特許第6629077号(P6629077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6629077擬似同期化力電圧型コンバータおよびそのコントローラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629077
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】擬似同期化力電圧型コンバータおよびそのコントローラ
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20200106BHJP
【FI】
   H02M7/48 E
   H02M7/48 R
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-5466(P2016-5466)
(22)【出願日】2016年1月14日
(65)【公開番号】特開2017-127141(P2017-127141A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2019年1月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年9月16日に平成27年電気学会電力技術・電力系統技術合同研究会にて発表 平成27年10月17日に平成27年度(第66回)電気・情報関連学会中国支部連合大会にて発表 平成27年11月14日に第58回自動制御連合講演会にて発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)、「研究領域:分散協調型エネルギー管理システム構築のための理論及び基盤技術の創出と融合展開」、「研究課題:太陽光発電予測に基づく調和型電力系統制御のためのシステム理論構築」、「研究題目:パワエレの高活用化による柔軟な送配電系統運用手法・技術」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】餘利野 直人
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−100234(JP,A)
【文献】 特開2015−33252(JP,A)
【文献】 関崎真也、中村優希、佐々木豊、造賀芳文、餘利野直人,インバータによる系統安定化実験環境の構築,平成26年度(第65回)電気・情報関連学会中国支部連合大会講演論文集,一般社団法人 情報処理学会 中国支部,2014年10月 1日,p.59−60
【文献】 野口敬太、佐々木豊、造賀芳文、餘利野直人,同期化力インバータを用いた系統安定化制御,平成25年度(第64回)電気・情報関連学会中国支部連合大会講演論文集,一般社団法人 電気学会 中国支部,2013年10月 1日,p.67−68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を交流電力に変換して電力系統に交流電力を供給する電圧型コンバータのコントローラであって、
前記電圧型コンバータの出力周波数が目標周波数となるように前記電圧型コンバータをドループ制御するためのガバナ指令値を制御するガバナ部と、
同期機の動揺方程式に基づいて、前記電圧型コンバータの有効電力出力の指令値および実測値、前記目標周波数、および前記ガバナ指令値から前記電圧型コンバータの出力電圧位相を算出する出力電圧位相算出部と、
前記電力系統の電圧が目標電圧となるように前記電圧型コンバータの変調率を制御するレギュレータ部と、
前記変調率および前記出力電圧位相に基づいてパルス変調信号を生成し、該パルス変調信号に従って前記電圧型コンバータにおけるインバータにおけるスイッチング素子をスイッチング制御するスイッチング制御部とを備えたコントローラ。
【請求項2】
前記インバータが単相インバータである請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記出力電圧位相算出部が前記インバータの入力側の直流電圧および直流電流の各実測値から前記電圧型コンバータの有効電力出力の実測値を算出するものである請求項1または請求項2に記載のコントローラ。
【請求項4】
蓄電デバイスと、
前記蓄電デバイスから供給される直流電圧を任意の直流電圧に変換するDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータの出力電圧を交流電圧に変換するインバータと、
前記インバータにおけるスイッチング素子をスイッチング制御する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコントローラとを備えた擬似同期化力電圧型コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を交流電力に変換して電力系統に交流電力を供給する電圧型コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統において、同期機が持つ慣性は系統の安定運用にとって重要な役割を担っている。すなわち、同期機は、同期化力により電力系統と同期して運転を行うことで電力系統の安定運用に寄与している。
【0003】
一方、太陽光発電システムを始めとする再生可能エネルギーが電力系統に導入されつつある。基本的に、再生可能エネルギーは一旦蓄電されてインバータにより交流電力に変換されて電力系統に供給される。今後、再生可能エネルギーを交流電力に変換するパワーエレクトロニクス機器(電圧型コンバータ)が大量に電力系統に連系していくことが予想される。しかし、そのようなパワーエレクトロニクス機器は同期機とは異なり本質的に慣性あるいは同期化力を有しない。このため、パワーエレクトロニクス機器が増えると電力系統内の同期化力が減少していくことが懸念される。そこで、パワーエレクトロニクス機器に同期機の挙動を模擬させ、同期化力が減少した電力系統を安定化する手法が提案されている(例えば、非特許文献1および2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】野口敬太、佐々木豊、造賀芳文、餘利野直人、「同期化力インバータを用いた系統安定化制御」、平成25年度電気・情報関連学会中国支部連合大会予稿集、pp.67−68、2013
【非特許文献2】関崎真也、中村優希、佐々木豊、造賀芳文、餘利野直人、「インバータによる系統安定化実験環境の構築」、平成26年度電気・情報関連学会中国支部連合大会講演論文集CD−ROM、pp.59−60、2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
同期機の挙動を模擬する従来の電圧型コンバータは系統との同期にPLL(Phase Locked Loop)を用いている。しかし、PLL方式の電圧型コンバータは、大規模電源から離れた地域(weak grid)において不安定であるという問題がある。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明は、PLLを用いずに電圧型コンバータに同期機の挙動を模擬させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に従った擬似同期化力電圧型コンバータおよびそのコントローラは以下の通りである。すなわち、直流電力を交流電力に変換して電力系統に交流電力を供給する電圧型コンバータのコントローラは、電圧型コンバータの出力周波数が目標周波数となるように電圧型コンバータをドループ制御するためのガバナ指令値を制御するガバナ部と、同期機の動揺方程式に基づいて、電圧型コンバータの有効電力出力の指令値および実測値、目標周波数、およびガバナ指令値から電圧型コンバータの出力電圧位相を算出する出力電圧位相算出部と、電力系統の電圧が目標電圧となるように電圧型コンバータの変調率を制御するレギュレータ部と、変調率および出力電圧位相に基づいてパルス変調信号を生成し、該パルス変調信号に従って電圧型コンバータにおけるインバータにおけるスイッチング素子をスイッチング制御するスイッチング制御部とを備えたものである。
【0008】
これによると、電圧型コンバータを同期機の動揺方程式に基づいて制御することができるとともに、ガバナ部およびレギュレータ部により電力系統の周波数と電圧を維持させることができる。
【0009】
上記コントローラにおいて、インバータが単相インバータであってもよい。
【0010】
これによると、当該コントローラは単相電圧型コンバータを制御することができる。
【0011】
上記コントローラにおいて、出力電圧位相算出部がインバータの入力側の直流電圧および直流電流の各実測値から電圧型コンバータの有効電力出力の実測値を算出するものであってもよい。
【0012】
これによると、電圧型コンバータの有効電力出力の実測値を容易かつ安定的に算出することができる。
【0013】
また、擬似同期化力電圧型コンバータは、蓄電デバイスと、蓄電デバイスから供給される直流電圧を任意の直流電圧に変換するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータの出力電圧を交流電圧に変換するインバータと、インバータにおけるスイッチング素子をスイッチング制御する上記のコントローラとを備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、PLLを用いずに電圧型コンバータに同期機の挙動を模擬させることができ、weak gridにおいても安定的に動作可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る擬似同期化力電圧型コンバータの構成図
図2】擬似同期化力電圧型コンバータのコントローラの制御ブロック図
図3】検証用の単相マイクログリッドの模式図
図4】単相マイクログリッドにおける各単相VSCの出力周波数を示すグラフ
図5】単相マイクログリッドにおける各単相VSCの出力電圧を示すグラフ
図6】単相マイクログリッドにおける各単相VSCの有効電力出力を示すグラフ
図7】検証用の三相マイクログリッドの模式図
図8】三相マイクログリッドにおける各単相VSCの出力周波数を示すグラフ
図9】三相マイクログリッドにおける各単相VSCの出力電圧を示すグラフ
図10】三相マイクログリッドにおける各単相VSCの有効電力出力を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0017】
なお、発明者らは、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0018】
≪擬似同期化力電圧型コンバータの構成≫
図1は、本発明の一実施形態に係る擬似同期化力電圧型コンバータ10の構成を示す。「擬似同期化力電圧型コンバータ」とは、同期機の挙動を模擬して擬似的に同期化力を持つようにした電圧型コンバータ(VSC:Voltage Source Converter)のことをいう。なお、便宜のため、以下では擬似同期化力電圧型コンバータ10のことを単にVSC10と参照する。
【0019】
VSC10は、再生可能エネルギー(RES:Renewable Energy Source)11を交流電力に変換して電力系統に交流電力を供給するパワーエレクトロニクス機器である。例えば、VSC10は、蓄電デバイス1、DC/DCコンバータ2、インバータ3、およびコントローラ4を備えている。
【0020】
蓄電デバイス1は、RES11から供給される電力を蓄え、DC/DCコンバータ2に電力を供給するデバイスである。蓄電デバイス1は、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタや鉛バッテリなどで構成することができる。
【0021】
DC/DCコンバータ2は、RES11および蓄電デバイス1から電力を受け、それを任意の直流電圧に変換して出力する。RES11の供給電力がDC/DCコンバータ2の出力電力よりも小さければ不足電力が蓄電デバイス1から供給される。逆に、RES11の供給電力がDC/DCコンバータ2の出力電力よりも大きければ余剰電力が蓄電デバイス1に充電される。
【0022】
インバータ3は、複数のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)31を有している。これらIGBT31がスイッチング動作することで、DC/DCコンバータ2から供給される直流電圧が交流電圧に変換される。より詳細には、インバータ3は単相インバータであり、DC/DCコンバータ2の出力電圧を単相交流電圧に変換する。すなわち、VSC10は単相VSCである。このため、VSC10は、マイクログリッドを始めとして任意の相に連系することができる。インバータ3の交流出力は、フィルタ12により高調波電圧および高調波電流が除去され、さらに変圧器13により任意の交流電圧に変圧されて図略の電力系統に供給される。
【0023】
コントローラ4は、パルス変調されたゲート信号を生成してインバータ3における各IGBT31をスイッチング制御する。コントローラ4は、下述するように同期機の動揺方程式に従って各種デジタル演算を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)などで実現することができる。コントローラ4の制御系は、系統の周波数維持のためのガバナおよび系統電圧維持のためのAVR(Automatic Voltage Regulator)を含み、擬似慣性(virtual inertia)発生ループを形成している。
【0024】
(ガバナを含んだvirtual inertia発生ループ)
本質的に三相機器である同期機の挙動を、直接単相制御系として適用することはできない。単相VSCに同期機の挙動を真似させるために、同期機巻線のうち1相を単相系統に接続し、その他の巻線を開放した状態での運転を想定する。この場合、実際の同期機は同期運転を維持することはできないが、VSCはその内部動的回転系モデルに基づいた動作により同期運転を可能とする。本着想に基づいた単相VSCの新制御系の設計には、動揺方程式に基づいたモデルを採用する。三相VSC制御系についても、同様の方法で構築可能である。ここで、VSC動作の平衡点近傍で線形化した、ガバナを含む動揺方程式は(1)〜(4)式で与えられる。
【0025】
【数1】
【0026】
ここで、ΔθVSCは、VSC出力電圧位相の平衡点からの微小変動量、MVSCは擬似慣性定数、DVSCは擬似ダンピング係数、KVSCは擬似同期化係数、Pは擬似機械入力、Pは電気的出力、Pgovはガバナ出力、Kgovはガバナゲイン、Tgovはガバナ時定数、ωrefはVSC周波数指令値、ωVSCはVSC出力電圧の周波数である。ガバナ動作を表す(3)(4)式は一次遅れ特性を有しており、ガバナ出力PgovはωVSCのωrefからの偏差により求められる。
【0027】
(1)〜(4)式において、入力信号として制御系はPのみを必要とする。出力電圧位相θVSCはセンサ情報により演算したPに基づいて計算される。三相VSCおよび単相VSCの安定的な同期運転には、それぞれ、三相および単相の瞬時有効電力出力Pを正確に計算することが重要になる。三相VSCについては、瞬時有効電力Pはdq/abc変換により容易に計算することができる。単相VSCの瞬時有効電力出力の計算方法については次に述べる。
【0028】
(直流側測定法)
交流の周波数がf1ph[Hz]の単相電圧、電流により計算される瞬時有効電力は2f1ph[Hz]で振動するため、単相VSCの瞬時有効電力出力を安定的に演算することは困難である。また、マイクログリッドが電力系統と接続する場合、あるいは電力系統から解列する際には電圧位相が瞬間的に跳躍する。この位相跳躍もまたVSC出力有効電力の振動を引き起こす。(1)式における有効電力出力Pの変動はΔθVSCの変動を引き起こし、VSCの同期運転を不安定なものにするため、有効電力出力変動によるVSC動作に対する悪影響を抑制するために単相VSCの有効電力出力Pは直流側で測定する。Pは、VSCの直流電圧VDCと直流電流IDCの積P=VDCDCとして計算される。Pはパワーデバイスによるスイッチングノイズを含むため、ローパスフィルタを採用し、スイッチングノイズを除去したものを有効電力出力として扱う。
【0029】
(AVR)
VSC出力電圧VVSCを維持するためのAVRは、(5)(6)式に基づきVSCの変調率mVSCを制御する。
【0030】
【数2】
【0031】
ここで、KAVRはAVRゲインであり、TAVRは時定数である。変調率mVSCは、VVSCが指令値Vrefと一致するように一次遅れ系により制御される。制御系の安定性を向上させるために、変調率mAVRはフィードフォワード制御系により、定格の変調率1.0と一次遅れ系の出力の和として得られる。VSC出力電圧が不安定に変動することを回避するため、変調率mAVRは上下限制約により制限される。変調率は通常mAVR=[0.0,1.0]の範囲にあるが、必要に応じてmmaxを制御することで過変調も可能である。
【0032】
(制御系)
図2は、コントローラ4の制御ブロックを示す。当該制御ブロックは(1)(3)(5)(6)式を具現化したものである。
【0033】
コントローラ4は、ガバナ部41、出力電圧位相算出部42、レギュレータ部43、およびスイッチング制御部44を含む。
【0034】
ガバナ部41は、VSC10の出力周波数(ωVSC)が目標周波数(ωref)となるようにVSC10をドループ制御するためのガバナ指令値(Pgov)を制御する。すなわち、ガバナ部41は(3)式の演算を行う。
【0035】
出力電圧位相算出部42は、同期機の動揺方程式に基づいて、VSC10の有効電力出力の指令値(P)および実測値(P)、目標周波数(ωref)、およびガバナ指令値(Pgov)からVSC10の出力電圧位相(θVSC)を算出する。すなわち、出力電圧位相算出部42は(1)式の演算を行う。
【0036】
ここで、出力電圧位相算出部42は、VSC10におけるインバータ3の入力側の直流電圧および直流電流の各実測値(VDC,IDC)からVSC10の有効電力出力の実測値(P)を算出することができる。なお、三相VSCの場合には、出力電圧位相算出部42は、dq/abc変換によりVSC10の有効電力出力の実測値(P)を算出することができる。
【0037】
レギュレータ部43は、VSC10の出力電圧(VVSC)が目標電圧(Vref)となるようにVSC10の変調率(mVSC)を制御する。すなわち、レギュレータ部44は(5)(6)式の演算を行う。
【0038】
スイッチング制御部44は、レギュレータ部43により算出された変調率(mVSC)および出力電圧位相算出部42により算出された出力電圧位相(θVSC)に基づいてパルス変調信号を生成し、該パルス変調信号に従ってVSC10におけるインバータ3におけるIGBT31をスイッチング制御する。具体的には、スイッチング制御部44は、mVSCsinθVSCを計算し、PWM(Pulse Width Modulation)変調によりIGBT31のゲート信号を生成する。
【0039】
≪マイクログリッド運用での検証結果≫
次に、本実施形態に係る擬似同期化力電圧型コンバータ10(以下、単相VSCあるいはVSCという)を複数連系した単相VSC群によるマイクログリッド運用について行った数値シミュレーションによる検証結果について説明する。
【0040】
(単相マイクログリッド)
計算条件シミュレーションに用いる単相マイクログリッドモデルを図3に示す。本モデルでは、3台の単相VSCがab相に連系している。三相の無限大母線とVSCにより、三相および単相負荷(ab相)の負荷に電力が供給されている。無限大母線は三相平衡電圧源(線間電圧:6600[V]、周波数:60[Hz])である。負荷は抵抗としてモデル化する。3台のVSCはフィルタ(Rfil+jLfil)と変圧器を介してab相に接続されている。VSCの直流側は定電圧源VDCとしてモデル化する。変圧器の巻線比は400/6600である。無限大母線は開閉器を介して線路に接続している。シミュレーションに用いるパラメータを表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
数値シミュレーションにおいて、3台のVSCは時間t=0.00[s]に系統に連系し、時間t=5.00[s]において無限大母線の接続点で三相地絡故障が発生する。その後、t=5.05[s]において開閉器(Switch gear)が開放され、地絡故障は除去される。これにより、本系統は3台の単相VSCにより運用されるマイクログリッドの単独運転に移行する。時間t=5.05[s]からt=10.0[s]までは単独運転が継続し、t=10.0[s]において開閉器が閉じることで、単相マイクログリッドは再度無限大母線に連系され、系統連系運転に移行する。大規模なじょう乱発生のVSCの挙動を検証することを目的とし、開閉器の閉操作はマイクログリッドと無限大母線の間の同期無しに行われる。
【0043】
図4は単相VSC#1,#2,#3の出力周波数を示している。図4より、VSCの周波数は単相マイクログリッドが無限大母線から解列したt=5.05[s]および無限大母線に再接続したt=10.0[s]において振動していることが分かる。解列による需要の増加を補償するために擬似慣性エネルギーが消費されることで、周波数がt=5.05[s]において低下している。VSC#3の擬似慣性定数MVSCは小さく,またVSC#3は無限大母線付近の線路に接続しているため、VSC#3の周波数が最も大きく変動している。
【0044】
単相VSCの出力電圧を図5に示す。t=5.05[s]に単相マイクログリッドが無限大母線から解列しているが、電圧はAVRにより維持されている。位相同期なしに単相マイクログリッドが無限大母線に再連系するt=10.0[s]には電圧位相跳躍が発生しているが、提案する直流側測定法により単相VSCは脱調することなく系統と同期して運転を継続している。
【0045】
VSCの有効電力出力を図6に示す。系統連系運転時(〜t=5.05[s],t=10.0[s]〜)の単相VSCは、出力が擬似機械入力Pと等しくなるように制御を行っている。t=5.05[s]後の単独運転時においては、3台の単相VSCが有効電力出力を増加させ、ガバナのドループ特性により決まる新たな平衡点に収束している。VSCが無限大母線に再連系するt=10.0[s]において有効電力出力は振動を始め、徐々に元の値に収束している。
【0046】
(複数台単相VSCによる三相マイクログリッド)
シミュレーションに用いる三相マイクログリッドモデルを図7に示す。本モデルは3台の単相VSCを有しており、1台ずつab,bc,ca相に接続されている。三相無限大母線とVSCが三相負荷と単相負荷(ab,bc,ca相)に電力を供給している。無限大母線は三相平衡の電圧源(線間電圧:6600[V]、周波数:60[Hz])としてモデル化している。負荷は抵抗負荷とする。3台のVSCはフィルタと変圧器を介して線路に連系している。VSCの直流側は定電圧源VDCとしてモデル化する。変圧器の巻線比は400/6600である。開閉器の動作によりマイクログリッドは系統連系運転と単独運転を切り替える。シミュレーションに用いるパラメータを表2に示す。ただし、表1における単相VSC#1のパラメータを図7に示した全てのVSCに用いている。
【0047】
【表2】
【0048】
3台のVSCは時間t=0.00[s]に系統に連系する。t=5.00[s]に3線地絡故障を発生させ、t=5.05[s]に除去する。t=5.05[s]に開閉器が開放されることにより単独運転に移行し、3台の単相VSCにより三相マイクログリッドが運用される。三相マイクログリッドはt=10.0[s]に無限大母線に再連系するが、マイクログリッドと無限大母線間の位相同期は行わない。
【0049】
図8は単相VSC#1,#2,#3の出力周波数を示している。図8より、通常動作および単独運転時において各相のVSCは独立に動作している。単相VSCの出力電圧を図9に示す。単独運転時において、三相平衡電圧が各相で独立しているVSC群により維持されている。VSCの有効電力出力を図10に示す。t=5.05[s]後の単独運転において、3台の単相VSCは有効電力出力を増加させ、新しい平衡点へ遷移している。
【0050】
以上の検証結果は、本実施形態に係るVSC10が同期機の挙動を模擬した動作をすることを示している。また、本実施形態に係るVSC10は、PLLを用いないため、weak gridにおいても安定的に動作することができる。また、本実施形態に係るVSC10は、単相VSCとして実現可能であることから、任意の相に連系可能であり、VSC群の運転により強固に同期された三相マイクログリッドを構築可能である。そして、独立したVSC群による単相運転を可能にする本実施形態に係るVSC10の柔軟性は、故障を含むさまざまな条件下において電力系統のレジリエンスを大きく改善することができる。
【0051】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0052】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0053】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
10 擬似同期化力電圧型コンバータ
1 蓄電デバイス
2 DC/DCコンバータ
3 インバータ
4 コントローラ
41 ガバナ部
42 出力電圧位相算出部
43 レギュレータ部
44 スイッチング制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10