特許第6638456号(P6638456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6638456ペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6638456
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】ペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/04 20060101AFI20200120BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20200120BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20200120BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
   C08L27/04
   C08F2/18
   C08L31/04
   C08L29/04 C
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-28629(P2016-28629)
(22)【出願日】2016年2月18日
(65)【公開番号】特開2017-145332(P2017-145332A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】磯田 茂紀
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋二
(72)【発明者】
【氏名】八木 俊輔
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−056915(JP,A)
【文献】 特開2009−221335(JP,A)
【文献】 特開2006−096947(JP,A)
【文献】 特開平11−140256(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0253880(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0030994(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00− 13/08
C08F 2/00− 2/60
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均重合度が1300〜2500、酢酸ビニル残基含量が6〜10重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体に対し、ポリビニルアルコール0.05〜2重量%含有し、下記条件1及び2を満足することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
条件1;ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を水に超音波分散し、遠心分離器により2000rpm、30分の条件で遠心分離を行い、回収した上澄みを乾燥することにより、得られる微小粒子が2重量%以下。
条件2;条件1により得られる微小粒子の酢酸ビニル残基含量が、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂の酢酸ビニル残基含量より少ない。
【請求項2】
下記方法による高せん断粘度が700〜1200mPa・sの範囲にあるペースト加工用塩化ビニル系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
高せん断粘度の測定方法;ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部、フタル酸ジイソノニル100重量部、脂肪酸塩表面処理炭酸カルシウム70重量部、希釈剤15重量部を配合し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ゾルを調製し、23℃、24時間保管後にキャピラリー粘度計を用いて、せん断速度10500sec−1での粘度を測定する。
【請求項3】
ポリビニルアルコールが、重合度200〜3000、ケン化度50〜99モル%のポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【請求項4】
さらに、下記一般式(1)で示される化合物100〜3000ppmを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【化1】
(ここで、Rは炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を示し、Rは水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、Rは水素又はプロペニル基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは1〜200の整数を示し、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を示す。)
【請求項5】
塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=94/6〜85/15(重量%)よりなる混合単量体を、重合開始剤、場合によっては上記一般式(1)で示される化合物の存在下において水性媒体中で重合を行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を製造するに際し、重合開始前に1段目仕込みとして、酢酸ビニル単量体全量と塩化ビニル単量体うちの15〜45(重量%)を仕込み、重合を開始後、残りの塩化ビニル単量体を2段階以上に分割して追加仕込みし、それぞれの追加仕込みは、それまでに仕込まれた単量体の重合転化率が80を超えて95重量%に達する前の期間に開始し、かつ重合に際して2段目以降に水溶性還元剤を添加し、重合後の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体ラテックスにポリビニルアルコールを添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造法に関するものであり、さらに詳細には、可塑剤に分散させて調製したゾルの高せん断粘度が高くスプレー加工性が良好で、粘度の経時変化が少なく、低温での機械的強度に優れ、コート剤、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車シーラント剤として優れた特性を有するペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂(以下、ペースト塩ビと略記する場合もある。)は、一般に可塑剤、充填剤、安定剤又はその他の配合剤などと共に混練することにより、ペースト塩ビゾルを調製し、該ペースト塩ビゾルを使用し種々の成形加工法により壁紙、タイルカーペット、手袋などの様々な成形加工品に用いられている。また、加工温度の低い用途用として、比較的低温でも機械的強度が得られるゲル化溶融性に優れた特性を持つペースト塩ビとして、塩化ビニルに酢酸ビニルを共重合させた塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂が知られている。せん断速度の高い加工方法であるコーティングやスプレー加工においては、高せん断速度領域での粘度レベルが適切な範囲であることが求められる。
【0003】
そして、高せん断粘度領域の粘度を変える方法として、配合中の液状成分である可塑剤量、希釈剤量を変える方法が知られている(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
また、高せん断粘度領域の粘度を変える別の方法として、粒子径分布において複数の極大値を有する塩化ビニル系重合体を用いることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭61−8843号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】塩化ビニルペースト加工(上) 飯田栄一、古谷正之著 ラバーダイジェスト社 1968年出版 70〜71ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、配合中の可塑剤量を変えて高せん断粘度を調整する場合、最終製品に含まれる可塑剤量の違いから柔軟性や機械強度が変化するという課題が発生する。また、配合中の希釈剤量を変えて高せん断粘度を調整する場合、柔軟性や機械強度は大きく変わらないものの、加工時に希釈剤が揮発してしまい作業環境が悪化するという新たな課題が発生する。
【0008】
また、特許文献1に提案の方法で高せん断粘度を調整する場合、0.4μm以下の小さな粒子を多量に含むため、粘度の経時変化が大きくなるという課題が発生する。
【0009】
そこで、本発明は、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂(以下、ペースト塩ビと記す場合もある。)を可塑剤に分散させて調製した際のペースト塩ビゾルの高せん断粘度が高くスプレー加工性が良好で、粘度の経時変化が極めて少なく、低温加工時の機械的強度にも優れ、コート剤、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れた特性を有するペースト塩ビゾルとすることが可能となるペースト塩ビ及びその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、ペースト塩ビゾルの高せん断粘度をポリビニルアルコールの存在により制御できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、平均重合度が1300〜2500、酢酸ビニル残基含量が6〜10重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体に対し、ポリビニルアルコール0.05〜2重量%含有し、下記条件1及び2を満足することを特徴とするペースト塩ビ及びその製造法に関するものである。
条件1;ペースト塩ビを水に超音波分散し、遠心分離器により2000rpm、30分の条件で遠心分離を行い、回収した上澄みを乾燥することにより、得られる微小粒子が2重量%以下。
条件2;条件1により得られる微小粒子の酢酸ビニル残基含量が、ペースト塩ビの酢酸ビニル残基含量より少ない。
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明のペースト塩ビは、平均重合度が1300〜2500、酢酸ビニル残基含量が6〜10重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体に対し、ポリビニルアルコールを0.05〜2重量%含有し、上記条件1及び2を満足するものである。
【0014】
該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、平均重合度が1300〜2500であり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、平均重合度1300〜2000であることが好ましい。ここで、平均重合度が、1300未満である場合、低温加工での機械的強度に劣るものとなる。一方、平均重合度が2500を越える場合も、低温加工での機械的強度に劣るものとなる。なお、本発明における平均重合度は、例えばJIS−K6721に準拠した方法により求めることができる。
【0015】
また、該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル残基を6〜10重量%共重合したものであり、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから6〜8重量%であることが好ましい。ここで、酢酸ビニル残基含有量が6重量%未満のものである場合、ペースト塩ビを低温加工に供した際の成形品は機械的強度の低いものとなる。一方、酢酸ビニル残基含有量が10重量%を超えるものである場合、ゾルとした際の粘度の経時変化が大きいものとなる。
【0016】
また、本発明のペースト塩ビは、該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体に対し、ポリビニルアルコールを0.05〜2重量%含有するものであり、特に高せん断粘度が高くスプレー加工性が極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから0.1〜1重量%であることが好ましい。ここで、ポリビニルアルコール含有量が0.05重量%未満のものである場合、ペースト塩ビゾルとした際の高せん断粘度が低く、スプレーパターンが広がりすぎて加工性が劣る。一方、ポリビニルアルコール含有量が2重量%を超える場合、高せん断粘度が高く、スプレーパターンが狭すぎて加工性が劣る。そして、該ポリビニルアルコールとしては、重合度200〜3000、ケン化度50〜99モル%のポリビニルアルコールであることが好ましい。
【0017】
本発明のペースト塩ビは、水に超音波分散し、遠心分離器により2000rpm、30分の条件で遠心分離を行い、回収した上澄みを乾燥することにより得られる該ペースト塩ビ中に含まれる微小粒子が2重量%以下のものである。ここで、微小粒子が2重量%を越えるものである場合、該微小粒子が可塑剤の吸収促進作用を有するため、ゾル粘度の経時変化が大きいペースト塩ビとなる。なお、微小粒子の具体的な回収方法としては、例えばペースト塩ビを水に超音波分散し、遠心分離器(日立社製、(商品名)CENTRIFUGE05P−21)を用いて、2000rpm、30分の条件で遠心分離を行い、上澄みを回収し、回収後の上澄みを60±2℃のオーブンで乾燥後、30分デシケーターで冷却し、微小粒子を回収する方法をあげることができる。
【0018】
また、本発明のペースト塩ビは、上記により回収した微小粒子中の酢酸ビニル残基の含有量が、該ペースト塩ビの酢酸ビニル残基の含有量より低いものであり、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから1重量%以上低いものであることが好ましい。ここで、微小粒子中の酢酸ビニル残基の含量が、ペースト塩ビの酢酸ビニル残基の含有量よりも高いものである場合、微小粒子による可塑剤の吸収が促進され、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が大きいものとなる。
【0019】
本発明のペースト塩ビは、特にペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れるものを効率よく製造することが可能となることから、下記一般式(1)で示される化合物を100〜3000ppmで含有するものであることが好ましく、特に500〜2000ppmを含有するものであることが好ましい。
【0020】
【化1】
(ここで、Rは炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を示し、Rは水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、Rは水素又はプロペニル基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは1〜200の整数を示し、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を示す。)
ここで、Rは炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を示し、Rは水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、Rは水素又はプロペニル基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは1〜200の整数を示し、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を示し、中でも、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、Rの炭素数は7〜11、R及びRは水素、Aは炭素数2〜3のアルキレン基、nは1〜40であることが好ましい。そして、該一般式(1)で示される化合物としては、例えばノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モルランダム付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールプロピレンオキシド10モルランダム付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールブチレンオキシド4モルブロック付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド30モルブロック付加体硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられ、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩であることが好ましい。
【0021】
該一般式(1)で示される化合物は、ペースト塩ビを製造する際には、界面活性剤としても作用するものであるが、本発明のペースト塩ビにおいては、ペースト塩ビゾルとした際の保存安定性、粘度経時変化の抑制にもその効果を発現するものであり、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなる。
【0022】
本発明のペースト塩ビは、特にペースト塩ビゾルとした際の高せん断粘度が高くスプレー加工性が良好で、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、高せん断粘度700〜1200mPa・sとなるものであることが好ましい。その際の高せん断粘度の測定方法としては、例えば、ペースト塩ビ100重量部、フタル酸ジイソノニル100重量部、脂肪酸塩表面処理炭酸カルシウム70重量部、希釈剤15重量部を配合し、ペースト塩ビゾルを調製し、23℃、24時間保管後にキャピラリー粘度計を用いて、せん断速度10500sec−1での粘度を測定する方法を挙げることができる。その際のキャピラリー粘度計は所定のせん断速度下での粘度測定が可能であればいかなるものでもよい。なお、脂肪酸塩表面処理炭酸カルシウムとしては、例えば脂肪酸ナトリウム塩又は脂肪酸カリウム塩を含む表面処理剤等で表面処理した炭酸カルシウムを挙げることができ、市販品としては、例えば(商品名)Viscolite−OS(白石カルシウム株式会社製)を挙げることができる。また、希釈剤としては、例えばノルマルパラフィン系炭化水素系溶剤、イソパラフィン系炭化水素溶剤、ナフテン系炭化水素溶剤、芳香族系炭化水素溶剤等を挙げることができ、市販品としては、例えば(商品名)Exxsol D40(東燃ゼネラル石油株式会社製)を挙げることができる。
【0023】
本発明のペースト塩ビは、特にペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、増粘率が50%未満となるペースト塩ビであることが好ましい。その際の増粘率の測定方法としては、例えば、上記と同様のペースト塩ビゾルを調製し、23℃、2時間保管後の粘度(A)とその後、40℃、7日間保管後の40℃下での粘度(B)をB8H型回転粘度計を用い回転数20rpmの条件にて測定し、下記式により増粘率を求めることができる。
増粘率(%)=100×(粘度(B)−粘度(A))/粘度(A)
また、本発明のペースト塩ビは、特に低温加工での機械的強度に優れるものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、引張強度が9.0MPa以上となるペースト塩ビであることが好ましい。その際の引張強度の測定方法としては、例えば、ペースト塩ビ100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル60重量部、安定剤2重量部を配合し、ペースト塩ビゾルを調製し、0.5mm厚に塗布したシートから、JIS3号ダンベル試験片を用い、23℃、200mm/minの条件で測定し、引張強度を求めることができる。なお、安定剤としては、塩化ビニル用安定剤を挙げることができ、例えば鉛、バリウム、亜鉛、カルシウム、銅などの金属石鹸、それらの混合物を挙げることができる。そして、市販品としては、例えば(商品名)SC32(ADEKA社製)を挙げることができる。
【0024】
本発明のペースト塩ビは、平均粒子径を特に制限するものではなく、中でも、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、平均粒子径0.8〜2.0μmであることが好ましく、特に1.0〜1.5μmであることがさらに好ましい。
【0025】
本発明のペースト塩ビは、遠心分離により回収した微小粒子の平均重合度を特に制限するものではなく、中でも、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、遠心分離により回収した微小粒子の平均重合度は1300〜2500であることが好ましく、特に1300〜2000であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明のペースト塩ビは、本発明の目的を奏する限りペースト塩ビを製造する際に用いられる連鎖移動剤、架橋剤、脂肪族高級アルコール、緩衝剤、重合開始剤、還元剤等を含有してもよい。
【0027】
本発明のペースト塩ビの製造法としては、該ペースト塩ビを得ることが可能であれば如何なる方法であってもよく、例えば、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=94/6〜85/15(重量%)よりなる混合単量体を、重合開始剤の存在下において水性媒体中で重合を行い、ペースト塩ビを製造するに際し、重合開始前に1段目仕込みとして、酢酸ビニル単量体全量と塩化ビニル単量体うちの15〜45重量%を仕込み、重合を開始後、残りの塩化ビニル単量体を2段階以上に分割して追加仕込みを行い、それぞれの追加仕込みは、それまでに仕込まれた単量体の重合転化率が80を超えて95重量%に達する前の期間に開始し、かつ重合に際して2段目以降に水溶性還元剤を添加し、ペースト塩ビの重合を行い、重合後の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体ラテックスにポリビニルアルコールを添加する製造法を挙げることができる。
【0028】
該製造法においては、水溶性還元剤を単独若しくはレドックス系触媒と組み合わせて添加することにより、重合時間の短縮が可能となる。その際に、水溶性還元剤の使用は微小粒子の副生の原因ともなることが懸念されることから、より微小粒子の発生を抑制し、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化の小さいペースト塩ビを提供することが可能となることから、2段目以降に水溶性還元剤を添加することが好ましく、より重合の制御のしやすさから2段目以降にレドックス系触媒を添加し、2段目以降に水溶性還元剤を連続添加することでことが好ましい。この際の水溶性還元剤及びレドックス系触媒としては一般的なこれらの範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、その中でも、取り扱いやすさ、重合の制御しやすさから、水溶性還元剤としては、例えばチオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム等を挙げることができ、レドックス系触媒としては、例えば硫酸鉄、硫酸銅等を挙げることができる。
【0029】
該製造法においては、酢酸ビニル残基を6〜10重量%含有する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を効率的に製造することが可能となることから、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=94/6〜85/15(重量%)よりなる混合単量体を用いてなることが好ましく、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れるものを効率的に製造することが可能となることから、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=92.5/7.5〜90〜10(重量%)よりなることが好ましい。
【0030】
重合開始剤としては、重合開始剤の範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、上記したレドックス系触媒の他、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物,ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルペルオキシピバレート、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカボネート等の過酸化物,等の油溶性重合開始剤等を挙げることができる。また、後述するシードミクロ懸濁重合法の際には、油溶性重合開始剤を含む種粒子(シード)であってもよい。
【0031】
該製造法は、1段目仕込みとして重合開始前の系内に、酢酸ビニル単量体全量と塩化ビニル単量体うち15〜45重量%に相当する塩化ビニル単量体を仕込むものであり、このような仕込みを行うことにより、機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化の小さいペースト塩ビを効率よく製造することが可能となるものである。
【0032】
そして、該製造法においては、それぞれの追加仕込みはそれまでに仕込まれた単量体の重合転化率が80を超えて95重量%に達する前の期間に開始するものであり、このような追加仕込みを行うことにより、機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化の小さいペースト塩ビを効率よく製造することが可能となるものである。
【0033】
該製造法においては、上記一般式(1)で表される化合物を界面活性剤として添加してもよく、該一般式(1)で表される化合物の添加方法としては、機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化の小さいペースト塩ビを効率よく製造することが可能となることから、重合開始前又は、重合開始後の重合中に連続又は一括で仕込むことが好ましく、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れるものを効率的に製造することが可能となることから、重合開始後から重合転化率が85%に達するまでに連続又は一括で仕込むことが好ましい。
【0034】
また、重合後の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体ラテックスに、ポリビニルアルコールを添加する際には、ポリビニルアルコールのまま、水溶液、有機溶媒溶液等のいずれの形態でも添加することができる。
【0035】
そして、該製造法における重合法としては、例えば、塩化ビニル系単量体、界面活性剤、油溶性重合開始剤、必要に応じて脂肪族高級アルコール等の乳化補助剤を脱イオン水に添加しホモジナイザー等で混合分散した後、緩やかな攪拌下で重合を行うミクロ懸濁重合法;ミクロ懸濁重合法で得られた油溶性重合開始剤を含む種粒子(シード)を用いて行うシードミクロ懸濁重合法;塩化ビニル系単量体を脱イオン水、界面活性剤、水溶性重合開始剤とともに緩やかな攪拌下で重合を行う乳化重合法で得られた粒子をシードとして用いて乳化重合を行うシード乳化重合法等があげられ、その際に、例えば、重合温度は30〜80℃とし、ペースト塩ビラテックスとして得ることができる。これらの重合により製造されたペースト塩ビラテックスを噴霧乾燥し、必要に応じて粉砕することにより本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得ることができる。
【0036】
以下に、該製造法のより好ましい態様としてのシードミクロ懸濁重合法による製造方法を示す。
【0037】
シードミクロ懸濁重合法としては、例えば塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体よりなる混合単量体を、脱イオン水、上記一般式(1)で表される化合物、アルキル硫酸エステル塩、油溶性開始剤を含む種粒子、緩衝剤、必要に応じて油溶性開始剤を含まない種粒子、他の界面活性剤、連鎖移動剤、架橋剤としての多官能性単量体、水溶性開始剤、水溶性還元剤、レドックス系開始剤、脂肪族高級アルコールの存在下で、緩やかに攪拌しながら重合器内の温度を上げて重合反応を開始し、所定の転化率に達するまで重合を行う方法を挙ることができ、この際の重合温度としては、例えば30〜70℃である。界面活性剤としては、上記一般式(1)で表される化合物の他、必要に応じて他の界面活性剤等を更に用いてもよい。
【0038】
また、油溶性開始剤を含む種粒子、油溶性開始剤を含まない種粒子、連鎖移動剤、架橋剤、脂肪族高級アルコール、緩衝剤、水溶性開始剤、還元剤としては、特開2014−129471号公報、特開2009−221335号公報、特開2003−12811号公報に記載のものを使用することができ、単独又は2種類以上を混合しても用いることができる。
【0039】
得られたペースト塩ビラテックスをペースト塩ビとする際に用いる乾燥機は一般的に使用されているものでよく、例えば、噴霧乾燥機等が挙げられる(具体例としては、「SPRAY DRYING HANDBOOK」(K.Masters著、3版、1979年、GeorgegodwinLimitedより出版)の121頁第4.10図に記載されている各種の噴霧乾燥機)。乾燥用空気入口温度、乾燥用空気出口温度に特に制限はなく、乾燥用空気入口温度は80〜200℃、乾燥用空気出口温度は45〜75℃が一般的に用いられる。乾燥用空気入口温度は100〜170℃、乾燥用空気出口温度は45〜60℃が好ましく、45〜55℃が更に好ましい。乾燥後に得られたペースト塩ビは、ペーストビラテックスを構成する粒子の集合体であり、通常10〜100μmの顆粒状である。乾燥出口温度が55℃を超える場合には、得られた顆粒状ペースト加工用塩化ビニル樹脂を粉砕した方が可塑剤への分散の点から好ましく、乾燥出口温度が55℃以下の場合には、顆粒状のままでも粉砕して使用してもどちらでも良い。
【発明の効果】
【0040】
本発明のペースト塩ビは、可塑剤に分散させて調製したペースト塩ビゾルの高せん断粘度が高くスプレー加工性が良好で、粘度の経時変化が少なく、低温加工時の機械的強度に優れ、コート剤、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れた特性を有するものである。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
以下に実施例より得られたペースト塩ビの評価方法を示す。
【0043】
<高せん断粘度の測定方法>
ペースト塩ビ100重量部、フタル酸ジイソノニル100重量部(株式会社ジェイプラス製)、脂肪酸塩表面処理炭酸カルシウム((商品名)Viscolite−OS 白石工業株式会社製)70重量部、ナフテン系炭化水素溶剤((商品名)ExxsolD40 東燃ゼネラ石油株式会社製)15重量部からなるペースト塩ビゾルを23℃にて24時間保管し、キャピラリーレオメーター((商品名)Rheossol−CR100(UBM社製)にてせん断速度10500sec−1の条件にて粘度を測定した。
【0044】
<増粘率の測定方法>
ペースト塩ビ100重量部、フタル酸ジイソノニル100重量部(株式会社ジェイプラス製)、脂肪酸塩表面処理炭酸カルシウム((商品名)Viscolite−OS 白石工業株式会社製)70重量部、ナフテン系炭化水素溶剤((商品名)ExxsolD40 東燃ゼネラ石油株式会社製)15重量部からなるペースト塩ビゾルの23℃にて保管した際の、混練2時間後のB8H型回転粘度計で20rpm条件にて測定した粘度をAとし、該ゾルを2時間後の測定後に40℃にて保管し混練から7日間経過後に40℃下にて上記方法にて測定した粘度をBとした。そして、下記式にて増粘率を求めた。
増粘率(%)=100×(B−A)/A
<引張強度の測定方法>
ペースト塩ビ100重量部、フタル酸ジイソノニル60重量部(株式会社ジェイプラス製)、Ca/Zn系安定剤2重量部((商品名)SC32 ADEKA社製)からなるペースト塩ビゾルを脱泡した後、0.5mm厚に塗布し、140℃×1分間加熱して得られたシートから、JIS3号ダンベル試験片を作製した。23℃、200mm/minの条件で該試験片により引張強度を測定した。
【0045】
<平均重合度の測定>
JIS−K6721に準拠し求めた。
【0046】
<酢酸ビニル残基含有量(重量%)の測定方法>
ペースト塩ビ中に含有する酢酸ビニル残基含有量(VAc含量)(重量%)は、ペースト塩ビ100mgと臭化カリウム10mgを混合し、すりつぶして成形した測定サンプルを、赤外分光光度計((商品名)FTIR−8100A 島津社製)を使用して、赤外吸収スペクトル測定し、下記式から算出した。
ペースト塩ビ中に含有する酢酸ビニル残基含有量(VAc含量)(重量%)
=(3.73×B/A+0.024)×1.04
A:1430cm−1付近のC−H面内変角による吸収ピークトップのAbs.値。
B:1740cm−1付近のC=O伸縮による吸収ピークトップのAbs.値。
【0047】
<微小粒子量の測定法>
ペースト塩ビを水に超音波分散し、遠心分離器((商品名)CENTRIFUGE05P−21 日立社製)を用いて2000rpm30分の条件で遠心分離を行い、上澄みを回収した。回収した上澄みは60℃±2℃のオーブンで乾燥した後、30分デシケーターで冷却し、下記式により微小粒子量を算出した。
ペースト塩ビ中の微小粒子量(重量%)=(乾燥後の重量(g)/水に分散したペースト塩ビの重量(g))×100
合成例1(開始剤等含有シードの製造例)
1mオートクレーブ中に脱イオン水360kg、塩化ビニル単量体300kg、過酸化ラウロイル6kg及び15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30kgを仕込み、該重合液をホモジナイザーを用いて2時間循環し、均質化処理後、温度を45℃に上げて、重合を進めた。45℃における塩化ビニルの飽和蒸気圧より0.2MPa圧力が低下した後、未反応の塩化ビニル単量体を回収した。得られた開始剤等含有シードラテックスの平均粒子径は0.60μm、固形分濃度は32%であった。
【0048】
実施例1
1mオートクレーブ中に脱イオン水325kg、1段目仕込み単量体として塩化ビニル単量体を144kg(混合単量体の全仕込み量に対して36重量%)と酢酸ビニル単量体を40kg(混合単量体の全仕込み量に対して10重量%)、ラウリル硫酸ナトリウムを1000ppm(混合単量体100重量部に対して)、合成例1で得られた開始剤等含有シードラテックスを63kg、ジアリルフタレートを500ppm、硫酸銅を5ppm仕込み、この反応混合物の温度を58℃に上げて1段目重合を開始した。重合転化率が85%となったところで、2段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体144kg(混合単量体の全仕込み量に対して36重量%)を15分間で1mオートクレーブに仕込み、重合温度41℃にして2段目重合を継続するとともに、0.2重量%アスコルビン酸水溶液を、重合温度を維持するように連続的に添加した。更に、1段目仕込み単量体と2段目仕込み単量体の合計に対して重合転化率が88%となったところで、3段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体72kg(混合単量体の全仕込み量に対して18重量%)を15分間で1mオートクレーブに仕込み、重合温度38℃にて3段目重合を継続し、混合単量体の合計に対して重合転化率が90%となったところで重合を終了した。重合開始してから重合終了までの間、ラウリル硫酸ナトリウム6000ppmとノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液(第一工業製薬製:(商品名)アクアロンHS−10)1000ppmを連続的に添加した。未反応単量体を回収して塩化ビニル系樹脂ラテックスとし、重合度600、ケン化度93モル%のポリビニルアルコール((商品名)ゴーセノールAL−06R、日本合成化学社製)を塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体に対する含有量が0.3重量%となるように添加した。スプレードライヤーにて、熱風入口160℃、出口温度55℃で噴霧乾燥を行い、その後粉砕を行って、ペースト塩ビを得た。
【0049】
得られたペースト塩ビは、酢酸ビニル残基の含有量7.9重量%、平均重合度は1500の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体及びノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩を1111ppm含むものであった。また、微小粒子量は1.8重量%であり、微小粒子中の酢酸ビニル残基の含有量は6.3重量%であった。得られたペースト塩ビから作製したゾルの高せん断粘度は762mPa・sであった。得られたペースト塩ビの物性結果を表1に示す。
【0050】
実施例2
ポリビニルアルコールの含有量が1重量%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様に行いペースト塩ビを得た。
【0051】
得られたペースト塩ビから作製したゾルの高せん断粘度は808mPa・sであった。得られたペースト塩ビの物性結果を表1に示す。
【0052】
実施例3
ポリビニルアルコールの含有量が1.5重量%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様に行いペースト塩ビを得た。
【0053】
得られたペースト塩ビから作製したゾルの高せん断粘度は1041mPa・sであった。得られたペースト塩ビの物性結果を表1に示す。
【0054】
実施例4
ポリビニルアルコールの含有量が0.1重量%となるように添加し、噴霧乾燥時の熱風出口温度を50℃としたこと以外は、実施例1と同様に行いペースト塩ビを得た。
【0055】
得られたペースト塩ビから作製したゾルの高せん断粘度は787mPa・sであった。得られたペースト塩ビの物性結果を表1に示す。
【0056】
実施例5
ポリビニルアルコールの含有量が1重量%となるように添加したこと以外は、実施例4と同様に行いペースト塩ビを得た。
【0057】
得られたペースト塩ビから作製したゾルの高せん断粘度は992mPa・sであった。得られたペースト塩ビの物性結果を表1に示す。
【0058】
実施例6
重合度250、ケン化度65モル%のポリビニルアルコール((商品名)JMR−10M、日本酢ビ・ポバール社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行いペースト塩ビを得た。
【0059】
得られたペースト塩ビから作製したゾルの高せん断粘度は753mPa・sであった。得られたペースト塩ビの物性結果を表1に示す。
【0060】
実施例7
重合度2700、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール((商品名)ゴーセノールAH−26、日本合成化学社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行いペースト塩ビを得た。
【0061】
得られたペースト塩ビから作製したゾルの高せん断粘度は746mPa・sであった。得られたペースト塩ビの物性結果を表1に示す。
【0062】
実施例8
重合度1000、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール((商品名)ゴーセノールA−300、日本合成化学社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行いペースト塩ビを得た。
【0063】
得られたペースト塩ビから作製したゾルの高せん断粘度は755mPa・sであった。得られたペースト塩ビの物性結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
比較例1
ポリビニルアルコールを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に行いペースト塩ビを得た。
【0065】
得られたペースト塩ビから作製したゾルの高せん断粘度は662mPa・sであった。得られたペースト塩ビの物性結果を表2に示す。
【0066】
比較例2
ポリビニルアルコールの含有量が3重量%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様に行いペースト塩ビを得た。
【0067】
得られたペースト塩ビから作製したゾルの高せん断粘度は1608mPa・sであった。得られたペースト塩ビの物性結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のペースト塩ビは、可塑剤に分散させて調製したペースト塩ビゾルの高せん断粘度が高くスプレー加工性が良好で、粘度の経時変化が少なく、低温加工した際の機械的強度に優れ、コート剤、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れた特性を有するものであり、その産業上の利用価値は高いものである。