【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、ペースト塩ビゾルの高せん断粘度をポリビニルアルコールの存在により制御できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、平均重合度が1300〜2500、酢酸ビニル残基含量が6〜10重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体に対し、ポリビニルアルコール0.05〜2重量%含有し、下記条件1及び2を満足することを特徴とするペースト塩ビ及びその製造法に関するものである。
条件1;ペースト塩ビを水に超音波分散し、遠心分離器により2000rpm、30分の条件で遠心分離を行い、回収した上澄みを乾燥することにより、得られる微小粒子が2重量%以下。
条件2;条件1により得られる微小粒子の酢酸ビニル残基含量が、ペースト塩ビの酢酸ビニル残基含量より少ない。
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明のペースト塩ビは、平均重合度が1300〜2500、酢酸ビニル残基含量が6〜10重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体に対し、ポリビニルアルコールを0.05〜2重量%含有し、上記条件1及び2を満足するものである。
【0014】
該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、平均重合度が1300〜2500であり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、平均重合度1300〜2000であることが好ましい。ここで、平均重合度が、1300未満である場合、低温加工での機械的強度に劣るものとなる。一方、平均重合度が2500を越える場合も、低温加工での機械的強度に劣るものとなる。なお、本発明における平均重合度は、例えばJIS−K6721に準拠した方法により求めることができる。
【0015】
また、該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル残基を6〜10重量%共重合したものであり、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから6〜8重量%であることが好ましい。ここで、酢酸ビニル残基含有量が6重量%未満のものである場合、ペースト塩ビを低温加工に供した際の成形品は機械的強度の低いものとなる。一方、酢酸ビニル残基含有量が10重量%を超えるものである場合、ゾルとした際の粘度の経時変化が大きいものとなる。
【0016】
また、本発明のペースト塩ビは、該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体に対し、ポリビニルアルコールを0.05〜2重量%含有するものであり、特に高せん断粘度が高くスプレー加工性が極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから0.1〜1重量%であることが好ましい。ここで、ポリビニルアルコール含有量が0.05重量%未満のものである場合、ペースト塩ビゾルとした際の高せん断粘度が低く、スプレーパターンが広がりすぎて加工性が劣る。一方、ポリビニルアルコール含有量が2重量%を超える場合、高せん断粘度が高く、スプレーパターンが狭すぎて加工性が劣る。そして、該ポリビニルアルコールとしては、重合度200〜3000、ケン化度50〜99モル%のポリビニルアルコールであることが好ましい。
【0017】
本発明のペースト塩ビは、水に超音波分散し、遠心分離器により2000rpm、30分の条件で遠心分離を行い、回収した上澄みを乾燥することにより得られる該ペースト塩ビ中に含まれる微小粒子が2重量%以下のものである。ここで、微小粒子が2重量%を越えるものである場合、該微小粒子が可塑剤の吸収促進作用を有するため、ゾル粘度の経時変化が大きいペースト塩ビとなる。なお、微小粒子の具体的な回収方法としては、例えばペースト塩ビを水に超音波分散し、遠心分離器(日立社製、(商品名)CENTRIFUGE05P−21)を用いて、2000rpm、30分の条件で遠心分離を行い、上澄みを回収し、回収後の上澄みを60±2℃のオーブンで乾燥後、30分デシケーターで冷却し、微小粒子を回収する方法をあげることができる。
【0018】
また、本発明のペースト塩ビは、上記により回収した微小粒子中の酢酸ビニル残基の含有量が、該ペースト塩ビの酢酸ビニル残基の含有量より低いものであり、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから1重量%以上低いものであることが好ましい。ここで、微小粒子中の酢酸ビニル残基の含量が、ペースト塩ビの酢酸ビニル残基の含有量よりも高いものである場合、微小粒子による可塑剤の吸収が促進され、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が大きいものとなる。
【0019】
本発明のペースト塩ビは、特にペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れるものを効率よく製造することが可能となることから、下記一般式(1)で示される化合物を100〜3000ppmで含有するものであることが好ましく、特に500〜2000ppmを含有するものであることが好ましい。
【0020】
【化1】
(ここで、R
1は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を示し、R
2は水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、R
3は水素又はプロペニル基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは1〜200の整数を示し、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を示す。)
ここで、R
1は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を示し、R
2は水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、R
3は水素又はプロペニル基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは1〜200の整数を示し、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を示し、中でも、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、R
1の炭素数は7〜11、R
2及びR
3は水素、Aは炭素数2〜3のアルキレン基、nは1〜40であることが好ましい。そして、該一般式(1)で示される化合物としては、例えばノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モルランダム付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールプロピレンオキシド10モルランダム付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールブチレンオキシド4モルブロック付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド30モルブロック付加体硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられ、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩であることが好ましい。
【0021】
該一般式(1)で示される化合物は、ペースト塩ビを製造する際には、界面活性剤としても作用するものであるが、本発明のペースト塩ビにおいては、ペースト塩ビゾルとした際の保存安定性、粘度経時変化の抑制にもその効果を発現するものであり、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなる。
【0022】
本発明のペースト塩ビは、特にペースト塩ビゾルとした際の高せん断粘度が高くスプレー加工性が良好で、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、高せん断粘度700〜1200mPa・sとなるものであることが好ましい。その際の高せん断粘度の測定方法としては、例えば、ペースト塩ビ100重量部、フタル酸ジイソノニル100重量部、脂肪酸塩表面処理炭酸カルシウム70重量部、希釈剤15重量部を配合し、ペースト塩ビゾルを調製し、23℃、24時間保管後にキャピラリー粘度計を用いて、せん断速度10500sec
−1での粘度を測定する方法を挙げることができる。その際のキャピラリー粘度計は所定のせん断速度下での粘度測定が可能であればいかなるものでもよい。なお、脂肪酸塩表面処理炭酸カルシウムとしては、例えば脂肪酸ナトリウム塩又は脂肪酸カリウム塩を含む表面処理剤等で表面処理した炭酸カルシウムを挙げることができ、市販品としては、例えば(商品名)Viscolite−OS(白石カルシウム株式会社製)を挙げることができる。また、希釈剤としては、例えばノルマルパラフィン系炭化水素系溶剤、イソパラフィン系炭化水素溶剤、ナフテン系炭化水素溶剤、芳香族系炭化水素溶剤等を挙げることができ、市販品としては、例えば(商品名)Exxsol D40(東燃ゼネラル石油株式会社製)を挙げることができる。
【0023】
本発明のペースト塩ビは、特にペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、増粘率が50%未満となるペースト塩ビであることが好ましい。その際の増粘率の測定方法としては、例えば、上記と同様のペースト塩ビゾルを調製し、23℃、2時間保管後の粘度(A)とその後、40℃、7日間保管後の40℃下での粘度(B)をB8H型回転粘度計を用い回転数20rpmの条件にて測定し、下記式により増粘率を求めることができる。
増粘率(%)=100×(粘度(B)−粘度(A))/粘度(A)
また、本発明のペースト塩ビは、特に低温加工での機械的強度に優れるものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、引張強度が9.0MPa以上となるペースト塩ビであることが好ましい。その際の引張強度の測定方法としては、例えば、ペースト塩ビ100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル60重量部、安定剤2重量部を配合し、ペースト塩ビゾルを調製し、0.5mm厚に塗布したシートから、JIS3号ダンベル試験片を用い、23℃、200mm/minの条件で測定し、引張強度を求めることができる。なお、安定剤としては、塩化ビニル用安定剤を挙げることができ、例えば鉛、バリウム、亜鉛、カルシウム、銅などの金属石鹸、それらの混合物を挙げることができる。そして、市販品としては、例えば(商品名)SC32(ADEKA社製)を挙げることができる。
【0024】
本発明のペースト塩ビは、平均粒子径を特に制限するものではなく、中でも、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、平均粒子径0.8〜2.0μmであることが好ましく、特に1.0〜1.5μmであることがさらに好ましい。
【0025】
本発明のペースト塩ビは、遠心分離により回収した微小粒子の平均重合度を特に制限するものではなく、中でも、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、遠心分離により回収した微小粒子の平均重合度は1300〜2500であることが好ましく、特に1300〜2000であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明のペースト塩ビは、本発明の目的を奏する限りペースト塩ビを製造する際に用いられる連鎖移動剤、架橋剤、脂肪族高級アルコール、緩衝剤、重合開始剤、還元剤等を含有してもよい。
【0027】
本発明のペースト塩ビの製造法としては、該ペースト塩ビを得ることが可能であれば如何なる方法であってもよく、例えば、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=94/6〜85/15(重量%)よりなる混合単量体を、重合開始剤の存在下において水性媒体中で重合を行い、ペースト塩ビを製造するに際し、重合開始前に1段目仕込みとして、酢酸ビニル単量体全量と塩化ビニル単量体うちの15〜45重量%を仕込み、重合を開始後、残りの塩化ビニル単量体を2段階以上に分割して追加仕込みを行い、それぞれの追加仕込みは、それまでに仕込まれた単量体の重合転化率が80を超えて95重量%に達する前の期間に開始し、かつ重合に際して2段目以降に水溶性還元剤を添加し、ペースト塩ビの重合を行い、重合後の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体ラテックスにポリビニルアルコールを添加する製造法を挙げることができる。
【0028】
該製造法においては、水溶性還元剤を単独若しくはレドックス系触媒と組み合わせて添加することにより、重合時間の短縮が可能となる。その際に、水溶性還元剤の使用は微小粒子の副生の原因ともなることが懸念されることから、より微小粒子の発生を抑制し、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化の小さいペースト塩ビを提供することが可能となることから、2段目以降に水溶性還元剤を添加することが好ましく、より重合の制御のしやすさから2段目以降にレドックス系触媒を添加し、2段目以降に水溶性還元剤を連続添加することでことが好ましい。この際の水溶性還元剤及びレドックス系触媒としては一般的なこれらの範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、その中でも、取り扱いやすさ、重合の制御しやすさから、水溶性還元剤としては、例えばチオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム等を挙げることができ、レドックス系触媒としては、例えば硫酸鉄、硫酸銅等を挙げることができる。
【0029】
該製造法においては、酢酸ビニル残基を6〜10重量%含有する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を効率的に製造することが可能となることから、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=94/6〜85/15(重量%)よりなる混合単量体を用いてなることが好ましく、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れるものを効率的に製造することが可能となることから、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=92.5/7.5〜90〜10(重量%)よりなることが好ましい。
【0030】
重合開始剤としては、重合開始剤の範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、上記したレドックス系触媒の他、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物,ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルペルオキシピバレート、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカボネート等の過酸化物,等の油溶性重合開始剤等を挙げることができる。また、後述するシードミクロ懸濁重合法の際には、油溶性重合開始剤を含む種粒子(シード)であってもよい。
【0031】
該製造法は、1段目仕込みとして重合開始前の系内に、酢酸ビニル単量体全量と塩化ビニル単量体うち15〜45重量%に相当する塩化ビニル単量体を仕込むものであり、このような仕込みを行うことにより、機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化の小さいペースト塩ビを効率よく製造することが可能となるものである。
【0032】
そして、該製造法においては、それぞれの追加仕込みはそれまでに仕込まれた単量体の重合転化率が80を超えて95重量%に達する前の期間に開始するものであり、このような追加仕込みを行うことにより、機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化の小さいペースト塩ビを効率よく製造することが可能となるものである。
【0033】
該製造法においては、上記一般式(1)で表される化合物を界面活性剤として添加してもよく、該一般式(1)で表される化合物の添加方法としては、機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化の小さいペースト塩ビを効率よく製造することが可能となることから、重合開始前又は、重合開始後の重合中に連続又は一括で仕込むことが好ましく、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れるものを効率的に製造することが可能となることから、重合開始後から重合転化率が85%に達するまでに連続又は一括で仕込むことが好ましい。
【0034】
また、重合後の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体ラテックスに、ポリビニルアルコールを添加する際には、ポリビニルアルコールのまま、水溶液、有機溶媒溶液等のいずれの形態でも添加することができる。
【0035】
そして、該製造法における重合法としては、例えば、塩化ビニル系単量体、界面活性剤、油溶性重合開始剤、必要に応じて脂肪族高級アルコール等の乳化補助剤を脱イオン水に添加しホモジナイザー等で混合分散した後、緩やかな攪拌下で重合を行うミクロ懸濁重合法;ミクロ懸濁重合法で得られた油溶性重合開始剤を含む種粒子(シード)を用いて行うシードミクロ懸濁重合法;塩化ビニル系単量体を脱イオン水、界面活性剤、水溶性重合開始剤とともに緩やかな攪拌下で重合を行う乳化重合法で得られた粒子をシードとして用いて乳化重合を行うシード乳化重合法等があげられ、その際に、例えば、重合温度は30〜80℃とし、ペースト塩ビラテックスとして得ることができる。これらの重合により製造されたペースト塩ビラテックスを噴霧乾燥し、必要に応じて粉砕することにより本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得ることができる。
【0036】
以下に、該製造法のより好ましい態様としてのシードミクロ懸濁重合法による製造方法を示す。
【0037】
シードミクロ懸濁重合法としては、例えば塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体よりなる混合単量体を、脱イオン水、上記一般式(1)で表される化合物、アルキル硫酸エステル塩、油溶性開始剤を含む種粒子、緩衝剤、必要に応じて油溶性開始剤を含まない種粒子、他の界面活性剤、連鎖移動剤、架橋剤としての多官能性単量体、水溶性開始剤、水溶性還元剤、レドックス系開始剤、脂肪族高級アルコールの存在下で、緩やかに攪拌しながら重合器内の温度を上げて重合反応を開始し、所定の転化率に達するまで重合を行う方法を挙ることができ、この際の重合温度としては、例えば30〜70℃である。界面活性剤としては、上記一般式(1)で表される化合物の他、必要に応じて他の界面活性剤等を更に用いてもよい。
【0038】
また、油溶性開始剤を含む種粒子、油溶性開始剤を含まない種粒子、連鎖移動剤、架橋剤、脂肪族高級アルコール、緩衝剤、水溶性開始剤、還元剤としては、特開2014−129471号公報、特開2009−221335号公報、特開2003−12811号公報に記載のものを使用することができ、単独又は2種類以上を混合しても用いることができる。
【0039】
得られたペースト塩ビラテックスをペースト塩ビとする際に用いる乾燥機は一般的に使用されているものでよく、例えば、噴霧乾燥機等が挙げられる(具体例としては、「SPRAY DRYING HANDBOOK」(K.Masters著、3版、1979年、GeorgegodwinLimitedより出版)の121頁第4.10図に記載されている各種の噴霧乾燥機)。乾燥用空気入口温度、乾燥用空気出口温度に特に制限はなく、乾燥用空気入口温度は80〜200℃、乾燥用空気出口温度は45〜75℃が一般的に用いられる。乾燥用空気入口温度は100〜170℃、乾燥用空気出口温度は45〜60℃が好ましく、45〜55℃が更に好ましい。乾燥後に得られたペースト塩ビは、ペーストビラテックスを構成する粒子の集合体であり、通常10〜100μmの顆粒状である。乾燥出口温度が55℃を超える場合には、得られた顆粒状ペースト加工用塩化ビニル樹脂を粉砕した方が可塑剤への分散の点から好ましく、乾燥出口温度が55℃以下の場合には、顆粒状のままでも粉砕して使用してもどちらでも良い。