特許第6626350号(P6626350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626350
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】送信装置及び受信装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 13/19 20060101AFI20191216BHJP
   H03M 13/29 20060101ALI20191216BHJP
   H04L 27/34 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   H03M13/19
   H03M13/29
   H04L27/34
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-9318(P2016-9318)
(22)【出願日】2016年1月20日
(65)【公開番号】特開2017-130818(P2017-130818A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年11月26日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100143568
【弁理士】
【氏名又は名称】英 貢
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
(72)【発明者】
【氏名】田中 祥次
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 恭一
(72)【発明者】
【氏名】小島 政明
(72)【発明者】
【氏名】小泉 雄貴
【審査官】 太田 龍一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−125982(JP,A)
【文献】 特開2015−015522(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0019753(US,A1)
【文献】 鈴木 陽一 Yoichi SUZUKI,高度衛星デジタル放送の誤り訂正技術 Forward Error Correction Techniques for the Advanced Satellite Broadcasting System,NHK技研R&D NO.119,日本放送出版協会,2010年 1月
【文献】 Yoichi Suzuki et al.,BCH and LDPC coded Wide-band Modem for 21GHz Band Satellite Broadcasting system,2015 IEEE Radio and wireless symposium,2015年 1月28日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 13/19
H03M 13/29
H04L 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルデータの伝送を行う送信装置であって、
32QAMによる直交変調手段と、
第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、最小ユークリッド距離が拡大するように分割する集合分割法により32QAMの変調に用いる信号点への割り当てを行うシンボルについて、LDPC符号及びBCH符号から構成される連接符号を用いて32QAMを構成可能なよう、5ビットで分割可能な複数の符号系列からなるシンボル構成ビットを形成する誤り訂正符号化手段とを備え、
前記LDPC符号の符号化率は、前記シンボル構成ビットの最上位ビットから最下位ビットへのビット順に当該集合分割法により分割されるシンボルの、第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、最小ユークリッド距離が拡大するよう、所要訂正能力に応じて該ビット毎に定められており、
前記誤り訂正符号化手段は、該ビット毎に定められたLDPC符号の符号化率を用いて、LDPC平均符号化率が101/120となるよう前記32QAMのシンボル構成ビットを形成することを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記LDPC符号の符号長が44880ビットであることを特徴とする、請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記BCH符号がBCH(65535,65343)短縮符号、又はBCH(65535,65167)短縮符号であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記BCH符号がBCH(65535,65343)短縮符号である場合に、符号系列を構成する情報ビットがすべてバイト単位で構成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項5】
前記LDPC符号は、前記LDPC平均符号化率101/120の32QAM用のシンボル構成ビットの5ビットについて、最上位ビットである第1ビットに49/120、第2ビットに108/120、第3ビットに108/120、第4ビットに120/120(LDPCパリティなし)、最下位ビットである第5ビットに120/120(LDPCパリティなし)の符号化率を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項6】
前記直交変調手段は、前記LDPC符号及びBCH符号のうち1以上の符号化率に関する情報を、伝送多重制御信号により伝送する符号化率判別信号多重手段を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項7】
前記誤り訂正符号化手段は、符号化率毎に固有の検査行列を用いて当該デジタルデータをLDPC符号化する符号化器を備え、前記符号化器は、44880ビットからなる符号長で符号化率毎に予め定めた検査行列初期値テーブルを初期値として、符号化率49/120に応じた情報長に対応する部分行列の1の要素を、列方向に374列毎の周期で配置して構成した検査行列を用いてLDPC符号化を行う手段を有し、前記符号化率49/120の検査行列初期値テーブルは、
【表1】
からなることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項8】
前記誤り訂正符号化手段は、符号化率毎に固有の検査行列を用いて当該デジタルデータをLDPC符号化する符号化器を備え、前記符号化器は、44880ビットからなる符号長で符号化率毎に予め定めた検査行列初期値テーブルを初期値として、符号化率108/120に応じた情報長に対応する部分行列の1の要素を、列方向に374列毎の周期で配置して構成した検査行列を用いてLDPC符号化を行う手段を有し、前記符号化率108/120の検査行列初期値テーブルは、
【表2-1】
【表2-2】
からなることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項9】
デジタルデータの受信装置であって、
第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、最小ユークリッド距離が拡大するように分割する集合分割法によりLDPC符号及びBCH符号から構成される連接符号化を施した32QAMの変調波信号を直交復調し、受信信号点系列を出力する直交復調手段と、
前記32QAMを構成可能なよう、5ビットで分割可能な複数の符号系列からなるシンボル構成ビットを前記受信信号点系列から取得し、ビット毎に定められたLDPC符号の符号化率を用いてLDPC復号処理を施すとともに、BCH復号処理を施す復号手段とを備え、
前記ビット毎に定められたLDPC符号の符号化率は、前記シンボル構成ビットの最上位ビットから最下位ビットへのビット順に当該集合分割法により分割されるシンボルの、第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、最小ユークリッド距離が拡大するよう、所要訂正能力に応じて該ビット毎に定められ、且つ該ビット毎に定められたLDPC符号の符号化率のLDPC平均符号化率が101/120となるよう構成されていることを特徴とする受信装置。
【請求項10】
前記復号手段は、送信側で符号化に用いた符号化率のLDPC符号及びBCH符号に対応する復号を行うことを特徴とする、請求項9に記載の受信装置。
【請求項11】
前記復号手段は、前記LDPC符号及びBCH符号のうち1以上の符号化率情報について、伝送多重制御信号に基づいて判別する符号化率判別手段を備えることを特徴とする、請求項9又は10に記載の受信装置。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一項に記載の送信装置で送信した変調波信号を受信して、前記集合分割法におけるシンボル構成ビットの各ビットに対して個別に設定された前記LDPC符号の符号化率に基づいて復号することを特徴とする受信装置。
【請求項13】
請求項7又は8のいずれか一項に記載の送信装置で送信した変調波信号を受信して、前記集合分割法におけるシンボル構成ビットの各ビットに対して個別に設定された前記LDPC符号の符号化率と前記検査行列に基づいて復号することを特徴とする受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星放送及び地上放送並びに固定通信及び移動通信の技術分野に関するものであり、特に、デジタルデータの送信装置及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
白色雑音下での伝送性能を向上させる技法として、デジタル変調において、誤り訂正符号の強さと変調マッピングのビットとを適切に組み合わせることで、伝送性能の向上を可能とする符号化変調技術が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
この非特許文献1等に記載される符号化変調技術は、日本の衛星デジタル放送規格ISDB−S(例えば、非特許文献2参照)でも採用されており、伝送性能の向上に寄与する技法として実績がある。
【0004】
非特許文献1に記載される技法の基本的な原理は、シンボルにビットをマッピングした後の信号点間のユークリッド距離を考慮し、シンボルを構成するビット(以下、シンボル構成ビットと呼ぶ)のうち、ユークリッド距離が互いに短い信号点間で1/0が反転するビットに対しては強い誤り訂正を施し、ユークリッド距離が互いに長い信号点間で1/0が反転するビットに対しては逆に弱い誤り訂正を施す、又は符号化処理を施さないことによって、全体の情報効率を維持しつつ、雑音耐性を向上させる、というものである。
【0005】
また、非特許文献1においては、8PSK(phase-shift keying)を例とした集合分割法とよばれる信号点へのシンボル割り当て方法が提案されている。集合分割法は、ビット毎に分割可能な複数の符号系列を入力シンボル系列とし、該入力シンボル系列のシンボル構成ビットを、一様に信号点間の最小ユークリッド距離が拡大するように分割して、変調に用いる信号点へのシンボルの割り当てを行う伝送方式である。一例として、集合分割法による8PSK信号点へのシンボル割り当て方法の例を、図9を用いて説明する。
【0006】
図9には、8PSKの各信号点に割り当てる、3ビットで構成されるシンボル(000、001、・・・、111)が既に記載されているが、これは以下の分割手順を使って信号点へのシンボルの割り当てを行った結果得られるものであり、集合分割を行っている時点においては未だ決定されていない。
【0007】
最初の分割では8つの信号点のうち、隣接する信号点間のユークリッド距離(最小ユークリッド距離)が最大となる様に4つの信号点からなる2つの信号点群に分割する。ここで、2つの信号点群のうち、一方の信号点群には、シンボル構成ビットの第1ビット(最上位ビット)にa1=0を割り当て、他方にはa1=1を割り当てる。
【0008】
次に、最初の分割で得られた4つの信号点で構成される2つの信号点群を、それぞれ、最小ユークリッド距離が最大となる様に2つの信号点からなる4つの信号点群に分割する。ここで、4つの信号点で構成される信号点群を2つの信号点群に分割する際に、一方の信号点群には、シンボル構成ビットの第2ビットにa2=0を割り当て、他方にはa2=1を割り当てる。
【0009】
さらに、図9では省略したが、2回目の分割で得られた2つの信号点で構成される4つの信号点群を、それぞれ、1つの信号点からなる8つの信号点群に分割する。ここで、2つの信号点で構成される信号点群を1つの信号点に分割する際に、一方の信号点群には、シンボル構成ビットの第3ビット(最下位ビット)にa3=0を割り当て、他方にはa3=1を割り当てる。
【0010】
以上の3段階の集合分割を行った結果、8つの信号点それぞれに、3ビットの固有のシンボルが割り当てられる。
【0011】
こうした信号点へのシンボル割り当てを行うことで、8PSKの場合、第1ビット(図9中、a1に相当)は8PSKでの最小ユークリッド距離、第2ビット(図9中、a2に相当)はQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)の最小ユークリッド距離、第3ビット(図9中、a3に相当)はBPSK(Binary Phase-Shift Keying)の最小ユークリッド距離の条件の下で各ビットの復号を行うことが可能となる。
【0012】
また、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)および32QAMに集合分割法を適用した場合のシンボル割り当て方法の例を図10図11に示す。8PSKの場合と同様に、分割を進めることで、最小ユークリッド距離が広がることが確認できる。図10図11においては、第1ビット(a1:最上位ビット)、第2ビット(a2)までの分割例を示しているが、第3ビット(a3)以降も同様に、最小ユークリッド距離が拡大するよう分割が可能である。
【0013】
このような集合分割法の伝送方式によれば、予め送受間で集合分割法により得られた信号点へのシンボルの割り当てを共有し、送信側では、シンボルを構成する各ビットで伝送するデータについて、対応する信号点間の最小ユークリッド距離に適した訂正能力の誤り訂正符号で符号化して変調し、受信側では、復調後に送信側の符号化に対応した復号を行うことで、雑音耐性の高い伝送システムが実現できる。
【0014】
一方で、集合分割法を多値変調に適用する場合、分割するビット毎に最小ユークリッド距離が広がるとともに、ビット毎に誤り訂正能力も異なってくるため、所定の符号化率において伝送性能を向上するには、ビット毎の誤り訂正能力に応じた誤り訂正符号の最適化が必要となる。
【0015】
ところで、欧州の衛星デジタル放送方式であるDVB−S2(非特許文献3参照)、DVB−S2X(非特許文献4参照)やARIB STD−B44に記載の高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(以下、高度衛星放送方式と呼ぶ。例えば、非特許文献5参照)においては、信号点へのシンボルの割り当て技法としてグレイコードが採用されている。
【0016】
グレイコードは、BPSK及びQPSKにおいてはビット毎の訂正能力は一様であるが、8PSK以上の多値変調においては、シンボルに含まれるビット間の誤り訂正能力が不均一となることから、所定の符号化率において伝送性能を向上する際の障害となっている。
【0017】
このため、グレイコードによる上記の問題を改善するべく、当該集合分割法による伝送方式を更に改善し、各ビットの訂正能力が異なる場合の伝送性能を向上させる技法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2014−155195号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】G. Ungerboeck, “Channel coding with multilevel/phase signals”, IEEE Transaction Information Theory, Vol.IT-28, No.1, 1982年1月,p.55−67
【非特許文献2】“衛星デジタル放送の伝送方式 標準規格 ARIB STD-B20 3.0版”、[online]、平成13年5月31日改定、ARIB、[平成27年12月29日検索]、インターネット〈URL:http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/2-STD-B20v3_0.pdf〉
【非特許文献3】Digital Video Broadcasting (DVB), “Second generation framing structure, channel coding and modulation systems for Broadcasting, Interactive Services, News Gathering and other broadband satellite applications(DVB-S2)” ,[online], Final draft ETSI EN 302 307 V1.2.1(2009-04)、[平成27年12月29日検索]、インターネット<URL:http://www.etsi.org/deliver/etsi_en/302300_302399/302307/01.02.01_40/en_302307v010201o.pdf>
【非特許文献4】Digital Video Broadcasting (DVB), “Second generation framing structure, channel coding and modulation systems for Broadcasting, Interactive Services, News Gathering and other broadband satellite applications; Part2: DVB-S2 Extensions(DVB-S2X)” ,[online],Draft ETSI EN 302 307-2 V1.1.1(2014-10)、[平成27年12月29日検索]、インターネット<URL:http://www.etsi.org/deliver/etsi_en/302300_302399/30230702/01.01.01_20/en_30230702v010101a.pdf>
【非特許文献5】“高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式 標準規格 ARIB STD-B44 2.0版”、[online]、平成26年7月31日改定、ARIB、[平成27年12月29日検索]、インターネット〈URL:http://arib.or.jp/english/html/overview/doc/2-STD-B44v2_0.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
前述したように、集合分割法においては、ビット毎に訂正能力が異なることから、所定の符号化率において伝送性能を向上するには、ビット毎の誤り訂正能力に応じた誤り訂正符号の最適化が必要となる。
【0021】
このため、特許文献1には、集合分割法による伝送方式によって各ビットの訂正能力が異なる場合の伝送性能を向上させる技法が開示されているが、8PSKについてのみ、その具体例が開示されている。一方、32QAMにおけるLDPC(Low Density Parity Check)符号化率やLDPC符号の検査行列に関してどのような値を採用すれば周波数利用効率を向上させ、当該伝送性能を向上できるのかについて開示されていない。したがって、当該集合分割法による伝送方式を採用するにあたって、放送事業者が、場合によっては伝送性能の向上が見られないLDPC符号化率(或いはLDPC符号の検査行列)を使用するおそれがあった。
【0022】
したがって、ビット毎に分割可能な複数の符号系列を入力シンボル系列とし、該入力シンボル系列のシンボル構成ビットを、一様に信号点間の最小ユークリッド距離が拡大するように分割する集合分割法による伝送方式において、32QAMにおける具体的なLDPC符号化率や、そのLDPC符号の検査行列に関する値についての具体的な数値が望まれていた。
【0023】
さらに、4Kや8K等の超高精細映像に対する高画質化へのニーズへ対応するためには情報ビットレートを向上する必要があるが、そのためには誤り訂正符号のパリティビットを減らし、平均符号化率を上げると同時に誤り訂正符号が擬似エラーフリーを満たすC/Nも上げる必要がある。通常、擬似エラーフリーの評価点としては、ビット誤り率1.0×10−11がよく用いられる。
【0024】
しかし、32QAMの集合分割法において平均符号化率を上げる場合、LDPC符号設計に関する新たな課題が発生する。図11に示す32QAMへ集合分割法を適用し、ビット毎の誤り訂正符号が無い場合のC/N対ビット誤り率特性を図12に示す。図12において第3ビットに着目すると、C/N=14dBと交差するビット誤り率は1.8×10−3図12におけるマル点線)である。LDPC符号は検査行列が非常に疎であるため容易に符号長を長くすることができ、符号長が長いほど符号間の識別が容易になるため強い誤り訂正能力を有する。通常、数万ビット長のLDPC符号は誤り訂正前のビット誤り率10−1から10−2付近で設計されることが多く、高度衛星放送方式では符号化率1/3〜9/10の範囲でLDPC符号化率が利用可能である。
【0025】
しかしながら、誤り訂正前のビット誤り率が1.8×10−3の場合、LDPC符号化率が非常に1に近くなり、LDPC符号のパリティ長を極端に短くする必要がある。つまり、第3ビットに関しては、LDPC符号を構成する検査行列の低密度性を維持することが非常に難しくなる。
【0026】
さらに、BCH符号のみで第3ビットを訂正する観点からBCH(65535,65167)短縮符号の性能に着目すると、擬似エラーフリーを満たす誤り訂正前のビット誤り率は1.2×10−4であることから、BCH符号のみで擬似エラーフリーを達成することは難しい。
【0027】
BCH符号のみでエラーフリーが達成可能な事例として、図11における第4ビットおよび第5ビットに着目すると、C/N=14dBと交差するビット誤り率は、第4ビットの場合は5.4×10−6図12におけるマル点線)、第5ビットの場合は1.0×10−6図12におけるマル点線)となる。この場合、BCH符号のみで十分に擬似エラーフリーが期待できる。
【0028】
以上の観点から、32QAMの集合分割法においてC/N=14dB付近まで伝送性能を確保するため、できる限り平均符号化率を上げて、尚且つ擬似エラーフリーを満たす5ビットのシンボルを構成したい場合、特に第3ビットについて、誤り訂正符号設計に関する課題が生じる。
【0029】
本発明は、上述の問題に鑑みて為されたものであり、32QAMに集合分割法を適用し、平均符号化率および周波数利用効率を向上させるデジタルデータの送信装置及び受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上述の問題を解決するために、本発明では、所要C/N=14dB付近において擬似エラーフリーが達成可能な手段として、集合分割法による32QAMのシンボル構成ビットの各ビットのLDPC符号化率を平均したLDPC平均符号化率101/120(近似値5/6)を適用する。そして、集合分割法を適用する際に、シンボルを構成するビット毎の誤り訂正能力に応じて、各ビットに対して所定のLDPC符号化率を有するLDPC符号を内符号、所定の訂正能力を有するBCH符号を外符号とする連接符号を適用することで、周波数利用効率を向上させたデジタルデータの送信装置及び受信装置を構成する。即ち、シンボルを構成する各ビットに適用する連接符号は、外符号として、BCH(65535,65343)短縮符号、又はBCH(65535,65167)短縮符号を有し、さらに内符号として、符号長44880を有するLDPC符号を有する。また、LDPC符号は、32QAMのシンボル構成ビットの各ビットにおいて、それぞれ所定の符号化率を有し、最上位の第1ビットから最下位の第5ビットまでのLDPC平均符号化率が、101/120となるよう構成する。さらに、従来からの集合分割法にて第3ビットに起因する課題を解決するため、第2ビットと第3ビットの誤り訂正前のビット誤り率が同等となるよう変形させた集合分割法(本願明細書中、従来技法の集合分割法と対比する際には明確に区別するべく「変形集合分割法」とも称する)を適用する。より具体的に、本発明の特徴事項について以下に述べる。
【0031】
一点目の特徴事項は、
デジタルデータの伝送を行う送信装置において、変調方式として32QAM及びLDPC平均符号化率として101/120を適用することとし、LDPC符号及びBCH符号から構成される連接符号と、変調に用いる信号点へのシンボルの割り当てを行い、第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、最小ユークリッド距離が拡大するように分割する集合分割法とを組み合わせる際に、当該連接符号は、シンボルを構成する各ビットの所要訂正能力に応じて定められた所定数の符号化率を有し、当該集合分割法におけるシンボル構成ビットの各ビットに対してLDPC符号の符号化をするにあたり、第1ビット(最上位ビット)から第5ビット(最下位ビット)の順に、第2ビットと第3ビットの間においては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の拡大に応じて符号化率も増大してLDPC符号化するよう構成することにある。これにより、集合分割法における周波数利用効率を高めることが可能となる。
【0032】
二点目の特徴事項は、
前記LDPC符号において、LDPC符号の符号長が44880ビットとすることにある。これにより、MPEG−2 TS(Motion Pictures Expert Group 2 Transport Stream)との整合性の高い伝送が可能となる。
【0033】
三点目の特徴事項は、
前記LDPC符号及びBCH符号の連接符号において、BCH符号がBCH(65535,65343)短縮符号、又はBCH(65535,65167)短縮符号とすることにある。これにより、周波数利用効率向上のために内符号パリティを付加しない場合においても十分なエラー耐性を得ることが可能となる。
【0034】
四点目の特徴事項は、
前記BCH符号がBCH(65535,65343)短縮符号である場合に、符号系列を構成する情報ビットがすべてバイト単位で構成されることにある。これにより、TLV等のバイト単位で構成される可変長パケットの切れ目を符号系列の情報ビット領域においても、バイト単位で区切ることが可能である。
【0035】
五点目の特徴事項は、
前記LDPC符号は、平均符号化率101/120の32QAMの変調シンボルを構成する5ビットについて、第1ビットに49/120、第2ビットに108/120、第3ビットに108/120、第4ビットに120/120(LDPCパリティなし)、第5ビットに120/120(LDPCパリティなし)の符号化率とすることにある。このようにビット毎の所要訂正能力に応じて定められた符号化率を有することにより、集合分割法における周波数利用効率を高めることが可能となる。
【0036】
六点目の特徴事項は、
一点目〜五点目の特徴より構成された送信装置において、送信装置側で用いるLDPC符号及びBCH符号のうち1以上の符号化率に関する情報を、伝送多重制御信号によって伝送することにある。これにより用いる符号化率に応じて、符号化及び復号の整合がとれた送受信装置を提供することができる。
【0037】
七点目の特徴事項は、
一点目〜六点目の特徴により構成された送信装置により送信された信号を受信する受信装置において、第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、信号点間の最小ユークリッド距離が拡大するように分割する集合分割により得られる信号点とシンボルの対応関係に基づいて、当該シンボルを構成する各ビットをLDPC復号するに当たり、第1ビット、第2ビット、第3ビット、第4ビット、第5ビットの順に、ビット毎の訂正能力に応じたLDPC符号に用いた検査行列によりLDPC復号処理を行うことにある。
【0038】
八点目の特徴事項は、
一点目〜六点目の特徴により構成された送信装置により送信された信号を受信する受信装置において、送信側で符号化に用いた符号化率のLDPC符号及びBCH符号に対応する復号を行うことにある。これにより、効率の良い誤り訂正復号が可能となる。
【0039】
九点目の特徴事項は、
六点目の特徴により構成された送信装置により送信された信号を受信する受信装置において、LDPC符号及びBCH符号のうち1以上の符号化率情報について、伝送多重制御信号に基づいて判別することにある。これにより用いる符号化率に応じて、符号化及び復号の整合がとれた送受信装置を提供することができる。
以上の技法を取り入れて送信装置及び受信装置を構成することで、集合分割法と誤り訂正符号を組み合わせる際の伝送性能を向上させることが可能となる。
【0040】
即ち、本発明の送信装置は、デジタルデータの伝送を行う送信装置であって、32QAMによる直交変調手段と、第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、最小ユークリッド距離が拡大するように分割する集合分割法により32QAMの変調に用いる信号点への割り当てを行うシンボルについて、LDPC符号及びBCH符号から構成される連接符号を用いて32QAMを構成可能なよう、5ビットで分割可能な複数の符号系列からなるシンボル構成ビットを形成する誤り訂正符号化手段とを備え、前記LDPC符号の符号化率は、前記シンボル構成ビットの最上位ビットから最下位ビットへのビット順に当該集合分割法により分割されるシンボルの、第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、最小ユークリッド距離が拡大するよう、所要訂正能力に応じて該ビット毎に定められており、前記誤り訂正符号化手段は、該ビット毎に定められたLDPC符号の符号化率を用いて、LDPC平均符号化率が101/120となるよう前記32QAMのシンボル構成ビットを形成することを特徴とする。これにより、集合分割法における周波数利用効率を高めることが可能となる。また、この特徴を有効化させるために、本発明の送信装置において、MPEG−2 TSとの整合性の高い伝送を可能とするよう、LDPC符号の符号長を44880ビットとするのが好適である。
【0041】
また、本発明の送信装置において、前記BCH符号がBCH(65535,65343)短縮符号、又はBCH(65535,65167)短縮符号であることを特徴とする。これにより、周波数利用効率向上のために内符号パリティを付加しない場合においても十分なエラー耐性を得ることが可能となる。
【0042】
また、本発明の送信装置において、前記LDPC符号は、前記LDPC平均符号化率101/120の32QAM用のシンボル構成ビットの5ビットについて、最上位ビットである第1ビットに49/120、第2ビットに108/120、第3ビットに108/120、第4ビットに120/120(LDPCパリティなし)、最下位ビットである第5ビットに120/120(LDPCパリティなし)の符号化率を有することを特徴とする。このようにビット毎の所要訂正能力に応じて定められた符号化率を有することにより、集合分割法における周波数利用効率を高めることが可能となる。
【0043】
また、本発明の送信装置において、前記直交変調手段は、前記LDPC符号及びBCH符号のうち1以上の符号化率に関する情報を、伝送多重制御信号(即ち、TMCC信号)により伝送する符号化率判別信号多重手段を備えることを特徴とする。これにより用いる符号化率に応じて、符号化及び復号の整合がとれた送受信装置を提供することができる。
【0044】
また、本発明の送信装置において、前記誤り訂正符号化手段は、符号化率毎に固有の検査行列を用いて当該デジタルデータをLDPC符号化する符号化器を備え、前記符号化器は、44880ビットからなる符号長で符号化率毎に予め定めた検査行列初期値テーブルを初期値として、符号化率49/120に応じた情報長に対応する部分行列の1の要素を、列方向に374列毎の周期で配置して構成した検査行列を用いてLDPC符号化を行う手段を有し、前記符号化率49/120の検査行列初期値テーブル(表1)は、以下の表からなることを特徴とする。
【0045】
【表1】
【0046】
また、本発明の送信装置において、前記誤り訂正符号化手段は、符号化率毎に固有の検査行列を用いて当該デジタルデータをLDPC符号化する符号化器を備え、前記符号化器は、44880ビットからなる符号長で符号化率毎に予め定めた検査行列初期値テーブルを初期値として、符号化率108/120に応じた情報長に対応する部分行列の1の要素を、列方向に374列毎の周期で配置して構成した検査行列を用いてLDPC符号化を行う手段を有し、前記符号化率108/120の検査行列初期値テーブル(表2)は、以下の表からなることを特徴とする。
【0047】
【表2-1】
【0048】
【表2-2】
【0049】
特に、本発明に係る集合分割法(変形集合分割法)における第2ビット及び第3ビットに対し、符号化率108/120の検査行列初期値テーブル(表2)を共通に用いるよう構成することで、異なるものとするよりも保持すべきデータ量、即ち検査行列初期値テーブルの数を削減することができ、実用性が高くなるという利点がある。
【0050】
また、本発明の受信装置は、デジタルデータの受信装置であって、第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、最小ユークリッド距離が拡大するように分割する集合分割法によりLDPC符号及びBCH符号から構成される連接符号化を施した32QAMの変調波信号を直交復調し、受信信号点系列を出力する直交復調手段と、前記32QAMを構成可能なよう、5ビットで分割可能な複数の符号系列からなるシンボル構成ビットを前記受信信号点系列から取得し、ビット毎に定められたLDPC符号の符号化率を用いてLDPC復号処理を施すとともに、BCH復号処理を施す復号手段とを備え、前記ビット毎に定められたLDPC符号の符号化率は、前記シンボル構成ビットの最上位ビットから最下位ビットへのビット順に当該集合分割法により分割されるシンボルの、第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、最小ユークリッド距離が拡大するよう、所要訂正能力に応じて該ビット毎に定められ、且つ該ビット毎に定められたLDPC符号の符号化率のLDPC平均符号化率が101/120となるよう構成されていることを特徴とする。
【0051】
また、本発明の受信装置において、前記復号手段は、送信側で符号化に用いた符号化率のLDPC符号及びBCH符号に対応する復号を行うことを特徴とする。これにより、各分割段階に対応するシンボル構成ビットに対して、最適なBER特性が得られ雑音耐性に優れた伝送が可能となる。
【0052】
また、本発明の受信装置において、前記復号手段は、前記LDPC符号及びBCH符号のうち1以上の符号化率情報について、伝送多重制御信号に基づいて判別する符号化率判別手段を備えることを特徴とする。これにより用いる符号化率に応じて、符号化及び復号の整合がとれた送受信装置を提供することができる。
【0053】
また、本発明の受信装置において、本発明の送信装置で送信した変調波信号を受信して、前記集合分割法におけるシンボル構成ビットの各ビットに対して個別に設定された前記LDPC符号の符号化率に基づいて復号することを特徴とする。
【0054】
また、本発明の受信装置において、本発明の送信装置で送信した変調波信号を受信して、前記集合分割法におけるシンボル構成ビットの各ビットに対して個別に設定された前記LDPC符号の符号化率と前記検査行列に基づいて復号することを特徴とする。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、誤り訂正符号と多値変調(32QAM)の組み合わせにおける符号化変調の性能を向上させ、白色雑音下における伝送性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明における一実施形態の送信装置及び受信装置の構成例を示す図である。
図2】本発明に係る実施例1として、第1ビットLDPC符号化率49/120、第2ビットLDPC符号化率108/120、第3ビットLDPC符号化率108/120、第4ビットLDPC符号化率120/120(LDPCパリティ無し)、第5ビットLDPC符号化率120/120(LDPCパリティ無し)、及びBCH(65535,65343)短縮符号の場合のスロット構成例を示す図である。
図3】本発明による32QAMにおける変形集合分割法の分割例を示す図である。
図4】本発明による32QAMにおける変形集合分割法を適用した際に、ビット毎の誤り訂正符号が無い場合のC/N対ビット誤り率特性を示す図である。
図5】本発明と従来技法を対比するC/N対ビット誤り率特性を示す図である。
図6】本発明と従来技法を対比する所要C/N比較結果を示す図である。
図7】本発明に係る実施例2として、第1ビットLDPC符号化率49/120、第2ビットLDPC符号化率108/120、第3ビットLDPC符号化率108/120、第4ビットLDPC符号化率120/120(LDPCパリティ無し)、第5ビットLDPC符号化率120/120(LDPCパリティ無し)、及びBCH(65535,65167)短縮符号の場合のスロット構成例を示す図である。
図8】本発明に係る実施例3として、すべての符号系列において情報ビットがバイト単位で構成され、第1ビットLDPC符号化率49/120、第2ビットLDPC符号化率108/120、第3ビットLDPC符号化率108/120、第4ビットLDPC符号化率120/120(LDPCパリティ無し)、第5ビットLDPC符号化率120/120(LDPCパリティ無し)、及びBCH(65535,65343)短縮符号の場合のスロット構成例を示す図である。
図9】従来からの8PSKにおける集合分割法の分割例を示す図である。
図10】従来からの16QAMにおける集合分割法の分割例を示す図である。
図11】従来からの32QAMにおける集合分割法の分割例を示す図である。
図12】従来からの32QAMにおける集合分割法を適用した際に、ビット毎の誤り訂正符号が無い場合のC/N対ビット誤り率特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、図面を参照して、本発明による一実施形態の送信装置及び受信装置を説明する。 図1は、本発明による一実施形態の送信装置10及び受信装置20のブロック図である。尚、実際の送信装置10は、誤り訂正符号の先頭を識別するために変調波信号に同期信号を多重する機能、ISDB−S等に採用されている伝送方式の設定等の情報を受信機に予告するための伝送多重制御信号(TMCC信号とも呼ぶ)を変調波信号に多重する機能などを有する。また、実際の受信装置20には、変調波信号に多重された同期信号を検出し誤り訂正符号の先頭を検出する同期検出機能や、伝送多重制御信号から伝送方式の設定等の情報を検出して変調方式や符号化率等の設定を行う制御機能などを有するが、その詳細な図示を省略している。
【0058】
(装置構成)
〔送信装置〕
図1を参照するに、本実施形態の送信装置10は、前方向誤り訂正方式の送信装置であり、シリアル/パラレル変換部11と、誤り訂正符号化部12と、符号化率設定部13と、マッピング部14と、直交変調部15と、符号化率判別信号多重部16とを備える。即ち、送信装置10の機能ブロック構成は、集合分割法による符号化変調送信装置と変わらないが、誤り訂正符号化部12の処理、符号化率設定部13及び、附随するマッピング部14が従来技法と異なる。
【0059】
シリアル/パラレル変換部11は、1ビットの送信データ系列を、使用する変調方式の多値数をLとするとM=logLビットのデータ系列(32値変調の場合、M=log32=5ビットの系列)に変換し、誤り訂正符号化部12に送出する。
【0060】
誤り訂正符号化部12は、第1誤り訂正符号化部12‐1〜第5誤り訂正符号化部12‐5から構成され、所定の誤り訂正符号(例えば、BCH符号及びLDPC符号)により符号化した5系統の符号系列を生成する。
【0061】
第1誤り訂正符号化部12‐1〜第5誤り訂正符号化部12‐5のそれぞれは、外符号を実施例1としてBCH(65535,65343)短縮符号とし、内符号を符号長44880のLDPC符号とする。また、後述するLDPC符号に適用する符号化率が120/120の場合は、LDPCパリティは付加せず、実施例1としてBCH(65535,65343)短縮符号のみで誤り訂正符号化を行う。尚、後述するように、実施例2のスロットでは、BCH(65535,65167)短縮符号とすることができる。
【0062】
符号化率設定部13は、当該集合分割法におけるシンボル構成ビットの各ビットに対してLDPC符号の符号化率を個別に設定する。特に、本発明に係るLDPC符号として、平均符号化率101/120を有し、後述する第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、最小ユークリッド距離が拡大するように分割する変形集合分割法に基づく32QAM変調の各ビットにおいて、第1ビットには符号化率49/120、第2ビットには符号化率108/120、第3ビットには108/120、第4ビットには符号化率120/120(LDPCパリティ無し)、第5ビットには符号化率120/120(LDPCパリティ無し)の符号化率を設定する。これにより、誤り訂正符号化部12は、第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、最小ユークリッド距離が拡大するように分割する変形集合分割法によるシンボル構成ビットの訂正能力を考慮した符号化率が設定され、十分な訂正能力を有するLDPC符号化を行うことができる。これにより、集合分割法における周波数利用効率を高めることが可能となる。
【0063】
上記設定に基づき誤り訂正符号化部12から得られる符号群をスロット化した場合の実施例1のスロット構成を図2に示す。尚、本発明において、LDPC符号長は44880であり、高度衛星放送方式(非特許文献5参照)と同一の符号長であることから、高度衛星放送方式のスロットのビット割当に準じてスロット化することが可能であり、図2においてもスロットヘッダを初めとして、同様の割当を適用することが可能である。また、後述するマッピング部14においても、32QAM適用時にビット割当の過不足が生じないマッピングが可能である。
【0064】
マッピング部14は、当該5系統の符号系列を入力シンボル系列とし、シンボルに対応した信号点のI軸及びQ軸の振幅値を変調信号点系列として出力する。尚、ここで、用いるシンボルと信号点との対応関係は、図3に示す第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、最小ユークリッド距離が拡大するように構成した変形集合分割法により取得された集合分割を用いる。即ち、本発明の変形集合分割法では、第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、最小ユークリッド距離が拡大するように様に、信号点を分割することで、シンボルと信号点の対応関係が取得される。従来手法の集合分割法である図11と本発明の変形集合分割法である図3を比較した場合、従来手法では第2、第3ビットにおける最小ユークリッド距離にある関係の信号点対が4つなのに対し、本発明の場合は2つになることがわかる。
【0065】
また、従来手法と本発明の集合分割法において、第1、第4、第5ビットは同じビット割当であることから、第4ビット以降の最小ユークリッド距離の拡大は従来手法と同様に保たれる。本分割を適用した場合のC/N対ビット誤り率特性を図4に示す。図4より、第2ビットと第3ビットにおける誤り訂正前の特性が同じとなり、さらに、C/N=14dBと交差するビット誤り率が1.8×10−2図4における〇点線)であることがわかる。よって、従来の集合分割法における第3ビットの誤り率特性(C/N=14dBにおいて1.8×10−3)に対して、ビット誤り率が1桁大きくなることから、第3ビットに適用するLDPC符号の符号化率を下げることが可能となり、同時にLDPC符号のパリティ長を長くし、十分に疎な検査行列を設計することが可能となる。本特性を踏まえて、第2ビットと第3ビットに適用するLDPC符号は同一の符号化率108/120が適用される。
【0066】
したがって、マッピング部14は、上記対応関係に基づいて、複数の符号系列からなる入力シンボル系列を信号点系列に変換するシンボル/信号点変換手段として機能する。
【0067】
直交変調部15は、マッピング部14により生成された変調信号系列に対して、ロールオフフィルタ処理を実行後、直交変調を施した変調波信号を、外部の伝送路に伝送する。
【0068】
符号化率判別信号多重部16は、符号化率設定部13により誤り訂正符号化部12に対して設定したシンボル構成ビットの各ビット用の符号化率情報を、符号化率設定部13から受け取り伝送多重制御信号(即ち、TMCC信号)によって伝送するよう直交変調部15における変調波信号に多重する機能を有する。
【0069】
〔受信装置〕
本実施形態の受信装置20は、前方向誤り訂正方式の受信装置であり、直交復調部21と、第1〜第5ビット対数尤度比計算部22‐1〜22‐5と、第1〜第5ビット誤り訂正復号部23‐1〜23‐5と、パラレル/シリアル変換部24と、符号化率判別部25とを備える。すなわち、受信装置20の機能ブロック構成は、集合分割法による符号化変調受信装置と変わらないが、直交復調部21及び、第1〜第5ビット誤り訂正復号部23‐1〜23‐5の処理が従来技法と異なる。
【0070】
直交復調部21は、前述した本発明に係る変形集合分割法により得られたシンボルと信号点の対応関係に基づいて変調信号系列を変調した32QAMの変調波信号を、伝送路を介して送信装置10から受信して直交復調し、主信号のシンボルに対応する受信信号点系列を出力する。したがって、直交復調部21は、本発明による集合分割法により得られたシンボルと信号点の対応関係に基づいて変調された変調信号点系列を直交復調することで復元し出力する、直交復調手段として機能する。
【0071】
第1ビット対数尤度比計算部22‐1は、本発明に係る集合分割法により得られたシンボルと信号点の対応関係に基づいて、シンボルを構成する第1ビットについて当該ビットが1及び0である確率(尤度)P11及びP10を求め、それらの比P11/P10の自然対数(LLR:対数尤度比)を計算し、第1ビット誤り訂正復号部23‐1に送出する。
【0072】
第1ビット誤り訂正復号部23‐1は、第1ビット対数尤度比計算部22‐1による第1ビットの対数尤度比を用いて、シンボルを構成する第1ビットに対して、符号化率判別部25から得られる第1ビット用符号化率情報である符号化率49/120に相当するLDPC符号検査行列にしたがって内符号誤り訂正を行い、さらに、LDPC復号結果を入力とし、実施例1ではBCH(65535,65343)短縮符号生成多項式にしたがって外符号誤り訂正を実行し、第1ビットの復号結果を第2ビット対数尤度比計算部22‐2及びパラレル/シリアル変換部24に送出する。
【0073】
第2ビット対数尤度比計算部22‐2は、本発明による集合分割法により得られたシンボルと信号点の対応関係に基づいて、シンボルを構成する第2ビットについて第1ビット同様に対数尤度比を計算して第2ビット誤り訂正復号部23‐2に送出する。
【0074】
第2ビット誤り訂正復号部23‐2は、第2ビット対数尤度比計算部22‐2による第2ビットの対数尤度比を用いて、シンボルを構成する第2ビットに対して、符号化率判別部25から得られる第2ビット用符号化率情報である符号化率108/120に相当するLDPC符号検査行列にしたがって内符号誤り訂正を行い、さらに、LDPC復号結果を入力とし、実施例1ではBCH(65535,65343)短縮符号生成多項式にしたがって外符号誤り訂正を実行し、第2ビットの復号結果を第3ビット対数尤度比計算部22‐3及びパラレル/シリアル変換部24に送出する。
【0075】
第3ビット対数尤度比計算部22‐3は、本発明による集合分割法により得られたシンボルと信号点の対応関係に基づいて、シンボルを構成する第3ビットについて第1、第2ビット同様に対数尤度比を計算して第3ビット誤り訂正復号部23‐3に送出する。
【0076】
第3ビット誤り訂正復号部23‐3は、第3ビット対数尤度比計算部22‐3による第3ビットの対数尤度比を用いて、シンボルを構成する第3ビットに対して、符号化率判別部25から得られる第3ビット用符号化率情報である符号化率108/120に相当するLDPC符号検査行列にしたがって内符号誤り訂正を行い、さらに、LDPC復号結果を入力とし、実施例1ではBCH(65535,65343)短縮符号生成多項式にしたがって外符号誤り訂正を実行し、第3ビットの復号結果を第4ビット対数尤度比計算部22‐4及びパラレル/シリアル変換部24に送出する。
【0077】
第4ビット対数尤度比計算部22‐4は、本発明による集合分割法により得られたシンボルと信号点の対応関係に基づいて、シンボルを構成する第4ビットについて第1、第2、第3ビット同様に対数尤度比を計算して第4ビット誤り訂正復号部23‐4に送出する。
【0078】
第4ビット誤り訂正復号部23‐4は、第4ビット対数尤度比計算部22‐4による第4ビットの対数尤度比を用いて、シンボルを構成する第4ビットに対して、符号化率判別部25から得られる第4ビット用符号化率情報である符号化率120/120に相当する、実施例1のBCH(65535,65343)短縮符号生成多項式にしたがって外符号誤り訂正を実行し、第4ビットの復号結果をパラレル/シリアル変換部24に送出する。
【0079】
第5ビット対数尤度比計算部22‐5は、本発明による集合分割法により得られたシンボルと信号点の対応関係に基づいて、シンボルを構成する第5ビットについて第1、第2、第3、第4ビット同様に対数尤度比を計算して第5ビット誤り訂正復号部23‐5に送出する。
【0080】
第5ビット誤り訂正復号部23‐5は、第5ビット対数尤度比計算部22‐5による第5ビットの対数尤度比を用いて、シンボルを構成する第5ビットに対して、符号化率判別部25から得られる第5ビット用符号化率情報である符号化率120/120に相当する、実施例1のBCH(65535,65343)短縮符号生成多項式にしたがって外符号誤り訂正を実行し、第5ビットの復号結果をパラレル/シリアル変換部24に送出する。
【0081】
このようにして、第1〜第5ビット対数尤度比計算部22‐1〜22‐5及び第1〜第5ビット誤り訂正復号部23‐1〜23‐5は、第2ビットと第3ビットにおいては最小ユークリッド距離の拡大は伴わず、最小ユークリッド距離の関係にある信号点対が減少し、第4ビット以降においては、最小ユークリッド距離が拡大するように分割する変形集合分割法により得られたシンボルと信号点の対応関係に基づいて、ビット毎に得られる復号結果と対数尤度比を用いて、逐次復号を行う。したがって、第1〜第5ビット対数尤度比計算部22‐1〜22‐5及び第1〜第5ビット誤り訂正復号部23‐1〜23‐5は、上記集合分割を行い信号点へのシンボルの割り当てを行った信号点とシンボルの対応関係に基づいて各シンボル構成ビットの復号を行う復号手段として機能する。
【0082】
パラレル/シリアル変換部24は、第1〜第5ビット誤り訂正復号部23‐1〜23‐5から得られるシンボルを構成するビットに対応するデータ系列の復号結果をパラレル/シリアル変換し、1ビットの受信データ系列を外部に送出する。
【0083】
符号化率判別部25は、直交復調部21より得られる、誤り訂正符号の先頭を識別するために変調波信号に同期信号を多重する機能や伝送方式の設定等の情報を受信装置20に予告するための伝送多重制御信号を入力し、第1〜第5ビット誤り訂正復号部23‐1〜23‐5で使用する第1〜第5ビット用符号化率情報を伝送多重制御信号から判別して、第1〜第5ビット誤り訂正復号部23‐1〜23‐5にそれぞれ送出する。
【0084】
本発明の効果として、図1の送信装置10及び受信装置20、図2のスロット構成を用いた場合の伝送性能(シミュレーション結果)を説明する。伝送モデルは白色雑音を想定し、LDPC符号の復号反復回数は1段あたり最大50回に設定した。
【0085】
図5には、同等の符号化率を有する例として、現行方式である高度衛星放送方式の32APSK符号化率101/120と、DVB−S2およびDVB−S2Xの32APSK符号化率5/6を併記した。尚、図5の結果を線形外挿補間し、BER=1×10−11のC/Nを所要C/Nと定義した。所要C/Nの比較結果を図6に示す。図6より、本発明は、高度衛星放送方式に対して、0.33dB、DVB−S2およびDVB―S2Xに対して、0.15dBの改善があることがわかる。
【0086】
また、より高い訂正能力のBCH符号を外符号として適用するために、44880ビットからなる符号長のスロットを、BCH(65535,65167)短縮符号を用いて図7に示すような実施例2のスロット構成とすることができる。
【0087】
つまり、図2に示す実施例1のスロット構成では、従来からの高度衛星放送方式のスロット構成と同様に、176ビットのスロットヘッダと6ビットのスタッフビットが設けられており、目標とする所要C/Nにおいて、シンボル構成ビットの各ビットのうち最小ユークリッド距離が大きくなる第4ビット(a4)および最下位ビット(a5)のビット誤りが、BCH(65535,65343)短縮符号のみで十分に訂正できないほど大きくなるような場合に、44880ビットからなる符号長を変えることなく訂正能力の強化を行うことが望ましい。また、第1ビットから第3ビットの各ビットにおいてもBCH(65535,65167)短縮符号を適用することで、第1ビットから順に復号する際の誤り伝搬の影響を軽減することが可能となる。
【0088】
そこで、図7に示すように、実施例2のスロット構成では、スロットヘッダの領域を削除し、削除した176ビットについてはBCH符号のパリティに割り当て、訂正能力12ビットのBCH(65535,65343)短縮符号から訂正能力23ビットのBCH(65535,65167)短縮符号に強化する。このようにスロットヘッダを削除しても、伝送多重制御信号に、この双方を識別可能な情報を設けることで信号識別上の問題は生じない。
【0089】
これにより、本発明に係るスロット構成は、目標とする所要C/Nが、十分に高い場合(即ち、BCH(65535,65343)短縮符号によって定まる所要C/Nよりも高い目標値となる場合)は、実施例2のスロット構成(図7)を採用し、目標とする所要C/Nに応じて、実施例1のスロット構成(図2)と実施例2のスロット構成(図7)を切り替えて採用する。
【0090】
尚、BCH(65535,65167)短縮符号の生成多項式は、特許文献1に開示されているとおりである。また、BCH(65535,65343)短縮符号の生成多項式は、非特許文献5に開示されているとおりである。
【0091】
なお、図2に示す実施例1においては、スロットヘッダ領域を活用して、TLVパケットなどのバイト単位で構成された可変長パケットを収容することが想定されるが、実施例1のスロット構成においては、スロットを構成する符号系列毎に見た場合、情報ビットがバイト単位で構成されておらず、可変長パケットの切れ目を示すバイト情報をスロットヘッダ領域に書き込むことが困難になることが予想される。
【0092】
そこで、図8に示す実施例3の符号系列ごとに情報ビットがバイト単位で構成されたスロット構成を用いることで、バイト単位で構成される可変長パケットの切れ目を示す情報をスロットヘッダ領域に書き込む機能を担保して収容することが可能となる。
【0093】
上述の実施形態では特定の例を基に説明したが、本発明は伝送方式を指定するものではなく、衛星放送、地上放送、移動通信、固定通信などの他の伝送方式にも適用可能である。また、本発明に係る変形集合分割法による図3に示す信号点配置は一例を示したものに過ぎず、例えば図3における位相関係を180度反転させたものとするなど、本発明の趣旨から逸脱しない限りにおいて他の信号点配置とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、誤り訂正符号と多値変調(32QAM)の組み合わせにおける符号化変調の性能を向上させ、白色雑音下における伝送性能を向上させることが可能となるので、誤り訂正符号と多値変調(32QAM)を利用する任意の用途に有用である。
【符号の説明】
【0095】
10 送信装置
11 シリアル/パラレル変換部
12 誤り訂正符号化部
12‐1 第1誤り訂正符号化部
12‐2 第2誤り訂正符号化部
12‐3 第3誤り訂正符号化部
12‐4 第4誤り訂正符号化部
12‐5 第5誤り訂正符号化部
13 符号化率設定部
14 マッピング部
15 直交変調部
16 符号化率判別信号多重部
20 受信装置
21 直交復調部
22‐1 第1ビット対数尤度比計算部
22‐2 第2ビット対数尤度比計算部
22‐3 第3ビット対数尤度比計算部
22‐4 第4ビット対数尤度比計算部
22‐5 第5ビット対数尤度比計算部
23‐1 第1ビット誤り訂正復号部
23‐2 第2ビット誤り訂正復号部
23‐3 第3ビット誤り訂正復号部
23‐4 第4ビット誤り訂正復号部
23‐5 第5ビット誤り訂正復号部
24 パラレル/シリアル変換部
25 符号化率判別部
図1
図2
図3
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図12