(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
なお、本実施の形態では図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。したがって、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0016】
本実施形態の農業用フィルムを概説する。
本実施形態の農業用フィルムは、ヒンダートアミン系光安定剤、ベンゾエート化合物、紫外線吸収剤、および熱可塑性樹脂を含む。
ヒンダートアミン系光安定剤は、下記の化学式A1〜化学式A3で表される化合物からなる群から選ばれる一または二以上を含む。
ベンゾエート化合物は、下記の化学式B1で表される化合物、および下記の化学式B2で表される化合物の少なくとも一方を含む。
紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、およびトリアジン系紫外線吸収剤からなる群から選ばれる一または二以上を含む。
このような成分を含む農業用フィルムは、ヒンダードアミン系光安定剤の含有量をAとし、ベンゾエート化合物の含有量をBとしたとき、A、Bが、1.5/8.5≦A/B≦7.5/2.5を満たすように構成される耐候性層を有する。
【0017】
本発明者の知見によれば、ヒンダートアミン系光安定剤と紫外線吸収剤とを使用することによって耐候性を高められること、ヒンダートアミン系光安定剤とベンゾエート化合物との含有比率を上記下限値以上とすることで、硫黄燻蒸または硫黄散布に用いたときでも長期耐候性を高められること、そして、その含有比率を上記上限値以下とすることにより、透明性を高められることが判明した。
【0018】
本実施形態によれば、硫黄燻蒸または硫黄散布に用いたときでも長期耐候性の低下が抑制される、透明性に優れた農業用フィルムを実現できる。
【0019】
以下、本実施形態の農業用フィルムを詳述する。
【0020】
耐候性層は、下記の化学式A1で表されるヒンダードアミン系光安定剤、化学式A2で表されるヒンダードアミン系光安定剤、及び化学式A3で表されるヒンダードアミン系光安定剤からなる群から選ばれる一または二以上を含む。
【0022】
上記化学式A1中、nの数値は、0〜10でもよく、0〜6でもよい。ヒンダードアミン系光安定剤は、nが異なる化学式A1で表される化合物を複数含んでもよい。
【0024】
上記化学式A3中、nの数値は、0〜10でもよく、0〜6でもよい。ヒンダードアミン系光安定剤は、nが異なる化学式A3で表される化合物を複数含んでもよい。
【0025】
耐候性層は、上記のヒンダートアミン系光安定剤の相乗剤として、下記の化学式B1で表される化合物、および下記の化学式B2で表される化合物の少なくとも一方から選択されたものを含む。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
農業用フィルムの耐候性層は、熱可塑性樹脂を含む。
【0028】
熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン等のα−オレフィン重合体またはエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィンおよびこれらの共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレン及び/又はα−メチルスチレンと他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、耐熱ABS樹脂等)、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエチレンテレフタレート及びポリテトラメチレンテレフタレート等の直鎖ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクタム及びポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド、ポリカーボネート、分岐ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂等の熱可塑性樹脂、及びこれらの混合物、又は、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体などのポリオレフィン系樹脂を用いてもよい。
【0029】
また、熱可塑性樹脂として、α−オレフィン重合体、ポリエチレンと他のα−オレフィン重合体とのブレンド品または共重合体、ポリエチレン等のα−オレフィン重合体とエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィンとのブレンド品または共重合体を用いてもよい。
この中でも、熱可塑性樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンまたは低密度ポリエチレンの少なくとも一方を含んでもよい。
【0030】
耐候性層中、ヒンダードアミン系光安定剤およびベンゾエート化合物の含有量の下限は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上である。一方、その上限は、例えば、10質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。このような範囲内とすることで、耐候性を向上できる。
【0031】
耐候性層中のヒンダードアミン系光安定剤の含有量をAとし、ベンゾエート化合物の含有量をBとする。
このとき、耐候性層中のA/Bの上限は、7.5/2.5以下であり、好ましくは7.3/2.7以下、より好ましくは7.0/3.0以下である。これにより、硫黄燻蒸または硫黄散布に用いられたときの長期耐候性を向上できる。詳細なメカニズムは定かではないが、硫黄吸収抑制能を高めることによって、長期耐候性が得られると、考えられる。
一方、耐候性層中のA/Bの下限は、1.5/8.5以上であり、好ましくは2.0/8.0以上、より好ましくは3.0/7.0以上である。これにより、透明性や長期耐候性を向上できる。
【0032】
農業用フィルムは、紫外線吸収剤を含む。
紫外線吸収剤として、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、およびトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。
また、その他の紫外線吸収剤として、化学式B1、B2以外のベンゾエート系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、公知のものが使用されるが、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−tert−ブチル−4’−(2−メタクロイルオキシエトキシエトキシ)ベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)、及び2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0034】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、公知のものが使用されるが、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−アルコキシカルボニルエチルフェニル)トリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−tert−オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、及び2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(ドデシル)−4−メチルフェノール等が挙げられる。
【0035】
トリアジン系紫外線吸収剤として、公知のものが使用されるが、例えば、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジン、2,4,6,−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノール等が挙げられる。
【0036】
ベンゾエート系紫外線吸収剤として、化学式B1、B2以外の公知のものが使用されるが、例えば、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ−t−アミルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0037】
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤として、公知のものが使用されるが、例えば、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸p−tert−ブチルフェニル、及びサリチル酸ホモメンチル等が挙げられる。
【0038】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤として、公知のものが使用されるが、例えば、エチル−Α−シアノ−Β,Β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(P−メトキシフェニル)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
農業用フィルム中、紫外線吸収剤の含有量の下限は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.07質量部以上である。一方、紫外線吸収剤の上限は、例えば、1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下である。このような範囲内とすることで、耐候性を向上できる。
【0040】
農業用フィルム100の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm〜1mm、好ましくは30μm〜500μm、より好ましくは50μm〜300μmである。
【0041】
図1は、本実施形態の農業用フィルムの構成の一例を示す断面図である。
図1(a)の農業用フィルム100は、上述のヒンダートアミン系光安定剤およびベンゾエート化合物を含む層(耐候性層10)を少なくとも1層備える。農業用フィルム100は、厚み方向において内部に耐候性層10を単層または複数層備えてもよい。
【0042】
また、農業用フィルム100は、
図1(b)に示すように、耐候性層10の他に他の層(基層20)を1または2以上備えた多層構造を有する多層フィルムで構成されてもよい。多層フィルムは、2層以上であればよく、例えば、3層、4層、5層以上、7層以上としてもよい。多層フィルムの積層数の上限は、特に限定されないが、例えば、10層以下としてもよい。
多層フィルムにおいて、紫外線吸収剤は、どの層に含まれていてもよく、1または2以上の層に含まれていてもよく、最外層に含まれていてもよい。
【0043】
また、耐候性層10の一面に基層20が設けられてもよく、耐候性層10の一面と他面のそれぞれに、他の層として基層20、表層が設けられてもよい。他の層は、耐候性層10と異なり、上述のヒンダートアミン系光安定剤およびベンゾエート化合物の両者を含まない構成を有していればよく、いずれか一方のみを含んでもよいが、両者を含まなくてもよい。
【0044】
他の層は、上述の熱可塑性樹脂で構成されてもよく、必要に応じて、下記の他の添加剤を含んでもよい。他の層の熱可塑性樹脂として、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等を用いてもよい。
【0045】
本実施形態の農業用フィルム100は、硫黄吸収抑制能という特性を有する。
この硫黄吸収抑制能については、農業用フィルム100における硫黄の吸収し難さ度合い(すなわち、硫黄取り込み量)を指標とて評価可能である。
【0046】
硫黄取り込み量の指標については、下記の手順Aに従って測定される硫黄取り込み量をΔW、農業用フィルム100の厚みをH1、耐候性層10の厚みをH2としたとき、(ΔW×(H2/H1))/H2、すなわちΔW/H1から算出できる。(ΔW×(H2/H1))/H2の数値が小さいことが、硫黄吸収抑制能が高いことの一つの指標なる。
【0047】
以下、農業用フィルム100のΔW(硫黄取り込み量)を算出するための手順Aを説明する。
<手順A>
手順A1:農業用フィルム100を用いて、下記の(1)、(2)、(4)、及び(5)の順番に従って、硫黄燻蒸処理前における農業用フィルム100中の硫黄元素の含有量(ppm)を測定し、この測定値をS
0とする。
手順A2:手順A1で測定対象とする農業用フィルム100を用いて、下記の(1)、(2)、(3)、(4)、及び(5)の順番に従って、硫黄燻蒸処理後における農業用フィルム100中の硫黄元素の含有量(ppm)を測定し、この測定値をS
1とする。ただし、S
1は、4つの測定値の平均値とする。
手順A3:上記の手順A1で得られたS
0および手順A2で得られたS
1を用いて、以下の式(I)に基づいて、農業用フィルム100の硫黄取り込み量(ppm)を算出する。
|S
1−S
0| ・・・式(I)
【0048】
(1):試験片の準備
農業用フィルム100を切出し、縦幅13cm×横幅2.5cmの短冊状フィルムの試験片Aを作製する。
【0049】
(2):洗浄処理
農業用フィルム100Aを、液温25℃の蒸留水に浸漬し、蒸留水から取り出し後、乾燥させる。
【0050】
(3):硫黄燻蒸処理
縦幅50cm×横幅56cm×高さ60cmの略直方体形状の閉鎖空間を備えるビニールハウスを準備する。続いて、ビニールハウスの内部の天面に攪拌機を設置し、その内部の底面に加熱装置を設置し、加熱装置上にアルミニウム箔製のトレイを配置する。ビニールハウスの内部に吊り下げた状態で4枚の前記試験片Aを設置する。
その後、次の硫黄燻蒸操作を、繰り返し4回行う。
【0051】
(硫黄燻蒸操作)
120mgのパウダー状の硫黄をトレイ内に投入する。続いて、攪拌機の回転数を180rpmに設定し、トレイを、190℃で4時間加熱する。
【0052】
(4):表面処理
下記の条件で光照射を試験片Aに対して102分間行い、続いて、下記の条件で光照射とともに水のスプレーを試験片Aに対して18分間行う。この合計120分の操作を1サイクルとして、合計60サイクル行い、合計120時間の表面処理を試験片Aに対して行う。
【0053】
(光照射の条件)
試験片Aに対して、温度65℃、相対湿度50%の条件下で、照射強度60W/m
2のキセノンランプを照射する。
【0054】
本発明者の知見によれば、硫黄燻蒸後に適切な表面処理を行うことによって、フィルム中に含まれる硫黄元素の含有量の測定バラツキを低減できることが判明した。詳細なメカニズムは定かではないが、表面処理によってフィルム表面に付着した硫黄を適当に除去できるため、と考えられる。また、この表面処理として、光照射だけでなく、水散布を行うことが重要な要素であることが分かっている。
【0055】
(5):硫黄元素含有量の測定
5gの硝酸中に、試験片Aを板厚方向に切断して得られた200mgのサンプルを加えて硝酸溶液を得る。この硝酸溶液に対して、マイクロ波湿式分解法を用いて、サンプルを液化する前処理を行うことにより測定溶液を得る。得られた測定溶液中の硫黄元素の含有量について、ICP発光分析装置を用いて測定する。この測定溶液中の硫黄元素の含有量を、農業用フィルム100中の硫黄元素の含有量(ppm)とする。
【0056】
本発明者の知見によれば、硫黄燻蒸操作に複数回使用したビニールハウスは、適当なタイミングで新しいものを使用することで、硫黄元素含有量の測定のバラツキを低減できることが判明した。
【0057】
上記の手順Aに従って測定される硫黄取り込み量をΔW、農業用フィルム100の厚みをH1、ヒンダートアミン系光安定剤およびベンゾエート化合物を含む層(耐候性層10)の厚みをH2とする。
このとき、農業用フィルム100は、(ΔW×(H2/H1))/H2の上限が、例えば、4.70ppm/μm以下、好ましくは4.60ppm/μm以下、より好ましくは4.50ppm/μm以下を満たすように構成されてもよい。(ΔW×(H2/H1))/H2の下限は、例えば、2.80ppm/μm以上となるように構成されてもよい。
ここで、H2/H1により農業用フィルム100全体に含まれる耐候性層10中の膜厚比率を算出する。1/H2により耐候性層10中の単位厚み当たりの硫黄取り込み量を算出する。
【0058】
JIS K7136に準じて測定される、農業用フィルム100のヘイズ値の上限は、例えば、50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下でもよい。ヘイズ値の下限は、特に限定されないが、0%以上でもよく、1%以上でもよい。
【0059】
農業用フィルム100は、グリーンハウス等の各種の農園芸用設備の形成材料、土壌を保護する材料、または、土壌などの収容する収容材料などの様々な用途に利用できる。この中でも、グリーンハウスを形成するために用いることが好ましい。
【0060】
次に、上記の農業用フィルム100を形成するために用いる、本実施形態の農業用フィルム形成用樹脂組成物について説明する。
【0061】
農業用フィルム形成用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」という。)は、上述の化学式A1で表される化合物、および下記の化学式A2で表される化合物の少なくとも一方から選択されたヒンダードアミン系光安定剤と、上記の一般式(B)で表されるベンゾエート化合物から選択される一または二以上を含むベンゾエート化合物と、上述の熱可塑性樹脂と、上述の紫外線吸収剤と、を含む。
この樹脂組成物は、農業用フィルムを形成するため、より具体的には、農業用フィルムの耐候性層を形成するために用いることができる。
【0062】
樹脂組成物中の上記成分の配合比率には、例えば、農業用フィルムで説明した耐候性層中の配合比率を採用してもよい。
【0063】
樹脂組成物は、上記の成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲において、農業用フィルムに通常使用される他の添加剤を含んでもよい。
【0064】
他の添加剤として、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、他のヒンダードアミン化合物、造核剤、加工性改良剤、充填剤、可塑剤、金属石鹸、赤外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、防霧剤、及び防カビ剤などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、トコフェノール等が挙げられる。
【0066】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファィト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12−15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、トリス(2−〔(2,4,7,9−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−メチル−4−[3−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]プロピル]フェノール、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト等が挙げられる。
【0067】
上記イオウ系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0068】
上記他のヒンダードアミン化合物としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノウンデカン、1,6(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
【0069】
上記造核剤としては、例えば、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム、安息香酸ナトリウムなどの芳香族カルボン酸金属塩;ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)リン酸リチウム、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート等の酸性リン酸エステル金属塩;ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトールなどの多価アルコール誘導体などが挙げられる。
【0070】
上記加工性改良剤としては、公知の加工性改良剤の中から適宜選択することができるが、例えば、エチレンビスステアリン酸アミドやエルカ酸アミドなどを用いてもよい。
【0071】
上記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナケイ酸ナトリウム、ハイドロカルマイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ゼオライト等のケイ酸金属塩、活性白土、タルク、クレイ、ベンガラ、アスベスト、三酸化アンチモン、シリカ、ガラスビーズ、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、アスベスト、ウオラストナイト、チタン酸カリウム、PMF(鉱物繊維)、石膏繊維、ゾノライト、MOS(Magnesium Hydroxide Sulfate Hydrate,繊維状マグネシウム化合物),ホスフェートファイバー、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セルロースナノファイバー等が挙げられる。この中でも、無機フィラーを用いてよい。充填剤は樹脂との親和性を改善するためにチタン系、シラン系等の表面処理剤で表面処理されたものが好ましい。
【0072】
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、二塩基酸エステル、塩素化パラフィン、ポリエステル、エポキシ化エステル、リン酸エステル、トリメリット酸エステル等が挙げられる。
【0073】
上記金属石鹸としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛などの金属と、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸などの飽和もしくは不飽和脂肪酸との塩が用いられる。含水率、融点、粒径、脂肪酸の組成、製造方法がアルカリ金属の脂肪酸塩と金属(水)酸化物の反応による複分解法であるか脂肪酸と金属(水)酸化物の溶媒存在下もしくは不存在下に中和反応する直接法であるかによらず、また、脂肪酸か金属のいずれかが過剰であっても用いられる。
【0074】
赤外線吸収剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ハイドロタルサイト類化合物としては、天然物でも合成品でもよく、リチウムなどのアルカリ金属で変性されたものでもよい。一般式:ZnxMgyAl
2(OH)
2(x+y+2)CO
3・nH
2O(式中、xは0〜3、yは1〜6、また、x+yは4〜6を示す。nは0〜10を示す)で表される組成のものが好ましく、結晶水の有無や表面処理の有無によらず用いることができる。
ハイドロタルサイト類化合物は、結晶水を脱水したものであってもよく、ステアリン酸等の高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩等の高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩等の有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル又はワックス等で被覆されたものであってもよい。
【0075】
ハイドロタルサイト類化合物の一例は、例えば、天然ハイドロタルサイトや商品名:DHT−4A(協和化学工業株式会社製)、マグクリア(戸田工業株式会社製)、マグセラー(協和化学工業株式会社製)、スタビエースHT−P(堺化学工業株式会社製)等が挙げられる。
リチウムアルミニウム複合水酸化物の一例としては、例えば、OPTIMA−SS(戸田工業株式会社製)、ミズカラック(水澤化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0076】
上記帯電防止剤としては、例えば、脂肪酸第四級アンモニウムイオン塩、ポリアミン四級塩等のカチオン系帯電防止剤;高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールEO付加物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アニオン型のアルキルスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物リン酸エステル塩等のアニオン系帯電防止剤;多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリコールリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル等のノニオン系帯電防止剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性型アルキルベタイン、イミダゾリン型両性活性剤等の両性帯電防止剤が挙げられる。
【0077】
上記防曇剤としては、例えば、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノモンタネート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレンオキサイド付加物等のソルビタン系界面活性剤、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、トリグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンジモンタネート、グリセリンモノオレエート、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンセスキオレエート、テトラグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリントリオレエート、テトラグリセリントリオレエート、テトラグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノラウレート等のグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレンオキサイド付加物等のグリセリン系界面活性剤、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールモノステアレート等のポリエチレングリコール系界面活性剤、アルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物、ソルビタン/グリセリン縮合物と有機酸とのエステル、ポリオキシエチレン(2モル)ステアリルアミン、ポリオキシエチレン(4モル)ステアリルアミン、ポリオキシエチレン(2モル)ステアリルアミンモノステアレート、ポリオキシエチレン(4モル)ラウリルアミンモノステアレート等のポリオキシエチレンアルキルアミン及びその脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0078】
上記防霧剤としては、例えば、パーフルオロアルキル基、ω−ヒドロフルオロアルキル基等を有するフッ素化合物(特にフッ素系界面活性剤)、またアルキルシロキサン基を有するシリコーン系化合物(特にシリコーン系界面活性剤)等が挙げられる。
【0079】
上記防カビ剤としては、例えば、含窒素含硫黄系、有機臭素系、含窒素系、砒素系等の有機系防黴剤、銀化合物等の無機系防黴剤等が挙げられる。
【0080】
本実施形態の農業用フィルムの製造方法は、樹脂組成物をフィルム状に成形する成形工程を含む。
成形工程には、公知の方法が用いられるが、インフレーション法及びダイ法等の溶融押出成型法、溶液流延法、カレンダー法、インフレーション法及びダイ法等による共押出法、多層加工法、ラミネート法、内・外部加熱法等を用いてもよい。これにより、単層または複数層の農業用フィルムが得られる。
【0081】
また、農業用フィルムの製造方法は、上記の成分を混合して樹脂組成物を得る混合工程をさらに含んでもよい。
混合工程には、タンブラーやヘンシェルミキサ−等の各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー等で溶融混練する方法が挙げられる。
また各成分を予め混合せずに、又は一部の成分のみ予め混合して、フィーダーを用いて押出機に供給し溶融混練して、樹脂組成物を製造してもよい。更には、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、再度、他の成分と混合し溶融混練することによって樹脂組成物を製造することもできる。
また、上記の混合・混練工程に用いる合成樹脂は、粉状、ペレット状等の所定形状、または繊維状を有するものであってもよい。
【0082】
本実施形態によれば、農業用フィルムの硫黄吸収抑制能の改善方法を提供できる。農業用フィルムの硫黄吸収抑制能の改善方法は、ヒンダードアミン系光安定剤に、その相乗剤としてベンゾエート化合物を添加することで、農業用フィルム100において硫黄吸収抑制能を向上できる。
【0083】
これらの所定のヒンダードアミン系光安定剤、及び所定のベンゾエート化合物には、農業用フィルムで説明したものが用いられる。
【0084】
本実施形態によれば、農業用フィルム100を用いた植物の育成方法を提供できる。植物の育成方法は、農園芸用設備に、上記の農業用フィルム100を配置する工程と、農園芸用設備内に植物を配置する工程と、農園芸用設備内で、硫黄燻蒸する工程と、を含んでもよい。これによって、長期耐候性に優れた農園芸用設備を実現できる。農園芸用設備として、例えば、グリーンハウスが用いられる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0087】
<樹脂組成物の調製>
(実施例1)
熱可塑性樹脂(直鎖状低密度ポリエチレン)100質量部、下記の化学式A1で表されるヒンダードアミン系光安定剤0.3質量部、下記の化学式B1で表されるベンゾエート化合物0.7質量部、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系UV吸収剤、株式会社ADEKA社製、製品名:アデカスタブ1413)0.1質量部、フェノール系酸化防止剤(ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)0.05質量部、リン系酸化防止剤(トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト)0.05質量部、及び金属石鹸(ステアリン酸カルシウム)0.05質量部を、ロッキングミキサー(愛知電機株式会社製)を用いて30分間混合後、二軸押出機(日鋼TPK商事株式会社製、TEX−28V)を用いて、押出温度190℃、スクリュー回転数150rpmの条件で造粒した。造粒したペレットを、熱風乾燥機(EYELA社製、WINDY OVEN WFO−1001SD)を用いて60℃、8時間乾燥させた。以上により、ペレット状の樹脂組成物を得た。
【0088】
(実施例2〜11、比較例1〜3)
表1に示す配合比率に従って、熱可塑性樹脂、ヒンダートアミン系光安定剤、ベンゾエート化合物および紫外線吸収剤を用い、その他は実施例1と同様にして、混合および押出加工によってペレット状の樹脂組成物を得た。
【0089】
なお、化合物A1は、乳鉢で粉砕し、デシケーター中でオーバーナイト(一晩放置)したものを使用した。化合物A2は、液添装置を用いて添加した。
【0090】
以下、表1の原料情報を示す。
(熱可塑性樹脂)
・直鎖状低密度ポリエチレン:日本ポリエチレン株式会社製NF464N、密度:0.918kg/m
3
・低密度ポリエチレン:株式会社NUC社製NUC−8230、密度:0.928kg/m
3
・エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂:東ソー株式会社製ウルトラセン630、密度:0.936kg/m
3
【0091】
(ヒンダートアミン系光安定剤)
【化11】
【0092】
【化12】
【化13】
【0093】
(ベンゾエート化合物)
【化14】
【0094】
【化15】
【0095】
(紫外線吸収剤)
・紫外線吸収剤C1:ベンゾフェノン系UV吸収剤(アデカスタブ1413)
・紫外線吸収剤C2:ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(アデカスタブLA−36)
・紫外線吸収剤C3:トリアジン系UV吸収剤(Cyasorb UV−1164)
【0096】
【表1】
【0097】
<農業用フィルムの作製>
各実施例・各比較例で得られたペレット状の樹脂組成物を用いて、インフレーション成形機を使用して、樹脂温度:190℃、トルク:50〜70N・m、押出量:1.5kg/hの条件で押出し、厚み:50μm、単層の農業用フィルムを作製した。このとき、農業用フィルムの厚みH1=50μm、ヒンダートアミン系光安定剤および相乗剤を含む層の厚みH2=50μmであった。厚みは、農業用フィルムを板厚方向に切断した切断面について、デジタル顕微鏡を用いて測定した。
ここで、詳細な農業用フィルムの作製条件を以下の通りとした。
得られたペレットを、φ20mm、L/D=25(フルフライトスクリュCR=2.0)の押出部を有する東洋精機社製LABO PLASTOMILL 4C150−01に直径25mm、スリット幅0.8mmのリングダイを用いたインフレーション成形により成膜して得られたフィルムはSUMTAK社製フィルム引取装置にて巻き取った。押出部の条件は、加工温度190℃、スクリュー回転数60rpmとし、巻き取り速度は膜厚が50μmの農業用フィルムになるように調整した。
【0098】
得られた農業用フィルムについて、硫黄取り込み量、ヘイズ値を測定、長期耐候性、透明性を評価した。
【0099】
<硫黄取り込み量の測定>
(手順A1)
得られた農業用フィルムを用いて、下記の(1)、(2)、(4)、及び(5)の順番に従って、硫黄燻蒸処理前における農業用フィルム中の硫黄元素の含有量(ppm)を測定した。この測定値をS
0とする。
(手順A2)
手順A1で硫黄燻蒸処理前における硫黄元素の含有量の測定対象とする農業用フィルムを用いて、下記の(1)、(2)、(3)、(4)、及び(5)の順番に従って、硫黄燻蒸処理後における農業用フィルム中の硫黄元素の含有量(ppm)を測定した。この測定値をS
1とする。ただし、S
1は、4つの測定値の平均値とした。
(手順A3)
その後、上記の手順A1で得られたS
0および手順A2で得られたS
1を用いて、以下の式(I)に基づいて、農業用フィルムの硫黄取り込み量ΔW(ppm)を算出した。
ΔW(ppm)=|S
1−S
0| ・・・式(I)
【0100】
(1):試験片の準備
農業用フィルムを切出し、縦幅13cm×横幅2.5cmの短冊状フィルムの試験片Aを作製した。
【0101】
(2):洗浄処理
試験片A、液温25℃、3Lの蒸留水、及びスターラーチップを、直径18cmのビーカーに入れ、5分間スターラーで攪拌した。蒸留水に浸漬させた試験片Aを取り出し、その表面の水分をキムワイプで拭き取った。その後、試験片Aを吊した状態で30分間保持することで乾燥させた。
【0102】
(3):硫黄燻蒸処理
図2には、硫黄燻蒸処理のために使用する燻蒸設備200の概要を示す。
まず、縦幅50cm×横幅56cm×高さ60cmの略直方体形状の閉鎖空間を備えるビニールハウス210(アズワン社製、ポータブルヒュームフード エコノフード)を準備した。
続いて、ビニールハウス210の内部の天面212に攪拌機220(新東科学社製、スリーワンモーター BL1200)を設置し、その内部の底面214に加熱装置(ホットプレート230)を設置した。そして、ホットプレート230(IKA製 C−mag ホットプレート HP4)上の中央にアルミニウム箔製のトレイ240(底面の面積:16cm
2、幅:4cm、奥行き:4cm、高さ:2cm)を配置した。一方、ビニールハウス210の内部に吊り下げた状態で4枚の試験片A(試験片250)を設置した。4つの試験片250を、互いに適度に離間し、いずれもビニールハウス210の約半分の高さに位置するように配置した。
その後、次の硫黄燻蒸操作を、繰り返し4回行った。
(硫黄燻蒸操作)
まず、120mgのパウダー状の硫黄260をトレイ250内に投入した。続いて、180rpmの回転速度で攪拌機220を回転させ、その状態のまま、ホットプレート230を用いてトレイ240を190℃で4時間加熱した。このとき、ホットプレート230は、約4分で20℃から190℃に昇温した。その後、ホットプレート230を停止して加熱を終了し、約30分間かけて、室温まで自然冷却した。
【0103】
(4):表面処理
下記の条件で光照射を試験片Aに対して102分間行い、続いて、下記の条件で光照射とともに水のスプレーを試験片Aに対して18分間行った。この合計120分の操作を1サイクルとして、合計60サイクル行い、合計120時間の表面処理を試験片Aに対して行った。
(光照射の条件)
試験片Aに対して、キセノン耐候試験装置を用いて、ブラックパネル温度65℃、相対湿度50%、ボロシリケートフィルターを使用した条件で、UV照射強度60W/m
2、波長300〜400nmのキセノンランプを120時間照射した。
【0104】
(5):硫黄元素含有量の測定
試験片Aを板厚方向に切断して得られたサンプル200mgを硝酸5gに加えて硝酸溶液を得た。この硝酸溶液に対して、マイクロ波湿式分解装置(Analytik jena社製、TOPwave)を用いて、温度230℃、圧力40Bar、1時間の条件下で、サンプルを液体化する前処理を行うことにより、測定溶液を得た。
得られた測定溶液中の硫黄元素の含有量について、ICP発光分析装置(SII Nano Technology社製、SPS3500)を用いて測定した。
【0105】
表1中、硫黄取り込み量(ΔW×(H2/H1))/H2)の数値について、比較例3の数値の−5%未満の場合を○、比較例3の数値と同程度(±5%以内)または、比較例3の数値の+5%超えの場合を×と評価した。
【0106】
<長期耐候性>
各実施例・各比較例の農業用フィルムについて、ISO4892−2に準じて、ブラックパネル温度65℃、相対湿度50%、ボロシリケートフィルターを使用した条件で、UV照射強度60W/m
2、波長300〜400nmのキセノンランプを120時間照射することで耐候促進試験を行った。この際、120分を1サイクルとし、1サイクルの照射時間中に102分の光のみの照射と18分間の光の照射とともに水のスプレーを行い、これを60サイクルの合計120h行った。
この耐候促進試験中、120h毎に、上記(3):硫黄燻蒸処理と同様にして(硫黄燻蒸操作)を1回行った。
そして、耐候促進試験の0h、840h、1200h、2040hにおいて、株式会社島津製作所社製AG−Xplusを用いて、JIS K7161−1に準じて、試験速度500mm/minで各フィルムの引張強度残率(%)を測定した。引張強度残率(%)とは、耐候促進試験前のフィルムの引張強度を100%としたときの、引張強度の低下率と定義した。
その結果、1200h時において、比較例2、3の引張強度残率が、実施例1〜11や比較例1と比べて小さい値を示し、2040h時において、比較例1〜3の引張強度残率が、実施例1〜11と比べて低い値を示した。よって、実施例1〜11の農業用フィルムは、比較例1〜3と比べて、長期耐候性が優れることが示された。
表1中、2040h時の引張強度残率が、実用上問題ない範囲の場合を○、実用上使用できない場合を×と評価した。
【0107】
<透明性>
各実施例・各比較例の農業用フィルムについて、JIS K7136に準じてHaze(ヘイズ値:%)を測定した。
表1中、ヘイズ値が20%以下の場合を◎、ヘイズ値が20%超え30%以下の場合を○、ヘイズ値が30%超え50%以下の場合を△、ヘイズ値が50%超えの場合を×と記した。
表1中、ヘイズ値が実用上の問題がない範囲である場合を○、ヘイズ値が実用上使用できない場合を×と評価した。
実施例1〜11の農業用フィルムのヘイズ値は、実用上問題なく使用できる程度に低い値を示した。一方、比較例1の農業用フィルムのヘイズ値は、各実施例のものよりも著しく高い数値であった。
【0108】
また、実施例1〜11と比較例1との農業用フィルムについて表面観察を行った。その結果、実施例1〜11には表面にブルームが見られなかったが、比較例1には表面にブルームが観察された。
よって、比較例1の農業用フィルムにおいて、ヒンダートアミン系光安定剤およびベンゾエート化合物を含む層からのブルームによって、ヘイズ値が上昇したものと推察される。
【0109】
実施例1〜11の農業用フィルムは、比較例2、3と比べて長期耐候性に優れており、比較例1と比べて透明性に優れることが示された。このような農業用フィルムは、農作物や植物の育成に用いられる部材に好適であり、とくにグリーンハウスの材料に用いることができる。
また、ヒンダードアミン系光安定剤とベンゾエート化合物と適当に配合することによって、農業用フィルムの硫黄吸収抑制能を向上できる。このため、実施例の農業用フィルムは、植物や農作物の育成時に行う硫黄燻蒸・硫黄散布等に好適に用いることができる。
【解決手段】本発明の農業用フィルムは、硫黄燻蒸または硫黄散布に用いられる農業用フィルムであって、所定のヒンダードアミン系光安定剤と、所定のベンゾエート化合物と、所定の紫外線吸収剤と、熱可塑性樹脂と、を含み、ヒンダードアミン系光安定剤の含有量をAとし、ベンゾエート化合物の含有量をBとしたとき、A、Bが、1.5/8.5≦A/B≦7.5/2.5を満たすように構成される耐候性層を有するものである。