特許第6629300号(P6629300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6629300ミラー機構及びミラー機構から熱流を放散する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629300
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】ミラー機構及びミラー機構から熱流を放散する方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20200106BHJP
   G02B 7/192 20060101ALN20200106BHJP
【FI】
   G03F7/20 503
   !G02B7/192
【請求項の数】24
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-513203(P2017-513203)
(86)(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公表番号】特表2017-535801(P2017-535801A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】EP2015068997
(87)【国際公開番号】WO2016050411
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年8月17日
(31)【優先権主張番号】102014219770.8
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】ヴィリー ハインテル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン ビーク
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/107762(WO,A1)
【文献】 特開2012−191040(JP,A)
【文献】 特開平02−100311(JP,A)
【文献】 特開平11−243052(JP,A)
【文献】 特開2011−176044(JP,A)
【文献】 特開2005−175187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー機構であって、
電磁放射線を反射するよう設けられたミラー面を有する少なくとも1つのミラー素子(1)と、
該少なくとも1つのミラー素子(1)を収容するよう設けられた頭部(2a)及び座部(2b)を含む少なくとも1つのキャリア要素(2)と、
該少なくとも1つのキャリア要素(2)を収容するマウント機構(3)と
を備え、少なくとも1つの挿入開口(3a)が前記マウント機構(3)に形成され、
前記キャリア要素(2)の前記座部(2b)は前記挿入開口(3a)に突入し、且つ
伝熱媒体を誘導するチャネルデバイス(4a)が、前記座部(2b)を囲む領域で前記マウント機構(3)に形成され
前記挿入開口(3a)の内壁が、前記マウント機構(3)に連結されたブシュ要素(3b)により形成されるミラー機構。
【請求項2】
請求項1に記載のミラー機構において、前記キャリア要素(2)はピン状コンポーネントとして形成され、前記座部(2b)は挿入方向に細くなることを特徴とするミラー機構。
【請求項3】
請求項2に記載のミラー機構において、前記座部(2b)は円錐形の外面を有することを特徴とするミラー機構。
【請求項4】
請求項3に記載のミラー機構において、前記座部(2b)を貫通する通過チャネル(5)が前記キャリア要素(2)に形成されることを特徴とするミラー機構。
【請求項5】
請求項1〜4の少なくとも1項に記載のミラー機構において、前記ブシュ要素(3b)は、前記マウント機構(3)に密封状に連結されることを特徴とするミラー機構。
【請求項6】
請求項に記載のミラー機構において、前記ブシュ要素(3b)は中空コーンブシュとして形成されることを特徴とするミラー機構。
【請求項7】
請求項に記載のミラー機構において、前記チャネルデバイス(4a)は、前記ブシュ要素(3b)の外側の領域に延びる切欠きにより少なくとも一部が形成されることを特徴とするミラー機構。
【請求項8】
請求項1〜7の少なくとも1項に記載のミラー機構において、前記ブシュ要素(3b)の部分に設けられた前記チャネルデバイス(4a)と連通するチャネルシステムが、前記マウント機構(3)に形成されることを特徴とするミラー機構。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のミラー機構において、前記ブシュ要素(3b)の外側領域に形成された前記チャネルデバイス(4a)は、前記ブシュ要素(3b)の周囲に延びることを特徴とするミラー機構。
【請求項10】
請求項1〜9の少なくとも1項に記載のミラー機構において、前記キャリア要素(2)は、前記ブシュ要素(3b)に密封状に挿入されることを特徴とするミラー機構。
【請求項11】
請求項1〜10の少なくとも1項に記載のミラー機構において、前記キャリア要素(2)に固定部が設けられ、前記キャリア要素(2)を前記マウント機構(3)に固定する保持力が、前記固定部を介して前記キャリア要素に導入されることを特徴とするミラー機構。
【請求項12】
請求項1〜11の少なくとも1項に記載のミラー機構において、延性材料から構成されたコーティングが、前記キャリア要素(2)の前記座部(2b)の領域に施されることを特徴とするミラー機構。
【請求項13】
請求項1〜11の少なくとも1項に記載のミラー機構において、弾性又は塑性変形可能な接触舌が、前記キャリア要素(2)の前記座部(2b)の領域に形成されていることを特徴とするミラー機構。
【請求項14】
請求項1〜13の少なくとも1項に記載のミラー機構において、局所チャネルシステムが前記キャリア要素(2)に形成されて、前記キャリア要素(2)の前記局所チャネルシステムに導入された伝熱媒体の物質の状態の変化に関連して前記頭部(2a)の領域から前記座部(2b)の領域への伝熱を補助することを特徴とするミラー機構。
【請求項15】
請求項1〜14の少なくとも1項に記載のミラー機構において、前記キャリア要素(2)及び前記マウント機構(3)は、前記キャリア要素(2)の回転位置、すなわち前記マウント機構(3)の前記挿入開口の長手方向軸に関する前記キャリア要素(2)の向きを定めるように相互に連携して形成されることを特徴とするミラー機構。
【請求項16】
請求項1〜15の少なくとも1項に記載のミラー機構において、用いられる冷却媒体は、液相から気相への相転移を有利に用いることができる、水、含水混合物、グリコール、ガス又はガス混合物、又は液体COであることを特徴とするミラー機構。
【請求項17】
請求項1〜16の少なくとも1項に記載のミラー機構において、前記マウント機構(3)により、複数のミラー素子(1)が平面又は曲面として表されるミラー面を形成するよう配置されることを特徴とするミラー機構。
【請求項18】
請求項1〜17の少なくとも1項に記載のミラー機構において、前記マウント機構(3)は、レーザ融着法の過程で単体から製造されることを特徴とするミラー機構。
【請求項19】
請求項1〜17の少なくとも1項に記載のミラー機構において、前記キャリア要素(2)の前記座部(2b)の周囲に延びるような壁部を含む前記マウント機構(3)は、レーザ融着法の過程で単体から製造されることを特徴とするミラー機構。
【請求項20】
請求項1〜17の少なくとも1項に記載のミラー機構において、ブシュ要素(3b)はそれぞれ、該ブシュ要素(3b)に螺旋経路に沿って延びる冷却チャネルを有し、レーザ融着法の過程で製造されることを特徴とするミラー機構。
【請求項21】
請求項1〜20の少なくとも1項に記載のミラー機構において、前記ミラー素子(1)は、正方形、矩形、菱形、六角形、丸形、又は楕円形の外形輪郭を有することを特徴とするミラー機構。
【請求項22】
複数のミラー素子を備えたミラー機構の領域から放熱する方法であって、前記ミラー素子で生じる熱をキャリア要素により最初に取り出してマウント機構の領域に誘導し、冷却媒体を前記マウント機構において前記キャリア要素に隣接する領域に誘導し、前記キャリア要素から前記マウント機構へ流れ込む熱流を冷却媒体を介して取り出す方法であって、
少なくとも1つの挿入開口が前記マウント機構に形成され、
前記挿入開口の内壁が、前記マウント機構に連結されたブシュ要素により形成される方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記冷却媒体の流量及び前記冷却媒体の入口温度を、制御工学に関して調整することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法において、前記冷却媒体の戻り温度を検出し、前記冷却媒体の流量を前記戻り温度に応じて調整することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にリソグラフィ投影露光装置のミラー機構に関する。特に、本発明はこの場合、ミラーアレイをそれぞれ担持した複数のミラー素子を組み合わせて、それに対応して大面積の、特に凹面のミラー系を形成することで、極紫外線スペクトル域の波長を有する光を反射するミラー機構であって、それらのミラーコンポーネントの光学活性領域が低粒子密度の雰囲気に囲まれるミラー機構に関する。さらに、本発明は、上記タイプのミラー機構の領域から熱流を放散する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積電子回路及び他の微細構造コンポーネントの製造に用いられるようなリソグラフィ投影露光装置は、レチクルに含まれる構造を概して縮小して感光層に結像し、上記感光層は、例えばシリコンウェーハ上に施すことができる。かかる投影露光装置の1つの例示的な構成は、特許文献1から既知である。
【0003】
投影露光装置を開発する主な目的の1つは、感光層上にリソグラフィ加工する構造の寸法のさらなる縮小が可能であることにある。かかる装置を用いて製造された微細構造コンポーネントの結果として可能な高い集積密度は、概して上記コンポーネントの性能をかなり向上させる。特に小さな構造サイズの製造には、用いる投影系の分解能が高いことが前提である。投影系の分解能は投影光の波長に逆比例するので、かかる投影露光装置の連続製品生産は、短波長化された投影光を用いる。現在の開発は、極紫外線スペクトル域(EUV)の波長を有する投影光を用いる投影露光装置の開発に向けられている。特に1nm〜30nmの波長、特に13.5nmの波長が、この場合に考慮される。
【0004】
投影系のビーム経路において適当な光源が発する光を誘導するために、複数のミラーアレイを備えたミラー機構を用いることが可能であり、各ミラーアレイは複数の近接した比較的小面積のミラーファセットを有し、ミラーファセットの光配向はそれぞれ単独で又は規定の群毎に制御下で可変である。上記ミラーファセットは、当該ミラーファセットに当たりそこで部分的に吸収される光に起因して、また各ミラーファセットに割り当てられたミラー調整デバイスの固有の電力消費の結果として、対応する投影系の動作において非常に加熱され得る。加熱は、例えばミラーアレイの、ミラーファセットの、又はミラー系全体の変形等の望ましくない作用につながる。さらに、高温がミラー系の感光層に損傷を与え得る。この場合、独国特許2は、ミラーファセットを囲む領域で生じる熱をガス流により放散することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10302664号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102013205214号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数のミラー素子を備えたミラー機構の場合に、大入熱の場合でもミラー素子の適温を確保することを可能にする解決手段を示すという課題に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、ミラー機構であって、
電磁放射線を反射するよう設けられたミラー面を有する少なくとも1つのミラー素子と、
少なくとも1つのミラー素子を収容するよう設けられた頭部及び座部を含む少なくとも1つのキャリア要素と、
少なくとも1つのキャリア要素を収容するマウント機構と
を備え、少なくとも1つの挿入開口がマウント機構に形成され、
キャリア要素の座部は上記挿入開口に突入し、且つ
伝熱媒体を誘導するチャネルデバイスが、座部を囲む領域でマウント機構に形成されるミラー機構により、本発明に従って解決される。
【0008】
これにより、ミラー素子の領域で生じる熱を効果的に放散することができ、さらにミラー素子をキャリア要素と組み合わせて、マウント機構に連結するか又は必要であればマウント機構から取り外すこともできることが有利なアセンブリを形成することができる、EUV投影露光装置のミラー機構を提供することが可能である。
【0009】
ミラー機構を通して誘導された冷却媒体の温度は、ミラー機構の設定温度に実質的に対応するように、また熱流の実現に必要な温度勾配がミラー素子の領域又は各キャリア要素の隣接領域における局所的に高いシステム温度から実質的に得られるように調整することができる。冷却能力は、その場合、冷却媒体の流れの調整により主に調整することができる。
【0010】
ミラー機構のさらに別の有利な実施形態によれば、キャリア要素はピン状コンポーネントとして形成され、座部は挿入方向に細くなる。この場合、座部は、コーン形すなわち円錐形の外面を有するように作ることができる。この場合、コーン角は、適度な軸力に対して座部の円錐形に延びる外周面と当該面に接触するマウント機構の内壁との間で比較的高い圧縮が生じるように規定される。
【0011】
コーン形又は円錐形の外面は、設置位置に達すると、特にこの場合に発生した取付け力の作用下で、座部と挿入開口の内壁とのできる限り密接な接触が生じるように幾何学的に作ることができる。この目的で、座部の領域では、挿入開口の内壁のできる限り密接な接触を確保すると共にそれ自体が最小限の伝熱抵抗を引き起こす弾性変形可能且つ/又は塑性変形可能な構造を少なくとも一部に形成することができる。この目的で、少なくとも1つの材料層を含むコーティングをキャリア要素の座部の領域に施すことができ、例えば、上記コーティングは、マウント機構へのキャリア要素の特に効果的な熱結合をもたらすように取付け力が得られる際に塑性変形する。上記コーティングは、特に金属コーティングとして具現することができ、例えば電気化学的に、特に電解コーティングとしてキャリア要素の座部の領域に施すことができる。上記コーティングは、適切な場合にはさらに別のコーティングで、特に金又は銀コーティングで覆われるインジウム含有コーティングとして特に具現することができる。上記コーティングの層厚は、10μm〜20μmの範囲であることが好ましい。例えばテフロン層等の非金属延性層も、熱接触の改善につながり得る。さらに、座面は、本質的に円錐形の幾何学的形状に、キャリア要素の取付け後に面圧の高い接触区域が生じるという効果があるわずかに波状の幾何学的形状が重ね合わせられるように作ることができる。座部の領域に、適切な場合には塑性変形可能なコーティングの一部が移動し得る溝又は他の局所的な小さな切欠き若しくは窪みを設けることができることで、キャリア要素の固定の際に、塑性変形可能なコーティングは、マウント機構の内面及び座部の外面の表面粗さ及び形状不良をほぼ埋めて、それ以外では選択された取付け力で塑性変形可能なコーティングの変位をそれ以上引き起こさない残厚しか有しない層厚になる。
【0012】
キャリア要素の座面に比較的延性があるコーティングを形成するという上記措置に加えて、キャリア要素のうち座面を形成する領域に、相互に近接して好ましくはキャリア要素と一体的に形成された弾性的なコンプライアント構造、特に径方向のコンプライアント舌部を形成することも可能である。キャリア要素の取付けにおいては、上記舌部がキャリア要素を収容する孔の内壁に押し付けられてから、舌部の幾何学的形状により調整された接触力で内壁に接触する。
【0013】
座部の領域に、局所的に高い面圧を発生させることでキャリア要素がマウント機構に密封状に着座する効果がある幾何学的構造を形成することがさらに可能である。コンポーネントアセンブリをシールするために、キャリア要素のうち各ミラー素子に面しない頭部の下側でシール機構を実現することも可能である。上記シール機構は、特にシールリング構造を含むことができ、これは、マウント機構へのキャリア要素の組込みの際に、その過程で軸方向に荷重を受けて押圧される。この場合、シール材料は、放出されるガスができる限り少ないことを確実にするよう選択されることが好ましい。この場合、特に延性金属材料、また同様に特に延性金属材料及びエラストマー材料から構成された複合構造と純粋なエラストマーから構成されたシールとが、シール材料として適している。頭部の下側をシールシステムの実現に用いることができない限り、又はこの手法と組み合わせて、コーンの隣接する、すなわち上側の領域に、実質的に径方向に向いた圧力を用いてシールをもたらすシール構造を設けることが可能である。この場合、上記シール構造はさらに、リング状要素、例えばOリングにより形成することができる。ここで設けられるシールシステムは同様に、塑性変形可能な金属構造、例えば金、同、又はアルミニウムワイヤシールを好ましくは含むことができる。このシール機構は、織物構造及び/又はエラストマー要素を有するシール、特にOリングも含み得る。シール機構は、金属及びエラストマーシール部材の組み合わせも含み得る。さらに、複数の連続したシール区域によりマウント機構におけるキャリア要素のシールを実現すること、及び2つのシール区域間で中間吸出し又はバリアガス導入を行うことで、下側マウント領域からミラー素子の領域にガスが入ることをできなくすることが可能である。
【0014】
例えば主に対流効果に基づく伝熱をキャリア要素内で起こすようにするチャネル構造を、キャリア要素の内部領域に設けることがさらに可能である。この目的で、いわゆるヒートパイプシステムを例えばキャリア要素の内部領域で実現することができ、このシステムにおいて、頭部に隣接する領域と座部との間の伝熱が伝熱媒体の物質の状態の変化により補助される。
【0015】
好ましくは、座部を貫通する通過チャネルがキャリア要素に形成される。ミラー素子に連結されたアクチュエータシステムを対応する電子駆動システムに接続するような接続・制御ラインを、上記通過チャネルに通すことができる。本発明による概念により、通過チャネルがあるにも関わらずキャリア要素が入熱領域に大きな熱伝導断面を提供し、こうして効果的な放熱が確保される。
【0016】
各挿入開口の内壁は、マウント機構に連結されたブシュ要素により形成される。この場合、ブシュ要素は、キャリア要素が挿入開口から取り外された場合又は挿入開口にまだ挿入されていない場合でも、冷却システムが開かないようにマウント機構に密封状に連結することができる。ブシュ要素は、マウント機構に挿入される、特にマウント機構に密封状にはんだ付けされる比較的薄肉の中空コーンブシュとして特に形成することができる。
【0017】
伝熱媒体を誘導するために設けられたチャネルデバイスは、例えば、上記チャネルデバイスが中空コーン状のブシュ要素の外側の領域に延びる切欠きにより少なくとも一部が形成されることにより設けることができる。その代替として、又はこの概念と組み合わせて、マウント機構を形成する本体にも流体誘導用に設けられた対応する溝構造を形成することも可能である。ブシュ要素の溝又はチャネル構造の形成は、複雑な線細工チャネル形状を実現することを可能にし、生産技術の観点から利点ももたらす。
【0018】
冷却媒体は、好ましくはマウント機構に直接形成されたチャネルシステムにより挿入開口を囲む領域に誘導され、上記チャネルシステムは、ブシュ要素の部分に設けられたチャネルデバイスと連通する。マウント機構に形成されたチャネルシステムは、複数の挿入開口を囲む領域の並列冷却が上記チャネルシステムにより実現されるよう作ることができる。流体流分岐は、切り換え又は制限部材により調整することができる。好ましくは、各ブシュ要素を囲むチャネルシステムは、流体を給送するために設けられたチャネルシステムの流動抵抗よりも大きな流動抵抗も形成し、複数の挿入開口を有するマウント機構の場合、各挿入開口で実質的に同一の流量、したがって同一の冷却能力を実現できる。
【0019】
各ブシュ要素の外側領域に形成されたチャネルデバイスは、当該チャネルデバイスがブシュ要素の周囲にねじ溝のように渦巻状又は螺旋状に連続して延びるように形成することができる。上記ねじ溝は、複数リード分上昇するようにも形成することができる。しかしながら、ブシュ要素の内外をできる限り均一にフラッシングするという効果を伴って分岐又は他の何らかの方法で延びるように、チャネルデバイスを作ることも可能である。
【0020】
キャリア要素は、すでに上述したように、ブシュ要素に密封状に挿入されることが好ましい。結果として、ミラー素子を収容する領域で、キャリア要素の接合領域を介してマウント機構の後部領域からのガス流入を起こすことなく真空を形成することが可能となる。
【0021】
キャリア要素に固定部が設けられ、キャリア要素をマウント機構に固定する保持力を、上記固定部を介してキャリア要素に導入することができることがさらに好ましい。上記固定部は、締付け状態で上記保持力を発生させるナットが着座するねじ部として特に具現することができる。上記ナットの部分に発生した保持力のマウント機構への転向は、ばね、特に円板ばねと関連して実行することができるので、マウント機構又はキャリア要素の熱膨張が生じた場合でも十分に大きな軸力が常に提供される。好ましくは、マウント機構の領域において、例えばねじ又はリング状凹部の形態の幾何学的構造が設けられ、これにより、必要となり得るキャリア要素の取外しに役立つ離脱機構をそこに取り付けることが可能となる。上記離脱機構は、必要に応じて「下から」マウント機構に螺入することができるねじブシュを特に含むことができ、キャリア要素をマウント機構から押し出すことを可能にする。
【0022】
ミラー素子は、ブロック状又は平行六面体状のコンポーネントとして形成されることが好ましい。このコンポーネントのキャリア要素への接続は、これらのコンポーネント間で効果的な伝熱をもたらすようなものであることが好ましい。この目的で、特に、ミラーファセットの領域からミラー素子のより深い領域への伝熱を促進する構造を、ミラー素子に形成することもできる。キャリア要素へのミラー素子の結合は、好ましくは2つのコンポーネントを密接な平面支承状態にして、特に溶接、はんだ付け、接着結合により、又は機械的接続構造、例えば締付け、楔止め、又は他の接合により実現することができる。
【0023】
さらに、回転位置を固定するために回転固定手段を設けることができる。回転固定手段は、例えば、スロット等の対応する受け口に係合するピン又はボールを含み得る。
【0024】
キャリア要素は、特にマウント機構に突入する領域に伝熱に十分な最大限の断面を与えるよう幾何学的に調整される。熱伝導率が良く熱膨張が適度な、好ましくは最小限の材料が、キャリア要素に選択されることが好ましい。特に、銅、ケイ素、SiC、モリブデン合金、タングステン合金、又は高級鋼がここでは材料として適している。キャリア要素は、さらにより効率的に、すなわちさらに小さな熱勾配で熱を輸送するために対流効果により内部伝熱を補助する、いわゆるヒートパイプ構造も内部に有し得る。他の電気素子、特に電子回路をコーンキャリア要素に連結することができ、それらは、例えばミラー素子の駆動及び/又は温度検出に必要な信号変換を実現する。
【0025】
座部は、上述のように、円錐形又はコーン状に形成されることが好ましい。コーン角は、所望であれば一定の戻り止めをもたらすよう設定することができる。すなわち、締付けねじを離脱させた場合でもキャリア要素は即座に緩まない。
【0026】
本発明のさらに別の態様によれば、導入部で示した課題は、複数のミラー素子を備えたミラー機構の領域から放熱する方法であって、ミラー素子で生じる熱をキャリア要素により最初に取り出してマウント機構の領域に誘導し、冷却媒体をマウント機構においてキャリア要素に隣接する領域に誘導し、キャリア要素から流れ込む熱流を冷却媒体を介して取り出す方法によっても解決される。
【0027】
冷却媒体の流量及び冷却媒体の入口温度は、制御工学に関して、ミラーマウントが所定の設定温度に達するように調整されることが好ましい。この目的で、好ましくは、冷却媒体の戻り温度が検出され、冷却媒体の流量が戻り温度に応じて調整される。
【0028】
マウント機構におけるキャリア要素の熱結合は、キャリア要素の円錐形に設計された部分がマウント機構の相補的に円錐形に設計された孔に押し込まれて、そこでマウント機構と密接して固定されることにより達成されることが好ましい。
【0029】
キャリア要素及びマウント機構は、マウント機構におけるキャリア要素の回転位置が精密に定められるように相互に連携して形成されることが有利であり得る。回転位置を定めるような構造は、キャリア要素の挿入の際にすでに取り付けられたミラー素子への上記キャリア要素の接触が防止されるように、終端位置に達する前に回転位置がすでに精密に定められるように作ることができる。挿入軸周りの正確な位置合わせを確保する構造は、システム全体に留まる、すなわちキャリア要素及びマウント機構の幾何学的構造により提供されるように作ることができる。こうした構造は、取付補助具によっても提供することができ、取付補助具は、一時的に用いられるだけであり、マウント機構の他の幾何学的に十分に精密に加工された部分に対して中心合わせされ且つ向きを定められて取付け後に取り外される。
【0030】
含水混合物、非導電性媒体、グリコール、ガス又はガス混合物、例えばCO又はCO含有ガス混合物を、冷却媒体として用いることが有利であり得る。冷却回路内の冷却媒体の流れは、強制循環により、例えばポンプデバイスにより制約されることが好ましい。多くの調節手段、特に絞り構造を冷却回路に設けることができ、それらは、マウント機構の貫流を各キャリア要素を囲む領域で予想される局所入熱と協調させることを可能にする。冷却回路は、冷却媒体の流れを各入熱区域間で分ける複数の分岐及び合流場所を含むように作ることができる。本機構は、輸送量を個別に調整できることが好ましい複数のポンプも含み得る。
【0031】
ミラー機構は、マウント機構により複数のミラー素子が平面又は曲面、特に球状曲面として示されるミラー面を形成するよう配置されるように構成されることがさらに有利であり得る。キャリア要素に配置されたミラー素子は、多角形、特に正方形、矩形、菱形、六角形、丸形、又は楕円形の外形輪郭を有することが有利であり得る。隣接するミラー素子は、異なる縁輪郭を有することもできるが、中間隙間を最小限にして相補的に隣接することが好ましい。形成されるミラー面の最大限の部分をできる限り同様に設計されたミラー素子を用いて形成し、続いて特定の幾何学的に特別な条件に従うことを可能にする特殊形状のミラー素子を特定の区域に挿入することも可能である。
【0032】
本発明のさらに別の態様によれば、隣接配置される特定数のキャリア要素に関して、複数のキャリア要素を予め組み合わせて群を形成することを可能にする挿入方向が生じるように、マウント機構を形成することも可能である。例として、六角形の輪郭を有するミラー素子を用いる場合、7個のキャリア要素を組み合わせて予め相互に接続されたキャリア要素を有するモジュール群を形成することができ、準備群として取り付けることができる。これにより、取付けが単純化され、さらにミラー素子の縁に対する損傷のリスクが低減する。これらの準備群は、できる限り狭い光受動的な、適切な場合には保護的な筐体を有し得る。このように群を形成するよう組み合わせたキャリア要素は、特に物質的に、例えば溶接又ははんだ付けにより相互に接続することができ、この組み合わせ形態でミラー素子の正確な光配向を確保しておくことができる。
【0033】
マウント機構は、レーザ融着法の過程で複雑な一体構造コンポーネントとして製造することが有利であり得る。この場合、特に、キャリア要素の座部の周囲に延びる壁部分を含むマウント機構がレーザ融着法の過程で単体から製造されるようにマウント機構を実現することが可能である。キャリア要素の座部を収容する上記ブシュ要素は、マウント機構とは当初別個であるコンポーネントとして作製できる限り、同様にレーザ融着法の過程で製造されることが有利であり得る。この場合、ブシュ要素は、いずれの場合もブシュ要素の特に中空コーン状の外側面に例えば螺旋経路に沿って延びる冷却チャネルを有するように作ることができる。
【0034】
本質的に、本発明は、多数の特別に設計されたミラーキャリア用の、特にマイクロリソグラフィ露光装置用の冷却コーン受け口を有する熱負荷が大きいマウントに関する。本発明によれば、多数のミラー素子がそれぞれコーンキャリアにより冷却マウントに収容され、上記マウントにより相互に対して位置決めされる。上記回転固定手段が回転を補助することができる。各ミラー素子は、コーンキャリアにより担持され、大きな熱負荷を小さな熱抵抗で冷却マウント又は冷却媒体へ伝える。コーン受け口は、マウント内でミラー素子を同時に位置決めする。コーンキャリアを含む各ミラー素子は、冷却回路を開かずに交換することができる。ミラー素子はコーンキャリアに固定される。ミラー素子とコーンキャリアとの間の接続は、例えば溶接、はんだ付け、接着結合等により実施することができる。コーンキャリアは、熱伝導率が良く且つ熱膨張が適合した、好ましくは熱膨張が小さな部分を構成するように形成される。コーンキャリアは、良好な熱伝導率及び目標通りの熱膨張の範囲内の材料、例えば銅、ケイ素、SiC、モリブデン合金、タングステン合金、高級鋼等からなることが好ましい。コーンキャリアは、さらにより効率的に熱を伝えるためにヒートパイプとして形成することもできる。電気素子は、コーンキャリアに組み込むこともできる。本発明に従って冷却されたマウントは、ミラー素子が固定されたコーンキャリアを担持する。マウントは、高級鋼からなることが好ましい。銅、アルミニウム合金、インバー、SiC、モリブデン合金、タングステン合金等の代替的な材料も、(必要であれば、例えば膨張要件/熱工学要件、強度要件、固有周波数要件等により)原理上はマウントを製造する材料として適している。冷却マウントは、同時に冷却器として具現される。冷却媒体がそこを流れ、冷却媒体を介したマウントに伝達された熱エネルギーを放散する。マウントは、はんだ付けアセンブリとして製造されることが好ましく、比較的大きな設計の少なくとも2つの部品(前板及び後板)及び多数のコーンスリーブからなる。これらのコンポーネントは、完全に真空気密にはんだ付けされることが好ましい。はんだ付けされていることが好ましいコーンスリーブは、並列で冷却される。各コーンスリーブの供給孔は、冷却量を設定するために絞りとして形成することができる。マウントは、適切な場合には単体から(例えばレーザ融着法により)製造することもできる。このように構成されたこの内部冷却可能なマウントはホルダ全体に連結することができ、これがコーンキャリアを担持する下板の終端をなすことを可能にする。
【0035】
本発明によるマウント設計及びコーンキャリア(場合によっては以下でキャリア要素とも称する)の具体的な構成は、以下のシステム特性を実現することができる。
1.冷却回路を開く必要なく、マウント内のミラー素子の交換が可能である。
2.(コーンキャリアの)ミラー素子接続面と(マウント内の)冷却媒体との間で非常に小さな熱抵抗が達成される。
3.特にコーンキャリアが銅製である場合、コーンキャリアを介して大量の熱を放散可能である。
4.コーンキャリアを精密に固定及び保持するのに小さな締付け力しか必要ない。
5.コーン形状が、軸方向に正確且つ密接な力ロック接続を可能にする。
6.電流及び信号搬送接続素子を、コーンキャリアの中心開口(孔)に通すことができる。
7.冷却液がコーン形状に沿って直接流れるので、マウントにはんだ付けされた液冷コーンスリーブが、特に小さな熱抵抗を可能にする。貫流は、コーン直径が大きい側部から起こることが好ましい。
8.はんだ付けされている全てのコーンスリーブが、供給チャネルから並列で冷却される。
9.各コーンスリーブの供給孔は、直径が異なり得ると共に絞りとして働き得る。
10.コーン形状が、大きな伝熱面積を可能にし、正確な嵌合と共に非常に良好な伝熱をもたらす。コーン表面上の適切な追加コーティングが、伝熱のさらなる改善につながる。
11.この設計は、少なくとも主に層流での冷却回路の貫流を可能にし、その結果として冷媒の流れから得られる振動励起を減らすことができる。
【0036】
本発明のさらなる詳細及び特徴は、添付図面に関連した以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】ミラーアレイをそれぞれ形成する複数のミラー素子を備えた本発明によるミラー機構の斜視図を示す。
図2】本発明によるミラー機構の構成を説明する簡略断面図を示す。
図3】キャリア要素の斜視図を、円錐形に設計されたその座部及びミラー素子を収容するよう設けられた平行六面体状の頭部に鑑みて示す。
図4】マウント機構の斜視詳細図を、孔近傍の冷却チャネルを形成するよう設けられたブシュ要素に鑑みて示す。
図5】2つの冷却チャネルが形成されてねじ状に延びるブシュ要素の好ましい一構成の斜視詳細図を示す。
図6】本発明によるキャリア要素のさらに別の変形形態の斜視図を、ここでは複数の舌要素が設けられた円錐形に設計されたその座部に鑑みて示す。
図7a】本発明によるマウント機構におけるキャリア要素の設置位置を説明する軸方向断面図を示し、シール機構がキャリア要素の頭部の下側とキャリア要素を収容するブシュ要素の上縁領域との間の領域に設けられている。
図7b図7aで説明されたシール概念を実施した、本発明によるマウント機構における複数のキャリア要素の設置位置を説明するさらに別の軸方向断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1に示す図は、本発明によるミラー機構の構成を説明するものである。当該ミラー機構は、近接して配置され、凹面を形成し、且つこの場合は光学中心に向かって整列した複数のミラー素子1をここでは備える。上記ミラー素子1のそれぞれが、電磁放射線を反射する役割を果たし、この目的で対応して反射コーティングが施されたミラー面を備える。ミラー機構は、複数のキャリア要素2をさらに備え、キャリア要素2のそれぞれが、少なくとも1つのミラー素子1を収容するよう設けられた頭部2aを、また座部2bも備える。さらに、ミラー機構は、キャリア要素2を収容するためのマウント機構3を備える。
【0039】
キャリア要素2の数に対応する数の挿入開口3aが、マウント機構3に形成される。この場合、ミラー機構は、各キャリア要素2の座部2bが上記挿入開口3aに突入するように形成され、伝熱媒体を誘導するためのチャネルデバイス4aが、座部2bを囲む領域でマウント機構3に形成される。マウント機構に組み込まれたチャネルデバイス4aを介して、各キャリア要素2の座部2bを経て流れる熱流を取り出して挿入開口3aのすぐ近くで放散させることができる。これにより、ミラー素子1を所定の熱レベルに保つと共にマウント機構3に関して狭い許容範囲の所定の熱設定状態に従うことも確実に可能となる。
【0040】
図示のミラー機構の場合、各ミラー素子1は、各キャリア要素2を介して冷却マウントに熱結合される。各キャリア要素2は、小さな熱抵抗で各ミラー素子1が発した熱出力を冷却マウント3に伝える。マウント3内で、熱が冷却媒体、特に冷却液により取り出される。コーンピンとして設計されたキャリア要素2は、マウント20上にミラー素子1を位置決めする。各ミラー素子1は、それに割り当てられたキャリア要素2と共にマウント3から取り外すことができ、適切な場合には交換、試験、又は保守を行うことができるが、その過程で液冷回路を開かずにこれらを行うことができる。
【0041】
認識できるように、マウント機構3は多分割構成である。マウント機構3は、中空コーン状に設計された複数のブシュ要素3b(図2参照)を備え、重ねて接合された複数のマウントシェル3c、3d、3eも備える。スタックの最上マウントシェル3cと、適切な場合にはそれに隣接する後続のマウントシェル3dとは、ブシュ要素3bと相互作用して、各キャリア要素2の座部2bを囲む領域から熱を取り出させるような冷却チャネルを形成する。最上マウントシェル3cに接合された第2マウントシェル3dは、最上マウントシェル3cと共に、流体供給及び流体排出を実現するチャネルシステムを形成する。第2マウントシェル3dにさらに接合された第3マウントシェル3eは、キャリア要素2の端部の下に延びる空間領域3fの終端にある。第3マウントシェル3eは、1つ又は複数のシールにより空間領域3fを開閉することができる。
【0042】
図2に示す図は、例としてマウント機構3に対するミラー素子1の固着を説明するものである。図2で見られる詳細図から明らかなように、各キャリア要素2は、ピン状コンポーネントとして形成され、座部2bは、挿入方向に細くなるようにコーン状に円錐形に設計される。頭部2aと座部2bとの間に延びる通過チャネル5が、各キャリア要素2に形成される。
【0043】
挿入開口3aの内壁は、マウント機構3に連結されたブシュ要素3bにより形成される。この場合、ブシュ要素3bは、マウント機構3に密封状に連結、好ましくははんだ付けされ、チャネルシステムを画定する。チャネル誘導は、冷却回路を開かずにキャリア要素2をブシュ要素3bから引き出すことができるよう実施される。換言すれば、冷却回路は、キャリア要素2の設置状態とは無関係に閉鎖され、この場合は特にキャリア要素2の取付け前でも締まり具合を確認することができる。
【0044】
ここで図示されているブシュ要素3bは、いずれの場合も中空コーンブシュとして形成される。ブシュ要素3b内で又はブシュ要素3bに沿って冷却媒体を誘導するよう設けられたチャネルデバイス4aは、ブシュ要素3bのうちその外向きの外面の領域に延びる切欠きにより少なくとも一部が形成される。
【0045】
ブシュ要素3bの部分に設けられたチャネルデバイス4aと連通するチャネルシステム4bが、マウント機構3に形成される。図示の例示的な実施形態では、流体が、キャリア要素2の熱負荷がより大きな領域に流入してキャリア要素2の冷却器領域、この図では下側領域から排出されるように誘導される。以下でより詳細に説明するように、ブシュ要素3bの外側領域に形成されたチャネルデバイス4aは、当該チャネルデバイスが一条ねじ又は多条ねじのようにブシュ要素3bの周囲に何重にも延びることで、伝熱媒体がブシュ要素3bの周りを密接に流れるように設計される。
【0046】
各キャリア要素2は、ブシュ要素3bに密封状に挿入される。シール効果を補助するために、この場合はシールデバイス6が座部のベース領域に設けられる。上記シールデバイスは、ここではキャリア要素2の対応するOリング溝2c、2dに着座するOリング6a、6bにより実現される。
【0047】
キャリア要素2には固定部2eが設けられ、キャリア要素をマウント機構3に固定する保持力が、上記固定部2eを介してキャリア要素2に導入される。雌ねじを有するナット2fが、ここでは固定部2eに係合する。上記ナットは、皿ばね2gにより第2マウントシェル3d上で支持される。
【0048】
図3に示す図は、キャリア要素2の例示的な一構成を斜視図の形態で説明するものである。キャリア要素2は、その座部2bに関して回転対称の旋削加工部品として製造される。頭部2aは、平行六面体状部分としてここでは製造され、座部2bに面しないその端面で、この座面に置かれたミラー素子(ここではそれ以上図示せず)と平面接触する接触面を形成する。しかしながら、頭部2aは特に、正方形、矩形、六角形、菱形、台形、又は他の、特に多角形の外形輪郭も有することができる。好ましくは、頭部2aの縁輪郭は、その上に着座したミラー素子の縁輪郭に対応する。適切な場合には、縁輪郭は、頭部がその上に着座したミラー素子の縁輪郭よりも横方向にわずかに突出するような寸法にすることができ、隣接するキャリア要素の頭部も同様に大き目である結果として、これらの隣接する頭部に着座したミラー素子間の直接の物理的接触が回避されるようになる。座部2bは、コーン構造として製造され、Oリングを収容するよう設けられた溝2c、2dが延びる円筒部に隣接する。ねじピン部2eが、キャリア要素の下側領域に位置する。キャリア要素2の全長を軸方向孔5が貫通する。キャリア要素2に局所チャネルシステム(ここではより詳細に認識できない)を形成すること、及び頭部2aの領域から座部2bの領域への伝熱を補助するために上記チャネルシステムに伝熱流体を充填することが可能である。チャネルシステム内の伝熱媒体、充填量、及び内圧は、ここでは、キャリア要素の局所チャネルシステムに導入された伝熱媒体の物質の状態の変化に関連して伝熱を補助するいわゆる「ヒートパイプシステム」が得られるように調整することができる。
【0049】
図4に示す図は、この場合に実現された冷却流体チャネル構造のさらなる説明のための本発明によるマウント機構からの抜粋を示す。流体給送及び流体排出用に設けられた供給チャネルは、最上マウントシェル3c及び隣接する第2マウントシェル3dにより形成される。流体誘導は、対応するブシュ要素3bのうちミラー素子1(図1参照)に隣接する領域に流体が給送チャネル4bを介して給送されるようここでは選択される。流体は、チャネル4dを介してブシュ要素3bの軸方向に遠隔の下側領域から排出され、この下側領域は直径に関して縮小されている。ここで図示されている例示的な実施形態の場合、2つのマウントシェル3c、3d及びブシュ要素3bは、高級鋼材料から製造され、ニッケル系はんだを用いて相互にはんだ付けされる。ブシュ要素3bは、マウント機構を形成する2つのマウントシェル3c、3dへの連結後に、その内壁の領域で、内壁の正確な幾何学的位置を確保するために材料除去で再加工され、特に軸方向に制御された加工デバイスにより研削又は研磨される。この目的で、ブシュ要素3bは、最初は内側を大き目にして製造され得る。
【0050】
図5に示す図は、外部チャネル構造4aを有するブシュ要素3bの構成を説明するものである。ブシュ要素3bは、コーンブシュとして製造される。この場合、チャネル構造4aは、平滑な中空コーンとして最初に製造された本体において材料除去で形成することができる。チャネル構造4aは、ここでは貫流方向に対して横方向に位置合わせされた断面で矩形の断面を有し、ここで認識可能なようにブシュ要素3bの外側領域で多条ねじのように延びる。
【0051】
図6に示す図は、キャリア要素2のさらに別の例示的な構成を斜視図の形態で説明するものである。キャリア要素2は、その座部2bに対して主に円錐形の旋削加工部品として製造されるが、複数のそれぞれ弾性又は塑性変形可能な接触舌20がそこで立ち上がるようにこの領域でさらに再加工される。上記接触舌20は、長手方向溝21及び相互に近接して配置された周方向溝22により相互に分離される。周方向溝22は、円錐リング状に設計される。接触舌20は、全体がモミの木構造を形成し、その舌20は、割り当てられた挿入開口への組込み時に挿入開口の内壁に対して突っ張り、その過程で上記内壁に密接に接触する。長手方向溝21及び周方向溝22により形成された空間に延性金属、特にインジウムを充填することが可能である。その他の点に関しては、図3が類似して当てはまる。
【0052】
図7aに示す例示的な実施形態に関しては、図1図5に関する説明が類似して当てはまる。図1図5に関連して説明したシステムの発展形態として、ここでは、キャリア要素2の頭部2aとブシュ要素3bの上縁領域との間の中間領域にシールデバイス2hが設けられ、このシールデバイスにより、キャリア要素2がマウント機構3に対して気密にシールされる。シールデバイス2hは、シールリング要素2iを含む。この変形形態では、上記シールリング要素2iは、軸方向に荷重を受けることに対応して変形する。マウント縁3gが、ブシュ要素3bに形成されてシールリング要素2iを封入し、シールリング要素2iは、それによりブシュ要素3b上に確実に位置決めされ、その結果としてキャリア要素2の取付けが容易になる。
【0053】
図7bに示す図から明らかなように、複数のキャリア要素2を本発明によるマウント機構に近接して設置することができる。ここに示す例示的な実施形態の場合、頭部2aは、隣接する頭部2a間に隙間が残るように設計される。頭部2aはさらに、頭部2aに取り付けられたミラー素子1の側壁を横方向にわずかに超えて突出するように設計される。結果として、ミラー素子1のある程度の保護が達成される。ここに示すような頭部2a間の隙間により、各頭部の周縁を囲む筐体を用いてキャリア要素2を取り付けることができ、続いて取付けの実行後にこの筐体を引き出すことができる。ミラーファセットを覆うカバーを上記筐体に嵌めることもできる。図7aに関連して上述したシール機構に対応する構成のシール機構2hが、各頭部2aの下側の領域に設けられる。これに関しては、図7aに関する説明を参照されたい。ここでは図示しないが、複数の隣接するキャリア要素2を組み合わせて比較的剛性の、適切な場合には大部分が予め組み立てられた構造ユニットを形成することで、キャリア要素2が群毎にマウント機構3に連結されるようにすることが可能である。キャリア要素2の長手方向軸の相互に対する傾斜がキャリア要素2の座部2bのコーン角よりも小さい限り、キャリア要素が相互に対して傾斜して配置される場合にもこの群形成が可能である。
【0054】
図1図5図7a、及び図7bに示す図に関連して上述したマウント機構3の構成は、複数のミラーコンポーネントを備えたミラー機構の領域からの放熱を可能にするが、これは、ミラーコンポーネントで生じる熱が最初にキャリア要素2により取り出されてマウント機構3の領域に誘導され、冷却媒体がキャリア要素2に隣接する領域でマウント機構3内を誘導され、キャリア要素2からマウント機構3へ流れ込む熱流が冷却媒体を介して取り出されることにより可能となる。この場合、冷却媒体の流量及び冷却媒体の入口温度は、制御工学に関して調整される。この調整は、例えば冷却媒体の戻り温度が検出されて冷却媒体の流量が戻り温度に応じて調整されるように実施することができる。冷却媒体の流量及びチャネル断面は、できる限り乱流及びキャビテーションのない、場合によっては層流である流れがマウント機構で起こるよう調整されることが好ましい。これにより、冷却媒体が引き起こす可能性のある機械振動が、ミラー素子を含めて形成されたミラー機構の結像特性を損なわせることが防止される。
【0055】
さまざまな例示的な実施形態及び変更形態に基づいて、本発明を上記でより詳細に説明した。特に、さらに他の個々の特徴に関して上述した技術的な個々の特徴は、特に明確に記載されていない場合でも技術的に可能な限り、これらとは無関係に、且つ他の個々の特徴と組み合わせて実現することができる。したがって、本発明は、記載された例示的な実施形態に明確に限定されるのではなく、特許請求の範囲に記載の全ての実施形態を包含する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b