【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程Dの後において、前記熱電変換層からの前記分散剤の溶出度が前記ドーパントの溶出度よりも高い溶媒B1を用いて前記熱電変換層を洗浄する工程Eをさらに有する、請求項10に記載の熱電変換層の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の分散組成物の製造方法、および、熱電変換層の製造方法について説明する。
なお、本発明において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本発明において、性能指数Zとは、熱電変換素子の熱電変換性能を評価する指標の1つである。この性能指数Zは、下記式(A)で示され、熱電変換性能の向上には、絶対温度1K当りの熱起電力(以下、熱起電力ということがある)Sおよび導電率σの向上、熱伝導率κの低減が重要である。
性能指数Z=S
2・σ/κ (A)
式(A)において、 S(V/K):絶対温度1K当りの熱起電力(ゼーベック係数)
σ(S/m):導電率
κ(W/mK):熱伝導率
【0013】
[分散組成物の製造方法]
本発明の分散組成物の製造方法は、カーボンナノチューブと、有機溶媒と、を混合して、粗分散組成物を得る工程Aと、上記粗分散組成物を用いてカーボンナノチューブ膜状物を得る工程Bと、分散剤と、溶媒Aと、上記溶媒Aに対して1w/v%以上の上記カーボンナノチューブ膜状物と、を混合して、分散組成物を得る工程Cと、を有する。
【0014】
本発明の分散組成物の製造方法によれば、カーボンナノチューブの分散性に優れ、導電率および熱電変換性能が改善され、熱電変換性能のばらつきが低減された熱電変換層を形成できる。分散の方法と熱電変換に関わる性能との関係は世の中でも明確になっておらず、この理由の詳細は未だ明らかになっていないが、概ね以下の理由によるものと推測される。
カーボンナノチューブ(以下、単に「CNT」ともいう。)は、バンドルといわれるCNTが束になった繊維状の構造を形成している。そのため、この束をほぐすために、CNTの分散処理が実施される。しかしながら、この束を一度にほぐすことは困難であり、太い束状であるCNTの未分散物が残りやすいという問題がある。CNTおよび溶媒を含有する分散組成物を製造する際に、溶媒に対するCNTの含有量が多いと、この問題が顕著になる。
そこで、発明者らが鋭意検討したところ、CNTを含有する分散組成物を製造する際に、CNTを有機溶剤中で分散させた粗分散物組成物を形成し、さらに得られた粗分散組成物を成膜してカーボンナノチューブ膜状物を形成するという工程を予め行うことで、分散組成物中におけるCNTの分散性が優れたものになることを見出した。CNTを一度膜状の塊物にすることは、分散性向上の前処理としては、好ましくないと考えられていたが、驚くことに本処理により、CNTのバンドルが顕著に細くなり、その結果、分散組成物中におけるCNTの分散性が優れたものになることを見出した。
ここで、バンドルを細くするためには分散条件を厳しくすれば良いが、通常はCNTにダメージを与えるため顕著な改良は難しいことが知られている。しかしながら、本発明では特殊な工程(上記の粗分散組成物を形成する工程および膜状物を形成する工程)を採用することで、CNTへのダメージを軽減しつつバンドルを細くすることに成功したと考えられる。
このように、バンドル径が小さく、欠陥の少ないCNTを含有する分散組成物を用いて熱電変換層を形成することで、CNTが層中で均一に存在することになるので、熱電変換層の熱電変換性能のばらつきが低減できたと推測される。
また、分散組成物中のCNTのバンドル径が小さくなることで、CNT間の良好なネットワークが形成される(すなわち、導電率の律速であるCNT間の接点の数が増える)ため、熱電変換層の導電率が向上したものと推測される。また、熱電変換層の導電率の向上に伴って、熱電変換性能も向上したと考えられる。
【0015】
以下、本発明の分散組成物の製造方法に含まれる工程および含まれ得る工程について詳細に説明する。
【0016】
〔工程A〕
工程Aは、CNTと、有機溶媒と、を混合して、粗分散組成物を得る工程である。本工程により、有機溶媒中にCNTが分散した粗分散組成物が得られる。本工程により、CNTの束がある程度ほぐれて、有機溶媒中にCNTが分散した粗分散組成物が得られる。
【0017】
CNTと有機溶媒との混合は、これに限定されないが、例えば、ホモジナイザー、薄膜旋回、ジョークラッシャー、自動乳鉢、超遠心粉砕、ジェットミル、カッティングミル、ディスクミル、ボールミル、自転公転撹拌、超音波分散などの方法を実施できる装置を用いて行うことができる。これらの混合方法の中でも、バンドル径の制御が容易になるという観点、およびCNTに欠陥が生じることを少なくできるという観点から、工程Aにおける混合をホモジナイザー、ジェットミルによって行うことが好ましく、ホモジナイザーを用いることがより好ましい。また、必要に応じて、これらの方法を2つ以上組み合わせてもよい。
混合時の条件(混合時間、混合時の温度など)は、特に限定されるものではないが、後述の工程Bの膜状物におけるCNTのバンドル径が、200nm以下になるような条件で行われることが好ましく、150nm以下になるような条件で行われることがより好ましく、100nm以下になるような条件で行われることがさらに好ましい。これにより、後の工程Cにおける分散組成物中でのCNTの分散性がより向上する。特に、上述したホモジナイザーを工程Aにおける混合に用いると、工程Bにおける膜状物に含まれるCNTのバンドル径を200nm以下にすることが容易であるという観点から好ましい。
本発明においてCNTのバンドル径とは、CNTの束の平均短軸径のことを指す。CNTのバンドル径は、工程Bの膜状物を、SEM(走査型電子顕微鏡)で50,000倍に拡大して撮影した画像から確認できるバンドル一本当たりの繊維の幅を任意の20箇所で測定し、その平均値を算出した値である。
【0018】
(カーボンナノチューブ)
本発明の工程Aで用いるカーボンナノチューブ(CNT)は、1枚の炭素膜(グラフェンシート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェンシートが同心円状に巻かれた2層CNT、および、複数のグラフェンシートが同心円状に巻かれた多層CNTがある。本発明においては、単層CNT、2層CNT、多層CNTを各々単独で用いてもよく、2種以上を併せて用いてもよい。特に、導電性および半導体特性において優れた性質を持つ単層CNTおよび2層CNTを用いることが好ましく、単層CNTを用いることがより好ましい。
単層CNTは、半導体性のものであっても、金属性のものであってもよく、両者を併せて用いてもよいが、熱電変換性能の観点から半導体性CNTの含有量が高いものが好ましい。また、CNTには金属等が内包されていてもよく、フラーレン等の分子が内包されたもの(特にフラーレンを内包したものをピーポッドという)を用いてもよい。
CNTは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
CNTはアーク放電法、化学気相成長法(以下、CVD法という)、レーザー・アブレーション法等によって製造することができる。本発明に用いられるCNTは、いずれの方法によって得られたものであってもよいが、好ましくはアーク放電法およびCVD法により得られたものである。
CNTを製造する際には、同時にフラーレンやグラファイト、非晶性炭素が副生成物として生じることがある。これら副生成物を除去するために精製してもよい。CNTの精製方法は特に限定されないが、洗浄、遠心分離、ろ過、酸化、焼成、クロマトグラフ等の方法が挙げられる。その他に、硝酸、硫酸等による酸処理、超音波処理も不純物の除去には有効である。併せて、フィルターによる分離除去を行うことも、純度を向上させる観点からより好ましい。
【0020】
精製の後、得られたCNTをそのまま用いることもできる。また、CNTは一般に紐状で生成されるため、用途に応じて所望の長さにカットして用いてもよい。CNTは、硝酸、硫酸等による酸処理、超音波処理、凍結粉砕法等により短繊維状にカットすることができる。また、併せてフィルターによる分離を行うことも、純度を向上させる観点から好ましい。
本発明においては、カットしたCNTだけではなく、あらかじめ短繊維状に作製したCNTも同様に使用できる。
【0021】
CNTの平均長さは特に限定されないが、製造容易性、成膜性、導電性等の観点から、0.01〜1000μmであることが好ましく、0.1〜100μmであることがより好ましい。
また、CNTの直径は特に限定されないが、耐久性、成膜性、導電性、熱電変換性能等の観点から、0.4〜100nmが好ましく、0.5〜4.0nmがより好ましく、0.6〜3.0nmがさらに好ましく、0.7〜2.0nmが特に好ましい。
CNTの70%以上の直径分布(以下、「70%以上の直径分布」を単に「直径分布」とも言う)が、3.0nm以内であることが好ましく、2.0nm以内であることがより好ましく、1.0nm以内であることがより好ましく、0.7nm以内であることが特に好ましい。
直径、直径分布は以下の方法で測定できる。
本明細書では、単層カーボンナノチューブの直径を下記のようにして評価した。すなわち、単層カーボンナノチューブの532nm励起光でのラマンスペクトルを測定し(励起波長532nm)、ラジアルブリージング(RBM)モードのシフトω(RBM)(cm
−1)より、下記算出式を用いて算出した。最大ピークより算出した値をCNTの直径とした。直径分布は各ピークトップの分布から求めた。
算出式:直径(nm)=248/ω(RBM)
【0022】
工程Aで添加するカーボンナノチューブの添加量は、工程Aで添加する有機溶媒に対して、0.001〜50w/v%であることが好ましく、0.01〜25w/v%であることがより好ましく、0.01〜10w/v%であることがさらに好ましい。この範囲にあることで、工程Bの膜状物におけるバンドル径を制御でき、工程Cにおけるカーボンナノチューブの分散性が向上する。
【0023】
(有機溶媒)
本発明の工程Aで用いる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メトキシエトキシエタノール、ブトキシエタノール、ブチルカルビトール、ヘキシルオキシエタノール、オクタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒、クロロホルム等の脂肪族ハロゲン系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性の極性溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、テトラリン、テトラメチルベンゼン、アニソール、チオアニソール、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ピリジン、キノリン等の芳香族系溶媒、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケントン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジアセトキシプロパン等のエステル溶媒、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート等が挙げられる。
有機溶媒は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
〔工程B〕
工程Bは、上記粗分散組成物を用いてカーボンナノチューブ膜状物(以下、「CNT膜状物」ともいう。)を得る工程である。これにより、シート(布)状のCNT膜が得られる。本工程では、工程Aで得られた粗分散組成物を用いてCNT膜状物を形成することにより、200nm以下、好ましくは150nm、さらに好ましくは100nm以下のバンドル径をもつCNTが、膜状物中に略均一に分散して存在することになる。このようなバンドル径の小さいCNT膜状物を後述の工程Cで用いることで、工程Cで得られる分散組成物に含まれるCNTの分散性が優れたものになり、その結果、高濃度のCNTの分散液を得ることができたと推測される。
【0025】
粗分散組成物を膜化する方法としては、特に限定されないが、例えば、粗分散組成物を濾取することにより有機溶媒を除去してCNT膜状物を得る方法が挙げられる。濾取は、脱溶媒の速度が向上し、成膜の生産性が向上するという点から、減圧吸引下で行うことが好ましい。
また、各種印刷、スプレー、ディップコート、遠心分離などの方法によってもCNT膜状物を得ることができる。
【0026】
工程Bでは、有機溶媒の除去を効率的に行える等の観点から、CNT膜状物を乾燥させる乾燥処理を実施してもよい。
乾燥処理の条件としては、特に限定されないが、一般的に20〜500℃で5分〜24時間行われる。乾燥雰囲気は特に限定されず、大気雰囲気下、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、アルゴン/水素などの還元雰囲気下などで行われる。また、乾燥処理に使用する装置としては特に限定されず、公知の装置を用いて行うことができる。
【0027】
工程BにおいてCNT膜状物の膜厚は、特に限定されないが、後述の工程CにおけるCNTの分散性の観点から、1μm〜1mmであることが好ましく、1μm〜500μmであることがより好ましい。
また、CNT膜状物の単位体積あたりの質量(密度)は、後述する工程CにおけるCNTの分散性がより向上するという観点から、0.01〜1.2g/cm
3であることが好ましく、0.1〜1.0g/cm
3であることがより好ましく、0.3〜0.8g/cm
3であることが特に好ましい。
【0028】
〔工程C〕
工程Cは、分散剤と、溶媒Aと、上記溶媒Aに対して1w/v%以上、好ましくは2w/v%以上の上記カーボンナノチューブ膜状物と、を混合して、分散組成物を得る工程である。
【0029】
工程Cにおける各成分の混合は、これに限定されないが、例えば、ホモジナイザー、薄膜旋回、ジョークラッシャー、自動乳鉢、超遠心粉砕、ジェットミル、カッティングミル、ディスクミル、ボールミル、ロールミル、自転公転撹拌、超音波分散などの方法を実施できる装置を用いて行うことができる。これらの方法の中でも、工程Cにおける混合は、薄膜旋回法により行うことが好ましい。また、これらの方法は、2つ以上を組み合わせて行ってもよい。
ここで薄膜旋回法とは、分散処理対象物を遠心力により装置内面(内壁面)に薄膜円筒状に押し付けた状態で高速回転させて、遠心力および装置内面との速度差により発生するずり応力を分散処理対象物等に作用させることにより、薄膜円筒状の分散処理対象物内で分散対象物を分散させる分散方法である。薄膜旋回法を実施できる装置としては、例えば、薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス」(登録商標)シリーズ(プライミックス社製)を好適に用いることができる。
薄膜旋回法は、遠心力とずり応力とで各成分を分散させるものであり、混合時におけるCNTの切断や欠陥の発生も抑えることができる。
工程Cにおける混合時の条件(混合時間、混合時の温度など)は、特に限定されるものではなく、公知の条件に準じて行えばよい。
【0030】
工程Cでは、分散組成物の脱泡を目的として、さらに脱泡処理を行ってもよい。脱泡処理には、自転公転攪拌方法が好ましく用いられる。なお、脱泡処理は、脱泡のみを目的とすることに限らず、各成分をさらに混合するという目的で行われてもよい。
脱泡処理の条件(脱泡時間、脱泡時の温度)については、特に限定されるものではない。
【0031】
(分散剤)
分散剤としては、CNTを分散させる機能を有しているものであれば特に限定されるものではなく、CNTに吸着する官能基(例えば、アルキル基、ピレン、アントラセン、ターフェニレン、ポルフィリンなどの芳香族基、コレステロールなどの脂環基など)と、CNTの凝集を抑制する立体反発基(直鎖、分岐のアルキル基、ポリアクリル酸エステルなどのポリマー由来の基など)、静電反発基(例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの塩、アンモニウム基など)と、を有するものであれば、低分子、高分子問わず使用可能であるが、中でも界面活性剤を用いることが好ましい。
界面活性剤とは、分子内に水になじみやすい部分(親水基)と、水とはなじみにくい部分(疎水性基)を有する化合物である。本明細書においては、界面活性剤としては、低分子化合物(分子量1000以下の化合物)であってもよいし、所定の繰り返し単位を有する高分子化合物であってもよい。
界面活性剤の種類は特に制限されず、CNTを分散させる機能を有するものであれば、公知の界面活性剤を使用することができる。より具体的には、界面活性剤は、水、極性溶媒、水と極性溶媒との混合物に溶解し、CNTに対する吸着性を有するものであれば、各種の界面活性剤が利用可能である。
例えば、イオン性界面活性剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤)、非イオン性界面活性剤(ノニオン性界面活性剤)などが挙げられる。CNTの分散性が良好で熱電変換層の熱電変換性能が優れ、洗浄による除去が容易という観点から、イオン性界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0032】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、芳香族スルホン酸系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類、芳香族スルホン酸塩類、芳香族置換ポリオキシエチレンスルホン酸塩類、モノソープ系アニオン性界面活性剤、エーテルサルフェート系界面活性剤、フォスフェート系界面活性剤およびカルボン酸系界面活性剤、脂肪酸塩等が挙げられる。
より具体的には、オクチルベンゼンスルホン酸塩、ノニルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、モノイソプロピルナフタレンスルホン酸塩、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸塩、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸塩、ジブチルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、コール酸ナトリウム、コール酸カリウム、デオキシコール酸ナトリウム、デオキシコール酸カリウム、グリココール酸ナトリウム、リトコール酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
【0033】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などが挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤がある。
【0034】
非イオン性界面活性剤しては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの糖エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエチルなどの脂肪酸エステル系界面活性剤、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリプロピレングリコールなどのエーテル系界面活性剤、ポリオキシアルキレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルジブチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルビスフェニルエーテル、ポリオキシアルキルクミルフェニルエーテル等の芳香族系非イオン性界面活性剤が挙げられる。
また、非イオン性界面活性剤としては、いわゆる水溶性ポリマーを使用することもでき、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アミロース、シクロアミロース、キトサン等の糖類ポリマーなども使用できる。
【0035】
このような界面活性剤の中でも、イオン性界面活性剤が好ましく、アニオン系界面活性剤がより好ましい。その中でも、コール酸塩およびデオキシコール酸塩は、より好適に利用される。
イオン性界面活性剤、特に、界面活性剤としてコール酸塩およびデオキシコール酸塩を用いることにより、分散組成物中でCNTを良好に分散することができる。その結果、長く、欠陥が少ないCNTを多く含有する熱電変換層を形成できるため、より熱電変換性能が良好な熱電変換素子を得ることができる。
また、CNTを高濃度で分散できるので、厚膜化することが容易である。その結果、高い熱電変換性能を得ることができる。
【0036】
分散剤の添加量としては、工程Cで得られる分散組成物に含まれるカーボンナノチューブの質量に対して、0.1〜100倍であることが好ましく、1〜10倍であることがより好ましく、1〜5倍であることが特に好ましい。分散剤の添加量が上記範囲内にあることで、上述した効果がより発揮される傾向にある。
【0037】
<溶媒A>
溶媒Aとしては、水、有機溶媒およびこれらの混合溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、上述した工程Aにおける有機溶媒が挙げられるのでその説明を省略する。
溶媒Aとしては、分散剤のCNT吸着基のCNTに対する吸着性が向上し、分散性がより向上するという観点から、ClogP値が−0.5以下であるものを用いることが好ましく、ClogP値が−2〜−0.5であることがより好ましい。
ClogP値が−0.5以下である溶媒としては、例えば、水(−1.38)、メタノール(−0.764)、メトキシエタノール(−0.606)、メトキシエトキシエタノール(−0.742)、ジメチルスルホキシド(−1.38)、グリセロール(−1.54)等が挙げられ、水が好ましい。これらは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
ここで、ClogP値については以下のとおりである。
まず、logP値とは、分配係数P(Partition Coefficient)の常用対数を意味し、ある化合物が油(ここではn−オクタノール)と水の2相系の平衡でどのように分配されるかを定量的な数値として表す物性値であり、数字が大きいほど疎水性の化合物であることを示し、数字が小さいほど親水性の化合物であることを示すため、化合物の親疎水性を表す指標として用いることができる。
【0039】
logP=log(Coil/Cwater)
Coil=油相中のモル濃度
Cwater=水相中のモル濃度
【0040】
一般に、logP値は、n−オクタノールと水を用いて実測により求めることもできるが、本発明においては、logP値推算プログラムを使用して求められる分配係数(ClogP値)(計算値)を使用する。具体的には、本明細書においては、“ChemBioDraw ultra ver.12”から求められるClogP値を使用する。
【0041】
<カーボンナノチューブ膜状物>
カーボンナノチューブ膜状物(CNT膜状物)は、上述した工程Bにより得られる。CNT膜状物は、CNTの分散性の観点から所望のサイズに切断して用いてもよい。
CNT膜状物の添加量は、溶媒Aの添加量に対して、1w/v%以上であり、1〜20w/v%であることが好ましく、2〜20w/v%であることがより好ましい。CNT膜状物の添加量が上記範囲内にあることで、工程CにおいてCNTの分散性の高い分散組成物が得られ、また、得られる熱電変換層の熱電変換性能がより向上する。特に、本発明においては、CNT膜状物の添加量が溶媒Aの添加量に対して1w/t%以上という高濃度であるが、上述した工程Aおよび工程Bを実施することにより、CNTの高濃度化と、CNTの分散性の向上という、相反する性能を満たすことができる。
なお、本発明において「w/v%」とは、質量(g)/容積(ml)を表す。
【0042】
<ドーパント>
工程Aおよび工程Cの少なくとも一方の工程において、ドーパントを添加することが好ましく、工程Cにおいてドーパントを添加することがより好ましい。これにより、得られる熱電変換層の導電率や性能指数Zをより向上することができる。
ドーパントは、上述した成分を添加するのと同じタイミングで添加してもよいし、上述した成分の混合が終わった後に添加してもよい。
ドーパントを添加する場合の添加量としては、工程Cで得られた分散組成物に含まれるカーボンナノチューブの質量に対して、0.01〜3倍であることが好ましく、0.05〜1倍であることがより好ましい。ドーパントの含有量が上記範囲内にあることで、上述した効果がより発揮される。
ドーパントは、その極性によってn型化ドーパントとp型化ドーパントとに大別することができる。以下、n型化ドーパントおよびp型化ドーパントとして使用される化合物について説明する。
【0043】
(n型化ドーパント)
n型化ドーパントは、CNTを還元や、電子供与してn型化できるものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。
n型化ドーパントとしては、例えば、アンモニア、テトラメチルフェニレンジアミン、ステアリルアミン、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、カリウム等のアルカリ金属、トリフェニルホスフィン、トリオクチルホスフィン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィン)プロパン等のホスフィン系化合物、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等の金属水素化物、ヒドラジン、コバルトセン等の還元性物質や電子供与体化合物等を用いることができる。具体的には、Scientific Reports 3,3344に記載されるような公知の化合物を用いることができる。
また、上述した化合物以外に、ポリオキシアルキレン系化合物やアミン化合物も用いることができる。
n型化ドーパントとしては、ポリオキシアルキレン系化合物が好ましい。
これらのn型化ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0044】
ポリオキシアルキレン系化合物としては、ポリアルキレンオキシド構造を有している化合物であれば、その構造は特に限定されない。アルキレンオキシドの好ましい例としては、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド、またはこれらの混合物等を挙げることができる。
【0045】
本発明で用いることができるポリオキシアルキレン系化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、フェノールやナフトール等のエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等が挙げられる。なかでも、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物を好ましく用いることができ、高級アルコールエチレンオキサイド付加物が特に好ましい。市販品としては、例えば、エマルゲン、レオドール、エマゾール、エマノーン、アミート(花王社製)、パイオニンD、パイオニンP、ニューカルゲンD、タケサーフD(竹本油脂社製)、Triton X(ダウケミカル社製)、Brij(ICI Americas社製)、Tween(Atlas Powder社製)、Nonident P−40(Shell Chemicals社製)、エマレックスCS(日本エマルジョン社製)、ニューコール(日本乳化剤社製)、レオックス、レオコール、ライオノール(ライオン スペシャリティ ケミカル社製)等を使用することができる。
【0046】
(p型化ドーパント)
p型化ドーパントは、CNTの酸化などをしてp型化できるものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。
例えば、ハロゲン(ヨウ素、臭素等)、ルイス酸(PF
5、AsF
5等)、プロトン酸(塩酸、硫酸、硝酸等)、遷移金属ハロゲン化物(FeCl
3、SnCl
4等)、有機の電子受容性物質(テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、2,5−ジフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンなどのテトラシアノキノジメタン誘導体、テトラフルオロ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン、クロラニル、2,6−ジアルキル−1,4−ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体など)が挙げられる。
p型化ドーパントとしては、有機酸も用いることができる。有機酸とは、酸性を示す有機化合物類の総称であり、具体的には、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸、フェノール、エノール、チオール、ホスホン酸、リン酸、ボロン酸、イミド酸、ヒドラゾン酸、ヒドロキシム酸、ヒドロキシサム酸等の、酸性を示す官能基(以下、これを酸性官能基とも言う)を有する低分子有機酸化合物や、酸性官能基と疎水基とをそれぞれ少なくとも1つ有する低分子有機酸化合物、あるいは、分子内に酸性官能基を少なくとも1つ有し、繰返し単位構造を有する有機酸ポリマーである。
酸性官能基は如何なる公知の構造を有していてもよく、例えば、カルボキシル基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、メルカプトカルボニル基、ヒドロペルオキシ基、スルホ基、スルフィノ基、スルフェノ基、フェノール性水酸基、チオール基、リン酸基、ホスフィニコ基、ホスホノ基、セレノノ基、セレニノ基、セレネノ基、アルシニコ基、アルソノ基、ボロン酸基、ボラン酸基等が挙げられる。これら酸性官能基の中でも、本発明の効果(熱電変換性能および/または電気的安定性)がより優れる点で、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基、ボロン酸基がより好ましく、カルボキシル基がさらに好ましい。
【0047】
有機酸に含まれる酸性官能基の数は特に制限されず、有機酸一分子当たり少なくとも1個含まれていればよいが、複数含まれていても構わない。低分子の有機酸の場合、有機酸中の酸性官能基の数の好適範囲としては、1〜10個が好ましく、1〜6個がより好ましい。
有機酸一分子に複数の酸性官能基が含まれている場合には、これら複数の酸性官能基は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0048】
なお、本発明において、有機酸には、いわゆる無水物(有機酸無水物)も含まれる。有機酸無水物とは、二つのアシル基が酸素原子を共有する形の結合を有する化合物である。
【0049】
また、前述のように、有機酸は、分子内に酸性官能基を少なくとも1つ有し、繰返し単位構造を有する有機酸ポリマーであってもよい。有機酸ポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スチレン/スチレンホスホン酸共重合体、ポリ乳酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、ポリガラクツロン酸、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、カラギーナン、カルボキシメチルキチン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、アクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体などが挙げられる。また、多糖、タンパク質、合成ポリマーなどがカルボキシ基、カルボキシアルキル基、スルホ基、リン酸基などの酸性基で修飾されたものも含まれる。ポリマーの酸性基は、一部もしくはすべてがナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩になっていてもよい。
本発明に用いる有機酸ポリマーの重量平均分子量には、特に制限は無いが、5000〜10,000,000が好ましく、さらに10,000〜5,000,000が好ましい。本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定すればよい。
【0050】
有機酸の沸点は特に制限されないが、取り扱い性や、熱電変換素子としての用途を考慮すると、200℃以上が好ましく、220℃以上がより好ましい。
この沸点は、1気圧下での沸点を意図し、JIS 2254に準じて、例えば常圧法蒸留試験法によって測定を行ない、その初留点を沸点として用いる。
有機酸の融点は特に制限されないが、熱電変換素子としての用途を考慮すると固体酸であるのが好ましく、また、取り扱い性の点から、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが、取り扱い性の点から、300℃以下が好ましい。
融点の測定は、JIS−0064に準じて、例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計,製品名:DSC7を用い、10mgのサンプルを流量50mL/分の窒素気流下で加熱溶融させた後、10℃/分の速度で冷却して固化させた後、引き続き10℃/分の速度で昇温する際の融解ピーク温度を使用する。
【0051】
p型化ドーパントとしては、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、有機酸が好ましい。
これらのp型化ドーパントは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
<高分子化合物>
工程Aおよび工程Cの少なくとも一方の工程において、高分子化合物を添加することが好ましく、工程Cにおいて高分子化合物を添加することがより好ましい。高分子化合物はバインダーとしての機能を有するので、CNT同士の距離を広げることができる。これにより、熱伝導性を下げることができるため、性能指数Zをより向上できる。
高分子化合物は、上述した成分を添加するのと同じタイミングで添加してもよいし、上述した成分の混合が終わった後に添加してもよい。
【0053】
高分子化合物としては、具体的には、ビニル化合物、(メタ)アクリレート化合物、カーボネート化合物、エステル化合物、エポキシ化合物、シロキサン化合物、ゼラチン等の公知の各種の高分子化合物が利用可能である。高分子化合物は、バインダーとしてCNT同士の距離を広げる機能も有する。このため、得られる熱電変換層は熱伝導率が低く、性能指数Zが向上する。高分子化合物としては、水素結合性樹脂を用いることが好ましい。
水素結合性官能基としては、水素結合性を有する官能基であればよく、例えば、OH基、NH
2基、NHR基(Rは、芳香族または脂肪族炭化水素を表す)、COOH基、CONH
2基、NHOH基、SO
3H基(スルホン酸基)、−OP(=O)OH
2基(リン酸基)等や、−NHCO−基、−NH−基、−CONHCO−結合、−NH−NH−結合、−C(=O)−基(カルボニル基)、−ROR−基(エーテル基:Rは、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素または2価の脂肪族炭化水素を表す。ただし、2つのRは同一であっても異なっていてもよい。)等を有する基が挙げられる。
水素結合性樹脂の例としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、キサンタンガム、グァーガム、ヒドロキシエチルグァーガム、カルボキシメチルグァーガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、プルラン、マンナン、グルコマンナン、デンプン、カードラン、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、デキストラン、ケラト硫酸、サクシノグルカン、カロニン酸、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、マクロゴール、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、ゼラチン、寒天、カードラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、アクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体、ポリエチレングリコール、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、澱粉、化工澱粉、ベントナイト等が挙げられる。なお、カルボキシル基などの酸性基を有するものは、一部もしくはすべてがナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩になっていてもよい。
【0054】
高分子化合物を添加する場合の添加量は、工程Cで得られる分散組成物中のカーボンナノチューブの質量に対して、0.01〜5倍であることが好ましく、0.1〜3倍であることがより好ましく、0.1〜1倍であることがさらに好ましい。
【0055】
高分子化合物の重量平均分子量は5,000〜10,000,000であることが好ましく、10,000〜5,000,000であることがより好ましく、50,000〜5,000,000であることが特に好ましい。重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)により測定される。
GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel G5000PW
XL、TSKgel G4000PW
XL、TSKgel G2500PW
XL(東ソー製、7.8mmID×30cm)を用い、溶離液として10mM NaNO
3水溶液を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.1質量%、流速を1.0ml/min(リファレンスは0.5ml/min)、サンプル注入量を100μl、測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行う。
また、検量線は、TSKstandard POLY(ETHILENE OXIDE):「SE−150」、「SE−30」、「SE−8」、「SE−5」、「SE−2」(東ソー製)、分子量3000のポリエチレングリコールおよび分子量282のヘキサエチレングリコールから作製する。
【0056】
<消泡剤>
工程Cにおいては、消泡剤を添加することが好ましい。
本発明のように、高濃度のカーボンナノチューブを含む分散組成物は、粘度が高く、脱泡が困難である。分散組成物中の脱泡が不十分であると、成膜、乾燥後の膜中にボイドが形成され、導電性低下の原因となる。そのため、分散組成物の脱泡をすることが好ましく、消泡剤の添加が有用である。
消泡剤は、上述した成分を添加するのと同じタイミングで添加してもよいし、上述した成分の混合が終わった後に添加してもよい。
消泡剤としては、分散組成物の表面張力を低下させ、溶媒Aに対する親和性を有するものであれば特に限定されない。例えば、高酸化油系、脂肪酸エステル系、フッ素系、シリコーン系化合物等が挙げられる。溶媒Aに対して、親和性の低いものは、エマルジョンとして使用することもできる。
消泡剤は、単独で用いても、2種以上を混合しても用いてもよい。
消泡剤の含有量は、分散組成物の全質量に対して、0.0001〜10質量%であることが好ましく、0.001〜5質量%であることがより好ましく、0.005〜1質量%であることがさらに好ましい。
【0057】
<その他の成分>
工程Cにおいては、上記以外の成分を添加してもよい。この場合において、上記以外の成分は、上述した成分を添加するのと同じタイミングで添加してもよいし、上述した成分の混合が終わった後に添加してもよい。
上記以外の成分としては、例えば、酸化防止剤、防黴剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、可塑剤などが挙げられる。
【0058】
[熱電変換層の製造方法]
本発明の熱電変換層の製造方法は、カーボンナノチューブと、有機溶媒と、を混合して、粗分散組成物を得る工程Aと、上記粗分散組成物を用いてカーボンナノチューブ膜状物を得る工程Bと、分散剤と、溶媒Aと、上記溶媒Aに対して1w/v%以上の上記カーボンナノチューブ膜状物と、を混合して、分散組成物を得る工程Cと、上記分散組成物を用いて熱電変換層を得る工程Dと、を有する。
上記工程A〜工程Cについては、上述した分散組成物の製造方法と同様であり、使用した成分も同様であるのでその説明を省略する。
以下、本発明の熱電変換層の製造方法について、工程Dおよび含まれ得る工程について詳細に説明する。
【0059】
〔工程D〕
工程Dは、上記分散組成物を用いて熱電変換層を得る工程である。
具体的には、工程Dとしては、基材上に上記分散組成物を塗布し、成膜する方法などが挙げられる。
成膜方法は、特に限定されず、例えば、スクリーン印刷、メタルマスク印刷、ステンシル印刷、ディスペンンサーを用いた印刷、ダイコート、ブレードコート、バーコート、グラビア印刷、ロールコート、カーテンコート、ディップコート、インクジェット印刷法、スプレーコート等、公知の塗布方法を用いることができる。これらの中でも、分散組成物は、高固形分濃度で高粘度であっても印刷性に優れる点で、メタルマスク印刷、スクリーン印刷、ステンシル印刷等の印刷法が好ましい。特に、メタルマスク印刷とスクリーン印刷法が1回の塗布で厚い塗布膜に分散物組成物を印刷できる点で特に好ましい。
なお、スクリーン印刷法は、通常のステンレス、ナイロン、ポリエステル製のメッシュ上に感光性樹脂をパターニング露光し、現像して版を作製して印刷する方法のほか、エッチングされたメタルマスクから版を作製し、印刷する方法などがある。
また、塗布後は、必要に応じて乾燥工程を行う。乾燥条件としては特に限定されず、公知の条件で行えばよい。例えば、乾燥工程では、オーブン、ポットプレート、熱風式乾燥機、遠赤外線乾燥機、などを用いることができる。
【0060】
〔工程E〕
工程Eは、熱電変換層を溶媒Bで洗浄する工程であり、工程Aおよび工程Cで添加する成分によって、次の3つの態様をとることができる。
第1態様は工程Aおよび工程Cの少なくとも一方の工程において上述したドーパントをさらに添加した態様であり、本態様において実施される工程Eを以下「工程E1」という。
第2態様は工程Aおよび工程Cの少なくとも一方の工程において上述した高分子化合物をさらに添加した態様であり、本態様において実施される工程Eを以下「工程E2」という。
第3態様は工程Aおよび工程Cの少なくとも一方の工程において上述したドーパントおよび高分子化合物をさらに添加した態様であり、本態様において実施される工程Eを以下「工程E3」という。
工程Eにおいては、工程E1、工程E2または工程E3が実施される。以下、工程E1、工程E2および工程E3のそれぞれについて説明する。
なお、本明細書において、工程E1で使用される後述する溶媒B1、工程E2で使用される後述する溶媒B2、および、工程E3で使用される後述する溶媒B3を総称して、「溶媒B」ということがある。
【0061】
<工程E1>
工程E1は、上記工程Aおよび上記工程Cの少なくとも一方の工程においてドーパントを添加した場合に実施され得る工程であり、上記工程Dの後において、上記熱電変換層からの上記分散剤の溶出度が上記ドーパントの溶出度よりも高い溶媒B1を用いて熱電変換層を洗浄する工程である。なお、上述したように、上記ドーパントは、工程Cにおいて添加されることが好ましい。
本工程により、ドーパントの溶出を抑制しつつ、熱電変換層に含まれていた分散剤を除去できるので、熱電変換層の性能指数Zをより向上できる。
各成分の熱電変換層からの溶出度は、後述する実施例欄に記載の方法により測定される。
【0062】
溶媒B1は、使用する分散剤、ドーパントに応じて、各成分が上述した溶出度の関係を満たすものを用いれば特に限定されず、例えば、上述した溶媒Aで挙げた水、有機溶媒、およびそれらの2種以上の混合溶媒を用いることができる。
例えば、分散剤が界面活性剤の場合、溶媒B1としては、上述した溶出度の関係を満たすという観点から、ClogPが−2〜1であることが好ましく、−2〜0.2であることがより好ましい。
溶媒B1としては、例えば、水(−1.38)、メタノール(−0.764)、アセトニトリル(−0.394)、1−メトキシ−2−プロパノール(−0.297)、エタノール(−0.235)、アセトン(−0.208)、エチレングリコールモノメチルエーテル(−0.606)、プロパノール(0.294)、イソプロパノール(0.074)、N−エチルピロリドン(0.132)、プロピオニトリル(0.135)、酢酸メチル(0.182)、2−ブタノン(0.321)、テトラヒドロフラン(0.526)、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート(0.599)、酢酸エチル(0.711)、シクロヘキサノン(0.865)、クロロホルム(0.936)などが挙げられる。なお、括弧内の数値は、ClogP値を表す。
溶媒B1は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0063】
工程E1で使用する溶媒B1の使用量は、特に限定されない。
工程E1における洗浄方法としては、特に限定されず、例えば、熱電変換層を溶媒B1に浸漬する方法や、熱電変換層を溶媒B1でリンスする方法や、溶媒B1を熱電変換層に噴霧する方法などにより行うことができる。
また、洗浄時の条件(溶媒B1の温度、洗浄時間など)は、特に限定されない。
【0064】
<工程E2>
工程E2は、上記工程Aおよび上記工程Cの少なくとも一方の工程において上記高分子化合物を添加した場合に実施され得る工程であり、上記工程Dの後において、上記熱電変換層からの上記分散剤の溶出度が上記高分子化合物の溶出度よりも高い溶媒B2を用いて上記熱電変換層を洗浄する工程である。なお、上述したように、上記高分子化合物は、工程Cにおいて添加されることが好ましい。
本工程により、高分子化合物の溶出を抑制しつつ、熱電変換層に含まれていた分散剤を除去できるので、熱電変換層の性能指数Zをより向上できる。
各成分の熱電変換層からの溶出度は、後述する実施例欄に記載の方法により測定される。
溶媒B2は、使用する分散剤、高分子化合物に応じて、各成分が上述した溶出度の関係を満たすものを用いれば特に限定されず、上述した工程E1における溶媒B1で挙げたものを用いることができ、好ましい態様も同様であるので、その説明を省略する。
工程E2で使用する溶媒B2の使用量は、特に限定されない。
工程E2における洗浄方法としては、特に限定されず、上述した工程E1で挙げた方法を用いることができる。
洗浄時の条件(溶媒B2の温度、洗浄時間など)は、特に限定されない。
【0065】
<工程E3>
工程E3は、上記工程Aおよび上記工程Cの少なくとも一方の工程において上記ドーパントおよび上記高分子化合物を添加する場合に実施され得る工程であり、上記工程Dの後において、上記熱電変換層からの上記分散剤の溶出度が上記ドーパントおよび上記高分子化合物のいずれの溶出度よりも高い溶媒B3を用いて上記熱電変換層を洗浄する工程である。なお、上述したように、上記ドーパントおよび上記高分子化合物は、工程Cにおいて添加されることが好ましい。
本工程により、ドーパントおよび高分子化合物の溶出を抑制しつつ、熱電変換層に含まれていた分散剤を除去できるので、熱電変換層の性能指数Zをより向上できる。
各成分の熱電変換層からの溶出度は、後述する実施例欄に記載の方法により測定される。
溶媒B3は、使用する分散剤、ドーパント、高分子化合物に応じて、各成分が上述した溶出度の関係を満たすものを用いれば特に限定されず、上述した工程E1における溶媒B1で挙げたものを用いることができ、好ましい態様も同様であるので、その説明を省略する。
工程E3で使用する溶媒B3の使用量は、特に限定されない。
工程E3における洗浄方法としては、特に限定されず、上述した工程E1で挙げた方法を用いることができる。
洗浄時の条件(溶媒B3の温度、洗浄時間など)は、特に限定されない。
【0066】
[熱電変換素子]
本発明の熱電変換素子は、上述した本発明の熱電変換層を備えていれば、その構成は特に制限されない。以下に、本発明の熱電変換素子について説明する。
【0067】
〔第1実施態様〕
図1に、本発明の熱電変換素子の第1実施態様の断面図を示す。
図1に示す熱電変換素子110は、第1の基材12上に、第1の電極13および第2の電極15を含む一対の電極と、第1の電極13および第2の電極15間に、熱電変換層14を備えている。
【0068】
〔第2実施態様〕
図2に、本発明の熱電変換素子の第2実施態様の断面図を示す。
図2に示す熱電変換素子120は、第1の基材22上に、第1の電極23および第2の電極25が配置され、その上に熱電変換層24が設けられている。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を用いて、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
<工程A>
単層CNT500mg(OCSiAl社製Tuball)とアセトン250mLとをメカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENiZER HF93)を用いて、18000rpmで5分間混合して、粗分散組成物を得た。
<工程B>
得られた粗分散組成物をブフナー漏斗と吸引瓶を用いて減圧濾過することにより、CNT膜状物である布状のCNT膜(バッキーペーパー)を得た。布状CNT膜は、3.5mm四方程度のサイズにカットして次工程の分散組成物1の調製に用いた。
<工程C>
デオキシコール酸ナトリウム1200mg(東京化成工業社製、分散剤)を水(溶媒A)16mLに溶解させ、前処理し、3.5mm四方程度のサイズにカットした布状CNT膜160mgを加えた。この組成物を、メカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENiZER HF93)を用いて、7分間混合して、予備混合物を得た。得られた予備混合物を薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス40−40型」(プライミクス社製)を用いて、10℃の恒温層中、周速10m/secで2分間、次いで周速40m/secで5分間、分散処理した。得られた組成物を自転・公転ミキサー(シンキー社製、あわとり練太郎)にて、2000rpmで30秒間混合、2200rpmで30秒間脱泡して、分散組成物1を調製した。
<工程D>
分散組成物1を用いて、メタルマスク印刷により印刷して、ポリイミド上に1cm四方サイズの印刷物を作製した。そして、得られた印刷物を50℃で30分、120℃で30分乾燥した。
<工程E>
乾燥後の印刷物をエタノール(溶媒B)に1時間浸漬して、印刷物中の分散剤を除去した。その後、50℃で30分、120℃で150分乾燥して熱電変換層1を得た。
【0071】
[実施例2]
工程Cにおいて、単層CNTを160mgから400mgにかえたこと以外は実施例1と同様にして分散組成物2および熱電変換層2を得た。
【0072】
[実施例3]
単層CNTをOCSiAl社製Tuballから名城ナノカーボン社製EC1.5に変えたこと以外は、実施例2と同様にして、分散組成物3および熱電変換層3を得た。
【0073】
[実施例4]
単層CNTをOCSiAl社製TuballからKHケミカル社製HPに変えたこと以外は、実施例2と同様にして、分散組成物4および熱電変換層4を得た。
【0074】
[実施例5]
実施例2における分散組成物2の調製において(工程C)、予備混合物にテトラシアノキノジメタン200mg(和光純薬社製、ドーパント。以下「TCNQ」ともいう。)を添加したこと以外は、実施例2と同様にして、分散組成物5および熱電変換層5を得た。
【0075】
[実施例6]
実施例2における分散組成物2の調製において(工程C)、デオキシコール酸ナトリウム1200mg(東京化成工業社製、分散剤)とカルボキシメチルセルロースナトリウム塩100mg(アルドリッチ社製、高粘度品、高分子化合物。以下「CMC−Na」ともいう。)を水16mLに溶解させたこと以外は、実施例2と同様にして、分散組成物6および熱電変換層6を得た。
【0076】
[実施例7]
実施例2における分散組成物2の調製において(工程C)、デオキシコール酸ナトリウム1200mg(東京化成工業社製、分散剤)とカルボキシメチルセルロースナトリウム塩100mg(アルドリッチ社製、高粘度品、高分子化合物)を水16mLに溶解させ、予備混合物にテトラシアノキノジメタン200mg(和光純薬社製、ドーパント)を添加したこと以外は、実施例2と同様にして、分散組成物7および熱電変換層7を得た。
【0077】
[実施例8]
実施例2における分散組成物2の調製において(工程C)、デオキシコール酸ナトリウムをコール酸ナトリウムに変え、実施例2における工程Eにおいて、エタノールをメタノールに変えたこと以外は、実施例2と同様にして、分散組成物8および熱電変換層8を得た。
【0078】
[実施例9]
実施例8における分散組成物8の調製において(工程C)、予備混合物に2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン 200mg(和光純薬社製、ドーパント。以下「DDQ」ともいう。)を添加したこと以外は、実施例8と同様にして、分散組成物9および熱電変換層9を得た。
【0079】
[実施例10]
実施例8における分散組成物8にアルギン酸100mg(和光純薬社製、高分子化合物)を加え、自転・公転ミキサー(シンキー社製、あわとり練太郎)にて、2000rpmで60秒間混合、2200rpmで60秒間脱泡して、分散組成物10を調製した。
そして、分散組成物8の代わりに分散組成物10を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、熱電変換層10を得た。
【0080】
[実施例11]
実施例9における分散組成物9にアルギン酸100mg(和光純薬社製、高分子化合物)を加え、自転・公転ミキサー(シンキー社製、あわとり練太郎)にて、2000rpmで60秒間混合、2200rpmで60秒間脱泡して、分散組成物11を調製した。
そして、分散組成物9の代わりに分散組成物11を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、熱電変換層11を得た。
【0081】
[実施例12]
実施例2における分散組成物2の調製において(工程C)、デオキシコール酸ナトリウムを2400mg(東京化成工業社製)、3.5mm四方程度のサイズにカットした布状CNT膜を800mgに変えたこと以外は、実施例2と同様にして分散液を調製した。これに、キサンタンガム50mg(和光純薬社製、高分子化合物)を加え、自転・公転ミキサー(シンキー社製、あわとり練太郎)にて、2000rpmで60秒間混合、2200rpmで60秒間脱泡して、分散組成物12を調製した。
そして、分散組成物2の代わりに分散組成物12を用い、実施例2における工程Eにおいて、エタノールをイソプロパノールに変えたこと以外は、実施例2と同様にして、熱電変換層12を得た。
【0082】
[実施例13]
実施例12における分散組成物12の調製において(工程C)、予備混合物にテトラシアノキノジメタン200mg(和光純薬社製、ドーパント)を添加したこと以外は、実施例12と同様にして、分散組成物13を得た。
そして、分散液12の変わりに分散組成物13を用い、実施例12における工程Eにおいて、イソプロパノールを水に変えたこと以外は、実施例12と同様にして、熱電変換層13を得た。
【0083】
[実施例14]
<工程A>
単層CNT500mg(OCSiAl社製Tuball)と2−ブタノン250mLをメカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENiZER HF93)を用いて、18000rpmで5分間混合して、粗分散組成物を得た。
<工程B>
得られた粗分散組成物をブフナーろ漏斗と吸引瓶を用いて減圧濾過することにより、CNT膜状物である布状のCNT膜(バッキーペーパー)を得た。布状CNT膜は3.5mm四方程度のサイズにカットして次工程の分散組成物14の調製に用いた。
<工程C>
デオキシコール酸ナトリウム1200mg(東京化成工業社製、分散剤)、エマルゲン350(花王社製、分散剤)400mgを水16mLに溶解させ、前処理し、3.5mm四方程度のサイズにカットした布状CNT膜400mgを加えた。この組成物を、メカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENiZER HF93)を用いて、7分間混合して、予備混合物を得た。得られた予備混合物を薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス40−40型」(プライミクス社製)を用いて、10℃の恒温層中、周速10m/secで2分間、次いで周速40m/secで5分間、分散処理した。得られた組成物を自転・公転ミキサー(シンキー社製、あわとり練太郎)にて、2000rpmで30秒間混合、2200rpmで30秒間脱泡して、分散組成物14を調製した。
<工程D〜工程E)
分散組成物2の代わりに分散組成物14を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、熱電変換層14を得た。
【0084】
[実施例15]
<工程A>
単層CNT500mg(OCSiAl社製Tuball)とイソプロパノール250mLをメカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENiZER HF93)を用いて、18000rpmで5分間混合して、粗分散組成物を得た。
<工程B>
得られた粗分散組成物をブフナー漏斗と吸引瓶を用いて減圧濾過することにより、CNT膜状物である布状のCNT膜(バッキーペーパー)を得た。布状CNT膜は3.5mm四方程度のサイズにカットして次工程の分散組成物15の調製に用いた。
<工程C>
デオキシコール酸ナトリウム1200mg(東京化成工業社製、分散剤)、カルボキシメチルセルロースナトリウム200mg(低粘度品、アルドリッチ社製、高分子化合物)、エマルゲン350(花王社製、ドーパント)400mgを水16mLに溶解させ、前処理し、3.5mm四方程度のサイズにカットした布状CNT膜400mgを加えた。この組成物を、メカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENiZER HF93)を用いて、7分間混合して、予備混合物を得た。得られた予備混合物を薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス40−40型」(プライミクス社製)を用いて、10℃の恒温層中、周速10m/secで2分間、次いで周速40m/secで5分間、分散処理した。得られた組成物を自転・公転ミキサー(シンキー社製、あわとり練太郎)にて、2000rpmで30秒間混合、2200rpmで30秒間脱泡して、分散組成物15を調製した。
<工程D〜工程E)
分散組成物2の代わりに分散組成物15を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、熱電変換層15を得た。
【0085】
[実施例16]
デオキシコール酸ナトリウムをドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに代えたこと以外は、実施例5と同様にして、分散組成物16および熱電変換層16を得た。
【0086】
[実施例17]
デオキシコール酸ナトリウムをドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに、テトラシアノキノジメタンを2,5−ビス(ヒドロキシエトキシ)テトラシアノキノジメタン(和光純薬社製、ドーパント。以下「2,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)TCNQ」ともいう。)に代えたこと以外は実施例5と同様にして、分散組成物17および熱電変換層17を得た。
【0087】
[実施例18]
実施例2における分散組成物2に消泡剤KM−85(信越シリコーン社製)を22mg加え、自転・公転ミキサー(シンキー社製、あわとり練太郎)にて、2000rpmで30秒間混合、2200rpmで30秒間脱泡して、分散組成物18を調製した。
そして、分散組成物2の代わりに分散組成物18を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、熱電変換層18を得た。
【0088】
[実施例19]
実施例7における分散組成物7に消泡剤KM−85(信越シリコーン社製)を22mg加え、自転・公転ミキサー(シンキー社製、あわとり練太郎)にて、2000rpmで30秒間混合、2200rpmで30秒間脱泡して、分散組成物19を調製した。
そして、分散組成物7のかわりに分散組成物19を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、熱電変換層19を得た。
【0089】
[実施例20]
実施例15における分散組成物15に消泡剤KM−85(信越シリコーン社製)を22mg加え、自転・公転ミキサー(シンキー社製、あわとり練太郎)にて、2000rpmで30秒間混合、2200rpmで30秒間脱泡して、分散組成物20を調製した。
そして、分散組成物15の代わりに分散液組成物20を用いたこと以外は、実施例15と同様にして、熱電変換層20を得た。
【0090】
[実施例21]
エタノールによる洗浄をしなかったこと以外は、実施例2と同様にして、分散組成物21および熱電変換層21を得た。
【0091】
[比較例1]
工程Aおよび工程Bを実施せず、工程Cにおいて布状CNT膜の代わりに単層CNT(OCSiAl社製Tuball)を用いた以外は、実施例1と同様にして、分散組成物c1および熱電変換層c1を得た。
【0092】
[比較例2]
工程Aおよび工程Bを実施せず、工程Cにおいて布状CNT膜の代わりに単層CNT(OCSiAl社製Tuball)を用いた以外は、実施例2と同様にして、分散組成物c2および熱電変換層c2を得た。
【0093】
[比較例3]
工程Aおよび工程Bを実施せず、工程Cにおいて布状CNT膜の代わりに単層CNT(名城ナノカーボン社製EC1.5)を用いた以外は、実施例3と同様にして、分散組成物c3および熱電変換層c3を得た。
【0094】
[比較例4]
工程Aおよび工程Bを実施せず、工程Cにおいて布状CNT膜の代わりに単層CNT(KHケミカル社製HP)を用いた以外は、実施例4と同様にして、分散組成物c4および熱電変換層c4を得た。
【0095】
[比較例5]
工程Aおよび工程Bを実施せず、工程Cにおいて布状CNT膜の代わりに単層CNT(OCSiAl社製Tuball)を用いた以外は、実施例16と同様にして、分散組成物c5および熱電変換層c5を得た。
【0096】
[比較例6]
工程Aおよび工程Bを実施せず、工程Cにおいて布状CNT膜の代わりに単層CNT(OCSiAl社製Tuball)を用いた以外は、実施例17と同様にして、分散組成物c6および熱電変換層c6を得た。
【0097】
[評価試験]
上述した各実施例および比較例の分散組成物を用いて、以下の各評価試験を実施した。
【0098】
<膜からの溶出度の評価>
ポリイミド上に形成する印刷物のサイズを3×4cm四方サイズに変更した以外は、上述の各実施例および比較例における熱電変換層の製造方法と同様にして、各実施例および比較例に対応する印刷物を得た。印刷前後での重さを測定し、差分から印刷された分散組成物の質量を算出した。分散組成物中の分散剤、ドーパント、高分子化合物の濃度より、印刷物中の分散剤、ドーパント、高分子化合物の質量を算出した。
上記印刷物を50℃で30分、120℃で30分乾燥後、各実施例および比較例における工程Eで使用した溶媒50mLに浸漬させた。1時間後、膜を取り出した。
次に、上記浸漬処理に使用した溶媒中に、印刷物より溶出した各成分(分散剤、ドーパント、高分子化合物)の質量を以下の方法により求めた。高分子化合物については、浸漬液をGPCにより分析し、別途作成した検量線より定量した。ドーパントおよび分散剤については、浸漬液を逆相の高速液体クロマトグラフィー(コロナ荷電化粒子検出器)にて分析し、別途作成した検量線より定量した。
下記式より、分散剤、ドーパント、高分子化合物について、膜からの溶出度を算出した。
分散剤の溶出度=(浸漬液中の分散剤の質量)/(印刷物中の分散剤の質量)
ドーパントの溶出度=(浸漬液中のドーパントの質量)/(印刷物中のドーパントの質量)
高分子化合物の溶出度=(浸漬液中の高分子化合物の質量)/(印刷物中の高分子化合物の質量)
下記式より、膜からの溶出度を算出し、下記基準で評価した。
膜からの溶出度=(分散剤の溶出度)/(ドーパントまたは高分子の溶出度)
A: 膜からの溶出度が10以上
B: 膜からの溶出度が1超、10未満
C: 膜からの溶出度が1以下
【0099】
<分散性の評価>
各実施例および比較例の分散組成物を、メッシュ(400メッシュ、ニラコ社製)にのせ、ウレタン製のスキージで3回掃引後のメッシュ上の残存物を観察し、下記基準で評価した。
A: メッシュ上に未分散物が観測されなかった
B: メッシュ上に未分散物がわずかに観測された
C: メッシュ上に未分散物が観測された
【0100】
<導電率・ゼーベック係数の評価>
上述の各実施例および比較例における熱電変換層の製造方法と同様にして、各実施例および比較例に対応する10個の熱電変換層をポリイミド上に作成した。ポリイミド上に形成した1cm四方の熱電変換層に沿って、ポリイミドを1cm四方にカットし、熱電特性測定装置MODEL RZ2001i(オザワ科学株式会社製)を用いて、80℃と105℃における導電率およびゼーベック係数を測定し、内挿により、100℃における導電率およびゼーベック係数を算出した。
10個の熱電変換層について、上記測定を行い、導電率およびゼーベック係数の平均値を算出した。平均値を用い、下記式より、規格化導電率および規格化ゼーベック係数を算出し、下記基準により評価した。
規格化導電率=(各実施例・比較例の導電率の平均値)/(基準比較例の導電率の平均値)
AA: 規格化導電率が1.9以上
A: 規格化導電率が1.7以上、1.9未満
B: 規格化導電率が1.5以上、1.7未満
C: 規格化導電率が1.3以上、1.5未満
D: 規格化導電率が1.1以上、1.3未満
E: 規格化導電率が1.1未満
規格化ゼーベック係数=(各実施例・比較例のゼーベック係数の平均値)/(基準比較例のゼーベック係数の平均値)
A: 規格化ゼーベック係数が1.1以上
B: 規格化ゼーベック係数が0.9以上、1.1未満
C: 規格化ゼーベック係数が0.9未満
なお、実施例1、比較例1の基準比較例には比較例1を用いた。実施例2、5〜15、18〜20、比較例2の基準比較例には比較例2を用いた。実施例3、比較例3の基準比較例には比較例3を用いた。実施例4、比較例4の基準比較例には比較例4を用いた。実施例16、17、比較例6の基準比較例には比較例6を用いた。実施例21および比較例5の基準比較例には比較例5を用いた。
【0101】
<熱電変換性能指数Z(性能指数Z)の評価>
上記導電率・ゼーベック係数の評価と同様にして得られた各実施例および比較例の熱電変換層を10個作製し、下記方法により熱電変換性能指数Zを算出し、評価した。
(熱伝導率)
(比熱)×(密度)×(熱拡散率)により、熱伝導率を算出した。
比熱はDSC法により測定、密度は重量−寸法より測定した。熱拡散率は、熱拡散率測定装置ai−Phase Mobile 1u(アイフェイズ株式会社製)を用いて測定した。
(熱電変換性能指数Zの評価)
[(導電率)×(ゼーベック係数)
2]/熱伝導率より、10個の膜についてZを算出した。Zの平均値を用いて、下記式により規格化し、下記基準によって評価した。
規格化Z=(各実施例・比較例のZ平均値)/(基準比較例のZ平均値)
AA: 規格化Zが3.0以上
A: 規格化Zが2.5以上、3.0未満
B: 規格化Zが2.0以上、2.5未満
C: 規格化Zが1.5以上、2.0未満
D: 規格化Zが1.1以上、1.5未満
E: 規格化Zが1.1未満
実施例1、比較例1の基準比較例には比較例1を用いた。実施例2、5〜15、18〜20、比較例2の基準比較例には比較例2を用いた。実施例3、比較例3の基準比較例には比較例3を用いた。実施例4、比較例4の基準比較例には比較例4を用いた。実施例16、17、比較例6の基準比較例には比較例6を用いた。実施例21および比較例5の基準比較例には比較例5を用いた。
【0102】
<熱電変換性能のばらつきの評価>
上記熱電変換性能指数Zの評価において、熱電変換層10個の熱電変換性能指数Zについて最大値と最小値の差を算出し、下記式より規格化し、下記基準にて評価した。
規格化Zのばらつき=(各実施例・比較例のZの最大値と最小値の差)/(基準比較例のZの最大値と最小値の差)
A: 規格化Zのばらつきが0.5以下
B: 規格化Zのばらつきが0.5超、0.9未満
C: 規格化Zのばらつきが0.9以上
実施例1、比較例1の基準比較例には比較例1を用いた。実施例2、5〜15、18〜20、比較例2の基準比較例には比較例2を用いた。実施例3、比較例3の基準比較例には比較例3を用いた。実施例4、比較例4の基準比較例には比較例4を用いた。実施例16、17、比較例6の基準比較例には比較例6を用いた。実施例21および比較例5の基準比較例には比較例5を用いた。
【0103】
<評価結果>
以上の評価試験の結果を第1表に示す。なお、実施例および比較例の熱電変換層の極性も第1表に併せて示す。
【0104】
【表1】
【0105】
第1表の評価結果に示す通り、実施例の分散組成物はいずれも、カーボンナノチューブの分散性に優れていた。また、実施例の分散組成物を用いて得られた熱電変換層はいずれも、比較例の熱電変換層に比べて、導電率、性能指数Z優れており、熱電変換性能のばらつきも低減されていることがわかった。
実施例2と実施例5との対比により、ドーパントを含有する分散組成物を用いると(実施例5)、得られる熱電変換層の導電率および熱電変換性能指数Zがより優れたものになることが示された。同様の傾向になることが、実施例8と実施例9との対比からも示された。
実施例2と実施例6との対比により、高分子化合物を含有する分散組成物を用いると、得られる熱電変換層の導電率および熱電変換性能指数Zがより優れたものになることが示された。同様の傾向になることが、実施例8と実施例10との対比、実施例14と実施例15との対比からも示された。
実施例2と実施例18との対比により、消泡剤を含有する分散組成物を用いると(実施例18)、得られる熱電変換層の導電率および熱電変換性能指数Zがより優れたものになることが示された。同様の傾向になることが、実施例7と実施例19との対比、実施例15と実施例20との対比からも示された。
なお、表中には示さなかったが、実施例2と実施例21とを対比したところ、工程E(洗浄工程)を実施することにより(実施例2)、得られる熱電変換層のゼーベック係数、導電率、熱電変換性能指数Zの値がより優れることがわかった。
【0106】
これに対して、比較例1〜5の分散組成物はいずれも、カーボンナノチューブの分散性が不十分であることが示された。
また、比較例1〜6の分散組成物を用いて得られた熱電変換層は、熱電変換性能のばらつきが大きく、熱電変換性能指数Zおよび導電率も不十分であることが示された。