特許第6628089号(P6628089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6628089
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月8日
(54)【発明の名称】硬化性組成物及び接着剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/22 20060101AFI20191223BHJP
   C08G 59/14 20060101ALI20191223BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20191223BHJP
【FI】
   C08G59/22
   C08G59/14
   C09J163/00
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-243248(P2015-243248)
(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公開番号】特開2017-110044(P2017-110044A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 肇
(72)【発明者】
【氏名】河原 英昭
【審査官】 山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−107659(JP,A)
【文献】 特開平04−018328(JP,A)
【文献】 特開平10−115920(JP,A)
【文献】 特開2002−146319(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104817989(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
C08K 3/00 − 13/08
C08G 59/00 − 59/72
63/00 − 64/42
C09J 1/00 − 5/10
9/00 − 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)と硬化剤又は硬化促進剤(B)とを含有し、前記エポキシ樹脂(A)が、下記一般式(1)
【化1】
[式中Rは水素原子又はポリエステル構造部位であり、Xはそれぞれ独立に下記一般式(2−1)〜(2−8)
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基の何れかであり、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基の何れかであり、nは1以上の整数である。)
の何れかで表される構造部位である。]
で表される樹脂構造を有し、樹脂中に存在する前記Rの少なくとも一つはポリエステル構造部位であり、樹脂中のポリエステル構造部位の含有量が25〜45質量%の範囲にあるものであるポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)と脂肪族炭化水素のポリグリシジルエーテル(A2)とを必須の成分とすることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)のエポキシ基当量が400〜1200g/当量の範囲である請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記脂肪族炭化水素のポリグリシジルエーテル(A2)が、下記一般式(4)
【化3】
(Yは炭素原子数4〜20の脂肪族炭化水素基である。)
で表される分子構造を有するものである請求項1又は2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂(A)が、前記ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)及び脂肪族炭化水素のポリグリシジルエーテル(A2)に加え、ウレタン変性エポキシ樹脂(A3)又はゴム変性エポキシ樹脂(A4)を含有する請求項1〜3の何れか1項記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一つに記載の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか一つに記載の硬化性組成物からなる接着剤。
【請求項7】
請求項6記載の接着剤を用いてなる構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物における靱性が高く、金属基材に対する接着性に優れる硬化性組成物とその硬化物、接着剤、及び構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの観点から自動車車体材料としてアルミニウムや、マグネシウム、プラスチック等の軽量材料の採用が進んでおり、また、組み立てにおいても溶接による接合に替えて接着剤の利用が増えてきている。自動車用接着剤の特徴は異素材間の接着に用いられる点、使用環境の温度変化が非常に激しい点にあり、現在は、耐熱性や機械特性に優れるエポキシ樹脂系接着剤が主に利用されている。しかしながら、従来のエポキシ樹脂系接着剤は硬化物における柔軟性や靱性が十分ではなく、部材の熱変形に追従できないため、高温・低温環境下での歪みや剥がれが生じ易いという問題がある。特に、金属材料−非金属材料など異素材を接着する場合には両者の熱膨張係数の差が大きく、歪みや剥がれの問題が顕著であった。
【0003】
従来から知られているエポキシ樹脂系接着剤として、例えば、エポキシ樹脂成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、及び単官能性脂肪族エポキシ樹脂を配合した接着剤(特許文献1参照)や、エポキシ樹脂成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂を用い、更に各種のゴム粒子を添加した接着剤(特許文献2参照)が知られている。これらの接着剤はいずれもエポキシ樹脂成分として前記ウレタン変性エポキシ樹脂やゴム変性エポキシ樹脂を用いることにより硬化物に靱性を付与したものであるが、昨今の市場要求レベルを満たすものではなく、より高い靱性と接着性とを兼備するエポキシ樹脂系接着剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−108278号公報
【特許文献2】特開2010−185034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、硬化物における靱性が高く、金属基材に対する接着性に優れる硬化性組成物とその硬化物、及び接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、エポキシ樹脂と硬化剤とを含有する硬化性組成物において、前記エポキシ樹脂としてポリエステル変性エポキシ樹脂と脂肪族炭化水素のポリグリシジルエーテルとを組み合わせることにより、硬化物における靱性が格段に向上し、かつ、金属基材接着性にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、エポキシ樹脂(A)と硬化剤又は硬化促進剤(B)とを含有し、前記エポキシ樹脂(A)がポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)と脂肪族炭化水素のポリグリシジルエーテル(A2)とを必須の成分とすることを特徴とする硬化性組成物に関する。
【0008】
本発明はさらに、前記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物に関する。
【0009】
本発明はさらに、前記硬化性組成物からなる接着剤に関する。
【0010】
本発明はさらに、前記接着剤を用いてなる構造物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬化物における靱性が高く、金属基材に対する接着性に優れる硬化性組成物とその硬化物、接着剤、及びこれを用いた構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、製造例1で得られたポリエステル変性エポキシ樹脂(A1−1)のGPCチャート図である。
図2図2は、製造例2で得られたポリエステル変性エポキシ樹脂(A1−2)のGPCチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の硬化性組成物はエポキシ樹脂(A)と硬化剤又は硬化促進剤(B)とを含有し、前記エポキシ樹脂(A)がポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)と脂肪族炭化水素のポリグリシジルエーテル(A2)とを必須の成分とすることを特徴とする。
【0014】
前記ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)は、樹脂構造中にポリエステル鎖構造とエポキシ基とを有するものであれば具体構造は特に限定されない。中でも、硬化物における靱性に優れることから1分子中にエポキシ基を2つ有する2官能のエポキシ樹脂であることが好ましい。更に、硬化物における靱性が特に高いものとして、下記一般式(1)
【0015】
【化1】
[式中Rは水素原子又はポリエステル構造部位であり、Xはそれぞれ独立に下記一般式(2−1)〜(2−8)
【0016】
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基の何れかであり、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基の何れかであり、nは0又は1以上の整数である。)
の何れかで表される構造部位である。]
で表される樹脂構造を有し、樹脂中に存在する前記Rの少なくとも一つはポリエステル構造部位であるものが挙げられる。
【0017】
前記一般式(1)中のXは、前記一般式(2−1)〜(2−8)の何れかで表される構造部位である。樹脂中に複数存在するXは同一の構造部位であっても良いし、それぞれ異なる構造部位であっても良い。中でも、硬化物における靱性が高いポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)となることから、前記一般式(2−1)又は(2−2)で表される構造部位であることが好ましい。
【0018】
前記一般式(1)中のRは水素原子又は水素原子又はポリエステル構造部位であり、樹脂中に存在する前記Rの少なくとも一つは前記ポリエステル構造部位である。中でも、硬化物における靱性が高いポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)となることから、樹脂中のポリエステル構造部位の含有量は25〜45質量%の範囲であることが好ましい。
【0019】
また、前記ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)のエポキシ基当量は、硬化物における靱性に優れることから、400〜1200g/当量の範囲であることが好ましく、500〜1000g/当量の範囲であることがより好ましい。
【0020】
前記ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)を製造する方法は特に限定されないが、前記ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)が前記一般式(1)で表されるものである場合、例えば、下記一般式(3)
【0021】
【化3】
[式中Xはそれぞれ独立に下記一般式(2−1)〜(2−8)
【0022】
【化4】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基の何れかであり、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基の何れかであり、nは0又は1以上の整数である。)
の何れかで表される構造部位である。]
で表される樹脂構造を有する水酸基含有エポキシ樹脂(c)とラクトン化合物(d)とを反応させる方法が挙げられる。
【0023】
前記水酸基含有エポキシ樹脂(c)は、例えば、ビスフェノール又はビフェノール型化合物(c1)と、これらのジグリシジルエーテル化合物(c2)とを反応させる方法(方法1)や、ビスフェノール又はビスフェノール型化合物(c1)とエピハロヒドリンとを反応させる方法(方法2)等が挙げられる。中でも、反応が制御し易く、得られるリエステル変性エポキシ樹脂(A1)のエポキシ当量を前記好ましい値に制御することが容易であることから、前記方法1が好ましい。
【0024】
前記方法1について、ビスフェノール又はビフェノール型化合物(c1)と、これらのジグリシジルエーテル化合物(c2)との反応割合は、両者の質量比[(c1)/(c2)]が10/90〜30/70の範囲であることが好ましい。反応温度は120〜160℃程度であることが好ましく、また、テトラメチルアンモニウムクロライド等の反応触媒を用いても良い。
【0025】
前記水酸基含有エポキシ樹脂(c)のエポキシ基当量は、得られるポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)のエポキシ基当量を前記好ましい範囲に調整することが容易になることから、300〜600g/当量の範囲であることが好ましい。
【0026】
前記ラクトン化合物(d)は、環状エステル構造を有するものであれば特に限定されず、例えば、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、7−ヒドロキシヘプタン酸ラクトン、8−ヒドロキシオクタン酸ラクトン、9−ヒドロキシノナン酸ラクトン等、4〜10員環のラクトンが挙げられる。中でも、硬化物における靱性が高いポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)となることから、ε−カプロラクトンが好ましい。
【0027】
前記水酸基含有エポキシ樹脂(c)とラクトン化合物(d)との反応は、例えば、適当な反応触媒の存在下、100〜130℃程度の温度条件で行う方法が挙げられる。両者の質量比[(c)/(d)]は、硬化物における靱性が高いポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)となることから、55/45〜75/25の範囲となる割合であることが好ましい。
【0028】
前記脂肪族炭化水素のポリグリシジルエーテル(A2)は、脂肪族炭化水素基を基本骨格とし、エポキシ基を有するものであればその具体構造は特に限定されない。中でも、硬化物における靱性に優れることから1分子中にエポキシ基を2つ有する2官能の化合物であることが好ましい。具体的には、下記構造式(4)
【0029】
【化5】
(Yは炭素原子数4〜20の脂肪族炭化水素基である。)
で表される分子構造を有するものが好ましい。
【0030】
前記脂肪族炭化水素のポリグリシジルエーテル(A2)は、一種類を単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。更に、金属基材との接着性に優れる脂肪族炭化水素のポリグリシジルエーテル(A2)となることから、前記一般式(3)中のYは直鎖のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数4〜10の直鎖のアルキレン基であることがより好ましい。
【0031】
本発明では、前記エポキシ樹脂(A)として、前記ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)及び前記脂肪族炭化水素のポリグリシジルエーテル(A2)に加え、その他のエポキシ樹脂を併用しても良い。その他のエポキシ樹脂は、例えば、ウレタン変性エポキシ樹脂(A3)、ゴム変性エポキシ樹脂(A4)、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、ナフトールノボラック型、クレゾールノボラック型、フェノール−クレゾール共縮ノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0032】
中でも、硬化物における靱性に優れ、金属基材に対する接着性に優れる硬化性組成物となることから、ウレタン変性エポキシ樹脂(A3)又はゴム変性エポキシ樹脂(A4)を用いることが好ましい。
【0033】
エポキシ樹脂(A)中の前記ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)の含有量は、硬化物における靱性と金属基材に対する接着性とのバランスに優れる硬化性組成物となることから、エポキシ樹脂(A)の30〜90質量%が前記ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)であることが好ましく、40〜80質量%が前記ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1)であることがより好ましい。
【0034】
エポキシ樹脂(A)中の前記脂肪族炭化水素のポリグリシジルエーテル(A2)の含有量は、硬化物における靱性と金属基材に対する接着性とのバランスに優れる硬化性組成物となることから、エポキシ樹脂(A)の5〜40質量%が前記脂肪族炭化水素のポリグリシジルエーテル(A2)であることが好ましく、10〜30質量%が前記脂肪族炭化水素のポリグリシジルエーテル(A2)であることがより好ましい。
【0035】
前記エポキシ樹脂(A)が前記ウレタン変性エポキシ樹脂(A3)を含有する場合、その含有量は、硬化物における靱性と金属基材に対する接着性とのバランスに優れる硬化性組成物となることから、エポキシ樹脂(A)の5〜30質量%が前記ウレタン変性エポキシ樹脂(A3)であることが好ましく、5〜20質量%が前記ウレタン変性エポキシ樹脂(A3)であることがより好ましい。
【0036】
前記エポキシ樹脂(A)が前記ゴム変性エポキシ樹脂(A4)を含有する場合、その含有量は、硬化物における靱性と金属基材に対する接着性とのバランスに優れる硬化性組成物となることから、エポキシ樹脂(A)の5〜30質量%が前記ゴム変性エポキシ樹脂(A4)であることが好ましく、5〜20質量%が前記ゴム変性エポキシ樹脂(A4)であることがより好ましい。
【0037】
前記ウレタン変性エポキシ樹脂(A3)は、樹脂構造中にウレタン構造とエポキシ基とを有するものであれば、具体構造は特に限定されない。中でも、硬化物における靱性が特に高いものとして、前記一般式(3)で表される樹脂構造を有する水酸基含有エポキシ樹脂(e)とイソシアネート基含有ウレタン樹脂(f)とを反応させて得られるものが挙げられる。
【0038】
前記水酸基含有エポキシ樹脂(e)は、硬化物における靱性が高いウレタン変性エポキシ樹脂(A2)となることから、記構造式(3)中のXが前記構造式(2−1)〜(2−8)の何れかで表される構造部位であるものが好ましい。水酸基含有エポキシ樹脂(e)は前記水酸基含有エポキシ樹脂(c)と同様の方法にて得られ、そのエポキシ当量は120〜450g/当量の範囲であることが好ましい。
【0039】
前記イソシアネート基含有ウレタン樹脂(f)は、分子構造中にイソシアネート基とウレタン結合部位とを有するものであれば特に限定されない。具体的には、ポリイソシアネート化合物(f1)と、ポリオール化合物(f2)とを、ポリオール化合物(f2)が含有する水酸基に対してポリイソシアネート化合物(f1)が含有するイソシアネート基が過剰となる条件で反応させて得られるものが挙げられる。
【0040】
前記ポリイソシアネート化合物(f1)は、例えば、各種のジイソシアネートモノマーや、そのヌレート変性体、アダクト変性体、ビウレット変性体等が挙げられ、一種類を単独で用いても良いし、二種類以上を併用してもよい。
【0041】
前記ジイソシアネートモノマーは、例えば、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ビス(パラフェニルイソシアネート)プロパン、4,4′−ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0042】
前記ポリイソシアネート化合物(f1)の中でも、硬化物における靱性が高いウレタン変性エポキシ樹脂(A2)となることから、前記ジイソシアネートモノマーが好ましく、脂環式ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートがより好ましい。
【0043】
前記ポリオール化合物(f2)は、分子構造中に2つ以上の水酸基を有する化合物であれば特に限定されず、各種のジオール化合物、トリオール化合物、4官能以上のポリオール化合物のいずれも利用できる。中でも、硬化物における柔軟性と靱性に優れるウレタン変性エポキシ樹脂となることから、ジオール化合物であることが好ましい。
【0044】
前記ジオール化合物は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、1,4−ベンゼンジメタノール、3,3’−ビフェニルジオール、4,4’−ビフェニルジオール、ビフェニル−3,3’−ジメタノール、ビフェニル−4,4’−ジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、2,6−ナフタレンジオール、ナフタレン−2,6−ジメタノール等の芳香環含有ジオール;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル化合物の開環重合、或いは、前記脂肪族又は芳香環含有ジオールとこれら環状エーテル化合物との重合によって得られるポリエーテル変性ジオール;ε−カプロラクトン等のラクトン化合物の開環重合、或いは、前記脂肪族又は芳香環含有ジオールとラクトン化合物との重合、によって得られるラクトン変性ジオール:前記脂肪族又は芳香環含有ポリオールと、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はその無水物等とを反応させて得られるポリエステルジオール;前記脂肪族又は芳香環含有ポリオールと、ホスゲン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等のカルボニル化剤とを反応させてなるポリカーボネートジオール等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0045】
中でも、硬化物における靱性が高いウレタン変性エポキシ樹脂(A3)となることからポリエーテル変性ジオールが好ましい。また、その重量平均分子量(Mw)が1,000〜4,000の範囲であることが好ましい。
【0046】
尚、本発明において、重量平均分子量(Mw)は下記条件のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0047】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L
+東ソー株式会社製 TSK−GEL SuperHZM−M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0048】
前記ポリイソシアネート化合物(f1)と、ポリオール化合物(f2)とを反応させて前記イソシアネート基含有ウレタン樹脂(f)を製造する方法は、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(f2)が有するイソシアネート基と、ポリオール化合物(f2)が有する水酸基とのモル比[(NCO)/(OH)]が、1.5/1〜4.5/1の範囲となる割合で両者を用い、20〜120℃の温度範囲内で、必要に応じて公知慣用のウレタン化触媒を用いて行う方法などが挙げられる。得られる前記イソシアネート基含有ウレタン樹脂(f)のイソシアネート含有量は、2〜4質量%の範囲であることが好ましい。
【0049】
前記水酸基含有エポキシ樹脂(e)と前記イソシアネート基含有ウレタン樹脂(f)とを反応させてウレタン変性エポキシ樹脂(A3)を得る方法は、例えば、20〜120℃の温度範囲内で、必要に応じて公知慣用のウレタン化触媒を用い、両者の質量比[(e)/(f)]が85/15〜55/45の範囲となる割合で反応させる方法などが挙げられる。
【0050】
前記ウレタン変性エポキシ樹脂(A3)のエポキシ基当量は、硬化物における靱性に優れることから、200〜600g/当量の範囲であることが好ましい。
【0051】
前記ゴム変性エポキシ樹脂(A4)は、樹脂構造中にゴム鎖構造とエポキシ基とを有するものであれば、具体構造は特に限定されない。具体的には、ブタジエンとアクリロニトリルとの共重合体を主骨格とし、両末端にカルボキシル基を有する、カルボキシル基末端ブタジエンゴムと、2官能エポキシ樹脂とを反応させて得られるものが挙げられる。
【0052】
前記2官能エポキシ樹脂の具体構造は特に限定されないが、靱性が高く金属基材への接着性が高いゴム変性エポキシ樹脂(A4)となることから、ビスフェノール型のエポキシ樹脂であることが好ましく、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0053】
前記ゴム変性エポキシ樹脂(A4)のエポキシ基当量は、靱性が高く金属基材への接着性が高いゴム変性エポキシ樹脂(A4)となることから、200〜600g/当量の範囲であることが好ましい。
【0054】
本発明の硬化性組成物は前記エポキシ樹脂(A)と、硬化剤又は硬化促進剤(B)とを含有する。
【0055】
前記硬化剤又は硬化促進剤(B)は、エポキシ樹脂(A)の硬化用に一般的に用いられるものを広く用いることができ、一種類を単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。前記硬化剤又は硬化促進剤(B)の具体例としては、ポリアミン化合物、アミド化合物、酸無水物、フェノ−ル性水酸基含有樹脂、リン化合物、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、尿素系化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
【0056】
前記ポリアミン化合物は、例えば、トリメチレンジアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ジプロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(トリエチレンジアミン)、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヘキサノール等の脂肪族アミン化合物;
【0057】
ピペリジン、ピペラジン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、N,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、N−アミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)等の脂環式及び複素環式アミン化合物;
【0058】
o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルメチルアミン、ジメチルベンジルアミン、m−キシレンジアミン、ピリジン、ピコリン、α−メチルベンジルメチルアミン等の芳香族アミン化合物;
【0059】
エポキシ化合物付加ポリアミン、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミン、チオ尿素付加ポリアミン、ケトン封鎖ポリアミン、ジシアンジアミド、グアニジン、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、アミンイミド、三フッ化ホウ素−ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素−モノエチルアミン錯体等の変性アミン化合物等が挙げられる。
【0060】
前記アミド化合物は、例えば、ジシアンジアミドやポリアミドアミン等が挙げられる。前記ポリアミドアミンは、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、脂肪酸、ダイマー酸等のカルボン酸化合物と、脂肪族ポリアミンやポリオキシアルキレン鎖を有するポリアミン等を反応させて得られるものが挙げられる。
【0061】
前記酸無水物は、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0062】
前記フェノ−ル性水酸基含有樹脂は、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0063】
前記リン化合物は、例えば、エチルホスフィン、ブチルホスフィン等のアルキルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジプロピルホスフィン等のジアルキルホスフィン;ジフェニルホスフィン、メチルエチルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィン等が挙げられる。
【0064】
前記イミダゾール化合物は、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、3−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、5−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、3−エチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、5−エチルイミダゾール、1−n−プロピルイミダゾール、2−n−プロピルイミダゾール、1−イソプロピルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−n−ブチルイミダゾール、2−n−ブチルイミダゾール、1−イソブチルイミダゾール、2−イソブチルイミダゾール、2−ウンデシル−1H−イミダゾール、2−ヘプタデシル−1H−イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,3−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、2−フェニル−1H−イミダゾール、4−メチル−2−フェニル−1H−イミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール塩酸塩等が挙げられる
【0065】
前記イミダゾリン化合物は、例えば、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等が挙げられる。
【0066】
前記尿素化合物は、例えば、p−クロロフェニル−N,N−ジメチル尿素、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−N,N−ジメチル尿素、N−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素等が挙げられる。
【0067】
本発明において、エポキシ樹脂成分と前記硬化剤又は硬化促進剤との配合量は、エポキシ基と反応し得る官能基を有する硬化剤を用いる場合、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1モルに対し、硬化剤中の官能基が0.3〜1.1モルの範囲となる割合で配合することが好ましい。また、硬化促進剤を用いる場合には、エポキシ樹脂成分100質量部に対し、0.5〜10質量部の割合で配合することが好ましい。
【0068】
本発明の硬化性組成物は、この他、有機溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、難燃剤、可塑剤、シランカップリング剤、有機微粒子、無機フィラー、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、防曇剤、着色剤等を含有していても良い。これら各種成分は所望の性能に応じて任意の量を添加してよい。
【0069】
前記有機微粒子は、例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子、ポリカーボネート微粒子、ポリスチレン微粒子、ポリアクリルスチレン微粒子、シリコーン微粒子、ガラス微粒子、アクリル微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子、メラミン系樹脂微粒子、ポリオレフィン系樹脂微粒子、ポリエステル系樹脂微粒子、ポリアミド樹脂微粒子、ポリイミド系樹脂微粒子、ポリフッ化エチレン樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0070】
前記無機フィラーは、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、チタン酸バリウム、三酸化アンチモン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、タルク、アタパルジャイト、フェライト等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらの無機フィラーは平均粒子径が0.1〜100μmの範囲であるものが好ましい。
【0071】
本発明の硬化性組成物は、前記エポキシ樹脂(A)、硬化剤又は硬化促進剤(B)、及び前記各種の任意成分を、プラネタリーミキサー、ポットミル、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモジナイザー、スーパーミル、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて均一に混合することにより調製することができる。
【0072】
本発明の硬化性組成物の用途は特に限定されず、塗料、コーティング剤、成形材料、絶縁材料、封止剤、シール剤、繊維の結束剤など様々な用途に用いることができる。中でも、硬化物における靭性に優れ、金属基材に対する接着性に優れる特徴を生かし、自動車、電車、土木建築、エレクトロニクス、航空機、宇宙産業分野の構造部材の接着剤として好適に用いることができる。本発明の接着剤は、例えば、金属−非金属間のような異素材の接着に用いた場合にも、温度環境の変化に影響されず高い接着性を維持することができ、剥がれ等が生じ難い。また、本発明の接着剤は、構造部材用途の他、一般事務用、医療用、炭素繊維、電子材料用などの接着剤としても使用でき、電子材料用の接着剤としては、例えば、ビルドアップ基板などの多層基板の層間接着剤、光学部品接合用接着剤、光ディスク貼り合わせ用接着剤、プリント配線板実装用接着剤、ダイボンディング接着剤、アンダーフィルなどの半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム、異方性導電性ペーストなどの実装用接着剤などが挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例および比較例をもって本発明をより詳しく説明する。
【0074】
製造例1 ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1−1)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850」エポキシ当量188g/当量)48質量部、ビスフェノールA12質量部、及び触媒としてテトラメチルアンモニウムクロライド0.002質量部を仕込み、140℃まで加熱して撹拌しながら、エポキシ当量が400g/当量になるまで反応させて、水酸基含有エポキシ樹脂(c−1)を得た。ついで、反応系内を110℃まで降温させ、ε−カプロラクトン40質量部と、ジオクチル錫触媒(日東化成株式会社製「ネオスタンU−830」0.05質量部を添加した。120℃まで加熱し、不揮発分が99質量%以上になるまで反応させて、ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1−1)を得た。得られたポリエステル変性エポキシ樹脂(A1−1)のエポキシ当量は670g/当量であった。
【0075】
製造例2 ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1−2)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 830」エポキシ当量170g/当量)49質量部、ビスフェノールF11質量部、及び触媒としてテトラメチルアンモニウムクロライド0.002質量部を仕込み、140℃まで加熱して撹拌しながら、エポキシ当量が340g/当量になるまで反応させて、水酸基含有エポキシ樹脂(c−2)を得た。ついで、反応系内を110℃まで降温させ、ε−カプロラクトン40質量部と、ジオクチル錫触媒(日東化成株式会社製「ネオスタンU−830」0.05質量部を添加した。120℃まで加熱し、不揮発分が99質量%以上になるまで反応させて、ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1−2)を得た。得られたポリエステル変性エポキシ樹脂(A1−2)のエポキシ当量は590g/当量であった。
【0076】
製造例3 ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1−3)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850」エポキシ当量188g/当量)46.5質量部、ビスフェノールA13.5質量部、及び触媒としてテトラメチルアンモニウムクロライド0.002質量部を仕込み、140℃まで加熱して撹拌しながら、エポキシ当量が470g/当量になるまで反応させて、水酸基含有エポキシ樹脂(c−3)を得た。ついで、反応系内を110℃まで降温させ、ε−カプロラクトン40質量部と、ジオクチル錫触媒(日東化成株式会社製「ネオスタンU−830」0.05質量部を添加した。120℃まで加熱し、不揮発分が99質量%以上になるまで反応させて、ポリエステル変性エポキシ樹脂(A1−3)を得た。得られたポリエステル変性エポキシ樹脂(A1−3)のエポキシ当量は800g/当量であった。
【0077】
製造例4 ウレタン変性エポキシ樹脂(A3−1)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ポリプロピレングリコール(三井化学株式会社製「アクトコール D−3000」水酸基価37.5mgKOH/g)26.1質量部、イソホロンジイソシアネート3.9質量部、及び触媒としてジオクチル錫触媒(日東化成株式会社製「ネオスタンU−830」0.002質量部を添加した。80℃まで加熱し、イソシアネート基含有量が2.3質量%となるまで反応させた。次いで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850」エポキシ当量188g/当量)55.9質量部、及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 1050」エポキシ当量470g/当量)14.1質量部を仕込み、80℃まで加熱し、イソシアネート含有量が0質量%になるまで反応させて、ポリウレタン変性エポキシ樹脂(A3−1)を得た。
【0078】
実施例で用いたその他の成分
・脂肪族炭化水素のポリグリシジルエーテル(A2−1):1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
・ゴム変性エポキシ樹脂(A4−1):DIC株式会社製「EPICLON TSR−601」エポキシ基当量475g/当量
・ゴム変性エポキシ樹脂(A4−2):DIC株式会社製「EPICLON TSR−930」エポキシ基当量190g/当量
・その他のエポキシ樹脂(1):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850」エポキシ当量188g/当量)
・その他のエポキシ樹脂(2):ネオデカン酸グリシジルエーテル(ヘキシオンスペシャルティケミカルズジャパン株式会社製「カージュラE−10P」)
・その他のエポキシ樹脂(3):ビスフェノールAビス(ポリオキシエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル(新日本理化社製「リカレジンBEO-60E」エポキシ基当量351g/当量)
・硬化剤/硬化促進剤(B−1):ジシアンジアミド
・硬化剤/硬化促進剤(B−2):3−(3,4−ジシクロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)
・シリカ:日本アエロジル株式会社製RY−200S
・アクリル微粒子:アイカ工業株式会社製「ZEFIAC F351」
【0079】
実施例1〜6、比較例1、2
下記要領で硬化性組成物を製造し、各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0080】
◆硬化性組成物の製造
表1、2に示す割合で各成分を配合し、ディスパーにて分散して硬化性組成物を得た。
【0081】
◆靱性評価
先で得た硬化性組成物を膜厚が2mmの金型に注入し、170℃で30分かけて硬化させた。硬化物から1号ダンベル型のサンプルを切り出し、島津製作所株式会社製「AUTOGRAPH AG−IS 1kN」を用いて引張試験を行い、伸び率(%)で評価した。
【0082】
◆金属基材との接着性評価
TP技研株式会社製燐酸亜鉛処理鋼板SPCC−SB(200×25×0.5mm)を基材として用い、硬化塗膜の膜厚が200μmとなるように先で得た硬化性組成物を塗布し、170℃で30分硬化させた。JIS K6854−Sに従い、島津製作所株式会社製「AUTOGRAPH AG−IS 10kN」を用いて硬化塗膜のT形剥離試験を行い、平均剥離強度(N/mm)で評価した。
【0083】
【表1】
図1
図2