特許第6633620号(P6633620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6633620熱可塑性ポリウレタンホットメルト接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633620
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリウレタンホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20200109BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200109BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   C09J175/04
   C09J11/06
   C09J11/08
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-512428(P2017-512428)
(86)(22)【出願日】2015年5月13日
(65)【公表番号】特表2017-519095(P2017-519095A)
(43)【公表日】2017年7月13日
(86)【国際出願番号】EP2015060666
(87)【国際公開番号】WO2015173338
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2018年5月11日
(31)【優先権主張番号】14001740.1
(32)【優先日】2014年5月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・スラーク
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・カスパー
(72)【発明者】
【氏名】ルアン・クルー
(72)【発明者】
【氏名】シータル・セティ
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−525958(JP,A)
【文献】 特開2009−155464(JP,A)
【文献】 特開平07−097560(JP,A)
【文献】 特表平6−505279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの熱可塑性ポリウレタンコポリマー(A)および(B)を含むホットメルト接着剤組成物であって、熱可塑性ポリウレタンコポリマー(A)は、
少なくとも1つのポリエステルポリオール、および
少なくとも1つのポリイソシアネート
の反応生成物を含み、および数平均分子量(Mn)が少なくとも30,000g/molであり、熱可塑性ポリウレタンコポリマー(B)は、
少なくとも1つのポリエステルポリオール、および
少なくとも1つのポリイソシアネート
の反応生成物を含み、および数平均分子量(Mn)が20,000g/mol未満であり、および
ホットメルト接着剤組成物は160℃で1,000〜100,000mPasの溶融粘度を有し、
熱可塑性ポリウレタンコポリマー(A)および/または(B)の少なくとも1つのポリエステルポリオールは、
a)40〜150℃の融点(Tm)を有する少なくとも1つの半結晶性ポリエステルポリオール;および
b)少なくとも1つの非結晶性ポリエステルポリオール
を含む、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
(B)に対する(A)の重量比は5:95〜95:5である、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
(A)は少なくとも35,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する、請求項1または2に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
(B)は15,000g/mol未満の数平均分子量(Mn)を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
ホットメルト接着剤組成物は、ホットメルト接着剤組成物の全重量を基準にして0.1〜50重量%の添加剤をさらに含み、該添加剤は安定剤、接着促進剤、可塑剤、粘着付与剤、フィラー、(A)および(B)とは異なった熱可塑性ポリマー、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1〜4のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項6】
ホットメルト接着剤組成物は、該組成物の全重量を基準に
50〜93.5重量%の2つの熱可塑性ポリウレタンコポリマー(A)および(B)、
0.5〜5重量%の少なくとも1種の安定剤、
1〜20重量%の少なくとも1種の可塑剤、
5〜45重量%の少なくとも1種の粘着付与剤、
43.5重量%までの(A)および(B)とは異なった少なくとも1種の熱可塑性ポリマー
を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項7】
熱可塑性ポリウレタンコポリマー(A)および/または(B)の少なくとも1つのポリエステルポリオールはオルトフタレートを含む、請求項1〜6のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項8】
オルトフタレートは、熱可塑性ポリウレタンコポリマー(B)の少なくとも1つのポリエステルポリオール中に含まれる、請求項7に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの非結晶性ポリエステルポリオールb)は、
c)750g/mol未満の数平均分子量(Mn)を有する非結晶性ポリエステルポリオール、および
d)少なくとも750g/molの数平均分子量(Mn)を有する非結晶性ポリエステルポリオール
を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項10】
オルトフタレートはポリエステルポリオール化合物b)に含まれる、請求項1〜8のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項11】
オルトフタレートはポリエステルポリオール化合物c)に含まれる、請求項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項12】
(A)および(B)とは異なった少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、EVA、ゴム型ポリマー、スチレンコポリマー、ポリエステルコポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリルおよび熱可塑性ポリウレタンまたはそれらの組み合わせから選択される、請求項5〜11のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つに記載のホットメルト接着剤組成物を基材へ適用する方法であって、
1)ホットメルト接着剤組成物を攪拌もせん断も伴わずに加熱容器中で溶融する工程、2)工程1)の溶融ホットメルト接着剤組成物を歯車またはピストンポンプより加熱ホースを通してポンプ輸送する工程、および
3)ホットメルト接着剤組成物をノズル、ローラーまたはスプレーヘッドより基材上へ適用する工程
を含む、方法。
【請求項14】
製本、木材接着、フラットラミネーション、フレキシブル包装、プロファイルラッピング、エッジバンディング、テキスタイルラミネーション、低圧成形、および靴における請求項1〜12のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種の異なる熱可塑性ポリウレタンコポリマー(A)および(B)の混合物を含むホットメルト接着剤組成物に関する。熱可塑性ポリウレタンコポリマー(A)は、少なくとも1つのポリエステルポリオールと少なくとも1つのポリイソシアネートとの反応生成物を含む。(A)は数平均分子量(Mn)が少なくとも25,000g/molである。熱可塑性ポリウレタン樹脂コポリマー(B)は、少なくとも1つのポリエステルポリオールおよび少なくとも1つのポリイソシアネートの反応生成物を含む。(B)は数平均分子量(Mn)が25,000g/mol未満である。ホットメルト接着剤組成物は、溶融粘度が160℃で1,000〜100,000mPasである。さらに、本発明は、本発明の接着剤を適用する方法およびその特定の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
最も一般的なポリウレタンホットメルト接着剤は、反応性であり、イソシアネート官能基を含み、湿気硬化される。硬化は、典型的には少なくとも数日間にわたって行われる。これらの材料は、様々な基材への多目的接着を生じ、結合は高温および低温および高湿に耐性がある。しかし、これらのポリウレタンホットメルト接着剤は、その適用まで高価な包装中で湿気から保護される必要があり、これらの接着剤を処理するために必要な塗布装置は高価である。さらに、これらの反応性ポリウレタンホットメルトは、呼吸器感作性であり、健康上の問題を引き起こし得る4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のような遊離イソシアネートモノマーを2〜5%含有する。遊離モノマーは、より低いレベルまで低減することができるが、この方法は高価である。これらの接着剤の硬化は可変であり、基材中の含水量、大気湿度、および配合物の水蒸気透過率および接着剤ラインの厚みに依存して遅くなり得る。
【0003】
非反応性ポリウレタンを調製することも知られている。そのような場合、ポリマーは反応性NCO基を含有せず、すなわち本質的にNCO基を含まないので、材料は問題なく貯蔵することができる。このような熱可塑性ポリウレタンは、履物、ケーブル、ホース、フィルムまたは機械部品などの成形品を製造するために使用される。このような製品は、周囲温度で使用され、接着剤の特性を与えない。
【0004】
熱可塑性ポリウレタンコポリマーに基づく接着剤は当分野において知られている。これらの熱可塑性ポリウレタン(TPU)ホットメルト接着剤は、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールを含み、これは半結晶性であり、ジイソシアネートおよびしばしば連鎖延長剤と反応することができる。ジイソシアネートとして通常、MDIが使用される。鎖延長剤は、典型的には、低い数平均分子量ジオール、例えば、1,4−ブタンジオールである。良好な機械的特性を達成するために、これらのTPUの数平均分子量は高く、一般に40,000g/mol(Mn)を超える。
【0005】
例えば、先行技術文献WO00/15728Aは、コーティング固形物の熱活性化可能な接着剤コーティングを有するコーティングされたシートを開示し、そのコーティング固形物は主に熱可塑性ポリウレタンであり、コーティング固形物は40〜100℃の融点を有し、コーティングは結晶性であり、10μm未満の平均結晶サイズを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第00/15728号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高レベルの接着および/または凝集と組み合わせて低塗布粘度を与える、TPUに基づく改善されたホットメルト接着剤を提供することである。さらに、本発明のさらなる目的は、ホットメルト接着剤組成物を塗布するために押出機を必要としないTPUに基づくホットメルト接着剤を提供することである。これに関して、驚くべきことに、本発明によるホットメルト接着剤組成物は、ポリオレフィン、ゴム、EVA、アクリルなどの一般的な熱可塑性ホットメルト接着剤を処理するために使用される標準処理装置において、高熱およびせん断を必要とせずに用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的は、特許請求の範囲に記載の少なくとも2つの異なる特定の熱可塑性ポリウレタンコポリマーTPU(A)および(B)を含むホットメルト接着剤によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による接着剤は熱可塑性ホットメルト接着剤である。それは溶融可能であるが、適用後に架橋し得る反応性官能基を本質的に含まない。接着剤は、少なくとも2つの異なる熱可塑性ポリウレタン(TPU)と、必要に応じて以下に詳細に定義されるさらなる添加剤とからなる。
【0010】
本明細書において、用語「1つの(a)」および「1つの(an)」および「少なくとも1つの」は、用語「1以上」と同じであり、互換的に使用することができる。
【0011】
本発明では、用語「本質的に含まない」は、各化合物が、組成物の全重量に対して5重量%未満、4重量%、3重量%、2重量% 1.5重量%、1重量%、0.75重量%、0.5重量%、0.25重量%、0.1重量%含まれ、その量は降順でそれぞれより好ましい。例えば、4重量%が5重量%より好ましく、3重量%が4重量%より好ましい。
【0012】
「TPU」という略語は、特記のない限り「少なくとも1つのTPU」を意味すると理解される。
【0013】
本発明において、ポリエステルポリオールのOH基に対するポリイソシアネートのNCO基のモル比は、NCO:OH比とも称される。
【0014】
特に、本発明は、2種の熱可塑性ポリウレタンコポリマー(A)および(B)を含むホットメルト接着剤組成物に関し、
熱可塑性ポリウレタンコポリマー(A)は、
少なくとも1種のポリエステルポリオール、および
少なくとも1種のポリイソシアネート
の反応生成物を含み、少なくとも25,000g/molの数平均分子量(Mn)を有し、熱可塑性ポリウレタンコポリマー(B)は、
少なくとも1種のポリエステルポリオール、および
少なくとも1種のポリイソシアネート
の反応生成物を含み、数平均分子量(Mn)が25,000g/mol未満であり、および
ホットメルト接着剤組成物は、160℃で1,000〜100,000mPasの溶融粘度を有する。
【0015】
さらに、本発明は、
1)攪拌も剪断も伴わずに加熱容器中でホットメルト接着剤組成物を溶融する工程;
2)工程1)の溶融ホットメルト接着剤組成物を歯車またはピストンより加熱ホースを通してポンプ輸送する工程;および
3)ホットメルト接着剤組成物をノズル、ローラーまたはスプレーヘッドより基材上へ適用する工程
を含む、本発明のホットメルト接着剤組成物を基材へ塗布する方法に関する。
【0016】
さらに、本発明は、本発明のホットメルト接着剤組成物の製本、木材接着、フラットラミネーション、フレキシブル包装、プロファイルラッピング、エッジバンディング、テキスタイルラミネーション、低圧成形、および靴における使用にも関する。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施態様は、特許請求の範囲に記載されている。
【0018】
熱可塑性ポリウレタンコポリマー(A)および(B)を以下に説明する。
【0019】
(A)は数平均分子量(Mn、以下に定義のGPCにより測定)が少なくとも25,000g/molである。より好ましい実施態様では、Mnは、少なくとも30,000、35,000、40,000、45,000、50,000、60,000、70,000または80,000g/molである。したがって、各実施態様は、より好ましい量の昇順である。すなわち、例えば40,000g/molは35,000g/molより好ましく、および45,000g/molは40,000g/molより好ましい。より好ましい実施態様では、Mnは、25,000〜60,000g/molの範囲であり、極めて好ましい実施態様では、30,000〜50,000g/molである。
【0020】
(A)は、好ましくはNCO:OH比が0.90:1超えである。好ましい実施態様では、NCO:OH比は、0.90:1超え、0.91:1、0.92:1、0.93:1、0.94:1、0.95:1、0.96:1、0.97:1、0.98:1、または0.99:1より選択される下限および1.00:1、0.99:1、0.98:1、0.97:1、0.96:1、0.95:1、0.94:1、0.93:1、0.92:1、0.91:1から選択される上限の任意の組合せを有する範囲であり、より好ましい実施態様では、NCO:OH比は0.93:1〜0.97:1の範囲にある。
【0021】
(B)は好ましくはNCO:OH比が0.90:1未満である。好ましい実施態様では、NCO:OH比は、0.9:1未満、0.85:1、0.8:1、0.75:1または0.7:1から選択される上限および0.65:1、0.7:1、0.75:1、0.8:1、0.85:1から選択される下限の任意の組合わせを有する範囲である。より好ましい実施態様では、NCO:OH比は0.7:1〜0.9:1の範囲である。極めて好ましい実施態様では、NCO:OH比は0.75:1〜0.85:1である。
【0022】
(B)は数平均分子量(Mn、以下に定義のGPCにより測定)が25,000g/mol未満である。より好ましい実施態様では、Mnは、22,500g/mol未満、20,000、15,000、10,000、7,500または5,000g/molである。したがって、各実施態様は、より好ましい量の降順である。すなわち、例えば20,000g/molは22,500g/molより好ましく、および22,500g/molは25,000g/molより好ましい。より好ましい実施態様では、Mnは、20,000〜5,000g/molの範囲であり、極めて好ましい実施態様では、15,000〜7,500g/molである。
【0023】
TPU(A)および/または(B)は熱安定性である。熱安定性は、160℃で6時間後の各TPUの初期粘度と比較して±10%未満の粘度変化であると定義される。粘度は、以下の実施例セクションに記載の通り測定される。
【0024】
本発明のTPU(A)および(B)の主成分は、ポリエステルポリオールである。これらには、半結晶性ポリエステルポリオールと呼ばれる本発明の結晶性または半結晶性ポリエステルポリオール、および液状ポリエステルポリオールおよび固体非晶質(solid amorphous)ポリエステルポリオールを含む非結晶性ポリエステルポリオールが含まれる。ポリエステルポリオールは当業者に周知であり、ポリカルボン酸とポリオールとの反応により得ることができる。これにより、架橋を伴わずに分岐を組み込むために、少量の3官能性アルコールまたはカルボン酸を反応において含めることが可能である。線状ポリエステルポリオールを得るためには、モノマーの大部分が2官能性成分であることが好ましい。ポリエステルポリオールの特性は、コモノマーの種類に応じて調整することができる。当業者には、半結晶性および非結晶性ポリエステルポリオールをどのように調製するかよく知られている。ポリエステルは、少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する。ポリエステルの特性は、異なった成分によって設計することができる。例えば、単一の線状脂肪族ジオールおよび直鎖脂肪族二酸は、半結晶性ポリマーを与える傾向がある。融点の上昇は、二酸中の炭素鎖の長さを増加させることによって、または対称芳香族二酸を使用することによって得ることができる。コモノマーの数を増加させるか、または分岐脂肪族コモノマーを組み込むことによって、より多くの非晶質材料を得ることができる。ポリエステルポリオールは、1以上のイソシアネートと反応することができるNHまたはCOOHなどのさらなる官能基を含むことができる。調製に適したモノマーを以下に記載する。
【0025】
TPU(A)および(B)の成分は、好ましくは線状ポリウレタンが得られる方法で選択される。本質的にNCO基を含まない、すなわち(B)の好ましい実施態様であるTPUを得るために、1種以上のイソシアネート中のNCO基(当量)の量は、ポリエステルポリオールの反応性OH基、NH基、COOH基の量(当量)より少なく選択される。
【0026】
TPU(A)および(B)のための適当なポリエステルは少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する。ポリエステルの特性は、異なった成分によって設計することができる。例えば、単一の線状脂肪族ジオールおよび直鎖脂肪族二酸は、半結晶性ポリマーを与える傾向がある。融点の上昇は、二酸中の炭素鎖の長さを増加させることによって、または対称芳香族二酸を使用することによって得ることができる。コモノマーの数を増加させるか、または分岐脂肪族コモノマーを組み込むことによって、より多くの非晶質材料を得ることができる。
【0027】
TPU(A)および(B)のための適当なポリエステルポリオールは、好ましくは2〜30個の炭素原子を有する一以上の多価アルコールおよび好ましくは2〜14個の炭素原子を有する一以上のポリカルボン酸の凝縮を通じて形成される。適当なポリオールとしては、アルキレンジオール、特に4個までの好ましくは2個のOH基を有し、2〜30個のC原子を有する直鎖アルコール;グリコールエーテル;および脂環式ポリオールが挙げられる。適当な多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、例えば1,2−プロピレングリコールおよび1,3−プロピレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ドデカンジオール、オクタンジオール、クロロペンタンジオール、グリセロールモノアリルエーテル、グリセロールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、2−エチルヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,3,5−ヘキサントリオール、1,3−ビス−(2−ヒドロキシエトキシ)プロパンなどが挙げられる。ポリオールは、別々にまたは混合物として使用することができる。それらは好ましくは100〜750g/molの分子量を有し、その官能性は好ましくは2または3である。
【0028】
ポリカルボン酸の例としては、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、ドデシルマレイン酸、オクタデセニルマレイン酸、フマル酸、アコニット酸、トリメリット酸、トリカルボン酸、3,3’−チオジプロピオン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−3,5−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸および対応する酸無水物、酸塩化物および酸エステル、例えば無水フタル酸、塩化フタロイルおよびフタル酸のジメチルエステルが挙げられる。モノまたはポリ不飽和酸および/またはそのエステルの二量化生成物であるダイマー脂肪酸も使用することができる。好ましいダイマー脂肪酸は、C10〜C30、より好ましくはC14〜C22カルボン酸の二量体である。適当なダイマー脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸およびエライジン酸の二量化生成物が挙げられる。また、ヒマワリ油、大豆油、オリーブ油、菜種油、綿実油、トール油などの天然脂肪および油の加水分解で得られる不飽和脂肪酸混合物の二量化生成物を使用することもできる。ダイマー脂肪酸に加えて、二量化は、通常、オリゴマー脂肪酸およびモノマー脂肪酸の残基の量を変化させる。適当なダイマー脂肪酸は、ダイマー脂肪酸出発材料の全重量に基づいて75重量%を超えるダイマー酸含有量を有する。
【0029】
さらに、TPU(A)および(B)のための適当なポリエステルポリオールはポリカーボネートポリオールである。ポリカーボネートポリオールは、例えばプロピレングリコール、ブタンジオール−1,4あるいはヘキセンジオール−1,6、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールのようなジオールまたはこれらからの2以上の混合物とジアリールカーボネートとの反応により得られる。ε−カプロラクトンをベースとするポリエステルもまた適している。また、ポリマー鎖中に1以上のウレタン基を含むポリエステルポリオールも適当である。
【0030】
TPU(A)および(B)のための他の有用なポリエステルポリオールとしては、例えば油脂化学物質から誘導されたポリオール、および少なくとも部分的にオレフィン性の不飽和脂肪酸含有脂肪混合物および1個の炭素原子〜12個の炭素原子を含む少なくとも1個のアルコールのエポキシ化トリグリセリドの完全開環および引き続きのアルキル鎖中に1個の炭素原子〜12個の炭素原子を有するアルキルエステルポリオールを形成するトリグリセリド誘導体の部分エステル交換が挙げられる。
【0031】
本発明の実施において使用され得るTPU(A)および(B)のための市販のポリエステルポリオールとしては、半結晶質または非結晶性ポリエステルが挙げられる。本発明では、用語ポリエステルポリオールは、ポリマー鎖の末端にアミノ基またはカルボキシル基を含むポリエステルも包含されると理解される。しかし、そのようなポリエステルの好ましい群はポリエステルジオールである。
【0032】
好ましいポリカルボン酸は、14個以下の炭素原子を含む脂肪族および脂環式ジカルボン酸および14個以下の原子を含む芳香族ジカルボン酸である。より好ましい実施態様では、TPU(A)および/または(B)の少なくとも1つのポリエステルポリオールはオルトフタレートを含む。「オルトフタレートを含む」とは、「オルトフタレート」という用語もまたその誘導体を含むと解釈され、すなわち、ポリエステルポリオールは、オルトフタレート、無水フタル酸、またはそれらの誘導体またはそれらの組み合わせを含む混合物を反応させることにより得られる。さらにより好ましい実施態様では、オルトフタレートは、TPU(A)および/または(B)のポリエステルポリオールに含まれ、より好ましい実施態様では以下に記載の項目b)のTPU(A)および/または(B)のポリエステルポリオールに含まれる。極めて好ましい実施態様では、オルトフタレートは、以下に記載の項目c)のTPU(A)および/または(B)のポリエステルポリオールに含まれる。
【0033】
TPU(A)および(B)の合成に使用される適当なモノマーイソシアネート、好ましくは2個または3個のNCO基を含むイソシアネートが選択される。これらには、周知の脂肪族、環式脂肪族または芳香族モノマージイソシアネートが包含される。好ましくは、イソシアネートは、160g/mol〜500g/molの分子量を有するもの、例えば芳香族ポリイソシアネート、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ナフタレン、ジ−およびテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0034】
脂肪族イソシアネート、例えばドデカンジイソシアネート、ダイマー脂肪酸ジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサン−1,6−ジイソシアネート(HDI)、テトラメトキシブタン1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,12−ジイソシアナト−ドデカンなど、環状ジイソシアネート、例えば4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンまたは1,4−シクロヘキセンジイソシアネート、1−メチル−2,4−ジイソシアナト−シクロヘキサン、1−イソシアナトメチル−3−イソシアナト−1,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、水素化または部分的に水素化されたMDI([H]12MDI(水素化)または[H]6MDI(部分的に水素化された))、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ジ−およびテトラアルキレンジフェニルメタンジイソシアネートなども使用することができる。
【0035】
異なった反応性の2つのNCO基を有する好ましいジイソシアネートは、芳香族、脂肪族または環状脂肪族ジイソシアネートの群から選択される。少なくとも部分的オリゴマー状ジイソシアネート、例えばHDI、MDI、IPDIまたは他のイソシアネートからのアロファネート、カルボジイミド、ビウレット縮合生成物などもまた挙げられる。脂肪族または芳香族イソシアネートの混合物を使用することができる。より好ましくは、芳香族ジイソシアネートが使用される。
【0036】
本発明によるTPU(A)および/または(B)中に含まれる少なくとも1種のポリエステルポリオールは、好ましくは、
a)40〜150℃、好ましくは60〜140℃、より好ましくは80〜140℃(以下に定義のDSCによる測定)の融点(Tm)を有する少なくとも1種の半結晶性ポリエステルポリオール、および
b)少なくとも1種の非結晶性ポリエステルポリオール
を含むことができる。
【0037】
項目a)によるTPU(A)および/または(B)に含まれる少なくとも1つの半結晶性ポリエステルポリオールは好ましくは、750g/molを超える数平均分子量(Mn、以下に定義のGPCによる測定)を有する。より好ましい実施態様では、Mnは750超え、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000および9,500g/molから選択される下限および10,000、9,000、8,000、7,000,6,000、5,000、4,500、4,000、3,500、3,000、2,500、2,000および1,000g/molから選択される上限の任意の組み合わせを有する範囲である。さらにより好ましい実施態様では、この範囲は1,000〜7,000g/molである。最も好ましい実施態様では、この範囲は1,000〜5,000g/molである。このポリエステルポリオールの組成物は、結晶性ポリエステルを形成する、上記の酸およびジオールモノマーから選択することができる。好ましくは、脂肪族ジオール、例えば1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオール等を含むジオール成分が使用される。
【0038】
ホットメルト接着剤組成物は、好ましい実施態様では、項目a)に記載のTPU(A)および/または(B)のポリエステルポリオールを各TPUの総重量を基準にして5〜50重量%含有する。より好ましい実施態様では、項目a)に記載のポリエステルポリオールは、10〜40重量%、最も好ましくは15〜30重量%含まれる。
【0039】
ホットメルト接着剤組成物は、好ましい実施態様では、項目b)に記載のTPU(A)および/または(B)のポリエステルポリオールを各TPUの総重量を基準として10〜90重量%含有する。より好ましい実施態様では、項目b)に記載のポリエステルポリオールは、20〜80重量%、最も好ましくは30〜60重量%含まれる。
【0040】
非結晶性ポリエステルポリオールは、ガラス転移温度(Tg)が50〜−70℃、より好ましくは30〜−60℃、極めて好ましくは20〜−50℃である。非結晶性ポリエステルポリオールは、好ましくは室温(約25℃)で500〜50,000mPasの粘度を有する液体ポリエステルポリオールであってよい。
【0041】
項目b)に記載のTPU(A)および/または(B)の少なくとも1つの非結晶性ポリエステルポリオールは、好ましくは、
c)750g/mol未満の数平均分子量(Mn)を有する非結晶性ポリエステルポリオール;および
d)少なくとも750g/molの数平均分子量(Mn)を有する非結晶性ポリエステルポリオール
を含む。
【0042】
TPU(A)および/または(B)の項目c)に記載の少なくとも一つの非結晶性ポリエステルポリオールは、好ましくは750g/mol未満の数平均分子量(Mn、以下に定義するGPCにより測定)を有する。より好ましい実施態様では、Mnは、200、300、400、500、600および700g/molから選択される下限および740、700、600、500、450、400、350、300および250g/molから選択される上限の任意の組み合わせを有する範囲である。より好ましい実施態様では、この範囲は700〜250g/molである。最も好ましい実施態様では、この範囲は600〜300g/molである。このポリエステルポリオールの組成は、非結晶性ポリエステルを形成する上記の酸およびジオールモノマーから選択することができる。好ましくは、使用されるジオール成分は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールおよびネオペンチルグリコールである。
【0043】
項目d)のTPU(A)および/または(B)の少なくとも1つの非結晶性ポリエステルポリオールは、好ましくは750g/molの数平均分子量(Mn、以下に定義するGPCによる測定)を有する。より好ましい実施態様では、Mnは、760、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、9,500および9,750g/molから選択される下限および10,000、9,000、8,000、7,000、6,000、5,000、4,500、4,000、3,500、3,000、2,500、2,000および1000g/molから選択される上限の任意の組合わせを有する範囲である。より好ましい実施態様では、この範囲は1000〜7000g/molである。最も好ましい実施態様では、この範囲は1,000〜5,000g/molである。このポリエステルポリオールの組成は、非結晶性ポリエステルを形成する上記の酸およびジオールモノマーから選択することができる。好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールおよびネオペンチルグリコールを含むジオール成分が使用される。
【0044】
ホットメルト接着剤組成物は、好ましい実施態様では、項目c)に記載のTPU(A)および/または(B)のポリエステルポリオールをTPUの総重量を基準にして5〜50重量%含む。より好ましい実施態様では、項目c)に記載のポリエステルポリオールは、10〜40重量%、最も好ましくは15〜30重量%含まれる。
【0045】
ホットメルト接着剤組成物は、好ましい実施態様では、項目d)に記載のTPU(A)および/または(B)のポリエステルポリオールを、TPUの総重量を基準にして10〜60重量%含む。より好ましい実施態様では、項目d)のポリエステルポリオールは、20〜50重量%、極めて好ましくは25〜50重量%含まれる。
【0046】
より好ましい実施態様では、本発明によるホットメルト接着剤組成物は、各TPUの総重量を基準に10〜30重量%の化合物a);10〜40重量%の化合物c);10〜40重量%の化合物d);および10〜25重量%の少なくとも1種のポリイソシアネートを含むTPU(A)および/または(B)を含む。
【0047】
TPU(A)および/または(B)は、好ましい実施態様では、各TPU(A)または(B)の全重量に基づき5〜40重量%のイソシアネートを含有する。より好ましい実施態様では、イソシアネートは10〜30重量%、極めて好ましくは10〜25重量%含まれる。
【0048】
本発明のホットメルト接着剤組成物は好ましくは、5:95〜95:5の重量比で(A)と(B)とを含む。より好ましくは15:85〜85:15、極めて好ましくは25:75〜75:25である。
【0049】
本発明によるTPU(A)および(B)は、場合により鎖延長剤を含むことができる。 本発明による鎖延長剤は、250g/mol未満の分子量を有する特定の単一分子量を有する短鎖有機分子であり、当業者に周知である。例となる化合物は、例えば「The Polyurethanes Handbook」、編集者David RandallおよびSteve Lee、John Wiley and Sons 2002の付録1第448頁に開示されている。例となる化合物はアルカンジオール、例えば1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、1,12−ドデカンジオールまたはアルキル、シクロアルキル、フェニルまたはエーテル基で置換することができる類似のジオールである。これらの連鎖延長剤は、オリゴマーまたはポリマーではない。さらに好ましい実施態様では、TPU(A)および/または(B)は本質的に鎖延長剤を含まない。
【0050】
TPU(A)および/または(B)は、場合により、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)またはポリ(テトラメチレングリコール)などのポリエーテルポリオールをさらに含むことができる。ポリエーテルポリオールは当業者に知られており、例となる化合物は、例えば、「The Polyurethanes Handbook」、第6章、編集者David RandallおよびSteve Lee、John Wiley and Sons 2002に開示されている。
【0051】
さらに好ましい実施態様では、TPU(A)および/または(B)は本質的にポリエーテルポリオールを含まない。さらに、好ましい実施態様において、TPU(A)および/または(B)は、ポリエーテルポリオールおよび鎖延長剤を本質的に含まない。
【0052】
TPU(A)および(B)の製造は、当技術分野においてよく知られており、加熱することができる任意の反応容器中で行うことができる。典型的な方法では、ポリオール成分を溶融物として一緒に混合し、得られる組成物を任意に乾燥させ、水分含有量が250ppm未満になるまで真空を任意に適用する。続いてイソシアネートをポリオール混合物に添加し、この混合物を反応させる。当業者には、反応を完了するための温度および時間の決定方法は知られている。TPUは溶媒中で製造することができるが、TPUをホットメルトとして使用する前に溶媒を除去する必要があるので、これは好ましくない。
【0053】
本発明によるホットメルト接着剤は、少なくとも2つの異なるTPU(A)および(B)を上記の通り含有する。本発明による接着剤組成物は、好ましくは、本発明による(A)および(B)を総重量の50〜99.9重量%含む。より好ましくは、組成物は、これらのTPUを60〜95重量%、最も好ましくは75〜90重量%含む。
【0054】
当技術分野において既知の他の添加剤を含有し得る。用語「添加剤」としては、染料、フィラー(例えばケイ酸塩、タルク、炭酸カルシウム、粘土またはカーボンブラック)、チキソトロープ剤(例えばベントン、発熱性ケイ酸、尿素誘導体、フィブリル化またはパルプ短繊維)、着色ペーストおよび/または顔料、導電性添加剤(例えば導電性カーボンブラックまたは過塩素酸リチウム)、可塑剤、粘着付与剤、本発明のTPUとは異なる他の熱可塑性ポリマー、安定剤、接着促進剤、レオロジー添加剤、ワックスおよびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0055】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、好ましくは、組成物の総重量に基づいて0.1〜50重量%の添加剤を含む。より好ましい実施態様では、5〜40重量%、極めて好ましくは10〜25重量%が含まれる。さらにより好ましい実施態様では、添加剤は、安定剤、接着促進剤、可塑剤、粘着付与剤、(A)および(B)とは異なる熱可塑性ポリマー、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0056】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、粘着付与剤、例えばアビエチン酸、アビエチン酸エステル、他のロジンエステル、ポリテルペン樹脂、テルペン/フェノール樹脂、スチレン化テルペン、ポリ−α−メチルスチレン、α−メチルスチレン−フェノールまたは脂肪族、芳香族または芳香族/脂肪族炭化水素樹脂またはクマロン/インデン樹脂または低分子量ポリアミドから誘導される樹脂等を含み得る。これらの粘着付与樹脂は、異なる成分の相溶性を改善するために、必要に応じてOH基を含んでよい。
【0057】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、好ましくは、組成物の総重量に基づいて少なくとも1種の粘着付与剤を0.1〜50重量%含む。より好ましい実施態様では、5〜40重量%、極めて好ましくは10〜25重量%が含まれる。
【0058】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、本発明によるTPU(A)および(B)とは異なる他の熱可塑性ポリマーを含有してもよい。これらには、EVA、ゴム型ポリマー、スチレンコポリマー、ポリエステルコポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリルおよび熱可塑性ポリウレタンが含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、好ましくは、上記の本発明によるTPUとは異なる少なくとも1種の他の熱可塑性ポリマーを組成物の総重量に基づいて0.1〜50重量%を含む。より好ましい実施態様では、5〜40重量%、極めて好ましくは10〜25重量%が含まれる。
【0060】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、好ましくは、少なくとも1種のフィラーを組成物の全重量に基づいて0.1〜50重量%を含む。より好ましい実施態様では、5〜40重量%、極めて好ましくは10〜25重量%が含まれる。
【0061】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、可塑剤を含有することができるが、これらの可塑剤はフタレート、ベンゾエート、スクロースエステルおよびスルホンアミドのような接着剤のホットメルト能力を妨げない。その例として、液体フタル酸可塑剤、芳香族エステルをベースとする可塑剤、例えば安息香酸のエステル、またはジシクロヘキシルフタレート、シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートなどの固体可塑剤が挙げられる。スクロースアセテートイソブチレート、オルト−/パラ−トルエンスルホンアミドまたはN−エチル−オルト−トルエンスルホンアミドのような他の可塑剤も適している。
【0062】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、好ましくは、組成物の総重量を基準にして0.1〜50重量%の可塑剤を含む。より好ましい実施態様では、5〜40重量%、最も好ましくは10〜25重量%が含まれる。
【0063】
安定剤として、酸化防止剤、紫外線安定剤、加水分解安定剤などの異なる成分を使用することができる。これらの成分の例は、高分子量の硫黄含有およびリン含有フェノールまたはアミンの立体障害フェノールである。これには、立体障害フェノール、多官能性フェノール、チオエーテル、置換ベンゾトリアゾール、ヒンダードベンゾフェノンおよび/または立体障害アミンが含まれる。加水分解安定剤の例としては、オリゴマーおよび/またはポリマー脂肪族または芳香族カルボジイミドが挙げられる。そのような成分は、市販されており、当業者に知られている。
【0064】
接着促進剤として、好ましくは有機官能性シランをモノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれかの形態で使用することができる。
【0065】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、好ましくは、組成物の総重量を基準にして、0.1〜10重量%の安定剤および接着促進剤またはこれらの組合わせから選択される化合物を含む。より好ましい実施態様では、0.2〜5重量%、最も好ましくは0.5〜3重量%が含まれる。
【0066】
好ましい実施態様では、本発明によるホットメルト接着剤組成物は、組成物の全重量に基づいて、
50〜93.5重量%の2つの熱可塑性ポリウレタンコポリマー(A)および(B)、
0.5〜5重量%の少なくとも1種の安定剤、
1〜20重量%の少なくとも1種の可塑剤、
5〜45重量%の少なくとも1種の粘着付与剤、
43.5重量%までの(A)および(B)とは異なった少なくとも1つの熱可塑性ポリマー
を含む。
【0067】
接着剤組成物は、160℃の温度で1,000〜100,000mPasの粘度(以下に定義の測定)を有する。好ましくは、接着剤組成物の粘度は2,000〜70,000mPa・s、より好ましくは3,000〜50,000mPa・sである。
【0068】
接着剤組成物の製造は、当技術分野で知られている通り行うことができる。本発明によるTPU(A)および(B)を製造し、その後、異なる成分および添加剤とブレンドする。これは、任意の既知の装置、例えば回分式反応器、押出機、ミキサー、ニーダーまたは同様の機械で行うことができる。添加剤上の機能材料がポリオールとイソシアネートとの間の反応を妨げない限り、イソシアネートとの反応の前にポリエステルポリオールに若干の添加剤を添加することも可能である。
【0069】
本発明による接着剤は、熱可塑性非反応性ホットメルトであり、TPUは、好ましくは、未反応及びモノマーイソシアネートを本質的に含まない。したがって、有害な接着剤を使用する虞が低減される。冷却すると、接着剤層は凝集力および接着力を形成する。完全な接着結合を発達させるために化学的な架橋は必要とされないので、このようなホットメルト接着剤で結合された製品の加工の容易性が改善される。
【0070】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、共通のTPUについての任意の公知の方法により基材へ適用することができる。
【0071】
さらに、本発明によるホットメルト接着剤組成物は、
1)ホットメルト接着剤組成物を攪拌も剪断も伴わずに加熱容器内で溶融する工程、
2)工程1)の溶融ホットメルト接着剤組成物を、歯車またはピストンポンプより加熱ホースを通じてポンプ輸送する工程、および
3)ホットメルト接着剤組成物をノズル、ローラーまたはスプレーヘッドより基材上へ適用する工程
を含む方法で基材へ適用することができる。
【0072】
工程1)における溶融温度は、好ましくは160℃未満、より好ましくは150℃未満である。
【0073】
本発明の接着剤は、一般的なホットメルト接着剤が適用される全ての領域で使用することができる。本発明の接着剤は、その特性に起因して、製本産業、木材接着、フラットラミネーション、フレキシブルパッケージング、プロファイルラッピング、エッジバンディング、テキスタイルラミネーション、低圧成形、および靴において特に有用である。
【実施例】
【0074】
実施例セクション
本発明では、以下の測定方法を採用する。
【0075】
融点およびTg
これは、±0.01mgまで測定可能なマイクロ天秤およびMettler Toledo TA Instruments Q100/Q1000 DSC装置を用いて測定した。DSCは、インジウム標準を用いて較正した。試料10〜15mgをアルミニウムDSCパンに秤量し、蓋をしっかりと固定した。使用前にDSCチャンバーの温度を40℃に設定した。サンプルパンおよびリファレンスパン(ブランク)をDSCセルチャンバーに入れた。15℃/分の冷却速度で温度を−50℃に下げた。温度を−50℃に保持し、次いで毎分5℃の加熱速度で150℃に上昇させた。Tgは熱流における変曲から得られ、Tmは熱流におけるピークから得られた。
【0076】
分子量測定
各化合物/組成物を、同じクロマトグラフィー条件下でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって分子量およびモル質量分布について分析した。試験試料をN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、調製した各試料溶液を0.20μmシリンジフィルターを通して分析バイアルに濾過した。調製試料溶液を、80℃にてN,N−ジメチルアセトアミド/LiCl溶出および屈折率指数でのStyragelカラムを用いたGPC分離技術を用いた液体クロマトグラフィーにより分析した。試験物質について測定した数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準を用いて実施した外部キャリブレーションに基づく。
【0077】
溶融粘度
メルト粘度は、ブルックフィールド粘度計モデルRVDV−1+を使用し、粘度標準油で較正したModel 106温度コントローラおよびThermoselユニットを用いて測定した。10〜12gの接着剤を使い捨てアルミニウム粘度計管に秤量した。チューブを粘度計に挿入し、160℃で30分間平衡化させた。予熱スピンドルNo.27を接着剤に挿入し、160℃で30分間回転させた。測定された粘度範囲に従って回転速度を変えた。次いで、160℃での初期粘度V1を測定した。
【0078】
熱安定性
サンプルを160℃(±1℃)の一定温度で6時間粘度計中で保持した。次いで160℃での粘度V2を測定し、6時間にわたる粘度の変化を次のように計算した:
%変化=[(V2−V1))/V1]×100
【0079】
オープンタイム
接着剤を160℃に予熱し、150μmの厚みのフィルムを予熱金属コーティングブロックを使用してMDF(中質繊維板)に適用した。時間はt=0に設定した。5〜10秒の間隔で、接着剤を紙ストリップに、接着剤に接触した紙の表面に指圧で塗布した。数分後、紙を取り除いた。オープンタイム制限は、接着剤による紙の適切な濡れの欠如に起因する紙の引裂がない場合に生じる。
【0080】
接着
TPUを160℃のオーブン中で30分間加熱し、フィルムを金属コーティングブロック(幅25mm×厚み0.25mm)で作製した。フィルムはその後室温で3日間、状態調節した。三日後、接着ストリップ(長さ10cm)と同じ寸法二紙ストリップの間に配置しました。木製ボード2分間180℃で予熱し、試料をボード上に180℃1分間置いた。ボードサンプルをオーブンから取り出し、2キロローラーを試料に適用した。試料を室温で3日間放置し、紙の二枚は剥離して接着剤ストリップを露出した。接着剤ストリップが残っている紙で完全に覆われている場合(3回の測定の平均値)、100%接着が得られる。紙素材は、130gsmクロスグレインであり、コーティングし、印刷した。
【0081】
TPUの調製
ポリエステルポリオールおよびイルガノックス1010をガラスフラスコ中へ秤量し、機械的に撹拌しながら120℃に加熱した。フラスコを密閉し、真空ポンプより1時間、真空(圧力2〜5mbar)を適用して水を除去した。フレークMDIを加え、130℃でヒドロキシル基と反応させた。この反応は、2200cm−1でのNCO吸収が消失するまで、赤外分光法で追跡した。
【0082】
ポリマーブレンドおよび配合物
TPUポリマーAおよびTPUポリマーBをガラスフランジフラスコ中に秤量し、160℃で30分間予熱する。次いで、ポリマーをオーバーヘッド攪拌機を用いて140℃で15分間混合する。次いで、真空(圧力2〜5mbar)を15分間適用し、空気を除去し、温度を140℃に保つ。
【0083】
〔TPU1〕
Sheenthane(登録商標) AH−780SL、Taiwan Sheen Soon、Mn=1モル当たり36,600g
〔ポリエステルA1〕
ヘキサンジオールおよびアジピン酸のコポリマー、Mn=4065g/mol、Tm=55℃
〔ポリエステルA2〕
ヘキサンジオール、アジピン酸およびテレフタル酸のコポリマー、Mn=1460g/mol、Tm=124℃
〔ポリエステルB1〕
ジエチレングリコール、アジピン酸およびイソフタル酸のコポリマー、Mn=1965g/mol、Tg=−25℃
〔ポリエステルB2〕
エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、セバシン酸およびイソフタル酸のコポリマー、Mn=1モル当たり1875g、Tg=−25℃
〔ポリエステルB3〕
ジエチレングリコールおよび無水フタル酸のコポリマー、Mn=1モル当たり578g
〔ポリエステルB4〕
ジエチレングリコール、アジピン酸およびイソフタル酸のコポリマー、Mn=1モル当たり2005g、Tg=−25℃
【0084】
4,4’MDI(ポリイソシアネート)
Irganox 1010(酸化防止剤)
【0085】
以下のパーセンテージは、特記のない限り重量%である。
【0086】
【0087】
ブレンド1=80/20 TPU2/TPU1
ブレンド2=60/40 TPU2/TPU1
【0088】
【表1】
【0089】
【0090】
ブレンド3=60/40 TPU3/TPU1
【0091】
【表2】