特許第6626430号(P6626430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6626430土壌含水率推定方法および土壌含水率推定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626430
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】土壌含水率推定方法および土壌含水率推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/00 20060101AFI20191216BHJP
【FI】
   G01N5/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-240955(P2016-240955)
(22)【出願日】2016年12月13日
(65)【公開番号】特開2018-96805(P2018-96805A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2018年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】峯田 真悟
(72)【発明者】
【氏名】東 康弘
(72)【発明者】
【氏名】水沼 守
(72)【発明者】
【氏名】大木 翔太
【審査官】 野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−254722(JP,A)
【文献】 特開平10−232286(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/31174(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/313577(US,A1)
【文献】 特開2016−191582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/00−9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌含水率の経時変化が、降雨を起点として、前記土壌含水率が最大含水率まで増加する含水率上昇過程、前記最大含水率の水分量を保持する最大含水率保持過程、前記土壌含水率が減少する水はけ過程、および前記土壌含水率の下限値で一定となる定常過程の順に繰り返すとした含水率変動モデルを元に土壌含水率を推定する土壌含水率推定方法であって、
前記含水率上昇過程および前記水はけ過程における含水率変化速度と、前記最大含水率保持過程における前記最大含水率と、前記定常過程における定常含水率とを、対象とする土壌と同種の土壌を用いて予め計測しておき、計測した値を予め記憶しておく記憶ステップと、
対象とする場所の土壌種の情報を取得するとともに、対象とする場所の対象とする時刻を含む任意の期間における降雨情報を取得する取得ステップと、
前記対象とする場所の土壌種の情報と、前記対象とする場所の前記対象とする時刻を含む任意の期間における前記降雨情報と、前記含水率上昇過程および前記水はけ過程における含水率変化速度と、前記最大含水率保持過程における前記最大含水率と、前記定常過程における定常含水率とから土壌含水率を算出する算出ステップと
を含む土壌含水率推定方法。
【請求項2】
前記算出ステップでは、前記降雨情報が所定の閾値以上のときに前記土壌含水率が前記最大含水率まで上昇する含水率変動モデルを元に推定する請求項1に記載の土壌含水率推定方法。
【請求項3】
土壌含水率の経時変化が、降雨を起点として、前記土壌含水率が最大含水率まで増加する含水率上昇過程、前記最大含水率の水分量を保持する最大含水率保持過程、前記土壌含水率が減少する水はけ過程、および前記土壌含水率の下限値で一定となる定常過程の順に繰り返すとした含水率変動モデルを元に土壌含水率を推定する土壌含水率推定装置であって、
前記含水率上昇過程および前記水はけ過程における含水率変化速度と、前記最大含水率保持過程における前記最大含水率と、前記定常過程における定常含水率とを、対象とする土壌と同種の土壌を用いて予め計測しておき、計測した値を予め記憶しておく記憶部と、
対象とする場所の土壌種の情報を取得するとともに、対象とする場所の対象とする時刻を含む任意の期間における降雨情報を取得する取得部と、
前記対象とする場所の土壌種の情報と、前記対象とする場所の前記対象とする時刻を含む任意の期間における前記降雨情報と、前記含水率上昇過程および前記水はけ過程における含水率変化速度と、前記最大含水率保持過程における前記最大含水率と、前記定常過程における定常含水率とから土壌含水率を算出する算出部と
を備える土壌含水率推定装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記降雨情報が所定の閾値以上のときに前記土壌含水率が前記最大含水率まで上昇する含水率変動モデルを元に推定する請求項3に記載の土壌含水率推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌に含まれる水分の割合を示す土壌含水率を推定する土壌含水率推定方法および土壌含水率推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌に含まれる水分の割合を示す土壌含水率の情報は、土木・建築や農業、環境・防災分野などで重要である。土の力学的性質は含水率によって変化することから、土木・建築分野では、設備の設計や施工方法を決定するときなどに土壌含水率の情報が必要になる場合も多い。また、農業分野では、土壌含水率の情報は、作物育成状況の把握や育成環境整備のために必要な情報となる。この他、例えば地中に埋設された設備の維持管理にも土壌含水率の情報を利用することができる。
【0003】
地中に埋設された金属は、土壌環境による腐食が生じ、経年と共に劣化していく。腐食の進展速度は土壌の環境因子によって大きく異なるが、環境因子のなかでも土壌中に含まれる水の寄与が大きい。従って、地中埋設設備の金属部分がどの程度腐食しているかを把握するためにも、土壌含水率の情報を取得することは重要である。
【0004】
土壌含水率の情報を取得する方法として、一つは、対象とする場所の土壌を実際に採集してきて、水分量を直接測定する方法がある。また、現地で直接計測する方法や、含水率を計測する機能を持つ計測器(センサ)を埋設し、そこから含水率の情報を得る方法もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】佐倉保夫,谷口真人,“土壌水の移動特性に関するカラムを用いた降雨浸透実験”,地理学評論,Vol.56-2, pp.81-93 (1963).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
対象の場所から土壌を採集し、含水率を直接計測する方法として、例えば炉乾燥法や電子レンジ法、真空凍結乾燥法などがある。また、現地で直接計測する方法として、例えばテンシオメーター法がある。このように、採集した土壌や現地で直接計測する場合は、正確な含水率の情報を得ることが可能であるが、土壌採集や計測にかかる稼働の問題から、計測したい地点が増えるほど、また広範囲にわたるほど、コストや時間が増大する問題がある。また、土壌含水率は降雨の影響で時々刻々と変化するため、前述の方法では、採集もしくは計測したその時点の土壌含水率の情報しか得られない。一方、含水率を計測する機能を有するセンサを埋設して計測する場合、センサを定常的に埋設しておけば、正確な含水率の経時変化をモニタリングできる。しかし、この場合も、計測地点数や範囲が大きくなるほど、また測定期間が長くなるほど、センサを用いた測定環境を構築・維持するためのコストが増大する問題がある。
【0007】
すなわち、土木・建築や農業、環境・防災分野、設備管理などに利用する際に、土壌含水率の情報を得たい場所が多数もしくは広範囲にわたって存在する場合や、含水率の情報を取得したい時刻が多数もしくは長期間である場合には、前述した計測方法ではコストが増大してしまうという課題があった。
【0008】
本発明は、前述の課題を解決するためになされたものであって、対象とする場所が多数もしくは広範囲にわたって存在する場合や、対象とする時刻が多数もしくは長期間である場合でも、簡単かつ低コストに土壌含水率を推定することができる土壌含水率推定方法および土壌含水率推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の態様に係る発明は、土壌含水率の経時変化が、降雨を起点として、前記土壌含水率が最大含水率まで増加する含水率上昇過程、前記最大含水率の水分量を保持する最大含水率保持過程、前記土壌含水率が減少する水はけ過程、および前記土壌含水率の下限値で一定となる定常過程の順に繰り返すとした含水率変動モデルを元に土壌含水率を推定する土壌含水率推定方法であって、前記含水率上昇過程および前記水はけ過程における含水率変化速度と、前記最大含水率保持過程における前記最大含水率と、前記定常過程における定常含水率とを、対象とする土壌と同種の土壌を用いて予め計測しておき、計測した値を予め記憶しておく記憶ステップと、対象とする場所の土壌種の情報を取得するとともに、対象とする場所の対象とする時刻を含む任意の期間における降雨情報を取得する取得ステップと、前記対象とする場所の土壌種の情報と、前記対象とする場所の前記対象とする時刻を含む任意の期間における前記降雨情報と、前記含水率上昇過程および前記水はけ過程における含水率変化速度と、前記最大含水率保持過程における前記最大含水率と、前記定常過程における定常含水率とから土壌含水率を算出する算出ステップとを含むことを要旨とする。
【0010】
第2の態様に係る発明は、第1の態様に係る発明において、前記算出ステップで、前記降雨情報が所定の閾値以上のときに前記土壌含水率が前記最大含水率まで上昇する含水率変動モデルを元に推定することを要旨とする。
【0011】
第3の態様に係る発明は、土壌含水率の経時変化が、降雨を起点として、前記土壌含水率が最大含水率まで増加する含水率上昇過程、前記最大含水率の水分量を保持する最大含水率保持過程、前記土壌含水率が減少する水はけ過程、および前記土壌含水率の下限値で一定となる定常過程の順に繰り返すとした含水率変動モデルを元に土壌含水率を推定する土壌含水率推定装置であって、前記含水率上昇過程および前記水はけ過程における含水率変化速度と、前記最大含水率保持過程における前記最大含水率と、前記定常過程における定常含水率とを、対象とする土壌と同種の土壌を用いて予め計測しておき、計測した値を予め記憶しておく記憶部と、対象とする場所の土壌種の情報を取得するとともに、対象とする場所の対象とする時刻を含む任意の期間における降雨情報を取得する取得部と、前記対象とする場所の土壌種の情報と、前記対象とする場所の前記対象とする時刻を含む任意の期間における前記降雨情報と、前記含水率上昇過程および前記水はけ過程における含水率変化速度と、前記最大含水率保持過程における前記最大含水率と、前記定常過程における定常含水率とから土壌含水率を算出する算出部とを備えることを要旨とする。
【0012】
第4の態様に係る発明は、第3の態様に係る発明において、前記算出部が、前記降雨情報が所定の閾値以上のときに前記土壌含水率が前記最大含水率まで上昇する含水率変動モデルを元に推定することを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、対象とする場所が多数もしくは広範囲にわたって存在する場合や、対象とする時刻が多数もしくは長期間である場合でも、簡単かつ低コストに土壌含水率を推定することができる土壌含水率推定方法および土壌含水率推定装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態における土壌含水率推定方法で用いる含水率変動モデルの説明図である。
図2】本実施の形態における土壌含水率推定方法を示すフローチャートである。
図3】本実施の形態における土壌含水率推定方法の具体例を示す図であり、(a)降雨情報の履歴、(b)土壌含水率の変動履歴。
図4】本実施の形態における土壌含水率推定装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0016】
(土壌含水率推定方法の概要)
まず、本実施の形態における土壌含水率の推定方法の概要を説明する。なお、以下の説明では、「土壌含水率」を単に「含水率」という場合がある。
【0017】
図1は、本実施の形態における土壌含水率推定方法で用いる含水率変動モデルの説明図である。縦軸は土壌含水率を示し、横軸は時間を示している。この図に示すように、本実施の形態における土壌含水率推定方法では、土壌含水率の経時変化が、降雨を起点として、含水率上昇過程P1、最大含水率保持過程P2、水はけ過程P3、および定常過程P4の順に繰り返すとした含水率変動モデルを元に推定する。含水率上昇過程P1は、降雨を観測した時刻を起点として、土壌含水率が最大含水率C2まで増加する過程である(時間t1〜t2,t5〜t6,t9〜t10,・・・)。最大含水率保持過程P2は、土壌が含むことのできる最大の水分量を保持する過程である(時間t2〜t3,t6〜t7,t10〜t11,・・・)。水はけ過程P3は、降雨終了後から含水率が減少する過程である(時間t3〜t4,t7〜t8,t11〜t12,・・・)。定常過程P4は、水はけ過程P3における含水率の低下の下限値C1で一定となる過程である(時間t4〜t5,t8〜t9,・・・)。
【0018】
図2は、本実施の形態における土壌含水率推定方法を示すフローチャートである。この土壌含水率推定方法は、含水率変動モデル(図1参照)を元に土壌含水率を推定するものであり、次のステップS1〜4を含む。まず、含水率上昇過程P1および水はけ過程P3における含水率変化速度と、最大含水率保持過程P2における最大含水率C2と、定常過程P4における定常含水率とを、対象とする土壌と同種の土壌を用いて予め計測し、その計測結果を記憶しておく(ステップS1)。また、対象とする場所の土壌種の情報を取得するとともに(ステップS2)、対象とする場所の対象とする時刻を含む任意の期間における降雨情報を取得する(ステップS3)。更に、対象とする場所の土壌種の情報と、対象とする場所の対象とする時刻を含む任意の期間における降雨情報と、含水率上昇過程P1および水はけ過程P3における含水率変化速度と、最大含水率保持過程P2における最大含水率C2と、定常過程P4における定常含水率とから土壌含水率を算出する(ステップS4)。これにより、対象とする場所が多数もしくは広範囲にわたって存在する場合や、対象とする時刻が多数もしくは長期間である場合でも、簡単かつ低コストに土壌含水率を推定することが可能となる。
【0019】
(土壌含水率推定方法の具体例)
図3は、本実施の形態における土壌含水率推定方法の具体例を示す図である。図3(a)は降雨情報の履歴を示し、図3(b)はそれに対応する土壌含水率の変動履歴を示している。
【0020】
既に説明したように、含水率上昇過程P1は、降雨を観測した時刻t10を起点として、土壌含水率が最大含水率C2まで増加する過程である。本実施の形態において、含水率上昇過程P1における含水率上昇速度は、対象とする場所の土壌種に依存すると考える。含水率上昇速度は、対象とする場所の土壌と同じ種別の土壌を予め用意しておき、その土壌における透水速度を直接計測することで得る。含水率上昇速度の計測方法は特に制限しないが、例えば非特許文献1などの浸透実験を通して測定した値をその土壌の含水率上昇速度の代表値として取得してもよい。また、採取した土壌や実際の土壌にセンサを埋め、その際の降雨開始からの含水率変化をモニタリングし、その結果から含水率上昇速度を得てもよい。
【0021】
最大含水率保持過程P2は、土壌が含むことのできる最大の水分量となった状態であり、本実施の形態では、降雨が観測されている期間は常に一定になるように算出する。これは、最大含水率C2は土壌の間隙率と同じであり、土壌中の土壌粒子以外の空間容積が一定だとすれば、最大含水率C2は一定値となるためである。また、最大含水率C2となる際の降雨水量に閾値Tを設けてもよい。実際、時間雨量で1〜2mmほどの降雨であれば、土壌含水率変動は小さいと考えられる(時間t30〜t40参照)。そのため、閾値Tを例えば3mmとし、3mm以上の降雨のときに最大含水率C2まで上昇する含水率変動モデルとしてもよい。ただし、この閾値Tは特に制限するものではない。最大含水率C2は、前述と同じように、対象とする場所の土壌と同じ種別の土壌を予め用意しておき、その土壌における最大含水率C2を直接計測することで得る。最大含水率C2の計測方法は特に制限しないが、例えば「JIS A 1203」といった規格に則った算出法で得てもよいし、入手した土壌に水を最大以上まで含ませた後、水分量計測器で計測する計測方法などで得てもよい。
【0022】
水はけ過程P3は、降雨終了後t20から含水率が減少する過程である。水はけ過程P3は、例えば採集した土壌をもとに非特許文献1などの浸透実験を通して測定した値をその土壌の水はけ速度の代表値として用い、時間に対する含水率の低下を算出する。このとき、水はけ速度は一定値としてもよいし、降雨終了後t20からの時間tに依存する速度式として得てもよい。すなわち、この一定値とした水はけ速度もしくは速度式に基づき、降雨終了後t20から含水率が低下するよう算出される。また、対象とする種別の土壌の密度や間隙率といった物性値情報から、水はけ速度を間接的に計算・シミュレートすることで得てもよい。
【0023】
定常過程P4は、水はけ過程P3における含水率の低下の下限値C1で一定となるとしたもので、例えば定常含水率、すなわち重力方向の含水率変化が起きなくなったときの含水率が既知であった場合は、この定常過程P4を含水率変動モデルに適用するのがよい。また、含水率を推定する際には、この定常過程P4を考えなくてもよい。
【0024】
このように本実施の形態では、含水率上昇過程P1および水はけ過程P3における含水率変化速度(含水率上昇速度、および水はけ速度)と、最大含水率保持過程P2における最大含水率C2と、定常過程P4における定常含水率とを、対象とする土壌と同種の土壌を用いて予め計測しておく。本実施の形態では、基本的に同じ種別の土壌であれば、含水率上昇過程P1および水はけ過程P3における含水率変化速度、最大含水率保持過程P2における最大含水率C2、定常過程P4における定常含水率は常に同じになると考える。つまり、一つの土壌種(土壌の種別)に対して、少なくとも一度だけその情報を取得しておき、それを代表値として使用する。すなわち、一度でも対象の土壌種における最大含水率C2および含水率変化速度を取得しておけば、その後はこの情報をその土壌種における代表値として利用するため、毎回対象とする場所の土壌や、同じ土壌種の最大含水率C2および含水率変化速度を取得する必要はない。ただし、例えば同じ種別の土壌を異なる地点から入手し、それぞれの最大含水率C2や含水率変化速度を計測すれば、その平均値を代表値として取得することで、より信頼性が向上する。また、最大含水率C2や含水率変化速度のバラつきなど統計的情報も含めて取得しておけば、より信頼性の高い推定が可能になる。
【0025】
また、本実施の形態は、対象とする場所および対象とする時刻を含む任意の期間における降雨情報および土壌種の情報を公開情報から取得してもよい。
【0026】
すなわち、本実施の形態では、土壌含水率が降雨と連動して変化する含水率変動モデルをもとに推定する。そのため、対象とする場所の土壌種の情報と、対象とする場所の対象とする時刻を含む任意期間での降雨情報とが必要になる。土壌種とは、ある任意の基準に基づき各土壌を識別する土壌の系統的な分類を指している。分類基準は特に制限しないが、例えば地盤工学会基準や農耕地土壌分類に基づく分類などがある。土壌種情報の取得は、目的とする場所の土壌を採取し、どの土壌種に該当するかを任意の基準に照らして調査してもよいが、本実施の形態では、国土交通省が公開している土壌図等のデータを利用する。公開された土壌図を利用すれば、対象とする場所の位置情報と照らすことで、その場所の土壌種情報を容易に取得できる。また、降雨情報は、対象とする場所の、対象とする時刻を含む任意の期間における降水履歴を取得する。本実施の形態において、降水履歴情報を取得する際の期間は制限しないが、公開情報として、例えば、気象庁が公開している時間雨量データを利用する方法がある。このとき、気象庁の観測地点が、対象とする場所と離れている場合は、対象とする場所から最も近い観測地点のデータをその地点の降水履歴情報としてもよいし、対象とする場所の周囲にある複数の観測地点のデータを元にして、対象とする場所の降水履歴を計算して得てもよい。また、降水雨量データは10分間降水量や1時間降水量、日降水量などあるが、どれを採用してもよく、特に制限しない。
【0027】
(土壌含水率推定装置)
図4は、本実施の形態における土壌含水率推定装置10の概略構成を示す模式図である。この土壌含水率推定装置10は、前述した土壌含水率推定方法を実現するパソコン等の汎用コンピュータであり、入力部11と、記憶部12と、制御部13と、算出部13Aと、取得部13Bと、出力部14とを備える。
【0028】
入力部11は、電源スイッチおよび入力キーなどの入力デバイスを用いて実現される。入力部11は、操作者による入力操作に対応して、制御部13に対して各種指示情報や計測データ等を入力する。
【0029】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部12は、土壌種別や最大含水率C2および水はけ速度等の土壌情報、更に降水量変動情報、制御部13を通して算出された含水率情報等を記憶する。記憶部12は、LANやインターネットなどの電気通信回線を介し、制御部13と通信する構成としてもよい。また、記憶部12に土壌図のデータや降水量データが記憶されていてもよいし、電気通信回線を介して外部記憶媒体から適宜情報を入手し、記憶部12に記憶するようにしてもよい。
【0030】
制御部13は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置によって実現される。制御部13は、メモリに記憶された処理プログラムを実行することによって含水率を算出する算出部13Aとして機能する。また、LANやインターネットなどの電気通信回線を介し、各種情報を取得する取得部13Bとしても機能する。
【0031】
算出部13Aは、目的とする場所の土壌種別から、記憶部12に記憶された最大含水率C2および含水率変化速度(含水率上昇速度、および水はけ速度)の情報と、目的とする時刻を含むある期間の降水量変動情報を入手する。そして、降雨のあった時刻から雨が止むまでは最大含水率C2を示し、雨が止んだ後は次の降雨まで前述の水はけ速度で含水率が低下するという含水率変動モデルのもと、目的とする時刻の含水率を算出する。このとき、算出部13Aは、目的とする時刻のみの含水率を算出するだけでなく、読み込んだ降水量変動情報のもつ期間以内であれば含水率変動履歴として算出し、後述の出力部14を介して表示することもできる。
【0032】
出力部14は、液晶ディスプレイなどの表示装置、プリンターなどの印刷装置、情報通信装置などによって実現される。出力部14は、算出部13Aにより算出された土壌含水率等を出力する。
【0033】
以上のように、本実施の形態における土壌含水率推定装置10は、土壌含水率の経時変化が、降雨を起点として、含水率上昇過程P1、最大含水率保持過程P2、水はけ過程P3、および定常過程P4の順に繰り返すとした含水率変動モデルを元に土壌含水率を推定する装置であって、記憶部12、取得部13B、算出部13A等を備える。記憶部12は、含水率上昇過程P1および水はけ過程P3における含水率変化速度と、最大含水率保持過程P2における最大含水率C2と、定常過程P4における定常含水率とを、対象とする土壌と同種の土壌を用いて予め計測しておき、計測した値を予め記憶しておく。取得部13Bは、対象とする場所の土壌種の情報を取得するとともに、対象とする場所の対象とする時刻を含む任意の期間における降雨情報を取得する。算出部13Aは、対象とする場所の土壌種の情報と、対象とする場所の対象とする時刻を含む任意の期間における降雨情報と、含水率上昇過程P1および水はけ過程P3における含水率変化速度と、最大含水率保持過程P2における最大含水率C2と、定常過程P4における定常含水率とから土壌含水率を算出する。これにより、対象とする場所が多数もしくは広範囲にわたって存在する場合や、対象とする時刻が多数もしくは長期間である場合でも、簡単かつ低コストに土壌含水率を推定することが可能となる。
【0034】
また、算出部13Aは、降雨情報が所定の閾値以上のときに土壌含水率が最大含水率C2まで上昇する含水率変動モデルを元に推定してもよい。これにより、時間雨量で1〜2mmほどの降雨により土壌含水率が上昇することを防止することが可能となる。
【0035】
なお、本発明は、このような土壌含水率推定方法や土壌含水率推定装置として実現することができるだけでなく、土壌含水率推定方法に含まれる特徴的なステップをコンピュータに実行させる土壌含水率推定プログラムとして実現することもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体やインターネット等の伝送媒体を介して配信することができるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0036】
10…土壌含水率推定装置
11…入力部
12…記憶部
13…制御部
13A…算出部
13B…取得部
14…出力部
図1
図2
図3
図4