(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、β型銅フタロシアニン顔料と、
式(I):
【0023】
[式中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に水素原子又はC
1〜C
20のアルキル基を示し、R
1、R
2、R
3及びR
4のうち少なくとも一つはC
6〜C
20のアルキル基である]で表される顔料誘導体と、を含有することを特徴とする銅フタロシアニン顔料組成物である。
【0024】
このような本発明の顔料組成物によれば、印刷インキや塗料として使用した際にも優れた流動性を示す。さらに、本発明の顔料組成物は、近年求められているグリコールエーテル系インキにおいて、粘度適性が良好であり、かつ、再溶解性に優れる。
本発明において、粘度適性とは、インキ調製した際の初期粘度及び経時粘度を指す。
本発明において、再溶解性とは、インキにおいて、顔料組成物が、一旦乾燥物となった後のインキを構成する溶剤への溶解性のことである。例えば、再溶解性が低い(悪い)とは、顔料組成物が、一旦乾燥物となると、再度、溶剤へ溶解しにくい状態のことをいう。
印刷実機において、メディアへ転写(印刷)後、印刷版に残ったインキは比較的乾燥しやすい。そのため、インキ壷に戻った際、自らのインキに再度溶解することが好ましいとされている。ところが、再溶解性が悪い場合、乾燥したインキが積層することで、メディアへの転写不良、印刷スジが発生するなど印刷性に支障をきたすことが知られている。これらの観点から、再溶解性は重要な印刷適性の1つと言える。
【0025】
<β型銅フタロシアニン顔料の説明>
本発明に用いる銅フタロシアニン顔料は、銅フタロシアニンクルード(β)を乾式磨砕により微細化しその後溶剤顔料化にてβ型に結晶変換されたもの、或いは銅フタロシアニンクルード(β)を溶剤と共に無機塩の結晶を用いて加熱磨砕処理して得られたβ型の銅フタロシアニンなどが挙げられる。市販品(たとえば、DIC社製FASTOGEN BLUE 5362KやFASTOGEN BLUE TGRなどが挙げられる)を用いても良いし、公知慣用の方法で製造して用いても良い。また色相調整など必要に応じて性能に悪影響を及ぼさない範囲でα型銅フタロシアニン顔料や他構造顔料を含んでいても構わない。もちろん製造後に適宜公知の処理を加えて本発明に用いても良い。
【0026】
顔料結晶制御や用途適性向上を目的に樹脂による表面処理、顔料誘導体や分散剤による表面改質が施されたβ型銅フタロシアニンであっても、性能に悪影響を及ぼさない限り使用しても構わない。
【0027】
<顔料誘導体の説明>
本発明に用いる顔料誘導体を以下に詳述する。
1.式(I)で表される顔料誘導体の説明
【0029】
式中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に水素原子又はC
1〜C
20のアルキル基を示し、R
1、R
2、R
3及びR
4のうち少なくとも一つはC
6〜C
20のアルキル基である
「C
1〜C
20のアルキル基」とは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基などが挙げられる。
R
1、R
2、R
3及びR
4のうち少なくとも一つがとり得る「C
6〜C
20のアルキル基」は、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基などが挙げられるが、再溶解性の観点から、C
8〜C
18のアルキル基が好ましく、C
10〜C
15のアルキル基であることがより好ましい。
さらに、本発明の優れた効果を得るためには、R
1、R
2、R
3及びR
4は、これらのうち2つが「C
6〜C
20のアルキル基」であることが好ましく、当該「C
6〜C
20のアルキル基」は上述のものが挙げられる。
R
1、R
2、R
3及びR
4のうち1つ〜3つが「C
6〜C
20のアルキル基」である場合に、残りの1つ〜3つは、水素原子又はC
1〜C
20のアルキル基であるが、長鎖アルキル基が多くなり過ぎるとそれ自体がインキ中で抵抗となりインキの増粘を引き起こす事が知られている。また長鎖アルキル基の立体障害により分散樹脂の吸着阻害やインキ溶剤への相溶性低下が懸念される事からC
1〜C
3のアルキル基であることが好ましい。
もちろんR
1、R
2、R
3及びR
4のうちすべてが「C
6〜C
20のアルキル基」であってもよい。
式(I)で表される顔料誘導体は、銅フタロシアニン骨格が銅フタロシアニン顔料への吸着部位として働き、スルホン酸4級アンモニウム塩部分がグリコールエーテル系溶剤との相溶基として働く。その為、顔料及び式(I)で表される顔料誘導体のインク溶剤への分散性が向上し、樹脂の成膜を適度に阻害する事で良好な再溶解性を発現できる。一方、スルホ基がNC樹脂等の吸着部位として働く事で、顔料及び式(I)で表される顔料誘導体表面に樹脂が吸着できる様になる。その為、インク溶剤中の樹脂抵抗が低減されインキ粘度を下げる効果が得られる。
【0030】
本発明は、無数に考えられる誘導体の中から、試行錯誤により、銅フタロシアニンに対して特定構造の顔料誘導体を用いることで、上記本発明の効果を得られることを見出したことによる。
本発明は試行錯誤により見出されたものであるから作用機序は定かではないが本発明者らは次のような観点から検討した。
顔料若しくは顔料誘導体がインキ溶剤に素早く馴染まないと、乾燥過程においてインキ樹脂のみが優先的に強固に結合・成膜してしまい、インキ溶剤への再溶解性が著しく低下してしまう。そこで、グリコールエーテル系溶剤に馴染みの良い銅フタロシアニンスルホン酸4級アンモニウム塩を処理する事で、塗膜間に顔料若しくは顔料誘導体を均一に分散させ再溶解性が発現する適度な塗膜強度にする事が可能となると考えられる。この効果は1置換体銅フタロシアニンスルホン酸1級アンモニウム塩などの従来検討されてきたような誘導体添加では発現できない。
【0031】
2.式(II)で表される顔料誘導体の説明
【0033】
式中、R
5、R
6、R
7及びR
8はそれぞれ独立に水素原子又はC
1〜C
20のアルキル基を示し、R
5、R
6、R
7及びR
8のうち少なくとも一つはC
6〜C
20のアルキル基であり、式(II)中の2つの(SO
3NR
5R
6R
7R
8)で示す基は、同一であっても異なっていても良いが、同一である方が工業的観点から望ましい。
「C
1〜C
20のアルキル基」とは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基などが挙げられる。
R
5、R
6、R
7及びR
8のうち少なくとも一つがとり得る「C
6〜C
20のアルキル基」はn−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基などが挙げられるが、再溶解性の観点から、C
8〜C
18のアルキル基が好ましく、C
10〜C
15のアルキル基であることがより好ましい。
さらに、本発明の優れた効果を得るためには、R
5、R
6、R
7及びR
8は、これらのうち2つが「C
6〜C
20のアルキル基」であることが好ましく、当該「C
6〜C
20のアルキル基」は上述のものが挙げられる。
R
5、R
6、R
7及びR
8のうち1つ〜3つが「C
6〜C
20のアルキル基」である場合に、残りの1つ〜3つは、水素原子又はC
1〜C
20のアルキル基であるが、長鎖アルキル基が多くなり過ぎるとそれ自体がインキ中で抵抗となりインキの増粘を引き起こす事が知られている。また長鎖アルキル基の立体障害により分散樹脂の吸着阻害やインキ溶剤への相溶性低下が懸念される事からC
1〜C
3のアルキル基であることが好ましい。
もちろんR
5、R
6、R
7及びR
8のうちすべてが「C
6〜C
20のアルキル基」であってもよい。
【0034】
本発明の顔料組成物は、さらに式(II)の誘導体を有することにより、本発明の効果をより良く得ることができる。当該誘導体は、銅フタロシアニン骨格が銅フタロシアニン顔料への吸着部位として働き、スルホン酸4級アンモニウム塩部分がグリコールエーテル系溶剤との相溶基として働く。その為、顔料及び式(I)で表される顔料誘導体のインク溶剤への分散性が向上し、樹脂の成膜を適度に阻害する事で良好な再溶解性を発現できる。また2置換体である事から式(I)に比べ再溶解性改善効果は高い。
【0035】
3.式(III)で表される顔料誘導体の説明
【0037】
本発明の顔料組成物は、さらに式(III)の誘導体を有することにより、本発明の効果をより良く得ることができる。当該誘導体は、特にニトロセルロース樹脂(以下、NC樹脂と表記)を用いたインキ組成物において、銅フタロシアニン骨格が銅フタロシアニン顔料への吸着部位として働く一方で、スルホ基がNC樹脂等の吸着部位として働く事で、顔料及び式(III)で表される顔料誘導体表面に樹脂が吸着できる様になる。その為、インク溶剤中の樹脂抵抗が低減されインキ粘度を下げる効果が得られる。
【0038】
<配合量の説明>
β型銅フタロシアニン顔料100質量部に対して、式(I)で表される顔料誘導体が0.1質量部以上10.0質量部以下、式(II)で表される顔料誘導体が0.1質量部以上10.0質量部以下で含有し、但し、式(I)で表される顔料誘導体と式(II)で表される顔料誘導体との合計量は10.0質量部以下であるように用いることにより、インキ粘度の観点で好ましい効果を得ることができる。
【0039】
<顔料誘導体の製造方法>
ここで、各顔料誘導体の製法を示す。いずれの方法を採用しても良い。原料となる2置換体銅フタロシアニン顔料スルホン酸誘導体は、市販もしくは公知慣用の方法で製造した2置換体銅フタロシアニン顔料スルホン酸誘導体を使用することができ、公知慣用の方法としては、例えば、銅フタロシアニン顔料を濃硫酸または発煙硫酸によりスルホン化することによって、または上記出発物質をクロロスルホン酸でスルホクロロ化し、次いで水で加水分解することによって2置換体銅フタロシアニン顔料スルホン酸誘導体を製造できる。この2置換体銅フタロシアニン顔料スルホン酸誘導体の水または有機溶剤の均一または不均一な相において、アミンを混合することで所望の誘導体が得られる。2置換体銅フタロシアニン顔料スルホン酸誘導体のスルホ基1モルに対し、0.5モルのアミンを使用することで式(I)を、2置換体銅フタロシアニン顔料スルホン酸誘導体のスルホ基1モルに対し、1モルのアミンを使用することで式(II)を、2置換体銅フタロシアニン顔料スルホン酸誘導体を酸性析出し、ろ別する事で式(III)の顔料誘導体を製造することができる。
【0040】
本発明の顔料組成物を簡便に得る方法の一例を以下に述べるが、本発明はこれらに限定して解釈されるべきものではない。
<顔料組成物の製造方法>
銅フタロシアニンクルードをアトライターにて乾式磨砕を行い、銅フタロシアニン磨砕物を得る。この銅フタロシアニン磨砕物に、水、キシレン、ロジン、2置換体銅フタロシアニンスルホン酸を加え93℃で3時間顔料化を行う。顔料化終了後2置換体銅フタロシアニンスルホン酸を追加し、93℃で1時間追加分散する。分散終了後、100℃まで昇温しキシレンを留去する。留去後、9%酢酸水溶液を滴下しpH=3.5〜4.0になる様調整する。これにラウリルアミン酢酸溶解液を加え1時間攪拌処理する。その後ろ過し、顔料プレスケーキを水でリスラリーする。攪拌終了後スプレードライヤーにて乾燥しパウダー顔料を得る。得られたパウダー顔料組成物に2置換体銅フタロシアニンスルホン酸4級アンモニウム塩をパウダー配合する事で本発明の顔料組成物を得ることができる。
またニーダー磨砕顔料化中に式(I)、式(II)、式(III)を投入する事でも同様の顔料組成物を得る事が出来る。
また乾燥銅フタロシアニン顔料に対し、式(I)、式(II)、式(III)それぞれの乾燥誘導体を混合する事でも同様の顔料組成物を得る事が出来る。上記製造方法を複数組み合わせることも可能である。
【0041】
なお、本発明の顔料組成物は、本発明の効果に好ましくない影響を与えない限りにおいて、さらに添加剤や分散剤などを含有させ、各用途に適するように調整可能である。
また、本発明の顔料組成物は、着色成分としてβ型銅フタロシアニン顔料以外の有機顔料を併用して用いることもできる。
併用可能な有機顔料は各種用途にあわせて公知の有機顔料の中から適宜選抜して用いることができる。
【0042】
こうして得られた本発明の顔料組成物は、着色機能を必要とするような用途であれば何れにも好適に使用できる。例えば、塗料、印刷インキ、着色成形品、静電荷像現像用トナー、液晶表示装置のカラーフィルタ、インクジェット記録用水性インク等の公知慣用の各種用途に使用することができる。
【0043】
本発明の顔料組成物は、初期粘度、貯蔵安定性にも優れた印刷インキを提供できる。印刷インキは、本発明の顔料組成物に対して、公知慣用の各種バインダー樹脂、各種溶媒、各種添加剤等を、従来の調製方法に従って混合することにより調製することができる。具体的には、顔料濃度の高いリキッドインキ用ベースインキを調整し、各種バインダー、各種溶媒、各種添加剤等を使用することにより、リキッドインキを調整することができる。
【0044】
本発明の顔料組成物は、初期粘度、貯蔵安定性に優れたPUインキやNCインキの製造が可能であり、グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキ用の有機顔料組成物として好適である。PUインキはPU樹脂、顔料、溶剤、各種添加剤よりなり、NCインキはNC樹脂、顔料、溶剤、各種添加剤よりなる。PU樹脂は、ウレタン構造を骨格内に有していれば、特に、限定されず、ポリウレタン、ポリウレタンポリウレア等も含む。それぞれ溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、などのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶剤、プロピレングリコールモノエチルエーテル(本明細書において1−エトキシ−2−プロパノールと表記する場合がある)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−i−プロピルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどの他のエーテル系溶剤などが挙げられる。本発明において、グリコールエーテル系溶剤とは、上記溶剤のうち、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤および(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート系溶剤のことをいう。グリコール系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコ−ルモノメチルエーテル、プロピルセロソルブ、ジプロピレングリコ−ルモノメチルエーテルが好ましい。なお、溶剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。各種添加剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤、ガムロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、マレイン化ロジン、硬化ロジン、フタル酸アルキッド樹脂などロジン類、顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス成分などを使用することができる。
【0045】
本発明の顔料組成物を印刷インキとして用いる場合、上記のようにして調製された本発明の顔料組成物を使用した印刷インキを酢酸エチルやポリウレタン系ワニス、ポリアミド系ワニスに希釈して用いることができる。印刷インキの調製は公知慣用の方法を採用することができる。
【0046】
本発明の顔料組成物を着色剤としての塗料とする場合、塗料として使用される樹脂としては、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂など様々である。
【0047】
塗料に使用される溶媒としては、芳香族系溶剤、酢酸エステル系溶剤、プロピオネート系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、窒素化合物系溶剤、ラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル、水等がある。溶媒としては、特にプロピオネート系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系、水等の極性溶媒で水可溶のものが適している。
【0048】
また、顔料添加剤及び/又は顔料組成物を、液状樹脂中で分散し又は混合し、塗料用樹脂組成物とする場合に、通常の添加剤類、例えば、分散剤類、充填剤類、塗料補助剤類、乾燥剤類、可塑剤類及び/又は補助顔料を用いることができる。これは、それぞれの成分を、単独又は幾つかを一緒にして、全ての成分を集め、又はそれらの全部を一度に加えることによって、分散又は混合して達成される。
【0049】
上記のように用途にあわせて調製された顔料組成物を含む組成物を分散する分散機としては、ディスパー、ホモミキサー、ペイントコンディショナー、スキャンデックス、ビーズミル、アトライター、ボールミル、二本ロール、三本ロール、加圧ニーダー等の公知の分散機が挙げられるが、これらに限定されるものではない。顔料組成物の分散は、これらの分散機にて分散が可能な粘度になるよう、樹脂、溶剤が添加され分散される。分散後の高濃度塗料ベースは固形分5〜20%であり、これにさらに樹脂、溶剤を混合し塗料として使用に供される。
【0050】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例及び比較例において特に断りの無い限り、「%」は「質量%」を表すものとする。
【0051】
実施例1
DIC社製銅フタロシアニンクルードをアトライターにて乾式磨砕を行い、銅フタロシアニン磨砕物を得た。この銅フタロシアニン磨砕物200部に対し、ロジン溶解液330部、(1)銅フタロシアニンスルホン酸溶解液450部加えた。これに220部の水を追加し、93℃まで加熱した。加熱終了後直ちにキシレン15部を加え、93℃で3時間攪拌した。攪拌終了後、(2)銅フタロシアニンスルホン酸溶解液330部を追加し、93℃で1時間追加分散した。分散終了後、100℃まで昇温しキシレンを留去した。留去後全体量が4000部となるまで水を追加し、9%酢酸水溶液を30分かけて滴下し、pH3.9に調整した。これに500部のジメチルジアルキル(C=12)酢酸溶解液を加え1時間攪拌処理する。その後、ろ過し、顔料プレスケーキを250部の水でリスラリーし、スプレードライヤーにて乾燥しパウダー状の顔料組成物を得た。
【0052】
実施例1で用いた次の項目について以下説明する。
・ロジン溶解液について
水321部に20%水酸化ナトリウム水溶液を4.6部、水添ロジンを4.4部加え、加熱攪拌により水添ロジンを溶解させたもの。
・上記(1)銅フタロシアニンスルホン酸溶解液について
水434.4部へ20%水酸化ナトリウム水溶液7.4部、銅フタロシアニンスルホン酸(置換基数2)8.2部を加え、加熱攪拌により銅フタロシアニンスルホン酸を溶解させたもの。
・上記(2)銅フタロシアニンスルホン酸溶解液について
水323.1部へ20%水酸化ナトリウム水溶液4.3部、銅フタロシアニンスルホン酸(置換基数2)2.6部を加え、加熱攪拌により銅フタロシアニンスルホン酸を溶解させたもの。
・ジメチルジアルキル(C=12)酢酸溶解液
水471.8部へ99%22部、塩化ジメチルジアルキル(C=12)アンモニウム6.7部(4級アンモニウムとして6.1部)を加え、塩化ジメチルジアルキル(C=12)アンモニウムを加熱攪拌によりを溶解させたもの。
【0053】
実施例2
DIC社製銅フタロシアニンクルードをアトライターにて乾式磨砕を行い、銅フタロシアニン磨砕物を得た。この銅フタロシアニン磨砕物200部に対し、ロジン溶解液330部、(1)銅フタロシアニンスルホン酸溶解液450部加えた。これに220部の水を追加し、93℃まで加熱した。加熱終了後直ちにキシレン15部を加え、93℃で3時間攪拌する。その後100℃まで昇温しキシレンを留去した。留去後全体量が4000部となるまで水を追加し、9%酢酸水溶液を30分かけて滴下し、pH3.9に調整した。その後、ろ過し・洗浄し、顔料プレスケーキを250部の水でリスラリーした。その後、スプレードライヤーにて乾燥しパウダー状の顔料を得た。得られたパウダー顔料組成物全量に対し、銅フタロシアニンスルホン酸4級アンモニウム(ジメチルジアルキル(C=12))塩12.6部をパウダー配合した。これによりパウダー状の顔料組成物を得た。
【0054】
実施例2で用いた次の項目について以下説明する。
・ロジン溶解液について
水321部に20%水酸化ナトリウム水溶液を4.6部、水添ロジンを4.4部加え、加熱攪拌により水添ロジンを溶解させたもの。
・上記(1)銅フタロシアニンスルホン酸溶解液について
水432部へ20%水酸化ナトリウム水溶液7.4部、銅フタロシアニンスルホン酸(置換基数2)5.0部を加え、加熱攪拌により銅フタロシアニンスルホン酸を溶解させたもの。
・上記(2)銅フタロシアニンスルホン酸4級アンモニウム(ジメチルジアルキル(C=12))塩のパウダー作成方法について
水441部に20%水酸化ナトリウム水溶液3.6部と銅フタロシアニンスルホン酸(置換基数2)5.9部を加え加熱攪拌により溶解させる。そこへ水471.8部に99%酢酸22部と塩化ジメチルジアルキル(C=12)アンモニウム5.3部(4級アンモニウムとして4.8部)を加え、加熱攪拌により溶解させたものを滴下した。pHを6.8〜7.5に調整し、ろ過により銅フタロシアニンスルホン酸4級アンモニウム塩のプレスケーキを得た。これを乾燥、粉砕しパウダー状の銅フタロシアニンスルホン酸4級アンモニウム塩を得たもの。
【0055】
実施例3
(第一工程)DIC社製銅フタロシアニンクルードをアトライターにて乾式磨砕を行い、銅フタロシアニン磨砕物を得た。
(第二工程)この銅フタロシアニン磨砕物200部に対し、ロジン溶解液330部、(1)銅フタロシアニンスルホン酸溶解液450部加えた。これに220部の水を追加し、93℃まで加熱した。加熱終了後直ちにキシレン15部を加え、93℃で3時間攪拌した。攪拌終了後、(2)銅フタロシアニンスルホン酸溶解液330部を追加し、93℃で1時間追加分散した。分散終了後、100℃まで昇温しキシレンを留去した。留去後全体量が4000部となるまで水を追加し、9%酢酸水溶液を30分かけて滴下しpH3.9に調整した。これに500部のラウリルアミン(1級アンモニウム(モノアルキル))酢酸溶解液を加え1時間攪拌処理した。その後ろ過し、顔料プレスケーキを250部のイオン交換水水でリスラリーした。攪拌処理終了後、スプレードライヤーにて乾燥しパウダー状の顔料組成物を得た。
【0056】
実施例3で用いた次の項目について以下説明する。
・ロジン溶解液について
水321部に20%水酸化ナトリウム水溶液を15部、水添ロジンを15.0部加え、加熱攪拌により水添ロジンを溶解させたもの。
・上記(1)銅フタロシアニンスルホン酸溶解液について
水434.4部へ20%水酸化ナトリウム水溶液7.4部、銅フタロシアニンスルホン酸(置換基数2)8.3部を加え、加熱攪拌により銅フタロシアニンスルホン酸を溶解させたもの。
・上記(2)銅フタロシアニンスルホン酸溶解液について
水323.1部へ20%水酸化ナトリウム水溶液4.3部、銅フタロシアニンスルホン酸(置換基数2)4.5部を加え、加熱攪拌により銅フタロシアニンスルホン酸を溶解させたもの。
・ラウリルアミン(1級アンモニウム(モノアルキル))酢酸溶解液について
水471.8部へ99%酢酸22部、ラウリルアミン6.2部を加え、ラウリルアミンを加熱攪拌によりを溶解させたもの。
【0057】
実施例4
DIC社製銅フタロシアニンクルードをアトライターにて乾式磨砕を行い、銅フタロシアニン磨砕物を得た。この銅フタロシアニン磨砕物200部に対し、ロジン溶解液330部、(1)銅フタロシアニンスルホン酸溶解液450部加えた。これに220部の水を追加し、93℃まで加熱した。加熱終了後直ちにキシレン15部を加え、93℃で3時間攪拌した。攪拌終了後、(2)銅フタロシアニンスルホン酸溶解液330部を追加し、93℃で1時間追加分散した。分散終了後、100℃まで昇温しキシレンを留去した。留去後全体量が4000部となるまで水を追加し、9%酢酸水溶液を30分かけて滴下し、pH3.9に調整した。これに500部のジメチルジアルキル(C=12)酢酸溶解液を加え1時間攪拌処理した。その後、ろ過し、顔料プレスケーキを700部の水でリスラリーし、スプレードライヤーにて乾燥しパウダー状の顔料組成物を得た。
【0058】
実施例4で用いた次の項目について以下説明する。
・ロジン溶解液について
水321部に20%水酸化ナトリウム水溶液を4.6部、水添ロジンを4.4部加え、加熱攪拌により水添ロジンを溶解させたもの。
・上記(1)銅フタロシアニンスルホン酸溶解液について
水434.4部へ20%水酸化ナトリウム水溶液7.4部、銅フタロシアニンスルホン酸(置換基数2)8.2部を加え、加熱攪拌により銅フタロシアニンスルホン酸を溶解させたもの。
・上記(2)銅フタロシアニンスルホン酸溶解液について
水323.1部へ20%水酸化ナトリウム水溶液4.3部、銅フタロシアニンスルホン酸(置換基数2)2.6部を加え、加熱攪拌により銅フタロシアニンスルホン酸を溶解させたもの。
・ジメチルジアルキル(C=12)酢酸溶解液について
水471.8部へ99%酢酸22部、塩化ジメチルジアルキル(C=12)アンモニウム6.2部(4級アンモニウムとして5.6部)を加え、塩化ジメチルジアルキル(C=12)アンモニウムを加熱攪拌により溶解させたもの。
【0059】
比較例1
DIC社製銅フタロシアニンクルードをアトライターにて乾式磨砕を行い、銅フタロシアニン磨砕物を得た。この銅フタロシアニン磨砕物1350部に対し3960部のイソブタノールと8040部の水を加えた。89℃まで加熱し1時間還流顔料化させた後イソブタノールを留去した。その後全量が12000部となるまで水を追加した。それをスプレードライヤーにて乾燥しパウダー顔料を得た。この銅フタロシアニンパウダー顔料200.0部に対し、銅フタロシアニンスルホン酸4級ジメチルジアルキル(C=18)アンモニウム塩14.0部をパウダー配合した。これによりパウダー状の顔料組成物を得た。
【0060】
・銅フタロシアニンスルホン酸4級ジメチルジアルキル(C=18)塩のパウダー作成方法
水440部に20%水酸化ナトリウム水溶液3.6部と銅フタロシアニンスルホン酸(置換基数2)17.3部を加え加熱攪拌により溶解させた。そこへ水471.8部に99%酢酸22部と塩化ジメチルジアルキル(C=18)アンモニウム27.5部を加え、加熱攪拌により溶解させたものを滴下した。pHを7〜8の弱アルカリに調整し、ろ過により銅フタロシアニンスルホン酸4級ジメチルジアルキル(C=18)アンモニウム塩のプレスケーキを得た。これを乾燥、粉砕しパウダー状の銅フタロシアニンスルホン酸4級ジメチルジアルキル(C=18)アンモニウム塩を得た。
【0061】
比較例2
DIC社製銅フタロシアニンクルードをアトライターにて乾式磨砕を行い、銅フタロシアニン磨砕物を得た。この銅フタロシアニン磨砕物1350部に対し3960部のイソブタノールと8040部の水を加えた。89℃まで加熱し1時間還流顔料化させた後イソブタノールを留去した。その後全量が12000部となるまで水を追加した。それをスプレードライヤーにて乾燥しパウダー顔料を得た。この銅フタロシアニンパウダー顔料200.0部に対し、銅フタロシアニンスルホン酸(置換基数2)14.0部をパウダー配合した。これによりパウダー状の顔料組成物を得た。
【0062】
評価インキの作製
(1)評価インキの作製
顔料17.3部、NC樹脂8.9部、プロピレングリコールモノエチルエーテル(関東化学株式会社製)48.7部、n-プロピルアルコール(関東化学株式会社製)8.0部、エタノール(関東化学株式会社製)11.0部、酢酸エチル(関東化学株式会社製)6.1部、SAZビーズ(東京硝子器械株式会社製ジルコニアYTZボール1.25φ)150部を200mLガラス瓶に入れ、Shaker Skandex SK550(Fast & Fluid Management B.V.Company製)にて2時間分散し、評価用インキを得た。
【0063】
(2)インキ粘度調整
必要に応じてエタノール(関東化学株式会社製)を加え粘度を調整した。粘度はザーンカップNo.2(株式会社メイセイ社製)を用いて、23秒に調整した。
【0064】
(3)色相評価方法
(2)で粘度調整したインキをバーコーター No.2(RK Print Coat Instruments社製)を用い展色紙又はアセテートフィルムに展色し、目視にて色相判別を行った。
【0065】
(4)粘度評価法
ブルックフィールド社製粘度計(モデル:DV3TRVTJO)を使用し、6〜120RPMで粘度を測定した。
【0066】
(5)再溶解性試験方法
(2)で調製したインキを再溶解性評価用版に展色した。その後1分間ドライヤーにて乾燥させた。その後再溶解性評価用版の上部から乾燥させたインキ塗装面に対してエタノール(関東化学株式会社製)をかけ流した。乾燥したインキ塗装面が落ちれば再溶解性良、落ちなければ不良と判断した。単独で判断がつかない場合は対象とするインキ塗装面と並べて展色し、比較により優劣を判断した。
【0068】
グリコールエーテル系インキ評価
<粘度>
◎:測定粘度が1500mPa・s以下で良好
○:測定粘度が1500〜2000mPa・s間で良好
×:測定粘度が2000mPa・s以上で不良
【0069】
<再溶解性>
◎:インキが全量流れ落ち再溶解性良好
○:一部インキが残るが再溶解性良
×:インキ流れ落ちず再溶解性不良
【0070】
<色相>
◎:目視判定で発色・透明性良好
○:目視判定で発色・透明性が使用範囲内
×:発色・透明性不良
【0071】
実施例1は式(I)、式(II)を含有しており、式(I)が樹脂吸着部位として働く事で低粘度化が達成出来る。また式(I)、式(II)がグリコールエーテル系溶剤と相溶性が高く、良好な再溶解性が発現される。尚、再溶解性改善効果は式(I)よりも式(II)の方が高い。
【0072】
実施例2は式(I)、式(II)、式(III)を含有しており、式(I)、式(III)が樹脂吸着部位として働く事で低粘度化が達成出来る。また、式(I)、式(II)がグリコールエーテル系溶剤と相溶性が高く、良好な再溶解性が発現される。尚、式(I)よりも式(III)の方が良好な樹脂吸着効果を示す。また再溶解性改善効果は式(I)よりも式(II)の方が高い。
【0073】
実施例3は式(I)、式(III)を含有しており、それぞれが樹脂吸着部位として働く事で低粘度化が達成出来る。また式(I)がグリコールエーテル系溶剤と相溶性が高く、再溶解性が発現される。尚、式(I)よりも式(III)の方が良好な樹脂吸着効果を示す。
【0074】
実施例4は式(I)のみを含有している為、低粘度化、再溶解性改善効果の両立が達成出来る。但し、式(II)、式(III)を含有していない為効果は低い。
【0075】
比較例1は式(II)のみを含有している為、グリコールエーテル系溶剤と相溶性が高く、良好な再溶解性が発現される。しかし、式(I)または式(III)を含有していない事から粘度が著しく高く、工業的に使用できる範囲ではない。
【0076】
比較例2は式(III)のみを含有している為、樹脂吸着部位として働き低粘度化が達成出来る。しかし、式(I)、式(II)を含有していない事から再溶解性に著しく劣り、工業的に使用できない。