特許第6629298号(P6629298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629298
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】水性界面活性剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20200106BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20200106BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20200106BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20200106BHJP
   A61Q 9/02 20060101ALI20200106BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20200106BHJP
   C11D 1/28 20060101ALI20200106BHJP
   C11D 1/10 20060101ALI20200106BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20200106BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20200106BHJP
   B01F 17/08 20060101ALI20200106BHJP
   B01F 17/28 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   A61K8/46
   A61K8/44
   A61Q5/02
   A61Q19/10
   A61Q9/02
   A61Q11/00
   C11D1/28
   C11D1/10
   C11D1/04
   C11D3/04
   B01F17/08
   B01F17/28
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-511239(P2017-511239)
(86)(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公表番号】特表2017-530949(P2017-530949A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】EP2015068291
(87)【国際公開番号】WO2016030172
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2018年8月1日
(31)【優先権主張番号】14182366.6
(32)【優先日】2014年8月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100176197
【弁理士】
【氏名又は名称】平松 千春
(72)【発明者】
【氏名】ベーラー,アンスガー
(72)【発明者】
【氏名】ブルン,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】スタニスラウスキ,デトレフ
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−236527(JP,A)
【文献】 特開2012−087094(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0157365(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第04009096(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0181873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
C11D 1/00−19/00
B01F 17/00−17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・一般式(I)
R1CH(SO3M1)COOM2 (I)
(式中、基R1は、6〜18個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状アルキル又はアルケニル基であり、基M1及びM2は、互いに独立に、H、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミンの群から選択される)
の1種以上のα-スルホ脂肪酸二塩(A)、
・一般式(II)
M3OOC-CH2-CH2-CH(NH-CO-R2)-COOM4 (II)
(式中、基R2は、7〜19個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状アルキル又はアルケニル基であり、基M3及びM4は、互いに独立に、H、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミンの群から選択される)
の1種以上のN-アシルグルタミン酸化合物(B)、
・水
を含む水性界面活性剤組成物であって、以下の条件:
水性界面活性剤組成物中の化合物(A)及び(B)の含量が、全水性界面活性剤組成物に対して、少なくとも5重量%であり;
水性界面活性剤組成物が、一般式(V)
R5CH(SO3M7)COOR6 (V)
(式中、基R5は、6〜18個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状アルキル又はアルケニル基であり、基R6は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状アルキル又はアルケニル基であり、基R6は、必然的に、3個超の炭素原子のものだけアルケニル基であってよく又は分岐していてよく、基M7は、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミンの群から選択される)
の1種以上のエステルスルホン酸塩(E)を含む場合、化合物(A)が、化合物(A)及び(E)の合計に対して50重量%以上まで存在しなければならず;
水性界面活性剤組成物中の化合物(B):(A)の重量比が、2:1〜6:1の範囲であり;
水性界面活性剤組成物のpHが、8以下であり;
水性界面活性剤組成物の23℃での平均透過率が、TurbiScan(登録商標) MA 2000を使用して測定して、少なくとも80%である
が適用される、前記水性界面活性剤組成物。
【請求項2】
式(II)における基R2が、11〜13個の炭素原子を有する飽和アルキル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(I)における基R1が、10〜16個の炭素原子を有する飽和直鎖状基であり、化合物(A)に関して、基R1がデシル又はドデシル基である化合物(A)の割合が、化合物(A)の全量に対して90重量%以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
基M1及びM2がNaである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
基M3及びM4がNaである、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
一般式(III)
R4COOM5 (III)
(式中、基R4は、7〜19個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状アルキル又はアルケニル基であり、基M5は、H、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミンの群から選択される)
の1種以上の化合物(C)を追加的に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
一般式(IV)
(M6)2SO4 (IV)
(式中、M6は、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミンの群から選択される)
の1種以上の硫酸の無機塩(D)を追加的に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物中の化合物(A)及び(B)の含量が、全組成物に対して8〜12重量%の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物中の化合物(B):(A)の重量比が、3:1〜4.5:1の範囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物のpHが、4.0〜7.0の範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物のpHが、4.5〜5.5の範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
化粧品のための並びにまた洗剤及び洗浄剤のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
毛髪用シャンプー、シャワー用ジェル、せっけん、合成洗剤、ウォッシングペースト、ウォッシングローション、スクラブ製剤、フォームバス、オイルバス、シャワーバス、シェービングフォーム、シェービングローション、シェービングクリーム及びデンタルケア製品の形態の化粧品のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
硬質表面を清浄化するための低いpHを有する製品、例えば、浴槽及びトイレ洗浄剤などのための、並びにまた、衛生設備において使用するための洗浄及び/又はフレグランスゲルのための、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定含量のα-スルホ脂肪酸二塩及び特定のN-アシルグルタミン酸化合物を有する水性界面活性剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アニオン性界面活性剤は、洗剤及び洗浄剤において使用されているのを別にしても、最も広まっている界面活性化合物の一部であり、また、化粧品の分野においても広範な目的で使用されている。特に化粧品において使用される慣用的なアニオン性界面活性剤は、アルキルエーテルサルフェート(アルキルポリエーテルサルフェート、脂肪族アルコールポリグリコールエーテルサルフェート(略してエーテルサルフェートともいう))の塩である。それらは、強力な発泡能力、高い清浄化力、硬度及び油脂(grease)に対する低感受性を特徴とし、例えば毛髪用シャンプー、フォーム又はシャワーバスなどの化粧品を製造するために広範に使用されるが、また、手による食器洗い用洗剤においても使用される。
【0003】
多くの現在の用途のために、良好な界面活性効果は別として、さらなる要件がアニオン性界面活性剤に課される。特に化粧品においては、高い皮膚科学的適合性が要求される。さらに、水への妥当な溶解性、化粧品において使用される活性成分及び助剤のできるだけ多くとの良好な適合性、良好な発泡能力及び良好な増粘性が一般に望ましい。さらに、少なくとも部分的に、生物供給源、また、特に再生可能な原料から生産できるアニオン性界面活性剤に対するニーズがある。さらに、アルコキシル化された基をもたず、したがって、特に、それらの生産のためのエチレンオキシドの使用を不要にする界面活性剤に対するニーズもある。
【0004】
いわゆるα-スルホ脂肪酸二塩(「二塩」)は、公知の部類の界面活性剤であるが、水への溶解度が非常に低い(例えば、F.Schambil and M.J.Schwuger, Tenside Surf. Det. 27(1990年)、6巻、380〜385頁を参照されたい):したがって、例えば、20℃でのC14-ジ-Na塩の水への溶解度は0.7%しかない(381頁のグラフを比較されたい)。これは、実用上、例えば化粧品のために、満足できないほど低いものである。したがって、二塩は、それらの低い水溶解度のために、従来、アニオン性界面活性剤として水性界面活性剤配合物に使用されておらず、透明で安定な配合物の調製にも使用されていなかった。
【0005】
E.G. Su等(SOFW Journal 139 4-2013, 30頁及び32〜36頁)は、アミノ酸系界面活性剤を含む、サルフェートを含まない皮膚に優しい洗浄組成物を含む配合物を記載している。ここでは3種のアミノ酸系界面活性剤、すなわちグリシネート、サルコシネート及びグルタメートが研究されている。この研究では、これらの3種の界面活性剤は、洗浄組成物におけるラウリルエーテルサルフェートの代用品として好適であるという結論を出している。この論文の焦点はグリシネートであり、グルタメートは一般的に言及されているに過ぎない。グルタメートとα-スルホ脂肪酸二塩の潜在的組み合わせは開示されていない。
【0006】
本出願人による研究は、アミノ酸系界面活性剤(特にN-アシルグルタメート)の発泡能力はpHに大きく依存しており、化粧用濯ぎ落とし(リンスオフ(rinse-off))配合物についての広いpH範囲には不十分であることを示している。濯ぎ落とし配合物は、良好な発泡挙動、特に優れた初期の発泡挙動に依存し、使用後に皮膚を洗い流す、シャワーバス、毛髪用シャンプー等のための配合物を意味すると理解される。
【0007】
本出願人による研究は、アミノ酸系界面活性剤(特にN-アシルグルタメート)は、低pHでは、安定で透明な配合物に困難を伴って組み込むことができるに過ぎないことも示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】F.Schambil and M.J.Schwuger, Tenside Surf. Det. 27(1990年)、6巻、380〜385頁
【非特許文献2】E.G. Su et al. SOFW Journal 139 4-2013, 30頁及び32〜36頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の複合的な目的は、以下に指定する特性を特徴とする水性界面活性剤組成物であって、これらの特性のそれぞれが以下の技術的特徴を構成する組成物を提供することであった:
・ 良好な透明性。本発明のためには、これは、TurbiScan(登録商標) MA 2000(Formulactionからの測定装置)を用いた23℃での定量的決定により、水性界面活性剤組成物が少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、特に少なくとも88%の平均透過率を有することを意味すると理解すべきである。
・ 良好な発泡能力。これについては、化粧品の分野において、発泡能力は様々な態様を意味することが理解され得るものであり、特に泡体積、泡安定性、泡弾力性、泡の水分含量、泡の光学的特徴、例えば細孔の大きさを使用することができ、また、泡を評価するための泡センサーも使用することができることに留意することができる。表面活性配合物が初期発泡の間、大きい泡体積をもつことが特に望ましい。初期の発泡挙動は、特に、洗浄又は身繕いの間に皮膚と接触するが、次いで再度洗い落とされる製品(例えば、シャワー用ジェル、シャワー用配合物、シャンプー、液状せっけん等)を意味するものと理解される、いわゆる濯ぎ落とし製品において非常に重要な役割を果たす。この分野では、特に、できるだけ大きい泡体積が望ましい。実際、初期発泡は、比較的短期間(数秒から1分)内に起こる。典型的には、初期発泡の間、手、皮膚及び/又は毛髪の間でこすることによって、シャワー用ジェル又はシャンプーは拡がり、発泡される。優れた初期の発泡挙動は、本発明の関連で根本的に重要である。実験室において、界面活性剤水溶液の初期の発泡挙動は、例えば、撹拌、振とう、ポンプ輸送、ガス流による泡立て又は別の仕方で比較的短期間内で溶液を撹拌することによって、評価することができる。本発明のために用いられる泡試験は、実験の部でより詳細に説明する。
・ pH8以下での加水分解安定性
・ 任意の視覚的変化(例えば、濁り、変色、相分離、透明性の喪失など)を起こさない、室温(23℃)で少なくとも12週間にわたる保存寿命。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、最初に、
・一般式(I)
R1CH(SO3M1)COOM2 (I)
(式中、基R1は、6〜18個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状アルキル又はアルケニル基であり、基M1及びM2は、互いに独立に、H、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミンの群から選択される)
の1種以上のα-スルホ脂肪酸二塩(A)、
・一般式(II)
M3OOC-CH2-CH2-CH(NH-CO-R2)-COOM4 (II)
(式中、基R2は、7〜19個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状アルキル又はアルケニル基であり、基M3及びM4は、互いに独立に、H、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミンの群から選択される)
の1種以上のN-アシルグルタミン酸化合物(B)、
・水
を含む水性界面活性剤組成物であって、以下の条件:
・水性界面活性剤組成物中の化合物(A)及び(B)の含量が、全水性界面活性剤組成物に対して、少なくとも5重量%であり;
・水性界面活性剤組成物が、一般式(V)
R5CH(SO3M7)COOR6 (V)
(式中、基R5は、6〜18個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状アルキル又はアルケニル基であり、基R6は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状アルキル又はアルケニル基であり、基R6は、必然的に、3個超の炭素原子のものだけアルケニル基であってよく又は分岐していてよく、基M7は、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミンの群から選択される)
の1種以上のエステルスルホン酸塩(E)を含む場合、化合物(A)が、化合物(A)及び(E)の合計に対して50重量%以上まで、特に90重量%以上まで存在しなければならず;
・水性界面活性剤組成物中の化合物(B):(A)の重量比が、2:1〜6:1の範囲であり;
・水性界面活性剤組成物のpHが、8以下であり;
・水性界面活性剤組成物の23℃での平均透過率が、TurbiScan(登録商標) MA 2000を使用して測定して、少なくとも80%である
が適用される、水性界面活性剤組成物を提供する。
【0011】
驚くべきことに、上記複合目的は、本発明による界面活性剤組成物によって、優れた形で達成された。その水性組成物が透明であり、濁っていないという事実から明らかなことに、二塩(A)を、相当に高い濃度でN-アシルグルタミン酸化合物(B)と一緒に使用することができるということは予測不可能であり、したがって、非常に驚くべきことであった。つまり、二塩(A)の溶解性はN-アシルグルタミン酸化合物(B)との組み合わせにより有意に増加する。本発明による組成物は、相乗的発泡挙動も示す:両界面活性剤は、個別には、濯ぎ落とし範囲の用途のために満足できる発泡挙動を有しないが、本発明の界面活性剤(A)及び(B)の組み合わせは、優れた初期の発泡挙動を示すのである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
化合物(A)
本発明においてα-スルホ脂肪酸二塩と称する化合物(A)は、本発明による水性界面活性剤組成物に必須である。それらは上記式(I)
R1CH(SO3M1)COOM2 (I)
を有し、式中、基R1は、6〜18個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状アルキル又はアルケニル基であり、基M1及びM2は、互いに独立に、H、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミンの群から選択される。この関連で、特に好ましいアルカノールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びモノイソプロパノールアミンである。
【0013】
一実施形態では、基R1がアルケニル基である水性界面活性剤組成物中の化合物(A)の割合が、化合物(A)の全量に対してが3重量%以下であるという条件が適用される。
【0014】
好ましい実施形態では、式(I)の基R1は、10〜16個の炭素原子を有する飽和直鎖状基であり、化合物(A)に関して、基R1がデシル及び/又はドデシル基である化合物(A)の割合が化合物(A)の全量に対して90重量%以上である。
【0015】
好ましくは、式(I)の基M1及びM2は、Naである。
【0016】
化合物(A)は、当業者に適切に公知であるすべての方法によって調製することができる。ここで、特に好ましい調製方法は、対応するカルボン酸の硫酸化である。ここで、対応するカルボン酸、特に対応する脂肪酸をガス状三酸化硫黄と反応させる。この三酸化硫黄は、好ましくは、脂肪酸に対するSO3のモル比が1.0:1〜1.1:1の範囲となるような量で使用される。次いで、酸性の硫酸化生成物であるこの方法で得られる粗生成物を、部分的に又は完全に中和する。水性NaOHで完全に中和することが好ましい。望むなら、精製ステップ及び/又は漂白(生成物の望ましい浅い色を調整するために)を施すことも可能である。
【0017】
特に好ましい実施形態では、化合物(A)は工業用グレードの形態で使用する。これは、対応するカルボン酸、特に天然の脂肪酸がガス状三酸化硫黄で硫酸化され、その結果として、得られる酸性の硫酸化生成物の部分的又は完全な中和に続いて、化合物(A)、(C)及び(D)の混合物がもたらされることを意味する。反応パラメーター(特に、カルボン酸と三酸化硫黄のモル比、また反応温度も)の対応する調整によって、化合物(A)、(C)及び(D)の比を制御することができる。化合物(C)及び(D)は、以下の「好ましい実施形態」の章で説明する。
【0018】
本発明において、以下の組成:
・ (A)の含量は60〜100重量%の範囲であり、
・ (C)の含量は0〜20重量%の範囲であり、
・ (D)の含量は0〜20重量%の範囲である、
を有するα-スルホ脂肪酸二塩のそれらの工業用グレード混合物が好ましい。但し、この混合物中の成分(A)、(C)及び(D)の合計は100重量%である。
【0019】
以下:
・ (A)の含量は70〜80重量%の範囲であり、
・ (C)の含量は10〜15重量%の範囲であり、
・ (D)の含量は10〜15重量%の範囲である、
のように構成されたそれらの工業用グレード混合物が非常に特に好ましい。但し、この混合物中の成分(A)、(C)及び(D)の合計は100重量%である。
【0020】
化合物(B)
本発明において、N-アシルグルタミン酸化合物と称する化合物(B)は、本発明による水性界面活性剤組成物に必須である。それらは、上記式(II)
M3OOC-CH2-CH2-CH(NH-CO-R2)-COOM4 (II)
を有し、式中、基R2は、7〜19個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状アルキル又はアルケニル基であり、基M3及びM4は、互いに独立に、H、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミンの群から選択される。この関連で、特に好ましいアルカノールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びモノイソプロパノールアミンである。一実施形態では、基M3及びM4はいずれもNa(ナトリウム)である。
【0021】
一実施形態では、基R2がアルケニル基である化合物(B)の割合が、水性界面活性剤組成物中の化合物(B)の全量に対して3重量%以下であるという条件が適用される。
【0022】
化合物(B)は、当業者に適切に公知であるすべての方法によって調製することができる。
【0023】
一実施形態では、式(II)の基R2は、11〜13個の炭素原子を有する飽和直鎖状基である。
【0024】
好ましい実施形態
一実施形態では、本発明による水性界面活性剤組成物は、化合物(A)、(B)及び水の他に、一般式(III)
R4COOM5 (III)
の1種以上の化合物(C)を追加的に含む。
【0025】
式(III)では、基R4は、7〜19個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状アルキル又はアルケニル基であり、基M5は、H、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミンの群から選択される。この関連で、特に好ましいアルカノールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びモノイソプロパノールアミンである。
【0026】
一実施形態では、本発明による水性界面活性剤組成物は、化合物(A)、(B)及び水の他に、一般式(IV)
(M6)2SO4 (IV)
(式中、M6は、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミンの群から選択される)
の1種以上の硫酸の無機塩(D)を追加的に含む。この関連で、特に好ましいアルカノールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びモノイソプロパノールアミンである。
【0027】
好ましい実施形態では、本発明による水性界面活性剤組成物は、化合物(A)、(B)、(C)及び(D)を含む。ここで、化合物(A)の基M1及びM2、化合物(B)の基M3及びM4、化合物(C)の基M5及び化合物(D)の基M6が、Na(ナトリウム)である場合が特に好ましい。
【0028】
上で説明したように、組成物中の化合物(A)及び(B)の含量は、全組成物に対して少なくとも5重量%である。組成物中の化合物(A)及び(B)の含量が、全組成物に対して5〜50重量%の範囲、特に5〜20重量%の範囲、特に好ましくは8〜12重量%の範囲であることが好ましい。
【0029】
上で述べたように、組成物中の化合物(B):(A)の重量比は、2:1〜6:1の範囲である。
【0030】
好ましい実施形態では、組成物中の化合物(B):(A)の重量比は、3:1〜4.5:1の範囲である。
【0031】
組成物のpHは、8以下である。pHは、好ましくは7以下に調整される。好ましい実施形態では、組成物のpHは、4.5〜7.0、特に4.5〜5.5の範囲である。
【0032】
望むなら、本発明による水性界面活性剤組成物は、構造に関して、上記化合物(A)、(B)、(D)又は(E)に属さない1種以上の他の界面活性剤を追加的に含むことができる。これらの界面活性剤はアニオン性、カチオン性、ノニオン性又は両性の界面活性剤であってよい。
【0033】
組成物の使用
本発明の他の主題は、化粧品のため、また、洗剤及び洗浄剤のための上記組成物の使用である。
【0034】
化粧品に関しては、ここでとりわけ、毛髪用シャンプー、シャワー用ジェル、せっけん、合成洗剤、ウォッシングペースト、ウォッシングローション、スクラブ製剤、フォームバス、オイルバス、シャワーバス、シェービングフォーム、シェービングローション、シェービングクリーム及びデンタルケア製品(例えば練り歯磨き、口腔洗浄薬など)の形態で存在するものが特に好ましい。
【0035】
洗浄剤に関しては、ここで特に、硬質表面を清浄化するための低いpHを有する製品、例えば、浴槽及びトイレ洗浄剤など並びにまた、衛生設備において使用するための清浄ゲル及び/又はフレグランスゲルが好ましい。
【実施例】
【0036】
使用した物質
完全Demin.水=完全脱塩水
SFA-I:天然C12/14脂肪酸をベースとした工業用グレードのα-スルホ脂肪酸二塩;組成:74重量%2-スルホラウリン酸二ナトリウム、13重量%ラウリン酸ナトリウム、11重量%硫酸ナトリウム、2重量%水。ここで、「ラウリン酸塩」という用語は、もとにある天然脂肪酸の混合物のC12/14重量比が70:30であることを意味する。
SFA-II:天然C12/14脂肪酸をベースとした精製α-スルホ脂肪酸二塩;組成:90重量%2-スルホラウリン酸二ナトリウム、5重量%ラウリン酸ナトリウム、0.2重量%硫酸ナトリウム、4.8重量%水。ここで、「ラウリン酸塩」という用語は、もとにある天然脂肪酸の混合物のC12/14重量比が70:30であることを意味する。
ACG: Plantapon ACG HC (ココイルグルタミン酸ナトリウム、41重量%有効成分、BASF PCNの市販品)。
【0037】
測定及び試験方法
pH:
標準的な市販のpH計を使用し、pHは、配合物、すなわち水性界面活性剤組成物中で直接測定した。
【0038】
均一性及び外観:
水性界面活性剤組成物の均一性及び外観の評価を、125mlの広口ガラス瓶中で視覚的に(肉眼で)実施した。ここで、均一性を最初に評価した。本発明において、均一性は、肉眼にはクリーミングが見られない、又は、沈殿物が発生しないことを意味すると理解される。組成物が均一であると評価された場合、それらの外観を、やはり、例えば、やや不透明(しかし、相変わらず依然として明らかに半透明)から無色透明(water-clear)までなどの属性で評価し、特徴づけした。
【0039】
透明性:
試料を初めに肉眼で観察した。この場合、明らかな曇り、結晶又は沈殿物は直接認識される。試料に固体沈殿物が明らかに存在しない場合、透明性をTurbiScan(登録商標) MA 2000(Formulactionの測定装置)を23℃で用いて定量的に決定した。試料は、少なくとも80%の平均透過率を有する場合、透明であると認定した。したがって、以下の表1の「透明」の記載は、平均透過率が少なくとも80%であったことを意味する。
【0040】
TurbiScan(登録商標) MA 2000を使用した透明性の定量的決定に関し、ここで、最初に、試験しようとする水性界面活性剤組成物の5ml試料を、その装置固有の測定用セルに入れ、気泡がすべて抜けるまで室温(23℃)で24時間静置した。次いで、入射光(波長850nm)の透過率を、20mm〜50mmの試料レベルにわたって測定した。この評価を、測定装置の製造業者によって供給されたTurbisoftソフトウェア(バージョン1.2.1.)を使用して実施した:各測定について、試料レベル超の透過率(%で)の平均値を、ソフトウェアでアウトプットする。この平均値を、本出願のための平均透過率と称する。ここで、透過率測定を各試料について3回繰り返し、この数値の平均値を、平均透過率について得られた値から出した。
【0041】
初期の発泡挙動の判定:
初期の発泡挙動を試験(ローター発泡法)するために、標準的な市販の測定装置を使用した(Sita泡試験器R 2000)。このために、まず、界面活性剤水溶液を以下のように調製した:試験しようとする各試料の1gの有効成分(使用した試料はSFA-I若しくはACG又はこれらの物質の混合物であった。以下を参照されたい;SFA-Iの場合、有効成分含量は(上述したように)、二塩含量を意味するものと理解される)を、20℃で、1リットルの完全脱塩水(=ドイツ硬度で0°の硬度を有する水)に溶解した。溶液のpHを希薄クエン酸溶液又は水酸化ナトリウム水溶液で所望の値に調整した。各値は表1及び2に示した。この方法で調製した溶液を30℃に加熱した。
【0042】
250mlの加熱したリザーバーを測定装置に移し、1300回転/分の速度で10秒間発泡させ、次いで存在する泡の体積を確認し(mlで)、次いで、さらに10秒間発泡させ、次いで存在する泡体積を確認する(mlで)等を行った。すなわち、発泡の間、泡レベルを10秒ごとに決定した。80秒間の発泡時間の後、測定を終了した。測定を、各試料について3回繰り返した。それぞれの場合、同じバッチからの新鮮な溶液を使用した。40、60及び80秒後の測定の結果を、これらの3回の測定による平均値として示した(表を参照されたい)。
【0043】
保存寿命:
界面活性剤組成物を23℃で12週間保存した。次いで、これらの組成物の2つのパラメーター、均一性及び外観の試験を実施した。次いで、両方のパラメーターが12週間の全期間にわたって変化なしのままであった場合、組成物は保存安定性があるとみなした。
【0044】
実施例
実施例1(本発明)
調製(バッチサイズ200g):
表1に記載の成分を完全脱塩水に撹拌しながら23℃で溶解させた(完全脱塩水=ドイツ硬度で0°の硬度を有する水)。次いで、クエン酸(50%溶液)の添加により、pHを表1に示した値に調整した。評価パラメーター(均一性、外観、保存寿命)は、表1に見ることができる。
【0045】
実施例2(本発明)
実施例1と同様の調製であるが、使用する成分の量は変更した(表1を参照されたい)。実施例1のようにクエン酸でpH調整した(表1で示した値に)。評価パラメーター(均一性、外観、保存寿命)は表1に見ることができる。
【0046】
【表1】
【0047】
比較例1及び2
実施例1と同様の調製であるが、ACG又はSFA Iだけを使用した(表2を参照されたい)。クエン酸でpH調整した(表2に示す値に)。評価したパラメーター(均一性、外観、保存寿命)は表2に見ることができる。
【0048】
【表2】
【0049】
実施例3〜7(本発明)
界面活性剤混合物ACG/SFA I又はACG/SFA IIの初期の発泡挙動のデータは表3から得ることができる。
【0050】
【表3】
【0051】
比較例3〜7
個別の界面活性剤ACG又はSFA Iの初期の発泡挙動のデータは表4から得ることができる。
【0052】
【表4】