(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、廃硫酸の処理方法によって鉄分を削減した廃硫酸を用いて石膏を製造した場合、石膏の製造が煩雑になってしまうという問題がある。また鉄分含有量を石膏製造に十分なレベルまで下げることが難しい場合も生じる可能性がある。一方、鉄が析出してこない低pH域の反応に止めて石膏を製造する場合は、石膏を製造できる量が少なくなってしまい、硫酸を十分に利用することができない。そこで、本発明は、鉄分を含む廃硫酸に限らず、重金属を含む廃硫酸をそのまま使用して重金属の含有量が低い石膏を製造できる石膏の製造方法およびその石膏の製造方法により製造された石膏を用いてセメント組成物を製造するセメント組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、重金属を含む廃硫酸にそのままカルシウム源を添加して石膏を析出させたときの廃硫酸のpHを調整することによって、析出する石膏中の重金属の含有量を低くすることができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]重金属を含む廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる工程(A)を含み、工程(A)では、廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させたときの廃硫酸のpHを3.0以下にする石膏の製造方法。
[2]工程(A)で析出した石膏を廃硫酸から分離除去する工程(B)、および水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を、石膏を分離除去した廃硫酸に添加して重金属の水酸化物を析出させる工程(C)をさらに含み、工程(C)では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を廃硫酸に添加して水酸化物を析出させたときの廃硫酸のpHを3.5以上10.0以下にする上記[1]に記載の石膏の製造方法。
[3]工程(C)で析出した水酸化物を廃硫酸から分離除去する工程(D)、および水酸化物を分離除去した廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる工程(E)をさらに含む上記[2]に記載の石膏の製造方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の石膏の製造方法により石膏を製造する工程、および石膏を製造する工程で製造された石膏を用いてセメント組成物を製造する工程を含むセメント組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、重金属を含む廃硫酸をそのまま使用して重金属の含有量が低い石膏を製造することができる石膏の製造方法およびその石膏の製造方法により製造された石膏を用いてセメント組成物を製造するセメント組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[石膏の製造方法]
以下、本発明の石膏の製造方法を説明する。本発明の石膏の製造方法は、重金属を含む廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる工程(A)を含む。
【0008】
工程(A)
工程(A)では、重金属を含む廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる。
【0009】
(重金属)
本発明の重金属は、比重が5を超える金属であり、重金属には、たとえば、鉄、亜鉛、クロム、鉛、カドミウム、銅、スズ、水銀、ニッケルおよびコバルトなどが挙げられる。廃硫酸には、鉄、亜鉛およびクロムが含まれていることが多い。
【0010】
(廃硫酸)
工程(A)で使用される廃硫酸は重金属を含むものであれば、とくに限定されない。重金属を含む廃硫酸は、たとえば、鋼板の酸洗に使用した後の硫酸および銅精錬で発生する硫酸などである。
【0011】
(カルシウム源)
工程(A)で使用されるカルシウム源は、カルシウムを含む化合物およびそれらを主成分とする各種材料であり、石膏以外のものであれば、とくに限定されない。カルシウム源には、たとえば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、フッ化カルシウムおよび塩化カルシウムなどが挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中で、好ましいカルシウム源には、酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムなどが挙げられる。また、貝殻や生コンスラッジなどのカルシウムの含有量の大きな廃棄物をカルシウム源として使用してもよい。これらの例示されたカルシウム源は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0012】
(カルシウム源の添加量)
カルシウム源の添加量は、カルシウム源を添加した廃硫酸のpHが3.0以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下になる範囲に収まるよう、制御する。
【0013】
(石膏)
工程(A)で析出する石膏は、二水石膏および/または無水石膏である。廃硫酸中の重金属はほとんど析出せずに、廃硫酸中に残っているので、工程(A)で析出する石膏中の重金属の含有量は小さい。
【0014】
工程(A)では、廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させたときの廃硫酸のpHを3.0以下にし、好ましくは2.5以下にし、より好ましくは2.0以下にする。廃硫酸のpHが3.0よりも大きいと、石膏と一緒に析出する重金属の化合物の析出量が高くなり、石膏中の重金属の含有量が高くなってしまう。また、廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させたときの廃硫酸のpHの下限値は、石膏が析出すれば、とくに限定されない。廃硫酸のpHの下限値は、たとえば1.0である。
【0015】
(水)
工程(A)では、カルシウム源を添加した廃硫酸の粘度などを調整する目的で、混合物に水を添加してもよい。本発明の石膏の製造方法で使用することができる水には、たとえば、イオン交換水、純水、蒸留水および水道水などが挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、後述の工程(F)で石膏を分離除去したときに発生するろ液を処理して得た排水を利用してもよい。
【0016】
本発明の石膏の製造方法は、工程(A)で析出した石膏を廃硫酸から分離除去する工程(B)、および水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を、石膏を分離除去した廃硫酸に添加して重金属の水酸化物を析出させる工程(C)をさらに含んでもよい。
【0017】
工程(B)
工程(B)では、工程(A)で析出した石膏を廃硫酸から分離除去する。
【0018】
(分離除去)
石膏を沈降させることによって、廃硫酸から石膏を分離除去してもよいし、石膏を含有する廃硫酸をろ過することによって廃硫酸から石膏を分離除去してもよい。また、液体サイクロン、デカンター、遠心分離機、フィルタープレスなどの固液分離装置を用いる分離方法を採用して廃硫酸から石膏を分離除去してもよい。これらの分離除去方法は、単独で実施してもよいし、2種以上を組み合わせて実施してもよい。
【0019】
工程(C)
工程(C)では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を、石膏を分離除去した廃硫酸に添加して重金属の水酸化物を析出させる。
【0020】
(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種)
水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種は、廃硫酸中の重金属と反応して重金属の水酸化物を析出させるとともに、廃硫酸中の硫酸と反応して水溶性の硫酸塩を生成する。
【0021】
(廃硫酸のpH)
工程(C)では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を廃硫酸に添加して重金属の水酸化物を析出させたときの廃硫酸のpHを、好ましくは3.5以上10.0以下にし、より好ましくは3.5以上5.0以下となるように水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加量を調整する。廃硫酸のpHを3.5以上10.0以下にすることにより、廃硫酸中の重金属の多くを水酸化物として析出させることができる。
【0022】
たとえば、重金属として鉄分を含む廃硫酸から水酸化鉄を析出させる場合は、廃硫酸のpHを、好ましくは5.0以上10.0以下、より好ましくは6.0以上8.0以下となるように水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加量を調整してもよい。廃硫酸のpHを5.0以上10.0以下にすることにより、廃硫酸中の鉄の多くを水酸化物として析出させることができる。なお、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種のナトリウム、カリウムおよびマグネシウムは、廃硫酸中にイオンの状態で存在する。このため、析出した上記水酸化物を濾過することにより、析出した水酸化物中のナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの含有量を低減させることができ、さらに析出した水酸化物を水で洗浄することにより、析出した水酸化物中のナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの含有量をさらに低減させることができる。
【0023】
たとえば、重金属として亜鉛分を含む廃硫酸から水酸化亜鉛を析出させる場合は、廃硫酸のpHを、好ましくは4.5以上10.0以下、より好ましくは5.0以上10.0となるように水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加量を調整してもよい。廃硫酸のpHを4.5以上10.0以下にすることにより、廃硫酸中の亜鉛の多くを水酸化物として析出させることができる。
【0024】
たとえば、重金属としてクロム分を含む廃硫酸から水酸化クロムを析出させる場合は、廃硫酸のpHを、好ましくは3.5以上10.0以下、より好ましくは4.0以上10.0以下、さらに好ましくは4.5以上10.0以下となるように水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加量を調整してもよい。廃硫酸のpHを3.5以上10.0以下にすることにより、廃硫酸中のクロムの多くを水酸化物として析出させることができる。
【0025】
本発明の石膏の製造方法は、工程(C)で析出した水酸化物を廃硫酸から分離除去する工程(D)、および水酸化物を分離除去した廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる工程(E)をさらに含んでもよい。
【0026】
工程(D)
工程(D)では、工程(C)で析出した重金属の水酸化物を廃硫酸から分離除去する。
【0027】
(分離除去)
工程(D)における分離除去の説明は、工程(B)における分離除去の説明と同様であるので、工程(D)における分離除去の説明は省略する。なお、工程(D)における分離除去の方法は、工程(B)における分離除去の方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、分離をより速やかにするために高分子凝集剤を添加してもよい。
【0028】
工程(E)
工程(E)では、重金属の水酸化物を分離除去した廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる。
【0029】
(重金属の水酸化物を分離除去した廃硫酸)
工程(E)では、重金属の水酸化物を分離除去した廃硫酸における重金属の含有率は、十分に低くなっているので、廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させることによって、重金属の含有率が低い石膏を得ることができる。また、工程(E)で、石膏をさらに析出させることによって、廃硫酸中のSO
4成分の大部分を活用することができる。
【0030】
(カルシウム源)
工程(E)で用いるカルシウム源としては、たとえば、塩化カルシウムなどの水溶性カルシウム塩、もしくはカルシウムイオンを含有する水溶液などが挙げられる。
【0031】
(カルシウム源の添加量)
工程(E)で廃硫酸に添加するカルシウム源の添加量は、カルシウム源中のCaと廃硫酸中のSO
42−とのモル比(Ca/SO
42−)が1に近い量のカルシウム源を廃硫酸に添加することにより、廃硫酸中のSO
42−のほとんどを石膏へと転化できる。これよりもモル比が高くなるとカルシウムが余剰となり、低くなると硫酸イオンが余剰となり、排水処理が必要となるので経済的ではない。なお、カルシウム源中のCaと廃硫酸中のSO
42−とのモル比(Ca/SO
42−)は、好ましくは0.9〜1.0であり、より好ましくは0.9〜0.95である。
【0032】
本発明の石膏の製造方法は、工程(E)で析出した石膏を廃硫酸から分離除去する工程(F)をさらに含んでもよい。
【0033】
工程(F)
工程(F)では、工程(E)で析出した石膏を廃硫酸から分離除去する。
【0034】
(分離除去)
工程(F)における分離除去の説明は、工程(B)における分離除去の説明と同様であるので、工程(F)における分離除去の説明は省略する。なお、工程(F)における分離除去の方法は、工程(B)における分離除去の方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
上述したように、工程(C)で添加した水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種のナトリウム、カリウムおよびマグネシウムは、廃硫酸中にイオンの状態で存在する。このため、工程(F)で析出させた石膏を水で洗浄することにより、析出した石膏中のナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの含有量を低減させることができる。
【0036】
[セメント組成物の製造方法]
本発明のセメント組成物の製造方法は、本発明の石膏の製造方法により石膏を製造する工程、および石膏を製造する工程で製造された石膏を用いてセメント組成物を製造する工程を含む。すなわち、本発明のセメント組成物の製造方法は、本発明の石膏の製造方法により製造された石膏を用いてセメント組成物を製造する。たとえば、セメントクリンカに、本発明の石膏の製造方法により製造された石膏と少量混合成分とを加えて、セメント組成物を製造してもよい。また、本発明の石膏の製造方法により製造された石膏をクリンカ原料の1つとして用いて製造したセメントクリンカに、本発明の石膏の製造方法により製造された石膏またはその他の石膏と少量混合成分とを加えて、セメント組成物を製造してもよい。
【0037】
また、廃硫酸に含まれる重金属が鉄の場合、本発明のセメント組成物の製造方法は、本発明の石膏の製造方法により製造された石膏のほかに、本発明の石膏の製造方法の工程(C)において析出された水酸化鉄をさらに用いてセメント組成物を製造してもよい。たとえば、セメント組成物の製造で使用するセメントクリンカのクリンカ原料の1つとして、工程(C)において析出された水酸化鉄またはその水酸化鉄から作製した鉄もしくは鉄化合物を使用してもよい。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0039】
[測定および評価]
実施例および比較例の石膏を以下のように測定および評価した。
(1)廃硫酸のpH
pH計((株)堀場製作所 製、商品名:pHメータ D−51)、pH電極((株)堀場製作所 製、商品名:スリーブTough電極 9681−10D)を使用して、カルシウム源、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を添加した廃硫酸のpHを測定した。
(2)析出物の同定
X線回折装置(PANalytical社製、商品名:X’Pert Pro)を使用して、廃硫酸にカルシウム源、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を添加して廃硫酸から析出した析出物の同定を行った。
(3)析出物中の重金属の含有量
エネルギー分散型蛍光X線分析装置(SPECTRO社製、商品名:XEPOS)を使用して、廃硫酸にカルシウム源、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を添加して廃硫酸から析出した析出物中の鉄、亜鉛およびクロムの含有量を測定した。
(4)濾液中のSO
42−の含有量
イオンクロマトグラフ装置(Dionex社製、商品名:ICS−2000)を使用して、廃硫酸を濾過して得られた濾液中のSO
42−の含有量を測定した。
(5)析出物の色
廃硫酸を濾過して得られた析出物の色を目視で観察した。
【0040】
[実施例1〜7および比較例1〜5の析出物の作製]
上記pH計を使用してpHを測定しながら、pHが0.5になるように炭酸カルシウムスラリーを1000mLの廃硫酸に添加して、3時間撹拌した。次に、撹拌しながら上記廃硫酸に炭酸カルシウムスラリーを少しずつさらに添加していった。そして、廃硫酸のpHの値を表1に示す所定値にさせ終わったとき、30mLの廃硫酸をサンプリングした。サンプリングした廃硫酸を濾過してサンプリングした廃硫酸の析出物および濾液を得た。なお、炭酸カルシウムスラリーは、1Lの水に100gの炭酸カルシウムを添加することにより作製した。また、炭酸カルシウムを添加する前の廃硫酸中のFeの含有量は5.8質量%であり、亜鉛の含有量は3300mg/kgであり、クロムの含有量は150mg/kgであり、SO
42−の含有量の含有量は19.4質量%であった。
【0041】
[実施例8および9の析出物の作製]
上記炭酸カルシウムスラリーの添加で、廃硫酸のpHが2.0になったときに200mLの廃硫酸を分取して濾過を行い、得られた濾液に、廃硫酸のpHが6.5になるまで水酸化ナトリウム水溶液を添加して実施例8の廃硫酸を作製した。実施例8の廃硫酸を濾過することにより、実施例8の析出物を得た。残った濾液に、塩化カルシウム水溶液を添加して攪拌を行い、実施例9の廃硫酸を作製した。実施例9の廃硫酸を濾過して実施例9の析出物を得た。
【0042】
[測定結果および評価結果]
実施例1〜7のサンプリングした廃硫酸および比較例1〜5のサンプリングした廃硫酸の評価結果を表1に、実施例8および9の廃硫酸の評価結果を表2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
実施例1〜7と比較例1〜5とを比較することによって、廃硫酸に炭酸カルシウムスラリーを添加して石膏を析出させたときのpHを3.0以下にすることによって、析出する石膏中の鉄分、亜鉛分およびクロム分の含有量を低くできることがわかった。また、実施例1〜5の析出物の色が白色であることからも析出する石膏中の鉄分の含有量が低いことがわかった。さらに、炭酸カルシウムスラリーを添加する前の廃硫酸中のSO
42−の含有量と、実施例2〜7の濾液中のSO
42−の含有量とを比較することにより、廃硫酸に炭酸カルシウムスラリーを添加して廃硫酸のpHを1.0以上にすることによって、廃硫酸中のSO
42−の大部分が石膏へと転化されることがわかった。また、実施例8により、廃硫酸にカルシウム源を添加して廃硫酸のpHを3.0以下にして石膏を析出させた後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を廃硫酸に添加して廃硫酸のpHを3.5以上10.0以下にすることによって、廃硫酸中の鉄分、亜鉛分およびクロム分を析出させることができることがわかった。さらに、実施例9により、鉄分、亜鉛分およびクロム分を析出させた後の廃硫酸にカルシウム源を添加して、鉄分、亜鉛分およびクロム分の含有量が小さい石膏を析出させることができることがわかった。