(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のリガンドはハロゲン元素もしくは水素元素のいずれかであり、前記第1のリガンドと前記第2のリガンドとは互いに反応してハロゲン化水素を生成する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
前記第1のドーパント含有層を形成する工程の後、前記第1のドーパント含有ガスを除去する工程を行い、前記第2のドーパント含有層を形成する工程の後、前記第2のドーパント含有ガスを除去する工程を行う請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱系(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO
2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。
【0012】
処理室201内には、ノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bには、ガス供給管(配管)232a,232bが、それぞれ接続されている。
【0013】
ガス供給管232a,232bには、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232c,232dがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232dには、上流側から順に、MFC241c,241dおよびバルブ243c,243dがそれぞれ設けられている。
【0014】
ノズル249a,249bは、
図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0015】
ガス供給管232aからは、ドーパント元素としての例えばホウ素(B)を含み、かつ第1のリガンドを構成する元素としての例えばハロゲン元素としての塩素(Cl)を含む第1のドーパント含有ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。第1のドーパント含有ガスとしては、例えば、BとClを含む三塩化ホウ素(BCl
3)ガスを用いることができる。
【0016】
ガス供給管232bからは、ドーパント元素としてのBを含み、かつ第2のリガンドを構成する元素としての例えば水素元素(H)を含む第2のドーパント含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。第2のドーパント含有ガスとしては、例えば、BとHを含むジボラン(B
2H
6)ガスを用いることができる。
【0017】
ガス供給管232c,232dからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N
2)ガスが、それぞれMFC241c,241d、バルブ243c,243d、ガス供給管232a及びガス供給管232b、ノズル249a及びノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0018】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1のドーパント含有ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第2のドーパント含有ガス供給系が構成される。第1のドーパント含有ガス供給系、第2のドーパント含有ガス供給系を合わせてガス供給系と称することもできる。また、主に、ガス供給管232c,232d、MFC241c,241d、バルブ243c,243dにより、不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス供給系をガス供給系に含めて考えてもよい。
【0019】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a〜243dやMFC241a〜241d等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a〜232dのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a〜232d内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a〜243dの開閉動作やMFC241a〜241dによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a〜232d等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0020】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0021】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0022】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が多段に支持されている。
【0023】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263はL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0024】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0025】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置100の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する成膜処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0026】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241d、バルブ243a〜243d、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0027】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a〜241dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243dの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0028】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0029】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置100を用い、半導体装置(例えばIC等)の製造方法における基板処理の一工程として、基板上に膜を形成するシーケンス例について、
図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0030】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合、すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
【0031】
従って、本明細書において「ウエハ上に所定の層(または膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面上に所定の層(または膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち、積層体としてのウエハの最表面の上に所定の層(または膜)を形成する」ことを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0032】
(ウエハ搬入ステップ)
Si膜とSiO膜を表面に有する複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0033】
(圧力・温度調整ステップ)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内のウエハ200が所望の成膜温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。また、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0034】
(成膜ステップ)
その後、以下のステップ1〜4を順次実行する。
【0035】
[ステップ1]
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対して、BCl
3ガスを供給して排気する。具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内にBCl
3ガスを流す。BCl
3ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ243cを開き、ガス供給管232c内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、MFC241cにより流量調整され、BCl
3ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。また、ノズル249b内へのBCl
3ガスの侵入を防止するため、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、ガス供給管232d、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0036】
このとき、処理室201内の圧力(成膜圧力)は、例えば10〜500Pa、好ましくは10〜300Pa、より好ましくは10〜100Paの範囲内の所定の圧力とする。成膜圧力が10Pa未満となると、処理室201内に供給されたBCl
3ガスの流速が大きく、未反応のまま処理室201外へ排出されてしまう場合がある。なお、例えば10〜500Paは10Pa以上500Pa以下を意味する。以下、圧力以外の数値範囲についても同様である。また、成膜圧力が500Paを越えると、BCl
3ガスが熱分解され、Bが凝集されてパーティクルの要因となってしまう場合がある。BCl
3ガスの供給流量は、例えば10〜2000sccmの範囲内の所定の流量とする。BCl
3ガスの供給時間は、例えば1〜10秒の範囲内の所定の時間とする。各ガス供給管より供給するN
2ガスの供給流量は、例えば100〜5000sccmの範囲内の所定の流量とする。ウエハ200の温度(成膜温度)は、例えば150〜250℃、好ましくは200〜250℃の範囲内の所定の温度とする。
【0037】
上述の条件下でウエハ200に対してBCl
3ガスを供給することにより、優先的に、ウエハ200の表面に露出したSi膜上に、BとClを含むB含有層(第1層、BCl
3層)が形成される(選択成長される)。
【0038】
[ステップ2]
ステップ1が終了した後、処理室201内の残留ガスを除去する。
【0039】
具体的には、ステップ1により第1層が形成された後、バルブ243aを閉じ、BCl
3ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1層形成に寄与した後のBCl
3ガスや副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243c〜243dは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。N
2ガスはパージガスとして作用する。
【0040】
[ステップ3]
ステップ2が終了した後、処理室201内のウエハ200に対してB
2H
6ガスを供給する。具体的には、バルブ243aを閉じた状態でバルブ243bを開き、ガス供給管232b内にB
2H
6ガスを流す。バルブ243c〜243dの開閉制御は、ステップ1におけるそれらと同様に制御する。B
2H
6ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してB
2H
6ガスが供給される。N
2ガスは、MFC241dにより流量調整され、B
2H
6ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0041】
このとき、処理室201内の圧力(成膜圧力)は、例えば10〜500Paの範囲内の所定の圧力とする。成膜圧力が10Pa未満となると、処理室201内に供給されたB
2H
6ガスの流速が大きく、未反応のまま処理室201外へ排出されてしまう。また、成膜圧力が500Paを越えると、B
2H
6ガスが熱分解され、Bが凝集されてパーティクルの要因となってしまう。B
2H
6ガスの供給流量は、例えば10〜2000sccmの範囲内の所定の流量とする。B
2H
6ガスの供給時間は、例えば1〜10秒の範囲内の所定の時間とする。各ガス供給管より供給するN
2ガスの供給流量は、例えば100〜5000sccmの範囲内の所定の流量とする。ウエハ200の温度(成膜温度)は、ステップ1と同様の温度とする。成膜温度が150℃未満となると、処理室201内に供給されたB
2H
6ガスが吸着せず、ウエハ200上への第2層の形成が困難となる場合がある。また、成膜温度が250℃を越えると、B
2H
6ガスが熱分解され、Bが凝集されてパーティクルの要因となってしまう。
【0042】
ウエハ200に対して供給されたB
2H
6ガスは、ステップ1でウエハ200の表面に露出したSi膜上に形成された第1層の少なくとも一部と反応する。すなわち、BCl
3ガスのリガンドであった第1層に含まれるClと、B
2H
6ガスのリガンドであるHが互いに反応してHClとなって第1層から脱離し、代わりにB
2H
6ガスに含まれるBが第1層に結合して、Si上に不純物が少ないB層である第2層が形成される(選択成長される)。
【0043】
[ステップ4]
ステップ3が終了した後、処理室201内の残留ガスを除去する。具体的には、第2層が形成された後、バルブ243bを閉じ、B
2H
6ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第2層形成に寄与した後のB
2H
6ガスや副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243c〜243dは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。N
2ガスはパージガスとして作用する。
【0044】
[所定回数実施]
上述したステップ1〜4を1サイクルとし、このサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成、所定膜厚のBを含むドーパント膜(B膜)を形成することができる。n=1の場合は、ステップ4で形成されたB層である第2層がドーパント膜となる。
【0045】
このとき形成されるB膜の膜厚は、1Å程度であって1原子層程度がより好ましい。1Åより厚くすると、その後の工程で阻害膜となってしまう可能性がある。したがって、必要な濃度分だけ形成し、その後の工程で拡散させることが好ましい。好ましくは、上述したステップを1サイクル(n=1)行う。
【0046】
このように、それぞれ異なるリガンドを持ち、リガンド同士が反応するような2種類の原料ガスを交互に供給することで、リガンド同士の結合による副生成物が生成される。この副生成物はB膜から脱離して除去されるため、不純物(Cl、H等)の少ないB膜を形成することが可能となる。すなわち、ウエハ200に形成された第1層に含まれるClと、B
2H
6ガスに含まれるHとが反応して、膜中からClを除去して副生成物としてのハロゲン水素である塩化水素(HCl)を生成し、膜中にはB
2H
6ガス由来のBが残る。
【0047】
また、原料ガスの熱分解による反応ではないため、ウエハ200に対する選択性が良好であり、Si膜とSiO膜が表面に露出したウエハ200のSi膜上に優先的に選択成長させることが可能となる。SiO膜上にB膜が形成されにくい理由は、結晶化されたBは、化学的に不活性であり、耐酸性があって、酸素(O)と結合しにくいためである。
【0048】
所定膜厚のB膜が形成された後、B膜の上にキャップ膜としてSiO膜やSiN膜を形成してもよい。これにより、次のアニールステップにおいて、Bが揮発してしまうことを抑制することもできる。
【0049】
(アニールステップ)
次に、N
2雰囲気下において高温高圧でアニール処理を行う。具体的には、バルブ243c〜243dを開いたまま、N
2ガスの処理室201内への供給を維持しつつ、処理室201内を高温、高圧にし、ウエハ200内へBを拡散させてドーピングを行う。
【0050】
このとき、処理室201内の圧力を、例えば10〜100000Paの範囲内の所定の圧力とする。処理室201内の温度は、例えば900〜1200℃、好ましくは1000〜1200℃の温度とする。処理時間は、例えば60〜3600秒、好ましくは60〜600秒の範囲内の所定の時間とする。N
2ガスの供給流量は、例えば100〜10000sccmの範囲内の所定の流量とする。
【0051】
処理室201内の温度が900℃未満であったり、処理時間が60秒未満の場合には、BがSi膜内に拡散されないことがある。処理室201内の温度が1200℃を越えたり、処理時間が3600秒を越えた場合には、Si膜が溶けたり、膜中のBが昇華されてしまうことがある。成膜温度を例えば900〜1200℃、好ましくは1000〜1200℃とし、処理時間を例えば60〜3600秒、好ましくは60〜600秒とすることで、ウエハ200中でSiの動きが激しくなり、乱れていた位置から元の単結晶になるよう移動し、Si膜内にBが拡散されて、ドープドシリコン膜の形成をより効率的に行うことが可能となる。
【0052】
すなわち、ウエハ200上にB膜を均一に形成させた後に、ウエハ200内に拡散させることで、均一にドーピングすることが可能となる。また、B膜中にCl、H、HCl等が不純物として残留していた場合、このアニールステップにより除去される。
【0053】
なお、ドーパント元素としてBを用いる場合に、このアニールステップを処理室201内でない処理炉202外(Ex−situ)で行うと、B膜が酸化してBO膜となり、アニールステップにおいてドープドSiO膜となってしまう可能性があり、成膜処理後、そのまま処理室201内(In−situ)で行うことが望ましい。ただし、上述したように、B膜の上にキャップ膜を形成した場合は、キャップ膜により酸化抑制される場合がある。このように、酸化抑制手段がある場合や酸化されたとしても許容範囲内と出来る場合はEx−situでアニールステップを行ってもよい。
【0054】
(アフターパージ・大気圧復帰ステップ)
アニール処理後、ガス供給管232c〜232dのそれぞれからN
2ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。N
2ガスはパージガスとして作用する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0055】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、マニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出される(ボートアンロード)。処理済のウエハ200は、ボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0056】
(3)効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果が得られる。
【0057】
(a)本実施形態で形成されるB膜は、それぞれ異なるリガンドを持ち、リガンド同士が反応するような2種類の原料ガスを交互に供給し、リガンド同士の結合により生成された副生成物を除去しつつ形成するので、不純物が少なく、ステップカバレッジ(段差被覆性)が良好である。
【0058】
(b)原料ガスの熱分解による反応ではないため、ウエハ200に対する選択性が良好であり、Si膜とSiO膜(もしくはSiN膜)が表面に露出したウエハ200のSi膜上に優先的に選択成長させることが可能である。
【0059】
(c)本実施形態によりB膜を形成した後、アニール処理を行う前に、キャップ膜としてSiO膜やSiN膜を形成することにより、次のアニールステップにおいて、Bが揮発してしまうことを抑制することができる。
【0060】
(d)本実施形態によりB膜を形成した後、アニール処理を行うことにより、Si膜上に形成されたドーパント膜のBがSi膜内に拡散されてステップカバレッジの良好なドープドSi膜を形成することができる。
【0061】
(e)ステップ2及びステップ4の残留ガス除去工程において各原料ガスが除去されるため、成膜レートが低くなり、薄膜を形成するのに好適である。
【0062】
(f)ウエハ200の表面が水素(H)終端されている場合、ステップ1でB
2H
6ガスより先にBCl
3ガスを供給することにより、BCl
3ガスがウエハ200上のHと反応するためウエハ200上に吸着しやすくなる。
【0063】
(4)変形例
本実施形態における成膜処理のシーケンスでは、
図4に示す態様に限定されず、以下に示す変形例のように変更することができる。
【0064】
(変形例1)
図5に示すように、ステップ1としてB
2H
6ガスを先に供給し、ステップ2として残留ガスを除去し、ステップ3としてBCl
3ガスを供給し、ステップ4として残留ガスを除去する工程を1サイクルとして、このサイクルを交互に行うサイクルを所定回数(n回)行うようにしてもよい。
【0065】
本変形例においても、
図4に示す成膜シーケンスの(a)〜(e)と同様の効果が得られる。
【0066】
(変形例2)
図6に示すように、ステップ1としてBCl
3ガスを供給し、ステップ2としてB
2H
6ガスを供給する工程を1サイクルとして、このサイクルを交互に行うサイクルを所定回数(n回)行うようにしてもよい。第1の実施形態と異なる点は、各原料ガス供給工程の後に残留ガス除去工程を行わない点である。
【0067】
本変形例においても、
図4に示す成膜シーケンスの(a)〜(d)及び(f)と同様の効果が得られる。また、本変形例では、各原料ガス供給工程の後に残留ガス除去工程がないため、各ガスの反応が多く生じて成膜レートが高くなる。
【0068】
(変形例3)
図7に示すように、ステップ1としてB
2H
6ガスを供給し、ステップ2としてBCl
3ガスを供給する工程を1サイクルとして、このサイクルを交互に行うサイクルを所定回数(n回)行うようにしてもよい。変形例2と同様に、各原料ガス供給工程の後に残留ガス除去工程を行わない。
【0069】
本変形例においても、
図4に示す成膜シーケンスの(a)〜(d)と同様の効果が得られる。また、本変形例では、各原料ガス供給工程の後に残留ガス除去工程がないため、各ガスの反応が多く生じて成膜レートが高くなる。
【0070】
(変形例4)
図8に示すように、ステップ1としてBCl
3ガスとB
2H
6ガスとを同時に供給し、ステップ2として残留ガスを除去する工程を1サイクルとして、このサイクルを交互に行うサイクルを所定回数(n回)行うようにしてもよい。このとき、「同時に供給する」とはBCl
3ガスとB
2H
6ガスとが共に処理室201内に存在するタイミングがあればよい。BCl
3ガスを流し始めるタイミングはB
2H
6ガスを流し始めるタイミングと異なってもよい。BCl
3ガスの供給を止めるタイミングはB
2H
6ガスの供給を止めるタイミングと異なってもよい。
【0071】
本変形例においても、
図4に示す成膜シーケンスの(a)〜(d)と同様の効果が得られる。また、BCl
3ガスとB
2H
6ガスを同時に供給するため、成膜レートが高くなり、厚膜を形成するのに好適である。
【0072】
(5)実験結果
以下、上述の実施形態で得られる効果を裏付ける実験結果について説明する。
本実験においては、上述の実施形態における基板処理装置100を用い、
図4に示すシーケンスによりB膜を形成した。成膜処理の処理条件は下記のとおりである。
ヒータ207の温度:200℃
処理室201内の圧力:60Pa
BCl
3ガスの供給流量:300cc
BCl
3ガスの供給時間:5秒
B
2H
6ガスの供給流量:300cc
B
2H
6ガスの供給時間:5秒
【0073】
本実施形態により形成されたB膜について、膜厚および密度をそれぞれ測定した。測定はX線反射率(XRR)法を用いて行った。本実施形態により形成されたB膜の膜厚は1.38nm、密度が1.82g/cm
3であった。
【0074】
また、本実施形態により形成されたB膜について、平均面粗さを測定した。測定は原子間力顕微鏡(AFM)を用いて行った。
図9には、本実施形態により形成されたB膜のAFM像が示されている。このB膜の自乗平均面粗さ(RMS)は0.22nm、平均面粗さ(Ra)は0.17nmであり、非常に平坦に近いことが分かる。
【0075】
また、本実施形態により形成されたB膜をSi基板、SiO基板上で成長させ、Si基板、SiO基板それぞれにおけるBの量を測定した。測定は蛍光X線分析装置(XRF)を用いて行った。
図10に示すように、Si基板上のBの量はサイクル数とともに増加しているのに対して、SiO基板上のBは微量で変化もなかった。
図10によれば、本実施形態により形成されたB膜は選択性を有することが分かる。
【0076】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0077】
例えば、上述の実施形態では、B膜を選択成長させる基板として、Si膜とSiO膜を表面に有する基板を用いる例について説明したが、これに限らず、Si膜とSiN膜を表面に有する基板を用いてもよい。この場合、B膜はSi膜上に優先的に選択成長される。
【0078】
例えば、上述の実施形態では、ドーパント元素としてホウ素(B)を用いる例について説明したが、これに限らず、リン(P)、ヒ素(As)、インジウム(In)等を用いることもでき、その場合、ドーパント含有ガスとしては、B含有ガスの他、P含有ガス、As含有ガス、In含有ガス等を用いることもできる。
【0079】
また、上述の実施形態では、ドーパント含有ガスとして、BCl
3ガスとB
2H
6ガスを用いる例について説明したが、これに限らず、リガンド同士が結合して副生成物を生成するようなガスの組合せであればよく、特に、ハロゲン(Cl)ガスとH還元ガスとの組み合わせが好ましい。
【0080】
また、上述の実施形態では、ハロゲン元素(Cl)を含むドーパント含有ガスとして、BCl
3ガスを用いる例について説明したが、これに限らず、五塩化リン(PCl
5)ガス、三塩化リン(PCl
3)ガス、三塩化ヒ素(AsCl
3)等のハロゲン化物を用いることができる。
【0081】
また、上述の実施形態では、水素元素(H)を含むドーパント含有ガスとして、B
2H
6ガスを用いる例について説明したが、これに限らず、ホスフィン(PH
3)ガス、アルシン(AsH
3)ガス等を用いることができる。
【0082】
また、上述の実施形態では、不活性ガスとして、N
2ガスを用いる例について説明したが、これに限らず、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0083】
また、上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて成膜、アニール処理を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜、アニール処理を行う場合にも、好適に適用できる。
【0084】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の一実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。