特許第6626865号(P6626865)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6626865ノイズ波形モデル生成装置およびその生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626865
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】ノイズ波形モデル生成装置およびその生成方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20191216BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20191216BHJP
   G01R 29/26 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   G06F17/50 666V
   H02M1/00 B
   G06F17/50 662G
   G01R29/26 D
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-150486(P2017-150486)
(22)【出願日】2017年8月3日
(65)【公開番号】特開2019-28907(P2019-28907A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2019年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】マハムド ファーハン
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健
(72)【発明者】
【氏名】奥川 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】秋山 佳春
【審査官】 堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/134264(WO,A1)
【文献】 特開2009−042905(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0048675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F17/50
G01R29/26
H02M1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置のスイッチング周波数、定格出力電圧、負荷依存電圧、基本波振幅、フィードバック周期、波形選択指数および振幅変調度をそれぞれ表す情報の入力を受け付ける情報入力手段と、
前記情報入力手段により受け付けた各情報に基づいて、解析的にノイズ波形モデルを生成するノイズ波形モデル生成手段と、
前記ノイズ波形モデル生成手段により生成されたノイズ波形モデルを出力するノイズ波形モデル出力手段と、
を備えたノイズ波形モデル生成装置。
【請求項2】
前記情報入力手段は、前記電源装置のスイッチング周波数、定格出力電圧、負荷依存電圧、基本波振幅、フィードバック周期、波形選択指数および振幅変調度の各数値データの入力を受け付け、
前記ノイズ波形モデル生成手段は、前記情報入力手段により受け付けた各数値データに基づいて、電圧変動係数、最大変動周波数、キャリア周波数周波数偏移、周波数変調指数、周波数変調電圧およびノイズ波形モデルの各数値データを計算する計算手段を有する、
請求項1に記載のノイズ波形モデル生成装置。
【請求項3】
電源装置のスイッチング周波数、定格出力電圧、基本波振幅、フィードバック周期および波形選択指数をそれぞれ表す情報の入力を受け付ける情報入力手段と、
前記電源装置の負荷依存電圧と振幅変調度について導き出す要素数を設定するためのクラス選択指数の入力を受け付けるクラス選択指数入力手段と、
前記クラス選択指数入力手段により受け付けたクラス選択指数に応じた第1要素数の負荷依存電圧を取得する負荷依存電圧取得手段と、
前記クラス選択指数入力手段により受け付けたクラス選択指数に応じた第2要素数の振幅変調度を取得する振幅変調度取得手段と、
前記情報入力手段により受け付けた各情報と、前記負荷依存電圧取得手段により取得された第1要素数の負荷依存電圧と、前記振幅変調度取得手段により取得された第2要素数の振幅変調度とに基づいて、解析的に前記第1要素数と第2要素数に応じた種類のノイズ波形モデルを生成するノイズ波形モデル生成手段と、
前記ノイズ波形モデル生成手段により生成された複数のノイズ波形モデルを出力するノイズ波形モデル出力手段と、
を備えたノイズ波形モデル生成装置。
【請求項4】
前記情報入力手段は、前記電源装置のスイッチング周波数、定格出力電圧、基本波振幅、フィードバック周期および波形選択指数の各数値データの入力を受け付け、
前記負荷依存電圧取得手段は、前記第1要素数の負荷依存電圧の各数値データを取得し、
前記振幅変調度取得手段は、前記第2要素数の振幅変調度の各数値データを取得し、
前記ノイズ波形モデル生成手段は、前記情報入力手段により受け付けた各数値データと、前記負荷依存電圧取得手段により取得された第1要素数の負荷依存電圧の各数値データと、前記振幅変調度取得手段により取得された第2要素数の振幅変調度の各数値データとに基づいて、電圧変動係数、最大変動周波数、キャリア周波数周波数偏移、周波数変調指数、周波数変調電圧およびノイズ波形モデルの各数値データを計算する計算手段を有する、
請求項3に記載のノイズ波形モデル生成装置。
【請求項5】
前記クラス選択指数入力手段により受け付けたクラス選択指数に応じた負荷依存電圧クラスと振幅変調度クラスとを設定するクラス設定手段を、さらに備え、
前記負荷依存電圧取得手段は、前記情報入力手段により受け付けた定格出力電圧と前記クラス設定手段により設定された負荷依存電圧クラスとに基づいて、負荷依存電圧の最大値を計算し、前記定格出力電圧から前記負荷依存電圧の最大値の範囲において整数となる負荷依存電圧を第1要素数の負荷依存電圧として取得し、
前記振幅変調度取得手段は、前記クラス設定手段により設定された振幅変調度クラスに基づいて、振幅変調度の最小値を計算し、当該振幅変調度の最小値から予め設定された振幅変調度の最大値の範囲において小数点第2位以下を切り捨てた小数となる振幅変調度を第2要素数の振幅変調度として取得する、
請求項4に記載のノイズ波形モデル生成装置。
【請求項6】
前記クラス設定手段は、前記クラス選択指数入力手段により受け付けたクラス選択指数に対して予め設定された負荷依存電圧クラスと振幅変調度クラスとを対応付けたクラス設定テーブルを記憶するテーブル記憶手段を有し、当該テーブル記憶手段により記憶されたクラス設定テーブルに基づいて、前記クラス選択指数入力手段により受け付けたクラス選択指数に対応した負荷依存電圧クラスと振幅変調度クラスとを設定する、
請求項5に記載のノイズ波形モデル生成装置。
【請求項7】
データ処理装置の処理部により、電源系のノイズ波形モデルを生成するためのノイズ波形モデル生成方法であって、
電源装置のスイッチング周波数、定格出力電圧、負荷依存電圧、基本波振幅、フィードバック周期、波形選択指数および、振幅変調度をそれぞれ表す情報の入力を受け付けること、
前記受け付けた各情報に基づいて解析的にノイズ波形モデルを生成すること、
前記生成されたノイズ波形モデルを出力すること、
を備えるノイズ波形モデル生成方法。
【請求項8】
データ処理装置の処理部により、電源系のノイズ波形モデルを生成するためのノイズ波形モデル生成方法であって、
電源装置のスイッチング周波数、定格出力電圧、基本波振幅、フィードバック周期および波形選択指数をそれぞれ表す情報の入力を受け付けること、
前記電源装置の負荷依存電圧と振幅変調度について導き出す要素数を設定するためのクラス選択指数の入力を受け付けること、
前記受け付けたクラス選択指数に応じた第1要素数の負荷依存電圧を取得すること、
前受け付けたクラス選択指数に応じた第2要素数の振幅変調度を取得すること、
前記受け付けた各情報と、前記取得された第1要素数の負荷依存電圧と、前記取得された第2要素数の振幅変調度とに基づいて、解析的に前記第1要素数と第2要素数に応じた種類のノイズ波形モデルを生成すること、
前記生成された複数のノイズ波形モデルを出力すること、
を備えるノイズ波形モデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気・電子装置に対するEMC(Electromagnetic Compatibility)数値シミュレーションを行うのに用いられ、電源系のノイズ源から発生するノイズ波形モデルの生成装置およびその生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二つ以上の電気・電子装置がケーブル等を介して接続される環境においては、特定の装置(ノイズ源)が発するノイズが、その他の装置(被害装置)へ影響を及ぼす。
【0003】
このことを想定し、ノイズの伝達経路や伝搬モード、ノイズ源から被害装置間の減衰量の解析、被害装置のノイズ故障リスクおよびリスク低減のためのノイズ対策フィルタの最適設計等を目的として、EMC数値シミュレーションが実施される(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
このノイズ源の一種に、電力(電圧・電流)の変換や昇降圧を目的として、装置内部に、インバータ、コンバータ等の電力変換回路を搭載した電力装置がある。
【0005】
電力装置は、回路内におけるパワー半導体のスイッチング動作時に、装置の出力ポートに、スイッチング周波数に起因する基本波とその高調波としてノイズ(電源系ノイズ)を発することが、広く知られている。
【0006】
電力装置をノイズ源として、前記EMC数値シミュレーションを実施する場合は、電力装置が発する電源系ノイズの波形を再現するための、電源系ノイズ波形モデルを生成する必要がある。
【0007】
一般的には、CISPR(国際無線障害特別委員会)等の国際規格に準拠したノイズ測定(例えば、非特許文献2、非特許文献3参照。)を実施し、一度測定した波形データ(数値ファイル)をシミュレーションソフト等に読み込ませることで、電源系ノイズ波形モデルを生成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】マハムド他, “商用電源系のインピーダンスを考慮した照明器具の過渡妨害波評価方法,” 信学技報EMCJ2014-114, 2014
【非特許文献2】CISPR 16-1-2 ed1.2 (2006), “Radio disturbance and immunity measuring apparatus - Ancillary equipment - Conducted disturbances”
【非特許文献3】CISPR 16-2-1 ed3.0 (2014), “Methods of measurement of disturbances and immunity - Conducted disturbance measurements”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電源系ノイズ波形モデルを生成するにあたり、前記背景技術の欄に記載したような、実際に測定した波形を用いる手法では、ノイズ測定試験の実施が必要であるため、非常に時間とコストがかかる。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みなされたもので、ノイズ源である電源装置に関して、ユーザ自らノイズ測定試験を実施することなく、電源装置のノイズの特徴を踏まえたノイズ波形モデルを生成することを可能にするノイズ波形モデル生成装置およびその生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るノイズ波形モデル生成装置は、電源装置のスイッチング周波数、定格出力電圧、負荷依存電圧、基本波振幅、フィードバック周期、波形選択指数および振幅変調度をそれぞれ表す情報の入力を受け付ける情報入力手段と、前記情報入力手段により受け付けた各情報に基づいて、解析的にノイズ波形モデルを生成するノイズ波形モデル生成手段と、前記ノイズ波形モデル生成手段により生成されたノイズ波形モデルを出力するノイズ波形モデル出力手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、EMC数値シミュレーションに必要なノイズ波形を与えるため、ノイズ源である電源装置に関して、ユーザ自らノイズ測定試験を実施することなく、電源装置のノイズの特徴を踏まえたノイズ波形モデルを生成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のノイズ波形モデル生成装置の第1実施形態に係る電源系ノイズ波形モデル出力装置10Aの構成を示すブロック図。
図2】前記電源系ノイズ波形モデル出力装置10Aのノイズ波形モデル生成処理(1)を示すフローチャート。
図3】前記ノイズ波形モデル生成処理(1)に従い入力したスイッチング周波数fSW=48kHzの時間波形を示す図。
図4】前記ノイズ波形モデル生成処理(1)のステップS7において計算した周波数変調電圧VFM(t)の時間波形を示す図。
図5】前記周波数変調電圧VFM(t)における瞬時周波数fFM(t)の時間波形を示す図。
図6】前記ノイズ波形モデル生成処理(1)のステップS8において計算した電源系ノイズ波形モデルV(t)の時間波形を示す図。
図7】前記電源系ノイズ波形モデルV(t)の周波数特性を示す図。
図8】本発明のノイズ波形モデル生成装置の第2実施形態に係る電源系ノイズ波形モデル出力装置10Bの構成を示すブロック図。
図9】前記電源系ノイズ波形モデル出力装置10Bのクラス設定部15により参照される記憶部12に記憶されたクラス設定テーブルを示す図。
図10】前記電源系ノイズ波形モデル出力装置10Bのノイズ波形モデル生成処理(2)を示すフローチャート。
図11】前記ノイズ波形モデル生成処理(2)のステップS24において得られた負荷依存電圧V(N)の確率密度関数fVR(x)を示す図。
図12】前記ノイズ波形モデル生成処理(2)のステップS27において計算されたノイズ波形モデルVP-MN(t)(N×M個)のイメージを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面により本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明のノイズ波形モデル生成装置の第1実施形態に係る電源系ノイズ波形モデル出力装置10Aの構成を示すブロック図である。
【0016】
この電源系ノイズ波形モデル出力装置10Aは、パーソナルコンピュータ等、ソフトウエア(プログラム)に従ってデータ処理を実行するデータ処理装置により実現し、CPUを主体とする処理部11を備える。
【0017】
前記処理部11は、記憶部12に記憶されたプログラム(ノイズ波形モデル生成処理プログラムを含む)に従い装置内各部の動作を制御するもので、前記処理部11には、前記記憶部12が接続される他に、入力部13、出力部14が接続される。
【0018】
前記入力部13は、ユーザ操作に応じた種々のデータの入力受付機能、外部の記録媒体から読み出した種々のデータの入力受付機能、外部との通信接続により得られた種々のデータの入力受付機能を有し、入力された種々のデータは前記処理部11に転送されて処理され、また、前記記憶部12に転送されて記憶される。
【0019】
前記出力部14は、前記処理部11による処理結果のデータ出力機能、前記記憶部12から読み出されたデータ出力機能を有し、表示装置によるデータの表示や印刷装置によるデータの印刷、外部の記録媒体に対するデータの記録、外部の電子機器と通信接続してデータの送信などを行なう。
【0020】
このように構成された電源系ノイズ波形モデル出力装置10Aは、前記処理部11であるCPUが前記ノイズ波形モデル生成処理のプログラムに記述された命令に従い装置内各部の動作を制御し、ソフトウエアとハードウエアとが協働して動作することにより、以下の動作説明で述べるような、電源系ノイズ波形モデルの生成機能を実現する。
【0021】
次に、前記構成の第1実施形態の電源系ノイズ波形モデル出力装置10Aの動作について説明する。
【0022】
図2は、前記電源系ノイズ波形モデル出力装置10Aのノイズ波形モデル生成処理(1)を示すフローチャートである。
【0023】
先ず、ノイズ波形モデルの生成対象とする電力装置のカタログに記載された仕様等の情報や、当該電力装置の製造業者に問い合わせるなどして得ることが可能な特定の情報(スイッチング周波数fSW、定格出力電圧V、負荷依存電圧V、基本波振幅V、フィードバック周期T、波形選択指数S、振幅変調度K)の各数値データを入力部13により入力して記憶部12に記憶させる(ステップS1)。
【0024】
処理部11は、前記記憶部12に記憶された定格出力電圧Vと負荷依存電圧Vとの各数値データに基づいて、以下の式(1)に従い、電圧変動係数KFAを計算する(ステップS2)。
【0025】
【数1】
【0026】
また処理部11は、前記記憶部12に記憶されたスイッチング周波数fSWと、前記ステップS2において計算された電圧変動係数KFAとの各数値データに基づいて、以下の式(2)に従い、最大変動周波数f´SWを計算する(ステップS3)。
【0027】
【数2】
【0028】
また処理部11は、前記記憶部12に記憶されたスイッチング周波数fSWと、前記ステップS3において計算された最大変動周波数f´SWとの各数値データに基づいて、以下の式(3)に従い、キャリア周波数fを計算する(ステップS4)。
【0029】
【数3】
【0030】
さらに処理部11は、前記記憶部12に記憶されたスイッチング周波数fSWと、前記ステップS4において計算されたキャリア周波数fとの各数値データに基づいて、以下の式(4)に従い、周波数偏移fFdを計算する(ステップS5)。
【0031】
【数4】
【0032】
また処理部11は、前記記憶部12に記憶されたフィードバック周期Tと、前記ステップS5において計算された周波数偏移fFdとの各数値データに基づいて、以下の式(5)に従い、周波数変調指数βを計算する(ステップS6)。
【0033】
【数5】
【0034】
すると処理部11は、前記記憶部12に記憶された基本波振幅V、フィードバック周期Tと、前記ステップS4において計算されたキャリア周波数fと、前記ステップS6において計算された周波数変調指数βとの各数値データに基づいて、以下の式(6)に従い、周波数変調電圧VFM(t)を計算する(ステップS7)。
ただしこのとき、tは0≦t≦10の範囲の変数とし、任意のm番目tとm+1番目tm+1との差分Δt=10−8とする。また、nは20以上の自然数とする。
【0035】
【数6】
【0036】
前記記憶部12に記憶された波形選択指数S=0の場合は、変調周波数波形が矩形波となり、スイッチング周波数fSW、最大変動周波数f´SWの二値を瞬時周波数とし、速度(フィードバック周期)Tで瞬時的に偏移する。
【0037】
また一方で、波形選択指数S≠0の場合は、変調周波数波形が正弦波となり、最大変動周波数f´SW〜スイッチング周波数fSWの範囲において、瞬時周波数が速度(フィードバック周期)Tで正弦的に偏移する。
【0038】
またこのとき、周波数変調の瞬時周波数fFM(t)は、以下の式(7)で表すことができる。
【0039】
【数7】
【0040】
すると処理部11は、前記記憶部12に記憶された振幅変調度Kと、前記ステップS7において計算された周波数変調電圧VFM(t)との各数値データに基づいて、以下の式(8)に従い、電源系ノイズ波形モデルV(t)の数値データを計算する(ステップS8)。
【0041】
【数8】
【0042】
なお、前記式(8)は、前記ステップS1において入力された情報を用いて、以下の式(9)のように表すことができる。このとき、電圧変動係数KFA<1、波形選択指数S=0とする。
【0043】
【数9】
【0044】
処理部11は、前記計算された電源系ノイズ波形モデルV(t)の数値データを、波形データとして出力可能な例えばCSV形式のデータファイルに変換し、出力部14により外部の記録媒体に記録して出力し、また、記憶部12に記憶させる(ステップS9)。
【0045】
これにより、ノイズ波形モデルの生成対象とする電力装置の特定の情報から、EMC数値シミュレーションに使用するノイズ波形モデルを生成することが可能となる。
【0046】
以下に、前記ステップS1において入力したスイッチング周波数fSW=48kHz、定格出力電圧V=48V、負荷依存電圧V=30V、基本波振幅V=2V、フィードバック周期T=1ms、波形選択指数S=0、振幅変調度K=0.5の場合において生成された電源系ノイズ波形モデルV(t)の実施例について説明する。
【0047】
図3は、前記ノイズ波形モデル生成処理(1)に従い入力したスイッチング周波数fSW=48kHzの時間波形を示す図であり、周期1/48000(s)の連続波である。
【0048】
図4は、前記ノイズ波形モデル生成処理(1)のステップS7において計算した周波数変調電圧VFM(t)の時間波形を示す図である。
【0049】
図5は、前記周波数変調電圧VFM(t)における瞬時周波数fFM(t)の時間波形を示す図である。
【0050】
ここでは、フィードバック周期T=1ms、波形選択指数S=0と設定しているため、1msの速度で、前記ステップS3において式(2)に従い計算した最大変動周波数f´SW=30kHzと前記スイッチング周波数fSW=48kHzとの二値を瞬時周波数として、周波数変調されていることがわかる。
【0051】
図6は、前記ノイズ波形モデル生成処理(1)のステップS8において計算した電源系ノイズ波形モデルV(t)の時間波形を示す図である。
【0052】
図7は、前記電源系ノイズ波形モデルV(t)の周波数特性を示す図である。
【0053】
この電源系ノイズ波形モデルV(t)によれば、30kHzと48kHzにおいてピークを示していることがわかる。なお、ここでの電源系ノイズ波形モデルV(t)は、電力装置の内部の制御回路において用いられるパルス周波数変調(Pulse Frequency Modulation: PFM)や、パルス幅変調(Pulse Width Modulation: PWM)の制御方式を模擬したものである。
【0054】
したがって、前記構成の電源系ノイズ波形モデル出力装置10Aによれば、ノイズ波形モデルの生成対象とする電力装置の取得可能な特定の情報(スイッチング周波数fSW、定格出力電圧V、負荷依存電圧V、基本波振幅V、フィードバック周期T、波形選択指数S、振幅変調度K)を入力すると、当該入力された特定の情報に基づいて、電圧変動係数KFA、最大変動周波数f´SW、キャリア周波数f、周波数偏移fFd、周波数変調指数β、周波数変調電圧VFM(t)、電源系ノイズ波形モデルV(t)の数値データを順次解析的に計算し、計算された電源系ノイズ波形モデルV(t)の数値データを、波形データとして出力可能なデータファイルに変換して出力する。
【0055】
これにより、EMC数値シミュレーションに必要なノイズ波形を与えるため、ノイズ源である電源装置に関して、ユーザ自らノイズ測定試験を実施することなく、電源装置のノイズの特徴を踏まえたノイズ波形モデルを生成することが可能になる。
【0056】
具体的な効果について述べると、従来は、電源ノイズの測定とその信号処理に1〜2時間程度の作業時間を必要としたのに比較して、本実施形態のノイズ波形モデル出力装置10Aによれば、1〜2分程度の信号処理によりノイズ波形モデルの生成を実現できるので、その所要時間が少なくとも60分の1以下となる。また、ノイズ測定用の測定機類も必要としないため、少なくとも100万円以上のコスト削減が可能になる。
【0057】
(第2実施形態)
この第2実施形態では、ノイズ波形モデルの生成対象とする電力装置の特定の情報として、負荷依存電圧Vと振幅変調度Kが不明な場合でも、電源系ノイズ波形モデルを生成可能な電源系ノイズ波形モデル出力装置10Bについて説明する。
【0058】
図8は、本発明のノイズ波形モデル生成装置の第2実施形態に係る電源系ノイズ波形モデル出力装置10Bの構成を示すブロック図である。
【0059】
この第2実施形態の電源系ノイズ波形モデル出力装置10Bは、前記第1実施形態の電源系ノイズ波形モデル出力装置10A(図1参照)に対し、前記不明な負荷依存電圧Vと振幅変調度Kについて計算により導き出す要素数(NとM)を設定するためのクラス設定部15を追加して構成する。
【0060】
図9は、前記電源系ノイズ波形モデル出力装置10Bのクラス設定部15により参照される記憶部12に記憶されたクラス設定テーブルを示す図である。
【0061】
図10は、前記電源系ノイズ波形モデル出力装置10Bのノイズ波形モデル生成処理(2)を示すフローチャートである。
【0062】
先ず、ノイズ波形モデルの生成対象とする電力装置のカタログに記載された仕様等の情報や、当該電力装置の製造業者に問い合わせるなどして得ることが可能な特定の情報(スイッチング周波数fSW、定格出力電圧V、基本波振幅V、フィードバック周期T、波形選択指数S)と、前記不明な負荷依存電圧Vと振幅変調度Kについて計算により導き出す要素数(NとM)を設定するためのクラス選択指数Cとの各数値データを入力部13により入力して記憶部12に記憶させる(ステップS21)。
【0063】
処理部12は、前記クラス設定部15により、前記記憶部12に記憶されたクラス設定テーブル(図9参照)に基づいて、前記入力されたクラス選択指数Cに対応した負荷依存電圧クラスCVR(n)と振幅変調度クラスCKA(m)を決定する(ステップS22)。
【0064】
ここで、前記入力されたクラス選択指数Cが小さく、負荷依存電圧クラスCVR(n)と振幅変調度クラスCKA(m)が大きくなる場合は、決定されるクラスが高く、一方でクラス選択指数Cが大きく、負荷依存電圧クラスCVR(n)と振幅変調度クラスCKA(m)が小さくなる場合は、決定されるクラスが低いことを意味する。
【0065】
すると処理部11は、前記ステップS22において決定された負荷依存電圧クラスCVR(n)に基づいて、以下の式(10)に従い、負荷依存電圧の最大値VR-Mを計算する(ステップS23)。
【0066】
【数10】
【0067】
処理部11は、負荷依存電圧V(N)を、前記記憶部12に記憶された定格出力電圧V〜前記ステップS23において計算された負荷依存電圧の最大値VR-Mの範囲において、要素数N(整数)として抽出する(ステップS24)。
【0068】
このとき、負荷依存電圧V(N)の確率密度関数fVR(x)は、以下の式(11)を用いて表すことができ、
【0069】
【数11】
となる正規分布とする。
【0070】
【数12】
ただし、変数x=負荷依存電圧クラスCVR(n)、平均u=0、分散σ=1とする。
【0071】
図11は、前記ノイズ波形モデル生成処理(2)のステップS24において得られた負荷依存電圧V(N)の確率密度関数fVR(x)を示す図である。
【0072】
また処理部11は、前記ステップS22において決定された振幅変調度クラスCKA(m)に基づいて、以下の式(12)に従い、振幅変調度の最小値KA-Mを計算する(ステップS25)。
【0073】
【数13】
【0074】
処理部11は、振幅変調度K(M)を、前記ステップS25において計算された振幅変調度の最小値KA-M〜0.8の範囲において、要素数M(小数;小数点第2以下切り捨て)として抽出する(ステップS26)。
【0075】
すると処理部11は、前記ステップS24において抽出された負荷依存電圧V(N)と、前記ステップS26において抽出された振幅変調度K(M)と、前記記憶部12に記憶されたスイッチング周波数fSW、定格出力電圧V、基本波振幅V、フィードバック周期Tおよび波形選択指数Sとに基づいて、前記図2におけるステップS2〜S8と同様の処理に従い、電源系ノイズ波形モデルVP-MN(t)の数値データを前記要素数N×M個計算する(ステップS27)。
【0076】
すなわち、前記要素数N、Mは、それぞれ前記負荷依存電圧V(N)、振幅変調度K(M)に対応しており、電源系ノイズ波形モデルVP-12(t)は、負荷依存電圧V(1)、振幅変調度K(2)の数値データを用いて計算した波形モデルとなる。そして、前記ステップS22において決定された負荷依存電圧クラスCVR(n)と振幅変調度クラスCKA(m)のクラスが高い場合は、クラスが低い場合と比べて、計算される波形モデルの数(N×M)が多くなる。
【0077】
図12は、前記ノイズ波形モデル生成処理(2)のステップS27において計算されたノイズ波形モデルVP-MN(t)(N×M個)のイメージを示す図である。
【0078】
この後、処理部11は、前記第1実施形態と同様に、計算された電源系ノイズ波形モデルVP-MN(t)(N×M個)の数値データを、それぞれ波形データとして出力可能な例えばCSV形式のデータファイルに変換し、出力部14により外部の記録媒体に記録して出力し、また、記憶部12に記憶させる(ステップS28)。
【0079】
これにより、前記構成の第2実施形態の電源系ノイズ波形モデル出力装置10Bによれば、ノイズ波形モデルの生成対象とする電力装置の特定の情報として、負荷依存電圧Vと振幅変調度Kが不明な場合でも、当該不明な負荷依存電圧Vと振幅変調度Kについて計算により導き出す要素数(NとM)を任意のクラス選択指数Cに応じて設定し、当該クラス選択指数Cに応じた種類の電源系ノイズ波形モデルVP-MN(t)(N×M個)を生成することが可能となる。
【0080】
なお、前記各実施形態において記載した電源系ノイズ波形モデル出力装置10A,10Bによる各処理の手法、すなわち、図2のフローチャートに示す第1実施形態の電源系ノイズ波形モデル生成処理(1)、図10のフローチャートに示す第2実施形態の電源系ノイズ波形モデル生成処理(2)等の各手法は、何れもコンピュータに実行させることができるプログラムとして、メモリカード(ROMカード、RAMカード等)、磁気ディスク(フロッピ(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の外部記録装置の媒体に格納して配布することができる。そして、データ処理装置(電源系ノイズ波形モデル出力装置10A,10B)のコンピュータ(処理部11(CPU))は、この外部記録装置の媒体に記録されたプログラムを記憶装置(記憶部12)に読み込み、この読み込んだプログラムによって動作が制御されることにより、前記各実施形態において説明した電源系ノイズ波形モデルの生成機能を実現し、前述した手法による同様の処理を実行することができる。
【0081】
また、前記各手法を実現するためのプログラムのデータは、プログラムコードの形態としてネットワーク上を伝送させることができ、このネットワークに接続されたコンピュータ装置から前記プログラムのデータをデータ処理装置に取り込んで記憶装置に記憶させ、前述した電源系ノイズ波形モデルの生成機能を実現することもできる。
【0082】
本願発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、前記各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、各実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されたり、幾つかの構成要件が異なる形態にして組み合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0083】
10A…電源系ノイズ波形モデル出力装置(第1実施形態)、
10B…電源系ノイズ波形モデル出力装置(第2実施形態)、
11…処理部、12…記憶部、13…入力部、14…出力部、15…クラス設定部、
(t)…電源系ノイズ波形モデル(第1実施形態)、
P-MN(t)…電源系ノイズ波形モデル(第2実施形態)。
図1
図2
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図4
図5
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図9
図10
図11
図12