防音構造30に対して、2つの防音ユニット12a及び12bの配置を90°変更しても、配置方法によらず、吸収ピーク周波数はほとんど変化しないので、防音ユニットの向きに関するロバスト性がある。
更に、図18に示す防音構造30dのように、図1に示す防音構造10の2つの防音ユニット12a及び12bからなる防音ユニット組24を複数組(図示例では2組)、管状部材32内に、その吸音部材16aと16bとの間のスリット20が、管状部材32の長手方向(矢印で示す音の侵入方向)に直交する方向(即ち半径方向)となるように、長手方向に沿って並べて配置しても良い。
なお、この場合にも、防音ユニット組24を増やすことにより、吸収ピーク周波数における吸収率のピーク値を増大させることができる。
なお、図14図18に示す防音構造30、及び30a〜30dにおいては、2つの防音ユニット12a及び12bからなる防音ユニット組24は、管状部材32内の内側の孔部33の略中央に配置され、管状部材32の内側の壁面(即ち内壁面32a)と、防音ユニット12a及び12bとの間は、長手方向(矢印で示す音の侵入方向)に沿って開口されていることが好ましい。
【0039】
また、図19に示す防音構造30eのように、図1に示す防音構造10の2つの防音ユニット12a及び12bからなる防音ユニット組24を複数組(図示例では4組)、管状部材32内に、その内壁面32aに沿って配置しても良い。この場合には、各防音ユニット組24の2つの防音ユニット12a及び12bは、共に壁に沿って配置され、その吸音部材16aと16bとの間のスリット20が、管状部材32の長手方向(即ち、音の侵入方向)に沿って(好ましくは音の侵入方向に平行になり)、かつ管状部材32の孔部33の中心に向かうように配置される。
なお、図20に示す防音構造30fのように、図1に示す防音構造10の2つの防音ユニット12a及び12bからなる防音ユニット組24を複数組(図示例では4組)、管状部材32内に、その内壁面32aに沿って配置しても良い。この場合には、各防音ユニット組24の2つの防音ユニット12a及び12bの一方(図示例では防音ユニット12b)が壁に沿って配置され、その吸音部材16aと16bとの間のスリット20が、管状部材32の長手方向(即ち音の侵入方向)に沿って(好ましくは音の侵入方向に平行になり)、かつ管状部材32の孔部33の円周方向に向かうように配置される。
図19及び20に示す防音構造30e及び30fでは、管状部材32の孔部33の中央部、及び隣接する防音ユニット組24の間は、長手方向(矢印で示す音の侵入方向)に沿って開口されている。
【0040】
次に、本発明において防音ユニット12として用いられる防音セルの構成について説明する。
(振動膜型防音セル)
まず、膜の背面に閉空間体積がある共鳴型防音セルである振動膜型防音セルについて説明する。
図21に示す防音セル40は、膜の背面も閉空間体積(空洞)を背後空気層として膜振動によって吸音作用を生させて吸音する振動膜型防音セルであって、図1に示す防音構造10の防音ユニット12(12a及び12b)として用いられる。
防音セル40は、開口部13を有する枠14と、枠14の開口部13の一方の側に取り付けられ、吸音部材16として機能する膜42と、枠14の開口部13の他方の側に取り付けられた背面板18とを有する。
【0041】
枠14は、厚みのある板状部材である枠材で環状に囲むように形成された、内部に開口部13を有し、少なくともの一方の側において開口部13を覆うように膜42を固定するためのもので、この枠14に固定された膜42の膜振動の節となるものである。したがって、枠14は、膜42に比べて、剛性が高く、具体的には、単位面積当たりの質量及び剛性は、共に高い必要がある。
枠14の形状は、膜42の全外周を抑えることができるように膜42を固定できる閉じた連続した形状であることが好ましいが、本発明は、これに限定されない。枠14が、これに固定された膜42の膜振動の節となるものであれば、一部が切断され、不連続な形状であっても良い。即ち、枠14の役割は、膜42を固定して膜振動を制御することにあるため、膜42が膜振動をすることができれば良いので、枠14に切れ目が入っていても、接着していない部位が存在していても効果を発揮する。
【0042】
また、枠14によって形成される開口部13の形状は、平面形状で、図2及び図3に示す例では正方形であるが、本発明においては、特に制限的ではない。例えば、長方形、ひし形、又は平行四辺形等の他の四角形、正三角形、二等辺三角形、又は直角三角形等の三角形、正五角形、又は正六角形等の正多角形を含む多角形、円形、若しくは楕円形等であっても良いし、不定形であっても良い。なお、枠14の開口部13の両側の端部は、共に閉塞されておらず、共にそのまま外部に開放されている。この開放された開口部13の少なくとも一方の端部に開口部13を覆うように膜42が枠14に固定される。
また、枠14のサイズは、平面視のサイズであり、その開口部13のサイズとして定義できるが、図2及び図3に示す正方形のような正多角形、又は円の場合には、その中心を通る対向する辺間の距離、又は円相当直径と定義することができ、多角形、楕円又は不定形の場合には、円相当直径と定義することができる。本発明において、円相当直径及び半径とは、それぞれ面積の等しい円に換算した時の直径及び半径である。
なお、本発明の防音セル40において、枠14のサイズは、全ての枠14において一定であっても良いが、異なるサイズ(形状が異なる場合も含む)の枠が含まれていても良く、この場合には、枠14のサイズとして、枠14の平均サイズを用いれば良い。
【0043】
このような枠14のサイズは、特に制限的ではない。本発明の防音構造10、10a〜10h、11、11a、11b、30a〜30f(以下、防音構造10で代表する)が防音のために適用される防音対象物、例えば、複写機、送風機、空調機器、換気扇、ポンプ類、発電機、ダクト、その他にも塗布機、回転機、搬送機など音を発する様々な種類の製造機器等の産業用機器、自動車、電車、航空機等の輸送用機器、冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、テレビジョン、コピー機、電子レンジ、ゲーム機、エアコン、扇風機、PC、掃除機、空気清浄機等の一般家庭用機器などに応じて設定すればよい。
また、この防音構造10自体をパーティションのように用いて、複数の騒音源からの音を遮る用途に用いることもできる。この場合も、枠14のサイズは対象となる騒音の周波数から選択することができる。
【0044】
また、枠14の平均サイズは、防音ユニット12(防音セル40)の吸収ピークにおける回折による音の漏れを防止するために、吸収ピーク周波数に対応する波長サイズ以下であることが好ましい。
例えば、枠14のサイズは、0.5mm〜200mmであることが好ましく、1mm〜100mmであることがより好ましく、2mm〜30mmであることが最も好ましい。
また、枠14の幅(枠幅)及び厚さも、膜42を確実に抑えるように固定することができ、膜42を確実に支持できれば、特に制限的ではない。例えば、枠14のサイズに応じて設定することができる。なお、枠14の厚さは、枠厚ということもでき、図1及び図21に示すように、防音ユニット12(例えば防音セル40)では、吸音部材16(例えば膜42)と背面板18との間に挟まれた枠14の構成部材の長さLtとして定義することができる。また、枠14の幅は、枠幅ということもでき、図1図3及び図21に示すように、防音ユニット12(例えば防音セル40)では、枠14の構成部材の板厚Lwとして定義できる。
【0045】
例えば、枠14の幅は、枠14のサイズが0.5mm〜50mmの場合には、0.5mm〜20mmであることが好ましく、0.7mm〜10mmであることがより好ましく、1mm〜5mmであることが最も好ましい。
枠14の幅が、枠14のサイズに対して比率が大きくなりすぎると、全体に占める枠14の部分の面積率が大きくなり、デバイスとしての防音構造10が重くなる懸念がある。一方、上記比率が小さくなりすぎると、その枠14部分において接着剤などによって膜を強く固定することが難しくなってくる。
また、枠14の幅は、枠14のサイズが、50mm超、200mm以下の場合には、1mm〜100mmであることが好ましく、3mm〜50mmであることがより好ましく、5mm〜20mmであることが最も好ましい。
また、枠14の厚さは、0.5mm〜200mmであることが好ましく、0.7mm〜100mmであることがより好ましく、1mm〜50mmであることが最も好ましい。
なお、枠14の幅及び厚さは、各枠14で異なる幅及び厚さが含まれる場合などは、それぞれ平均幅及び平均厚さで表すことが好ましい。
【0046】
枠14の材料は、膜42を支持でき、上述した防音対象物に適用する際に適した強度を持ち、防音対象物の防音環境に対して耐性があれば、特に制限的ではなく、防音対象物及びその防音環境に応じて選択することができる。例えば、枠14の材料としては、金属材料、樹脂材料、強化プラスチック材料、及びカーボンファイバ等を挙げることができる。金属材料としては、例えばアルミニウム、チタン、マグネシウム、タングステン、鉄、スチール、クロム、クロムモリブデン、ニクロムモリブデン、及びこれらの合金等を挙げることができる。また、樹脂材料としては、例えばアクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリアミドイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルフォン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリイミド、及びトリアセチルセルロース等を挙げることができる。また、強化プラスチック材料としては、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)、及びガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)等を挙げることができる。
また、これらの枠14の材料の複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
膜42は、図1に示す防音構造10の防音ユニット12の吸音部材16として、防音セル40において用いられる。膜42は、枠14の内部の開口部13を覆うように枠14に抑えられるように固定されるもので、外部からの音波に対応して膜振動することにより音波のエネルギを吸収、もしくは反射して防音するものである。そのため、膜42は、空気に対して不浸透性であることが好ましい。
ところで、膜42は、枠14を節として膜振動する必要があるので、枠14に確実に抑えられるように固定され、膜振動の腹となり、音波のエネルギを吸収、もしくは反射して防音する必要がある。このため、膜42は、可撓性のある弾性材料製であることが好ましい。
このため、膜42の形状は、枠14の開口部13の形状であり、また、膜42のサイズは、枠14のサイズ、より詳細には、枠14の開口部13のサイズであるということができる。
【0048】
ここで、膜42の厚さは、音波のエネルギを吸収、もしくは反射して防音するために膜振動することができれば、特に制限的ではないが、音の吸収を低周波側で得るためには薄くすることが好ましい。例えば、膜42の厚さは、本発明では、枠14のサイズ、即ち膜のサイズに応じて設定することができる。
例えば、膜42の厚さは、枠14のサイズが0.5mm〜50mmの場合には、0.005mm(5μm)〜5mmであることが好ましく、0.007mm(7μm)〜2mmであることがより好ましく、0.01mm(10μm)〜1mmであることが最も好ましい。
また、膜42の厚さは、枠14のサイズが、50mm超、200mm以下の場合には、0.01mm(10μm)〜20mmであることが好ましく、0.02mm(20μm)〜10mmであることがより好ましく、0.05mm(50μm)〜5mmであることが最も好ましい。
なお、膜42の厚みは、1つの膜42で厚みが異なる場合などは、平均厚さで表すことが好ましい。
【0049】
また、膜42のヤング率は、膜42が音波のエネルギを吸収、もしくは反射して防音するために膜振動することができる弾性を有していれば、特に制限的ではないが、音の吸収を低周波側で得るためには小さくすることが好ましい。例えば、膜42のヤング率は、本発明では、枠14のサイズ、即ち膜42のサイズに応じて設定することができる。
例えば、膜42のヤング率は、1000Pa〜3000GPaであることが好ましく、10000Pa〜2000GPaであることがより好ましく、1MPa〜1000GPaであることが最も好ましい。
また、膜42の密度も、音波のエネルギを吸収、もしくは反射して防音するために膜振動することができるものであれば、特に制限的ではない。例えば、10kg/m〜30000kg/mであることが好ましく、100kg/m〜20000kg/mであることがより好ましく、500kg/m〜10000kg/mであることが最も好ましい。
【0050】
膜42の材料は、膜状材料、又は箔状材料にした際に、上述した防音対象物に適用する際に適した強度を持ち、防音対象物の防音環境に対して耐性があり、膜42が音波のエネルギを吸収、もしくは反射して防音するために膜振動することができるものであれば、特に制限的ではなく、防音対象物及びその防音環境などに応じて選択することができる。例えば、膜42の材料としては、膜状にできる樹脂材料、膜状にできるゴム材料、箔状にできる金属材料、その他繊維状の膜になる材質の材料、不織布、ナノサイズのファイバーを含むフィルム、薄く加工したポーラス材料、及び薄膜構造に加工したカーボン材料等、薄い構造を形成できる材質又は構造等を挙げることができる。膜状にできる樹脂材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、アクリル(PMMA)、ポリアミドイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルフォン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリイミド、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニリデン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、芳香族ポリアミド、シリコーン樹脂、エチレンエチルアクリレート、酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、及びポリブテン等を挙げることができる。膜状にできるゴム材料としては、例えばシリコーンゴム、及び天然ゴム等を挙げることができる。箔状にできる金属材料としては、例えばアルミニウム、クロム、チタン、ステンレス、ニッケル、スズ、ニオブ、タンタル、モリブデン、ジルコニウム、金、銀、白金、パラジウム、鉄、銅、及びパーマロイ等を挙げることができる。その他繊維状の膜になる材質の材料としては、例えば紙、及びセルロース等を挙げることができる。薄く加工したポーラス材料としては、例えば薄く加工したウレタン、及びシンサレート等を挙げることができる。
【0051】
なお、膜42は、単層でなく、複数層が積層されていても良く、複数層の膜は、単一種類の膜が積層されていても、複数種類が積層されていても良く、いずれも膜42として機能する。複数種類が積層された複数層の膜42としては、例えば金属アルミニウムとPET(ペット)フィルムを積層した「アルペット」、又は、ステンレス鋼(SUS)、銅及びPETフィルムを積層した「パナブリッド」(共にパナック株式会社製)などを用いることができる。
また、膜42は、その膜42自体に錘、及び/又はメタルメッシュ等が取り付けられていても良い。これら場合は、膜振動を変化させて共振周波数が膜単体の共振から、膜及び錘、膜及びメタルメッシュの共振になる。
【0052】
また、膜42は、枠14の開口部13の少なくとも一方の側の開口端を覆うように枠14に固定される。即ち、膜42は、枠14の開口部13の一方の側、又は他方の側、もしくは両側の開口端を覆うように枠14に固定されていても良い。
枠14への膜42の固定方法は、特に制限的ではなく、膜42を枠14に膜振動の節となるように固定できればどのようなものでも良く、例えば、接着剤用いる方法、又は物理的な固定具を用いる方法などを挙げることができる。
接着剤を用いる方法は、接着剤を枠14の開口部13を囲む表面上に接着剤を塗布し、その上に膜42載置し、膜42を接着剤で枠14に固定する。接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤(アラルダイト(登録商標)(ニチバン株式会社製)等)、シアノアクリレート系接着剤(アロンアルフア(登録商標)(東亜合成株式会社製)など)、アクリル系接着剤等を挙げることができる。
物理的な固定具を用いる方法としては、枠14の開口部13を覆うように配置された膜42を枠14と棒等の固定部材との間に挟み、固定部材をネジやビス等の固定具を用いて枠14に固定する方法等を挙げることができる。
【0053】
背面板18は、膜42の背面に枠14によって形成される空間を閉空間とするために、膜42と互いに向き合う、枠14の開口部13の他方の端部に取り付けられる板状部材である。このような板状部材としては、膜42の背面に閉空間を形成することができれば特に制限的ではないが、膜42よりも剛性が高い材料製の板状部材であることが好ましい。例えば、背面板18の材料としては、上述した枠14の材料と同様な材料を用いることができる。また、背面板18の枠14への固定方法は、膜42の背面に閉空間を形成することができれば特に制限的ではなく、上述した膜42の枠14への固定方法と同様な方法を用いれば良い。
また、背面板18は、膜42の背面に枠14によって形成される空間を閉空間とするための板状部材であるので、枠14と一体化されていても良いし、同一材料によって一体的に形成しても良い。
なお、本実施形態は、膜42の背面に閉空間体積がある膜振動及びヘルムホルツ共鳴による防音セルであるので、背面板18を設けること好ましいが、膜42の背面に閉空間体積が無くても、膜振動によって吸音できれば、背面板18を設けなくても良い。
【0054】
図21に示す防音セル40の膜42の背後の空間は完全な閉空間となっているが、本発明はこれに限定されず、膜振動による吸音ができれば、膜42が貫通孔を有しており、膜の少なくとも一部が開放されていても良い。
即ち、図22及び図23に示す防音セル40aのように、防音セル40aの膜42に貫通孔(第1貫通孔)44を設けても良い。このような防音セル40aは、膜振動による吸音作用と、後述するヘルムホルツ共鳴による吸音作用を併せて奏する。
ここで、貫通孔44は、図23に示すように、枠14の開口部13を覆う膜42内に1個又は2個以上穿孔されていれば良い。また、貫通孔44の穿孔位置は、図22に示すように膜42内の真中であっても良いが、本発明はこれに限定されず、膜42の真中である必要はなく、どの位置に穿孔されていても良い。
即ち、単に、貫通孔44の穿孔位置が変わっただけでは、防音セル40aの吸音特性は変化しない。
しかしながら、防音セル40aが膜振動を利用して吸音するものである場合には、貫通孔44は、枠14の開口部13の周縁部の固定端から膜42の面の寸法の20%超離れた範囲内の領域に穿孔されていることが好ましく、膜42の中心に設けられていることが最も好ましい。
また、膜42内の貫通孔44の数は、1個であっても良いが、本発明はこれに限定されず、2個以上(即ち複数)であっても良い。
ここで、防音セル40aにおいて、枠14の開口部13の他方の端部が、背面板が設けられないで、開放されている場合には、通気性の点からは、貫通孔44は、1つの貫通孔44で構成することが好ましい。その理由は、一定の開口率の場合、風としての空気の通り易さは、一つの穴が大きく境界での粘性が大きく働かない場合の方が大きいためである。
【0055】
一方、膜42内に複数の貫通孔44がある時は、防音セル40aの吸音特性は、複数の貫通孔44の合計面積に対応した吸音特性を示す。したがって、膜42内にある複数の貫通孔44の合計面積が、膜42内に1個のみ有する貫通孔44の面積に等しい場合(即ち膜42内の貫通孔44の開口率(開口部13を覆う膜42の面積に対する全貫通孔44の合計面積率(全ての貫通孔44の合計面積の割合))が同一の場合)には、単一貫通孔44と複数貫通孔44で同様の吸音効果が得られるため、ある貫通孔44のサイズに固定しても様々な防音セルを作製することができる。
本実施形態においては、膜42内の貫通孔44の開口率(面積率)は、特に制限的ではなく、吸音特性に応じて適宜設定すれば良いが、0.000001%〜70%であるのが好ましく、0.000005%〜50%であるのがより好ましく、0.00001%〜30%であるのが好ましい。貫通孔44の開口率を上記範囲に設定することにより、選択的に防音するべき防音周波数帯域の中心となる吸音ピーク周波数を適切に調整できる。
【0056】
本発明においては、貫通孔44は、エネルギを吸収する加工方法(例えばレーザ加工)によって穿孔されることが好ましく、又は物理的接触による機械加工方法(例えばパンチング、又は針加工)によって穿孔されることが好ましい。
このため、膜42内の複数の貫通孔44、又は、1個の貫通孔44を同一サイズとすると、レーザ加工、パンチング、又は針加工で穴をあける場合に、加工装置の設定や加工強度を変えることなく連続して穴をあけることができる。
貫通孔44のサイズは、上述した加工方法で適切に穿孔できれば、どのようなサイズでも良く、特に限定されない。
しかしながら、貫通孔44のサイズは、その下限側では、レーザの絞りの精度等のレーザ加工の加工精度、又はパンチング加工もしくは針加工などの加工精度や加工の容易性などの製造適性の点からは、2μm以上でも可能であるが、貫通孔44のサイズが小さすぎると、貫通孔44の透過率が小さすぎるために摩擦が生じる前に音が侵入せず、吸音効果が十分に得られないために、貫通孔44のサイズ(即ち口径は、0.25mm以上)であることが好ましい。
【0057】
一方、これらの貫通孔44のサイズ(口径)の上限値は、枠14のサイズより小さい必要があるので、貫通孔44のサイズの上限値を枠14のサイズ未満に設定すればよい。
本発明では、枠14のサイズは0.5mm〜200mmであることが好ましいので、貫通孔44のサイズ(口径)の上限値も200mm未満となる。しかしながら、貫通孔44が大きすぎると、貫通孔44のサイズ(口径)が大きすぎて貫通孔44の端部で生じる摩擦の効果が小さくなるので、枠14のサイズが大きい場合でも、貫通孔44のサイズ(口径)の上限値は、mmオーダとしておくことが好ましい。通常、枠14のサイズはmmオーダであることが多いので、貫通孔44のサイズ(口径)の上限値もmmオーダとなることが多い。
以上から、貫通孔44のサイズは、口径で、0.3mm〜10mmであることがより好ましく、0.5mm〜5mmであることが更に好ましい。
なお、貫通孔44が、ヘルムホルツ共鳴による吸引作用を生じさせる共鳴孔としても機能する場合には、貫通孔44のサイズは、ヘルムホルツ共鳴による吸引作用を生じさせる必要があるので、ヘルムホルツ共鳴が生じる口径0.5mm以上であることが好ましく、上限は、枠14のサイズ未満である必要があるが、10mm以下がより好ましく、5mm以下が更に好ましい。
【0058】
(ヘルムホルツ防音セル)
次に、貫通孔の開いた板、又は膜の背面に閉空間体積がある共鳴型防音セルであるヘルムホルツ防音セルについて説明する。
図24及び図25に示す防音セル40bは、共鳴孔となる貫通孔の開いた板、又は膜の背面に閉空間体積(空洞)があり、この空洞が共鳴孔を介して外気と連通しヘルムホルツ共鳴による吸音作用を生じさせて吸音するヘルムホルツ防音セルであって、図1に示す防音構造10の防音ユニット12(12a及び12b)として用いられるものである。
防音セル40bは、開口部13を有する枠14と、枠14の開口部13の一方の側に取り付けられ、吸音部材16として機能する穿孔板46と、穿孔板46に穿孔された貫通孔(第1貫通孔)48と、枠14の開口部13の他方の側に取り付けられた背面板18とを有する。
【0059】
ここで、枠14及び背面板18とは、図21に示す防音セル40と同一の構成要素であるので、説明を省略する。
穿孔板46は、図1に示す防音構造10の防音ユニット12の吸音部材16として、防音セル40bにおいて用いられる通気シートである。穿孔板46には、図示例では略中央部に、ヘルムホルツ共鳴のための共鳴孔となる貫通孔48が穿孔されている。
ここで、穿孔板46は、貫通孔48を有し、貫通孔48を除いて、自身の背面に枠14及び背面板18によって形成される空間を閉空間とするためのものである。このような穿孔板46は、貫通孔48が共鳴孔として背面の閉空間と外気と連通してヘルムホルツ共鳴による吸音作用を生じさせることができれば良いので、図21に示す防音セル40の膜42のように、膜振動をする必要はない。したがって、穿孔板46は、図21に示す防音セル40の膜42に比べて高い剛性を有する部材であっても良いし、厚さも厚い部材であっても良い。
【0060】
このため、穿孔板46の材料としては、金属材料、又は樹脂材料など、上述した枠14、及び背面板18の材料と同様な板材料を用いることができる。
ここで、金属材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、ニッケル、パーマロイ、42アロイ、コバール、ニクロム、銅、ベリリウム、リン青銅、黄銅、洋白、錫、亜鉛、鉄、タンタル、ニオブ、モリブデン、ジルコニウム、金、銀、白金、パラジウム、鋼鉄、タングステン、鉛、イリジウム等の金属、及びこれら金属の合金が挙げられる。樹脂材料としては、例えば、プラスチック、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、アクリル(PMMA)、ポリアミドイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルフォン、ポリブチレンテレフタラート、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニリデン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、芳香族ポリアミド、シリコーン樹脂、エチレンエチルアクリレート、酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、及びポリブテン等が挙げられる。
しかし、膜振動による吸音を生じさせることがなければ、穿孔板46の材料として、上述した金属材料や樹脂材料に限定されず、枠14、及び背面板18の材料よりも、低い剛性を有する部材であっても良いし、厚さも薄い部材であっても良い。
【0061】
図示例では、吸音部材16として、穿孔板46が用いられているが、本発明はこれに限定されず、ヘルムホルツ共鳴による吸音の効果を生じさせることができれば、膜材料からなる貫通孔有膜であっても良い。ヘルムホルツ防音セルとして用いられる防音セル40bに用いられる膜は、ヘルムホルツ共鳴周波数においてヘルムホルツ共鳴による吸音より膜振動による吸音が小さければ、又は膜振動による吸音を生じさせることがなければ、上述した振動膜型防音セルである図21に示す防音セル40の膜42の膜材料と同様な膜材料を用いることができる。しかしながら、防音セル40bに用いられる膜は、防音セル40の膜42の膜材料より高い剛性を有する膜とする必要があり、厚さも厚い膜である必要がある。
なお、ヘルムホルツ防音セルである防音セル40bの吸音部材16として、貫通孔有膜を用いる場合、膜の厚みが薄いときはヘルムホルツ共振周波数が高周波側になってしまうことと、膜振動とお互いに邪魔しあってしまうため、板材料からなる穿孔板46を用いることが好ましい。
【0062】
また、穿孔板46、又は貫通孔有膜の枠14への固定方法は、穿孔板46、又は貫通孔有膜の背面に閉空間を形成することができれば特に制限的ではなく、上述した膜42及び背面板18の枠14への固定方法と同様な方法を用いれば良い。
穿孔板46に穿孔される貫通孔48も、同様のヘルムホルツ共鳴による吸引作用を生じさせることができるので、図22及び図23に示す防音セル40aの膜42に穿孔される貫通孔44と同様な上述した構成とすればよい。
但し、貫通孔48のサイズは、ヘルムホルツ共鳴による吸引作用を生じさせる必要があるので、口径0.25mm超であることが好ましく、上限は、枠14のサイズ未満である必要がある。また、貫通孔48のサイズは、口径で、0.3mm〜10mmであることがより好ましく、0.5mm〜5mmであることが更に好ましい。
【0063】
また、穿孔板46の代わりに、通気シートとして、繊維系材料からなる膜(繊維シート)、又は微細貫通孔が複数開いた膜(微細貫通孔膜)を用いることができる。
ここで、通気シートとは、防音セルの膜、又は板等の背後にある閉空間と外気とを連通する通気部分(例えば、貫通孔、空隙)を有し、この通気部分で空気の摩擦が生じることで吸音作用を奏する通気シート構造を持つものを言う。
【0064】
(繊維シート型防音セル)
次に、防音セル40bの穿孔板46の代わりに、通気シートとして、繊維系材料からなる膜(例えば、不織布、織布、紙、編み物等の繊維シート)を備える繊維シート型防音セルについて説明する。
繊維シート型防音セルは、繊維系材料からなる膜に、繊維によって形成される微細な空隙部分を有し、音がこの微細な空隙部分を通過するとき、繊維近傍の空気の粘性摩擦が生じることで音が吸音されるものである。
繊維系材料として、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、合成ゴム、共重合ポリアミド樹脂、共重合ポリエステル樹脂、紙繊維(ティッシュペーパー、和紙など)、セルロース、金属材料、SUS (巴川製紙所ステンレス繊維シート「トミーファイレックSS」など)、カーボン材料、カーボン含有材料が挙げられる。
【0065】
(微細貫通孔防音セル)
次に、微細貫通孔が複数あいた膜、又は板の背面に閉空間体積がある防音セルである微細貫通孔防音セルについて説明する。
図26及び図27に示す防音セル40cは、0.1〜250μmの微細貫通孔が複数あいた膜、又は板の背面に閉空間体積(空洞)があり、複数の微細貫通孔による吸音作用を生じさせて吸音する微細貫通孔防音セルであって、図1に示す防音構造10の防音ユニット12(12a及び12b)として用いられるものである。
防音セル40cは、開口部13を有する枠14と、枠14の開口部13の一方の側に取り付けられ、吸音部材16として機能する微細穿孔板50と、微細穿孔板50に穿孔された複数の微細貫通孔(第2貫通孔)52と、枠14の開口部13の他方の側に取り付けられた背面板18とを有する。
【0066】
ここで、枠14及び背面板18とは、図21に示す防音セル40と同一の構成要素であるので、説明を省略する。
微細穿孔板50は、厚さ方向に貫通する複数の微細貫通孔52(以下、単に貫通孔52という)を有する。微細穿孔板50に形成される複数の貫通孔52は、平均開口径が0.1μm以上250μm以下である。
微細穿孔板50と枠14とは、接していれば良く、固定されていなくてもよいが、接着剤で固定するのが好ましい。
また、本発明者らの検討によれば、貫通孔の平均開口率には最適な割合が存在し、特に平均開口径が50μm程度以上と比較的大きいときには平均開口率が小さいほど、吸収率が高くなることを見出した。平均開口率が大きい場合には、多くの貫通孔のそれぞれを音が通過するのに対して、平均開口率が小さい場合には、貫通孔の数が少なくなるため、1つの貫通孔を通過する音が多くなり、貫通孔を通過する際の空気の局所速度がより増大して、貫通孔の縁部や内壁面で生じる摩擦をより大きくすることができると考えられる。
【0067】
ここで、吸音性能等の観点から、貫通孔52の平均開口径は、0.1μm以上250μm以下であるが、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、70μm以下が更に好ましく、50μm以下が特に好ましい。これは、貫通孔の52平均開口径が小さくなるほど、貫通孔52の開口面積に対する貫通孔52の中で摩擦に寄与する外周部の長さの比率が大きくなり、摩擦が生じやすくなることによる。
また、貫通孔52の平均開口率は、平均開口径等に応じて適宜設定すればよいが、吸音性能及び通気性等の観点から、貫通孔の平均開口率は、2%以上15%以下が好ましく、3%以上がより好ましく、5%以上が更に好ましい。また、通気性及び排熱性がより重要な場合には、10%以上が好ましい。
なお、貫通孔52の平均開口径は、微細穿孔板の一方の面から、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM:機種名:FE―SEM S−4100 株式会社日立ハイテクテクノロジーズ製)を用いて微細穿孔板の表面を倍率200倍で撮影し、得られたSEM写真において、周囲が環状に連なっている貫通孔を20個抽出し、その開口径を読み取って、これらの平均値を平均開口径として算出する。もし、1枚のSEM写真内に貫通孔が20個未満の場合は、周辺の別の位置でSEM写真を撮影し、合計個数が20個になるまでカウントする。
【0068】
なお、貫通孔52の開口径は、貫通孔部分の面積をそれぞれ計測し、同一の面積となる円に置き換えたときの直径(円相当径)を用いて評価した。すなわち、貫通孔の開口部の形状は略円形状に限定はされないので、開口部の形状が非円形状の場合には、同一面積となる円の直径で評価した。従って、例えば、2以上の貫通孔が一体化したような形状の貫通孔の場合にも、これを1つの貫通孔とみなし、貫通孔の円相当径を開口径とする。
これらの作業は、例えば「Image J」(配布元・開発元:アメリカ国立衛生研究所(NIH))を用いて、Analyze Particlesにより円相当径、開口率などを全て計算することができる。
また、平均開口率は、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて微細穿孔板の表面を真上から倍率200倍で撮影し、得られたSEM写真の30mm×30mmの視野(5箇所)について、画像解析ソフト等で2値化して貫通孔部分と非貫通孔部分を観察し、貫通孔の開口面積の合計と視野の面積(幾何学的面積)とから、比率(開口面積/幾何学的面積)から算出し、各視野(5箇所)における平均値を平均開口率として算出する。
【0069】
ここで、本発明において、複数の貫通孔は、規則的に配列されていてもよく、ランダムに配列されていてもよい。微細な貫通孔の生産性、吸音特性のロバスト性、更に音の回折を抑制する等の観点から、ランダムに配列されているのが好ましい。音の回折に関しては、貫通孔が周期的に配列されているとその貫通孔の周期に従って音の回折現象が生じ、音が回折により曲がり騒音の進む方向が複数に分かれる懸念がある。ランダムとは完全に配列したような周期性は持たない配置になっている状態であり、各貫通孔による吸収効果が現れる一方で、貫通孔間最小距離による回折現象は生じない配置となる。
また、本発明の実施形態ではロール状の連続処理中でのエッチング処理により作製したサンプルもあるが、大量生産のためには周期的配列を作製するプロセスよりも表面処理など一括でランダムなパターンを形成する方が容易であるため、生産性の観点からもランダムに配列されていることが好ましい。
【0070】
また、複数の貫通孔は、1種類の開口径の貫通孔からなるものであってもよく、2種以上の開口径の貫通孔からなるものであってもよい。生産性の観点、耐久性の観点等から、2種以上の開口径の貫通孔からなるのが好ましい。
生産性としては、上記のランダム配列と同じく、大量にエッチング処理を行う観点から開口径にばらつきを許容した方が生産性が向上する。また、耐久性の観点としては、環境によってほこりやごみのサイズが異なるため、もし1種類の開口径の貫通孔とすると主要なゴミのサイズが貫通孔とほぼ合致するときに全ての貫通孔に影響を与えることとなる。複数種類の開口径の貫通孔を設けておくことで、様々な環境において適用できるデバイスとなる。
【0071】
また、音が貫通孔52内を通過する際の摩擦をより大きくする観点から、貫通孔52の内壁面は、粗面化されているのが好ましい。具体的には、貫通孔52の内壁面の表面粗さRaは、0.1μm以上であるのが好ましく、0.1μm〜10.0μmであるのがより好ましく、0.2μm以上1.0μm以下であるのがより好ましい。
ここで、表面粗さRaは貫通孔52内をAFM(Atomic Force Microscope:型番:SPA300/SPI3800N:株式会社日立ハイテクサイエンス製:DFMモード(タッピングモード)で測定、カンチレバー:OMCL―AC200TS)で計測することで測定を行うことができる。粗さが数ミクロン程度であるため、AFMを用いることが他の測定方法よりスケールとして測定が容易である。
【0072】
また、貫通孔内のSEM画像から貫通孔内の凹凸の凸部の一つ一つを粒子とみなして、凸部の平均粒径を算出することができる。
具体的には、2000倍で撮影したSEM画像をImage Jに取り込み、凸部が白となるように白黒に二値化し、その各凸部の面積をAnalyze Particlesにて求める。その各面積と同一面積となる円を想定した円相当径を各凸部について求めて、その平均値を平均粒径として算出した。このSEM画像の撮影範囲は100μm×100μm程度となる。
この凸部の平均粒径は0.1μm以上10.0μm以下であることが好ましく、0.2μm以上5.0μm以下であることがより好ましい。
【0073】
また、微細穿孔板50の厚みは、枠14及び微細穿孔板50からなる構造の防音セル40cの固有振動モードを所望の周波数に得るために適宜設定すればよい。また、厚みが厚いほど音が貫通孔52を通過する際に受ける摩擦エネルギが大きくなるため吸音性能がより向上すると考えられる。また、極端に薄い場合には、取り扱いが難しく破けやすいため、保持できる程度の厚みはあった方が望ましい。一方で、小型化、通気性及び光の透過性の観点からは厚みが薄いのが好ましい。また、貫通孔52の形成方法にエッチングなどを用いる場合は、厚みが厚いほど作製に時間がかかるため生産性の観点からは薄い方が望ましい。
吸音性能、小型化、通気性及び光の透過性等の観点から、微細穿孔板50の厚みは、5μm〜500μmが好ましく、10μm〜300μmがより好ましく、20μm〜100μmが特に好ましい。
【0074】
微細穿孔板50の材料も、防音構造の固有振動モードを所望の周波数に得るために適宜設定すればよい。具体的には、微細穿孔板50の材料としては、金属材料、又は樹脂材料等が利用可能である。ここで、金属材料としては、例えばアルミニウム、チタン、ニッケル、パーマロイ、42アロイ、コバール、ニクロム、銅、ベリリウム、リン青銅、黄銅、洋白、錫、亜鉛、鉄、タンタル、ニオブ、モリブデン、ジルコニウム、金、銀、白金、パラジウム、鋼鉄、タングステン、鉛、イリジウム等の各種金属、及びこれら金属の合金等を挙げることができる。また、樹脂材料としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリ塩化ビニルデン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルベンテン、COP(シクロオレフィンポリマー)、ポリカーボネート、ゼオノア、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリプロピレン、及びポリイミド等の樹脂材料等を挙げることができる。更に、薄膜ガラスなどのガラス材料、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、又はGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)のような繊維強化プラスチック材料(例えばシリコーンゴム、及び天然ゴム等のゴム材料)などを用いることもできる。
【0075】
本実施形態の防音セルにおいても、第一固有振動周波数での膜振動を生じるため、板状部材は振動に対して割れにくいことが好ましい。一方で、微細な貫通孔での摩擦による吸音を活かすために板状部材は、バネ定数が大きく振動の変位をあまり大きくしない、高ヤング率の材料を用いることが好ましい。これらの観点から、金属材料を用いるのが好ましい。なかでも、軽量である、エッチング等により微小な貫通孔を形成しやすい、入手性やコスト等の観点からアルミニウム又はアルミニウム合金を用いるのが好ましい。
【0076】
また、金属材料を用いる場合には、錆びの抑制等の観点から、表面に金属めっきを施してもよい。
更に、少なくとも貫通孔の内表面に金属めっきを施すことで、貫通孔の平均開口径をより小さい範囲に調整してもよい。
一方で、防音構造全体に透明性が必要な場合は透明にできる樹脂材料やガラス材料を用いることができる。例えば、PETフィルムは樹脂材料の中ではヤング率も比較的高く、入手も容易で透明性も高いため、貫通孔を形成し好適な防音構造とすることができる。
【0077】
<アルミニウム基材>
微細穿孔板として用いられるアルミニウム基材は、特に限定はされず、例えば、JIS規格H4000に記載されている合金番号1085、1N30、3003等の公知のアルミニウム基材を用いることができる。なお、アルミニウム基材は、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板である。
アルミニウム基材の厚みとしては、特に限定はないが、5μm〜1000μmが好ましく、5μm〜200μmがより好ましく、10μm〜100μmが特に好ましい。
【0078】
[複数の貫通孔を有する微細穿孔板の製造方法]
次に、複数の貫通孔を有する微細穿孔板の製造方法について、アルミニウム基材を用いる場合を例に説明する。
アルミニウム基材を用いた、複数の貫通孔を有する微細穿孔板の製造方法は、
アルミニウム基材の表面に水酸化アルミニウムを主成分とする皮膜を形成する皮膜形成工程と、
皮膜形成工程の後に、貫通孔形成処理を行って貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
貫通孔形成工程の後に、水酸化アルミニウム皮膜を除去する皮膜除去工程と、
を有する。
皮膜形成工程と貫通孔形成工程と皮膜除去工程とを有することにより、平均開口径が0.1μm以上250μm以下の貫通孔を好適に形成することができる。
【0079】
次に、複数の貫通孔を有する微細穿孔板の製造方法の各工程を図28図32を用いて説明した後に、各工程について詳述する。
図28図32は、アルミニウム基材を用いた、複数の貫通孔を有する微細穿孔板の製造方法の好適な実施態様の一例を示す模式的な断面図である。
複数の貫通孔を有する微細穿孔板の製造方法は、図28図32に示すように、アルミニウム基材54の一方の主面に対して皮膜形成処理を施し、水酸化アルミニウム皮膜56を形成する皮膜形成工程(図28及び図29)と、皮膜形成工程の後に電解溶解処理を施して貫通孔52を形成し、アルミニウム基材54及び水酸化アルミニウム皮膜56に貫通孔を形成する貫通孔形成工程(図29及び図30)と、貫通孔形成工程の後に、水酸化アルミニウム皮膜56を除去し、貫通孔52を有する微細穿孔板50を作製する皮膜除去工程(図30及び図31)と、を有する製造方法である。
【0080】
また、複数の貫通孔を有する微細穿孔板の製造方法は、皮膜除去工程の後に、貫通孔52を有する微細穿孔板50に電気化学的粗面化処理を施し、微細穿孔板50の表面を粗面化する粗面化処理工程(図31及び図32)を有しているのが好ましい。
水酸化アルミニウム皮膜には小さな孔ができやすいため、水酸化アルミニウム皮膜を形成する皮膜形成工程の後に、貫通孔形成工程において電解溶解処理を施して貫通孔を形成することで、平均開口径が0.1μm以上250μm以下の貫通孔を形成することができる。
【0081】
〔皮膜形成工程〕
本発明において、複数の貫通孔を有する微細穿孔板の製造方法が有する皮膜形成工程は、アルミニウム基材の表面に皮膜形成処理を施し、水酸化アルミニウム皮膜を形成する工程である。
【0082】
<皮膜形成処理>
上記皮膜形成処理は特に限定されず、例えば、従来公知の水酸化アルミニウム皮膜の形成処理と同様の処理を施すことができる。
皮膜形成処理としては、例えば、特開2011−201123号公報の[0013]〜[0026]段落に記載された条件や装置を適宜採用することができる。
本発明においては、皮膜形成処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1V〜100V、電解時間1秒〜20分であるのが適当であり、所望の皮膜量となるように調整される。
【0083】
本発明においては、電解液として、硝酸、塩酸、硫酸、燐酸、シュウ酸、あるいは、これらの酸の2以上の混酸を用いて電気化学的処理を行うのが好ましい。
硝酸、塩酸を含む電解液中で電気化学的処理を行う場合には、アルミニウム基材と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。アルミニウム基材に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜50A/dm2であるのがより好ましい。連続的に電気化学的処理を行う場合には、アルミニウム基材に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
本発明においては、皮膜形成処理により形成される水酸化アルミニウム皮膜の量は0.05〜50g/m2であるのが好ましく、0.1〜10g/m2であるのがより好ましい。
【0084】
〔貫通孔形成工程〕
貫通孔形成工程は、皮膜形成工程の後に電解溶解処理を施し、貫通孔を形成する工程である。
【0085】
<電解溶解処理>
上記電解溶解処理は特に限定されず、直流又は交流を用い、酸性溶液を電解液に用いることができる。中でも、硝酸、塩酸の少なくとも1以上の酸を用いて電気化学処理を行うのが好ましく、これらの酸に加えて硫酸、燐酸、シュウ酸の少なくとも1以上の混酸を用いて電気化学的処理を行うのが更に好ましい。
本発明においては、電解液である酸性溶液としては、上記酸のほかに、米国特許第4,671,859号、同第4,661,219号、同第4,618,405号、同第4,600,482号、同第4,566,960号、同第4,566,958号、同第4,566,959号、同第4,416,972号、同第4,374,710号、同第4,336,113号、同第4,184,932号の各明細書等に記載されている電解液を用いることもできる。
酸性溶液の濃度は0.1〜2.5質量%であるのが好ましく、0.2〜2.0質量%であるのが特に好ましい。また、酸性溶液の液温は20〜80℃であるのが好ましく、30〜60℃であるのがより好ましい。
【0086】
また、上記酸を主体とする水溶液は、濃度1〜100g/Lの酸の水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオンを有する硝酸化合物又は塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等の硫酸イオンを有する硫酸化合物少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。
また、上記酸を主体とする水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。好ましくは、酸の濃度0.1〜2質量%の水溶液にアルミニウムイオンが1〜100g/Lとなるように、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等を添加した液を用いることが好ましい。
電気化学的溶解処理には、主に直流電流が用いられるが、交流電流を使用する場合にはその交流電源波は特に限定されず、サイン波、矩形波、台形波、三角波等が用いられ、中でも、矩形波又は台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。
【0087】
(硝酸電解)
本発明においては、硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的溶解処理(以下、「硝酸溶解処理」とも略す。)により、容易に、平均開口径が0.1μm以上250μm以下となる貫通孔を形成することができる。
ここで、硝酸溶解処理は、貫通孔形成の溶解ポイントを制御しやすい理由から、直流電流を用い、平均電流密度を5A/dm2以上とし、かつ、電気量を50C/dm2以上とする条件で施す電解処理であるであるのが好ましい。なお、平均電流密度は100A/dm2以下であるのが好ましく、電気量は10000C/dm2以下であるのが好ましい。
また、硝酸電解における電解液の濃度や温度は特に限定されず、高濃度、例えば、硝酸濃度15〜35質量%の硝酸電解液を用いて30〜60℃で電解を行ったり、硝酸濃度0.7〜2質量%の硝酸電解液を用いて高温、例えば、80℃以上で電解を行うことができる。
また、上記硝酸電解液に濃度0.1〜50質量%の硫酸、シュウ酸、燐酸の少なくとも1つを混ぜた電解液を用いて電解を行うことができる。
【0088】
(塩酸電解)
本発明においては、塩酸を主体とする電解液を用いた電気化学的溶解処理(以下、「塩酸溶解処理」とも略す。)によっても、容易に、平均開口径が1μm以上250μm以下となる貫通孔を形成することができる。
ここで、塩酸溶解処理は、貫通孔形成の溶解ポイントを制御しやすい理由から、直流電流を用い、平均電流密度を5A/dm2以上とし、かつ、電気量を50C/dm2以上とする条件で施す電解処理であるであるのが好ましい。なお、平均電流密度は100A/dm2以下であるのが好ましく、電気量は10000C/dm2以下であるのが好ましい。
具体的には、溶解液と電流密度によって孔径を変化させることができる。例えば、250μmの貫通孔径を作成するためには、以下の工程で可能である。
50℃に保温した電解液(硝酸濃度1%、硫酸濃度0.2%、アルミニウム濃度0.5%)を用いて、アルミニウム基材を陽極として、電気量総和が1000C/dmの条件下で電解処理を施し、アルミニウム基材、及び水酸化アルミ皮膜に貫通孔を形成した。なお、電解処理は、直流電源で行った。電流密度は、5A/dmとした。
貫通孔の形成後、スプレーによる水洗を行い、乾燥させた。また、平均開口径を46μmとするためには、前記電流密度を25A/dmと変更し、他は同一の条件により作成することができる。このように、貫通孔径を条件変更によって作り分けることができる。
また、塩酸電解における電解液の濃度や温度は特に限定されず、高濃度、例えば、塩酸濃度10〜35質量%の塩酸電解液を用いて30〜60℃で電解を行ったり、塩酸濃度0.7〜2質量%の塩酸電解液を用いて高温、例えば、80℃以上で電解を行うことができる。
また、上記塩酸電解液に濃度0.1〜50質量%の硫酸、シュウ酸、燐酸の少なくとも1つを混ぜた電解液を用いて電解を行うことができる。
【0089】
〔皮膜膜除去工程〕
皮膜除去工程は、化学的溶解処理を行って水酸化アルミニウム皮膜を除去する工程である。
上記皮膜除去工程は、例えば、後述する酸エッチング処理やアルカリエッチング処理を施すことにより水酸化アルミニウム皮膜を除去することができる。
【0090】
<酸エッチング処理>
上記溶解処理は、アルミニウムよりも水酸化アルミニウムを優先的に溶解させる溶液(以下、「水酸化アルミニウム溶解液」という。)を用いて水酸化アルミニウム皮膜を溶解させる処理である。
ここで、水酸化アルミニウム溶解液としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、燐酸、シュウ酸、クロム化合物、ジルコニウム系化合物、チタン系化合物、リチウム塩、セリウム塩、マグネシウム塩、ケイフッ化ナトリウム、フッ化亜鉛、マンガン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物、バリウム化合物及びハロゲン単体からなる群から選択される少なくとも1種を含有した水溶液が好ましい。
【0091】
具体的には、クロム化合物としては、例えば、酸化クロム(III)、無水クロム(VI)酸等が挙げられる。
ジルコニウム系化合物としては、例えば、フッ化ジルコンアンモニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウムが挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、酸化チタン、硫化チタンが挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウムが挙げられる。
セリウム塩としては、例えば、フッ化セリウム、塩化セリウムが挙げられる。
マグネシウム塩としては、例えば、硫化マグネシウムが挙げられる。
マンガン化合物としては、例えば、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カルシウムが挙げられる。
モリブデン化合物としては、例えば、モリブデン酸ナトリウムが挙げられる。
マグネシウム化合物としては、例えば、フッ化マグネシウム・五水和物が挙げられる。
バリウム化合物としては、例えば、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウム、塩素酸バリウム、塩化バリウム、フッ化バリウム、ヨウ化バリウム、乳酸バリウム、シュウ酸バリウム、過塩素酸バリウム、セレン酸バリウム、亜セレン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、亜硫酸バリウム、チタン酸バリウム、水酸化バリウム、硝酸バリウム、あるいはこれらの水和物等が挙げられる。
上記バリウム化合物の中でも、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウムが好ましく、酸化バリウムが特に好ましい。
ハロゲン単体としては、例えば、塩素、フッ素、臭素が挙げられる。
【0092】
中でも、上記水酸化アルミニウム溶解液が、酸を含有する水溶液であるのが好ましく、酸として、硝酸、塩酸、硫酸、燐酸、シュウ酸等が挙げられ、2種以上の酸の混合物であってもよい。
酸濃度としては、0.01mol/L以上であるのが好ましく、0.05mol/L以上であるのがより好ましく、0.1mol/L以上であるのが更に好ましい。上限は特にないが、一般的には10mol/L以下であるのが好ましく、5mol/L以下であるのがより好ましい。
【0093】
溶解処理は、水酸化アルミニウム皮膜が形成されたアルミニウム基材を上述した溶解液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
浸せき法は、水酸化アルミニウム皮膜が形成されたアルミニウム基材を上述した溶解液に浸せきさせる処理である。浸せき処理の際にかくはんを行うと、ムラのない処理が行われるため、好ましい。
浸せき処理の時間は、10分以上であるのが好ましく、1時間以上であるのがより好ましく、3時間以上、5時間以上であるのが更に好ましい。
【0094】
<アルカリエッチング処理>
アルカリエッチング処理は、上記水酸化アルミニウム皮膜をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解させる処理である。
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム(カセイソーダ)、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、メタケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点及び安価である点から、カセイアルカリの溶液、及び、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、水酸化ナトリウムの水溶液が好ましい。
【0095】
アルカリ溶液の濃度は、0.1〜50質量%であるのが好ましく、0.2〜10質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンが溶解している場合には、アルミニウムイオンの濃度は、0.01〜10質量%であるのが好ましく、0.1〜3質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液の温度は10〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜120秒であるのが好ましい。
水酸化アルミニウム皮膜をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、水酸化アルミニウム皮膜が形成されたアルミニウム基材をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、水酸化アルミニウム皮膜が形成されたアルミニウム基材をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液を水酸化アルミニウム皮膜が形成されたアルミニウム基材の表面(水酸化アルミニウム皮膜)に噴きかける方法が挙げられる。
【0096】
〔粗面化処理工程〕
本発明において、複数の貫通孔を有する微細穿孔板の製造方法が有していてもよい任意の粗面化処理工程は、水酸化アルミニウム皮膜を除去したアルミニウム基材に対して電気化学的粗面化処理(以下、「電解粗面化処理」とも略す。)を施し、アルミニウム基材の表面ないし裏面を粗面化する工程である。
なお、上記実施形態では、貫通孔を形成した後に粗面化処理を行う構成としたが、これに限定はされず、粗面化処理の後に貫通孔を形成する構成としてもよい。
本発明においては、硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理(以下、「硝酸電解」とも略す。)により、容易に表面を粗面化することができる。
あるいは、塩酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理(以下、「塩酸電解」とも略す。)によっても、粗面化することができる。
【0097】
〔金属被覆工程〕
本発明において、複数の貫通孔を有する板状部材の製造方法は、上述した電解溶解処理により形成された貫通孔の平均開口径を0.1μm〜20μm程度の小さい範囲に調整できる理由から、上述した皮膜除去工程の後に、少なくとも貫通孔の内壁を含むアルミニウム基材の表面の一部又は全部をアルミニウム以外の金属で被覆する金属被覆工程を有しているのが好ましい。
ここで、「少なくとも貫通孔の内壁を含むアルミニウム基材の表面の一部又は全部をアルミニウム以外の金属で被覆する」とは、貫通孔の内壁を含むアルミニウム基材の全表面のうち、少なくとも貫通孔の内壁については被覆されていることを意味しており、内壁以外の表面は、被覆されていなくてもよく、一部又は全部が被覆されていてもよい。
金属被覆工程は、貫通孔を有するアルミニウム基材に対して、例えば、後述する置換処理及びめっき処理を施すものである。
【0098】
<置換処理>
上記置換処理は、少なくとも貫通孔の内壁を含むアルミニウム基材の表面の一部又は全部に、亜鉛又は亜鉛合金を置換めっきする処理である。
置換めっき液としては、例えば、水酸化ナトリウム120g/L、酸化亜鉛20g/L、結晶性塩化第二鉄2g/L、ロッセル塩50g/L、硝酸ナトリウム1g/Lの混合溶液などが挙げられる。
また、市販のZn又はZn合金めっき液を使用してもよく、例えば、奥野製薬工業株式会社製サブスターZn−1、Zn−2、Zn−3、Zn−8、Zn−10、Zn−111、Zn−222、Zn−291等を使用することができる。
このような置換めっき液へのアルミニウム基材の浸漬時間は15秒〜40秒であるのが好ましく、浸漬温度は20℃〜50℃であるのが好ましい。
【0099】
<めっき処理>
上述した置換処理により、アルミニウム基材の表面に亜鉛又は亜鉛合金を置換めっきして亜鉛皮膜を形成させた場合は、例えば、後述する無電解めっきにより亜鉛皮膜をニッケルに置換させた後、後述する電解めっきにより各種金属を析出させる、めっき処理を施すのが好ましい。
(無電解めっき処理)
無電解めっき処理に用いるニッケルめっき液としては、市販品が幅広く使用でき、例えば、硫酸ニッケル30g/L、次亜リン酸ソーダ20g/L、クエン酸アンモニウム50g/Lを含む水溶液などが挙げられる。
また、ニッケル合金めっき液としては、りん化合物が還元剤となるNi−P合金めっき液やホウ素化合物が還元剤となるNi−Bメッキ液などが挙げられる。
このようなニッケルめっき液やニッケル合金めっき液への浸漬時間は15秒〜10分であるのが好ましく、浸漬温度は30℃〜90℃であるのが好ましい。
【0100】
(電解めっき処理)
電解めっき処理として、例えば、Cuを電気めっきする場合のめっき液は、例えば、硫酸Cu60〜110g/L、硫酸160〜200g/L及び塩酸0.1〜0.15mL/Lを純水に加え、更に奥野製薬株式会社製トップルチナSFベースWR1z5〜5.0mL/L、トップルチナSF−B0.5〜2.0mL/L及びトップルチナSFレベラー3.0〜10mL/Lを添加剤として加えためっき液が挙げられる。
このような銅めっき液への浸漬時間は、Cu膜の厚さによるため特に限定されないが、例えば、2μmのCu膜をつける場合は、電流密度2A/dmで約5分間浸漬するのが好ましく、浸漬温度は20℃〜30℃であるのが好ましい。
〔水洗処理〕
本発明においては、上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
【0101】
このような貫通孔を有する微細穿孔板の製造は、カットシート状のアルミニウム基材を用いて製造を行ってもよく、ロール・トゥ・ロール(Roll to Roll 以下、RtoRともいう)で行ってもよい。
周知のように、RtoRとは、長尺な原材料を巻回してなるロールから、原材料を引き出して、長手方向に搬送しつつ、表面処理等の各種の処理を行い、処理済の原材料を、再度、ロール状に巻回する製造方法である。
上述のようなアルミニウム基材に貫通孔を形成する製造方法は、RtoRによって、20μm程度の貫通孔を容易に効率よく形成することができる。
また、貫通孔の形成方法は、上述した方法に限定はされず、微細穿孔板の形成材料等に応じて、公知の方法で行えばよい。
例えば、微細穿孔板としてPETフィルム等の樹脂フィルムを用いる場合には、レーザ加工などのエネルギを吸収する加工方法を用いることができる。
また、樹脂フィルムや金属などの材料に依らず、対象とする膜が薄い場合には、パンチング、及び針加工等の物理的接触による機械加工方法で貫通孔を形成することができる。例えば、アルミニウム膜が略100μm以下の厚みの場合において、パンチング法を用いて100μm程度以上の多数の貫通孔を形成することができる。
【0102】
各防音セルの吸音部材16である、膜42、穿孔板46、繊維シート、及び微細穿孔板50、並びに背面板18の背後の閉空間の全部または一部分に(即ち、枠内部に)、多孔質吸音体または繊維質吸音体を含むことが好ましい。このような吸音体として、特に限定はなく、多孔質吸音体として、例えば、(1)発泡ウレタン、軟質ウレタンフォーム、木材、セラミックス粒子焼結材、フェノールフォーム等の発泡材料および微小な空気を含む材料、及び(2)石膏ボード等、公知の材料を用いることができる。また、繊維質吸音体として、例えば、(1)グラスウール、ロックウール、マイクロファイバー(3M社製シンサレートなど)、フロアマット、絨毯、メルトブローン不織布、金属不織布、ポリエステル不織布、金属ウール、フェルト、インシュレーションボード、及びガラス不織布等のファイバー、並びに不織布類材料、(2)木毛セメント板、及び(3)シリカナノファイバーなどのナノファイバー系材料等、公知の吸音材を適宜用いることができる。
このような吸音材が閉空間に存在すれば、閉空間が空気で充たされている場合と比べて吸収の広帯域化を図ることができる。
【0103】
なお、隣接する2つの防音ユニット12が互いに異なる場合に2つの防音ユニット12として用いられる各防音セル互いに異なるとは、上述した振動膜型防音セルである防音セル40、及び40a、ヘルムホルツ防音セルである防音セル40b、並びに微細貫通孔防音セルである防音セル40cの内の異なる2つの防音セルを組み合わせることでも良いし、防音セル40、40a、40b、及び40cの内の同じ種類の防音セルを2つ用いる場合には、各防音セルの枠14、吸音部材16である膜42、穿孔板46、繊維シート、及び微細穿孔板50、並びに背面板18の内の少なくとも1つが異なっていれば良い。
防音セルの枠14が異なるとは、例えば各枠14のサイズ、厚さ、幅、及び材質、並びに各開口部13のサイズ(開口面積のサイズ、及び空間体積のサイズ)などの少なくとも1つが異なっていれば良い。
防音セル40及び40aの膜42が異なるとは、膜42のサイズ、厚さ、剛性、及び材質、並びに膜42に設けられた貫通孔(第1貫通孔)44の有無、及びそのサイズなどの少なくとも1つが異なっていれば良い。また、膜42に錘及び/又はメタルメッシュが設けられている場合には、その有無、並びにその重さ、サイズ、剛性、材質の少なくとも1つが異なっていても良い。
防音セル40bの穿孔板46が異なるとは、穿孔板46のサイズ、厚さ、剛性、及び材質、並びに穿孔板46に設けられた貫通孔(第2貫通孔)48のサイズなどの少なくとも1つが異なっていれば良い。
防音セル40cの微細穿孔板50が異なるとは、微細穿孔板50のサイズ、厚さ、剛性、及び材質、並びに微細穿孔板50に設けられた複数の微細貫通孔52の平均開口径、平均開口率、それらの内壁面の表面粗さなどの少なくとも1つが異なっていれば良い。
背面板18が異なるとは、そのサイズ、厚さ、剛性、及び材質などの少なくとも1つが異なっていれば良い。
本発明において防音ユニット12として用いられる防音セルは、基本的に以上のように構成される。
【0104】
図33に示す防音構造60は、図1に示す防音構造10と、防音構造10の防音ユニット12bを載置して支持する載置台62と、載置台62に固定されたトラベリングナット64、及びトラベリングナット64に螺合するドライブスクリュー66を備え、防音構造10の防音ユニット12aに対して防音ユニット12bを移動させるねじ移動機構68とを有する。
ここで、防音構造10の防音ユニット12aは、図示しない基台に支持されており、その基台に、ボールねじ等からなるドライブスクリュー66は、回転可能に支持される。
こうして、ドライブスクリュー66を手動で、又は自動的に回転させることにより、防音ユニット12aに対して防音ユニット12bを移動させて、防音ユニット12aの吸音部材16aと、防音ユニット12bの吸音部材16の間の吸音部材同士の平均距離を変えることにより、吸収率がピークとなる吸収ピーク周波数を調整することができる。
なお、ねじ移動機構68等の移動機構が自動的に動く自動移動機構である場合には、図示しないが、モータなどの駆動源と、駆動源の駆動を制御する制御部を備え、制御部に付与された移動量に応じて制御部が駆動源を自動的に制御して、自動的に移動量だけ移動させることができる。
【0105】
ここで、図示例のねじ移動機構68は、防音ユニット12aに対して防音ユニット12bを移動させるものであるが、本発明はこれに限定されず、防音ユニット12bに対して防音ユニット12aを移動させる移動機構であっても良いし、防音ユニット12a及び12bの両方を移動させる移動機構であっても良い。
即ち、本発明に用いられる移動機構は、防音ユニット12a及び12bの一方を他方に対して相対的に移動させて、両者の吸音部材16a及び16bとの間の吸音部材同士の平均距離を変化させるものであれば良い。
このような移動機構としては、特に制限的ではなく、隣接する2つの防音ユニット12a及び12bの少なくとも一方を移動できればいかなる移動機構でも良く、例えば、図示例のねじ移動機構68に加え、図示しないが、レール、及び隣接する2つの防音ユニット12a及び12bの少なくとも一方を載置して、レール上を走行する車輪を備えるレール走行機構、隣接する2つの防音ユニット12a及び12bの少なくとも一方が取り付けられたラック、及びラックと噛み合うラックアンドピニオン機構、及びピエゾ(圧電)素子を用いたピエゾアクチュエータ等の移動機構を挙げることができる。
【0106】
上述したねじ移動機構68を備える防音構造60等の防音構造は、騒音(ノイズ)源からの騒音に応じて適切に防音する防音システムとして構成することもできる。
図34に示す防音システム70は、騒音源に対して、吸音部材同士の距離を調整することにより吸収ピーク周波数を自動的に調整して、適切な周波数において吸収を生じさせるシステムであり、防音構造の周囲環境の騒音、特に騒音源からの騒音の周波数に応じて、防音構造の吸収ピーク周波数を調整し、吸収ピーク周波数を騒音の周波数に一致させる、又は可能な限り近づけることにより、騒音を適切に防音、即ち遮蔽するものである。
防音システム70は、図1に示すような、隣接する2つの防音ユニット12a及び12bを備える防音構造10と、防音構造10の周囲環境のノイズ源78の騒音を計測するマイクロフォン(以下、単にマイクという)72と、マイク72で計測された騒音の周波数を解析するパーソナルコンピュータ(以下、PCという)74と、PC74の解析結果に応じて隣接する2つの防音ユニット12a及び12bの吸音部材16a及び16b同士の距離を変化させる自動ステージ76と、を有する。
【0107】
ここで、マイク72は、防音構造10の周囲環境のノイズ源78から騒音の音圧を計測する計測器であり、計測部を構成する。この時、マイク72の位置は防音構造10よりもノイズ源78側にあることが望ましいが、騒音が計測できる位置であればどこに配置されていても良く、どこであっても分析できる。
PC74は、マイク72で計測された騒音の音圧データを受信し、周波数特性、即ち周波数スペクトルに変換し、防音又は消音対象とする防音対象周波数を決定する。防音対象周波数としては、特に制限的ではないが、可聴域内で最大となる音圧の周波数とすることが好ましい。例えば、周波数スペクトルの中の最大値を消したい(即ち遮蔽したい周波数である)と想定して、防音対象周波数を決定することが好ましい。
【0108】
次いで、PC74は、防音対象周波数に対応する吸音部材16a、及び16bとの吸音部材同士の平均距離(以下、層間距離ともいう)を求める。具体的には、PC74は、予め求められて、メモリ等の記憶部の記憶されているデータを参照し、それらのデータから防音対象周波数に対応する(即ち吸収ピーク周波数が防音対象周波数となる)、又は最も近づく吸音部材16a、及び16b同士の層間距離を決定する。ここで、PC74は、周波数スペクトルの解析装置であり、解析部を構成する。
なお、PC74のメモリの記憶データは、隣接する2つの防音ユニット12a及び12bの吸音部材16a及び16bの層間距離と、吸収ピーク周波数との関係を示すルックアップテーブル(即ち層間距離と周波数との対応表(データ))である。
このような対応表は、予め、吸音部材16a及び16bの層間距離と、吸収ピーク周波数との関係を実測し、実測値に基づいて決定しておくことが好ましい。
PC74は、こうして決定した吸音部材16a及び16bの層間距離を自動ステージ76に送信(入力)する。
【0109】
自動ステージ76は、図示しないが、図33に示すねじ移動機構68等の移動機構と、モータなどの駆動源、及び駆動源の駆動を制御するコントローラ等の制御部を備える自動移動機構である。自動ステージ76は、PC74から受信した吸音部材16a及び16b同士の層間距離となるように、隣接する2つの防音ユニット12a及び12bの少なくとも一方を移動させて、防音構造10の吸収ピーク周波数を調整し、吸収ピーク周波数を、防音対象周波数に合わせる。
こうして、本発明の防音システム70は、適切に防音対象周波数の騒音を消すことができる。
なお、図示例の防音システム70は、自動ステージ76を備えているが、自動ステージ76の代わりに、移動機構のみを備えていても良く、その場合には、PC74が決定した層間距離に応じて、手動で移動機構を動かしても良い。
【0110】
なお、PC74が、予め準備された層間距離と周波数との対応表を有していない場合には、2つのマイクを用いてその音圧をとりながら、自動ステージ76にフィードバックを書けるようにしても良い。
図35に示す防音システム70aは、フィードバック機構を備えており、フィードバックをかけながら防音構造の吸収周波数が防音対象周波数に合うように層間距離を調整することで、事前に吸収周波数−層間距離の対応表を作成していなくても自動防音システムであり、防音構造のデバイス特性が変化した場合などでも自動消音機構を機能させることができるシステムである。
防音システム70aは、防音構造10と、2本のマイク(マイク1)72a及び(マイク2)72bと、自動ステージ76と、PC74とを有する。
【0111】
防音システム70aにおいては、防音システム70と同様に、2本のマイク72a及び72bの少なくとも1本のマイクで騒音の音圧を計測し、PC74でマイクのスペクトル情報(周波数スペクトルデータ)から防音対象周波数を決定する。
2本のマイク72a及び72bは、ノイズ源78からの騒音の防音対象周波数における音圧を測定する。ここで、一方のマイク、例えばマイク72aでは、防音対象周波数における音圧の大きい騒音を取り、他方のマイク、例えばマイク72bでは、防音対象周波数における音圧の小さい騒音を取る。ここでは、図35に示すように、大きな音圧のマイク72aがノイズ源78側にあると判断できる。マイク72aの防音対象周波数における大きな音圧をp1とし、マイク72bの防音対象周波数における小さな音圧をp2とする。
防音システム70aでは、音圧P1小さい方の音圧P2が、大きい方の音圧p1に対して最小になる、即ちp2/p1が最小となるように自動ステージ76でフィードバック調整する。
【0112】
まず、2本のマイク72a及び72bを用いて、自動ステージ76を動かす前の音圧比abs(p2)/abs(p1)を測定する。
次に、自動ステージ76を動かしながら音圧比abs(p2)/abs(p1)を測定していく。この中で、音圧比abs(p2)/abs(p1)が最小となる層間距離を探索することで、適切な層間距離を決定することができる。
最後に、適切な層間距離に合うように自動ステージ76によって層間距離を調整することで吸収周波数を防音対象周波数に合わせ、防音対象周波数の騒音を最も減らすことができる。
なお、図示例では、2本のマイク72a及び72bで取られた音圧の大きい騒音及び音圧の小さい騒音をPC74に送信し、音圧比p2/p1を算出して、自動ステージ76でフィードバック調整するようにしているが、本発明はこれに限定されず、PC74を介さず、2本のマイク72a及び72bの出力を直接自動ステージ76に送信するようにしても良い。
【0113】
以下に、本発明の防音構造を持つ防音部材に組合せることができる構造部材の物性、又は特性について説明する。
[難燃性]
建材や機器内防音材として本発明の防音構造を持つ防音部材を使用する場合、難燃性であることが求められる。
そのため、膜は、難燃性のものが好ましい。膜としては、例えば難燃性のPETフィルムであるルミラー(登録商標)非ハロゲン難燃タイプZVシリーズ(東レ株式会社製)、テイジンテトロン(登録商標)UF(帝人株式会社製)、及び/又は難燃性ポリエステル系フィルムであるダイアラミー(登録商標)(三菱樹脂株式会社製)等を用いればよい。
また、枠も、難燃性の材質であることが好ましく、アルミニウム等の金属、セラミックなどの無機材料、ガラス材料、難燃性ポリカーボネート(例えば、PCMUPY610(タキロン株式会社製))、及び/又はや難燃性アクリル(例えば、アクリライト(登録商標)FR1(三菱レイヨン株式会社製))などの難燃性プラスチックなどが挙げられる。
更に、膜を枠に固定する方法も、難燃性接着剤(スリーボンド1537シリーズ(株式会社スリーボンド製))、半田による接着方法、又は2つの枠で膜を挟み固定するなどの機械的な固定方法が好ましい。
【0114】
[耐熱性]
環境温度変化にともなう、本発明の防音構造の構造部材の膨張伸縮により防音特性が変化してしまう懸念があるため、この構造部材を構成する材質は、耐熱性、特に低熱収縮のものが好ましい。
膜は、例えばテイジンテトロン(登録商標)フィルム SLA(帝人デュポンフィルム株式会社製)、PENフィルム テオネックス(登録商標)(帝人デュポンフィルム株式会社製)、及び/又はルミラー(登録商標)オフアニール低収縮タイプ(東レ株式会社製)などを使用することが好ましい。また、一般にプラスチック材料よりも熱膨張率の小さいアルミニウム等の金属膜を用いることも好ましい。
また、枠は、ポリイミド樹脂(TECASINT4111(エンズィンガージャパン株式会社製))、及び/又はガラス繊維強化樹脂(TECAPEEKGF30(エンズィンガージャパン株式会社製))などの耐熱プラスチックを用いること、及び/又はアルミニウム等の金属、又はセラミック等の無機材料やガラス材料を用いることが好ましい。
更に、接着剤も、耐熱接着剤(TB3732(株式会社スリーボンド製)、超耐熱1成分収縮型RTVシリコーン接着シール材(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、及び/又は耐熱性無機接着剤アロンセラミック(登録商標)(東亜合成株式会社製)など)を用いることが好ましい。これら接着を膜又は枠に塗布する際は、1μm以下の厚みにすることで、膨張収縮量を低減できることが好ましい。
【0115】
[耐候・耐光性]
屋外や光が差す場所に本発明の防音構造を持つ防音部材が配置された場合、構造部材の耐侯性が問題となる。
そのため、膜は、特殊ポリオレフィンフィルム(アートプライ(登録商標)(三菱樹脂株式会社製))、アクリル樹脂フィルム(アクリプレン(三菱レイヨン株式会社製))、及び/又はスコッチカルフィルム(商標)(3M社製)等の耐侯性フィルムを用いることが好ましい。
また、枠材は、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリル(アクリル)などの耐侯性が高いプラスチックやアルミニウム等の金属、セラミック等の無機材料、及び/又はガラス材料を用いることが好ましい。
更に、接着剤も、エポキシ樹脂系のもの、及び/又はドライフレックス(リペアケアインターナショナル社製)などの耐侯性の高い接着剤を用いることが好ましい。
耐湿性についても、高い耐湿性を有する膜、枠、及び接着剤を適宜選択することが好ましい。吸水性、耐薬品性に関しても適切な膜、枠、及び接着剤を適宜選択することが好ましい。
【0116】
[ゴミ]
長期間の使用においては、膜表面にゴミが不付着し、本発明の防音構造の防音特性に影響を与える可能性がある。そのため、ゴミの付着を防ぐ、又は付着したゴミ取り除くことが好ましい。
ゴミを防ぐ方法として、ゴミが付着し難い材質の膜を用いることが好ましい。例えば、導電性フィルム(フレクリア(登録商標)(TDK株式会社製)、及び/又はNCF(長岡産業株式会社製))などを用いることで、膜が帯電しないことで、帯電によるゴミの付着を防ぐことができる。また、フッ素樹脂フィルム(ダイノックフィルム(商標)(3M社製))、及び/又は親水性フィルム(ミラクリーン(ライフガード株式会社製)、RIVEX(リケンテクノス株式会社製)、及び/又はSH2CLHF(3M社製))を用いることでも、ゴミの付着を抑制できる。更に、光触媒フィルム(ラクリーン(株式会社きもと製))を用いることでも、膜の汚れを防ぐことができる。これらの導電性、親水性、及び/又は光触媒性を有するスプレー、及び/又はフッ素化合物を含むスプレーを膜に塗布することでも同様の効果を得ることができる。
【0117】
上述したような特殊な膜を使用する以外に、膜上にカバーを設けることでも汚れを防ぐことが可能である。カバーとしては、薄い膜材料(サランラップ(登録商標)など)、ゴミを通さない大きさの網目を有するメッシュ、不織布、ウレタン、エアロゲル、ポーラス状のフィルム等を用いることができる。
付着したゴミを取り除く方法としては、膜の共鳴周波数の音を放射し、膜を強く振動させることで、ゴミを取り除くことができる。また、ブロワー、又はふき取りを用いても同様の効果を得ることができる。
本発明の防音構造及び防音システムは、基本的に以上のように構成される。
本発明の防音構造及び防音システムは、以上のように構成されているため、従来の防音構造において困難であった低周波遮蔽を可能にし、更に、低周波化を図ることができる。また、低周波域における吸収ピーク周波数の調整ができるので、様々な周波数の騒音に合わせて強く防音又は遮音する構造を設計できるという特徴も有する。
【0118】
本発明の防音構造は、以下のような防音部材として使用することができる。
例えば、本発明の防音構造を持つ防音部材としては、
建材用防音部材:建材用として使用する防音部材、
空気調和設備用防音部材:換気口、空調用ダクトなどに設置し、外部からの騒音を防ぐ防音部材、
外部開口部用防音部材:部屋の窓に設置し、室内又は室外からの騒音を防ぐ防音部材、
天井用防音部材:室内の天井に設置され、室内の音響を制御する防音部材、
床用防音部材:床に設置され、室内の音響を制御する防音部材、
内部開口部用防音部材:室内のドア、ふすまの部分に設置され、各部屋からの騒音を防ぐ防音部材、
トイレ用防音部材:トイレ内又はドア(室内外)部に設置、トイレからの騒音を防ぐ防音部材、
バルコニー用防音部材:バルコニーに設置し、自分のバルコニー又は隣のバルコニーからの騒音を防ぐ防音部材、
室内調音用部材:部屋の音響を制御するための防音部材、
簡易防音室部材:簡易に組み立て可能で、移動も簡易な防音部材、
ペット用防音室部材:ペットの部屋を囲い、騒音を防ぐ防音部材、
アミューズメント施設:ゲームセンター、スポーツセンター、コンサートホール、映画館に設置される防音部材、
工事現場用仮囲い用の防音部材:工事現場を多い周囲に騒音の漏れを防ぐ防音部材、
トンネル用の防音部材:トンネル内に設置し、トンネル内部及び外部に漏れる騒音を防ぐ防音部材、等を挙げることができる。
【実施例】
【0119】
本発明の防音構造を実施例に基づいて具体的に説明する。
まず、本発明の防音構造に用いられる防音ユニットとなる単一の防音セル(単セル)を参考例として作製した。
以下の例で、「層間距離」とは「吸音部材同士の平均距離」と定義する。
(参考例1)
まず、参考例1として、図21に示す防音セル(単セル)40を作製した。
素材をアクリルとし、開口部13の大きさ16mmの正方形、枠厚10mm、枠幅2mmの枠14を作製した。その片面に、膜42として、PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラー)厚み125μmを、両面テープ(日東電工株式会社製)を用いて、枠14に対して固定した。枠14のもう片側には、厚み2mmで枠外形(20mmの正方形)に大きさを合わせたアクリル板を背面板18として固定した。これによって、片面膜(42)、片面遮音板(背面板18)となるセル構造の防音セル40を作製した。
この防音セル40の1セルをセルAと呼び、測定を行った。
【0120】
音響特性は、自作のアクリル製音響管(管状部材32:図14参照)に4本のマイクを用いて伝達関数法による測定を行った。この手法は、「ASTM E2611-09: Standard Test Method for Measurement of Normal Incidence Sound Transmission of Acoustical Materials Based on the Transfer Matrix Method」に従う。音響管(32)としては、例えば日本音響エンジニアリング株式会社製のWinZacと同一の測定原理である。この方法で広いスペクトル帯域において音響透過損失を測定することができる。特に、透過率と反射率を同時に測定することで、サンプルの吸収率も正確に測定した。100Hz〜4000Hzの範囲で音響透過損失測定を行った。音響管(32)の内径は40mmであり、4000Hz以上までは十分に測定することができる。
この伝達関数法を用いて、セルAの音響特性を測定した。配置は、セルAの膜面が音響管(32)の断面に垂直(音響管(32)の長さ方向と膜面が平行)の配置とした。セルAが含まれる断面を考えると、セルAは音響管(32)内の19%しか面積を専有せず、即ち略81%が開口部である状態となっている。この測定で測定した吸収率を図36に記載した。
また、参考例1及び測定結果について表1に示した。
【0121】
(実施例1)
次に、上記セルAを合計2つ作製した。図1に示す防音構造10のように、2つのセルAの膜42の膜面同士が向かい合う配置として、その膜面同士の層間距離が1mmになるように調整した配置とした。この2セル向かい合わせ防音構造の音響特性を測定した。配置は、図14に示す防音構造30のように、2つの膜42の膜面が音響管(32)の断面に垂直になるような配置(すなわち、参考例1と同じ配置にして振動膜(膜42)が向かい合わせになるような配置)で測定した。以下、特別に記述のない限り、配置は、実施例1と同様の配置方法で測定した。測定した吸収率を図36に記載した。
また、実施例1及び測定結果について表1に示した。
参考例1において、吸収率の極大となる周波数は1770Hzであったのに対して、実施例1では1565Hzとなった。即ち、2つの膜42の膜面を向かい合わせるだけで吸収する周波数が低周波シフトすることが分かった。
【0122】
(参考例2)
実施例1と同じ体積の単一セルとの比較を目的として、参考例1の枠厚が10mmであった代わりに枠厚を20mmとして、他の条件は変化させずに、参考例1と同様に単セルを作成した。即ち、膜42とこれに対向する背面板18との距離を参考例1の10mmから20mmに変化させた。この単一セルの音響特性を測定し、吸収率を図36に記載した。
また、参考例2及び測定結果について表1に示した。
吸収率の極大周波数は1650Hzとなった。即ち、実施例1の膜向かい合わせ防音構造30では、単一セルで同一体積の吸収周波数と比較しても、低周波側に吸収ピークが現れていることが分かった。よって、単一セルでは到達することのできない低周波側での吸音を、膜向かい合わせ防音構造30で達成できることが分かる。
【0123】
(実施例2)
上記セルAの2セルに関して、実施例1において層間距離を1mmとした代わりに層間距離を2mmとして、他は同様にして2セルの膜向かい合わせ防音構造30を作成した。この音響特性を測定した。
(実施例3)
上記セルAの2セルに関して、実施例1において層間距離を1mmとした代わりに層間距離を3mmとして、他は同様にして2セル向かい合わせ防音構造30を作成した。この音響特性を測定した。
(実施例4)
上記セルAの2セルに関して、実施例1において層間距離を1mmとした代わりに層間距離を0.5mmとして、他は同様にして2セルの膜向かい合わせ防音構造30を作成した。この音響特性を測定した。
以上の実施例2〜4の測定結果を、実施例1も合わせて、図37に示した。
また、以上の実施例2〜4及びその測定結果について表1に示した。
【0124】
(比較例1)
実施例1において、2セルの膜面同士の層間距離を1mmではなく20mmまで離した系を比較例1とした。
まず、実施例1の防音構造30のサンプル(層間距離1mm)と参考例1のサンプル(単独)を直径8cmの音響管32で測定し、直径4cmの音響管測定と吸収ピーク周波数に変化がないことを確認した。次に、比較例1のサンプル(層間距離20mm)を測定した。
比較例1及びその測定結果について表1に示した。
吸収ピーク周波数は1770Hzとなった。即ち、参考例1のサンプルと変化がなく、層間距離20mmまで離すと低周波化の効果がないことが分かった。
実施例1〜4を比較すると、防音セル40(防音ユニット12)の膜面同士の層間距離が近づくほど吸収ピーク周波数は低周波シフトし、層間距離に応じて変化することが分かった。特に、層間距離が1mm以下の水準(実施例1と実施例4)では、同一体積の単一セルと比較しても低周波側に吸収ピークを持つため、小型、かつ吸収の低周波化に非常に有用であることが分かる。
【0125】
(参考例3)
素材をアクリルとし、開口部13の大きさ40mmの正方形、枠厚15mm、枠幅5mmの枠14を作製した。その片面に、膜42として、PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラー)厚み125μmを、両面テープ(日東電工株式会社製)を用いて、枠14に対して固定した。枠14のもう片側には、厚み5mmで枠外形に大きさを合わせたアクリル板を背面板18として固定した。これによって、片面膜、片面遮音板となるセル構造の防音セル40を作製した。
この防音セル40の1セルをセルBと呼ぶ。セルBは、セルAに対して、枠サイズが大きく背面距離も大きいために、共振(共鳴)による吸収周波数はセルBの方がセルAよりも低周波側に現れる。
音響管32の内径は80mmである音響管32を使用し、透過率、反射率、及び吸収率を測定した。この場合、2000Hz以上までは十分に測定することができる。
結果を図38に示した。
また、参考例3及び測定結果について表1に示した。
【0126】
(実施例5〜8)
次に、上記セルBを合計2つ作成した。2つのセルBの膜42の膜面同士が向かい合う配置として、その膜面同士の層間距離が0.5mm(実施例5)、1mm(実施例6)、2mm(実施例7)、3mm(実施例8)となるようにそれぞれ調整した配置とした。この2セルの膜向かい合わせ防音構造30の音響特性をそれぞれ測定した。測定した吸収率を図38に示した。
実施例5〜8では、参考例3と比較して、それぞれ低周波側に吸収ピークはシフトし、そのシフト幅は、振動膜42間の層間距離に応じて変化することが分かった。実施例5では、452Hzの低周波側まで吸収することができていることが分かる。
(参考例4)
参考例3のセルBの代わりに、厚み方向を30mmとして、他の条件は同じくして作製した単一のセルを測定した。この場合、セルの体積としては、実施例5〜8の2セルと略同一となる。音響管測定の結果を図38に示した。層間距離が1mm以下となる実施例5及び6に関しては、この参考例4と同一体積であっても、背面構造の体積をただ大きくするより、膜近接を行うことでより低周波化できていることが分かる。
【0127】
(参考例5)
参考例5として、図24及び図25に示す防音セル(単セル)40bを作製した。
素材をアクリルとし、開口部13の大きさ16mmの正方形、枠厚10mm、枠幅2mmの枠構造の枠14を作製した。その片面に、穿孔板46として、20mm角の正方形状アクリル板2mm厚の中央部に直径3mmの貫通孔(第1貫通孔)48を形成した孔空きアクリル板を、両面テープ(日東電工株式会社製)を用いて、枠14の部分に対して固定した。貫通孔48を有する穿孔板46は、レーザーカッタによって作成した。枠14のもう片側には、厚み2mmで枠外形に大きさを合わせたアクリル板を背面板18として固定した。これによって、片面貫通孔有穿孔板(46)、片面遮音板(背面板18)となるセル構造の防音セル40bを作製した。この防音セル40bの1セルをセルCと呼ぶ。セルCは、貫通孔48を有し背面構造が遮蔽されているために、ヘルムホルツ共振器(共鳴器)として機能する。このセルC単体の音響特性を測定した。
【0128】
(実施例9〜11)
上記セルCを2つ作成した。2つのセルの膜面同士が向かい合う配置として、その膜面同士の層間距離が1mm(実施例9)、2mm(実施例10)、3mm(実施例11)となるようにそれぞれ調整した配置とした。この2セルの膜向かい合わせ防音構造30の音響特性をそれぞれ測定した。
参考例5及び実施例9〜11の測定した吸収率を図39に示した。
また、参考例5、実施例9〜11、及びその測定結果を表1に示した。
ヘルムホルツ共振(共鳴)構造の防音構造30においても、吸音構造である貫通孔有穿孔板46を近接させることによって吸収周波数が低周波化することが分かった。
【0129】
(参考例6)
参考例6として、図26及び図27に示す防音セル(単セル)40cを作製した。
素材をアクリルとし、開口部13の大きさ40mmの正方形、枠厚15mm、枠幅5mmの枠構造の枠14を作製した。その片面に、微細穿孔板50として、20μm程度の微細貫通孔(第2貫通孔)52をランダムに有するアルミ箔を、両面テープ(日東電工株式会社製)を用いて枠14の部分に対して固定した。貫通孔52の平均開口径は24μm、表面の開口率は5.3%、アルミ箔の厚みは20μmである。枠14のもう片側には、厚み5mmで枠外形に大きさを合わせたアクリル板を背面板18として固定した。これによって、片面が微細貫通孔52を多数有する膜(微細穿孔板50)、もう片面が遮音板(背面板18)となるセル構造の防音セル40cを作製した。貫通孔52の摩擦は、径が小さいほどに寄与が大きいために、ヘルムホルツ共鳴のような開口径が数mmオーダの場合と比べて、微細貫通孔52の場合の方が音響に対する抵抗としてよく機能し、吸収する周波数の帯域が広くなる。この防音セル40cの1セルをセルDとよぶ。このセルD単体の音響特性を測定した。
【0130】
(実施例12〜15)
参考例6のセルDを2つ作成した。2つのセルの膜面同士が向かい合う配置として、その膜面同士の層間距離が0.5mm(実施例12)、1mm(実施例13)、2mm(実施例14)、3mm(実施例15)となるようにそれぞれ調整した配置とした。この2セルの膜向かい合わせ防音構造30の音響特性をそれぞれ測定した。
参考例6及び実施例12〜15において測定した吸収率を図40に示した。
また、参考例6、実施例12〜15、及びその測定結果を表1に示した。
参考例6も含めて、微細貫通孔52を吸音構造とすることで、吸収スペクトルのピークは、膜振動やヘルムホルツ共鳴と比較して広帯域化する。一方で、吸収周波数が背面構造のサイズ自体に強く依存するため、低周波側で広い吸音特性を出すことは、サイズを保ったままでは難しかった。
実施例12〜15の各膜近接防音構造では、元の参考例6に対して吸収率が低周波化し、かつピーク値も大きくなっている。吸収スペクトルが広帯域な特徴はそのまま残っているため、微細貫通孔吸音構造の利点を残したまま、吸収の低周波化を実現できた。
【0131】
(参考例6A)
参考例6において、「開口部13の大きさ40mmの正方形、枠厚15mm、枠幅5mmの枠構造」の枠14の代わりに「開口部13の大きさ16mmの正方形、枠厚30mm、枠幅2mmの枠構造」の枠14を用いた以外は、参考例6と同様にして、セル構造の防音セル40cを作製した。この防音セル40cの1セルをセルEと呼ぶ。
セルE単体の音響特性を、音響管を用いて測定した。
(実施例15A−15B、及び比較例4)
セルEを2つ作成し、吸音構造である微細貫通孔を多数有する膜同士の層間距離を1mm(実施例15A)、5mm(実施例15B)、及び20mm(比較例4)とした。この2セルの膜向かい合わせ防音構造30の音響特性を、それぞれ音響管で測定した。
参考例6A、実施例15A〜15B、及び比較例4において測定した吸収率を図40Aに示した。
また、参考例6A、実施例15A〜15B、及び比較例4、並びにその測定結果を表1に示した。
参考例6とは枠14のサイズが異なる参考例6Aの場合でも、このようにサイズの異なる枠14の枠構造と微細貫通孔52を有する微細穿孔板50とを有するセルE(防音セル40c)を2つ用いる防音構造30に対して2つのセルEの膜面同士の層間距離を変化させると、吸収周波数ピークがシフトすることが分かった。
【0132】
(実施例16〜18)
防音セル近接構造の配置方法と吸収特性について調べた。実施例4、1及び2の各セルAを、図17に示すように、音響管32内で90度回転させて、吸収膜面が音響管32の断面と平行に配置されるようにした。層間距離が0.5mm(実施例16)、1mm(実施例17)、及び2mm(実施例18)の各防音構造の30cのそれぞれの音響特性を実施例1と同様にして測定した。
測定した吸収スペクトルを図41に示した。
また、実施例16〜18、及びその測定結果を表2に示した。
図41及び表2からもわかるように、配置方法が実施例4、1及び2のような向きでも、実施例16〜18のような向きでも、吸収ピーク周波数はほとんど変化しないことが分かった。よって、セルの向きに関するロバスト性があることが分かった。
【0133】
(実施例19−20)
防音セル近接構造の防音ユニット組24を複数個並べたときの効果について調べた。
層間距離が0.5mmである、実施例4の構造を2ペア作製し、それらを連続して配置した。配列方法は、図15に示す防音構造30aのような実施例4と同様の並べ方の配置である実施例19の配置と、図18に示す防音構造30dのような実施例16と同様の並べ方の配置である実施例20の配置の2種類とし、それぞれ音響特性を測定した。
実施例19の測定結果を実施例4の測定結果と共に図42に示し、実施例20の測定結果を実施例16の測定結果と共に図43に示した。
また、実施例19〜20、及びその測定結果を表2に示した。
どちらの場合でも、1セルの場合より連結させた方が、吸収率ピークが増大する。よって、吸収体近接構造を複数個用いて、所望の吸収率を得ることができる。
【0134】
(実施例21−22)
異なる構成の吸収体近接構造の防音ユニット組24を複数個並べた防音構造30bの効果について調べた。
層間距離が0.5mmである実施例4の構造と層間距離が2mmである実施例2の構造をそれぞれ作製し、それらを連続して配置した。図16に示す防音構造30bとは逆の配置となるが、0.5mm層間距離の防音ユニット組24をスピーカ側(音の入射側)に配置し、その後(下流側)に2mm層間距離の防音ユニット組24を配置した構成(実施例21)と、図16に示す防音構造30bのように、反対に、スピーカ側から2mm層間距離の防音ユニット組24、0.5mm層間距離の防音ユニット組24の順に配置した構成(実施例22)の2種類の配置で測定を行った。
測定結果を図44に示した。
また、実施例21〜22、及びその測定結果を表2に示した。
それぞれの防音構造の吸収ピークに対応したダブルピーク構造となる。スピーカ側に配置したデバイス(防音ユニット組24)の吸収ピーク周波数における吸収率が大きくなることもわかった。
【0135】
(実施例23−27、参考例7)
図45に示す防音構造30gのように、両面が吸音部材16(16a,16b)であり、かつ開放されている場合として、両面共に吸音部材16である穿孔板46に貫通孔48が形成されていて、ヘルムホルツ共鳴のように機能する防音セル40dを基本として、これらの防音セル40dを2つ並べて、2つの防音セル40dの膜面同士の層間距離を変化させた測定を行った。
素材をアクリルとし、開口部13の大きさ16mmの正方形、枠厚10mm、枠幅2mmの枠構造の枠14を作製した。その両面に、穿孔板46として、20mm角の正方形状アクリル板2mm厚の中央部に直径2mmの貫通孔48を設けた孔空きアクリル板を、両面テープ(日東電工株式会社製)を用いて、枠14の部分に対して固定した。貫通孔48を有する穿孔板46は、レーザーカッタによって作製した。これによって、両面に貫通孔有穿孔板46となる単一セル構造の防音セル40dを作製した。
この単一セル構造の防音セル40dを、参考例7とし、その音響特性を測定した。参考例7、及びその測定結果を表2に示した。
参考例7では、1408Hzにおいて、ヘルムホルツ共鳴現象による吸収ピークが現れた。
【0136】
次に、上記単一セル構造の防音セル40dを2セル作製し、2セルの防音セル40dの層間距離を、0.5mm(実施例23)、1mm(実施例24)、2mm(実施例25)、3mm(実施例26)、4mm(実施例27)として、それぞれの防音構造30gの音響特性を測定した。測定結果を図46に示した。
また、実施例23〜27、及びその測定結果を表2に示した。
両面が吸収構造であり、かつ開放されていても、近接させることによって吸収率ピークの低周波が生じ、そのシフト量が層間距離に依存することが分かった。参考例7と比較すると、実施例23〜27のどの実施例でも単一防音セル40dの吸収周波数より低周波シフトしていることが分かる。
【0137】
(実施例28−33)
実施例9よりも背面体積の大きいヘルムホルツ共鳴(共振)構造の防音構造30(図14参照)を作製し、層間距離も近づけることで、近接による低周波化の効果がより低周波側で生じるか検討した。
素材をアクリルとし、開口部13の大きさ40mmの正方形、枠厚10mm、枠幅2mmの枠構造の枠14を作製した。その片面に、穿孔板46として、44mm角の正方形状アクリル板2mm厚の中央部に直径2mmの貫通孔48を設けた孔空きアクリル板を、両面テープ(日東電工株式会社製)を用いて、枠14の部分に対して固定した。枠14のもう片側には、厚み2mmで枠外形に大きさを合わせたアクリル板を背面板18として固定した。これによって、片面貫通孔有板(穿孔板46)、片面遮音板(背面板18)となる単一セル構造の防音セル40b(図24、及び図25参照)を作製した。
この単一セル構造の防音セル40bを、参考例8とし、その音響特性を測定した。参考例8、及びその測定結果を表2に示した。
参考例8では、400Hzにおいて、ヘルムホルツ共鳴現象による吸収ピークが現れた。
【0138】
次に、上記単一セル構造の防音セル40bを2つ作成し、互いの穿孔板46の孔面が向かい合うように配置して、2セルの防音セル40bの層間距離を変化させた。
層間距離を0.2mm(実施例28)、0.4mm(実施例29)、0.6mm(実施例30)、0.8mm(実施例31)、1mm(実施例32)、5mm(実施例33)として、それぞれの防音構造30の音響特性を測定した。
その測定結果を表2に示した。
500Hz以下の低周波領域においても近接による低周波化の効果が現れ、参考例8の単独セルの吸収周波数よりも低周波側にシフトした。最も近接させた実施例28の場合では161Hzに吸収効果を生じることが分かった。このように、低周波側を比較的小型に吸収する方法として有用に機能することが分かる。
【0139】
(実施例34〜35)
2枚の膜間のスリットについて、板を配置するなどしてスリットを塞ぎ、音を閉じ込めることでより吸音効果の低周波化が望める。実施例4の構成に対して、図7に示す防音構造10eのように、後ろ側に板22を置いた構成を実施例34とし、図8に示す防音構造10fのように、音の侵入方向以外の3方向を板22及び23で塞いだ構成を実施例35として、それぞれ測定を行った。
その結果を表2に示した。
スリット20を音の侵入方向以外を塞ぐことによって、音圧がスリット20内で高まることで状態が変化し、低周波シフトを生じたと考えられる。
【0140】
(実施例36〜40)
膜振動による防音セル40(図21参照)では、膜42のサイズが大きくなるほど低周波側に吸収の共鳴ピークが現れることが知られている。本発明の防音構造の構成では2セルの防音セル40の膜42の膜面同士の層間距離を近接させる構成となっている。この2セルの防音セル40の合計体積を維持したまま、膜42のサイズを大きくすることができる。
そこで、図6に示す防音構造10cのように、対面する2つのセル(防音ユニット12c及び12d)がそれぞれ斜め向きの辺(吸音部材16c及び16d)を持つ台形状の断面を持つ形状とし、それらを向かい合わせることができる。その斜め辺の角度をθ1として、θ1を変化させたセルをそれぞれ作製した。実施例1と同様に、膜(吸音部材16c及び16d)として、PETは、125μm厚を用い、各セルの背面側の開口は、実施例1と同じく16mm角の正方形とした。また、枠14の枠幅も2μmとした。それぞれ、θ1の角度が10度(実施例36)、20度(実施例37)、30度(実施例38)、及び40度(実施例39)になるように枠14を作成し、それぞれにPETの膜を固定したセルを2セルずつ作製した。それぞれを対にして、膜(吸音部材)同士の層間距離を1mmとして、各防音構造10cの音響特性を測定した。
吸収ピーク周波数等の測定結果を表3に示した。θが大きくなり、膜のサイズが大きくなるほど、吸収ピーク周波数は低周波側にシフトしている。
また、実施例40では、最も低周波側にシフトしていた実施例39の構成で層間距離を縮めて0.2mmとしたときの結果を示した。膜が斜めになっている場合においても層間距離による吸収周波数のシフトが起こり、層間距離が近いことで低周波化することが分かった。
【0141】
(実施例41〜44)
セル同士の位置ずれについて検討を行った。
図4に示す防音構造10aのように、膜面内(吸音部材16aと16bの)方向の位置ずれδと、周波数シフト量との関係を調べた。
実施例1の層間距離1mmの構成において、平行方向へのずれ量δを4mm、8mm、12mm、及び16mm(実施例41−44)とした。枠サイズ(開口部13の大きさ)が16mmであったため、枠サイズの1/4ずつずらしたことになる。これらの防音構造10aの音響特性を測定した。
得られた周波数シフト量を表3に示した。参考例1の単独セル状態との周波数差により、ずれ量が16mm、即ち枠サイズ分ずれたときは周波数シフトが3Hzしかないことが分かる。これより、吸音部材同士は向かい合う面積があった方が望ましい。低周波化のためには、できるだけ吸音部材同士の重なりは大きい方がより望ましい。
一方で、膜(吸音部材)内方向の位置ずれでも表に示した通りに周波数が変化するため、周波数の調整方法としては、膜面同士の層間距離を変化させるほかに、膜面に平行方向にセルをずらしていくことでも周波数を調整することができる。実際に連続的にずれ量を変化させて、周波数ピーク量が連続的に変化することも確かめることができた。
【0142】
(実施例45〜50)
セルの平行度
図5に示す防音構造10bのように、向かい合う吸収構造の防音セル(防音ユニット12a及び12b)の膜面(吸音部材6aと16bの表面)同士が傾いて配置された場合の、周波数シフト量の関係について調べた。
まず、実施例1に対応する、膜面同士の層間距離1mmで向かい合う防音セルの膜面(吸音部材)について、角度θを0度(実施例1)、2.5°(実施例45)、及び5度(実施例46)と変化させた。ここで、「層間距離」は向かう合う膜同士の層間距離の平均とした。即ち、膜の中央部を中心にして回転させると「距離」は変化しない。また、幾何学的に吸音部材同士の平均距離を1mmに保ち、かつ2セルが接しないためには、5度程度までの回転のみが許容される。
これらの防音構造10bの音響特性を測定した。得られた周波数シフト量を表3に示した。
表3に示すように、回転に関して、周波数はほとんど変化しなかった。
次に、同様にして距離1mmではなく距離3mmに調整した吸収構造の防音セルに関して、角度θを0度から15度まで5度おきに変化させた(実施例47−50)。
これらの防音構造10bの音響特性を測定した。得られた周波数シフト量を表3に示した。
この場合においても、吸収ピーク周波数はほとんど変化しなかった。
よって、防音セルの膜面同士の平均距離を保つ限り、膜同士の平行度に傾きがあっても吸収ピーク周波数はほとんど変化しないことが分かった。
【0143】
(参考例9、及び10)
参考例9として、枠14の開口部13の大きさ(枠サイズ)、及び穿孔板46である孔空きアクリル板の貫通孔(第1貫通孔)48の貫通孔径以外は、参考例5と同様にして、素材をアクリルとし、開口部13の大きさ20mmの正方形、枠厚10mm、枠幅2mmの枠構造の枠14と、貫通孔径を2mmの貫通孔48の穿孔板46を備える防音セル40b(ヘルムホルツ共鳴型防音セル:図24及び図25参照)を作製した。単独の防音セル40bの音響特性を測定した。
また、参考例10として、参考例9の貫通孔48の2mmの貫通孔径を3mmとした防音セル40bも作成し、同様に音響特性を測定した。
(実施例51−54)
上記の貫通孔径2mmのセルと貫通孔径3mmのセルを向かい合わせとし、穿孔板46の表面同士の層間距離を近接させて音響管内で防音構造30を構成し、その音響特性を測定した。貫通孔48の位置は、貫通孔48の中心が一致するように合わせた。
層間距離を0.5mm、1mm、2mm、及び3mm(実施例51−54)とした。
【0144】
測定した吸収率を図47に示した。参考例9、及び10も含め、実施例51〜54の、及びそれらの測定結果を表3に示し、それらの吸収ピーク周波数を表3にまとめた。
異なる共鳴セル(共鳴型防音セル)を合わせたことにより、図47にも示されているように、吸収ピークが2つ現れた。また、表3に示されるように、高周波側の吸収ピークは距離であまり周波数が変化せずに、貫通孔径3mmの単独共鳴セルの測定、すなわち高周波側に共鳴吸収ピークをもつ共鳴に対応すると考えられる。
一方で、これらの実施例では、低周波側の共鳴吸収ピークは、層間距離を小さくすると低周波側に大きくシフトすることが分かる。層間距離が0.5mmの場合は、貫通孔径2mmの単独共鳴セルに比較して275Hz低周波側にシフトしている。
このように、異なる共鳴セル同士の距離を近接させた場合でも、層間距離を変化させることによって共鳴吸収ピーク周波数のシフトが現れることが分かった。
異なる共鳴セル同士の特徴をまとめると、以下の特徴が挙げられる。
1.低周波側の吸収ピークは、層間距離に依存して共鳴(共振)周波数が大きくシフトする。一方で、吸収量は層間距離ではあまり変化しない。
2.高周波側の吸収ピークは、層間距離ではあまり共鳴(共振)周波数がシフトしない。一方で、吸収量は層間距離が小さいときには小さく、層間距離を広げることで大きくなる。
【0145】
(参考例11)
参考例11として、振動膜(膜42)の代わりに繊維シートを使用した以外は、参考例2と同様にして、繊維シートとこれに対向する背面板との距離が20mmとなる繊維シート型防音セル(単セル)を作製した。
即ち、素材をアクリルとし、開口部の大きさ16mmの正方形、枠厚20mm、枠幅2mmの枠を作製し、その片面に、厚み約40μmのティシュペーパー(大王製紙株式会社製「エリエール贅沢保湿」)を1枚、両面テープ(日東電工株式会社製)を用いて枠の部分に対して固定し、背面はアクリル板で閉じ切った。
(実施例55−58、及び比較例5)
参考例11のセルを2つ作成し、2つのセルの繊維シート同士が向かい合わせになるように配置した。2つのセルの配置として、その繊維シート間距離が、1mm(実施例55)、2mm(実施例56)、3mm(実施例57)、5mm(実施例58)、20mm(比較例5)となるようにそれぞれ調製した配置とした。
【0146】
参考例11、実施例55〜58、及び比較例5において測定した吸収率を図49に示した。
また、参考例11、実施例55〜58、及び比較例5、及びその測定結果を表4に示した。
2つの繊維シート型防音セル間の距離を小さくすればするほど、吸収ピークが低周波側にシフトすることが明らかとなった。
【0147】
(参考例12−13)
参考例12として、枠14の枠厚、穿孔板46の厚み、及び貫通孔48の形状以外は、参考例5と同様にして、ヘルムホルツ共鳴型防音セルを作製した。
即ち、素材をアクリルとし、開口部の大きさ16mmの正方形、枠厚20mm、枠幅2mmの枠を作製し、その片面に、穿孔板46として、板厚を5mmとし、中央部に一辺5mmの正方形状の貫通孔を形成した孔空きアクリル板を固定し、背面はアクリル板で閉じ切った。
参考例13として、穿孔板の板厚を2mmに変更した以外は、参考例12と同様にして、ヘルムホルツ共鳴型防音セルを作製した。
(実施例59−63、及び比較例6)
参考例12で作製した防音セルと、参考例13で作製した防音セルを向かい合わせになるように配置した。2つのセルの配置として、その穿孔板間の距離が、1mm(実施例59)、2mm(実施例60)、3mm(実施例61)、5mm(実施例62)、10mm(実施例63)、20mm(比較例6)となるようにそれぞれ調製した配置とした。
【0148】
参考例12〜13において測定した吸収率を図50に示し、実施例59〜63、及び比較例6において測定した吸収率を図51に示した。
また、参考例12〜13、実施例59〜63、及び比較例6、並びにその測定結果を表5に示した。
穿孔板の板厚が異なる共鳴セル(共鳴型防音セル)を合わせたことにより、図51にも示されているように、吸収ピークが2つ現れた。また、表5に示されるように、高周波側の吸収ピークはセル間の距離であまり周波数が変化しない一方で、低周波側の共鳴吸収ピークは、セル間の距離を小さくすると低周波側に大きくシフトすることが分かる。
このように、穿孔板の板厚が異なる共鳴セル同士の距離を近接させた場合も、実施例51〜54と同様に、セル間の距離を変化させることによって共鳴吸収ピーク周波数のシフトが現れることが分かった。
【0149】
(参考例14−16)
図24及び図25に示す参考例5の防音セル40bの穿孔板46の背後の閉空間に、グラスウールを入れたセル、及び入れないセルを作製した。
即ち、穿孔板46とこれに対向する背面板との距離が10mmであるセルの閉空間に、流れ抵抗率20000(Pa s/m^2)であるグラスウールを入れない単セル(参考例14)、厚み5mmのグラスウールを入れた単セル(参考例15)、及び厚み10mmのグラスウールを入れた単セル(参考例16)をそれぞれ用意した。参考例15のセルは、貫通孔から離間した背面側にグラスウールが配置された状態、参考例16のセルは、穿孔板46の背後の閉空間がグラスウールで充たされた状態となる。
(実施例64−81)
参考例14〜16の単セルをそれぞれ2つずつ作成し、同じ構成のセル同士が向かい合わせになるように配置した。2つのセル(二セル)の配置として、セル間の距離が、0.5mm(実施例64〜66)、1mm(実施例67〜69)、2mm(実施例70〜72)、3mm(実施例73〜75)、5mm(実施例76〜78)、10mm(実施例79〜81)となるようにそれぞれ調製した配置とした。
【0150】
参考例14〜16について測定した吸収率を図52、2つのセル間の距離が1mmとなるように調整された実施例67〜69において測定した吸収率を図53に示した。
また、参考例14〜16、実施例64〜81、及びその測定結果を表4に示した。
図52から、穿孔板46の背後の閉空間にグラスウールを入れなかった場合が最も吸収ピークが大きいことがわかる。また、穿孔板46の背後の閉空間をグラスウールで充たした場合(即ち、厚みが大きいグラスウールを入れた場合)に、吸収の周波数帯域が広くなることが分かる。
図52に示す単セルの参考例14〜16において測定した吸収率と、図53に示す2つのセル(二セル)間の距離が1mmとなるように調整された実施例67〜69において測定した吸収率を比較すると、どの二セルの場合においても、吸収のピークが低周波側にシフトしていることが分かる。また、どの二セルの場合においても、吸収の周波数帯域の広さは、単セルの吸収の周波数帯域の広さとほぼ同じであり、各単セルの特徴を反映していることが分かる。
また、図53に示していない実施例の測定結果を含む表6からも、2つのセル間の距離を小さくするほど、共鳴吸収ピークが低周波側にシフトしていることが分かる。また、図53に示していない実施例の吸収の周波数帯域の広さも、各単セルの特徴を反映していた。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
【表3】
【0154】
【表4】
【0155】
【表5】
【0156】
【表6】
【0157】
以上の実施例の結果から明らかなように、本発明の防音構造は、防音セル(防音ユニット)単セルの場合に対して2つ以上の防音セル(防音ユニット)を近接配置する構造であるので、吸収ピーク周波数を低周波化でき、また、防音ユニット間の層間距離を変えることで、吸収ピーク周波数を調整でき、騒音源に対して最適な防音をすることができる。
【0158】
また、本発明の防音システムの確認を行った。
騒音源に対して、防音ユニットの防音部材の層間距離を調整することにより吸収周波数を自動的に調整して、適切な周波数において吸収を生じさせる図35に示す防音システム70を作成した。
図35に示したとおり、マイク72、PC74、自動ステージ76上に設置された本発明のデバイス(図1に示す防音構造10)の構成とした。防音構造としては、実施例1で使用したサンプルとした。まず、膜近接防音構造10を自動ステージ76にとりつけ、膜間距離を自動ステージ76によって調整できるようにした。距離を自動ステージ76で調整したところ、実施例1〜4の各結果を再現することを確認した。
更に、防音システム70に対してフィードバック機構を設けることで、事前に吸収周波数-膜間距離の対応表を作成していなくても自動消音システムを構築できた。これにより、もしデバイス特性が変化した場合などでも自動消音機構を機能させることができた。
【0159】
次に、防音ユニットの防音部材の層間距離について確認を行った。
COMSOLを用いた有限要素法によって、実施例1と同様に16mmの枠サイズ上に125μmのPETフィルムを固定した系を計算した。単独セルと、2つのセルで層間距離を0.2mm〜1.0mmまで0.2mmおきに、2mm〜20mmまで1mmおきに変化させた系を計算した。それぞれの吸収スペクトルを計算して、吸収ピーク周波数を求めた。層間距離が20mmの場合は、単独セルの吸収ピーク周波数と変化がなかった。よって、層間距離は20mm未満がよい。
各距離に関する吸収ピーク周波数を、単独セルの場合の吸収ピーク周波数から引いた周波数、すなわち単独セルの吸収ピーク周波数からの周波数シフト量をそれぞれ求めた。
同様にして、枠14のサイズを24mm、32mmと変化させた場合にも同様にして計算し、周波数シフト量を求めた。
以上、3水準の周波数シフト量を図48に示した。枠14のサイズが違うためにそれぞれの共振周波数は異なるが、周波数シフト量は、それぞれの水準でほぼ同じ振る舞いをすることが分かる。
【0160】
これらのデータより、10Hz以上シフトするのは吸音部材同士の平均距離が15mm以下のとき、20Hz位上シフトするのは距離が12mm以下のとき、30Hz以上シフトするのは距離が9mm以下のときであることが分かる。
例えば、振動膜を用いた吸音構造は、吸収ピーク幅が比較的狭く、例えば、参考例1においては、±30Hz程度変化すると、吸収率がピークから25%程度変化する。更に、共振を強くしてピークを高めるほどに半値幅は狭くなる傾向にある。よって、上記のような数10Hz程度の周波数シフト量であっても、十分に吸収率を変化させる調整を行うことができる。
よって、2つの吸音構造間の吸音部材同士の平均距離は、20mm未満であり、15mm以下が望ましく、12mm以下がより望ましく、9mm以下が更に望ましい。低周波化のためには、近づければ近づけるほど低周波シフト量が大きくなる。ただし、吸収構造同士が完全に接してしまうと吸収構造に音が達しないため、離間する必要はある。更に、実際の距離の制御の難しさと、音が吸収構造の間のスリット上の領域を通過する必要があり、スリット幅が狭すぎると、壁面上で生じる摩擦によりそのスリット自体の音響透過率が小さくなることを考えると、枠サイズの1000分の1程度以上の距離は、離すことが望ましいことが分かる。即ち、20mmの枠サイズの構造においては、20μm程度以上は、離しておくことが望ましいことが分かる。
以上から、本発明の防音構造の効果は、明らかである。
【0161】
以上、本発明の防音構造についての種々の実施形態及び実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、これらの実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【0162】
上述した種々の防音構造の防音ユニットの例では、枠と吸音部材とは、それぞれ別々に製造され、吸音部材は枠の開口部に取り付けられるものであるが、本発明はこれに限定されず、枠と吸音部材とは、一体となった構成を有するものであっても良い。
即ち、本発明の防音構造の防音ユニットを構成する防音セル、例えば振動膜型防音セルである図21に示す防音セル40において、開口部13を有する枠14と、枠14の開口部13に取り付けられ、吸音部材16として機能する膜42とは、同じ材質からなり、一体的に形成されていて良い。更に、枠14と膜42とに加え、膜42と対向する枠14の開口部13に取り付けられる背面板18も、同じ材質からなり、一体的に形成されていて良い。
また、ヘルムホルツ防音セルである図22及び図23に示す防音セル40aにおいて、開口部13を有する枠14と、枠14の開口部13に取り付けられ、吸音部材16として機能し、貫通孔(第1貫通孔)48を備える穿孔板46、又は穿孔膜とは、同じ材質からなり、一体的に形成されていて良い。更に、枠14と穿孔板46、又は穿孔膜とに加え、穿孔板46、又は穿孔膜と対向する枠14の開口部13に取り付けられる背面板18も、同じ材質からなり、一体的に形成されていて良い。
【0163】
以上のように、枠と吸音部材(振動膜、穿孔板、又は穿孔膜)とが、又は枠と吸音部材(振動膜、穿孔板、又は穿孔膜)と背面板とが一体となった構成を持つ本発明の防音セルは、圧縮成形、射出成形、インプリント、削り出し加工、及び3次元形状形成(3D)プリンタを用いた加工方法などの単純な工程で作製することができる。
このように、本発明の防音構造の防音ユニットとして用いられる防音セルを、枠と吸音部材(振動膜、穿孔板、又は穿孔膜)とを、更には、これらに加えて背面板とを同じ材料として一体形成することにより、環境変化や経時に対する耐性が高まり、安定した防音性を得ることができることに加え、枠への吸音部材(振動膜、穿孔板、又は穿孔膜)の均一接着及び貼り付け、更には背面板の均一接着及び貼り付け等の製造上の問題も回避することができる。
【符号の説明】
【0164】
10、10a、10b、10c、10e、10f、10g、10h、11、11a、11b、30、30a、30b、30c、30d、30e、30f、30g、60 防音構造
12、12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12h 防音ユニット
13、13a、13b、13c1、13c2、13d1、13d2 開口部
14、14a、14b、14c、14d 枠
16、16a、16b、16c、16d 吸音部材
18、18a、18b、18c、18d 背面板
19a、19b 対向面
20、20a、20b スリット
21、21a、21b 鏡像面
22、23 板
24、24a 防音ユニット組
26 壁
28、28a 防音壁
32 管状部材(音響管)
32a 内壁面
33 孔部
40、40a、40b、40c 防音セル
42 膜
44、48 貫通孔(第1貫通孔)
46 穿孔板
50 微細穿孔板
52 貫通孔(微細貫通孔、第2貫通孔)
54 アルミニウム基材
56 水酸化アルミニウム皮膜
62 載置台
64 トラベリングナット
66 ドライブスクリュー
68 ねじ移動機構
70、70a 防音システム
72、72a、72b マイクロフォン(マイク)
74 パーソナルコンピュータ(PC)
76 自動ステージ
78 ノイズ源
図1
図2
図3
図4
図5
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図8A
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図40
図40A
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図49
図50
図51
図52
図53