(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625462
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】半導体製造装置および半導体製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20191216BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 622H
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-58983(P2016-58983)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2017-174959(P2017-174959A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】白ヶ澤 宏史
【審査官】
山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−266242(JP,A)
【文献】
特開2012−164839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基底部から突出して設けられ、先端が被保持部材の被保持面の外周部に当接されて前記被保持面の外周部を吸着保持する環状の第1の保持部と、
前記基底部から突出し且つ前記第1の保持部の内側に前記第1の保持部に隣接して設けられ、先端が前記被保持面に当接されて前記被保持面の前記第1の保持部によって吸着保持される部分よりも内側の部分を吸着保持する第2の保持部と、
前記基底部および前記第1の保持部によって囲まれた空間内にガスを導入するガス導入機構と、
を含み、
前記ガス導入機構は前記空間内に配置された多孔質部材を含み、前記ガスが前記多孔質部材を経由して前記空間内に導入される
半導体製造装置。
【請求項2】
基底部から突出して設けられ、先端が被保持部材の被保持面の外周部に当接されて前記被保持面の外周部を吸着保持する環状の第1の保持部と、
前記基底部から突出し且つ前記第1の保持部の内側に前記第1の保持部に隣接して設けられ、先端が前記被保持面に当接されて前記被保持面の前記第1の保持部によって吸着保持される部分よりも内側の部分を吸着保持する第2の保持部と、
前記基底部および前記第1の保持部によって囲まれた空間内にガスを導入するガス導入機構と、
を含み、
前記第1の保持部および前記第2の保持部は、互いに独立した排気系統による真空吸着により前記被保持面を吸着保持する
半導体製造装置。
【請求項3】
基底部から突出して設けられ、先端が被保持部材の被保持面の外周部に当接されて前記被保持面の外周部を吸着保持する環状の第1の保持部と、
前記基底部から突出し且つ前記第1の保持部の内側に前記第1の保持部に隣接して設けられ、先端が前記被保持面に当接されて前記被保持面の前記第1の保持部によって吸着保持される部分よりも内側の部分を吸着保持する第2の保持部と、
前記基底部および前記第1の保持部によって囲まれた空間内にガスを導入するガス導入機構と、
を含み、
前記第2の保持部は、前記第1の保持部よりも高い吸着力で前記被保持面を吸着保持する
半導体製造装置。
【請求項4】
基底部から突出して設けられ、先端が被保持部材の被保持面の外周部に当接されて前記被保持面の外周部を吸着保持する環状の第1の保持部と、
前記基底部から突出し且つ前記第1の保持部の内側に前記第1の保持部に隣接して設けられ、先端が前記被保持面に当接されて前記被保持面の前記第1の保持部によって吸着保持される部分よりも内側の部分を吸着保持する第2の保持部と、
前記基底部および前記第1の保持部によって囲まれた空間内にガスを導入するガス導入機構と、
を含み、
前記第2の保持部は、前記被保持面の延在する面方向における一端側に設けられている
半導体製造装置。
【請求項5】
基底部から突出して設けられ、先端が被保持部材の被保持面の外周部に当接されて前記被保持面の外周部を吸着保持する環状の第1の保持部と、
前記基底部から突出し且つ前記第1の保持部の内側に前記第1の保持部に隣接して設けられ、先端が前記被保持面に当接されて前記被保持面の前記第1の保持部によって吸着保持される部分よりも内側の部分を吸着保持する第2の保持部と、
前記基底部および前記第1の保持部によって囲まれた空間内にガスを導入するガス導入機構と、
前記被保持部材の前記被保持面とは反対側の面に貼り付けられた膜状部材を剥離するための剥離機構と、
を含み、
前記第2の保持部は、前記被保持面が延在する面方向において前記膜状部材の剥離が開始される側に設けられている
半導体製造装置。
【請求項6】
前記ガス導入機構は前記空間内の圧力を調整する圧力調整機構を有する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項7】
前記第1の保持部および前記第2の保持部は、真空吸着により前記被保持面を吸着保持する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項8】
前記第1の保持部および前記第2の保持部の各々の先端に設けられた弾性部材を更に含む
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項9】
前記被保持部材の前記被保持面とは反対側の面に貼り付けられた膜状部材を剥離するための剥離機構を更に含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項10】
表面に膜状部材が貼り付けられた被保持部材の前記表面とは反対側の被保持面の外周部を環状の第1の保持部によって吸着保持するとともに、前記被保持面の、前記第1の保持部によって吸着保持される部分よりも内側の部分を第2の保持部によって吸着保持するステップと、
前記第1の保持部の内側の空間内にガスを導入し、前記ガスによる圧力によって前記被保持部材を支持するステップと、
前記膜状部材の表面に粘着テープを貼り付けるステップと、
前記膜状部材を前記粘着テープとともに前記被保持部材から剥離するステップと、
を含み、
前記ガスが前記空間内に配置された多孔質部材を経由して前記空間内に導入される
半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置および半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワーデバイスは、縦方向に電流を流すデバイスであり、半導体ウエハの薄化によってオン抵抗の低減や絶縁破壊耐圧を高く維持することができる。半導体ウエハの薄化は、半導体ウエハのデバイス形成面に保護テープを貼り付けた状態で半導体ウエハの裏面を研削することにより行われる。保護テープは、半導体ウエハの研削後に半導体ウエハから剥離される。
【0003】
特許文献1には、基台と、ウエハを載置するテーブルを備えるウエハ保持回転機構と、テープ繰出し部と、剥がしヘッド部と、ヒーターカッター部とから構成される保護シート剥離装置が記載されている。保護シートが貼付されたウエハはテーブル上に載置され、所定位置に搬送される。接着テープは、テープ繰出し部から繰出され、剥がしヘッド部によって引き出され、ヒーターカッター部によって保護シートの端部に熱圧着され、所定の短い長さに切断される。次いで、剥がしヘッド部は、接着テープを保持して引っ張って保護シートをウエハから引き剥がす。
【0004】
特許文献2には、半導体ウエハの表裏何れか一方の面における外周部だけに接して半導体ウエハを保持する保持部と、保持部に連設されて半導体ウエハに対向可能に設けられた本体部と、保持部と本体部と半導体ウエハとで囲まれる保持空間を加圧又は減圧可能な圧力付与手段とを備えたシート剥離装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−291762号公報
【特許文献2】特開2012−164839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年においては、半導体ウエハの更なる薄化が望まれている。しかしながら、薄化された半導体ウエハは剛性が極めて低く、保護テープの剥離時に容易に屈曲してクラックや割れが発生する。半導体ウエハの最外周部のみを真空吸着する特許文献2に記載の手法では、保護テープの剥離開始部位において半導体ウエハが屈曲して持ち上がり、この持ち上がった部分において真空吸着による吸着力が低下して、半導体ウエハの屈曲がさらに増大して真空吸着が外れ、最終的に半導体ウエハに割れが生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、半導体ウエハ等の被保持基板に貼り付けられた保護テープ等の膜状部材を剥離する際の被保持基板の破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体製造装置は、基底部から突出して設けられ、先端が被保持部材の被保持面の外周部に当接されて前記被保持面の外周部を吸着保持する環状の第1の保持部と、前記基底部から突出し且つ前記第1の保持部の内側に前記第1の保持部に隣接して設けられ、先端が前記被保持面に当接されて前記被保持面の、前記第1の保持部によって吸着保持される部分よりも内側の部分を吸着保持する第2の保持部と、前記基底部および前記第1の保持部によって囲まれた空間内にガスを導入するガス導入機構と、を含
み、前記ガス導入機構は前記空間内に配置された多孔質部材を含み、前記ガスが前記多孔質部材を経由して前記空間内に導入される。
【0009】
本発明に係る半導体製造方法は、表面に膜状部材が貼り付けられた被保持部材の前記表面とは反対側の被保持面の外周部を環状の第1の保持部によって吸着保持するとともに、前記被保持面の、前記第1の保持部によって吸着保持される部分よりも内側の部分を第2の保持部によって吸着保持するステップと、前記第1の保持部の内側の空間内にガスを導入し、前記ガスによる圧力によって前記被保持部材を支持するステップと、前記膜状部材の表面に粘着テープを貼り付けるステップと、前記膜状部材を前記粘着テープとともに前記被保持部材から剥離するステップと、を含
み、前記ガスが前記空間内に配置された多孔質部材を経由して前記空間内に導入される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体ウエハ等の被保持基板に貼り付けられた保護テープ等の膜状部材を剥離する際の被保持基板の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る保持ステージの模式的な構成を示す平面図である。
【
図2】
図1における2−2線に沿った断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る保持ステージ上に半導体ウエハを保持して半導体ウエハの表面に保護テープを貼り付ける手順を示すフロー図である。
【
図4】半導体ウエハの表面に保護テープを貼り付ける工程を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る保持ステージ上に半導体ウエハを保持して半導体ウエハの表面に貼り付けられた保護テープを剥離する手順を示すフロー図である。
【
図6】保護テープの表面に粘着テープを貼り付ける工程を示す図である。
【
図7】保護テープを粘着テープとともに剥離する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る半導体製造装置としての保持ステージ10の上面(X−Y平面)の模式的な構成を示す平面図である。
図2は、
図1における2−2線に沿った断面図(X−Z平面)である。なお、
図2には、保持ステージ10によって保持される被保持部材としての半導体ウエハ100が保持ステージ10とともに示されている。
【0014】
保持ステージ10は、
図1に示すように、上面視(X−Y平面)における外形は円形とされており、保持ステージ10に保持される半導体ウエハ100と略同じ直径を有する。すなわち、保持ステージ10は、半導体ウエハ100と略同じ径の円形の基底部13と、基底部13の外縁に沿って基底部13から突出して設けられた第1の保持部11を有する。第1の保持部11は、
図1に示すように上面視において円環状をなしている。
【0015】
第1の保持部11は、その先端が半導体ウエハ100の被保持面P1の外周部に当接されて真空吸着による吸着力によって、半導体ウエハ100の外周部を吸着保持する。第1の保持部11は、その内部にエアーの排気経路11Aを有する。排気経路11Aは、基底部13内に設けられた排気経路13Aおよび保持ステージ10の外部に引き出され、真空ポンプ(図示せず)に接続された排気経路14Aに連通しており、該真空ポンプが作動することで、半導体ウエハ100を吸着保持する吸着力が作用する。
【0016】
保持ステージ10は、基底部13から突出し且つ第1の保持部11の内側に第1の保持部11に隣接して設けられた第2の保持部12を有する。第2の保持部12は、その先端が半導体ウエハ100の被保持面P1の外周部に当接されて、真空吸着による吸着力によって半導体ウエハ100の第1の保持部11が吸着保持する部分よりも内側(半導体ウエハ100の内周側)の部分を吸着保持する。第2の保持部12は、半導体ウエハ100の被保持面P1の延在する面方向(
図1におけるXY方向)における一端側にのみ設けられている。また、第2の保持部12は、
図1に示すように、上面視(X−Y平面)において、円環状の第1の保持部11に沿って円弧状に伸びている。
【0017】
第2の保持部12は、その内部にエアーの排気経路12Aを有する。排気経路12Aは、保持ステージ10の外部に引き出され、第1の保持部11の排気経路11Aに接続された真空ポンプとは異なる真空ポンプ(図示せず)に接続されており、該真空ポンプが作動することで、半導体ウエハ100を吸着保持する吸着力が作用する。
【0018】
すなわち、第1の保持部11および第2の保持部12は、互いに独立した排気系統による真空吸着によって半導体ウエハ100を吸着保持する。従って、第1の保持部11が半導体ウエハ100を吸着保持する吸着力と、第2の保持部12が半導体ウエハ100を吸着保持する吸着力とを独立に制御することが可能である。
【0019】
第1の保持部11および第2の保持部12の先端には、それぞれゴム等の弾性部材21、22が設けられており、保持ステージ10に半導体ウエハ100を保持する際に、弾性部材21、22が半導体ウエハ100の被保持面P1に当接される。弾性部材21、22は、半導体ウエハ100を吸着保持する際の吸着力によって変形する。これにより、第1の保持部11および第2の保持部12と半導体ウエハ100との密着性が向上し、エアー漏れによる吸着力の低下を防止することができる。
【0020】
保持ステージ10は、第1の保持部11と基底部13とによって囲まれた凹状の空間20を有する。
図2に示すように、空間20は、保持ステージ10によって保持された半導体ウエハ100の下方に延在している。保持ステージ10は、空間20内にガスを導入するガス導入機構を有する。
【0021】
ガス導入機構は、空間20内に配置された多孔質部材15と、多孔質部材15に接続され、空間20内に導入されるガスが流通する導入経路16Aと、空間20内から排出されるガスが流通する排気経路17Aと、導入経路16Aを流通するガスの流速を制御するレギュレータ18と、排気経路17Aを流通するガスの流速を制御するレギュレータ19と、を含んで構成されている。このガス導入機構により、導入量および排出量を制御しつつ空間20内にガスを導入することで空間20内の圧力が制御される。空間20内の圧力によって保持ステージ10に保持された半導体ウエハ100が支持される。空間20内に導入されるガスとして例えばドライエアーを好適に用いることができる。
【0022】
多孔質部材15は、その内部に互いに連通する複数の孔を有する。多孔質部材15は、導入経路16Aから供給されるガスを拡散させながら空間20内に導入する役割を担う。仮に、導入経路16Aから多孔質部材15を介さずに空間20内にガスを導入した場合には、半導体ウエハ100にガスが直接吹き付けられ、これによって、半導体ウエハ100が破損するおそれがある。導入経路16Aから供給されるガスを、多孔質部材15を介して空間20内に導入することで、多孔質部材15の表面全体から空間20内にガスを供給することができ、半導体ウエハ100にガスが直接吹き付けられることを防止することができ、半導体ウエハ100の破損を防止することができる。多孔質部材15として、例えば、セラミック粉末の原料を無機結合材で焼結したセラミック焼結多孔質体などを好適に用いることができる。
【0023】
以下に、保持ステージ10上に半導体ウエハ100を保持して半導体ウエハ100の表面に保護テープを貼り付ける方法を
図3に示すフロー図を参照しつつ説明する。
【0024】
ステップS1において、半導体ウエハ100と保持ステージ10との位置合わせを行いながら、半導体ウエハ100を保持ステージ10上に載置する。このとき、半導体ウエハ100が第1の保持部11の排気経路11Aおよび第2の保持部12の排気経路12Aの上端を完全に塞ぐように位置合わせを行う。第1の保持部11の先端は、半導体ウエハ100の被保持面P1の最外周部に当接される。
【0025】
ステップS2において、排気経路11A、13A、14Aに接続された真空ポンプ(図示せず)および排気経路12Aに接続された真空ポンプを稼働させ、第1の保持部11および第2の保持部12において真空吸着を開始する。
【0026】
ステップS3において、導入経路16Aおよび排気経路17Aを流通するガスの流速を制御しながら空間20内にガスを導入することで、空間20内の圧力を調整する。空間20内の圧力によって保持ステージ10に保持された半導体ウエハ100が支持される。
【0027】
ステップS4において、
図4に示すように、保持ステージ10に半導体ウエハ100を保持した状態で、半導体ウエハ100の被保持面P1とは反対側の表面P2に保護テープ200を貼り付ける。このとき、例えばローラ220等を用いて、保護テープ200を半導体ウエハ100に押し付ける押圧を加えながら保護テープ200を貼り付ける。
【0028】
ここで、仮に、保持ステージ10が空間20を有しない平板状である場合には、半導体ウエハ100と保持ステージ10との間に異物が挟み込まれるおそれがあり、異物が挟み込まれた状態で保護テープ200を半導体ウエハ100に押し付ける押圧を加えた場合には、半導体ウエハ100と異物との接点に力が集中して半導体ウエハ100にクラックや割れが生じるおそれがある。
【0029】
本実施形態に係る保持ステージ10は、半導体ウエハ100に当接される部分が第1の保持部11の先端部分および第2の保持部12の先端部分のみであり、半導体ウエハ100の下方には空間20が延在しているので、半導体ウエハ100と保持ステージ10との間に異物が挟み込まれることを防止することができる。従って、保護テープ200を半導体ウエハ100に押し付ける押圧によって半導体ウエハ100にクラックや割れが生じるリスクを低減することができる。
【0030】
保護テープ200の貼り付け後、半導体ウエハ100の薄化処理が行われる。この薄化処理では、保護テープ200が貼り付けられた表面P2側が下向きとなるように半導体ウエハ100をウエハ研削装置(図示せず)のステージ上に載置する。続いて、半導体ウエハ100が所望の厚さ(例えば60μmから100μm程度)となるように、被保持面P1側から半導体ウエハ100を研削する。半導体ウエハ100に形成されるデバイスが、パワーMOSFETやIGBT等の縦方向(半導体ウエハ100の厚さ方向)に電流を流すデバイスである場合には、この薄化処理によってオン抵抗の低減や絶縁破壊耐圧を高く維持することができる。半導体ウエハ100の薄化処理の完了後、保護テープ200が半導体ウエハ100から剥離される。
【0031】
以下に、保持ステージ10上に薄化処理済みの半導体ウエハ100を保持して半導体ウエハ100の表面P2に貼り付けられた保護テープ200を剥離する方法について
図5に示すフロー図を参照しつつ説明する。
【0032】
ステップS11において、半導体ウエハ100と保持ステージ10との位置合わせを行いながら、保護テープ200が貼り付けられた表面P2側が上向きとなるように半導体ウエハ100を保持ステージ10上に載置する。また、半導体ウエハ100の保護テープ200の剥離を開始する側の端部が、保持ステージ10の第2の保持部12が設けられている側に位置するように、半導体ウエハ100を保持ステージ10上に載置する。また、半導体ウエハ100が第1の保持部11の排気経路11Aおよび第2の保持部12の排気経路12Aの上端を完全に塞ぐように位置合わせを行う。
【0033】
ステップS12において、排気経路11A、13A、14Aに接続された真空ポンプ(図示せず)および排気経路12Aに接続された真空ポンプを稼働させ、第1の保持部11および第2の保持部12において真空吸着を開始する。このとき、第2の保持部12における吸着力を、第1の保持部11における吸着力よりも大きくしておくことが好ましい。
【0034】
ステップS13において、導入経路16Aおよび排気経路17Aを流通するガスの流速を制御しながら空間20内にガスを導入することで、空間20内の圧力を調整する。空間20内の圧力によって保持ステージ10に保持された半導体ウエハ100が支持される。
【0035】
ステップS14において、
図6に示すように、保護テープ200の表面に、剥離用の粘着テープ210を貼り付ける。このとき、ローラ220を用いて、粘着テープ210を保護テープ200に押し付ける押圧を加えながら粘着テープ210を貼り付ける。
【0036】
本実施形態に係る保持ステージ10は、半導体ウエハ100に当接される部分が第1の保持部11の先端部分および第2の保持部12の先端部分のみであり、半導体ウエハ100の下方には空間20が延在しているので、半導体ウエハ100と保持ステージ10との間に異物が挟み込まれることを防止することができる。従って、粘着テープ210を保護テープ200に押し付ける押圧によって半導体ウエハ100にクラックや割れが生じるリスクを低減することができる。
【0037】
ステップS15において、保持ステージ10に半導体ウエハ100を保持した状態で、半導体ウエハ100の表面P2に貼り付けられた保護テープ200を半導体ウエハ100から剥離する。保護テープ200の剥離は、
図7に示すように、保持ステージ10および剥離機構50を備えた、本発明の実施形態に係る半導体製造装置としての剥離装置300によって行われる。剥離機構50は、粘着テープ210の剥離開始側の端部を把持した状態で、剥離開始側とは反対側に移動することで保護テープ200を粘着テープ210とともに剥離する。
【0038】
すなわち、保護テープ200の剥離は、半導体ウエハ100の第2の保持部12が設けられている方の端部側から開始される。保護テープ200の剥離開始時は保護テープ200と半導体ウエハ100の密着力が最も高く、保護テープ200が半導体ウエハ100を持ち上げる力は最大値となる。このため、半導体ウエハ100の剥離開始側の端部A1が、第1の保持部11から僅かに持ち上がり、第1の保持部11における真空吸着による吸着力が低下する。しかしながら、第1の保持部11よりも内側に設けられた第2の保持部12は、第1の保持部11の排気系統から独立した排気系統を備えているため、第2の保持部12における吸着力は維持される。従って、薄化により剛性が低下した半導体ウエハ100においても、第2の保持部12による吸着力によって殆ど撓みを生じることなく保持ステージ10上に保持された状態が維持される。その後、保護テープ200の剥離が進み、半導体ウエハ100を上方に持ち上げようとする力の作用点は、半導体ウエハ100の内周部に移動する。これにより、第1の保持部11による吸着力が回復し、保護テープ200の剥離が終了するまで、保持ステージ10上に安定的に支持される。
【0039】
このように本実施形態に係る保持ステージ10においては、保護テープ200の剥離開始時の第1の保持部11における吸着力の低下が、剥離機構50の保護テープ剥離開始箇所に応じた位置に配置された第2の保持部12によって補われ、薄化処理済みの半導体ウエハ100の屈曲が抑制される。これにより、保護テープ200を剥離する際の半導体ウエハ100の破損を防止することができる。
【0040】
また、第2の保持部12を、第1の保持部11に隣接させるとともに上面視(X−Y平面)において、第1の保持部11に沿って円弧状に延在させることで、第1の保持部11における吸着力の低下を第2の保持部12によって補う効果を高めることができる。
【0041】
また、第2の保持部12における吸着力を第1の保持部11における吸着力よりも大きくしておくことで、第1の保持部11における吸着力の低下を、第2の保持部12によって補う効果をさらに高めることができる。
【0042】
また、本実施形態では、第2の保持部12を、保護テープ200の剥離開始側にのみ配置する構成としたが、第2の保持部12を第1の保持部11と同様に上面視(X−Y平面)において、円環状をなすように構成してもよい。なお、第2の保持部12を、保護テープ200の剥離開始側にのみ配置することで、第2の保持部12の吸着面積を小さくすることができ、第2の保持部12における吸着力を高めることが容易となる。
【符号の説明】
【0043】
10 保持ステージ
13 基底部
11 第1の保持部
11A 排気経路
12 第2の保持部
12A 排気経路
15 多孔質部材
16A 導入経路
17A 排気経路
21、22 弾性部材
50 剥離機構
100 半導体ウエハ
200 保護テープ
300 剥離装置