(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御信号が加えられた時に前記ねじれ領域(545、645、745、845)を局所的に加熱するように構成されたレーザシステム(490)を更に有することを特徴とする請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡(400)。
前記制御信号が加えられた時に前記ねじれ領域(545、645、745、845)を局所的に加熱するように構成された加熱装置(660、860)を更に有することを特徴とする請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡(400)。
前記制御デバイス(480)は、前記測定先端(530、530、730、830、930、1030)を励起して振動させるために前記制御信号を変調するように構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の走査プローブ顕微鏡(400)。
前記ねじれ領域(545、645、745、845、945、1045)は、前記測定先端(530、530、730、830、930、1030)を±5°の角度範囲でピボット回転させるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の走査プローブ顕微鏡(400)。
前記カンチレバー(540、640、740、840)及び前記測定先端(530、530、730、830)は、100Hz−5MHzの範囲の共振周波数を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の走査プローブ顕微鏡(400)。
前記カンチレバー(540、640、740、840、940、1040)は、前記ねじれ領域(545、645、745、845、945、1045)に至る電気接続(665、865、965、1065、1075)が統合された取り付けユニット(550、550、750、850、950、1050)を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の走査プローブ顕微鏡(400)。
前記カンチレバー(540、640、740、840、940、1040)は、前記測定先端(530、630、730、830、930、1030)の前記ピボット回転を決定するための少なくとも1つのセンサを有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の走査プローブ顕微鏡(400)。
【背景技術】
【0002】
走査プローブ顕微鏡は、プローブを用いて試料又はその面を走査し
(scan)、それによって試料面のトポグラフィ
(topography)表現を生成するための測定データを供給する。以下の本文では、走査プローブ顕微鏡をSPMと略記する。プローブの測定先端
(measurement tip)と試料面の間の相互作用タイプに
依存して、様々なSPMタイプの間で区別がつけられる。多くの場合に、互いに接触状態にない試料と測定先端の間に電圧を
加え(または、印加し:apply。他の箇所においても同様。)、得られるトンネル電流を測定する走査トンネル顕微鏡(STM)が使用される。
【0003】
走査力顕微鏡(SFM、又は原子間力顕微鏡に対してはAFM)の場合に、試料面の原子間力、一般的にはファンデルワールス力によって測定先端が偏向される
(または、それる。deflected。他の箇所においても同様。)。測定先端の偏向
(または、それること。deflection。他の箇所においても同様。)は、測定先端と試料面の間に作用する力に比例し、この力を用いて面トポグラフィが決定される。論文「複数の走査近接プローブアレイのためのカンチレバーの制御可能な平面外偏向(Controllable off−plane deflection of cantilevers for multiple scanning proximity probe arrays)」、Appl.Phys.A(2008年)、92:525〜530、DOI 10.1007/s00339−008−4668−yにおいて、著者Y.Sarov、T.Ivanov、及びI.W.Rangelowは、4×32個の測定先端の2次元配置を有する測定プローブの製造を記載している。
【0004】
これらの一般的なSPMタイプに加えて、磁気力顕微鏡又は近接場走査光学及び音響顕微鏡のような特定の用途分野に向けて使用される多数の更に別のデバイスタイプが存在する。
【0005】
全ての典型的なSPMタイプは、高アスペクト比、すなわち、構造の深さ又は高さのその最小横広がりに対する高い比率を有する試料上の構造を分析するのに困難を有する。この理由から、標準のSPMは、深い溝及び急勾配の側面を限られた程度までしか像
生成(image)することができない。ここでの制限効果は、SPMプローブの測定先端の有限半径、特にその円錐角である。
図1aは、ウェブ
(web)の走査中のSPMプローブの問題を略示している。
図1bの点線は、急勾配側面を有する高いウェブの側面の測定中に生じる困難を象徴している。
【0006】
この問題を解決するための様々な手法が既に公知である。Ref.Sci.Instr.82、023707−1から023707−5ページ(2011年)に掲載の論文「原子間力顕微鏡による刻み目
(またはアンダーカット。他の箇所においても同様。)及び側壁構造の3次元像
生成(Three−dimensional imaging of undercut and sidewall structures by atomic force microscopy)」において、著者Sang−Joon Cho、Byung−Woon Ahn、Joonhui Kim、Jung−Min Lee、Yueming Hua、Young K.Yoo、及びSang−il Parkは、AFMプローブの測定先端を急勾配側面、特に張出ウェブに沿って誘導するための試料面の法線から±40°のZスキャナのAFM測定ヘッドのピボット回転
(pivoting)を記載している。
図2は、Zスキャナのピボット回転又は傾斜を略示している。この画像は、Park Systems Corporationからの出願文献「3次元原子間力顕微鏡を用いた高スループット及び非破壊側壁粗度測定(High Throughput and Non−Destructive Sidewall Roughness Measurement Using 3−Dimensional Atomic Force Microscopy)」(https://www.parkafm.com/ imag−es/applications/semiconductors/note/1_Park_Systems_App_ Note_Sidewall _Roughness_2012_03_14.pdf)から取ったものである。
【0007】
AFM測定ヘッド全体をピボット回転させるための精密機構を製造する技術的レイアウトは膨大である。これに加えて、AFMによって必要とされる空間は非常に大きくなる。測定先端の支点が、次に、頻繁に起こるが正確にはユーセントリックでない場合に、AFM測定ヘッドの傾斜は、AFMプローブの測定先端の横変位ももたらし、これは、試料上のナビゲーションを有意により困難にする。
【0008】
第2の手法では、針タイプの測定先端の代わりに、ゾウの足(広がった先端:flared tip)として公知の形態にある測定先端が使用される。
図3は、ウェブと垂直にかつそれを横切って案内されるそのような測定先端を略示している。この原理は、著者Yves Martin及びH.Kumar Wickramashingheにより、Appl.Phys.Lett.64(19)、1994年5月9日、2498〜2500ページに掲載の彼らの論文「原子間力顕微鏡での側壁を
像生成する方法(Method for imaging side−walls at atomic force microscopy)」に最初に説明されたものである。z方向(試料法線)の測定先端の
運動を制御する典型的な方法に加えて、それをx方向(高速走査方向)に制御する第2の方法が、
ゾウの足プローブを急勾配側面の上で又は張出部の下で案内するために使用される。
【0009】
AFM測定ヘッドのための
ゾウの足プローブは、生成することが非常に困難であり、従って、非常に高価である。第2のフィードバックループの構成は、更に、非常に複雑かつ従って高価なAFMをもたらす。これに加えて、
ゾウの足プローブを用いて既存のAFMを
改良(retrofit)することは、困難を伴ってのみ可能である。
【0010】
論文「回転タイプミラーのための熱二重カンチレバーバイモルフアクチュエータの解析及び設計(Analysis and design of thermal double−cantilever bi−morph actuators for rotating−type mirrors)」において、著者Dong Hyun Kim、Kyung su Oh、Seungho Park、Ohmyoung Kwon、Young Ki Choi、及びJoon Sik Leeは、MNHT2008、ミクロ/ナノスケール熱伝達国際会議、台湾国台南市、2008年1月6〜9日の会報、1063〜1067ページに、マイクロミラーを調節するための2つのバイメタルビーム
(bimetal beams)から構成される微小電気機械システム(MEMS)を記載している。
【0011】
日本特許出願JP 08−094651は、AFMプローブを開示しており、そのカンチレバー
(cantilever)は、
ピエゾ抵抗材料
(piezoresistive material)の3つのビーム
(beams)を有する。中央ビームに電圧が
加えられ、カンチレバーの偏向が、2つの外部ビームの和信号から決定され、カンチレバーの
ねじれ(torsion)又は曲げ
(bending)が、2つの外部ビームの差信号から確定される。
【0012】
特許文献US 8 458 810 B2は、AFMプローブの長手軸に関して非対称な配置で2つの材料を有するAFMプローブのカンチレバーを開示している。これら2つの材料は、異なる
線膨張率(または線膨張係数:coefficients of linear expansion。他の箇所においても同様。)を有する。カンチレバーの測定先端は、それによってカンチレバーの温度変化の場合に横方向に偏向される。カンチレバー上のバイモルフ材料の非対称配置に起因して、熱信号部分(横偏向)は、トポグラフィ信号部分(法線方向
におけるカンチレバーの偏向)から隔離することができる。
【0013】
最後に言及した2つの文献は、AFMプローブによって供給される測定信号内でトポグラフィ部分から熱部分を分離し、それによって熱測定を可能にするという目的に対処している。急勾配の高い側面又は張出構造を決定する際の問題は、これらの文献のいずれよっても対処されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、従って、高アスペクト比を有する構造を確実に分析することができる補助となる装置及び方法を指定するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一例示的実施形態により、この目的は、請求項1に記載の装置を用いて達成される。一実施形態において、装置は、(a)測定先端を面の上で
(over a surface)走査するための走査デバイスと、(b)
ねじれ領域を有して測定先端のためのものであるカンチレバーであって、(c)
ねじれ領域が、制御信号が
加えられた(applied)時にそれが
ねじれを受け、それによって測定先端をピボット回転させる
(pivots the measurement tip)ように構成される上記カンチレバーと、(d)測定先端のピボット回転なしよりもピボット回転させた測定先端
を用いてより
接近して(closely)検査することができる面の領域を測定先端が走査する時に制御信号を出力するための制御デバイスとを有する走査プローブ顕微鏡を含む。
【0018】
本発明による装置の一例示的実施形態は、円錐形測定先端の通常の曲率半径及び円錐角を有する測定先端の使用を可能にし、従って、高アスペクト比を持たない面を走査する時の従来の走査プローブ顕微鏡の高い分解能機能を高アスペクト比を有する試料に対しても可能にする。急勾配の高い側面を走査するために測定先端をピボット回転させることにより、本定義の走査プローブ顕微鏡は、従来のSPMに対しては測定がアクセス不能な側面のコーナ又は張出部分へのアクセスを可能にする。
【0019】
ピボット回転なしの開始位置に対する測定先端の角度は、ラスター作動又は走査作動が実施される前に
定められる(set)。従って、試料面のトポロジー
(topology)に適合されたピボット回転角を有する測定先端を用いて試料の領域を走査することができる。
【0020】
面トポロジーの構造が既知でない場合に、最初の走査で測定先端をピボット回転させずに試料領域を走査することができる。測定データから生成された画像
(image)から、2回目の走査のための測定先端のピボット回転角が決定される。検査される試料領域が、今度はピボット回転された測定先端を用いて再度走査される。その後に、同じ試料領域の2回の走査の測定データから試料面の忠実な2回目の画像が生成されることになる。2回目の画像により、この画像が現実に依然として適合しないという仮定が生じる場合に、検査される試料領域を測定先端の異なるピボット回転角で再度走査することができる。この工程は、検査される試料領域の忠実な画像が得られるまで繰り返すことができる。
【0021】
更に、測定先端のピボット回転は、
最小限の質量の
運動(movement)しか必要としない。従って、走査作動中に、測定先端を非常に迅速に再現可能にピボット回転させるか又は偏向することができる。従って、本発明による装置を使用する場合に、測定先端による走査中に測定先端のピボット回転角を変更し、それによってこのピボット回転角を試料面のトポロジーに適応させることを考えることができる。
【0022】
一般的に、走査プローブ顕微鏡は、容易に交換可能な測定プローブと、モジュール方式で構成することができる制御信号を生成するための制御デバイスとを有する。従って、既存の設備を上記で定義した装置を用いて
改良することができる。
【0023】
1つの更に別の態様において、ねじれ領域は、互いに接続されて異なる熱膨張率
(または熱膨張係数:coefficients of thermal expansion。他の箇所においても同様。)を有する少なくとも2つの材料層を少なくとも部分領域に含む。他の態様により、
ねじれ領域の少なくとも部分領域が埋込材料を含み、その結果、この部分領域と
ねじれ領域とが異なる熱膨張率を有する。
【0024】
1つの更に別の態様により、
ねじれ領域は、測定先端の大体のピボット回転を
定める(setting)ために互いに接続された少なくとも2つの第1の材料層を有する少なくとも第1の領域と、測定先端の細かいピボット回転を
定めるために互いに接続された少なくとも2つの第2の材料層を有する少なくとも1つの第2の領域とを含み、又は
ねじれ領域は、測定先端の大体のピボット回転及び細かいピボット回転を
定めるために少なくとも2つの埋込材料部分領域を含む。
【0025】
異なる熱膨張を有する2又は3以上の材料の接続部は、その温度変化の場合に曲がる。
ねじれ領域が、測定先端を通るカンチレバーの断面平面に関して非対称な配置で互いに接続された2又は3以上の材料層を有する場合に、カンチレバーのこの
ねじれ領域は、温度変化の場合に
ねじれを受け、従って、カンチレバーもねじれを受ける。この効果は、非対称材料をカンチレバーの
ねじれ領域内に埋め込むことによっても同じく達成することができる。
【0026】
これに代えて、上述の断面平面に関して非対称な温度変化の場合に、
ねじれ領域内の少なくとも2つの材料及び/又は埋込材料の前段落で定めたこの断面平面に関して対称な配置は、
ねじれ領域、従って、カンチレバーが
ねじれを受け、最終的に測定先端がピボット回転又は傾斜されるという結果をもたらす。
【0027】
ねじれ領域は、互いに接続された2又は3以上の材料層の2又は3以上の領域、又は埋込材料の2又は3以上の部分領域を有するので、断面平面からの測定先端の偏向を検査される試料面に意図的かつ精密に適応させるために、局所温度変化をもたらすための2又は3以上のパラメータが利用可能である。
【0028】
別の態様により、
ねじれ領域は、記録ユニット全体の上
に広がる。1つの好ましい態様において、互いに接続された少なくとも2つの材料層の領域が、カンチレバー全体の上を延び、又は埋込材料の少なくとも1つの部分領域が、カンチレバー全体の上
に広がる。
【0029】
カンチレバーのこの実施形態は、2又は3以上の材料層がカンチレバー全体の上
に広がることができるので、容易に、従って、廉価に製造することができる。例えば、上記で定義した断面平面に関して非対称な局所温度変化を
ねじれ領域の範囲で選択することにより、カンチレバーの
ねじれ、従って、測定先端のピボット回転を様々な用途の要件に柔軟に適応させることができる。
【0030】
1つの好ましい態様において、互いに接続された少なくとも2つの材料層の領域、又は埋込材料の少なくとも1つの部分領域は、バイメタル要素を含む。
【0031】
材料層又は埋込材料とカンチレバーの残りの
ねじれ領域とに対して非常に異なる熱膨張率を有する材料が使用される時に、僅かな温度変化であっても、カンチレバーの
ねじれ領域の有意な
ねじれをもたらす。
【0032】
1つの更に別の態様において、
ねじれ領域は、制御信号が
加えられた時に配置の第1の部分を実質的に第1の温度に保ち、配置の第2の部分を実質的に第2の温度に保つように構成されたその配置にある材料を有し、第1の温度は、第2の温度と異なっている。
【0033】
このように定義された
ねじれ領域は、1つの材料で間に合わせ、従って、カンチレバーの製造に関して同じく費用効果的である。
ねじれ領域の構成を適応させることにより、様々な用途の要件を簡単な方式で満たすことができる。
【0034】
別の好ましい態様において、走査プローブ顕微鏡は、制御信号が
加えられた時に
ねじれ領域を局所的に加熱するように構成されたレーザシステムを更に有する。
【0035】
レーザビームは、小さい焦点にフォーカスすることができる。更に、その入射点を
ねじれ領域上に精密に調節することができる。従って、レーザビームを用いて、
ねじれ領域の材料システムの一部分を選択的に加熱することができる。その結果、レーザビームは、上述の好ましい非対称温度変化をもたらすことができる。従って、レーザビームは、指定の断面平面からの測定先端の偏向により、測定先端を検査される試料面トポグラフィに迅速にかつターゲットを定めた様式で適応させるのに極めて適している。
【0036】
1つの更に別の好ましい態様において、走査プローブ顕微鏡は、制御信号が
加えられた時に
ねじれ領域を局所的に加熱するように構成された加熱装置を有する。別の態様により、走査プローブ顕微鏡は、
ねじれ領域の領域内に装着されて制御信号が
加えられた時に
ねじれ領域を局所的に加熱するように構成された少なくとも1つの加熱抵抗器を有する。
【0037】
例えば、加熱抵抗器の形態にある局所加熱装置は、
ねじれ領域の一部分を選択的に加熱することができ、従って、
ねじれ領域内で上述の断面平面に関して非対称な好ましい温度分布をもたらすことができる。
【0038】
1つの好ましい態様により、互いに接続された少なくとも2つの材料層又は少なくとも1つの
埋め込まれた材料の部分領域のうちの
少なくとも1つは、少なくとも1つの加熱抵抗器を含む。
【0039】
2つの材料層又は少なくとも1つの
埋め込まれた材料の部分領域のうちの
1つが2つの機能を
担うので、カンチレバーの
ねじれ領域は複雑な構造を持たず、従って、費用効果的に製造することができる。これら2つの機能は、一方が、
ねじれ領域のバイモルフ構造の一部であることであり、他方が、カンチレバーの
ねじれ領域内に非対称温度分布を生成するための電気抵抗器として機能することである。
【0040】
更に別の好ましい態様において、
ねじれ領域は、少なくとも1つの
ピエゾ(piezo)アクチュエータを含む。
【0041】
測定プローブの記録ユニットの
ねじれ領域としての
ピエゾアクチュエータの使用は、
ピエゾアクチュエータが制御信号に迅速に反応するという利点を有する。その結果、測定先端を上記で定義した断面平面の両側に動的に偏向させ、従って、走査される試料面の構造に適応させることができる。
【0042】
更に別の態様により、記録ユニットは、微小電気機械システムとして構成される。
【0043】
別の態様により、制御デバイスは、測定先端を励起して
(excite)振動させるために制御信号を変調
(modulate)するように構成される。
【0044】
測定先端を励起して振動させるのに、加熱の変調を使用することができる。対称な
ねじれ領域と上述の断面平面に関して非対称な温度変化との場合に、測定先端の振動は、実質的にz方向に、すなわち、試料面に対して垂直な方向に発生する。対称な
ねじれ領域の範囲における非対称な温度変化の場合に、測定先端の振動は、主としてx方向に、すなわち、定めた断面平面と垂直に発生する。
【0045】
ここでの及び同じく本明細書内の様々な箇所での表現「実質的に」は、現時点で利用可能な測定計器に関する測定精度を意味する。
【0046】
1つの好ましい態様において、
ねじれ領域は、測定先端を±5°、好ましくは、±10°、より
強く好ましくは、±15°、
最も強く好ましくは、±20°だけピボット回転させるように構成される。
【0047】
別の好ましい態様により、カンチレバー及び測定先端は、100Hz−5MHz、好ましくは、500Hz−1MHz、より
強く好ましくは、1kHz−500kHz、
最も強く好ましくは、2kHz−200kHzの範囲の共振周波数を有する。更に別の態様により、カンチレバーは、0.001N/m〜600N/m、好ましくは、0.02N/m〜300N/m、より
強く好ましくは、0.04N/m〜150N/m、
最も強く好ましくは、0.08N/m〜80N/mの範囲のバネ定数を有する。
【0048】
有利な態様により、走査デバイスは、x方向が高速走査方向を示す場合に、z
運動に対する距離フィードバックループをz−x
運動に拡張するように構成される。更に別の態様により、走査デバイスは、z
運動の信号をx
運動に対する信号に追加するように構成される。
【0049】
低アスペクト比を有する面を走査する時には、測定先端の
運動は、実質的にx方向の
運動、すなわち、試料面と平行な
運動である。測定先端のこのx方向の走査
運動に、測定先端のz方向の振動、すなわち、試料面に対して垂直な
運動を重ねることができる。急勾配の高い側面を走査する時には、測定先端が走査される側面に対して可能な限り大きい角度で制御される場合に測定データを記録することが好ましい。この制御は、測定先端のz
運動を高速走査方向の
運動に追加することによって部分的にもたらすことができる。測定先端のz方向の
運動を低速走査方向に追加することが更に可能である。
【0050】
本出願における高速走査方向は、走査プローブ顕微鏡が、与えられた面を
行方式の様式(line−wise fashion)で走査する際の方向を
指し示す(refers to)。
行方式(line−wise)の走査方向に対して垂直な
試料面上の方向を低速走査方向と呼ぶ。
【0051】
更に別の態様により、カンチレバーは、
ねじれ領域に至る電気接続が統合された取り付けユニットを有する。
【0052】
走査プローブ顕微鏡のプローブは、最近では好ましくは自動交換可能である。加熱装置のための電気接続は、取り付けユニット内で統合されるので、ピボット回転可能測定先端を有するプローブは、自動的に、すなわち、手動の介在なく交換することができる。その結果は、走査プローブ顕微鏡の簡単な使用性である。以上により、上記で定義した走査プローブ顕微鏡は、例えば、製造環境において使用することができる。更に、自動プローブ交換は、高い再現性及び信頼性を確実にする。プローブ交換の自動化に起因して、1分末端の短いプローブ交換時間を達成することが更に可能である。この短いプローブ交換時間は、特に真空環境において作動するプローブ顕微鏡にとって好ましい。
【0053】
更に好ましい態様により、カンチレバーは、測定先端のピボット回転を決定するための少なくとも1つのセンサを有する。
【0054】
測定先端のピボット回転を決定するためのセンサは、好ましくは、カンチレバーの
ねじれ領域の上側及び/又は下側に
ピエゾ抵抗センサの形態で取り付けることができる。
【0055】
1つの更に別の態様により、走査プローブ顕微鏡は、走査される領域を測定先端のピボット回転なしの場合よりもピボット回転させた測定先端を用いた方がより正確に検査することができるか否かを面トポグラフィと測定先端の輪郭とで決定するように構成された
検知デバイスを更に有する。
【0056】
一実施形態において、高アスペクト比を有する面を検査する方法は、(a)
ねじれ領域を有するカンチレバーに取り付けられた測定先端を面の上で走査する段階と、(b)測定先端のピボット回転なしの場合よりもピボット回転させた測定先端を用いた方がより正確に検査することができる面の領域を測定先端が走査する時に制御信号を
加える段階と、(c)測定先端をピボット回転させるための
ねじれを
ねじれ領域に受けさせる段階とを含む。
【0057】
1つの更に別の態様により、本方法は、測定先端を許容(permitted)すべきか否かを決定するために測定先端の輪郭に実質的に対応する
(correspond)面トポグラフィを
検知する段階を有する。
【0058】
1つの更に別の態様により、本方法は、
検知された面の高さ変化に基づいて測定先端をピボット回転するか否かを判断する段階を有する。
【0059】
初期位置に対する測定先端の角度は、好ましくは、走査作動が実施される前にピボット回転なしで
定められる。従って、試料面のトポロジーに適合されたピボット回転角を有する測定先端を用いて試料の領域を走査することができる。一方、本発明による1つの方法は、走査作動中の急勾配の高い側面の
検知、及び測定先端を相応に傾斜させることによる試料面の走査精度の改善を可能にする。上記で定義した断面平面から測定先端を走査工程中にピボット回転させることができるので、本発明による方法は、高アスペクト比を有する不規則な構造要素を検査するのに適している。
【0060】
更に別の態様により、上述の方法段階のうちの少なくとも1つを実施するために上述の態様のうちの1つによる走査プローブ顕微鏡が使用される。
【0061】
以下の詳細説明は、図面を参照して本発明の現時点で好ましい例示的実施形態を説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1を参照して、高アスペクト比を有する構造を走査する時の従来の走査プローブの欠点を簡単に解説する。次いで、本発明による装置の現時点で好ましい実施形態をより詳細に以下に説明する。
【0064】
図1aの模式
図100は、高いウェブ130を有する試料面120を有する試料110を略示している。ウェブ130は、急勾配側面140及び部分的に張出側面135を有する。従来の走査プローブ顕微鏡の測定先端150は、試料面120及びウェブ130の面を高い横分解能で走査することができる。
図1bに点線170及び190で模式的に象徴しているように、測定先端150は、ウェブ130の側面135及び140を不十分にしか分析することができず、その結果、従来の走査プローブ顕微鏡は、ウェブ130付近の領域160及び180内で再現性の高い測定データを供給することができない。
【0065】
図4は、第3のセクションにおいて定められる走査プローブ顕微鏡400の少数の構成要素を略示している。走査プローブ顕微鏡は、試料410を検査するのに使用される測定変数に従って区別される。走査トンネル顕微鏡(STM)は、試料410の面415のトポグラフィを分析するために試料410と測定先端430の間に電圧が
加えられた時に発生する試料410と測定先端430の間のトンネル電流を使用する。原子間力顕微鏡(AFM)は、試料410による測定先端430の偏向から試料410の面輪郭を確定する。磁気力顕微鏡(MFM)は、試料410と測定先端430の間の磁力を測定する。走査近接場光学顕微鏡(SNOM)は、試料410と測定先端430の間の相互作用としてのエバネッセント電磁波を使用する。走査近接場音響顕微鏡(SNAM)は、試料410の面トポグラフィを走査するために音響近接場相互作用を使用する。走査プローブ顕微鏡の上述のリストは完全ではない。
【0066】
本出願で開示する測定先端430をピボット回転させるための原理は、カンチレバー、すなわち、弾力的に曲げ可能なレバーアーム又は簡略的にバネビームを有する全てのタイプの走査プローブ顕微鏡のプローブに適用することができる。カンチレバーを持たない走査プローブ顕微鏡カンチレバーを本出願で説明する構成に使用するには、その前に、これらの走査プローブ顕微鏡にカンチレバーを装着しなければならない。下記では、原子間力顕微鏡(AFM)のための例示的プローブを用いて本原理を説明する。
【0067】
図4に示す原子間力顕微鏡400は、周囲条件下又は真空チャンバ(
図4には例示していない)内で作動させることができる。分析される試料410は、試料台425上に配置される。試料台425は、走査デバイス420を用いて3つの空間方向に
動くことができる。走査デバイス420は、例えば、
ピエゾアクチュエータ(
図4には示していない)の形態にある例えば1又は2以上の微小変位要素を含む。
【0068】
プローブ455又は測定プローブ455は、先端430又は測定先端430と、それのためのカンチレバー440とを含む。カンチレバー440は、弾性曲げ可能レバーアーム又はバネビームを含む。カンチレバー440は、プローブ455を原子間力顕微鏡(AFM)400の保持装置(
図4には示していない)に取り付けるのに使用する取り付けユニット450を測定先端430と反対に位置する端部に有する。保持装置は、
ピエゾアクチュエータ(
図4には例示していない)を通してAFM400の測定ヘッドに接続することができる。測定プローブ455をAFM測定ヘッドの保持装置に
ピエゾアクチュエータ接続する
ピエゾアクチュエータは、同じく走査デバイスの機能を実施することができる。別の実施形態において、これに代えて又はこれに加えて、試料面415と測定先端の間の相対
運動は、走査デバイス420と、測定プローブ455を保持装置と接続する
ピエゾアクチュエータとの間で分割することができる。例えば、走査デバイス420が、試料平面(xy平面)における試料410の
運動を実施し、上述の
ピエゾアクチュエータが、試料法線方向(z方向)の測定先端430の
運動を実施する。
【0069】
しかし、試料台425は、好ましくは、場所固定のものであるように構成され、測定先端430が、分析される試料410の領域に微小変位要素(
図4には示していない)を用いて運ばれる。
【0070】
プローブ455の測定先端430は、複数の作動モードで作動させることができる。1つのものでは、フィードバック制御を用いずに、測定先端430を試料410の面415の上の一定の高さの場所で走査することができる。これに代えて、閉フィードバックループにおいて、一定の力でプローブ455を試料面415の上で案内することができる。更に、変調方法を用いて、カンチレバー440を試料面415と垂直に振動させ、その結果として試料410の面415を閉フィードバックループにおいて走査することができる。この場合に、カンチレバー440は、その共振周波数で振動するか又は指定周波数で強制振動を実施することができる。共振周波数振動の場合に、すなわち、カンチレバー440又はプローブ455が固有周波数で振動する場合に、周波数変調(FM)の復調が発生し、この場合に、測定先端430と試料410の間の相互作用によって生じる周波数変化が測定される。共振周波数の近くでの強制振動の場合に、測定先端430と試料面415の間の相互作用に起因して変更される振動の振幅を
検知するために、振幅変調(AM)の復調が実施される。
【0071】
試料410の面415による測定先端430又はカンチレバー440の偏向
(deflection)を測定するために、原子間力顕微鏡400の一実施形態において、レーザシステム460が、レーザビーム465をカンチレバー440の先端に案内する。カンチレバー440によって反射されたレーザビーム475は、光
検知器470によって記録される。光
検知器470は、多くの場合に四象限構成を有する。その結果、測定先端430のz(すなわち、試料面415に対して垂直な)
運動だけではなく、測定先端430のx方向の
運動、すなわち、先端430のピボット回転も測定することができる。従来技術では、主として、測定先端430が試料410の上で面415との接触状態で案内される接触モードにおいて横力
(lateral forces)が発生する。横力は、
今しがた(just)検査した試料面415の材料
を示す(give an indication)。
【0072】
本出願で定める測定プローブ455に関して、カンチレバー440に
加えられる制御信号又は調節信号によって引き起こされない測定先端430のピボット回転を決定するために、光
検知器470の四象限構成を使用することができる。
【0073】
これに代えて、測定先端430のピボット回転(
図4には示していない)を確定するために干渉計を使用することができる。この目的に使用することができる干渉計タイプの例は、マイケルソン干渉計又はマッハツェンダー干渉計である。更に、カンチレバー440の
ピエゾ抵抗要素又はセンサ(
図4には例示していない)を用いて測定先端430の偏向を
検知することができる。更に、光学信号と
ピエゾ抵抗要素の測定データとの組合せ(同じく
図4には示していない)から測定先端430の偏向を決定することができる。
【0074】
原子間力顕微鏡400は、更に制御デバイス480を有する。制御デバイス480は、制御信号のための供給線484によって第2のレーザシステム490に接続される。
図4に示す例では、カンチレバー440のビーム又はアームの局所加熱をもたらすために、第2のレーザシステム490のレーザビーム495が、プローブ455のカンチレバー440のアーム又はビームのうちの
1つの上に向けられる。
【0075】
第2のレーザシステム490の特別な要件は課せられない。その波長は任意に選択することができる。しかし、電磁スペクトルの可視範囲の波長は、レーザビーム495の調節を容易にする。カンチレバー440の一部分を局所的に加熱するには数
(a few)mWの出力で十分である。カンチレバー440の一部分の局所加熱をもたらすためには、<10μmの焦点上にフォーカスすることが必要である。これらの要件は、最新のレーザシステムに対しては問題ではない。2つのレーザシステム460及び490の波長が異なる場合が有利である。この場合に、レーザ490による(例えば、迷光による)光
検知器470の信号の外乱
(disturbance)を防止するためにフィルタを使用することができる。
【0076】
これに加えて、制御デバイス480は、取り付けユニット450への第2の接続部482を有する。制御信号は、この接続部482を通してプローブ455のカンチレバー440に送出することができる。以下の図では、原子間力顕微鏡400のためのプローブ455のいくつかの例示的なカンチレバー440を紹介する。測定プローブのカンチレバーに接続部482及び/又は484を通して
加えられる制御信号又は調節信号によって生じる測定先端の偏向も解説する。
【0077】
図5の模式
図500は、上部にプローブ555の平面図を示し、下部にプローブ555及び測定先端530の対称平面を通る断面を示している。
図5の下部に示すyz平面は、「発明の概要」に定めたプローブのカンチレバー及びその測定先端を通る断面平面に対応する。
図4の解説の関連で上述したように、プローブ555は、測定先端530と、カンチレバー540と、取り付けユニット550とを有する。
図5に示す例におけるカンチレバー540は、カンチレバー
540全体の上
に広がるねじれ領域545を有する。
ねじれ領域545は、互いに上下に配置されて異なる熱膨張率を有する2つの層542及び544を含む。
ねじれ領域545の2つの層542及び544は、例えば、半導体材料及び/又は電気絶縁材料で構成することができる。ここで説明する半導体層の一例は、シリコン(Si)であり、絶縁体材料の一例は、窒化珪素(Si
3N
4)である。更に、2つの層542及び544の
1つは、アルミニウム層又はクロム層のような金属層を含み、他方は、半導体層又は電気絶縁層を含むことができる。更に、これら2つの層542及び544に関して、異なる
線熱膨張率(または線熱膨張係数:coefficients of linear thermal expansion。他の箇所においても同様。)を有する限りあらゆる材料を考えることができる。
【0078】
カンチレバー540の材料とは異なる
線膨張(linear expansion)を有する第2の層を生成するために、カンチレバー540の全体の材料又はその部分領域内に異なる元素又は異なる化合物から構成される材料を特定の深さまで埋め込むことも可能である。この場合に、半導体製造から公知の方法及び材料を使用することができる。埋め込みは、カンチレバー540の上側(すなわち、測定先端530から遠い側)から、及び/又はカンチレバー540の下側(すなわち、測定先端530を有する側)から実施することができる。
【0079】
測定先端530は、カンチレバー540の下層544の材料又は上層542の材料、又は異なる材料で製造することができる。これは、取り付けユニット550にも同じく適用される。すなわち、測定先端530、層542及び544の
1つ、及び取り付けユニット550を一体的に製造することができる。これに代えて、プローブ555の構成要素の個々のもの又は全ては、適切な材料から別個に製造し、その後に接着
結合(adhesive bonding)等によって接続することができる。
【0080】
カンチレバー540の
ねじれ領域545の均一な温度変化は、yz平面内の測定先端530の
運動又は偏向をもたらす。その一方、
ねじれ領域545の不均一又は局所的な温度変化は、主としてxy平面内の測定先端530の
運動、より具体的には−x方向又は+x方向の測定先端の追加の傾斜をもたらす。全体的に、
ねじれ領域内の局所温度変化は、
yz平面内とxy平面内とにおける測定先端530の偏向の重ね合わせをもたらす。
【0081】
カンチレバー540のアーム又はビームの局所加熱は、例えば、レーザシステム490のレーザビーム495を用いて位置560においてビームを局所的に照射することによってもたらすことができる。測定先端530の傾斜又はピボット回転は、位置560において
ねじれ領域545内に導入される光出力に第一近似で比例する。レーザビーム495の光出力に加えて、測定先端530の傾斜範囲は、レーザビーム495が
ねじれ領域545上に入射する位置560にも依存する。レーザビーム495が入射する材料の吸収係数
(absorption coefficient)及び
比熱伝導(specific heat conduction)も、測定先端530のピボット回転角に影響を及ぼす。
【0082】
−x方向及び+x方向の測定先端530の偏向は、制御デバイス480の制御信号が接続部484を通してレーザシステム490に
加えられた時にカンチレバー540の低い質量に基づいてマイクロ秒の範囲の非常に短い時定数で発生する。
ねじれ領域545上の位置560におけるレーザビーム495の最初の入射から
ねじれ領域545又はカンチレバー540内で熱平衡が確定され終わるまでの所要時間は、層542及び544の材料の熱伝導率に強く依存する。更に、この時定数は、カンチレバー540の膨張と取り付けユニット550の体積及び材料とによる影響を強く受ける。従って、熱時定数は、数
(a few)マイクロ秒からミリ秒の範囲で変化する。レーザビーム495が制御デバイス480によって停止された後にカンチレバー540が熱平衡に戻る際の時定数は、一般的に
、より大きい。
【0083】
従って、測定先端530がその走査工程中にピボット回転状態に留まるためには、局所温度勾配を連続的なエネルギ導入によって維持しなければならない。測定プローブ555が変調方式で作動される場合に、カンチレバー540はz方向に振動する。しかし、カンチレバーの振動の振幅は、一般的に小さく(<1μm)、その結果、この振幅は、レーザ490のレーザビーム495による局所加熱に対して無視することができる影響のみを有する。
【0084】
位置560の領域内の局所温度増大は、レーザビーム495の出力だけではなく、材料542及び544と、
ねじれ領域545の範囲のレーザビーム495の位置560とに依存する。最大局所温度増大ΔTは、数
(a few)K(ケルビン)の範囲にある。
【0085】
図5では、単一レーザビーム495が、位置560における
ねじれ領域545を局所的に加熱する。しかし、
ねじれ領域545のアームに沿って配置された入射点(
図5には示していない)を有する複数のレーザビームを用いて、
ねじれ領域545のアーム又はビームをより大きい区域にわたって均一に加熱することができる。この目的に対して、第2のレーザシステム490のレーザビーム495から2又は3以上のレーザビームを経路変更することができる。1つの代替実施形態において、各レーザビームに対して専用レーザシステム(
図4には例示していない)を使用することができる。これに代えて、
ねじれ領域545のより大きい区域を均一に加熱するのに使用される円柱レンズを用いて楕円形フォーカスを生成することができる。レーザ490としてレーザダイオードが使用される時に、固体レーザは典型的には楕円形ビーム(
図4に図示していない)を既に有するので、円柱レンズを省くことができる。
【0086】
図5に示す例示的な
ねじれ領域545は、異なる熱膨張率を有する2つの材料を有する。
ねじれ領域545内に3又は4以上の材料を上下に重ね合わせ配置することも可能である。しかし、3又は4以上の異なる材料の上下重ね合わせ配置では、カンチレバー540の共振周波数が10kHzから100kHzの範囲に留まるように注意しなければならない。
【0087】
これに加えて、
図5に示す
ねじれ領域545の場合に、両方の層542及び544が全体の
ねじれ領域545の上
に広がる。しかし、層542及び544の
うちの一方又は両方の層が全体の
ねじれ領域545にわたっては延びないことも可能である。
ねじれ領域は、異なる材料を含む部分層から構成することができる。それによってプローブ555の
ねじれ領域545に対する製造コストが増大するが、この構成は、
ねじれ領域545を例えばプローブ555の共振周波数及び測定先端530のピボット回転角のような様々な要件に適応させるための新しい自由度をもたらす。更に、例えば、測定先端530の近くに配置された
ねじれ領域545の第1の部分層を測定先端530の大体の偏向に向けて使用することができる。
ねじれ領域545内で取り付けユニット550の近くに配置された
ねじれ領域545の第2の部分層は、測定先端530の微細な位置合わせに向けて使用することができる。
【0088】
更に、
図5の例では、両方の層542及び544は、
ねじれ領域545の区域全体を占有する。別の可能性は、層542及び544の
うちの一方が
ねじれ領域545の1つの部分領域内だけに配置される配置である(
図5には例示していない)。更に、層の
うちの一方542又は544は、
ねじれ領域545内の複数の部分区域に配置することができる(同じく
図5には示していない)。それは、
ねじれ領域を特定の用途に適応させるための更に別の自由度を提供する。
【0089】
ねじれ領域545を局所的に加熱するために、レーザビーム495は、層542及び544のうちの一方又は両方を有する位置で
ねじれ領域545上に入射することができる。更に、2つの層542及び544が配置された様々な部分領域は、レーザビーム495を用いて個々に照射することができる。更に、互いに接続された2又は3以上の層を有する様々な部分領域は、様々なレーザ源を用いて選択的に加熱することができる。更に、レーザシステム490のレーザビーム495から層542及び544の様々な領域上に個々に向けられる複数のレーザビームを生成することができる(
図5には例示していない)。
【0090】
上述のように、
図5に表す
ねじれ領域545は、カンチレバー
540全体の上
に広がる。その結果、カンチレバー540は単純であり、製造に関して費用効果的である。
ねじれ領域545がカンチレバー540の部分区域しか覆わないカンチレバー540を生成することも可能である(
図5には例示していない)。
【0091】
図5に表す例では、レーザビーム495は、カンチレバー540の
ねじれ領域545の左手のアーム又はビーム上の位置560に向けられる。位置560における局所加熱は、層542又は544の
いずれかの材料が
、より大きい
線熱膨張率を有するか
、に
依存して、測定先端530の−x方向又は+x方向のピボット回転をもたらす。検査される試料410の面トポグラフィ415が、測定先端530が反対方向に傾斜することを必要とする場合に、レーザビーム495は、
ねじれ領域545の右手ビームの位置上に向けられ、
ねじれ領域545の右手ビームが局所的に加熱される(
図5には示していない)。
【0092】
図6の模式
図600は、プローブ655を提示している。プローブ655は、寸法及び材料組成に関して
図5のプローブ555に対応し、すなわち、測定先端630と、カンチレバー640と、取り付けユニット650とを含む。
ねじれ領域645は、カンチレバー
640全体の上を延び、異なる熱膨張率を有する2つの材料642及び644を有する。更に、プローブ650は、
ねじれユニット645又はカンチレバー640のアーム又はビームに取り付けられた加熱抵抗器660の形態にある加熱装置を有する。加熱抵抗器660は、例えば、薄いコーティングの形態で構成することができる。現時点で好ましい材料はアルミニウムである。アルミニウムは、高い熱膨張率と比較的大きい電気抵抗とを有する。類似の特性を有する他の
金属も同様に使用することができる。
【0093】
簡略化目的で、
図6は、加熱抵抗器660を矩形の形態で例示している。典型的に、加熱抵抗器は、蛇行した電気導体構造を有する。
図6aは、折り畳み電気導体の形態にある2つの加熱抵抗器を有する測定プローブの下側を示している。導体の幅は、数
(a few)マイクロメートルの範囲にある。この長さは、一般的に数
(a few)百マイクロメートル、例えば、200μmから500μmである。
【0094】
カンチレバー640上への加熱抵抗器の装着を例を参照して以下に説明する。例示的なカンチレバー640は、4.6μm厚のシリコン層を有する。このシリコン層は、0.6μmの厚みを有する酸化珪素によって覆われる。最初の段階では、薄いクロム層(約50nm)が、粘着層として酸化珪素層上に堆積される。クロム層の上には、1μm厚のアルミニウム層が、
図6aに示す導体構造の形態で堆積され、この層が加熱抵抗器として機能する。
【0095】
加熱抵抗器は、半導体カンチレバー640内にドーパントを埋め込むことによって製造することができる。この工程は、書籍「PRONANO:ナノスケールの分析及び合成のための大規模平行インテリジェントカンチレバープローブプラットフォームの統合プロジェクト会報(PRONANO:proceedings of the integrated project on massively par−allel intelligent cantilever probe platforms for nanoscale analysis and synthesis)」、Thomas Sulzbach及びIvo W.Rangelowにより出版、ミュンスター:Verlagshaus Monsenstein und Vannerdat、ISBN:978−3−86991−177−9に記載されている。
【0096】
図6に図示の実施形態において、加熱抵抗器660は、カンチレバー640の2つの層642及び644に加えて付加される。しかし、加熱抵抗器660を付加する時に、2つの層の
うちの一方642又は644を省くことも可能である。この場合に、カンチレバーの層642又は644とは異なる
線熱膨張(linear thermal expansion)を有する加熱抵抗器660が、カンチレバー640の第2の層の機能を
担う。カンチレバー640の
ねじれ領域645内にドーパントを埋め込むことによって加熱抵抗器660を製造することができる。
【0097】
加熱抵抗器660は、取り付けユニット650を通って延び、接続部482を通して加熱抵抗器660を制御デバイス480に接続する2つの供給線665を有する。
【0098】
加熱抵抗器660は、それが取り付けられた
ねじれ領域645のビームの局所加熱を可能にする。
図5の解説の関連で記述したものと同様に、
ねじれ領域645のビームの局所加熱の結果として、測定先端630は−x方向又は+x方向に傾斜する。カンチレバー640内で加熱抵抗器660による局所熱入力と取り付けユニット650を通じた熱放散との間での熱平衡を確定するための熱時定数は、上記に示したものと同程度の大きさのものである。カンチレバー640の低い質量に起因して、
ねじれ領域645を局所的に加熱するために加熱抵抗器660によって熱に変換される電力は、数
(a few)mW
(典型的には2mWから10mWの範囲内)の範囲の低い電力で十分である。
【0099】
加熱抵抗器660はデジタル作動させることができ、すなわち、制御信号が
加えられた時に指定電圧が加熱抵抗器660に
加えられ、加熱抵抗器660は、定められた電力を対応する熱エネルギに変換する。これに代えて、加熱抵抗器660は、その電力損失を供給線665に
加えられる電圧に
従って定めることができるようにアナログ作動させることができる。
図4に示す原子間力顕微鏡が使用される時に、加熱抵抗器660を閉フィードバックループとして使用することができる。この場合に、干渉計又は
ピエゾ抵抗センサを用いて決定することができる測定先端の傾斜は、制御変数として機能する。更に、
ねじれ領域内の温度変化の測定から測定先端の傾斜を確定することができる。
【0100】
図6に示す例では、加熱抵抗器660は、カンチレバー640のビーム区域のうちの大部分の上、従って、
ねじれ領域645の主要部分の上
に広がる。これに代えて、加熱抵抗器は、
ねじれ領域645の小部分の上に集中させることができる(
図6には例示していない)。更に、加熱抵抗器660は、複数の小さい分散加熱抵抗器にわたって分割することができる(同じく
図6には例示していない)。より小さい分散加熱抵抗器は、直列接続することができ、従って、単一制御信号を用いて制御することができる。複数の加熱抵抗器を供給線と共に個々に又は群で設け、従って、これらの加熱抵抗器を互いに独立して作動させることができる。このようにして、例えば、測定先端630の近くにある第1の加熱抵抗器を大体の偏向に向けて用い、取り付けユニット650の近くに配置された第2の加熱抵抗器を測定先端630の偏向の細かい調節に向けて使用することができ、又はその逆も同じく行うことができる。
【0101】
プローブ655の1つの代替実施形態において、加熱抵抗器660は、記録ユニット640の
ねじれ領域645の右手のアーム又はビーム上に取り付けることができる。
【0102】
図6に示す例では、
ねじれ領域645の左手ビームの上に1つの加熱抵抗器660のみが配置される。それは、層642及び644の
線熱膨張率に
依存して測定先端630の方向−x又は+xの
うちの一方
における能動的偏向を可能にする。反対方向の測定先端630のピボット回転を可能にするために、第2の加熱抵抗器を
ねじれ領域645の右手ビーム上に配置することができる(
図6には示していない)。この加熱抵抗器は、上記で加熱抵抗器660に関して解説したように様々な形態で構成することができる。
【0103】
図6の例では、加熱抵抗器660は、
ねじれ領域645上に取り付けられる。1つの変形では、加熱抵抗器660又は加熱抵抗器は、
ねじれ領域645の下側に取り付けることができる(
図6ではなく
図6aに示す)。この下側取り付けは、1又は複数の加熱抵抗器が、記録ユニット640の偏向を決定するためのレーザビーム465の位置に影響を及ぼすことができないという利点を有する。その一方、カンチレバー640の下側に取り付けられた1又は複数の加熱抵抗器は、カンチレバー640と試料410の面415の間の距離を若干縮める。加熱抵抗器と供給線665との電気接続の領域内でカンチレバー640と試料面415の間の距離に大きく影響を及ぼすことなく供給線665を加熱抵抗器に接続することも困難である。
【0104】
図4から
図6及び以下に説明する本出願で定める走査プローブ顕微鏡の実施形態において、1又は2以上のセンサをカンチレバー440、540、640上に取り付けることも可能である(
図4から
図6には例示していない)。これらのセンサは、カンチレバー440、540、640の
ねじれ範囲、従って、測定先端430、530、630のピボット回転を決定するために使用することができる。これら1又は複数のセンサは、1又は複数の加熱抵抗器の側又はカンチレバー440、540、640の反対側に取り付けることができる。センサは、例えば、その接続部における電圧変化を通してカンチレバーアームの曲げを示す
ピエゾ抵抗センサの形態で構成することができる。
【0105】
図4から
図6では、V字形構成のカンチレバーを有する原子間力顕微鏡のための測定プローブを記述した。しかし、本出願で定める原子間力顕微鏡は、異なる構成のカンチレバーを有する測定プローブを使用することができる。
図7の模式
図700は、ビームの形態にあるカンチレバー740を有する測定プローブ755を略示している。
図7の上の部分は、測定プローブ755の平面図を示しており、下の部分は、プローブ755のカンチレバー740及び測定先端730を通る断面図を表している。測定先端730、カンチレバー740に加えて、プローブ755は、取り付けユニット750を更に有する。
【0106】
カンチレバー740は、その右手半分の上
に広がるねじれ領域745を含む。カンチレバー740のビームは、その全長及び全幅を占有する第1の層744を有する。カンチレバー740の右手半分(平面図で見た時)の上には第2の層742が付加される。2つの層742と744は、異なる
線熱膨張率を有する材料を有する。第2の層742の区域は、カンチレバー740内に
ねじれ領域745を形成する。
【0107】
レーザビーム495を用いて
ねじれ領域745を位置770で局所的に加熱することにより、カンチレバー740の
ねじれ領域745は
ねじれを受ける。その結果、プローブ755の測定先端730は、層742及び744の熱定数
(thermal constants)に依存して−x方向又は+x方向にピボット回転する。レーザビーム495を用いてカンチレバー740のビームの左手部分(すなわち、層744)を局所的に加熱することにより、レーザビーム495が
ねじれ領域745上にフォーカスされた時の測定先端730の傾斜とは反対の方向に測定先端730を傾斜させることが更に可能である。更に、カンチレバー740の左手部分と右手部分は、
カンチレバー730の一方の部分から他方の部分への熱搬送を最小にするためにスリットを用いて分離することができる。
【0108】
しかし、レーザビーム495を層744の上にフォーカスする時には、層742の局所加熱、従って、
ねじれ領域745の局所加熱は、層744内の熱伝導によって間接的にしか発生しない。その結果、レーザビーム495を層744上に案内する時には、
ねじれ領域745は、
ねじれを緩慢にしか受けず、更に、局所加熱は低い空間分解能のみを有する。従って、層744がレーザビーム495に対して実質的に
通過性(transparent)であるようにレーザ490の波長を選択することが好ましい。例えば、シリコンは、赤外線(IR)スペクトル範囲で
通過性である。更に、シリコン窒化物は実質的に
透けて見える(see-through)。
【0109】
上記に
図5の関連で記述したものと類似の方式で、測定先端730のピボット回転範囲を
定めるために、レーザビーム495の入射位置を選択することができる。更に、複数の位置で
ねじれ領域745を局所的に加熱することができる(
図7には示していない)。
【0110】
上述したように、
図7に示す例における
ねじれ領域745は、記録ユニット740の右手半分にわたってしか延びない。それによって上記で記述した欠点がもたらされる。従って、1つの好ましい代替実施形態において、
ねじれ領域745は、同じくカンチレバー
740全体を覆う層742を用いて記録ユニット
740全体に拡大される(
図7には例示していない)。層742及び744の順序は、
図7の図に関して入れ替えることができる。
図5の
ねじれ領域545と同様に、
ねじれ領域745は、両方の層742と744を1つの部分区域内だけに有することができる。更に、
図5に関して解説した
ねじれ領域545の全ての修正は、
図7の
ねじれ領域745に対しても可能である。
【0111】
図8の模式
図800は、測定プローブ855を上部に平面図に示し、下部にカンチレバー840及び測定先端830を通る断面図に示している。測定プローブ855は、
図7に示すプローブ755に対応する。更に、測定プローブ855は、取り付けユニット850を通して案内される供給線865を有する加熱抵抗器860の形態にある加熱装置を有する。加熱抵抗器860は、カンチレバー840の左手半分上に付加される。層844の局所加熱に起因して、
ねじれ領域845は
ねじれを受ける。層844は、左手部分内で受け入れた熱を層844の右手部分内へ、更にそこから層842内に案内し、それによって2つの層842及び844の局所加熱がもたらされ、最終的に測定先端830の傾斜がもたらされる。
図7の解説の関連で上述したように、測定先端830のピボット回転の方向は、層842及び844の材料の熱定数に依存する。
【0112】
同じく
図7の解説の関連で上述したように、加熱抵抗器860は、
ねじれ領域845を間接的にしか加熱せず、従って、上記に示した欠点を有する。測定プローブ855の1つの代替の好ましい実施形態において、加熱抵抗器860は、カンチレバー840の右手半分の上に取り付けることができ、それによって
ねじれ領域の直接的な局所加熱がもたらされる。上述のように、一般的に、層842及び844の熱膨張とは異なる熱膨張を有する加熱抵抗器860は、第2の層842の機能を
担うことができ、その結果、層842を省くことができる(
図8には例示していない)。
【0113】
−x方向と+x方向の両方の測定先端830の傾斜を可能にするためには、第2のほぼ等しい加熱抵抗器を記録ユニット840のビームの右手半分の上に取り付けることが有利である(
図8には示しておらず、
図6aを参照されたい)。
【0114】
図8に示す例では、加熱抵抗器860は、記録ユニット840の左手部分の大部分を覆う。
図6の解説に関連して上述したように、加熱抵抗器860及び/又は記録ユニット840の右手半分の上の第2の加熱抵抗器は、記録ユニットの様々な場所に配置された複数のより小さい加熱抵抗器に分割することができる(
図8には例示していない)。
図6bは、対称平面
(plane of symmetry)(yz平面)に関して対称な加熱抵抗器の配置を示している。
【0115】
加熱抵抗器860に置き換わることができる様々な加熱抵抗器は、個々に、互いに、又は群で駆動することができる。様々な抵抗器が制御デバイス480に個々に接続される場合に、測定先端830の大体の偏向及び細かい偏向に対して様々な加熱抵抗器を使用することができる。
図8に示すように1又は複数の加熱抵抗器をカンチレバー840の上又は下に取り付けることができる。
【0116】
図8に示す第2の実質的に等しい抵抗器860が測定プローブ855上に付加される場合に、層844上に取り付けられた加熱抵抗器860が、層842上に配置された加熱抵抗器とは対照的に
ねじれ領域845を間接的にしか加熱しないという点で、
ねじれ領域845上には非対称性が残る。この非対称性は、層842全体にわたって層842を拡大することによって除去することができ、その結果、
ねじれ領域845は、カンチレバー
840全体の上
に広がる。更に、この非対称性は、カンチレバー840の上又は下にある第2の層842の代わりに、測定プローブ855の対称平面に関して対称に加熱抵抗器をカンチレバー840の上及び/又は下に取り付けることによって回避することができる(
図6aを参照されたい)。
【0117】
図9の模式
図900は、測定プローブ955を表している。測定プローブ955は、一端に測定先端930が取り付けられ、反対端に取り付けユニット950に取り付けられたカンチレバー940を有する。
図5から
図8と同様に、
図9は、上の部分に測定プローブ955の平面図を示し、下の部分にカンチレバー940及び測定先端930を通る断面図を示している。
図5から
図8までのカンチレバー540、640、740、及び840とは対照的に、
図9のカンチレバー940は単一材料のみを有する。半導体材料、特にシリコンは、カンチレバー940にとって好ましい材料である。
【0118】
カンチレバー940は、取り付けユニット950に取り付けられた2つの脚960及び970を含む。2つの脚960と970は、測定先端930の領域内で薄い接続ウェブ980を通して互いに接続される。上側の脚960及び下側の脚970は、供給線965及び482を通して原子間力顕微鏡400の制御デバイス480に接続される。
【0119】
下側脚970は、カンチレバー940の長さの大部分にわたって上側脚960よりもある倍数だけ幅広である。
図9の上の部分から分るように、測定プローブ955のカンチレバー940の上側脚960と下側脚970は同じ厚みを有する。幾何学形状に起因して、下側脚970は、上側脚960のオーム抵抗よりも数
(several)倍小さいオーム抵抗を有する。
ねじれ領域945は、測定プローブ955の場合はカンチレバー
940全体の上
に広がる。
【0120】
制御デバイス480によって供給線482及び965に電圧が
加えられると、2つの脚960及び970は、不均一な方式で加熱される。上側脚960は、下側脚970よりも大きく強く加熱され、従って、下側脚970よりも強い膨張を有する。第一近似では、上側脚960は第1の温度を有し、下側脚980は第2の温度を有し、第1の温度は第2の温度よりも高い。その結果、プローブ955の測定先端930は、負のy方向に傾斜される。
【0121】
カンチレバー940の幾何学形状に起因して、測定先端930の負のy方向の傾斜だけが可能である。更に、カンチレバー940の大きい質量は、カンチレバー540、640、740、及び840よりも大きい熱時定数を意味する。
【0122】
図10の模式
図1000は、2つの
ピエゾアクチュエータ1060及び1070を含む
ねじれ領域1045を有するカンチレバー1040を有する測定プローブ1055を示している。カンチレバー1040は、
図4から
図6までと同じくV字形のものである。測定先端1030は、V字形カンチレバー1040の先端に配置される。反対端では、カンチレバー1040は測定プローブ1055の取り付けユニット1050に取り付けられる。カンチレバー1040は、実質的に均一な材料層1042を有する。カンチレバー1040の左手ビーム上及び右手ビーム上の材料層の上に、各々1つの
ピエゾアクチュエータ1060及び1070が付加される。
ピエゾアクチュエータは、原子間力顕微鏡400の制御デバイス480に供給線1065及び1075、並びに482を通して接続される。
【0123】
ピエゾアクチュエータは、加熱抵抗器に関して上述したように、カンチレバー1040上に、例えば、酸化亜鉛(ZnO)の形態で配置することができる。この配置は、例えば、著者S.R.Manalis、S.C.Minne、及びC.F.Quateにより、論文「一体型アクチュエータ及びセンサを有するカンチレバーを使用する高速
像生成のための原子間力顕微鏡(Atomic force microscopy for high speed imaging using cantilevers with an integrated actuator、and sensor)」、Appl.Phys.Lett.68、871(1996年)に一例として記載されている。一般的に言って、
ピエゾアクチュエータ1060、1070を取り付けるか又は埋め込むためには、半導体業界及びMEMS(微小電気機械システム)製造からの一体型製造方法がほぼ限定的に使用される。通常、
ピエゾアクチュエータは、電圧が
加えられた時に長手方向の寸法に関して変化する。しかし、1つの空間方向(例えば、長手方向)、2つの空間方向(例えば、2つの横方向)、又は3つの空間方向(すなわち、長手方向と横方向の両方)に変えることができる複雑な幾何学形状を有する
ピエゾアクチュエータをカンチレバー1040上に追加することを考えることができる。
【0124】
1又は2以上の
ピエゾアクチュエータ1060、1070の形態にある
ねじれ領域1045は、測定先端1030を正の方向又は負の方向に迅速に偏向させることができるという利点を有する。
ピエゾアクチュエータ1060、1070の応答時間は、その比較的大きいキャパシタンスによって制限され、それによって
加えた電圧の変化の場合に電流の流れがもたらされる。供給線1065の抵抗との関連で
ピエゾアクチュエータのキャパシタンスは、測定先端1030の応答を供給線1065に
加えられる電圧信号の変化に制限する。
【0125】
図10に示す測定プローブ1055は、カンチレバー1040の両方のアーム又はビーム上に
ピエゾアクチュエータ1060、1070を有する。その結果、測定先端の−x方向及び+x方向のピボット回転が可能である。
ピエゾアクチュエータ1060、1070は、一般的に、その平衡構成の両側で長手方向に曲がることができるので、
ねじれ領域1045としての
ピエゾアクチュエータ1060、1070の使用はほぼ十分である。
【0126】
加熱抵抗器660及び860の関連で記述したものと同様に、測定先端1030の大体の偏向と細かい偏向を定められた方式で実施するために、大きい
ピエゾアクチュエータ1060、1070を複数のより小さい
ピエゾアクチュエータで置換することができる。
【0127】
図11は、高アスペクト比を有する試料面415を検査するために、ピボット回転可能測定先端530、630、730、830、930、及び1030を有する走査プローブ顕微鏡400を使用する方法の第1の実施形態の流れ
図1100を示している。本方法は、1110で始まる。第1の段階1120において、測定先端530、630、730、830、930、及び1030は、デフォルト位置、すなわち、測定先端が傾斜されていない位置に運ばれる。段階1130において、走査プローブ顕微鏡400が、試料面415の検査される領域にわたって測定先端530、630、730、830、930、1030を走査する。段階1140において、走査によって収集されたデータから検査ターゲット試料面415の画像が生成される。判断段階1150において生成画像が分析され、測定先端530、630、730、830、930、1030が試料面415を忠実に走査することができなかったということを
示すもの(indications)が画像に存在するか否かに関して判断が行われる。
示すものが存在しなかった場合に、本方法は、段階1160で終了する。
【0128】
しかし、生成画像が試料面415に実質的に対応しないということ
を示すものを分析段階1150が与えた場合に、段階1170において、測定先端530、630、730、830、930、1030は、定められた角度だけ制御信号
を加えることによってピボット回転される。通常、測定先端の3次元輪郭は既知である。測定先端の製造業者は、輪郭データを供給することができる。これに代えて、測定先端の輪郭は、例えば、走査電子顕微鏡を用いた測定によって決定することができる。更に、測定先端530、630、730、830、930、1030の輪郭は、既知の面トポグラフィを有する試料を走査することによって確定することができる。測定先端は磨耗に露出されるので、測定先端530、630、730、830、930、1030の輪郭は、時々に繰り返し決定する必要がある場合がある。著者J.S.Villarubbiaは、J.Res.Natl.Inst.Stand.Technol.第102巻、第4号、7月〜8月、425〜454ページに掲載の論文「走査プローブ顕微鏡の画像シミュレーション、面の再構成、及び先端の推定のためのアルゴリズム(Algorithms for Scanned Probe Microscope Image Simulation、Surface Reconstruction、and Tip Estimation)」において、試料面の測定画像データから測定先端の既知の輪郭を用いて試料面のトポグラフィをどのように決定することができるかを詳細に記載している。
【0129】
試料面415の非忠実的な画像を
示すものは、例えば、試料410の検査される領域の少なくとも1つの部分内の試料面415の変化、すなわち、その面トポグラフィが測定先端の輪郭に近づく又はそれに達する場合に存在する。2回目の走査作動に向けて測定先端がピボット回転する方向は、測定データから生成された画像の分析からも集めることができる。
【0130】
段階1180において、ピボット回転によって生じる測定先端530、630、730、830、930、1030の望ましくない
運動成分が補正される。測定先端の1つの望ましくない
運動成分は、例えば、測定先端530、630、730、830、930、1030と試料面415の間の距離の変化、及び/又は試料面に対する測定先端の横位置の変化である。
【0131】
次の段階1130において、検査される試料面415の領域は、ピボット回転させた測定先端530、630、730、830、930、1030を用いて再度走査される。生成画像が、測定先端に起因する分解能限界
を示すものを含まない場合に、本方法は、1160で終了する。
そうでない場合に、上記で記述した工程が、測定先端のピボット回転を変更して繰り返される。2回目の走査作動の後に生成される画像は、非ピボット回転測定先端を用いて記録された最初のデータと、ピボット回転させた測定先端を用いて記録された2回目のデータとで構成される走査データから構成される。
【0132】
最後に、
図12は、高アスペクト比を有する試料面415を検査するためにピボット回転可能測定先端530、630、730、830、930、1030を有する走査プローブ顕微鏡400を使用する方法の第2の実施形態の流れ
図1200を示している。本方法は、段階1205で開始される。第1の段階1210において、走査プローブ顕微鏡400は、検査される試料面415の領域にわたって測定先端530、630、730、830、930、1030を走査する。判断ブロック1215において、測定先端530、630、730、830、930、1030が、高アスペクト比を有する試料面415の領域を現在走査しているか否かに関して判断が行われる。この判断は、例えば、
今しがた検知された試料面415のトポグラフィと測定先端530、630、730、830、930、1030の輪郭との比較に基づいて行うことができる。
【0133】
判断段階1215の質問が「はい」と答えられた場合に、判断段階1240において、測定先端530、630、730、830、930、1030が走査領域の端部(end)に達したか否かに関して判断が行われる。そうである場合に、本方法は、段階1250で終了する。そうでない場合に、制御デバイス480は、段階1245で、対応する制御信号を
加えることによって測定先端530、630、730、830、930、1030をピボット回転させる。次いで、本方法は、段階1210に進行し、ピボット回転させた測定先端530、630、730、830、930、1030を試料面415にわたって走査する。
【0134】
判断段階1215における判断が、測定先端530、630、730、830、930、1030が高アスペクト比を持たない領域を走査しているというものである場合に、本方法は、測定先端530、630、730、830、930、1030がピボット回転されているか否かが
検知される判断段階1220において続行される。測定先端530、630、730、830、930、1030がピボット回転されていない場合に、判断段階1230において、測定先端530、630、730、830、930、1030が走査領域の端部に達したか否かが決定される。そうである場合に、本方法は、段階1235で終了する。達していない場合に、本方法は、段階1210において続行され、測定先端530、630、730、830、930、1030は、試料面415にわたる走査を続ける。
【0135】
判断段階1220において、測定先端530、630、730、830、930、1030がピボット回転されているという決定が行われた場合に、段階1225において、測定先端530、630、730、830、930、1030の傾斜が逆転される。次いで、本方法は、判断段階1230において続行され、段階1235で終了するか又は段階1210において非ピボット回転測定先端
530,630,730,830,930,1030を用いて試料面を走査し続けるかのいずれかである。