特許第6630113号(P6630113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6630113キャリヤに固定された測定原器を有する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6630113
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】キャリヤに固定された測定原器を有する装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20200106BHJP
【FI】
   G01D5/244 D
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-204479(P2015-204479)
(22)【出願日】2015年10月16日
(65)【公開番号】特開2016-99341(P2016-99341A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2018年6月11日
(31)【優先権主張番号】14193790.4
(32)【優先日】2014年11月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】キリアン・バウアー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・フーバー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ジグル
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−522974(JP,A)
【文献】 特開平3−99213(JP,A)
【文献】 特開2007−127649(JP,A)
【文献】 特開昭63−311738(JP,A)
【文献】 特開2011−145281(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/083364(WO,A2)
【文献】 独国特許発明第10064734(DE,C2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定原器(1)が、測定目盛(11)を備え、キャリヤ(3)と測定原器(1)の間の異なった熱膨張が補償されるように、スペーサ(4)を介してキャリヤ(3)に支持及び保持されている、キャリヤ(3)に固定された測定原器(1)を有する装置において、
測定原器(1)とキャリヤ(3)の間に、測定原器(1)を付着するようにキャリヤ(3)に保持する層(5)が配置され、スペーサ(4)が、この層(5)内に可動に埋設されており、層(5)が、粘性の液体又は粘弾性の液体である、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
スペーサ(4)が、2次元的に分配され、位置測定のために走査ユニット(2)よって走査可能な測定目盛(11)と向かい合うように配置されている、ことを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項3】
層(5)の厚さ(D)が、1μm〜500μmである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
スペーサ(4)が、ガラスから成る、ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
スペーサ(4)が、少なくともほぼ層(5)の材料の厚さに一致する厚さを有する材料から成る、ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
スペーサ(4)が、層(5)内で転がり移動可能なボール又はローラである、ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
ボール又はローラの直径が1μm〜500μmである、ことを特徴とする請求項に記載に装置。
【請求項8】
測定原器(1)が、1つの位置(P)で位置不動にキャリヤ(3)に固定されている、ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
キャリヤ(3)及び/又は測定原器(1)に、層(5)の材料のための流出ストッパ(7,8,9)が設けられている、ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の装置と、測定原器(1)の測定目盛(11)を走査するための走査ユニット(2)とを有する位置測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載のキャリヤに固定された測定原器を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの機械部分の相対位置を測定するために、機械部分の一方に測定原器を、互いに可動な機械部分の他方に走査ユニットを固定すべきである。位置測定の場合には、測定原器の測定目盛が、走査ユニットによって走査され、位置に依存した走査信号が発生される。
【0003】
欧州特許出願公開第0 416 391号明細書は、固定が液体膜によって行なわれ、測定原器が液体膜の毛管現象によってキャリヤの取付け面に引き寄せられる、キャリヤに固定された測定原器を有する装置を開示する。
【0004】
欧州特許第0 264 801号明細書によれば、測定原器がボールに支持されることによって、測定原器がキャリヤに取り付けられている。ボールは、小さい範囲内で転がり運動可能に支持されている。測定原器とキャリヤの間の付着力は、バネによって導入される。ボールとバネの組合せにより、固定及び支持は、測定原器の周縁領域でのみ可能であり、これにより、測定原器の実際の測定領域内での平坦な支持は可能にされない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 416 391号明細書
【特許文献2】欧州特許第0 264 801号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、測定原器ができるだけドリフトなく温度安定性を有してその位置を保ち、これにより再現可能な位置測定を可能にする、キャリヤに固定された測定原器を有する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載された装置並びに請求項11に記載された位置測定装置によって解決される。
【0008】
本発明による装置並びに位置測定装置の有利な形成は、従属請求項において述べられている措置からわかる。
【0009】
本発明の細部及び利点を、図と関係した実施例の後続の記載により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明により形成された装置の縦断面図
図2】第2の実施例の縦断面図
図3】第3の実施例の横断面図
図4】第4の実施例の横断面図
図5】第5の実施例の横断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1により、本発明の第1の実施例を説明する。図示した位置測定装置は、キャリヤ3に配置された測定原器1と走査ユニット2から成る装置を有する。測定装置の作動中、走査ユニット2は、キャリヤ3に対して相対的に可動な対象100に固定されている。測定原器1は、走査ユニット2によって非接触で操作可能な測定目盛11を備える。測定原器1は、好ましくは、無視可能に小さい熱膨張係数、特に0°〜50°の温度範囲内で1.5×10−6−1より小さい、しかしながら特に0.1×10−6−1より小さい熱膨張係数αを有する材料から成る。このような材料は、ガラスもしくはガラスセラミック(例えばZERODUR)又は例えばインバーのような金属である。
【0012】
測定目盛11は、位置測定時に測定方向Xに位置に依存した走査信号を発生させるための走査ユニット2によって光電走査されるインクリメンタル目盛である。測定目盛11は、周知のように高精度の干渉式位置測定のために使用される反射型の振幅格子又は位相格子とすることができる。
【0013】
測定原器1は、キャリヤ3に固定されている。このキャリヤ3は、通常は、その膨張係数が測定原器1の膨張係数とは異なる材料から成る。この理由から、測定原器1をキャリヤ3から連結解除して固定することが必要である。この場合、連結解除は、位置測定の精度と再現性に負の影響を与える機械的な応力をキャリヤ3から測定原器1へ伝達することなく、キャリヤ3と測定原器1が互いに依存せずに温度に基づいて移動できることを意味する。従ってキャリヤ3における測定原器1の支持は、フローティング式で行なわれる。
【0014】
測定原器1は、スペーサ4によってキャリヤ3に支持されている。これらスペーサ4は、キャリヤ3の表面31上に2次元空間的に分配されて配置されている。スペーサ4の配置は、測定原器1が少なくとも測定目盛11の位置測定のために走査ユニット2によって走査可能な範囲内で支持されるようになっている。即ち支持は、少なくとも測定目盛11の位置測定のために利用される範囲内で行なわれる。
【0015】
スペーサ4は、層5内へ可動に埋設され、その中で可動に拘束されている。このため、層5は、層が測定原器1をキャリヤ3に付着するように保持するように、測定原器1とキャリヤ3の間に配置されている。層5の表面張力に基づいて、測定原器1とキャリヤ3は、互いに引き付けられる。層5は、複数の機能を有する。層は、測定原器1とキャリヤ3を、層5の粘着力に基づいて付着するように互いに結合する。更に層5は、キャリヤ3と測定原器1の間の熱膨張の違いを補償する。スペーサ4が、層5内に埋設され、層の材料が毛管現象に基づいて測定原器1とキャリヤ3の間の間隙内に保持されるので、層5は、スペーサ4が測定原器1とキャリヤ3の間の間隙内に保持されるように、付加的に働く。従って層5は、一種のスペーサ4用のケージを、即ちボール状のスペーサ4におけるボールケージを構成する。更に層5は、スペーサ4と測定原器1の間とスペーサ4とキャリヤ3の間の摩擦(滑り摩擦もしくは転がり摩擦)を最小化するために、スペーサ4用の潤滑剤として作用する機能を有する。付加的に、スペーサ4は、層5の厚さDの正確な維持を、従って、測定原器1とキャリヤ3の間の温度に基づいた移動を反作用なく可能にするために、一方では必要な保持力の限定的な調整の可能性を、他方では必要な推力の制限の可能性を生じさせる。
【0016】
層5は、好ましくは粘性の液体膜、特に高粘度のニュートン流体、例えば油膜(例えばシリコンオイル)又はビンガム流体である。層5は、ゲルとも呼ばれる粘弾性の液体から構成することもできる。
【0017】
測定原器1の厚さにとっての典型的な値は、0.5mm〜15mmである。層5の厚さD、従ってスペーサ4の高さは、例えば1μm〜500μm、典型的に50μmである。
【0018】
スペーサ4は、生じる圧力にできるだけ変形なく耐える材料から成る。適切な材料は、特にガラス、ガラスセラミック、しかしながらまたセラミック又は金属である。
【0019】
スペーサ4が、少なくともほぼ層5の材料の厚さに一致する厚さを有する材料から成る場合が、有利であり得る。これは、層5へスペーサ4を混入する際に利点を有する。それは、層5の材料内でのスペーサ4の均等な分布が保証されているからである。更に、スペーサ4と層5の材料の間の分解が行なわれないことが保証されている。即ち、スペーサ4が、全ての取付け位置で層5の材料内で、即ち厚さDの間隙内で、バランスが取れていることが保証されている。
【0020】
スペーサ4として、特にボール又はローラが適している。これらボール又はローラの直径は、層5の厚さDと一致する。従って、ボール又はローラが、一方では測定原器1の下側、即ち支持面12にそれぞれ点状に接触子、他方でキャリヤ3の表面31にも点状に接触する。ボールもしくはローラは、転がり移動可能に層5内に埋設されている。ボールは、層5内で2次元的に転がり移動可能に支持されているので、スペーサ4として特に適している。
【0021】
図2に図示した第2の実施例は、測定原器1が付加的に位置P(測定方向Xに対して)においてキャリヤ3に位置不動に位置固定されていることによって、第1の実施例に対して異なる。この位置Pにおいて、測定原器1は、同様にスペーサ4によって支持されている。スペーサ4は、位置Pにおいて保持手段6によって一方で位置不動に測定原器1に固定され、他方で位置不動にキャリヤ3に固定されている。保持手段6は、例えば固く硬化された接着剤である。基準点とも呼ばれる位置Pにおける層状の保持手段6は、この例ではキャリヤ3内のそれぞれ1つの切欠き7によって層5から分離されている。切欠き7は、層5の材料のための流出ストッパとしても機能する。
【0022】
図3に図示した第3の実施例は、図示した横断面図で測定原器1の横のガイドの可能性が記載されていることによってだけ第1の実施例に対して異なる。横のガイドは、測定原器1のための長手方向ガイドとして形成され、横に配置されたガイド要素61から成る。測定原器1を摩擦なくガイドするため、測定原器1の側面とガイド要素61の間にそれぞれ粘性の液体膜62が配置されている。
【0023】
図4に図示した第4の実施例は、図示した横断面図で測定原器1の横のガイドの別の可能性が記載されていることによって第1の実施例に対して異なる。この場合には、測定原器1は、その両側面の一方だけが長手方向にガイドされている。この長手方向ガイドは、測定原器1の支持と同じ手段によって、即ちスペーサ4−特にボール−と層5によって行なわれる。
【0024】
図5に図示した第5の実施例は、層5の材料のための流出ストッパの実現の複数の可能性が図示されていることによってだけ第1の実施例に対して異なる。図2に図示した切欠き7と同様に、流出ストッパは、測定原器1の横で測定方向Xに延在する、キャリヤ3内の切欠き8によって設けることができる。選択的又は付加的に流出ストッパは、防湿材料9による測定原器1及び/又はキャリヤ3の部分的なコーティングによって構成することができる。防湿コーティングの措置は、表面張力変更処理とも呼ばれる。
【0025】
全ての実施例に対して以下のことが当て嵌まる。
【0026】
長さ測定のために、測定原器1は、実施例で図示したように、棒状に形成することができる。しかしながらまた測定原器は、帯状に形成することができ、キャリヤ3は、安定した曲げ剛性を有する物体として形成することができる。キャリヤは、測定のために測定すべき対象に取り付けられる成形体の形態でキャリヤを形成することによって、測定テープと共に取扱い可能に形成することができる。測定原器をこの成形体の溝内に保持すること及び/又は成形体に測定原器のためのハウジングを構成させることができる。
【0027】
角度測定のために、測定原器を円状に形成すること及び/又は帯状の測定原器をドラムの内面又は外面に配置し、ドラムに測定原器のキャリヤを構成させることができる。
【0028】
インクリメンタル測定目盛の代わり又はインクリメンタル測定目盛に加えて、絶対コーディングを設けることもできる。更に、測定目盛は、2次元で測定するために形成することができ、このような測定目盛は、交差格子又は市松模様格子とも呼ばれる。
【0029】
測定原器は、位置測定装置の走査プレートとすることもできる。
【0030】
本発明は、光電走査原理に限定されていない。測定目盛は、磁気的、容量的又は誘導的に走査可能に形成することもできる。
【符号の説明】
【0031】
1 測定原器
2 走査ユニット
3 キャリヤ
4 スペーサ
5 層
6 保持手段
7 切欠き
8 切欠き
9 防湿材料
11 測定目盛
12 測定原器の支持面
31 キャリヤの表面
61 ガイド要素
62 液体膜
100 対象
図1
図2
図3
図4
図5