(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それぞれ偏光方向及び進行方向が異なる第1のレーザ光と第2のレーザ光が並行して測定対象物に進むように前記第1のレーザ光及び前記第2のレーザ光のいずれか一方を反射する反射部と、
前記測定対象物により鏡面反射された前記第1のレーザ光及び前記第2のレーザ光のいずれか一方を透過させ、他方を当該一方の進行方向と異なる方向に反射することにより、異なる方向に分離された前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光のそれぞれの入射位置を検出する一次元の第1の位置検出素子と、一次元の第2の位置検出素子と、
を備えることを特徴とする曲率測定装置。
前記第1の位置検出素子により検出された前記第1のレーザ光の入射位置の変位量と、前記第2の位置検出素子により検出された前記第2のレーザ光の入射位置の変位量との差を算出し、その算出した差と前記第1のレーザ光及び前記第2のレーザ光の個々の光路長との相関から前記測定対象物の曲率変化量を算出する算出部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の曲率測定装置。
前記第1の位置検出素子及び前記第2の位置検出素子は、前記測定対象物により反射された前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光の2線分間の最短距離の変位を検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の曲率測定装置。
前記第1のレーザ光を前記第1の位置検出素子の素子列方向と垂直な方向に集光し、前記第2のレーザ光を前記第2の位置検出素子の素子列方向と垂直な方向に集光する集光レンズをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の曲率測定装置。
それぞれ偏光方向及び進行方向が異なる第1のレーザ光と第2のレーザ光が並行して測定対象物に進むように前記第1のレーザ光及び前記第2のレーザ光のいずれか一方を反射部により反射する工程と、
前記測定対象物により鏡面反射された前記第1のレーザ光及び前記第2のレーザ光のいずれか一方を透過させ、他方を当該一方の進行方向と異なる方向に反射する工程と、
前記第1のレーザ光の入射位置を一次元の第1の位置検出素子により検出する工程と、
前記第2のレーザ光の入射位置を一次元の第2の位置検出素子により検出する工程と、
を有することを特徴とする曲率測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について
図1乃至
図6を参照して説明する。
【0025】
図1に示すように、第1の実施形態に係る成膜装置1は、基板Wへの成膜を行う成膜室
となるチャンバ2と、そのチャンバ2内の基板Wにガス(原料ガス)を供給するガス供給
部3と、チャンバ2の上部に位置するシャワープレート4と、チャンバ2内で基板Wを支
持するサセプタ5と、そのサセプタ5を保持して回転する回転部6と、基板Wを加熱する
ヒータ7と、チャンバ2内のガスを排出する複数のガス排出部8と、それらのガス排出部
8からガスを排気する排気機構9と、基板Wの曲率(反り量)を測定する曲率測定装置1
0と、各部を制御する制御部11と、警告を報知する報知部12とを備えている。
【0026】
チャンバ2は、基板W(例えば、半導体基板であるウェハ)の表面に薄膜を気相成長さ
せてエピタキシャル膜の成膜を行う成膜室(反応室)として機能する。このチャンバ2は
円筒形状などの箱形状に形成されており、その内部に処理対象部となる基板Wなどを収容
している。
【0027】
ガス供給部3は、ガスを個別に貯留する複数のガス貯留部3aと、それらのガス貯留部
3a及びシャワープレート4を接続する複数本のガス管3bと、それらのガス管3bを流
れるガスの流量を変更する複数のガスバルブ3cとを備えている。これらのガスバルブ3
cは各ガス管3bに個別に設けられ、制御部11に電気的に接続されており、その駆動が
制御部により制御される。
【0028】
このガス供給部3は、ヒータ7により加熱された基板Wの表面に結晶膜を成長させるた
めの原料ガス、例えば、三種類のガスをチャンバ2の内部にシャワープレート4を介して
供給する。例えば、基板WとしてSi基板を用い、有機金属気相成長法(MOCVD法)
を用いてGaN(窒化ガリウム)エピタキシャル膜を形成する場合には、一例として、ト
リメチルガリウム(TMG)ガスなどのガリウム(Ga)のソースガス、アンモニア(N
H3)などの窒素(N)のソースガス、キャリアガスである水素ガスを用いる。
【0029】
このような三種類のガスがそれぞれ各ガス貯留部3aに貯留されており、これらのガス
が原料ガスとしてシャワープレート4から基板Wに向かってシャワー状に供給され、基板
W上にGaNエピタキシャル膜が形成されることになる。なお、ガスの種類やその種類数
は特に限定されるものではなく、例えば、基板W上に窒化珪素(SiC)エピタキシャル
膜を成膜する場合には、第1、第2及び第3の三種類のガスを炭素のソースガス、珪素の
ソースガス、及びこれらのガスを分離するために用いられるガスであって、その他の二種
類のガスとの反応性が乏しい分離ガスなどを用いることが可能である。
【0030】
シャワープレート4は、チャンバ2の上部に設けられおり、所定の厚みを有する板状の
形状に形成されている。このシャワープレート4は、ガスが流れるガス供給流路4a及び
そのガス供給流路4aにつながるガス吐出孔(ガス噴出孔)4bを多数有している。これ
らのガス供給流路4a及びガス吐出孔4bは、複数種(例えば、第1、第2及び第3の三
種類)の各ガスを混合することなく、各ガスを分離した状態で基板Wに向けてシャワー状
に噴射することが可能になる構造に形成されている。例えば、各ガス供給流路4aは互い
に独立しており、シャワープレート4内で各ガスが混合され互いの間で反応することは防
止されている。なお、シャワープレート4において、必ずしも各ガスは分離して供給され
るものではなく、混合されて供給されてもよい。
【0031】
このシャワープレート4は、エピタキシャル膜を形成するためのガスを整流し、各ガス
吐出孔4bから基板Wの表面に向けてシャワー状に供給する。シャワープレート4の材料
としては、例えば、ステンレス鋼やアルミニウム合金などの金属材料を用いることが可能
である。このようなシャワープレート4を用いることによって、チャンバ2内での原料ガ
スの流動を均一にすることが可能となり、原料ガスを基板W上に均一に供給することがで
きる。
【0032】
サセプタ5は、回転部6の上部に設けられており、開口部5aを有する環状の形状に形
成されている。このサセプタ5は、開口部5aの内周側に座ぐり(環状の凹部)が設けら
れ、この座ぐり内に基板Wの外周部を受け入れて支持する構造になっている。なお、サセ
プタ5は、高温下にさらされることから、例えば、等方性黒鉛などのカーボン(C)材の
表面にCVD法によって高耐熱な高純度のSiCが被覆されて構成されている。なお、サ
セプタ5の構造としては、前述のように開口部5aをそのままとする構造を用いているが
、これに限るものではなく、例えば、その開口部5aを塞ぐ部材を設け、開口部5aを塞
ぐ構造を用いることも可能である。
【0033】
回転部6は、サセプタ5を保持する円筒部6aと、その円筒部6aの回転軸となる中空
の回転体6bとを有している。円筒部6aは、上部が開口する構造になっており、この円
筒部6aの上部にサセプタ5が配置されている。このサセプタ5上に基板Wが載置される
ことにより、サセプタ5の開口部5aが覆われ、中空領域が形成されることになる。この
回転部6では、回転体6bが回転機構(図示せず)によって回転することにより、円筒部
6aを介してサセプタ5が回転する。このため、サセプタ5上の基板Wは、サセプタ5の
回転とともに回転することになる。
【0034】
ここで、チャンバ2内の空間領域は第1領域R1であり、基板W及びサセプタ5によっ
て実質的に第1領域R1と隔てられた中空領域は第2領域R2である。これらの第1領域
R1及び第2領域R2は隔てられているため、ヒータ7の周囲で発生した汚染物質によっ
て基板Wの表面が汚染されることを防止することができる。また、第1領域R1にあるガ
スが第2領域R2内に進入し、第2領域R2内に配置されたヒータ7に接触することを防
ぐこともできる。
【0035】
ヒータ7は、円筒部6a内、すなわち第2領域R2内に設けられている。ヒータ7とし
ては、例えば、抵抗加熱ヒータを用いることが可能であり、そのヒータは等方性黒鉛など
のカーボン(C)材の表面に高耐熱なSiCが被覆されて構成されている。ヒータ7は、
回転体6b内に設けられた略円筒状の石英製のシャフト6cの内部を通る配線7aによっ
て給電され、基板Wをその裏面から加熱する。この配線7aは電気的に制御部11に接続
されており、ヒータ7への給電が制御部11により制御される。
【0036】
なお、シャフト6cの内部には、基板昇降機構として昇降ピンや昇降装置(いずれも図
示せず)などが配置されている。昇降装置は昇降ピンを上昇または下降させることが可能
であり、昇降ピンは基板Wのチャンバ2内への搬入とチャンバ2外への搬出の時に使用さ
れる。この昇降ピンは、基板Wを下方から支持して持ち上げ、サセプタ5から引き離す。
そして、基板Wの搬送用ロボット(図示せず)との間で基板Wの受け渡しができるように
、基板Wを回転部6上のサセプタ5から離れた上方の所定の位置に配置するように動作す
る。
【0037】
ガス排出部8は、反応後の原料ガスを排出するための排出孔であり、チャンバ2の下部
に複数設けられている。これらのガス排出部8は、チャンバ2の底面であって回転部6の
周囲に位置付けられて設けられており、ガスを排気する排気機構9に接続されている。
【0038】
排気機構9は、反応後の原料ガスが流れる複数のガス排気流路9aと、そのガスの流量
を変更する排気バルブ9bと、排気用の駆動源となる真空ポンプ9cとを備えている。こ
の排気機構9は、各ガス排出部8を介してチャンバ2の内部から反応後の原料ガスを排気
する。排気バルブ9bや真空ポンプ9cは、制御部11に電気的に接続されており、その
駆動が制御部11により制御される。なお、排気機構9は、制御部11の制御に応じてチ
ャンバ2内を所定の圧力に調整することが可能である。
【0039】
曲率測定装置10は、シャワープレート4の上部に設けられており、サセプタ5上の基
板Wに対する二本のレーザ光の投光及び受光によって、サセプタ5上の基板Wの曲率を測
定する(詳しくは、後述する)。各レーザ光は、シャワープレート4の各ガス供給流路4
aの間に位置する透光性を有する箇所、すなわちチャンバ2の窓(レーザ光通過用の窓)
を通って投光及び受光される。この曲率測定装置10は、制御部11に電気的に接続され
ており、測定した曲率(曲率情報)を制御部11に渡す。
【0040】
なお、チャンバ2の窓の形状としては、スリット形状や矩形状、円形状などの各種の形
状を用いることが可能であり、その窓のサイズはレーザ光の投光及び受光が可能となる大
きさである。また、窓の材料としては、例えば、石英ガラスなどの透光性材料を用いるこ
とが可能である。
【0041】
制御部11は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、成膜処理に関する成
膜処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部と(いずれも図示せず)を備えている
。この制御部11は、成膜処理情報や各種プログラムに基づいて、ガス供給部3や回転部
6の回転機構、排気機構9などを制御し、回転部6の回転に応じて回転しているサセプタ
5上の基板Wの表面に対し、ガス供給部3からシャワープレート4を介して各種のガスを
供給するガス供給や、ヒータ7による基板Wの加熱などの制御を行う。なお、ガス供給部
3の制御では、ガス供給部3の各ガスバルブ3cのそれぞれの動作を制御し、三種類のガ
ス供給、例えば、三種類の各ガスを供給するタイミングや期間などを調整することが可能
である。
【0042】
また、制御部11は、曲率測定装置10により測定された曲率が所定の設定値に至った
かを判断し、曲率測定装置10により測定された曲率が所定の設定値に至ったと判断した
場合、成膜処理を停止し、さらに、報知部12に報知指示を出力する。設定値はユーザな
どにより入力部(例えば、キーボードやマウスなどの入力デバイス)を介して予め設定さ
れており、必要に応じて変更可能である。
【0043】
報知部12は、制御部11から報知指示を受けると、すなわち曲率測定装置10により
測定された曲率が所定の設定値に至った場合、ユーザに対して基板Wの反りに問題がある
こと(警告)を報知する。この報知部12としては、例えば、ランプやブザーなどの警報
器、文字を表示する表示部及び音声を出力する音声出力部などの各種の報知部を用いるこ
とが可能である。
【0044】
このような構成の成膜装置1は、回転部6の回転により基板Wを回転させ、また、ヒー
タ7により基板Wを加熱する。さらに、三種類の原料ガスをシャワープレート4によって
チャンバ2内に導入し、三種類の原料ガスを基板Wの表面に向けてそれぞれシャワー状に
供給し、ウェハなどの基板Wにエピタキシャル膜を気相成長させて成膜する。シャワープ
レート4は、三種類の各ガスを混合させることなく、分離したままチャンバ2内の基板W
に供給する。この成膜装置1では、エピタキシャル膜を形成するために、複数種類のガス
、例えば、第1、第2及び第3の三種類のガスを用いているが、ガスの種類は3種類に限
られるものではなく、例えば、二種類、あるいは、三種類より多い種類にされても良い。
【0045】
なお、チャンバ2内への基板Wの搬入、あるいは、チャンバ2外への基板Wの搬出には
、搬送用ロボット(図示せず)を用いて行うことが可能である。この場合には、前述の基
板昇降機構を利用することが可能である。例えば、基板Wの搬出時には、基板昇降機構に
より基板Wを上昇させてサセプタ5から引き離す。次いで、搬送用ロボットに基板Wを受
け渡し、チャンバ2の外部へと搬出する。基板Wの搬入時には、搬送用ロボットから基板
Wを受け取り、基板昇降機構により基板Wを下降させて、基板Wをサセプタ5上に載置す
る。
【0046】
次に、前述の曲率測定装置10について
図2乃至
図6を参照して詳しく説明する。なお
、
図2乃至
図4は光学部品の模式図を用いて曲率測定装置10の概略の構造を示したもの
で、曲率測定装置10と基板Wとの離間距離が短く示されているが、実際の離間距離は2
0〜50cm程度の距離であり、また、レーザ光はチャンバ2の窓を通過する。また、偏
光ビームスプリッタにより反射されるレーザ光の向きが略直角に曲がるように示されてい
るが、この角度は場合によってはとくに直角付近である必要はない。
【0047】
図2に示すように、曲率測定装置10は、測定対象物の基板Wに対して二本のレーザ光
L1及びL2を並行させて入射させる照射部10aと、二本のレーザ光L1及びL2の波
長以外の光をカットする光学フィルタ10bと、二本のレーザ光L1及びL2を集光する
集光レンズ10cと、基板Wにより鏡面反射された二本のレーザ光L1及びL2を分離す
る進路変更部10dと、分離された二本のレーザ光L1及びL2のうち第1のレーザ光L
1の入射位置を検出する一次元の第1の位置検出素子10eと、分離された二本のレーザ
光L1及びL2のうち第2のレーザ光L2の入射位置を検出する一次元の第2の位置検出
素子10fと、それらの第1の位置検出素子10e及び第2の位置検出素子10fにより
検出された各レーザ光L1及びL2の入射位置を用いて基板Wの曲率(反り量)を算出す
る算出部10gとを備えている。
【0048】
照射部10aは、偏光方向、すなわち偏光成分(偏光面)が互いに異なる第1のレーザ
光L1及び第2のレーザ光L2を互いが並行する状態にして基板Wに入射させる。例えば
、照射部10aは、レーザ光を出射するレーザ光出射部(光出射部)21や偏光ビームス
プリッタ(第1の偏光ビームスプリッタ)22、ミラー(反射部)23などを有している
。この照射部10aは、レーザ光出射部21から出射されたレーザ光を偏光ビームスプリ
ッタ22でS偏光成分(S偏光)及びP偏光成分(P偏光)に分離し、S偏光成分のレー
ザ光(第1のレーザ光L1)をそのまま基板Wに入射させ、ミラー23によりP偏光成分
のレーザ光(第2のレーザ光L2)をS偏光成分のレーザ光に並行するように反射して基
板Wの表面に入射させる。なお、各レーザ光L1及びL2のそれぞれの進行方向は必ずし
も厳密に平行である必要はない。このように偏光成分(偏光方向)としては、例えば、光
の進行方向に垂直なS偏光成分及びP偏光成分があり、これらのS偏光成分及びP偏光成
分は互いに直交する成分である。このとき、偏光成分(偏光方向)は必ずしも直交する必
要はないが、より精度よく分離するために70度以上90度以下であることが好ましい。
【0049】
ここで、偏光ビームスプリッタとは、2個のプリズムを1つの接合面で貼り合わせて構
成される光学部品で、接合面に誘電体による多層膜をあらかじめ形成しておくことで、偏
光方向により接合面で光を透過あるいは反射させる機能を与えている。接合面に形成する
多層膜の構造を適切に設計することで、接合面に対するP偏光を反射、S偏光を透過させ
る機能のもの、あるいは逆に接合面に対するS偏光を反射、P偏光を透過させる機能のも
のを作製することができる。簡便のため、前者の偏光ビームスプリッタをP偏光反射型あ
るいはS偏光透過型と、後者の偏光ビームスプリッタをS偏光反射型あるいはP偏光透過
型と呼ぶことにする。これらの異なる機能の偏光ビームスプリッタにはそれぞれの特徴が
あり、適切に使い分けることができる。
図2のレーザ光を2つに分離させるための偏光ビ
ームスプリッタ22はS偏光透過型であり、測定対象物(基板W)から反射された2本の
レーザ光を偏光により分離するための偏光ビームスプリッタ(進路変更部10d)はS偏
光反射型である。
図2の構成の本実施形態をP偏光透過型の偏光ビームスプリッタのみを
用いて構成した場合を
図3に示す。なお、S偏光透過型の偏光ビームスプリッタについて
、参考文献としては、「WO9707418(WO/1997/007418)」、または「Li Li and J.A. Dobr
owolski, "High-performance thin-film polarizing beam splitter operating at angle
s greater than the critical angle", Applied Optics, Vol. 39, No. 16, pp. 2754-71
」を挙げることができる。
【0050】
各レーザ光L1及びL2における基板Wに対する入射位置は、例えば、基板Wの中央付
近であり、それらの入射角A1は少なくとも20度以下であることが望ましい(詳しくは
、後述する)。また、レーザ光としては、赤熱する基板Wの発光からの影響を避け、例え
ば、シリコン検出系の感度が高く、熱輻射の影響が小さい700nm以下、より好ましく
は600nm以下の波長(一例として532nm)のレーザ光を用いることが望ましい。
【0051】
光学フィルタ10bは、基板Wと進路変更部10dとの間であって第1のレーザ光L1
及び第2のレーザ光L2が並行して進行する光路上に設けられており、それらの第1のレ
ーザ光L1及び第2のレーザ光L2の波長以外の光をカット(除去)する。光学フィルタ
10bとしては、例えば、単色化フィルタを用いることが可能である。この光学フィルタ
10bを設けることによって、各レーザ光L1及びL2(上記の例では、緑色)以外の波
長を有する光が位置検出素子10e及び10fに入射することが抑止されるので、赤熱す
る基板Wの発光からの影響を避け、位置検出精度を向上させることができる。
【0052】
なお、一次元の位置検出素子10e又は10fとしては、例えば半導体位置検出素子(
PSD)が用いられる。PSDは、入射したレーザ光の分布(スポットの光量)の重心(
位置)を求めるものであり、その重心を二つの電気信号(アナログ信号)として出力する
。PSDは、可視光範囲の光に感度を有している。成膜装置1では、基板Wが赤熱してお
り、すなわち、赤側の光を発している。基板Wが赤熱するだけであれば、レーザ光の強度
の方が圧倒的に強いため、少なくとも赤から離れた緑のレーザ光を用いれば、問題は生じ
ない。ところが、成膜装置1において膜を作製する際には、膜とレーザ光との干渉によっ
て、レーザ光がほとんど反射されなくなってしまうタイミングが生じる。このタイミング
においては、赤熱の光強度が、反射されたレーザ光強度を上回るため、位置検出素子10
e又は10f上で、測定対象物(基板W)から反射されたレーザ光の位置を正確にはある
いは全く測定できなってしまうことがある。これを抑止するためには、本実施形態で用い
るレーザ光の波長以外の光を通さない光学フィルタ10bを設けることが望ましい。なお
、位置検出素子10e又は10fとしては、PSDのほか、固体撮像素子(CCDやCM
OSなど)を用いることも可能である。
【0053】
また、上述の測定対象物上に成膜する膜による干渉の効果を除くためには、成膜する膜
が吸収するような波長のレーザ光を本実施形態のレーザ光として用いることも有効である
。より具体的には、成膜する膜のバンドギャップよりもエネルギーの高いレーザ光を挙げ
ることができる。成膜する膜が本実施形態に用いられるレーザ光を吸収する場合、膜が厚
くなるにつれて干渉効果が小さくなり、ある程度以上の膜厚では、干渉効果は現れなくな
る。たとえば、GaNを成膜する場合、GaNは室温では紫外領域(365nm)に吸収
端があるが、700℃以上の温度ではバンドギャップが小さくなり、青紫領域の光を吸収
する。したがって、GaNを700℃以上の温度で成長する場合、たとえば405nmの
レーザ光を本実施形態に用いることにより、GaNの干渉の効果を低減することができる
。
【0054】
集光レンズ10cは、基板Wと進路変更部10dとの間であって第1のレーザ光L1及
び第2のレーザ光L2が並行して進行する光路上に設けられている。この集光レンズ10
cは、第1のレーザ光L1を第1の位置検出素子10eの素子面(受光面)における、第
1の位置検出素子10eの素子列方向と垂直方向(短手方向)に集光し、第2のレーザ光
L2を第2の位置検出素子10fの素子面(受光面)において、第2の位置検出素子10
fの素子列方向と垂直方向(短手方向)に集光する。この集光レンズ10cとしては、半
円筒レンズを用いることが可能である。
【0055】
ここで、
図4(
図2の側面図)に示すように、基板Wが振動などにより傾くと、基板W
により反射される第2のレーザ光L2は基板Wに入射した点(入射点)から扇状に振れて
しまう。なお、図の簡略化のため、
図4に示していないが、第1のレーザ光L1も同様に
扇状となる。このため、基板Wにより反射された第1のレーザ光L1が第1の位置検出素
子10eから外れることのないように、加えて、基板Wにより反射された第2のレーザ光
L2が第2の位置検出素子10fから外れることのないように光を集めるため、集光レン
ズ10cとして適切なレンズが設置される。これにより、基板Wの傾きによって扇状に振
れた第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2を再び一点に集めることが可能となる。
このとき、単なる円形のレンズを使うと、基板Wの反りによる変位情報までもが無くなっ
てしまう場合がある。そこで、反り情報方向、すなわち各位置検出素子10e及び10f
の長手方向の光変位は集光させないように、集光レンズ10cとして半円筒レンズが用い
られる。
【0056】
このように各位置検出素子10e及び10fの短手方向の振れ分は、集光レンズ10c
により問題とならなくなる。一方、それらの長手方向の振れ分は、二つの位置検出素子1
0e及び10fの入射位置の変位差を取ることによってキャンセルされるために問題とな
らない。これらのことから、S/Nの維持が可能となる。なお、このような方法によって
もレーザ光が二つの位置検出素子10e及び10fから外れてしまうような、あまりに大
きい振れは、成膜装置1の装置自体の問題(例えば、異常振動や組付け精度など)がある
場合や、基板Wがサセプタ5の座ぐり部5aから外れてしまった場合である。逆に、曲率
測定装置からの信号を適切に監視することで、上記のような異常を速やかに発見できる。
【0057】
進路変更部10dは、基板Wの表面により鏡面反射された第1のレーザ光L1及び第2
のレーザ光L2を分離し、それらの進行方向を大きく異なる方向に変える。この進路変更
部10dとしては、例えば、偏光ビームスプリッタ(第2の偏光ビームスプリッタ)を用
いることが可能である。進路変更された第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2の進
行方向は、第1の位置検出素子10eにより第1のレーザ光L1を検出することが可能で
あり、第2の位置検出素子10fにより第2のレーザ光L2を検出することが可能となる
範囲内とする。なお、進路変更部10dと位置検出素子10e又は10fとの間にミラー
などの光学部品を追加し、位置検出素子10e又は10fの設置位置を変更することも可
能である。
【0058】
第1の位置検出素子10eは、進路変更部10dにより分離された第1のレーザ光L1
及び第2のレーザ光L2のうち第1のレーザ光L1を受けてその入射位置(受光位置)を
検出する一次元の位置検出素子である。この第1の位置検出素子10eは、その素子面(
受光面)の法線方向が第1のレーザ光L1の光軸から10から20度の範囲以内で傾くよ
うに設けられている。
【0059】
第2の位置検出素子10fは、進路変更部10dにより分離された第1のレーザ光L1
及び第2のレーザ光L2のうち第2のレーザ光L2を受けてその入射位置(受光位置)を
検出する一次元の位置検出素子である。この第2の位置検出素子10fは、第1の位置検
出素子10eと同様、その素子面(受光面)の法線方向が第2のレーザ光L2の光軸から
10から20度の範囲以内で傾くように設けられている。
【0060】
このように位置検出器(第1の位置検出素子10e及び第2の位置検出素子10f)の
検出面の法線方向をあえて入射するレーザ光の方向に対して傾けることで位置検出器から
反射されたレーザ光が再び上記の光学系に戻ること(戻り光)を避けることができる。戻
り光は、本来必要とされる測定対象物からの反射光に対して雑音として作用する。上記の
ように位置検出器を傾けることで位置検出素子10e又は10fによる反射光が進路変更
部10dに入射することを抑止するので、その反射光(戻り光)による悪影響によって位
置検出精度が低下することを抑えることができる。
【0061】
算出部10gは、第1の位置検出素子10eにより検出された第1のレーザ光L1の入
射位置及び第2の位置検出素子10fにより検出された第2のレーザ光L2の入射位置を
用いて基板Wの曲率(反り量)を算出する。例えば、算出部10gは、第1の位置検出素
子10eにより検出された第1のレーザ光L1の入射位置の変位量と、第2の位置検出素
子10fにより検出された第2のレーザ光L2の入射位置の変位量との差を算出し、その
算出した差と第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2の個々の光路長との相関から基
板Wの曲率変化量を算出する。変位前の曲率を、校正用鏡や、変形のない基板等を基準と
することによって、曲率半径の絶対値へ変換することができる。
【0062】
相関を示す所定の関係式としては、一例として、レーザ光L1及びL2の各々に対応す
る位置検出器(第1の位置検出素子10e及び第2の位置検出素子10f)上での変位量
をX1及びX2とし、それらのレーザ光L1及びL2の個々の光路長をY1及びY2とし
、曲率変化量をZ1とすると、(X1+X2)/2=w×Y×Z1という関係式が挙げら
れる。ここで、wは2本のレーザ光の測定対象物上での照射位置間の距離である。なお、
Y1とY2はおおよそ等しいものとしてYとし、X1とX2の符号は、二つのレーザ光の
中心方向の変位を同符号になるようにする。
【0063】
ここで、wやYを厳密に測定することは現実的ではないが、その反面、測定時に大きく
変化することもないため、「Xtotal=C×Z1」(Xtotal=X1+X2)という、変位
量の総量(すなわち二つのレーザ光間の幾何的距離の変化)と曲率が比例するという単純
な関係において、既知の曲率半径にある校正用ミラー(2種類)によりCを決定して適用
することができる。2種類のうち一つは曲率半径が可能な限り無限大(即ち平面)であり
、もう一つは想定される最も小さい曲率半径のものであることが良い。できれば、それら
の中間の曲率半径のものを測定し、測定範囲において線形性(Z1に対して検量線を作製
した場合)が成り立つことを確認できることが好ましい。
【0064】
また、算出部10gは、所定のタイミングで各位置検出素子10e及び10fからの信
号を取り込むことが好ましい。例えば、算出部10gは、基板Wに付随する周期的な運動
の位相信号を取り込むと同時に各位置検出素子10e及び10fからの信号を取り込み、
周期的運動の任意の位相範囲における位置信号のみを用いて曲率を算出する。例えば、周
期的な運動が回転運動である場合には、信号の取り込みタイミングを回転機構のモータの
一回転毎のタイミング(モータのZ相のパルス)として、モータ回転に同期させて各位置
検出素子10e及び10fからの信号を取り込む。位置信号としては、任意の1点の情報
でも良く、任意範囲の平均値としても良く、更には、それらを積算することが好ましい。
これらが困難である場合には、複数回にわたる周期分の情報を全て取り込み、その平均を
とることが推奨される。
【0065】
次に、基板Wの表面上でのレーザ光間隔(第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2
の離間距離)について
図5を参照して説明する。実際は
図5より複雑であるが、変位量の
オーダーを見積もるために、簡略化したモデルになっている。
【0066】
図5に示すように、曲率半径R(m)の鏡面を想定し、その鏡面との接線から伸び鏡面
の中心を通る線分(半径)をHとする。光線は線分Hと平行に鏡面に入射し、鏡面の内側
で反射するものとする。曲率がよほど大きくならない限り、反射した光線が線分Hと交差
する点が変形の中点(R/2)として近似され、また、曲率測定装置10での変位量観測
点が、
図5における高さLとして近似され、反射した光線の曲率変化時の観測される変位
量はdZと近似され、入射した光線の反射点は円の最低点と同じ高さにあると近似される
。
【0067】
ここで、直線Hと入射した光線の直線距離をw(m)とすると、dZはdZ=w−Z=
w−(R/2−L)×tan(2α)となり、tan(2α)は近似によりtan(2α
)=2α=2w/Rとなるため、dZ=w−(R/2−L)×2w/R=2wL/Rとい
う式で表すことができる。
【0068】
一例として、100(m)前後の曲率半径の変化を基にGaNの成膜状況を検討すると
、曲率変化の分解能はどんなに悪くとも100(m)、現実的には500(m)、可能で
あれば1000(m)が好ましいことが分かる。一方、前述したように基板Wと各位置検
出素子10eや10fの距離は遠いことが望ましいが、実際には光路中の空気の対流など
による擾乱(空気の揺らぎ)や装置筐体への設置も考慮しなければならないため、20〜
50cmとされるのが妥当となる。ここで、曲率半径(R)を500m以上、距離(L)
を30cmとすると、上式は、dZ=0.0012wとなる。
【0069】
しかしながら、変位量dZは受光素子の性能により下限を有する。例えば、CCDでは
、よほど高価で高性能でなければ素子ピッチは1μm程度である。また、PSDは、アナ
ログ測定であるため、受光素子そのものの制限は明瞭ではないが、その信号を取り込む汎
用のロガーの性能において、10nm〜0.1μmが妥当な範囲であり、仮に高性能なロ
ガーを用いたとしても、空気などの擾乱によってnmオーダーの変化を見分けることは困
難となる。結果として、現実的には1μm前後の変位が見分けられれば大抵において実用
的である。したがって、上式から、まず、wは1mm以上であることが好ましい。
【0070】
一方、曲率が大きく変位量が大きい側については、レーザ光間隔を受光素子の受光範囲
、集光系に関する光学素子からはみ出さないようなレーザ間幅に制限しなければならない
。曲率半径は1mを切ることがあり、R=0.5m程度までは測定可能範囲として想定し
た方が良い。この場合、上式では、dZ=1.2wとなる。入手しやすい比較的汎用のC
CDやPSDは受光サイズが10mm角から20mm角程度のものであり、変位量が受光
範囲に収まるためには、wは8〜16mmでも良いことになる。ところが、受光素子に至
るまでの光学素子については、例えば、コストを低減させたるために小さいものを選ぶと
、大抵において10mm角という制限を受ける。つまり、変位幅はどんなに大きくとも1
0mm未満であることが要求される。このため、wは8mm以下、好ましくは正負の光路
変化へのマージンを見て4mm程度以下であることが望ましい。
【0071】
このように、直線Hと入射した光線の直線距離(レーザ間隔)wは8mm以下又は4m
m以下であることが好ましく、さらに、前述のように1mm以上であることが望ましい。
したがって、wは、1mm≦w≦8mmという範囲に収まることが好ましく、さらに、1
mm≦w≦4mmという範囲に収まることがより好ましい。
【0072】
なお、基板Wの表面上で二つの光路が重なると(すなわち同一点に入射すると)、どち
らの光路にとっても、反射地点の傾きは同じになってしまう。つまり、両方とも同じ量だ
け、同じ方向に傾くことになる。二本のレーザ方式では、両者の傾きの違いから反り(曲
率)を求める方式であるため、両者が同じであっては原理上検出ができず、入射点を僅か
でもずらす必要がある。一方、互いの入射点が離れていれば離れているほど両者の傾きの
差は大きくなり、感度は高くなるが、成膜装置1でチャンバ2に大きな窓を設けることは
困難である。このため、前述のような範囲にレーザ光間隔を設定することが望ましいが、
各種の条件(例えば、確保可能な窓サイズなど)に応じて前述の範囲を逸脱してレーザ光
間隔を設定することも可能である。
【0073】
次いで、基板Wの表面に対するレーザ光の入射角(第1のレーザ光L1及び第2のレー
ザ光L2の個々の入射角)について
図6を参照して説明する。
【0074】
図6には、基板Wが石英である場合における入射角度に対する反射率依存性(入射角度
と反射率との関係)が示されている。グラフB1は入射光がS偏光である場合のグラフで
あり、グラフB2は入射光がP偏光である場合のグラフである。これらのグラフB1及び
グラフB2から、入射面に向かって平行に進むS偏光とP偏光において、入射角が0度で
ある場合、反射率は同じであり、さらに、入射角が10度あるいは20度程度までは略同
じである。このため、S偏光とP偏光のお互いの反射率を略同じにするためには、光の入
射角A1(
図2参照)を少なくとも20度以下にすることが望ましい。
【0075】
以上、このような曲率測定装置10は、前述のエピタキシャル膜の成膜工程において、
基板Wの反りを監視する。この反り監視では、偏光方向が互いに異なる第1のレーザ光L
1及び第2のレーザ光L2が照射部10aにより照射され、並行して基板Wの表面に入射
する。次いで、その基板Wにより鏡面反射された第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光
L2は、並行して光学フィルタ10bを通過し、さらに集光レンズ10cを通過した後、
進路変更部10dにより分離される。分離された第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光
L2は、集光レンズ10cの作用によって第1の位置検出素子10e及び第2の位置検出
素子10fの短手方向に集光される。そして、分離された各レーザ光L1及びL2のうち
第1のレーザ光L1が第1の位置検出素子10eにより検出され、第2のレーザ光L2が
第2の位置検出素子10fにより検出される。
【0076】
その後、それらの第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2の各入射位置が算出部1
0gにより用いられ、基板Wの曲率(反り量)が算出される。例えば、第1のレーザ光L
1の入射位置の変位量と、第2のレーザ光L2の入射位置の変位量との差が算出され、そ
の差と各光路長との相関から基板Wの曲率変化量(曲率)が算出される。この算出された
曲率が制御部11に入力されると、制御部11は、その入力された曲率が所定の設定値よ
り大きいか否かを判断し、曲率測定装置10により測定された曲率が所定の設定値より大
きいと判断した場合、成膜処理を停止し、さらに、報知部12に報知指示を出力するなど
の処理が可能である。報知部12は、制御部11から報知指示を受けると、ユーザに対し
て基板Wの反りに問題があること(警告)を報知するなどの処理が可能である。
【0077】
ここで、従来の二点一括CCD方式では、上述したように反りが大きい場合には両点が
一致してしまう場合があり、両点の間の距離が存在しなくなるため、測定不能領域が存在
することになる。一方、本実施形態によれば、二本のレーザ光L1及びL2はどこで重な
ろうが、それぞれの偏光性と進路変更部10dによって強制的に分離される。さらに、各
レーザ光L1及びL2の位置は元の位置からどれだけずれたかが算出され、引き算のみで
間隔の変化が読み取られる。したがって、従来の二点一括CCD方式にあるような測定不
能領域は存在せず、その付近でのSN比(S/N)が低下することもない。加えて、従来
の二点一括CCD方式では、測定不能領域を避けるような光路調整(設定)を行わなけれ
ばならないが、本実施形態によれば、その制約がなくなるため、調整のロバスト性が高く
なる。
【0078】
また、曲率測定装置10の各レーザ光L1及びL2は、チャンバ2の窓を通過するが、
このチャンバ2の窓は各種の要因によって傾く傾向にある。この各種の要因としては、例
えば、熱によるチャンバ2の変形や振動による位置ずれなどが挙げられる。さらに、曲率
測定装置10が測定する基板Wには、回転による周期的な振動が生じる。このような窓の
傾きや基板Wの周期的な振動が生じても、集光レンズ10cによって、第1のレーザ光L
1が第1の位置検出素子10eから外れることのないように、加えて、第2のレーザ光L
2が第2の位置検出素子10fから外れることのないように光が集められる。すなわち、
窓の傾きや基板Wの周期的な振動により扇状に振れた第1のレーザ光L1及び第2のレー
ザ光L2が再び一点に集められるため、窓の傾きや基板Wの周期的な振動によって曲率測
定精度が低下することを抑止することができる。
【0079】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、偏光方向が互いに異なる第1のレーザ
光L1及び第2のレーザ光L2を並行させて基板Wに入射させ、その基板Wにより鏡面反
射された第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2の進路を進路変更部10dにより混
合されないように変更し、さらに、進路が変更された第1のレーザ光L1及び第2のレー
ザ光L2をそれぞれ第1の位置検出素子10e及び第2の位置検出素子10fにより検出
する。このため、従来の二点一括CCD方式を用いる場合のように、CCDの素子面上の
両点が一致するようなことはなく、二本のレーザ光L1及びL2が重なったとしても分離
され、それぞれ二つの位置検出素子10e及び10fにより検出される。これにより、従
来の二点一括CCD方式とは異なり、測定不能が生じることはなく、反りが大きい場合や
両点の間を狭くする場合でも、SN比(S/N)の悪化を抑止することが可能となる。し
たがって、曲率測定不能の抑止及び曲率測定精度の向上を実現することができる。
【0080】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について
図7を参照して説明する。なお、第2の実施形態では、第1の
実施形態との相違点(曲率測定装置10の部品配置)について説明し、その他の説明は省
略する。なお、
図7は、前述の
図2乃至
図4と同様、光学部品の模式図を用いて曲率測定
装置10の概略の構造を示したもので、曲率測定装置10と基板Wとの離間距離が短く示
されているが、実際の離間距離は20〜50cm程度の距離であり、また、レーザ光はチ
ャンバ2の窓を通過する。また、偏光ビームスプリッタにより反射されるレーザ光の向き
が略直角に曲がるように示されているが、この角度は場合によってはとくに直角付近であ
る必要はない。
【0081】
図7に示すように、第2の実施形態に係る曲率測定装置10の照射部10aは、レーザ
光を出射するレーザ光出射部(光出射部)21と、そのレーザ光を第1のレーザ光L1(
S偏光)及び第2のレーザ光L2(P偏光)に分離する偏光ビームスプリッタ22と、ミ
ラー23とを備えている。偏光ビームスプリッタ22は、レーザ光出射部21と基板Wの
表面との間の光路上に設けられており、ミラー23は、偏光ビームスプリッタ22により
分離された第1のレーザ光L1を基板Wの表面に向けて反射する位置に設けられている。
【0082】
この照射部10aは、レーザ光出射部21から出射されたレーザ光を偏光ビームスプリ
ッタ22で第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2に分離し、第2のレーザ光L2を
そのまま基板Wに入射させ、ミラー23により第1のレーザ光L1を第2のレーザ光L2
に並行させるように反射して基板Wの表面に入射させる。
【0083】
なお、光学フィルタ10b、集光レンズ10c、進路変更部10d及び第2の位置検出
素子10fは基板Wの略法線上に設けられており、第1の位置検出素子10eは進路変更
部10dにより進行方向が変更された第1のレーザ光L1を検出することが可能となる位
置に設けられている。また、
図7に示された構成の本実施形態に用いられている2つのビ
ームスプリッタ22、10dはいずれもP偏光透過型の偏光ビームスプリッタである。
【0084】
このような構成の曲率測定装置10では、第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2
における基板Wへの入射光路と基板Wからの反射光路を合わせた四つの光路が全てほぼ同
一平面に調整されており、さらに、反射光路が入射光路に挟まれた位置に調整されている
。これにより、チャンバ2の窓を通過する入射光路及び反射光路の全光路において、それ
らの外周に位置する光路間の離間距離を小さくすることが可能となる。このため、各レー
ザ光L1及びL2が通過するチャンバ2の窓を小さくすることができ、結果として、熱な
どによる窓の傾きによって検出位置精度が低下することを抑止することができる。
【0085】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、前述の第1の実施形態と同様の効果を
得ることが可能であり、曲率測定不能の抑止及び曲率測定精度の向上を実現することがで
きる。さらに、各レーザ光L1及びL2が通過するチャンバ2の窓を小さくすることが可
能となるので、熱などによる窓の傾きによって検出位置精度が低下することを抑止するこ
とができる。
【0086】
(前述の第1又は第2の実施形態の補足)
ここで、前述の第1又は第2の実施形態における各種特徴の一部について列挙する。
【0087】
基板Wへのレーザ光、すなわち第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2の入射角度
が少なくとも20度以下である(
図2参照)。これにより、第1のレーザ光L1及び第2
のレーザ光L2がS偏光とP偏光である場合、それらお互いの反射率を略同じにすること
が可能となるため(
図6参照)、位置検出精度を向上させることができる。
【0088】
また、第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2の各光路は、進路変更部10dを取
り外した場合(状態で)、互いの光路が第2の位置検出素子10fの素子面(受光面)に
おいて交差するように調整されている(
図2参照)。これにより、各レーザ光L1及びL
2の光路の離間距離を狭くすることが可能となるため、進路変更部10dを小型化するこ
とができる。なお、前述の交差位置を第2の位置検出素子10fの長手方向の中央とする
ことが望ましい。こうすることにより基板Wの周期的な振動などによって位置検出器10
fあるいは10eの受光面上をレーザ光L1あるいはL2の照射位置が移動しても、この
照射位置が極端に受光面の端になったり、受光面から外れてしまう可能性を低下させ、位
置検出精度が低下することを抑えることができる。
【0089】
また、第1の位置検出素子10eの受光面(第1の受光面)は、第1のレーザ光L1の
光軸(入射光の光軸)から少なくとも10度傾いている。同様に、第2の位置検出素子1
0fの受光面(第2の受光面)も、第2のレーザ光L2の光軸(入射光の光軸)から少な
くとも10度傾いている。これにより、位置検出素子10e又は10fによる反射光が進
路変更部10dに入射することを抑止することが可能となるので、その反射光による悪影
響によって位置検出精度が低下することを抑えることができる。
【0090】
また、第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2の波長付近以外の波長を通過させな
い光学フィルタ10bが、基板Wから進路変更部10dまでの光路上に設置されている。
これにより、各レーザ光L1及びL2の波長(例えば、緑色)付近以外の波長を有する光
が位置検出素子10e及び10fに入射することが抑止されるので、赤熱する基板Wの発
光からの影響を避け、位置検出精度を向上させることができる。
【0091】
また、基板Wに付随する周期的な運動の位相信号を取り込むと同時に各位置検出素子1
0e及び10fからの信号を取り込み、周期的な運動の任意の位相における位置信号のみ
を用いて曲率を算出する。例えば、周期的な運動が回転運動である場合には、信号の取り
込みタイミングを回転機構のモータの一回転毎のタイミング(モータのZ相のパルス)と
し、モータ回転に同期させて各位置検出素子10e及び10fからの信号を取り込む。こ
れにより、周期的な運動によって振動がある場合などでも、その運動に同期したタイミン
グで信号を読み込んで用いることが可能となるため、周期的な振動によって位置検出精度
が低下することを抑止することができ、周期的な運動に同期しないタイミングで信号を読
み込んで用いた場合に比べ、位置検出精度を向上させることができる。
【0092】
また、一次元の位置検出素子10e及び10fのいずれか一方又は両方が、入射したレ
ーザ光の分布の重心を二つの電気信号として出力する半導体位置検出素子(PSD)であ
る。あるいは、一次元の位置検出素子10e及び10fのいずれか一方又は両方が、固体
撮像素子(例えば、CCD)である。ここで、従来の二点一括CCD方式では、複雑な画
像処理により二点間の距離を割り出すため、高速なコンピュータが必要となり、コストが
上昇することになる。一方、コストを抑えるため、処理スピードを犠牲にすると、装置性
能が低下することになる。PSDを用いた場合には、画像処理は不要であり、PSD毎に
アナログ信号を読み込み、四則演算などの簡易な計算を実行すれば良く、コスト上昇や装
置性能低下を抑止することができる。また、CCDを用いた場合でも、二次元の画像処理
に比べ、簡易な画像処理により入射位置を把握することが可能であり、コスト上昇や装置
性能低下を抑止することができる。
【0093】
また、第2の実施形態においては二本のレーザ光L1及びL2における基板Wへの入射
光路と基板Wからの反射光路を合わせた四つの光路が全てほぼ同一平面に調整されており
、さらに、反射光路が入射光路に挟まれた位置に調整されている。これにより、チャンバ
2の窓を通過する入射光路及び反射光路の全光路において、それらの外周に位置する光路
間の離間距離を小さくすることが可能となる。このため、各レーザ光L1及びL2が通過
するチャンバ2の窓を小さくすることができ、結果として、熱などによる窓の傾きによっ
て検出位置精度が低下することを抑止することができる。
【0094】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について
図8を参照して説明する。なお、第3の実施形態では、第1の
実施形態との相違点(曲率測定装置10の部品配置及び構成)について説明し、その他の
説明は省略する。なお、
図8は、光学部品の模式図を用いて曲率測定装置10の概略の構
造を示したもので、前述の
図2乃至
図4と同様、曲率測定装置10と基板Wとの離間距離
が短く示されているが、実際の離間距離は20〜50cm程度の距離であり、また、レー
ザ光はチャンバ2の窓を通過する。また、偏光ビームスプリッタにより反射されるレーザ
光の向きが略直角に曲がるように示されているが、この角度は場合によってはとくに直角
付近である必要はない。
【0095】
図8に示すように、第3の実施形態に係る曲率測定装置10は、第1の実施形態(さら
に第2の実施形態)と異なり、測定対象物である基板Wの表面に垂直な入射光及び反射光
を用いて曲率を測定するものである(レーザ光の入射角が90度であり、入射光及び反射
光が同じ光軸となる)。
【0096】
この曲率測定装置10は、照射部10a、第1の位置検出素子10e、第2の位置検出
素子10f及び算出部10gに加え、二本のレーザ光L1及びL2が通過する1/4波長
板10hと、基板Wの表面により鏡面反射された二本のレーザ光L1及びL2のうち第1
のレーザ光L1を反射する偏光ビームスプリッタ10iとを備えている。この偏光ビーム
スプリッタ10iは、第1の実施形態に係る進路変更部10dに替えて設けられている。
【0097】
照射部10aは、レーザ光を出射するレーザ光出射部(光出射部)21と、そのレーザ
光を第1のレーザ光L1(P偏光)及び第2のレーザ光L2(S偏光)に分離する偏光ビ
ームスプリッタ22と、第2のレーザ光L2を反射するミラー23とを備えている。
【0098】
偏光ビームスプリッタ(第1の偏光ビームスプリッタ)22は、レーザ光出射部21と
基板Wの表面との間、すなわちレーザ光出射部21から出射された第1のレーザ光L1が
基板Wの表面に垂直に入射する光路上に設けられている。この偏光ビームスプリッタ22
は、P偏光をほぼ透過させ、S偏光をほぼ反射するものである(S偏光だけを例えば90
度曲げる)。
【0099】
ミラー23は、偏光ビームスプリッタ22により分離された第2のレーザ光L2(S偏
光)を第1のレーザ光L1(P偏光)に平行にして基板Wの表面に向けて反射し、さらに
、基板Wの表面により鏡面反射されて1/4波長板10hを通過した第2のレーザ光L2
(P偏光)を反射する反射部として機能する(S偏光及びP偏光を例えば90度曲げる)
。
【0100】
第1の位置検出素子10eは、基板Wの表面により鏡面反射されて偏光ビームスプリッ
タ10iにより反射された第1のレーザ光L1の入射位置を検出する。また、第2の位置
検出素子10fは、基板Wの表面により鏡面反射されてミラー23により反射された第2
のレーザ光L2の入射位置を検出する。これらの第1の位置検出素子10e及び第2の位
置検出素子10fは例えば同一直線上に配置されているが、これに限るものではない。
【0101】
1/4波長板10hは、第1のレーザ光L1が基板Wの表面に垂直に入射する光路及び
第2のレーザ光L2が第1のレーザ光L1に平行に基板Wの表面に入射する光路の両方の
光路上に設けられている。このため、1/4波長板10hは、基板Wの表面に垂直に入射
する第1のレーザ光L1及びその第1のレーザ光L1に平行に基板Wの表面に入射する第
2のレーザ光L2が通過し、さらに、基板Wの表面により鏡面反射された第1のレーザ光
L1及び第2のレーザ光L2が通過する部材となる。
【0102】
各レーザ光L1及びL2はそれぞれ1/4波長板10hを二回通過すると、偏光方向が
90度変化する性質を有している(一回通過すると円偏光となる)。したがって、P偏光
が1/4波長板10hを二回通過すると、偏光方向が90度変化してS偏光となり、逆に
、S偏光が1/4波長板10hを二回通過すると、偏光方向が90度変化してP偏光とな
る。また、直線偏光の偏光面に対して1/4波長板の光学軸を45度ずらすことにより円
偏光が得られることから、直交した偏光方向を持たせた第1のレーザ光L1と第2のレー
ザ光L2の偏光方向の中間に光学軸を調整することにより、二つのレーザ光L1及びL2
に対称な条件を付与することができる。
【0103】
偏光ビームスプリッタ(第2の偏光ビームスプリッタ)10iは、第1のレーザ光L1
が基板Wの表面に垂直に入射する光路上に設けられており、基板Wの表面により垂直に鏡
面反射された第1のレーザ光L1(S偏光)を第1の位置検出素子10eに向けて反射す
る。この偏光ビームスプリッタ10iはP偏光をほぼ透過させ、S偏光をほぼ反射する(
S偏光だけを例えば90度曲げる)。
【0104】
このような曲率測定装置10は、前述のエピタキシャル膜の成膜工程において、基板W
の反りを監視する。この反り監視では、レーザ光がレーザ光出射部21により出射される
と、まず、偏光方向が互いに90度異なる第1のレーザ光L1(P偏光)及び第2のレー
ザ光L2(S偏光)に偏光ビームスプリッタ22により分離される。次いで、第1のレー
ザ光L1は偏光ビームスプリッタ10i及び1/4波長板10hを通過して基板Wの表面
に垂直に入射する。また、第2のレーザ光L2はミラー23により反射されて第1のレー
ザ光L1に平行になり、1/4波長板10hを通過して基板Wの表面に入射する。
【0105】
次に、基板Wの表面により鏡面反射された第1のレーザ光L1は1/4波長板10hを
通過し、偏光方向が変わってS偏光となる。この第1のレーザ光L1(S偏光)は、偏光
ビームスプリッタ10iにより反射されて第1の位置検出素子10eに入射し、その第1
の位置検出素子10eにより検出される。また、基板Wの表面により鏡面反射された第2
のレーザ光L2は、1/4波長板10hを通過し、偏光方向が変わってP偏光となる。こ
の第2のレーザ光L2(P偏光)は、ミラー23により偏光ビームスプリッタ22に向け
て反射され、その偏光ビームスプリッタ22を通過して第2の位置検出素子10fに入射
し、その第2の位置検出素子10fにより検出される。その後の処理(基板Wの曲率算出
や警告報知など)は第1の実施形態と同様である。
【0106】
なお、第1の位置検出素子10e及び偏光ビームスプリッタ10iの間の第1レーザ光
L1の光路や第2の位置検出素子10f及び偏光ビームスプリッタ22の間の第2レーザ
光L2の光路上に、レーザ光を例えば
図8中の上方向に反射するように方向転換用ミラー
などの方向転換部を設けることも可能である。この場合には、第1の位置検出素子10e
及び第2の位置検出素子10fの設置自由度を向上させることができる。
【0107】
また、第1のレーザ光L1が基板Wの表面に垂直に入射し、さらに、第2のレーザ光L
2が第1のレーザ光L1に平行に基板Wの表面に入射することを維持しつつ、偏光ビーム
スプリッタ22やミラー23、偏光ビームスプリッタ10iなどを傾けて、第1の位置検
出素子10e及び偏光ビームスプリッタ10iの間の第1レーザ光L1の光路と第2の位
置検出素子10f及び偏光ビームスプリッタ22の間の第2レーザ光L2の光路を非平行
にすることも可能である。
【0108】
図8に示した第3の実施形態に用いられる2つのビームスプリッタ10i、22はいず
れもP偏光透過型であるが、この2つのビームスプリッタをいずれもS偏光透過型として
も同様の機能を実現することができる。また、第1の偏光ビームスプリッタ22と第2の
偏光ビームスプリッタ10iを異なる透過型(S透過型とP透過型)としてもよい。この
場合、
図9に示すように、第2の偏光ビームスプリッタ10iは第2のレーザ光L2の光
路内で、ミラー23と1/4波長板10hの間に置かれる。第1の位置検出素子10eは
、第1の偏光ビームスプリッタ22が反射した第1のレーザ光L1の位置を検出し、第2
の位置検出素子10fは、第2の偏光ビームスプリッタ10iが反射した第2のレーザ光
L2の位置を検出する。
【0109】
近年、チャンバ2の窓の小型化が進んでおり、窓の制約が厳しくなっている。この窓の
小型化に対応しつつ、チャンバ2上の空間の制約や窓の変形から受けるノイズの低減など
を実現するため、垂直入反射での測定を行うこと、さらに、垂直入反射での測定において
光量の損失を抑えることが望まれている。前述のようにレーザ光は偏光ビームスプリッタ
22により第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2に分離されるため、その光量は半
分になるが、分離後、第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2が偏光ビームスプリッ
タ10iやミラー23などの光学系によって反射されても、それぞれの光量が減少するこ
とはほとんど無く、光量の損失を抑えることができる。したがって、垂直入反射での測定
において、入射から反射まで光の顕著な減少(不必要な散乱)はなく、光量の損失を抑え
ることができる。
【0110】
さらに、垂直入反射での測定において、第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2は
分離後、常にそれらの偏光方向が互いに直交する状態を維持するため、何からの要因によ
り二本のレーザ光L1及びL2が重なったとしても、曲率測定不能を抑止することができ
、加えて、曲率測定精度の向上を実現することができる。また、垂直入反射での測定にお
いて、反射光の方向のみを第1の位置検出素子10eや第2の位置検出素子10fなどの
検知器の方向に転換させることが可能である。
【0111】
以上説明したように、第3の実施形態によれば、偏光方向が互いに異なる第1のレーザ
光L1及び第2のレーザ光L2を平行に基板Wに入射させ、その基板Wにより鏡面反射さ
れた第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2を混合せず、それぞれ第1の位置検出素
子10e及び第2の位置検出素子10fにより検出する。なお、各レーザ光L1及びL2
のそれぞれの進行方向は必ずしも厳密に平行である必要はなく、おおよそ平行であればよ
い。このため、従来の二点一括CCD方式を用いる場合のように、CCDの素子面上の両
点が一致するようなことはなく、二本のレーザ光L1及びL2が重なったとしても偏光性
によって分離され、それぞれ二つの位置検出素子10e及び10fにより検出される。こ
れにより、従来の二点一括CCD方式とは異なり、測定不能が生じることはなく、反りが
大きい場合や両点の間を狭くする場合でも、SN比(S/N)の悪化を抑止することが可
能となる。したがって、曲率測定不能の抑止及び曲率測定精度の向上を実現することがで
きる。
【0112】
さらに、レーザ光の分離後、第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2は偏光ビーム
スプリッタ10iやミラー23などの光学系によって反射されても、それぞれの光量はほ
とんど減少しないため、光量の損失を抑えることができる。加えて、垂直入反射での測定
を採用することによって、各レーザ光L1及びL2が通過するチャンバ2の窓を小さくす
ることが可能となるので、熱などによる窓の傾きによって検出位置精度が低下することを
抑止することができる。
【0113】
(他の実施形態)
前述の第1乃至第3の実施形態においては、各レーザ光L1及びL2をシート状に成形
していないが、これに限るものではなく、シート状に成形するようにしても良い。例えば
、
図10に示すように、半円筒レンズ又は一方向性の拡散フィルタなどの成形部10jに
よって、各レーザ光L1及びL2を一次元の位置検出素子10e及び10fの素子列方向
(長手方向)と垂直な方向(短手方向)に引き伸ばし、その短手方向に伸びるシート状に
成形しても良い。成形部10jは、照射部10aと基板Wとの間の光路上に設けられる。
これにより、各レーザ光L1及びL2が周期的な振動(例えば、回転による基板Wの振動
など)によって一次元の位置検出素子10e又は10fの短手方向にずれた場合でも、そ
の短手方向にシート状になっているため、確実に集光レンズ10cに入射することになる
(集光レンズ10cが無い場合でも、一次元の位置検出素子10e又は10fに確実に入
射することになる)。これにより、各レーザ光L1及びL2は集光レンズ10cによって
集光され、一次元の位置検出素子10e又は10fに確実に入射するため、周期的な振動
による位置検出精度の低下を抑止することができる。なお、周期的な振動が基板Wに生じ
る場合には、レーザ光L1又はL2は位置検出素子10e又は10fの短手方向にずれる
だけではなく、測定対象物の基板Wが回転しているため、その回転に応じて円を描くよう
にずれることなる。このような場合でも、各レーザ光L1及びL2は、前述の短手方向に
シート状になっているため、確実に集光レンズ10cに入射することになる。
【0114】
また、前述の第1乃至第3の実施形態においては、照射部10aとして、レーザ光出射
部21や偏光ビームスプリッタ22、ミラー23などにより、並行する、または平行な、
第1のレーザ光L1及び第2のレーザ光L2を生成しているが、これに限るものではなく
、例えば、二個のレーザ光出射部を用いて、並行する、または平行な、第1のレーザ光L
1及び第2のレーザ光L2を生成することも可能である。各レーザ光L1及びL2の光量
はチャンバ2の窓などの存在によって削られる傾向にあるため、二個のレーザ光出射部を
用いることによって、一個のレーザ光出射部を用いる場合に比べ、光量を上げることがで
きる。この場合には、入射側の偏光ビームスプリッタ22などを不要とすることが可能に
なるが、偏光を良好にするための偏光板、また、レーザ光出射部本体のサイズがあるため
、二本のレーザ光L1及びL2をより近接させるためのミラー、レーザ光出射部本体の冷
却系などを設けることが望ましい。さらに、曲率測定装置10の設置のためのスペース(
成膜装置1の上部)が狭いため、その筺体は小型であることが好ましく、前述の部品点数
の増加を避けるためには、外部光源からファイバーなどによって光を持ち込むことも可能
である。
【0115】
また、前述の第1乃至第3の実施形態においては、曲率測定装置10により基板Wの反
りを測定しているが、これに限るものではなく、例えば、その反り以外にも、曲率を適用
して基板Wの傾きや高さ位置などを測定することが可能である。
【0116】
また、前述の第1乃至第3の実施形態においては、シャワープレート4や曲率測定装置
10を冷却することを行っていないが、これに限るものではなく、例えば、シャワープレ
ート4や曲率測定装置10などを冷却する冷却装置を設け、その冷却装置によりシャワー
プレート4や曲率測定装置10などを冷却するようにしても良い。
【0117】
これまでに説明してきた実施形態では、第2の偏光ビームスプリッタで、測定対象物か
ら反射されたレーザ光のうちの一つを、測定対象物に入射する2つのレーザ光の光路を含
む面内に反射している(
図2、
図3、
図7乃至10での紙面内の方向)。一方、この反射
方向を上記の面内と垂直方向(
図2、
図3、
図7乃至10での紙面と垂直方向)にするこ
とも可能である。これは単純に第2の偏光ビームスプリッタの設置を入射するレーザ光の
光路を軸として90°回転させることにより実現できる。このような変更を行うことで、
本実施形態の曲率測定装置の形状の自由度が増し、制約された空間への設置が行いやすく
なる。
【0118】
上記の反射方向の変更を行う場合、第2の偏光ビームスプリッタを90°回転するため
、偏光が逆転する。もともとSまたはP偏光のレーザ光は上記のように回転させた偏光ビ
ームスプリッタでは各々、PまたはS偏光になることに注意が必要である。また、上記の
反射方向の変更を行った場合、測定対象物の曲率の変化による、第2の偏光ビームスプリ
ッタで反射されたレーザ光の位置検出器上での位置変化は90°回転する。具体的に
図3
の場合について、第2の偏光ビームスプリッタを上記のように90°回転させることの効
果を
図11及び
図12に示す。
図11は、
図3の場合において、第2の偏光ビームスプリ
ッタ10dの接合面を取り出し、これと入射レーザ光、および該レーザ光が第2の偏光ビ
ームスプリッタ10dにより反射されたレーザ光の関係を示したものである。
図11に示
すように、第2の偏光ビームスプリッタ10dで反射されたレーザ光の方向は、測定対象
物である基板Wの反りの変化に対応して、略上下方向に変化する。この位置の変化は
図3
での紙面の略上下方向となる。一方、
図12に第2の偏光ビームスプリッタ10dを90
°回転させた場合を示す。
図12に示すように、第2の偏光ビームスプリッタ10dで反
射されたレーザ光は、
図3での紙面に対して垂直方向に反射される。測定対象物の反りの
変化に対応して、第2の偏光ビームスプリッタ10dで反射されたレーザ光の方向は、略
水平方向に変化する。これは
図3での略左右方向となることに注意が必要である。
【0119】
さらに
図9の場合を例にとり説明すると、第2の偏光ビームスプリッタ10iを第2の
レーザ光L2の方向を軸として90°回転した場合を考える。この場合、第2の偏光ビー
ムスプリッタ10iをP偏光透過型とすることで、
図9の構成と同等の機能を実現できる
。ただし、第2のレーザ光L2の反射される方向は
図9において紙面と垂直方向になる。
【0120】
なお、本実施形態ではMOCVDでの成膜を主な適用例として挙げているが、成膜に伴
う基板の反り変化が生ずる可能性があるならば、MOCVDに限らずスパッタや蒸着など
の手法でも適用可能であり、更には成膜に限らない一般的な反り測定に対しても適用でき
ることは言うまでもない。また、本実施形態では枚葉式の装置を主な適用例として挙げて
いるが、枚葉式の装置に限定されるものではなく、例えば、バッチ処理装置(複数枚同時
処理)にも適用することが可能である。
【0121】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示
したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は
、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、
種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の
範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含
まれる。