【文献】
上垣外正己, 佐藤浩太郎,ラジカル重合,ネットワークポリマー,2009年,Vol.30, No.5,234-249
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回路基板上の配線印刷等においては所望するパターンを描くことが重要であるが、近年特に小型化する電子回路に対応可能なより微細なパターン形成が可能な、親液性と撥液性との差が大きい親撥材料が要求されている。本発明の課題は、その要求に応える、親液性と撥液性との差が極めて大きい親發材料を提供することである。
【0006】
また、コストや環境の面から低エネルギーで硬化被膜を形成する材料を提供する事も本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは片末端ヒドロキシル変性有機ケイ素化合物に反応性の高いアクリロイル基を導入した有機ケイ素化合物を合成し、更にそのアクリロイル変性有機ケイ素化合物を含む組成物からなる塗膜に紫外線等の活性エネルギー線照射を行う事によって撥液性を付与させ、また、未照射部分は洗浄によって簡単に洗い流せる事から、簡便に親撥パターニングが可能な材料を見出した。
【0008】
本発明の第1の態様に係る有機ケイ素化合物は、式(1)で示される有機ケイ素化合物であり、
式(1)において、
nは0〜300の整数であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8はそれぞれ独立して、水素または炭素数が1〜30のアルキルであり
X
1、X
2、X
3、X
4はそれぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖状また
は分岐鎖状のアルキレンであり、
Yはそれぞれ独立してアクリロイル基を有する、式(2)また
は式(3)で示される基である有機ケイ素化合物である。
【化1】
【化2】
【化3】
この様に構成すると、反応性の高いアクリロイル重合性官能基が反応し、シリコーンが櫛形にぶら下がった状態で会合する事により、シリコーンの性質である撥液性が付与された硬化被膜を作製する事ができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る有機ケイ素化合物は、式(4)で示される有機ケイ素化合物であり、
式(4)において、nは0〜300の整数であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8はそれぞれ独立して、水素または炭素数が1〜30のアルキレンであり、
Yはそれぞれ独立してアクリロイル基を有する、上記の式(2)または式(3)で示される基である有機ケイ素化合物である。
【化4】
この様に構成すると、反応性の高いアクリロイル重合性官能基が反応し、シリコーンが櫛形にぶら下がった状態で会合する事により、シリコーンの性質である撥液性が付与された硬化被膜を作製する事ができる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る有機ケイ素化合物は、式(5)で示される有機ケイ素化合物であり、
式(5)において、
nは0〜300の整数であり、R
9、R
10は炭素数1〜4のアルキレンであり、
Yは上記の式(2)または(3)で示されるアクリロイル基を有する基である有機ケイ素化合物である。
【化5】
この様に構成すると、反応性の高いアクリロイル重合性官能基が反応し、シリコーンが櫛形にぶら下がった状態で会合する事により、シリコーンの性質である撥液性が付与された硬化被膜を作製する事ができる。
【0011】
本発明の第4の態様に係る有機ケイ素化合物は、式(6)で示される有機ケイ素化合物であり、
式(6)において、
nは0〜300の整数である有機ケイ素化合物である。
【化6】
この様に構成すると、式(6)の合成において原料が容易に入手でき、1段階で合成が可能となる。また、反応性の高いアクリロイル重合性官能基が反応し、シリコーンが櫛形にぶら下がった状態で会合する事により、シリコーンの性質である撥液性が付与された硬化被膜を作製する事ができる。
【0012】
本発明の第5の態様に係るケイ素化合物は、式(7)で示される有機ケイ素化合物であり、
式(7)において、
nは0〜300の整数である有機ケイ素化合物である。
【化7】
この様に構成すると、式(7)の合成において原料が容易に入手でき、1段階で合成が可能となる。また、反応性の高いアクリロイル重合性官能基が反応し、シリコーンが櫛形にぶら下がった状態で会合する事により、シリコーンの性質である撥液性が付与された硬化被膜を作製する事ができる。更にアクリロイル官能基数が4個であるため硬化被膜の架橋密度を上げる事ができる。
【0013】
本発明の第6の態様に係る組成物は、本発明の第1〜第5の態様に記載の有機ケイ素化合物の少なくとも1種を含有する組成物である。
この様に構成すると、有機ケイ素化合物を組成物へ添加する事により、有機ケイ素化合物が含むシリコーン骨格が撥液性を付与し、この組成物からなるパターニングされた硬化被膜にインクを印刷する際の印刷時において塗りムラなどの不具合を抑える事ができる。
【0014】
本発明の第7の態様に係る組成物は、本発明の第1〜第5の態様の有機ケイ素化合物の少なくとも1種(成分A)を含有し、活性エネルギー線硬化性樹脂またはこの樹脂を構成するモノマーの少なくとも1種(成分B)を含有する組成物である。
この様に構成すると、活性エネルギー線照射により有機ケイ素化合物の少なくとも1種(成分A)が活性エネルギー線硬化性樹脂またはこの樹脂を構成するモノマーの少なくとも1種(成分B)から形成される樹脂へ固定化する事ができる。
【0015】
本発明の第8の態様に係る組成物は、本発明の第7の態様の組成物に、更に硬化剤を含有する組成物である。
この様に構成すると、硬化剤を起点として硬化反応が進みやすくなる。
【0016】
本発明の第9の態様に係る組成物は、本発明の第8の態様の硬化剤が活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する事を特徴とする組成物である。
この様に構成すると、活性エネルギー線を照射する事により硬化反応が進みやすくなる。
【0017】
本発明の第10の態様に係る組成物は、本発明の第6〜第9の態様の組成物がさらに有機溶媒を含有する組成物である。
この様に構成すると、任意の濃度に調節可能となりレベリング性や膜厚の調節をする事が容易になる。
【0018】
本発明の第11の態様に係る組成物は、本発明の第6〜10の態様の組成物に熱硬化性樹脂を構成しうるモノマーまたはこのモノマーの重合物の少なくとも1種(成分C)を含有する、組成物である。
この様に構成すると熱を外部から加えることによって硬化反応を進める事ができる。
【0019】
本発明の第12の態様に係る組成物は、本発明の第6〜11の態様の組成物にさらに熱可塑性樹脂を構成しうるモノマーまたはこのモノマーの重合物の少なくとも1種(成分D)を含有する組成物である。
この様に構成すると任意に得られる硬化被膜を改質する事ができる。
【0020】
本発明の第13の態様に係る表面処理剤は、本発明の第6〜第12の態様の組成物を用いて得られる表面処理剤である。
この様に構成すると組成物を表面処理剤として任意の基材へ塗布する事で基材の表面を改質する事ができる。
【0021】
本発明の第14の態様に係る硬化被膜は、硬化被膜であって、本発明の第6〜第12の組成物または第13の態様の表面処理剤を用いて得られる硬化被膜である。
この様に構成すると、組成物を硬化し硬化被膜とする事で親撥パターニングをする事ができる。
【0022】
本発明の第15の態様に係る硬化被膜は、硬化被膜であって、本発明の第14の態様の樹脂組成物を用いて親撥パターニングされた、硬化被膜である。
この様に構成すると親撥パターニング部位にインクを印刷する際に良好にインクでパターンを印刷する事ができる。
【0023】
本発明の第16の態様に係る成形体は、成形体であって、本発明の第15または第16に記載の硬化被膜を有する成形体である。
この様に構成すると親撥パターニング部位にインクを印刷した硬化被膜を素子などに用いる事が可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の有機ケイ素化合物は、シリコーン化合物の片末端をアクリロイル変性した有機ケイ素化合物であって、該有機ケイ素化合物または該有機ケイ素化合物を含む組成物から成る塗膜において、活性エネルギー線の照射の有無によって親撥パターニングを可能とする事ができる。それによって回路基板上の配線印刷等におけるインク印刷時のパターンの断線や塗りムラなどなく良好な印刷パターンを描く事が可能である。さらに、本発明の組成物から作製される、活性エネルギー線が照射されない塗膜は特定の溶剤を使用することなく、水洗するだけで洗い流せることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0026】
本発明の第1の実施の形態に係る有機ケイ素化合物について説明する。有機ケイ素化合物の構造は以下の通りである。
【0027】
有機ケイ素化合物はシリコーン鎖(主鎖となるシロキサン結合)を含み、その片末端がアクリル変性された化合物である。片末端は、官能基としてのアクリロイル基を含む基を有するため、官能基の数により、2官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物、4官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物に分類する事ができる。
なお、有機ケイ素化合物は導入するアクリロイル基の数を変えてアクリロイル当量を調製することで硬化被膜の架橋密度を調節することができる。
【0028】
有機ケイ素化合物の骨格となる構造を、式(1)に示す。式(1)においてnは、0〜300の整数である。
なお、シリコーン鎖のnを0〜300にすることで有機ケイ素化合物の撥液性を調節することができるため好ましい。
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8はそれぞれ独立して、水素もしくは炭素数が1〜30のアルキルである。X
1、X
2、X
3、X
4はそれぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレンである。これらの長さを調節することで基材へのレベリング性や組成物とした場合の相溶性を調節することができるため好ましい。
【化8】
【0029】
2官能アクリロイル変性ケイ素化合物は、Yが式(2)で示される基である化合物である。
【化9】
【0030】
4官能アクリロイル変性ケイ素化合物は、Yが式(3)で示される基である化合物である。
【化10】
【0031】
本願の第2の実施の形態に係る有機ケイ素化合物において、有機ケイ素化合物の構造は以下の通りである。
有機ケイ素化合物はシリコーン鎖(主鎖となるシロキサン結合)を含み、その片末端がアクロイリル変性された化合物である。片末端は、官能基としてのアクリロイル基を含む基を有するため、官能基の数により、2官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物、4官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物に分類する事ができる。
なお、有機ケイ素化合物は導入するアクリロイル基の数を変えてアクリロイル当量を調製することで硬化被膜の架橋密度を調節することができる。
【0032】
有機ケイ素化合物の骨格となる構造を、式(4)に示す。式(4)においてnは、0〜300の整数である。
なお、シリコーン鎖のnを0〜300にすることで有機ケイ素化合物の撥液性を調節することができるため好ましい。
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8はそれぞれ独立して、水素もしくは炭素数が1〜30のアルキルである。これらの長さを調節することで基材へのレベリング性や組成物とした場合の相溶性を調節することができるため好ましい。
【化11】
2官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物は、Yが前記の式(2)の基である化合物である。
4官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物は、Yが前記の式(3)で示される基である化合物である。
【0033】
本願の第3の実施の形態に係る有機ケイ素化合物において、有機ケイ素化合物の構造は以下の通りである。
有機ケイ素化合物はシリコーン鎖(主鎖となるシロキサン結合)を含み、その片末端がアクリル変性された有機ケイ素化合物である。片末端は、官能基としてのアクリロイル基を含む基を有するため、官能基の数により、2官能アクリル変性有機ケイ素化合物、4官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物に分類する事ができる。
なお、有機ケイ素化合物は導入するアクリロイル基の数を変えてアクリロイル当量を調製することで硬化被膜の架橋密度を調節することができる。
【0034】
有機ケイ素化合物の骨格となる構造を、式(5)に示す。式(5)においてnは、0〜300の整数である。
なお、シリコーン鎖のnを0〜300にすることで有機ケイ素化合物の撥液性を調節することができるため好ましい。
R
9、R
10はそれぞれ独立して、水素もしくは炭素数が1〜4のアルキルである。これらの長さを調節することで基材へのレベリング性や組成物とした場合の相溶性を調節することができるため好ましい。
【化12】
2官能アクリロイル変性ケイ素化合物は、Yが前記の式(2)の基である化合物である。
4官能アクリロイル変性ケイ素化合物は、Yが前記の式(3)で示される基である化合物である。
【0035】
本願の第4の実施の形態に係る有機ケイ素化合物において、有機ケイ素化合物の構造は以下の通りである。
【0036】
有機ケイ素化合物はシリコーン鎖(主鎖となるシロキサン結合)を含み、その片末端がアクリル変性された化合物である。片末端は、官能基としての2つアクリロイル基を含む基を有するため、活性エネルギー線を照射する事によりアクリロイル基同士が反応して、重合が進み硬化被膜を形成することができるため好ましい。
【0037】
有機ケイ素化合物の骨格となる構造を、式(6)に示す。式(6)においてnは、0〜300の整数である。
なお、シリコーン鎖のnを0〜300にすることで有機ケイ素化合物の撥液性を調節することができるため好ましい。
【化13】
【0038】
本願の第5の実施の形態に係る有機ケイ素化合物において、有機ケイ素化合物の構造は以下の通りである。
【0039】
有機ケイ素化合物はシリコーン鎖(主鎖となるシロキサン結合)を含み、その片末端がアクリル変性された化合物である。片末端は、官能基としての4つのアクリロイル基を含む基を有するため、活性エネルギー線を照射する事によりアクリロイル基同士が反応して、重合が進み硬化被膜を形成することができるため好ましい。
【0040】
有機ケイ素化合物の骨格となる構造を、下記式(7)に示す。式(7)においてnは、0〜300の整数である。
なお、シリコーン鎖のnを0〜300にすることで有機ケイ素化合物の撥液性を調節することができるため好ましい。
【化14】
(7)
【0041】
本発明の有機ケイ素化合物の合成方法を以下に示す。
有機ケイ素化合物は、ヒドロキシル基含有シロキサン化合物(例えばJNC(株)製サイラプレーンFM−DAシリーズ)を、スズ触媒(例えばジラウリン酸ジブチルスズ)の存在下で、アクリロイルオキシエチルイソシアナート(例えば昭和電工(株)製カレンズAOI)等のアクリロイル基を有するイソシアナートと反応させることによって、2官能アクリロイル変性ケイ素化合物を得ることができる。
【0043】
または、ヒドロキシル基含有シロキサン化合物(例えばJNC(株)製サイラプレーンFM−DAシリーズ)を、スズ触媒(例えばジラウリン酸ジブチルスズ)の存在下で、1,1’−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアナート(例えば昭和電工(株)製カレンズBEI)等のアクリロイル基を有するイソシアナートと反応させることによって、4官能アクリロイル変性ケイ素化合物を得ることができる。
【0045】
なお、ヒドロキシル基含有シロキサン化合物の製造方法については、特許第3661807号公報を参照することができる。
また、ヒドロキシル変性ケイ素化合物とアクリロイル基を有するイソシアナートとの反応に使用する触媒としては、アミン系触媒(例えばトリエチレンジアミン)、カルボキシレート触媒(例えばナフテン酸鉛、酢酸カリウム)、トリアルキルホスフィン触媒(例えばトリエチルホスフィン)、チタン系触媒(例えばチタンノルマルブトキシド)なども使用することができる。
【0046】
本発明の第6の実施の形態に係る組成物は、上記の本発明の有機ケイ素化合物を少なくとも1種含有する組成物である。
本発明の組成物は、必要に応じて活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、などの樹脂を含んでもよい。また、必要に応じて硬化に必要な硬化剤、混合を促進するための溶媒等を含んでいてもよい。
【0047】
本発明の第7の実施の形態に係る組成物は、上記の本発明の有機ケイ素化合物(成分A)を少なくとも1種含有し、活性エネルギー線硬化性樹脂またはこの樹脂を構成するモノマーの少なくとも1種(成分B)を含有する組成物である。
活性エネルギー線硬化性樹脂は硬化方法の容易性から好ましく、紫外線硬化性樹脂が特に好ましい。
なお、本明細書において、活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線をいう。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線などの光エネルギー線や、X線、α線、β線、γ線、電子線などの放射線が挙げられる。中でも、特に紫外線が好ましい。
【0048】
活性エネルギー線硬化性樹脂またはこの樹脂を構成するモノマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、(メタ)アクリレートモノマー、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂などのラジカル重合が可能な不飽和結合を有する樹脂またはモノマーを挙げることができる。これらの樹脂をまたはモノマーを単独で用いてもよいし、複数の樹脂またはモノマーを組み合わせて用いてもよい。
【0049】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、ポリイソシアナートとポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらに水酸基含有(メタ)アクリル化合物および必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させることによって得ることができるラジカル重合性不飽和基含有オリゴマーが挙げられる。
【0050】
前記ポリイソシアナートとしては、具体的には2,4−トリレンジイソシアナートおよびその異性体、ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、水添キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ナフタリンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、バーノックD−750、クリスボンNK(商品名:大日本インキ化学工業(株)製)、デスモジュールL(商品名:住友バイエルウレタン(株)製)、コロネートL(商品名:日本ポリウレタン工業(株)製)、タケネートD102(商品名:三井武田ケミカル(株)製)、イソネート143L(商品名:三菱化学(株)製)などが挙げられる。
【0051】
前記ポリヒドロキシ化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられ、具体的にはグリセリン−エチレンオキシド付加物、グリセリン−プロピレンオキシド付加物、グリセリン−テトラヒドロフラン付加物、グリセリン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−エチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−テトラヒドロフラン付加物、トリメチロールプロパン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−エチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−プロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−テトラヒドロフラン付加物、ジペンタエリスリトール−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0052】
前記多価アルコール類としては、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコールなどが挙げられる。
【0053】
前記水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されるものではないが、水酸基含有(メタ)アクリル酸のエステルあるいはアミド化合物が好ましく、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0054】
ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂としては、(1)飽和多塩基酸および/または不飽和多塩基酸と多価アルコールから得られる末端カルボキシル基のポリエステルにα,β−不飽和カルボン酸エステル基を含有するエポキシ化合物を反応して得られる(メタ)アクリレート、(2)飽和多塩基酸および/または不飽和多塩基酸と多価アルコールから得られる末端カルボキシル基のポリエステルに水酸基含有アクリレートを反応させて得られる(メタ)アクリレート、(3)飽和多塩基酸および/または不飽和多塩基酸と多価アルコールから得られる末端水酸基のポリエステルに(メタ)アクリル酸を反応して得られる(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0055】
ポリエステル(メタ)アクリレートの原料として用いられる飽和多塩基酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸などの重合性不飽和結合を有していない多塩基酸またはその無水物と、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの重合性不飽和多塩基酸またはその無水物が挙げられる。さらに多価アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0056】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物が挙げられる。例えば、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0057】
不飽和ポリエステル樹脂としては、多価アルコールと不飽和多塩基酸(および必要に応じて飽和多塩基酸)とのエステル化反応による縮合生成物(不飽和ポリエステル)を、重合性モノマーに溶解したものが挙げられる。
前記不飽和ポリエステルとしては、無水マレイン酸などの不飽和酸とエチレングリコールなどのジオールとを重縮合させて製造できる。具体的にはフマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの重合性不飽和結合を有する多塩基酸またはその無水物を酸成分とし、これとエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの多価アルコールをアルコール成分として反応させ、また、必要に応じてフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの重合性不飽和結合を有していない多塩基酸またはその無水物も酸成分として加えて製造されるものが挙げられる。
【0058】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、グリシジル基(エポキシ基)を有する化合物と、アクリル酸などの重合性不飽和結合を有するカルボキシル化合物のカルボキシル基との開環反応により生成する重合性不飽和結合を持った化合物(ビニルエステル)を、重合性モノマーに溶解したものが挙げられる。
【0059】
前記ビニルエステルとしては、公知の方法により製造されるものであり、エポキシ樹脂に不飽和一塩基酸、例えばアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0060】
また、各種エポキシ樹脂をビスフェノール(例えばA型)またはアジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸(ハリダイマー270S(商品名):ハリマ化成(株))などの二塩基酸で反応させ、可撓性を付与してもよい。
原料としてのエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよびその高分子量同族体、ノボラック型グリシジルエーテル類などが挙げられる。
【0061】
本発明の第8の実施の形態に係る組成物は、本発明の第6および第7の実施の形態に係る組成物に硬化剤を添加する組成物である。硬化剤を用いる事で樹脂とケイ素化合物(成分A)の硬化反応をスムーズに進行させる事ができるため好ましい。
【0062】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、活性エネルギー線源により、紫外線または電子線等の活性エネルギー線を照射して硬化させることができる。
【0063】
一例として、活性エネルギー線硬化性樹脂に紫外線を照射させて用いる場合を説明する。活性エネルギー線硬化性樹脂は、硬化剤である光重合開始剤の存在下で紫外線を照射して重合させることにより硬化するものが好ましい。硬化剤としては、例えば、各種のベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、フェニルケトン誘導体、オニウム塩光開始剤、有機金属光開始剤、金属塩カチオン光開始剤、光分解性オルガノシラン、潜在性スルホン酸、酸化ホスフィンなどの光重合開始剤が挙げられる。
この場合、硬化剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂の全体量に対して、0.1〜20wt%が好ましく、1〜15wt%がより好ましく、3〜10wt%が特に好ましい。
【0064】
本発明の第9の実施の形態に係る組成物は、硬化剤が活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する事を特徴とする本発明の第8の実施の形態に記載の組成物である。
活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する硬化剤としては、紫外線や可視光線などの活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する化合物であれば特に限定しない。
【0065】
活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する化合物として用いられる化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4′−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、1,4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4′−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4′−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−(4′−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3′,4′−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2′,4′−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2′−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4′−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2′−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4′−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3′−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η
5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどがある。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することも有効である。
【0066】
中でも、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′−ジ(メトキシカルボニル)−4,4′−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4′−ジ(メトキシカルボニル)−4,3′−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4′−ジ(メトキシカルボニル)−3,3′−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが好ましい。
【0067】
本発明の第10の実施の形態に係る組成物は、本発明の第6〜第9の実施の形態に係る組成物にさらに有機溶媒を添加する組成物である。この様にすると、組成物の混合を促進できて好ましい。更に、有機溶媒を添加する事で組成物の濃度を適宜変える事ができ、塗膜作製に適した粘度にする事ができるため好ましい。
【0068】
有機溶媒としては、例えば、エタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エーテル、3−メトキシブタノール、3−メトキシブチルアセテート、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸i−プロピル、2−ヒドロキシイソ酪酸i−ブチル、2−ヒドロキシイソ酪酸n−ブチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エーテル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、ジオキサン、トルエン、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン(略語:NMP)、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルホルムアミドおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、ジメトキシベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、HCFC−141b、HCFC−225)、HFCs系溶媒(炭素数2〜4、5および6以上のHFCs)、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、フルオロシクロペンタン、フルオロシクロブタン)、フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロケトン、フルオロアルコール、α,α,α−トリフルオロトルエン、ヘキサフルオロベンゼン、水が含まれる。これらを単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0069】
本発明の第11の実施の形態に係る組成物は、本発明の第6〜第10の実施の形態に係る組成物にさらに熱硬化性樹脂を構成しうるモノマーまたはこのモノマーの重合物の少なくとも1種(成分C)を添加する樹脂組成物である。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、熱硬化性ポリイミドおよびシリコーン樹脂などが挙げられ、これらの熱硬化性樹脂を構成しうるモノマーまたはこのモノマーの重合物が添加される。これらのモノマーやその重合物を単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルブチル混合エーテル化メラミン樹脂等のメラミン系樹脂、イソシアナート基を2個以上持ったポリイソシアナート化合物(O=C=N−R−N=C=O)と、水酸基を2個以上持ったポリオール化合物(HO−R’−OH)、ポリアミン(H
2N−R”−NH
2)、または水などの活性水素(−NH
2,−NH,−CONH−など)を持った化合物などとの反応により得ることができるウレタン系樹脂等が加工適性上好ましい。
【0071】
エポキシ系樹脂は耐熱性、接着性、耐薬品性、メラミン系樹脂は耐熱性、硬度、透明性、ウレタン系樹脂は接着性、低温硬化性に優れており、適宜選択して使用することができる。
【0072】
熱硬化性樹脂は、所望の硬化温度(80〜160℃)、時間(30〜180秒)で迅速硬化させる必要がある。
【0073】
樹脂の種類に応じて、硬化反応開始剤や硬化反応促進剤を用いてもよい。例えば、エポキシ系樹脂の場合、脂肪族アミンや芳香族アミンのアミン類、ポリアミド樹脂、3級アミンおよび2級アミン、イミダゾール類、ポリメルカプタン、酸無水物類、ルイス酸錯体、メラミン系樹脂の場合、スルホン酸系触媒、ウレタン系樹脂の場合、有機金属系ウレタン化触媒と3級アミン系ウレタン化触媒等を挙げることができる。
【0074】
上記の硬化反応開始剤や硬化反応促進剤は、活性エネルギー線照射や熱エネルギーによりカチオン重合を開始させる物質を放出することができる化合物であればよい。かかる硬化反応開始剤の例としては、カルボン酸、アミン、酸無水物化合物や酸発生剤などが含まれ、好ましくはルイス酸を放出するオニウム塩である複塩またはその誘導体である。
【0075】
上記の硬化反応開始剤の代表的なものとしては、下記の式(8)で示される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。
[A]
m+[B]
m− (8)
【0076】
上記の式(8)において、陽イオン[A]
m+はオニウムイオンであることが好ましく、例えば下記の式(9)で示される。
[(α)
aQ]
m+ (9)
【0077】
式(9)において、αは炭素数が1〜60であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでもよい有機基である。aは1〜5の整数である。a個のαは各々独立で、同一でも異なっていてもよい。また、少なくとも1つのαは、芳香環を有する有機基であることが好ましい。
【0078】
Qは、S、N、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、F、N=Nからなる群から選ばれる原子あるいは原子団である。また、陽イオン[A]
m+中のQの原子価をqとしたとき、m=a−qである(但し、N=Nは原子価0として扱う)。
【0079】
一方、陰イオン[B]
m−は、ハロゲン化物錯体であるのが好ましく、例えば下記の式(10)で示される。
[LX
b]
m− (10)
【0080】
式(10)において、Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属または半金属(Metalloid)であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coなどである。Xはハロゲン原子である。bは3〜7なる整数である。また、陰イオン[LX
b]
m−中のLの原子価をpとしたとき、m=b−pである。
【0081】
式(10)で示される陰イオン[LX
b]
m−の具体例には、テトラフルオロボレート(BF
4)、ヘキサフルオロホスフェート(PF
6)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF
6)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF
6)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl
6)などが含まれる。
【0082】
また陰イオン[B]
m−としては、下記の式(11)で示されるものも好ましく用いることができる。L、X、bは上記と同様である。
[LX
b−1(OH)]
m− (11)
【0083】
陰イオン[B]
m−の例には、さらに過塩素酸イオン(ClO
4)
―、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF
3SO
3)
−、フルオロスルホン酸イオン(FSO
3)
―、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオンなども含まれる。
【0084】
本発明における硬化反応開始剤は、このようなオニウム塩の中でも、下記の(イ)〜(ハ)に例示される芳香族オニウム塩であることがさらに好ましい。これらの中から、その1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0085】
(イ)フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのアリールジアゾニウム塩
(ロ)ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアリールヨードニウム塩
(ハ)トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4'−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどのトリアリールスルホニウム塩
【0086】
さらに、本発明における硬化反応開始剤は、鉄アレーン錯体またはアルミニウム錯体と、トリフェニルシラノールなどのシラノール類との混合物であってもよい。
【0087】
鉄アレーン錯体の例には、(η
5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)〔(1,2,3,4,5,6−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン〕−アイアンーヘキサフルオロホスフェートなどが含まれ、アルミニウム錯体の例には、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトナトアセタト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウムなどが含まれる。
【0088】
上記の中でも実用面の観点から、本発明の実施の形態における硬化反応開始剤は、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、鉄−アレーン錯体であることが好ましい。
【0089】
硬化反応開始剤(好ましくは酸発生剤)の含有量は、エポキシ樹脂が含有するエポキシ基10〜300モルに対して、1モルであることが好ましい。
【0090】
本発明の第12の実施の形態に係る組成物は、本発明の第6〜第11の実施の形態に係る組成物にさらに熱可塑性樹脂を構成しうるモノマーまたはこのモノマーの重合物の少なくとも1種(成分D)を添加する組成物である。成分Dを混合させると樹脂本来の特性(力学物性、表面・界面特性、相溶性など)、更に得られる硬化被膜を改質することができる。
【0091】
熱可塑性樹脂の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、超高分子量ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアミド(ナイロン6:デュポン社商品名、ナイロン6,6:デュポン社商品名、ナイロン6,10:デュポン社商品名、ナイロン6,T:デュポン社商品名、ナイロンMXD6:デュポン社商品名など)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシラート、など)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、フッ素樹脂(ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、など)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリラート(Uポリマー:ユニチカ(株)商品名、ベクトラ:ポリプラスチックス(株)商品名、など)、ポリイミド(カプトン:東レ(株)商品名、AURUM:三井化学(株)商品名、など)、ポリエーテルイミドおよびポリアミドイミドなどが含まれる。
【0092】
本発明の第13の実施の形態に係る表面処理剤としては、上記第6〜第12の実施の形態に係る組成物を用いることで、基材の表面の改質を行う事を可能にする。表面処理剤とは基材の表面に塗布し、その後硬化被膜とすることで、基材の表面を改質する事が可能なものである。
【0093】
上記硬化性樹脂および表面処理剤は、組成物の塗布特性および保存安定性等の向上のために、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分を含むことができる。
その他の成分としては、例えば着色剤、帯電防止剤、カップリング剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、酸化防止剤、還元防止剤等が挙げられる。これらの成分は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0094】
本発明の第14の実施の形態に係る硬化被膜としては、硬化被膜は、上記本発明の第6〜第12の実施の形態に係る組成物、または第13の実施の形態に係る表面処理剤を硬化させて得られた硬化物のことである。組成物および表面処理剤を硬化被膜とする際には適宜、基材を用いてもよい。
【0095】
本発明の組成物を塗布する基材は、組成物または表面処理剤が塗布される対象となりうるものであれば、特に限定されず、その形状は平板状に限られず、曲面状であってもよい。
【0096】
また、基材の材質および形態は特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックフィルム、およびセロハン、アセテート、金属箔が挙げられる。
更にはポリイミドと金属箔との積層フィルム、目止め効果があるグラシン紙またはパーチメント紙、ポリエチレン、クレーバインダー、ポリビニルアルコール、でんぷんまたはカルボキシルメチルセルロースなどで目止め処理した紙、およびガラスなどを挙げることができる。
【0097】
また、前記基材に直接塗布する以外にも、有機膜、無機膜等の機能性膜上に本発明の組成物を塗布することができる。その場合は、前記膜を予め塗布性を向上させるために、紫外線/オゾンアッシング処理や、酸素プラズマ処理等を施してもよい。また本発明の組成物の塗布に影響のない範囲で、市販のプライマー、コート材等を塗布してもよい。
【0098】
なお、これらの基材を構成する物質には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、酸化防止剤、劣化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤および電波防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。また、基材の表面の少なくとも一部には、必要に応じて撥水処理、コロナ処理、プラズマ処理またはブラスト処理などの易接着処理を施したり、表面の少なくとも一部に易接着層やハードコート膜を設けたりしてもよい。
【0099】
基材の厚さは、特に限定されず、使用する目的により適宜調整されるが、好ましくは10μm〜2mm程度であり、より好ましくは20μm〜1.5mm、さらに好ましくは50μm〜1mmである。
【0100】
本発明の硬化被膜は、上記組成物もしくは表面処理剤を基材に塗布した後、加熱・乾燥し乾燥塗膜を得、さらに該乾燥塗膜に活性エネルギー線を照射する事により形成することができる。
【0101】
塗布方法としては、一般的に知られている塗布方法、例えば、スピンコート、ディップコート、スリットコート法、アプリケーター法、反転印刷法、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法などが挙げられる。なかでもスピンコート法およびスリットコート法は、より均一な膜を形成できることから好ましい。
【0102】
加熱・乾燥方法は特に限定されないが、ホットプレート、加熱オーブンを用いることができる。また、膜厚にもよるが、50〜120℃の温度範囲で10秒〜300秒乾燥させると、溶媒が効果的に蒸発し、表面のべたつきが少ない膜を得ることができる。
【0103】
本発明の第15の実施の形態に係るパターニングされた硬化被膜としては、本発明の第14の実施の形態に係る硬化被膜をパターニングした形態である。上記組成物や表面処理剤を塗布・乾燥後、直接露光したい場所のみをスキャンして行う直描露光機や、従来使用されているプロキシミティ露光機を使用したマスク露光によって、所望の部分をパターン露光することができる。パターン露光する事で、露光部と未露光部を作製することが可能である。露光部は露光によって硬化反応もしくは化学構造が変化することで露光前の塗膜の性質を変化させることができるため好ましい。露光によって撥液性を高くすることや親水性を高くすることができ好ましい。この様にすると、パターン露光後にインクを塗布した際に、インクを撥液部もしくは親水部へ塗ることができるため、インクの回路基板上の配線印刷等において、所望するパターンを描く事が可能となり好ましい。
【0104】
本発明の硬化被膜は、乾燥塗膜への露光によりパターニングを行った後、溶媒を使用して洗浄してもよい。露光によって乾燥塗膜の性質が変化するため適宜洗浄溶媒を選択する事ができる。
洗浄に使用される溶媒は、本発明の組成物もしくは露光処理後の未露光部の乾燥塗膜を溶解できる溶剤であれば、特に限定されないが、水、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールが、好ましい。洗浄溶剤がこれらであると、溶解性が高く、容易に洗浄できるため好ましい。洗浄方法は、ディップ方式、スプレー方式等が好適に用いられるが特に限定されるものではない。洗浄時間は、成膜した膜厚にもよるが、5〜100秒が好ましく、10〜50秒がより好ましい。
【0105】
本発明の第16の実施の形態に係る成型体としては、上記第15または第16の実施の形態に係る硬化被膜と、その硬化被膜に覆われた基材とを備える成型体である。例えば、本発明の硬化被膜を有する配線板や、本発明の硬化被膜上に導電性インクが印刷された有機トランジスタなどが含まれる。
【0106】
乾燥塗膜に照射する光は、紫外線が好ましい。照射する紫外線の波長は100〜500nm、好ましくは150〜450nm、より好ましくは250〜400nmである。照射される紫外線がこの波長範囲にあると、効果的に硬化されるため好ましい。
【0107】
乾燥塗膜を硬化させて撥液性を発現させるために必要な露光照射量は、10〜1000mJ/cm
2が好ましく、30〜500mJ/cm
2がより好ましく、50〜300mJ/cm
2がさらに好ましい。露光照射量がこれらの範囲内であると、効率良く膜硬化が進み、撥液性が発現するため、好ましい。
【0108】
乾燥塗膜を硬化させるために使用されるランプは、硬化できるランプであれば特に限定されないが、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が好ましい。なかでも超高圧水銀灯、メタルハライドランプであれば、硬化性が優れるため好ましい。
【実施例】
【0109】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0110】
[実施例1]
<2官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物(A1)の合成>
片末端ヒドロキシル変性有機ケイ素化合物(商品名:サイラプレーンFMDA21、OH価24.1mgKOH/g、JNC(株)製)10.1gに、ジラウリン酸ジブチルスズ(東京化成(株)製)0.002gとp−メトキシフェノール0.012g添加し、窒素雰囲気下45℃まで加熱した。その溶液にアクリロイルオキシエチルイソシアナート(商品名:カレンズAOI、昭和電工(株)製)0.70gを滴下し、45℃〜50℃で2時間攪拌した。NMRを用いて原料の消失を確認した後に、氷冷しメタノール(0.24g)を滴下した。同温度で30分確認し2官能アクリル変性有機ケイ素化合物(A1)のメタノール溶液(11.0g、固形分濃度97wt%)を得た。
【0111】
1H NMRを用いて反応の進行を確認し、原料であるサイラプレーンFMDA21中の酸素の隣りのメチレンプロトンに由来するピーク:
1H NMR(CDCl
3,500MHz):3.35(2H,t,J=6.8Hz),3.41(2H,s),3.59(2H,d,J=11Hz),3.70(2H,d,J=11Hz)が消失し、ウレタンアクリレート化によってメチレンプロトンが3.23 (2H,s),3.3(2H,t,J=6.9Hz), 4.00(4H,s)へシフトする事を確認した。
【0112】
[実施例2]
<2官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物(A2)の合成>
原料に片末端ヒドロキシル変性有機ケイ素化合物(商品名:サイレプレーンFMDA11、OH価94.8mgKOH/g、JNC(株)製)、10.2gとジラウリン酸ジブチルスズ(東京化成(株)製)0.005g、p−メトキシフェノール0.012g、アクリロイルオキシエチルイソシアナート(商品名:カレンズAOI、昭和電工(株)製)2.86g、メタノール(0.97g)を用いた事以外は実施例1と同様の方法にて2官能アクリイロル変性有機ケイ素化合物(A2)のメタノール溶液(14.1g、固形分濃度87wt%)を得た。
【0113】
1H NMRを用いて反応の進行を確認し、原料であるサイラプレーンFMDA21中の酸素の隣りのメチレンプロトンに由来するピーク:
1H NMR(CDCl
3,500MHz):3.36(2H,t,J=6.8Hz),3.41(2H,s),3.59(2H,d,J=11Hz),3.73(2H,d,J=11Hz)が消失しウレタンアクリレート化によってメチレンプロトンが3.24(2H,s),3.29(2H,t,J=6.7Hz), 4.10(4H,s)へシフトする事を確認した。
【0114】
[実施例3]
<2官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物(A3)の合成>
原料に片末端ヒドロキシル変性有機ケイ素化合物(商品名:サイレプレーンFMDA26、OH価8.1mgKOH/g、JNC(株)製)、10.0gとジラウリン酸ジブチルスズ(東京化成(株)製)0.0005g、p−メトキシフェノール0.010g、アクリロイルオキシエチルイソシアナート(商品名:カレンズAOI、昭和電工(株)製)0.24g、メタノール(0.10g)を用いた事以外は実施例1と同様の方法にて2官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物(A3)のメタノール溶液(10.4g、固形分濃度99wt%)を得た。
【0115】
1H NMRを用いて反応の進行を確認し、原料であるサイラプレーンFMDA26中の酸素の隣りのメチレンプロトンに由来するピーク:
1H NMR(CDCl
3,500MHz):3.37(2H,t,J=6.9Hz),3.41(2H,s),3.59(2H,d,J=11Hz),3.71(2H,d,J=11Hz)が消失しウレタンアクリレート化によってメチレンプロトンが3.24(2H,s),3.30(2H,t,J=6.9Hz),4.01(4H,s)へシフトする事を確認した。
【0116】
[実施例4]
<4官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物(A4)の合成>
原料に片末端ヒドロキシル変性有機ケイ素化合物(商品名:サイレプレーンFMDA21、OH価24.1mgKOH/g、JNC(株)製)、10.0gとジラウリン酸ジブチルスズ(東京化成(株)製)0.0014g、p−メトキシフェノール0.011g、1,1’−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアナート(商品名:カレンズBEI、昭和電工(株)製)1.24g、メタノール(0.25g)を用いた事以外は実施例1と同様の方法にて
4官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物(A4)のメタノール溶液(11.5g、固形分濃度96wt%)を得られる。
【0117】
[比較例1]
<2官能メタクリロイル変性有機ケイ素化合物(E1)の合成>
片末端ヒドロキシル変性有機ケイ素化合物(商品名:サイラプレーンFMDA21、OH価24.1mgKOH/g、JNC(株)製)50.1gとジラウリン酸ジブチルスズ(東京化成(株)製)0.007g、p−メトキシフェノール0.053g、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(商品名:カレンズMOI、昭和電工(株)製)3.81g、メタノール(2.36g)を用いた事以外は実施例1と同様の方法にて2官能メタクリロイル変性有機ケイ素化合物(E1)のメタノール溶液(56.3g、固形分濃度94wt%)を得た。
【0118】
1H NMRを用いて反応の進行を確認し、原料であるサイラプレーンFMDA21中の酸素の隣りのメチレンプロトンに由来するピーク:
1H NMR(CDCl
3,500MHz):3.35(2H,t,J=6.8Hz),3.41(2H,s),3.59(2H,d,J=11Hz),3.70(2H,d,J=11Hz)が消失し、ウレタンアクリレート化によってメチレンプロトンが3.24(2H,s),3.29(2H,t,J=6.8Hz),4.00(4H,s)へシフトする事を確認した。
【0119】
[実施例5]
〈組成物(1)の調製〉
実施例1にて合成した2官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物(A1)のメタノール溶液(固形分濃度97wt%)0.0019gと硬化剤としてイルガキュア819(BASF社製)0.0002g、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.9979gを混合させ本発明の組成物(1)とした。
【0120】
[比較例2]
〈組成物(2)の調製〉
比較例1で合成した2官能メタクリロイル変性有機ケイ素化合物(E1)のメタノール溶液(固形分濃度94wt%)0.0018gとイルガキュア819(BASF社製)0.0002g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.9980gを混合させ組成物(2)とした。
【0121】
〈組成物(3)の調製〉
実施例1にて合成した2官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物(A1)のメタノール溶液(固形分濃度97wt%)0.010gと活性エネルギー線硬化性樹脂を構成するモノマーとしてヒドロキシエチルアクリルアミド(商品名:HEAA、KJケミカルズ(株)製)(B1)0.091g、イルガキュア819(BASF社製)0.010g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.890gを混合させ本発明の組成物(3)とした。
【0122】
〈組成物(4)の調製〉
実施例1にて合成した2官能アクリロイル変性有機ケイ素化合物(A1)のメタノール溶液(固形分濃度97wt%)0.010gとポリエチレングリコールジアクリレート(商品名:ライトアクリレート9EG−A、共栄社化学(株)製)(B2)0.090g、イルガキュア819(BASF社製)0.010g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.891gを混合させ本発明の組成物(4)とした。
【0123】
[実施例6]
<硬化被膜(1)の形成>
基板としてガラスを用いた(サイズ:4cm×4cm)。ガラス基板を低圧水銀灯(PL2003N−12、セン特殊光源(株)社製)を用いて表面をオゾンクリーニング処理した。その後、基板上にコーティング液1をスピンコートした。回転数1000rpmでコーティング液1を約1ml塗布し乾燥膜厚が約10nmになるようにした。
【0124】
80℃に加温したホットプレート上で30秒間乾燥し、メタルハライドランプ(J−cure1500、JATEC社製)にて500mJ/cm
2の条件で塗膜を光硬化した。光硬化の際はパターン露光を行い露光部と未露光部を含む塗膜を形成した。光硬化後、水洗する事で未露光部分の塗膜を洗い流した。更に低圧水銀灯を用いて表面をオゾンクリーニング処理し本発明の硬化被膜(1)とした。
【0125】
[比較例3]
<硬化被膜(2)の形成>
実施例6で用いた方法と同様の方法で硬化被膜(2)を形成した。
組成物(1)の代わりに組成物(2)を用いた事以外は実施例6と同様の方法にて硬化被膜(2)を形成した。
【0126】
[実施例7]
<硬化被膜(3)の形成>
実施例6で用いた方法と同様の方法で硬化被膜(3)を形成した。
組成物(1)の代わりに組成物(3)を用いた事以外は実施例6と同様の方法にて本発明の硬化被膜(3)を形成した。
【0127】
[実施例8]
<硬化被膜(4)の形成>
実施例6で用いた方法と同様の方法で硬化被膜(4)を形成した。
組成物(1)の代わりに組成物(4)を用いた事以外は実施例6と同様の方法にて本発明の硬化被膜(4)を形成した。
【0128】
<硬化膜の試験>
(1)接触角測定
積層体の表面層をプローブ液体として、蒸留水(窒素・りん測定用、関東化学(株)製)を用い、接触角計(Drop Master DM−500、協和界面科学(株)製)を使用して、硬化膜の表面層の水の接触角を測定した。
【0129】
上記の結果を表1(2官能(メタ)アクリロイル変性有機ケイ素化合物硬化膜の接触角)に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
実施例6と比較例3を比較すると、未露光部の水接触角はほぼ同じ値である。それに対して露光部の接触角は実施例6(アクリロイル基を有する有機ケイ素化合物を硬化)の方が比較例3(メタクリロイル基を有する有機ケイ素化合物を硬化)よりも高い値となっており、実施例6の方が撥液性が高い。
【0132】
これはアクリロイル基のラジカル重合における反応性がメタクリロイル基よりも高いため、硬化反応が進んでいるためと思われる。そのため水洗浄において、メタクリロイル基を有するケイ素化合物を用いた場合は未反応のシリコーン成分が溶出し、硬化膜中のシリコーン成分が減少して接触角が低くなったと考えられる。