【文献】
金香玉 外3名,蛍光と位相イメージングが可能なハイブリッドディジタルホログラフィック顕微鏡の試作,Optics & Photonics Japan 2014 講演予稿集,2014年11月 5日,6pP15
【文献】
Hiroyuki Toge et al.,One-shot digital holography for recording color 3-D images,Proceedings of SPIE,2008年,6912,69120U1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記撮像装置は、前記物体光と参照光とが干渉することにより形成されるホログラムと、前記蛍光体が発する蛍光の像とが重畳した画像を撮像することを特徴とする請求項1または2に記載のデジタルホログラフィ記録装置。
前記撮像装置に入射する前記物体光の光軸に対して、前記撮像装置に入射する前記参照光の光軸は傾いていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のデジタルホログラフィ記録装置。
参照光と物体光とが干渉することにより形成されるホログラムと、インコヒーレント光の像とが重畳した画像から、空間的位相シフト法を用いて前記物体光の複素振幅を求め、
前記物体光の複素振幅から前記ホログラムの強度を求め、
前記画像から前記ホログラムを除去することにより、前記インコヒーレント光の像を得ることを特徴とするデジタルホログラフィ再生装置。
抽出された前記インコヒーレント光の像の空間スペクトルを逆フーリエ変換することで、前記インコヒーレント光の像を得ることを特徴とする請求項10に記載のデジタルホログラフィ再生装置。
参照光と物体光とが干渉することにより形成されるホログラムと、インコヒーレント光の像とが重畳した画像から、空間的位相シフト法を用いて前記物体光の複素振幅を求めるステップと、
前記物体光の複素振幅から前記ホログラムの強度を求めるステップと、
前記画像から前記ホログラムを除去することにより、前記インコヒーレント光の像を得るステップとを含むことを特徴とするデジタルホログラフィ再生方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について図に基づいて以下に説明する。説明の便宜上、各項目において、上述の項目に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、適宜その説明を省略することがある。
【0025】
〔実施形態1〕
本実施形態は、物体光の情報と蛍光の情報とを単一露光で同時に記録するデジタルホログラフィ装置に関する。そして、デジタルホログラフィ装置は、記録したホログラムを用いて、物体光の情報と蛍光の情報とを互いに分離して再生することができる。
【0026】
(デジタルホログラフィ装置1の構成)
図1は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置1の構成を示す模式図である。デジタルホログラフィ装置1は、軸外し型(off-axis型)のデジタルホログラフィ装置である。デジタルホログラフィ装置1は、記録装置10(デジタルホログラフィ記録装置)と再生装置11(デジタルホログラフィ再生装置)とを備える。記録装置10は、撮像装置12、波長λ1のレーザ光源LS1(第1光源)、および光学系を備える。再生装置11は、コンピュータ等の計算機によって構成することができる。なお、レーザ光としては、可視光のみならず、不可視光(赤外線、紫外線、X線等)も利用することができる。
【0027】
光学系は、ミラー等の複数の光学素子を備え、波長λ1のレーザ光(コヒーレント光)を被写体13(物体)および撮像装置12へ導く。具体的には、光学系は、複数の光学素子として、ビームスプリッタBS1〜BS2、およびミラーM1〜M3、ビームエキスパンダBE1〜BE2、および結像素子15(結像光学素子)を備える。ビームエキスパンダBE1〜BE2はそれぞれ、対物レンズBEa、ピンホールBEb、およびコリメータレンズBEcを備える。ビームスプリッタBS1〜BS2は、ハーフミラーからなる。結像素子15は、レンズを含む。ただし、これに限らず、結像させるための任意の光学素子を結像素子15として用いることができる。
【0028】
撮像装置12は、撮像するための複数の画素がx方向およびy方向に配列した撮像面を有し、撮像面に到達した光の強度を記録する。x方向はy方向に対して垂直である。z方向はx方向およびy方向に対して垂直である。撮像装置12は、CCDまたはCMOS等の撮像素子を有する。撮像装置12は、撮像面上に形成された干渉縞を記録する。この干渉縞は物体光の情報を有するホログラムである。なお、1つの画素は有限の受光領域を有する。そのため、1つの画素によって検出される光強度は、受光領域における干渉縞の光強度の積分である。撮像装置12はカラーフィルタを備えないため、撮像装置12の1つの画素は同時に複数の波長の光を受光することができる。すなわち撮像装置12はモノクロ撮像装置である。撮像装置12は、撮像した画像を示す画像データを再生装置11に出力する。再生装置11の詳細については後述する。
【0029】
(物体光、参照光および蛍光)
レーザ光源LS1から出射された波長λ1のレーザ光は、ビームスプリッタBS1によって参照光と物体照明光とに分けられる。
【0030】
ビームスプリッタBS1によって分けられた波長λ1の物体照明光は、ミラーM1を経由して、被写体13に照射される。物体照明光が被写体13によって散乱(反射または透過)または回折されたものが物体光である。ここでは、被写体13による反射光を物体光として利用しているが、被写体13の背面から物体照明光を照射し、被写体13を透過した光を物体光として利用してもよい。物体照明光を被写体13に照射することにより生じた物体光は、結像素子15およびビームスプリッタBS2を通過し、撮像装置12の撮像面に入射する。
【0031】
ここで、被写体13は、蛍光体14を含む。波長λ1の物体照明光はまた、蛍光体14を励起する役割も果たす。波長λ1の物体照明光によって励起された蛍光体14は、蛍光分子に応じた所定の波長の蛍光を発する。波長λ1は、蛍光の波長より短い。ただし、2光子励起または多光子励起を利用する場合、波長λ1は、蛍光の波長以上となり得る。蛍光体14から発せられた蛍光は、物体光と同様に、結像素子15およびビームスプリッタBS2を通過し、撮像装置12の撮像面に入射する。
【0032】
ビームスプリッタBS1によって分けられた波長λ1の参照光は、ミラーM2、ビームエキスパンダBE2、ミラーM3を経由し、ビームスプリッタBS2で反射され、撮像装置12の撮像面に入射する。物体光および参照光が撮像面に入射する角度は、光学系に含まれる光学素子(ビームスプリッタ、ミラー等)によって調整できる。
【0033】
ここでは、被写体13の中心からの物体光は、撮像装置12の撮像面の中心に対して、垂直に入射すると仮定している。言い換えれば、被写体13の中心は、撮像面の中心を通り撮像面に垂直な線上に位置する。これに対し、参照光は、撮像面に斜めに入射する。すなわち、撮像面に入射する物体光の光軸と参照光の光軸との間には角度差がある。
【0034】
物体光および蛍光は、結像素子15によって、撮像装置12の撮像面上に像を結ぶように結像される。物体光は参照光と干渉することにより、撮像面上にホログラム(結像型ホログラム)を形成する。一方、蛍光は、インコヒーレント光と呼ばれるコヒーレント性が低い光である。また、蛍光は、物体光および参照光とは波長が異なる。そのため、蛍光は、物体光および参照光とは干渉しない。撮像装置12は、ホログラムと結像された蛍光の像とが重畳した画像を撮像することになる。なお、レーザ光の波長の光を減衰させ、蛍光の波長の光を通過させる光学フィルタ等を撮像面の手前に設けてもよい。蛍光体14から生じる蛍光の強度が物体光の強度に比べて非常に小さい場合、蛍光の像がホログラムに埋もれないように、物体光または参照光または物体光と参照光との両方の強度を光学フィルタによって小さくしてもよい。
【0035】
(再生装置11の構成)
図2は、本実施形態の再生装置11が行う再生処理のフローを示す図である。再生装置11は、撮像装置12によって記録された画像(ホログラム+蛍光)を用いて、被写体13の像の再生および蛍光の像の再生を行う。ただし、記録された画像は、物体光の情報(すなわち被写体13の3次元形状情報)を含むホログラムと、蛍光とが重畳した画像であるので、そのままでは公知のデジタルホログラフィ技術で再生することができない。
【0036】
ここで、記録された画像の各画素の値は、ホログラムの光強度Ihおよび蛍光の光強度Ifの和である。IhおよびIfは、画素毎に異なる。蛍光は撮像面上に結像しているので、蛍光の光強度Ifは、撮像装置12から見た蛍光の分布を表す。ホログラムの光強度Ihは、以下のようになる。
Ih=|O|
2+|R|
2+2|O||R|cosφ (1)
ここで、|O|は物体光の振幅、|R|は参照光の振幅、|O|
2は物体光の強度、|R|
2は参照光の強度、φは参照光に対する物体光の位相差である。|O|、|R|、およびφは、画素毎に異なり得る。なお、参照光はレーザ光を引き伸ばした平面波であるので、参照光の強度は一様な値または所定の分布(例えばガウス分布)の値であると仮定(推定)してもよい。なお、より精度よく像を再生するために、事前または事後に参照光のみの強度分布を測定してもよい。参照光の強度分布を測定することは再生の精度を上げるためのキャリブレーションに相当する。それゆえ|R|
2は既知の値として扱うことができる。
【0037】
具体的には、再生装置11は、記録された画像を2次元フーリエ変換する(S1)。ホログラムは、参照光と物体光とが干渉することにより形成される、様々な間隔の干渉縞を含む。このホログラムを含む画像をフーリエ変換すると、縞の間隔に応じて、物体光波(1次回折光)、0次回折光、および共役像(−1次回折光)のそれぞれのスペクトルが現れる。以後、2次元フーリエ変換した後の平面を空間周波数面と呼び、スペクトルを空間スペクトルと呼ぶ。
【0038】
図3は、記録された画像を2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
図3において、横軸はx軸の空間周波数fxを示し、縦軸はy軸の空間周波数fyを示す。ホログラムと蛍光の像とを含む画像の空間周波数面において、波長λ1の0次回折光の空間スペクトル、波長λ1の物体光波(1次回折光)の空間スペクトル、波長λ1の共役像(−1次回折光)の空間スペクトル、ならびに、蛍光の空間スペクトルが存在する。なお、共役像の空間スペクトルは物体光波の空間スペクトルに対して原点対称の位置に現れる。なお、ここでは各空間スペクトルは円形である。物体光の経路に同様の形の光透過フィルタ(開口または絞り)を配置したとき等に、このような空間スペクトルが得られる。撮像装置において記録可能な空間周波数帯域は、空間周波数面において原点を中心とした幅1/dの範囲である。dは画素間隔である。
【0039】
0次回折光の空間スペクトルは原点を中心に分布する。蛍光の空間スペクトルもまた、その多くが原点を中心に分布する。それゆえ、0次回折光の空間スペクトルと蛍光の空間スペクトルとは、空間周波数面において、少なくとも一部が互いに重なって分布する。なお、記録装置10において、被写体13と撮像装置12との間(例えば結像素子15付近)に開口または絞りを配置することで、蛍光の空間スペクトルの高周波成分をカットすることができる。これにより、蛍光の空間スペクトルが主に低周波領域(原点付近)に位置するようにすることができる。
【0040】
一方、λ1の物体光波の空間スペクトルは、0次回折光の空間スペクトルよりも高周波側に現れる。記録装置10において、撮像面に入射する物体光の光軸と参照光の光軸との角度差が大きくなると、干渉縞の縞の間隔が短くなるため、物体光波の空間スペクトルが高周波側にシフトする。物体光の光軸と参照光の光軸との間にある程度の角度差を設けることにより、空間周波数面において物体光波の空間スペクトルと0次回折光の空間スペクトルとが重ならないようにすることができる。
【0041】
再生装置11は、フーリエ変換された画像から、物体光波の空間スペクトルを抽出する(S2)。例えば、再生装置11は、フーリエ変換された画像から、あらかじめ定められた範囲を物体光波の空間スペクトルとして抽出する。物体光波の空間スペクトルが分布する範囲は、物体光の波長、物体光および参照光の入射角、および撮像装置12から見た被写体13の視野角(開口または絞りで制限することができる)に依存する。そのため、物体光波の空間スペクトルが分布する範囲は、あらかじめ知ることができる。
【0042】
再生装置11は、抽出した物体光波の空間スペクトルを逆フーリエ変換する。また、参照光の傾け角度に応じた位相変調量を補正する。これらにより、再生装置11は、各画素の物体光の複素振幅(|O|、およびφから参照光による変調量が補正された位相)を求める(S3)。物体光の複素振幅が得られれば、再生装置11は、物体光の複素振幅から被写体13の像を再生することができる。
【0043】
なお、上記逆フーリエ変換された結果は、記録された画像(ホログラム+蛍光)から0次回折光、共役像、および蛍光を除いたものを表す。画素毎に参照光の位相は異なる(参照光が平面波であれば参照光の位相は周期的に変化する)。ここで、位相変調量を補正するとは、上記逆フーリエ変換された結果から得られる物体光のφに含まれる(参照光の位相に応じた)位相変調量を、参照光の位相分布に応じて補正(キャンセル)することを意味する。
【0044】
再生装置11は、物体光の複素振幅から、各画素の|O|
2を求める(S4)。参照光の強度|R|
2は上述のように既知である。再生装置11は、物体光の複素振幅から0次回折光成分(|O|
2+|R|
2)を求める。式(1)の右辺は全て既知となるため、再生装置11は、ホログラムの光強度Ihを特定することができる。
【0045】
再生装置11は、記録された画像の画素値から0次回折光成分(|O|
2+|R|
2)を減算する。再生装置11は、0次回折光成分が除去された画像をフーリエ変換する(S5)。
【0046】
空間周波数面において、物体光波の空間スペクトルと蛍光の空間スペクトルとは分離されている。空間周波数面において蛍光と重畳する0次回折光成分は除去してある。そのため、再生装置11は、0次回折光成分が除去されたフーリエ変換された前記画像から原点を中心とした所定の範囲を抽出することにより、蛍光の空間スペクトルを抽出することができる。再生装置11は、抽出した蛍光の空間スペクトルを逆フーリエ変換することにより、蛍光の強度分布(蛍光の像)を求める(S6)。なお、上述のように、記録された画像から0次回折光成分を減算してもよいし、フーリエ変換された画像からフーリエ変換された0次回折光成分を減算してもよい。0次回折光成分の除去は、実空間およびフーリエ空間のいずれかで行うことができる。
【0047】
再生装置11は、このようにして、ホログラムと蛍光の像とが重畳した画像から、蛍光の像を分離して再生することができる。また、再生装置11は、物体光の複素振幅から被写体13の像を再生し、被写体13の3次元の形状情報を得ることができる。なお、抽出した物体光波の空間スペクトルから像を再生する方法としては公知の技術を利用することができる。
【0048】
本実施形態では、記録装置10は、単一のレーザ光源LS1から出射される物体照明光によって、物体光の生成と蛍光体14の励起とを行う。蛍光体14を励起するためだけの光源を別途設ける必要がないので、記録装置10の小型化を実現することができる。
【0049】
また、記録装置10は、参照光の光軸を物体光の光軸に対して傾けることにより、物体光と蛍光とを分離再生可能なように、ホログラムと蛍光の像とを同時に撮像する。すなわち、記録装置10は、空間周波数面において、物体光波の空間スペクトルと0次回折光および蛍光の空間スペクトルとが分離されるように撮像する。このようにして記録されたホログラムから、再生装置11は、上述のように物体光と蛍光とを分離・再生する。デジタルホログラフィ装置1は、ホログラムと蛍光とを同時に1つの画像として撮像するため、撮像装置12のフレームレートで動画像を記録することが可能となる。また、記録装置10の光学系を、反射型の光学系の代わりに、透過型の光学系にしてもよく、反射光の代わりに透過光、回折光、または散乱光を含む光を記録することもできる。そのため、デジタルホログラフィ装置1は、例えば、細胞内の標的の動きの解析、蛍石または塗料等の透明材料の高速特性評価、および、魚類、植物または果物等の粗面体または散乱体の高速特性評価等に利用することができる。
【0050】
なお、撮像装置12として、カラー撮像装置を用いることもできる。カラー撮像装置は、RGB(赤緑青)の各色の画像を記録する。この場合、物体光と蛍光との波長が大きく離れていなければ、1つの色の画像に、ホログラムと蛍光の像とが重畳して含まれ得る。また、光源の波長は複数あるため、光源の波長と同じ波長の蛍光が発生し得る。それゆえ、例えば、再生装置11は、RGBの各色の画像において、上述の物体光および蛍光の分離・再生を行う。例えば、蛍光について、RGBに対応した3つの再生画像が得られる。これにより、被写体13に含まれる蛍光体14が既知でない場合でも、蛍光の色を特定することができる。そのため、カラー撮像装置を用いたデジタルホログラフィ装置は、例えば、物質の反射光と蛍光の波長スペクトル同時解析に利用することができる。なお、例えば物体照明光が赤外線の場合、蛍光は物体照明光の波長より長い波長の不可視光である。この場合、例えば赤外線撮像装置を用いることができる。また例えば、カラー撮像装置のように、撮像装置の画素毎に異なる波長選択フィルタ(不可視光領域の波長を選択的に透過するフィルタ)を設け、不可視光である物体光、参照光、および蛍光を撮像してもよい。
【0051】
このように、記録装置10は、コヒーレント光によって形成されるホログラムと、被写体が発光するインコヒーレント光によって形成される被写体の像とが重畳した画像を記録(撮像)する。再生装置11は、上記画像からインコヒーレント光によって形成される被写体の像を分離して再生する。ここでは、被写体が発光するインコヒーレント光が蛍光である場合を例に挙げて説明したが、もちろん、被写体が発光するインコヒーレント光は、蛍光に限らず、任意のインコヒーレント光(燐光、放電による発光等)であってもよい。このことは他の実施形態でも同様である。
【0052】
なお、
図2のS3のフローの後、再生装置11は、求めた物体光の複素振幅からホログラムの光強度Ihを求めてもよい。再生装置11は、記録画像からホログラムの光強度Ihを減算することにより、蛍光の像のみを抽出することができる。この場合、再生装置11は、2回目のフーリエ変換(S5)・逆フーリエ変換(S6)の処理を省略することができる。フーリエ変換の処理は計算処理の負荷が大きい。そのため、上記のように処理することで、再生装置11は、蛍光の像の再生処理を高速に行うことができる。
【0053】
ただし、ホログラムの光強度Ihを正確に算出するためには、各画素における参照光の位相を正確に特定し、再生装置11に入力する必要がある。(1)光学系において物体光の光軸に対する参照光の光軸の角度を測定する、(2)記録画像のフーリエ変換画像において、原点から物体光波の空間スペクトルの中心までの距離および波長から参照光の光軸の上記角度を算出する、または、(3)参照光の光軸の上記角度を推定(仮定)する、ことによってユーザは参照光の位相を特定することができる。(1)においては、計測(ホログラムおよび蛍光の記録)の前または後で、キャリブレーション処理を行い角度差の情報を求めておくことも考えられる。キャリブレーション処理では、光軸の角度を測定するためにミラーまたは基準となる物体を物体光路に設置する、または光軸に沿った方向に伝搬する平面波または球面波を物体光として設定し、あらかじめホログラムを記録し、記録したホログラムをフーリエ変換し、物体光の空間スペクトルを抽出して位相情報を得る。平面波など複雑でない位相分布を持つ光であれば、参照光による位相変調量の情報抽出が容易であり、より高い精度で角度差の測定(算出)ができる。測定または推定が正確でない場合、算出されるホログラムの光強度の精度が低くなる。それゆえ、得られる蛍光の像の精度が低くなる。一方、0次回折光の強度は、参照光の位相に関係なく求めることができる。そのため、
図2のフローのように処理を行うことにより、得られる蛍光の像の精度を高くすることができる。また、本実施形態の再生方法は、後述する実施形態4の再生方法よりも、蛍光の像の精度を高くすることができる。
【0054】
また、記録装置10は、物体光、参照光および蛍光が発生していない(遮光された)状態で撮像を行い、キャリブレーションのための画像として、再生装置11に出力してもよい。この画像は、ノイズとなる迷光を撮像したものになる。再生装置11は、記録画像の画素値(強度)から迷光の画像の画素値を減算したものを、較正された記録画像として用いてもよい。これによれば、迷光等のノイズの影響を排除し、より再生の精度を高くすることができる。
【0055】
〔実施形態2〕
本実施形態では、複数の波長のレーザ光源を用いる場合について説明する。
【0056】
(物体光および蛍光の記録)
図4は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置2の構成を示す模式図である。デジタルホログラフィ装置2は、軸外し型(off-axis型)のデジタルホログラフィ装置である。デジタルホログラフィ装置2は、記録装置20(デジタルホログラフィ記録装置)と再生装置11とを備える。記録装置20は、撮像装置12、波長λ1のレーザ光源LS1、波長λ2のレーザ光源LS2(第1光源)、波長λ3のレーザ光源LS3(第2光源)、および光学系を備える。
【0057】
光学系は、ミラー等の複数の光学素子を備え、波長λ1〜λ3のレーザ光(コヒーレント光)を被写体13および撮像装置12へ導く。具体的には、光学系は、複数の光学素子として、ビームスプリッタBS1〜BS2、およびミラーM1〜M9、ビームエキスパンダBE1〜BE4、および結像素子15を備える。ミラーM5〜M9は、ダイクロイックミラーまたは偏光ビームスプリッタからなってもよい。
【0058】
波長λ1〜λ3のレーザ光は、ミラーM4、M5およびビームスプリッタBS1によって同軸に揃えられる。波長λ1〜λ3のレーザ光は、ビームスプリッタBS1によって物体照明光と参照光とに分割される。
【0059】
波長λ1〜λ3の物体照明光は被写体13に照射される。被写体13からの波長λ1〜λ3の物体光は、結像素子15およびビームスプリッタBS2を通過して、撮像装置12の撮像面に入射する。
【0060】
波長λ2、λ3の物体照明光はまた、蛍光体14を励起する役割(励起光の役割)も果たす。加えて、蛍光体14は、波長λ1の物体照明光によっても励起されてもよい。蛍光体14は複数の物体照明光によって励起されるので、発する蛍光の強度が増強される。蛍光体14から発せられた蛍光は、物体光と同様に、結像素子15およびビームスプリッタBS2を通過し、撮像装置12の撮像面に入射する。
【0061】
波長λ1の参照光は、ミラーM6、M7を通過し、ミラーM2、ビームエキスパンダBE2およびミラーM3を経由し、ミラーM9、M8を通過し、ビームスプリッタBS2で反射され、撮像装置12の撮像面に入射する。
【0062】
波長λ2の参照光は、ミラーM6を通過し、ミラーM7で反射され、ビームエキスパンダBE3を経由し、ミラーM9で反射され、ミラーM8を通過し、ビームスプリッタBS2で反射され、撮像装置12の撮像面に入射する。
【0063】
波長λ3の参照光は、ミラーM6で反射され、ビームエキスパンダBE4を経由し、ミラーM8で反射され、ビームスプリッタBS2で反射され、撮像装置12の撮像面に入射する。
【0064】
記録装置20は、波長毎に参照光の経路を分けることで、波長毎に異なる入射角(x−z平面における入射角およびy−z平面における入射角)で参照光を撮像面に入射させる。
【0065】
撮像装置12はモノクロ撮像装置である。撮像装置12は、複数の波長に対応する複数のホログラムと結像された蛍光の像とが重畳した画像を撮像することになる。
【0066】
(物体光および蛍光の再生)
図5は、記録された画像を2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
図5において、横軸はx軸の空間周波数fxを示し、縦軸はy軸の空間周波数fyを示す。
【0067】
再生装置11は、記録された画像を2次元フーリエ変換することにより、フーリエ変換された画像(
図5)を得る。ホログラムと蛍光の像とを含む画像の空間周波数面において、各波長λ1〜λ3の0次回折光の空間スペクトル、各波長λ1〜λ3の物体光波(1次回折光)の空間スペクトル、各波長λ1〜λ3の共役像(−1次回折光)の空間スペクトル、ならびに、蛍光の空間スペクトルが存在する。
【0068】
各波長λ1〜λ3の0次回折光の空間スペクトルは原点を中心に分布し、互いに重なっている。蛍光の空間スペクトルもまた、その多くが原点を中心に分布する。それゆえ、0次回折光の空間スペクトルと蛍光の空間スペクトルとは、空間周波数面において、少なくとも一部が互いに重なって分布する。
【0069】
一方、λ1〜λ3の物体光波の空間スペクトルは、各波長の参照光の入射角(物体光の光軸と参照光の光軸との間の角度)に応じて、互いに異なる位置に現れる。例えば撮像面に入射する参照光がx軸方向に傾いていれば、fxの高周波側に物体光波の空間スペクトルが現れる。同様に撮像面に入射する参照光がy軸方向に傾いていれば、fyの高周波側に物体光波の空間スペクトルが現れる。各波長の物体光波の空間スペクトルが分離可能なように(重ならないように)、各波長の入射角が異なるように記録装置20は構成される。
【0070】
再生装置11は、フーリエ変換された画像から、波長毎に物体光波の空間スペクトルを抽出する。それゆえ、再生装置11は、波長毎に、抽出した物体光波の空間スペクトルから各画素の物体光の複素振幅を求めることができる。
【0071】
再生装置11は、各波長の0次回折光成分を求め、フーリエ変換された画像から各波長の0次回折光成分を除去することにより、蛍光の空間スペクトルを抽出することができる。このようにして、複数の波長のホログラムと蛍光の像とが重畳している場合でも、再生装置11は、各波長の物体光および蛍光を分離し、再生することができる。デジタルホログラフィ装置2は、被写体13の3次元形状のカラーイメージングを行うと共に、蛍光の画像(モノクロ)を得ることができる。また、各波長の参照光の入射角が同じ場合でも、波長差に応じて空間周波数が異なることを利用して各波長の物体光波の空間スペクトルを分離しても良い。また、物体光と蛍光、または各波長の物体光同士の空間スペクトルが一部重畳する場合、重畳する部分を除いて空間スペクトルを抽出し像を再生しても良い。
【0072】
〔実施形態3〕
本実施形態では、複数の波長のレーザ光源およびカラー撮像装置を用いる場合について説明する。
【0073】
(物体光および蛍光の記録)
図6は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置3の構成を示す模式図である。デジタルホログラフィ装置3は、軸外し型(off-axis型)のデジタルホログラフィ装置である。デジタルホログラフィ装置3は、記録装置30(デジタルホログラフィ記録装置)と再生装置11とを備える。記録装置30は、撮像装置32、波長λ1のレーザ光源LS1、波長λ2のレーザ光源LS2、波長λ3のレーザ光源LS3、および光学系を備える。
【0074】
光学系は、ミラー等の複数の光学素子を備え、波長λ1〜λ3のレーザ光(コヒーレント光)を被写体13および撮像装置32へ導く。具体的には、光学系は、複数の光学素子として、ビームスプリッタBS1〜BS2、およびミラーM1〜M5、ビームエキスパンダBE1〜BE2、および結像素子15を備える。
【0075】
物体照明光、物体光および蛍光の経路は、実施形態2と同様である。本実施形態では、実施形態2とは異なり、波長λ1〜λ3の参照光は、同じ経路を通り、互いに同軸で撮像面に入射する。ただし、物体光の光軸と参照光の光軸との間には角度差がある。
【0076】
本実施形態では、実施形態2とは異なり、撮像装置32はカラー撮像装置である。撮像装置32は、R(赤)のサブ画素、G(緑)のサブ画素、およびB(青)のサブ画素毎に撮像を行い、カラー画像を生成する。カラー画像には、Rチャネルの情報、Gチャネルの情報、Bチャネルの情報が含まれており、カラー画像から各色の画像を分離することができる。ここで、波長λ1の光はRチャネルにのみ記録され、波長λ2の光はGチャネルにのみ記録され、波長λ3の光はBチャネルにのみ記録されるとする。蛍光はその波長に応じて1つまたは複数のチャネルに記録される。
【0077】
例えば、Rチャネルの画像は、波長λ1の波長のホログラムと蛍光の像とが重畳した画像である。例えば、Gチャネルの画像は、波長λ2の波長のホログラムと蛍光の像とが重畳した画像である。例えば、Bチャネルの画像は、波長λ3の波長のホログラムのみを含む画像である。
【0078】
再生装置11は、Rチャネルの画像から、上記実施形態と同様に、波長λ1の物体光と蛍光とを分離し、再生することができる。Gチャネルの画像についても同様である。再生装置11は、Bチャネルの画像から、波長λ3の物体光を再生することができ、結果的に、蛍光の画像としては真っ暗な画像を得る。
【0079】
再生装置11は、物体光または蛍光について、RGBの再生像を合成することで、カラーの再生像を得ることができる。デジタルホログラフィ装置3は、被写体13の3次元形状のカラーイメージングを行うと共に、蛍光のカラー画像を得ることができる。もちろん、RチャネルおよびGチャネルに加えて、Bチャネルの画像が、波長λ3の波長のホログラムと蛍光の像とが重畳した画像である場合も、同様にして蛍光のカラー画像を得ることができる。
【0080】
〔実施形態4〕
本実施形態では、フーリエ変換を用いない再生方法について説明する。本実施形態の再生装置11は、参照光の位相が空間的に異なる(撮像面の画素毎に参照光の位相が異なる)場合に、空間的位相シフト法を用いて物体光の複素振幅を求める。なお、記録装置は、実施形態1と同様の構成とすることができる。以下に具体的に説明する。
【0081】
(記録装置)
図20の(a)は、撮像装置の画素と参照光との関係を説明する模式図であり、
図20の(b)は撮像装置の撮像面(または記録画像)の一部における参照光の位相シフト量を説明する模式図である。
図20の(b)の1つの矩形は1つの画素に対応する。
【0082】
撮像装置の撮像面には、複数の画素12aが配列している。例えば、参照光がz軸に対してx軸方向に傾いている場合、x軸方向において、画素12a毎に参照光の位相が異なる。例えば、x−z平面における入射角θが4d・sinθ=λを満たす場合、ある画素12aにおける参照光の位相を基準(0)とすると、x軸方向に沿って、参照光の位相が0、π/2、π、3π/2である画素が並ぶ。dは画素ピッチである。この基準からの位相のずれを位相シフト量と呼ぶ。記録画像のホログラムにおける参照光の位相シフト量も同様に、
図20の(b)に示すようになる。
【0083】
なお、参照光の光軸をx軸およびy軸の両方向に傾けると、参照光の位相は斜めにずれていく。位相シフト量の差はπ/2に限らない。また、物体光と参照光の光軸が揃ったin-line型の光学系において、空間光変調素子アレイ、ガラスまたは波長板等の位相をシフトさせる素子のアレイ、タルボット効果を起こす回折素子、あるいは、偏光子アレイ等を利用して
図20の(c)に示すような参照光の位相分布の記録画像を得てもよい。また、参照光の代わりに、物体光の光軸を傾けるか、物体光路に位相シフト素子アレイを設けるかによって、物体光に位相ずれを生じさせてもよい。
【0084】
(再生装置)
図21は、本実施形態の再生装置11が行う再生処理のフローを示す図である。
図22は、再生処理のフローの概要を示す図である。
図22における矩形は一部を拡大して示される画像の画素を表し、矩形の中の数値は位相シフト量を示す。ここでは、x軸方向(水平方向)の隣接画素において、位相シフト量の差が2π/3である場合を例にして説明する。記録画像には、物体光および位相がシフトした参照光が干渉したホログラムと、蛍光の像とが重畳して記録されている。
【0085】
再生装置11は、記録画像から、位相シフト量が同じ画素を抽出し、位相シフト量毎に、複数の画像を得る。再生装置11は、複数の画像について、画素の間の画素値を補間し、補間された複数の画像を得る(S11)。
【0086】
再生装置11は、空間的位相シフト法を用いて、互いに位相シフト量が異なる補間された複数の画像から物体光の複素振幅の分布を得る(S12)。この際、ホログラムのみから物体光の複素振幅を求める空間的位相シフト法の公知の式を利用することができる。再生装置11は、物体光の複素振幅分布から、被写体の再生像を得ることができる。
【0087】
再生装置11は、物体光の複素振幅分布と既知の参照光の強度分布と参照光の位相シフト量とから、ホログラムの光強度Ihの分布を求める(S13)。再生装置11は、記録画像からホログラムの光強度分布を減算(ホログラムを除去)することにより、蛍光の像を得る(S14)。このようにして、再生装置11は、ホログラムと蛍光の像とが重畳した記録画像から、物体光と蛍光の像とを再生することができる。
【0088】
フーリエ変換の処理は計算処理の負荷が大きい。本実施形態によれば、再生処理においてフーリエ変換を必要としないので、高速に物体光および蛍光の像の分離・再生を行うことができる。そのため、本実施形態の再生装置11は、物体光および蛍光の像のリアルタイムでの動画像再生を可能にする。
【0089】
(変形例)
上記では、画素を抽出・補間する場合を例に挙げて説明した。さらなる再生処理負荷の低減を目的として、補間処理を行わずに物体光と蛍光の像とを分離・再生する例について説明する。
【0090】
図23は、拡大した記録画像の一部における参照光の位相シフト量を示す図である。参照光の光軸をx軸およびy軸の両方向に傾けると、参照光の位相シフト量の分布は、
図23に示すような分布になる。
【0091】
記録画像の画素値I(x、y)は、蛍光の像の光強度If(x、y)およびホログラムの光強度Ih(x、y)の和である。x、yは画素の座標を示す。
I(x,y)=If(x,y)+Ih(x,y) (2)
Ih(x,y)=|Uo(x,y)|
2+|Ur(x,y)|
2
+2Ao(x,y)Ar(x,y)cos{φo(x,y)−φr(x,y)} (3)
ここで、物体光の複素振幅をUo(x,y)=Ao(x,y)exp{jφo(x,y)}とし、参照光の複素振幅をUr(x,y)=Ar(x,y)exp{jφr(x,y)}とした。Ao、Arは振幅を表し、φo、φrは位相を表す。jは虚数単位である。Mをx軸方向の画素数、Nをy軸方向の画素数とし、0≦x≦M−1、0≦y≦N−1とする(x、yは画素番地(整数))。
【0092】
再生装置11は、対象画素(x、y)の近傍にある画素の値を利用して、空間的位相シフト法によって物体光の複素振幅を算出する。具体的には以下の式にて対象画素の物体光を算出する。
・(x+y)÷4の余りが0のとき、
Uo(x,y)=
[{I(x,y)−I(x+1,y+1)}+j{I(x+1,y)+I(x,y+1)−I(x,y)−I(x+1,y+1)}]
/{4Ar(x,y)} (4)
・(x+y)÷4の余りが1のとき、
Uo(x,y)=
[−{I(x+1,y)+I(x,y+1)−I(x,y)−I(x+1,y+1)}+j{I(x,y)−I(x+1,y+1)}]
/{4Ar(x,y)} (5)
・(x+y)÷4の余りが2のとき、
Uo(x,y)=
[−{I(x,y)−I(x+1,y+1)}−j{I(x+1,y)+I(x,y+1)−I(x,y)−I(x+1,y+1)}]
/{4Ar(x,y)} (6)
・(x+y)÷4の余りが3のとき、
Uo(x,y)=
[{I(x+1,y)+I(x,y+1)−I(x,y)−I(x+1,y+1)}−j{I(x,y)−I(x+1,y+1)}]
/{4Ar(x,y)} (7)
となる。これによって、再生装置11は、物体光の複素振幅を求めることができる。再生装置11は、物体光の複素振幅分布と既知の参照光の強度分布と参照光の位相シフト量(参照光の位相)とから、ホログラムの光強度Ihの分布を求める。式(2)より、再生装置11は、記録画像の画素値Iからホログラムの光強度Ihを減算することにより、蛍光の像の光強度Ifを求める。また、参照光の強度分布にむらがある場合、記録画像から参照光の強度分布を減算した後に空間的位相シフト法の計算をしてもよい。これにより、参照光の強度のむらによる出力される像の画質劣化の問題を緩和することができる。
【0093】
この変形例によれば、フーリエ変換および画素の補間処理を行わずに済むので、より再生処理の負荷を低減することができ、より高速に再生を行うことができる。
【0094】
〔シミュレーション1〕
本発明の実施形態1に基づくホログラムの記録および再生のシミュレーション結果について説明する。ここでは、
図1に示すデジタルホログラフィ装置1を用いると仮定する。
【0095】
図7は、シミュレーションに用いる被写体を示す。
図7の(a)は、被写体の反射光画像(波長λ1の物体光の画像)を示し、
図7の(b)は、被写体の蛍光の画像を示し、
図7の(c)は、被写体の高さ分布を示す。例えば、「C」の文字の箇所からは、波長λ1の物体光はほとんど反射されないが、蛍光は強く出射される。通常のカメラまたは人の目で被写体を観察すると、
図8に示す画像が認識され、反射光(物体光)と蛍光とを分離して識別することができない。なお、
図7の(c)において、被写体の高さ(z方向における撮像装置側への高さ)は、明暗で表されている。明るい箇所は暗い箇所よりも高い。
【0096】
シミュレーションの条件は以下の通りである。光源の波長はλ=532nmである。撮像素子の画素数は2048×2048(横×縦)、画素ピッチは横方向2.2μm、縦方向2.2μmである。off−axis型のホログラム記録配置を仮定し、参照光の入射角度はz軸からx軸に(x−z平面で)、y軸に(y−z平面で)それぞれ6.05×10
−2radである。物体照明光と参照光の強度比は1:1である。参照光強度分布画像は、計測の事前または事後に記録する。反射光および蛍光の強度は0〜255(階調数は256)である。物体の最大高さは200nmである。単一の光源により反射光と蛍光を得るため、本シミュレーションでは以下の条件を設ける。反射光と蛍光のエネルギー総和は物体照明光のエネルギーよりも少ないものとする。単一光源より射出された光は励起光の役割と反射光およびそのホログラムを生成する役割とを兼ねる。また、物体光と蛍光とを分離するための、物体光または蛍光を遮光するフィルタを設けない。そのため、フィルタによる蛍光の光量損失がなく明るい画像記録が期待できる。
【0097】
上記の条件の下、計算機によって、
図9の(a)に示す記録画像を記録し、再生装置11により再生像を計算するシミュレーションを行った。なお、ホログラムの記録も計算機によるシミュレーションによって行っている。記録画像は、ホログラムと蛍光の像とが重畳した画像である。
図9の(b)に記録画像の一部を拡大したものを示す。このように、記録画像には、干渉縞(ホログラム)が記録されている。
【0098】
図9の(a)の記録画像をフーリエ変換すると、
図10の(a)に示す画像(フーリエ変換画像)が得られる。反射光の成分は、ホログラムとして記録されているため、蛍光画像の成分とは分離して取得できる。フーリエ変換画像から反射光成分の空間スペクトル(右下の丸囲みの範囲)を抽出したものを逆フーリエ変換する。逆フーリエ変換された画像から、
図10の(b)に示す反射光画像(再生像)と、
図10の(c)に示す位相分布とが求められる。位相分布は、被写体の高さを用いた光の位相で表したものである。位相分布には3次元形状の情報が含まれるため、
図10の(c)より被写体の高さ情報が分かる。
【0099】
次に、
図11に示すように、記録画像(
図9の(a))から、0次回折光成分を減算し、フーリエ変換すると、
図12の(a)の画像を得る。このとき、0次回折光成分を減算せずに得られたフーリエ変換画像(
図10の(a))と異なり、画像中心部にある空間スペクトルの分布が変わる。これは、0次回折光成分が除去されたことにより、蛍光画像の空間スペクトルのみが中心部に残っていることを示す。すなわち、
図12の(a)のフーリエ変換画像から、蛍光画像の空間スペクトル(中央の丸囲みの範囲)のみを抽出し、抽出した空間スペクトルを逆フーリエ変換することにより、
図12の(b)の蛍光画像(再生像)を得た。
【0100】
定量的評価として、元の画像(
図7)に対する再生像の平均二乗誤差、相互相関係数、および信号対雑音比を計算した。反射光画像(再生像)の平均二乗誤差は8.6×10
−2、相互相関係数は1.00、信号対雑音比は56dBであった。蛍光画像(再生像)の平均二乗誤差は8.5×10
−2、相互相関係数は1.00、信号対雑音比は48dBであった。高さ分布(位相分布)の平均二乗誤差は2.7×10
−2nm、相互相関係数は1.00、信号対雑音比は79dBであった。以上より、動的な物体の瞬間の反射光画像、蛍光画像、3次元形状の情報を単一光源の記録装置により高精度に得られる。
【0101】
〔シミュレーション2〕
本発明の実施形態3に基づくホログラムの記録および再生のシミュレーション結果について説明する。ここでは、
図6に示すデジタルホログラフィ装置3を使用すると仮定する。
【0102】
図13は、シミュレーションに用いる被写体の反射光画像を示す。
図13の(a)は、被写体の反射光のR(赤)チャネルの画像を示し、
図13の(b)は、被写体の反射光のG(緑)チャネルの画像を示し、
図13の(c)は、被写体の反射光のB(青)チャネルの画像を示し、
図13の(d)は、RGBが色合成された被写体の反射光画像を示す。
図13の(d)では各色が単色(グレー)で表示されているため、色合成された画像のRBの成分が薄く見えるが、
図13の(d)は、各色の画像が合成されたものである。なお、他の色合成された画像でも同様である。
【0103】
図14は、シミュレーションに用いる被写体の蛍光の画像を示す。
図14の(a)は、被写体の蛍光のRチャネルの画像を示し、
図14の(b)は、被写体の蛍光のGチャネルの画像を示し、
図14の(c)は、被写体の蛍光のBチャネルの画像を示し、
図14の(d)は、RGBが色合成された被写体の蛍光画像を示す。
【0104】
図15は、被写体の高さ分布を示す。
図15において被写体の高さは、明暗で表されている。通常のカメラや人の目で被写体を観察すると、
図16に示す画像が認識され、反射光(物体光)と蛍光とを分離して識別することができない。
【0105】
シミュレーションの条件は以下の通りである。光源の波長はλ1=640nm、λ2=532nm、λ3=473nmである。Bayer型のカラーフィルタアレイが付されたカラーイメージセンサを撮像装置32として用いる。カラーフィルタアレイの各チャネルはλ1、λ2、λ3の3波長の光のうち2つの波長の光を遮光する。撮像素子の画素数は2048×2048(横×縦)、画素ピッチは横方向1.4μm、縦方向1.4μmである。off−axis型のホログラム記録配置を仮定し、参照光の入射角度はx軸、y軸それぞれ6.05×10
−2radである。物体照明光と参照光の強度比は1:1である。各波長の参照光の強度分布画像は、計測の事前または事後に各波長毎に独立して記録する。反射光および蛍光の強度は0から255(階調数256)である。被写体の最大高さは240nmである。各光源による光により反射光を得られ、3つの光源のうち2つの光源の光により蛍光体が励起されると仮定する。本シミュレーションでは各光源において、反射光と蛍光のエネルギー総和は物体照明光のエネルギーよりも少ないものとしている。また、反射光と蛍光で等しい波長を有する場合を想定している。例えば、λ3により発生した蛍光と、λ1による反射光は、等しい波長成分を含む条件を想定している。すなわち、反射光と蛍光を波長フィルタにより分離できない条件を想定している。なお、波長λ3の物体照明光により、シアンの蛍光(文字「A」)、黄緑色の蛍光(文字「0」)、黄色の蛍光(文字「B」)、および赤色の蛍光(文字「1」「2」)が生じるとする。波長λ2の物体照明光により、黄緑色の蛍光、黄色の蛍光、および赤色の蛍光が生じるとする。波長λ1の物体照明光は、蛍光体を励起しないとする。
【0106】
上記の条件の下、計算機によって、RGBの記録画像をカラーイメージセンサの各チャネルで記録し、再生像を計算するシミュレーションを行った。なお、ホログラムの記録も計算機によるシミュレーションによって行っている。各記録画像は、ホログラムと蛍光の像とが重畳した画像である。
【0107】
カラーイメージセンサのRGB各チャネルで記録された各色の記録画像から、色毎に、シミュレーション1と同様の手続きにより反射光画像、蛍光画像、高さ分布(位相分布)を再生する。Rチャネルの記録画像より
図17に示す画像を得た。Gチャネルの記録画像より
図18に示す画像を得た。Bチャネルの記録画像より
図19に示す画像を得た。
【0108】
図17の(a)は、Rチャネルの記録画像より得た反射光画像(再生像)であり、
図17の(b)は、Rチャネルの記録画像より得た蛍光画像(再生像)であり、
図17の(c)は、Rチャネルの記録画像より得た位相分布である。
図18の(a)(b)(c)は、それぞれGチャネルの記録画像より得た、反射光画像(再生像)、蛍光画像(再生像)、位相分布である。
図19の(a)(b)(c)は、それぞれBチャネルの記録画像より得た、反射光画像(再生像)、蛍光画像(再生像)、位相分布である。
図18の(c)および
図19の(c)の位相分布では、位相の折り畳み(位相が2πを超える位置で明から暗に変化する)が生じているため、中央が暗く表示されている。これらの位相分布からでも、位相接続を行うことで3次元形状の情報を得ることができる。
【0109】
各チャネルにおいて、反射光と蛍光とを分離・再生し、高さ分布(3次元形状)の情報も得られることが分かる。定量的評価として、元の画像(
図13〜15)に対する各チャネルにおける再生像の平均二乗誤差、相互相関係数、および信号対雑音比を計算した。Rチャネルの反射光画像の平均二乗誤差は5.8×10
−1、相互相関係数は1.00、信号対雑音比は30dBであった。Rチャネルの蛍光画像の平均二乗誤差は9.6×10
−1、相互相関係数は1.00、信号対雑音比は29dBであった。Gチャネルの反射光画像の平均二乗誤差は6.0×10
−1、相互相関係数は1.00、信号対雑音比は31dBであった。Gチャネルの蛍光画像の平均二乗誤差は1.0、相互相関係数は1.00、信号対雑音比は30dBであった。Bチャネルの反射光画像の平均二乗誤差は6.9×10
−1、相互相関係数は1.00、信号対雑音比は30dBであった。Bチャネルの蛍光画像の平均二乗誤差は5.9×10
−1、相互相関係数は1.00、信号対雑音比は29dBであった。高さ分布(位相分布)の平均二乗誤差は3.4×10
−1nm、相互相関係数は1.00、信号対雑音比は58dBであった。以上より、動的な物体の瞬間のカラー反射光画像、カラー蛍光画像、3次元形状の情報を得られる。
【0110】
〔シミュレーション3〕
本発明の実施形態4に基づくホログラムの記録および再生のシミュレーション結果について説明する。ここでは、
図1に示すデジタルホログラフィ装置1を使用すると仮定する。
【0111】
シミュレーションに用いる被写体(反射光画像、蛍光画像、および高さ分布)は、シミュレーション1(
図7)のものと同じである。また、記録におけるシミュレーションの条件もシミュレーション1と同じである。すなわち、本シミュレーションに用いる記録画像はシミュレーション1(
図9)のものと同じである。
【0112】
上記の条件の下、計算機によって、
図9の(a)に示す記録画像を記録し、再生装置11により再生像を計算するシミュレーションを行った。なお、ホログラムの記録も計算機によるシミュレーションによって行っている。記録画像は、ホログラムと蛍光の像とが重畳した画像である。
【0113】
再生装置11により、空間的位相シフト法(上式(4)〜(7))を用いて、記録画像から物体光の複素振幅(の分布)を求めた。
図24の(a)は、物体光の複素振幅を用いて再生した被写体の反射光画像(再生像)であり、
図24の(b)は、物体光の複素振幅を用いて計算した位相分布である。反射光画像および位相分布の成分(物体光の情報)はホログラムとして記録されており、空間的位相シフト法の信号処理を施すと蛍光画像から分離してこれらを得ることができる。位相分布には3次元形状の情報が含まれるため、
図24の(b)より被写体の高さ情報が分かる。
【0114】
再生装置11により、物体光の複素振幅、参照光の強度分布および参照光の位相から、ホログラムの画像(ホログラムの光強度)を求めた。そして、記録画像からホログラムの画像を減算することにより、
図25に示す蛍光画像(再生)を得た。これは、ホログラムと蛍光の像とが重畳した記録画像から、ホログラムの成分を除去する処理に対応する。このように、再生装置11によって、ホログラムと蛍光の像とが重畳した記録画像から、反射光画像(物体光の再生像)と蛍光画像とを分離して再生することができた。
【0115】
定量的評価として、元の画像(
図7)に対する再生像の平均二乗誤差、相互相関係数、および信号対雑音比を計算した。反射光画像の平均二乗誤差は5.8×10
−1、相互相関係数は0.999、信号対雑音比は39dBであった。蛍光画像の平均二乗誤差は7.5×10
−1、相互相関係数は0.999、信号対雑音比は29dBであった。高さ分布(位相分布)の平均二乗誤差は3.4×10
−1nm、相互相関係数は1.00、信号対雑音比は57dBであった。以上より、動的な物体の瞬間の反射光画像、蛍光画像、3次元形状の情報を単一光源の記録装置により高精度に得られる。
【0116】
〔ソフトウェアによる実現例〕
再生装置11の処理は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0117】
後者の場合、再生装置11は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0118】
〔まとめ〕
本発明の一態様に係るデジタルホログラフィ記録装置は、物体光が生じるように物体に物体照明光を照射する光源と、参照光と前記物体光とが干渉することにより形成されるホログラムと、蛍光の像とを撮像する撮像装置とを備え、前記物体照明光はまた、前記物体に含まれる蛍光体を励起する。
【0119】
上記の構成によれば、ホログラムと蛍光の像との両方を分離再生可能な状態で同時に撮像することができる。また、1つの光源から出射される物体照明光が、物体光を生じさせる役割と、蛍光体を励起する励起光としての役割とを兼ねる。そのため、上記デジタルホログラフィ記録装置は小型化に有利である。
【0120】
前記光源は、単一波長の前記物体照明光を出射する構成であってもよい。
【0121】
前記撮像装置は、前記物体光と参照光とが干渉することにより形成されるホログラムと、前記蛍光体が発する蛍光の像とが重畳した画像を撮像する構成であってもよい。
【0122】
前記蛍光を前記撮像装置の撮像面に結像させる結像光学素子を備える構成であってもよい。
【0123】
上記の構成によれば、記録された画像から結像した蛍光の像を再生することができる。
【0124】
前記撮像装置は、カラーフィルタを用いないモノクロ撮像装置であってもよい。
【0125】
上記の構成によれば、カラーフィルタを用いずとも、物体光と蛍光とを分離・再生することができる。また、撮像装置は、カラーフィルタによる蛍光の光量損失がなく、明るい画像を記録することができる。
【0126】
前記光源は、前記物体に第1波長の物体照明光を照射する第1光源であり、前記第1波長とは異なる第2波長の物体光が生じるように前記物体に前記第2波長の物体照明光を照射する第2光源を備え、前記撮像装置は、前記第1波長のホログラムと、前記第2波長のホログラムと、前記蛍光の像とを撮像し、前記第1波長の物体照明光および前記第2波長の物体照明光の両方は、前記蛍光体を励起する構成であってもよい。
【0127】
上記の構成によれば、2つの波長の物体光による複数のホログラムを得ることができ、物体の分光計測を行うことができる。また、2つの波長の物体照明光によって蛍光体を励起することができるため、蛍光体が発する蛍光の強度を増強することができる。
【0128】
前記撮像装置に入射する前記物体光の光軸に対して、前記撮像装置に入射する前記参照光の光軸は傾いている構成であってもよい。
【0129】
上記の構成によれば、記録画像の空間周波数面において、精度よく物体光波の空間スペクトルを抽出することができる。そのため、物体光の再生の精度を高くすることができる。
【0130】
本発明の一態様に係るデジタルホログラフィ記録装置は、物体に物体照明光を照射する光源と、参照光と前記物体からの物体光とが干渉することにより形成されるホログラムと、前記物体に含まれる蛍光体が発する蛍光の像とが重畳した画像を撮像する撮像装置とを備える。
【0131】
上記の構成によれば、ホログラムと蛍光の像との両方を分離再生可能な状態で同時に撮像することができる。
【0132】
本発明の一態様に係るデジタルホログラフィ再生装置は、参照光と物体光とが干渉することにより形成されるホログラムと、蛍光の像とが重畳した画像から、空間的位相シフト法を用いて前記物体光の複素振幅を求め、前記物体光の複素振幅から前記ホログラムの強度(光強度分布)を求め、前記画像から前記ホログラムを除去する(ホログラムのの光強度分布を減算する)ことにより、前記蛍光の像(を示す画像)を得る。
【0133】
上記の構成によれば、ホログラムと蛍光の像とが重畳した画像から、高速に物体光の情報および蛍光の情報を分離することができる。
【0134】
本発明の一態様に係るデジタルホログラフィ再生装置は、参照光と物体光とが干渉することにより形成されるホログラムと、蛍光の像とが重畳した画像をフーリエ変換し、フーリエ変換された前記画像から、前記物体光の空間スペクトルを抽出し、抽出された前記物体光の空間スペクトルを逆フーリエ変換することで、前記物体光の複素振幅を求め、前記物体光の複素振幅から0次回折光成分を求め、フーリエ変換された前記画像から0次回折光成分を除去し、0次回折光成分が除去されたフーリエ変換された前記画像から、前記蛍光の像の空間スペクトルを抽出する。
【0135】
上記の構成によれば、ホログラムと蛍光の像とが重畳した画像から、精度よく物体光の情報および蛍光の情報を分離することができる。
【0136】
前記デジタルホログラフィ再生装置は、抽出された前記蛍光の像の空間スペクトルを逆フーリエ変換することで、前記蛍光の像を得る構成であってもよい。
【0137】
上記の構成によれば、ホログラムと蛍光の像とが重畳した画像から、物体光および蛍光の像を分離して再生することができる。
【0138】
本発明の一態様に係るデジタルホログラフィ再生装置は、参照光と物体光とが干渉することにより形成されるホログラムと、蛍光の像とが重畳した画像をフーリエ変換し、フーリエ変換された前記画像から、前記物体光の空間スペクトルを抽出し、抽出された前記物体光の空間スペクトルを逆フーリエ変換することで、前記物体光の複素振幅を求め、前記物体光の複素振幅から前記ホログラムの強度を求め、前記画像から前記ホログラムを除去することにより、前記蛍光の像を得る。
【0139】
本発明の一態様に係るデジタルホログラフィ記録方法は、光源から出射された物体照明光を物体に照射することにより物体光を生じさせるとともに、前記物体照明光によって前記物体に含まれる蛍光体を励起するステップと、参照光と前記物体光とが干渉することにより形成されるホログラムと、前記蛍光体が発する蛍光の像とを撮像するステップとを含む。
【0140】
本発明の一態様に係るデジタルホログラフィ記録方法は、物体照明光を物体に照射するステップと、参照光と前記物体からの物体光とが干渉することにより形成されるホログラムと、前記物体に含まれる蛍光体が発する蛍光の像とが重畳した画像を撮像するステップとを含む。
【0141】
本発明の一態様に係るデジタルホログラフィ再生方法は、参照光と物体光とが干渉することにより形成されるホログラムと、蛍光の像とが重畳した画像から、空間的位相シフト法を用いて前記物体光の複素振幅を求めるステップと、前記物体光の複素振幅から前記ホログラムの強度を求めるステップと、前記画像から前記ホログラムを除去することにより、前記蛍光の像を得るステップとを含む。
【0142】
本発明の一態様に係るデジタルホログラフィ再生方法は、参照光と物体光とが干渉することにより形成されるホログラムと、蛍光の像とが重畳した画像をフーリエ変換するステップと、フーリエ変換された前記画像から、前記物体光の空間スペクトルを抽出するステップと、抽出された前記物体光の空間スペクトルを逆フーリエ変換することで、前記物体光の複素振幅を求めるステップと、前記物体光の複素振幅から0次回折光成分を求め、フーリエ変換された前記画像から0次回折光成分を除去するステップと、0次回折光成分が除去されたフーリエ変換された前記画像から、前記蛍光の像の空間スペクトルを抽出するステップとを含む。
【0143】
本発明の一態様に係るデジタルホログラフィ再生方法は、参照光と物体光とが干渉することにより形成されるホログラムと、蛍光の像とが重畳した画像をフーリエ変換するステップと、フーリエ変換された前記画像から、前記物体光の空間スペクトルを抽出するステップと、抽出された前記物体光の空間スペクトルを逆フーリエ変換することで、前記物体光の複素振幅を求めるステップと、前記物体光の複素振幅から前記ホログラムの強度を求め、前記画像から前記ホログラムを除去することにより、前記蛍光の像を得るステップとを含む。
【0144】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。