特許第6639425号(P6639425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

特許6639425オキサゾリン−モノマーを含むコポリマー及び架橋剤としてのその使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6639425
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】オキサゾリン−モノマーを含むコポリマー及び架橋剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 226/06 20060101AFI20200127BHJP
   C08L 39/04 20060101ALI20200127BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   C08F226/06
   C08L39/04
   C08L101/02
【請求項の数】12
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-575359(P2016-575359)
(86)(22)【出願日】2015年6月24日
(65)【公表番号】特表2017-519089(P2017-519089A)
(43)【公表日】2017年7月13日
(86)【国際出願番号】EP2015064196
(87)【国際公開番号】WO2015197662
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2018年6月21日
(31)【優先権主張番号】14174076.1
(32)【優先日】2014年6月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ツォアン
(72)【発明者】
【氏名】イヴォンヌ ディークマン
(72)【発明者】
【氏名】イーリス ペータース−シュトイアー
(72)【発明者】
【氏名】カトリン ミヒル
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−251474(JP,A)
【文献】 特開2000−007980(JP,A)
【文献】 特開平07−102482(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/115252(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/098380(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/074202(WO,A1)
【文献】 特開2001−310914(JP,A)
【文献】 特開平05−271598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F20/00−22/40
C08F120/00−122/40
C08F220/00−220/40
C08L33/00−35/08
D06M13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) C1〜C8−アルキル(メタ)アクリラーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(a);
b) 少なくとも1つのスルホン酸基(−SO3M)を含む少なくとも1種のエチレン系不飽和のモノマー(b);
c) 少なくとも1つのオキサゾリン基を含む少なくとも1種のエチレン系不飽和のモノマー(c);
d) 及び任意に少なくとも1種の別のモノマー(d)及び/又は添加物を含むコポリマーAであって、
モノマー(b)及び(c)の割合は、合計で、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として50質量%未満であり、
かつ、コポリマーAは、水溶性ポリマーであり、この場合、水溶性とは少なくとも100g/lの水中の溶解度を示す、コポリマーAであって、
モノマー(b)は、式(II)
2C=C(R1)C(=O)−NH−Z−SO3M (II)
[式中、基及び添え字は次の意味を示す:
1は、H又はメチルであり;
Zは、結合、C1〜C10−アルキレン、フェニレン及びC1〜C10−アルキルフェニレンから選択される二価の連結する基であり、
及び、Mは、1つ又は複数の金属である]の化合物であり、
モノマー(c)は、式(IV)
【化1】
[式中、基は次の意味を示す:
Rは、少なくとも1つのエチレン系不飽和基を含むC2〜C20−アルケニル基であり、
3、R4、R5、R6は、互いに無関係に、H、ハロゲン、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル、C6〜C20−アリール、C7〜C32−アリールアルキル、C1〜C20−ヒドロキシアルキル、C1〜C20−アミノアルキル及びC1〜C20−ハロアルキルから選択される]による化合物であることを特徴とする、前記コポリマーA。
【請求項2】
モノマー(b)及び(c)の割合は、合計で、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として2〜49.9質量%であることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
コポリマーAは、水溶性モノマーとして専らモノマー(b)及び(c)を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
コポリマーAは、モノマー(a)として、C1〜C8−アルキル(メタ)アクリラートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として50〜98質量%含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項5】
基R3、R4、R5、R6は、互いに無関係に、H及びC1〜C6−アルキルから選択される、請求項に記載のコポリマー。
【請求項6】
コポリマーAは、
少なくとも1種のモノマー(a) 50〜98質量%;
少なくとも1種のモノマー(b) 1〜45質量%;
少なくとも1種のモノマー(c) 1〜45質量%及び
少なくとも1種の別のモノマー(d)及び/又は添加物 0〜10質量%
を含み、モノマー(b)及び(c)の割合は、合計で、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として50質量%未満であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項7】
コポリマーAは、
少なくとも1種のモノマー(a) 50〜98質量%、ここでモノマー(a)は、少なくとも1種のC1〜C8−アルキル(メタ)アクリラートである;
少なくとも1種のモノマー(b) 1〜45質量%、ここでモノマー(b)は、式(II)
2C=C(R1)C(=O)−NH−Z−SO3M (II)
[式中、基及び添え字は次の意味を示す:
1は、H又はメチルであり;
Zは、結合、C1〜C10−アルキレン、フェニレン及びC1〜C10−アルキルフェニレンから選択される二価の連結する基であり、
及び、Mは、1つ又は複数の金属である]の化合物である
少なくとも1種のモノマー(c) 1〜45質量%、ここでモノマー(c)は、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−エチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5,5−ジメチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4,4,5,5−テトラメチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5,5−ジメチル−2−オキサゾリン及び2−イソプロペニル−4,4,5,5−テトラメチル−2−オキサゾリンから選択される少なくとも1種のモノマーである、
少なくとも1種の別のモノマー(d)及び/又は添加物 0〜10質量%
を含み、モノマー(b)及び(c)の割合は、合計で、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として50質量%未満であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項8】
a) C1〜C8−アルキル(メタ)アクリラーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(a);
b) 式(II)
2C=C(R1)C(=O)−NH−Z−SO3M (II)
[式中、基及び添え字は次の意味を示す:
1は、H又はメチルであり;
Zは、結合、C1〜C10−アルキレン、フェニレン及びC1〜C10−アルキルフェニレンから選択される二価の連結する基であり、
及び、Mは、1つ又は複数の金属である]の化合物である少なくとも1種のエチレン系不飽和のモノマー(b);
c) 式(IV)
【化2】
[式中、基は次の意味を示す:
Rは、少なくとも1つのエチレン系不飽和基を含むC2〜C20−アルケニル基であり、
3、R4、R5、R6は、互いに無関係に、H、ハロゲン、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル、C6〜C20−アリール、C7〜C32−アリールアルキル、C1〜C20−ヒドロキシアルキル、C1〜C20−アミノアルキル及びC1〜C20−ハロアルキルから選択される]による化合物である少なくとも1種のエチレン系不飽和のモノマー(c);
d) 及び任意に少なくとも1種の別のモノマー
を重合させる、請求項1からまでのいずれか1項に記載のコポリマーAの製造方法。
【請求項9】
モノマー(a)、(b)、(c)及び任意に(d)をラジカル重合させ、前記ラジカル重合を溶液重合として実施することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
カルボキシ基、リン酸基、フェノール系ヒドロキシ基及び芳香族チオール基から選択される少なくとも2つの官能基を含む多官能性ポリマーPを架橋する方法において、多官能性ポリマーPに、請求項1からまでのいずれか1項に記載の少なくとも1種のコポリマーAを添加する、少なくとも2つの官能基を含む多官能性ポリマーPを架橋する方法。
【請求項11】
i) 請求項1からまでのいずれか1項記載の少なくとも1種のコポリマーA;
ii) カルボキシ基、リン酸基、フェノール系ヒドロキシ基及び芳香族チオール基から選択される少なくとも2つの官能基を含む少なくとも1種の多官能性ポリマーP、及び
iii) 少なくとも1種の揮発性の塩基性化合物
を含む組成物。
【請求項12】
接着剤、シーラント、プラスチック化粧塗り、紙用塗工剤、繊維不織布、フレキシブルな屋根用被覆及び塗料の製造における並びに砂用凝固剤における結合剤として、繊維用助剤又は皮革用助剤及び耐衝撃性改良剤の製造における構成成分として、又は鉱物性結合剤及びプラスチックの改質のための、請求項1に記載の組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、新規コポリマー及びその製造方法に関し、このコポリマーは構成成分として:
1〜C20−アルキル(メタ)アクリラート及び/又はC8〜C20−ビニル芳香族化合物(モノマーa);
少なくとも1つのスルホン酸基(−SO3M)を含むモノエチレン系不飽和の親水性モノマー(モノマーb);及び
少なくとも1つのオキサゾリン基を含むモノエチレン系不飽和のモノマー(モノマーc)を含み、
かつ、ここで、モノマーa)及びb)の割合は、合計で、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として50質量%未満である。
【0002】
本発明は、更に、本発明によるコポリマーの、架橋剤としての、殊にアクリル酸含有のポリマー用の、例えば塗膜形成するポリアクリル酸ラテックス、樹脂又は溶液重合体用の架橋剤としての使用に関する。本発明は、更に本発明によるコポリマーを含む架橋性の組成物に関する。
【0003】
塗膜形成するポリアクリル酸−ラテックス、例えば一連のAcronal(登録商標)(BASF SE、Ludwigshafen)のポリマー分散液は、例えば結合剤として又は表面の被覆のために利用することができる。これらの塗膜形成するポリアクリル酸−ラテックスは、例えば、木材製品、例えば固定板、木材化粧板、コルク製品、寄木製品、又は紙製品、例えば紙、厚紙、ボール紙、壁紙の被覆及び製造の際に、又は木材の含浸の際に使用することができる。
【0004】
殊にラテックスの遊離カルボキシ基と反応することができる架橋剤、つまり多官能性化合物の添加により架橋性の系が得られ、この系は例えば高めた温度で硬化する。このような架橋性の系は、頻繁に、接着剤、シーラント、プラスチック化粧塗り、紙用塗工剤、繊維不織布、フレキシブルな屋根用被覆及び塗料の製造において並びに砂用凝固剤において、繊維用助剤又は皮革用助剤及び耐衝撃性改良剤の製造における構成成分として、又は鉱物性結合剤及びプラスチックの改質のために使用される。
【0005】
オキサゾリンで官能化されたポリマー及びポリカルボン酸の架橋のためのその使用は、先行技術に記載されている。このオキサゾリン基は、カルボキシ基、ホスファート基、フェノール系ヒドロキシ基又は芳香族チオール基と開環しながら反応する。オキサゾリンで官能化されたポリマーを用いて、ポリカルボン酸、例えばポリアクリル酸ラテックスを架橋する場合、安定なエステル化合物が生じ、この際、オキサゾリン基とカルボキシ基との反応は、しばしば既に室温で行うこともできる。約80〜120℃の範囲の高めた温度では、この反応は一般に急速に進行する。
【0006】
オキサゾリンで官能化されたポリマー、殊に2−オキサゾリンで官能化されたポリマーを基礎とする架橋剤は、市場で入手できる、例えばEPOCROS(登録商標)(株式会社日本触媒、日本)。基本的に、2種類の架橋性のオキサゾリンで官能化されたポリマーに区別することができる:a)相応するモノマーのラジカル溶液重合によって得られる水溶性のオキサゾリンで官能化されたポリマー、及びb)相応するモノマーの乳化重合によって得られるオキサゾリンで官能化されたポリマー分散液(ラテックス)。公知の水溶性のオキサゾリンで官能化されたポリマーは、しばしばアクリラート、エトキシル化されたモノマー単位及びオキサゾリン−モノマー単位を含む。
【0007】
米国特許第3,509,235号明細書(US 3,509,235)の特許は、2−アルケニル−オキサゾリン誘導体及び任意に他の不飽和のモノマーのラジカル重合により得られるポリマーを記載する。更に、このオキサゾリン−ポリマーの使用下でのポリアクリル酸ポリマーの架橋を記載し、この場合、この反応はほぼ化学量論量で行われる。殊に、2−イソプロペニル−オキサゾリンとアクリラートとのコポリマーを記載し、かつこれとアクリラート−アクリル酸コポリマーとの硬化性の混合物を記載する。このオキサゾリン−ポリマーの熱硬化性塗料中での使用が記載されている。
【0008】
米国特許第5,300,602号明細書(US 5,300,602)の特許は、オキサゾリン基及びポリエチレングリコール側鎖を含む水溶性ポリマーを記載する。このポリマーは、オキサゾリン−モノマー、アクリル酸エステル及び任意に別のモノマー、例えばアクリル酸のような親水性モノマーを含むモノマー混合物の重合により得られる。殊に、親水性モノマー(これにオキサゾリン−モノマーも含まれる)の割合は、合計で少なくとも50質量%であるとされている。
【0009】
米国特許第2,897,182号明細書(US 2,897,182)の特許は、多様なエチレン系不飽和のオキサゾリン化合物及びオキサジン化合物の製造並びにそのラジカル単独重合及び共重合を記載する。コモノマーとして、とりわけ、アクリル酸、アクリルエステル、アクリルアミド、アクリルニトリル及びスチレンが挙げられる。
【0010】
特開2001−310014号公報(JP 2001/310014)の文献は、オキサゾリン基、及び任意に酸基を含む水溶性の不飽和のモノマーを含む架橋剤を含む吸水性樹脂を記載する。この文献は、この樹脂の衛生製品及びサニタリー製品中での吸収剤としての使用を記載する。
【0011】
特開2008−069249号公報(JP 2008/069249)の文献は、例えば自動車部材の鋼材を被覆するための水性ポリマー樹脂を記載する。この水性ポリマー樹脂は、殊に硬化可能なラテックスである。このポリマーは、オキサゾリン−モノマー、反応性基を含むモノマー、及び反応性乳化剤を含む。
【0012】
特開2001−310914号公報(JP 2001/310914)の文献は、オキサゾリン基を含む架橋剤を記載し、この架橋剤は、吸水性樹脂、特にポリアクリル酸を基礎とする樹脂の架橋のために利用するとしている。高い吸水性を示しかつ低い可溶性割合を含む吸水性樹脂が得られるとしている。この架橋剤は、例えばアクリラート、アクリル酸、メトキシポリエチレングリコール及びオキサゾリン−モノマーからなるコポリマーである。
【0013】
意外にも、(モノマー構成要素として)オキサゾリン基を含む架橋性コポリマーは、50質量%未満の親水性の水溶性モノマーの割合を含む場合に、好ましい特性、殊に改善された架橋作用及び/又は結合剤作用を示すことが明らかとなった。殊に、この架橋性コポリマーは、(メタ)アクリラート少なくとも50質量%及び更に親水性の水溶性モノマーとして、スルホン酸基を含むモノマー及びオキサゾリン基を含むモノマーを含む場合に、好ましい特性を示す。
【0014】
先行技術では、少なくとも50質量%の親水性の水溶性モノマーの比較的高い割合を示す水溶性の架橋性ポリマーが記載されていたため、この見出された結果は意外であった。本発明によるコポリマーは、比較的低い割合の親水性モノマーを含み、それにより比較的低い水溶解度を示すが、例えばセルロース繊維の結合の際に改善された結合特性を示す。
【0015】
本発明は、(構成要素として):
a) C1〜C20−アルキル(メタ)アクリラート及びC8〜C20−ビニル芳香族化合物からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(a);
b) 少なくとも1つのスルホン酸基(−SO3M)を含む少なくとも1種のエチレン系不飽和のモノマー(b);
c) 少なくとも1つのオキサゾリン基を含む少なくとも1種のエチレン系不飽和のモノマー(c);
d) 及び任意に少なくとも1種の別のモノマー(d)及び/又は添加物を含むコポリマーAであって、
ここで、モノマー(b)及び(c)の割合は、合計で、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として、50質量%未満である、コポリマーAに関する。
【0016】
好ましい実施形態の場合に、本発明によるコポリマーA中のモノマー(b)及び(c)の割合は、合計で、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として、2〜49.9質量%、好ましくは10〜49.5質量%、殊に好ましくは25〜49質量%、特に好ましくは30〜45質量%である。
【0017】
好ましい実施形態の場合に、モノマー(b)のモノマー(c)に対する質量比率は、0.1〜1、好ましくは0.25〜0.9;殊に0.3〜0.75、特に好ましくは0.3〜0.5の範囲にある。
【0018】
典型的には、コポリマーA中の水溶性モノマーの割合は、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として、50質量%未満である。
【0019】
「水溶性」の用語は、本発明の意味範囲で、少なくとも100g/l、好ましくは少なくとも200g/l、特に好ましくは少なくとも300g/lの、相応する物質の水中での溶解度を表す。
【0020】
物質の水溶解度は、殊に次に記載する水溶性モノマー(b)及び(c)の水溶解度は、水性媒体の種類、殊にpH値及び温度に依存することは当業者に公知である。水溶解度は、本発明の意味範囲で、殊に室温(25℃)でかつ水中で最大に達せられるべき溶解度に関する。殊に、モノマーの水溶解度は、本発明の意味範囲で、ラジカル溶液重合のための下記の水性反応媒体中での溶解度に関する。「水溶性」の概念は、殊に、水溶性モノマーのアルカリ可溶性の溶液を含み、つまりモノマーは酸性のpH領域で分散液として存在し、かつアルカリ性のpH領域で初めて水中に溶解することを含む。殊に、「水溶性」の概念は、均一で透明な水相が得られることと解釈される。
【0021】
「水溶性モノマー」とは、上述の水溶解度を示すモノマーであると解釈され、殊に、「水溶性モノマー」の用語は、本発明の意味範囲で、上述のモノマー(b)及び(c)を含む。殊に、水溶性モノマーは、本発明の意味範囲で、殊にモノマー(b)及び(c)は、少なくとも100g/l、好ましくは少なくとも200g/l、特に好ましくは少なくとも300g/lの水溶解度を示す。
【0022】
特に好ましい実施形態の場合に、本発明によるコポリマーAは、本発明の意味範囲で水溶性モノマーとして専らモノマー(b)及び(c)を含む。好ましくは、本発明によるコポリマーAは、本発明の意味範囲で水溶性モノマーとして専らモノマー(b)及び(c)を含み、ここでモノマー(b)及び(c)の合計は、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として、50質量%未満、好ましくは2〜49.9質量%、好ましくは10〜49.5質量%、殊に好ましくは25〜49質量%、特に好ましくは30〜45質量%である。
【0023】
上述のモノマー(a)〜(c)及び任意に(d)は、ラジカル重合可能なモノマーであり、つまり、少なくとも1つの重合可能な不飽和基、殊に少なくとも1つのエチレン系不飽和基を含むモノマーである。
【0024】
好ましくは、モノマー(a)〜(c)及び任意に(d)は、モノエチレン系不飽和のモノマーである。
【0025】
モノマーを含むコポリマーとは、本発明の意味範囲で、当業者には、相応するコポリマーが記載されたモノマーから製造された、殊に記載されたモノマーのラジカル重合により製造されたことと解釈される。したがって、本発明によるコポリマーは、使用されたモノマーに対応するモノマー単位を含むか、又は使用されたモノマーに対応するモノマー単位から構成されている。当業者は、コポリマーが、更に、製造の種類に応じて、始端基及び/又は末端基(例えばラジカル開始剤基)及び/又は添加物の残基、例えば界面活性剤及び/又はラジカル開始剤の残基を含むことができることは周知である。
【0026】
好ましい実施形態の場合に、本発明によるコポリマーAは、記載されたモノマー(a)、(b)、(c)及び任意に(d)からなり、つまり本発明によるコポリマーAは、専ら記載されたモノマーの重合により製造された。好ましい実施形態の場合に、本発明によるコポリマーAは、記載されたモノマー(a)、(b)及び(c)からなり、つまり、本発明によるコポリマーAは、専ら記載されたモノマーの重合により製造された。
【0027】
本発明は、好ましくは水溶性コポリマーAに関する。殊に、本発明は、ラテックスではない水溶性コポリマーに関する。本発明の意味範囲で、乳化重合の生成物であるポリマー分散液は、ラテックスといわれる。
【0028】
モノマー(a)
本発明によるコポリマーAは、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリラート、殊にC1〜C12−アルキル(メタ)アクリラート、特に好ましくはC1〜C8−アルキル(メタ)アクリラート、及びC8〜C20−ビニル芳香族化合物、殊にC8〜C10−ビニル芳香族化合物からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(a)を含む。
【0029】
本発明の意味範囲で、「(メタ)アクリラート」の概念は、相応するアクリラート及び/又はメタクリラート又はアクリラート誘導体及び/又はメタクリラート誘導体を含む。例えば、「メチル(メタ)アクリラート」の概念は、メチルアクリラート及び/又はメチルメタクリラートを含む。例えば、「(メタ)アクリルアミド」の概念は、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを含む。
【0030】
殊に、少なくとも1種のモノマー(a)は、モノエチレン系不飽和の疎水性モノマーであり、このモノマー(a)は、殊に非水溶性であり、つまり先に定義された水溶解度を示さない。殊に、少なくとも1種のモノマー(a)は、300g/l未満、好ましくは200g/l未満、殊に好ましくは100g/l未満、特に好ましくは25g/l未満の水溶解度を示す。
【0031】
典型的には、少なくとも1種のモノマー(a)は、メチル(メタ)アクリラート、エチル(メタ)アクリラート、n−ブチル(メタ)アクリラート、イソブチル(メタ)アクリラート、t−ブチル−(メタ)アクリラート、sec−ブチル(メタ)アクリラート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリラート、トリデシル(メタ)アクリラート、シクロヘキシル(メタ)アクリラート、n−オクチル(メタ)アクリラート、n−ラウリル(メタ)アクリラート、ベンジル(メタ)アクリラート、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエンからなる群から選択されていてよい。
【0032】
好ましい実施形態の場合に、モノマー(a)は、1種又は数種のC1〜C20−アルキル(メタ)アクリラート、好ましくは1種又は数種のC1〜C12−アルキル(メタ)アクリラート、特に好ましくは1種又は数種のC1〜C8−アルキル(メタ)アクリラートである。特に好ましくは、モノマー(a)は、メチルアクリラート(MA)、メチルメタクリラート(MMA)、エチルアクリラート(EA)、エチルメタクリラート(EMA)、n−ブチルアクリラート、n−ブチルメタクリラート、t−ブチルアクリラート、t−ブチルメタクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート及び2−エチルヘキシルメタクリラートから選択される、好ましくはメチルアクリラート、メチルメタクリラート、n−ブチルアクリラート及びn−ブチルメタクリラートから選択される少なくとも1種のモノマーである。特に好ましくは、モノマー(a)は、メチルアクリラート及び/又はメチルメタクリラートである。特に好ましくは、モノマー(a)は、n−ブチルアクリラート及び/又はn−ブチルメタクリラートである。特に好ましくは、モノマー(a)は、n−ブチルアクリラートとメチルメタクリラートとの混合物である。
【0033】
少なくとも1種のモノマー(a)は、好ましくは、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として、50〜98質量%、好ましくは50.5〜85質量%、殊に好ましくは55〜72質量%の範囲の量で含まれている。
【0034】
好ましくは、本発明によるコポリマーAは、モノマー(a)として、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として50〜98質量%、好ましくは50.5〜85質量%、殊に好ましくは55〜72質量%の、C1〜C8−アルキル(メタ)アクリラートからなる、好ましくはメチルアクリラート(MA)、メチルメタクリラート(MMA)、エチルアクリラート(EA)、エチルメタクリラート(EMA)、n−ブチルアクリラート及びn−ブチルメタクリラートからなる、特に好ましくはメチルアクリラート、メチルメタクリラート、n−ブチルアクリラート及びn−ブチルメタクリラートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む。
【0035】
モノマー(b)
本発明によるコポリマーAは、少なくとも1つのスルホン酸基(−SO3M)を含む少なくとも1種のエチレン系不飽和のモノマー(b)を含む。殊に、モノマー(b)は、少なくとも1つのスルホン酸基(−SO3M)を含むモノエチレン系不飽和の親水性モノマー(b)である。Mは、殊に水素、アンモニウム又は金属、好ましくは金属を表すことができる。特に好ましくは、モノマー(b)は正確に1つのスルホン酸基(−SO3M)を含む。
【0036】
典型的には、スルホン酸基は−SO3M基であり、この場合、Mは水素、アンモニウム又は金属、好ましくはアンモニウム又は金属を表す。殊に、Mは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属、好ましくは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)及びカルシウム(Ca)から選択される金属を表す。特に好ましくは、少なくとも1つのスルホン酸基は、−SO3Na基及び/又は−SO3K基、特に好ましくは−SO3Na基である。
【0037】
当業者には、モノマー(b)のスルホン酸基が、それを取り囲む媒体に応じて、殊にpH値に応じて、完全に又は部分的に脱プロトンされて存在してよいことは周知である。特に好ましくは、モノマー(b)は、コポリマーAの製造において及び/又は更に下記する多官能性ポリマーPを架橋する方法において、脱プロトンされた形で存在し、特に好ましくは完全に脱プロトンされた形で存在する。典型的には、モノマー(b)は、コポリマーAの製造において、脱プロトンされた形で、つまり金属塩の形で、殊にナトリウム塩及び/又はカリウム塩の形で使用される。モノマー(b)を脱プロトンされた形で又は完全に脱プロトンされた形で使用することにより、殊に、スルホン酸基と、モノマー(c)のオキサゾリン基との反応が行われないことが保証されるべきである。
【0038】
親水性モノマー(b)は、好ましくは一般式(I)
2C=C(R1)R2 (I)
[式中、R1は、H又はメチルを表し、R2は、少なくとも1つのスルホン酸基、殊に−SO3M基を含む基を表し、Mは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから選択される金属である]のモノマーである。少なくとも1つのスルホン酸基は、エチレン系の基に直接結合されていてよいが、又はエチレン系の基を含む1つ又は複数の連結する基を介して結合されていてよい。殊に、R2は、−Y−SO3Mを表し、−Y−は、結合、C1〜C10−アルキレン、フェニレン、C1〜C10−アルキルフェニレン、−C(=O)−O−(C1〜C12−アルキレン)−;−C(=O)−NH−(C1〜C12−アルキレン)−;−O−(−CH2−CH(Ra)−O−)m−;−C(=O)−O(−CH2−CH(Ra)−O−)m−から選択される連結する基であり、ここで、Raは、H又はメチルであり、mは1〜200、好ましくは10〜100である。
【0039】
1〜C12−アルキレン基は、殊に、1〜12の炭素原子を含む連結する二価の線状又は分枝状の炭化水素基である。好ましくは−(CH2n−基(ここで、nは1〜12である);−CH(CH3)−CH2−基;−CH(CH3)−CH2−CH2−基;−C(CH32−CH2−基;−C(CH32−CH2−CH2−基;−C(CH32−CH2−C(CH32−CH2−基又は−C(CH32−CH2−CH2−C(CH32−CH2−基であってよい。
【0040】
殊に好ましくは、−Y−は、−C(=O)−NH−(C1〜C12−アルキレン)−、殊に−C(=O)−NH−(CH2n−(ここで、n=1〜12)、又は−C(=O)−NH−C(CH32−CH2−である。
【0041】
好ましくは、モノマー(b)は、式(II):
2C=C(R1)C(=O)−NH−Z−SO3M (II)
[式中、基及び添え字は次の意味を示す:
1は、H又はメチルであり;
Zは、結合、C1〜C10−アルキレン、フェニレン及びC1〜C10−アルキルフェニレンから選択される;好ましくはC1〜C10−アルキレンから選択される二価の連結する基であり;
及び、Mは1つ又は複数の金属、殊にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属から選択される1つ又は複数の金属、好ましくは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)及びカルシウム(Ca)から選択される1つ又は複数の金属である]の化合物である。
【0042】
好ましくは、Zは、−(CH2n−基(ここで、nは1〜12である);−CH(CH3)−CH2−基;−CH(CH3)−CH2−CH2−基;−C(CH32−CH2−基;−C(CH32−CH2−CH2−基;−C(CH32−CH2−C(CH32−CH2−基又は−C(CH32−CH2−CH2−C(CH32−CH2−基である。
【0043】
好ましくは、モノマー(b)は、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドブタンスルホン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2,4,4−トリメチルペンタンスルホン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、N−(メタ)アクリルアミドアルキルホスホン酸及び(メタ)アクリロイルオキシアルキルホスホン酸からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである。
【0044】
特に好ましくは、モノマー(b)は、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドブタンスルホン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタンスルホン酸及び2−アクリルアミド−2,4,4−トリメチルペンタンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである。
【0045】
記載された酸(モノマー(b))は、常に相応する塩、殊にアンモニウム、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩も含んでいる。好ましくは、上述のモノマー(b)は、相応するアンモニウム塩及び/又は金属塩であり、好ましくは相応するアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であり、特に好ましくはナトリウム塩及び/又はカリウム塩である。
【0046】
殊に好ましくは、モノマー(b)は、2−アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸(AMPS)又はその塩であり、殊に、2−アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸ナトリウム塩(AMPS−Na)又は少なくとも50質量%のAMPS又はその塩と少なくとも1種の別のモノマー(b)とからなるモノマー混合物である。
【0047】
少なくとも1種のモノマー(b)は、好ましくは、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として、1〜45質量%、好ましくは5〜29.5質量%、殊に好ましくは8〜15質量%の範囲の量で含まれている。
【0048】
モノマー(c)
本発明によるコポリマーAは、少なくとも1つのオキサゾリン基を含む少なくとも1種のエチレン系不飽和のモノマー(c)を含む。殊に、モノマー(c)は、少なくとも1つのオキサゾリン基、殊に少なくとも1つの2−オキサゾリン基を含むモノエチレン系不飽和の親水性モノマー(c)(以後、オキサゾリン−モノマーともいう)である。好ましくは、モノマー(c)は、正確に1つのオキサゾリン基、殊に正確に1つの2−オキサゾリン基を含む。
【0049】
オキサゾリン−モノマーは、少なくとも1つのエチレン系不飽和基及び少なくとも1つのオキサゾリン基を含む有機化合物である。本発明の意味範囲で、オキサゾリン基は、正確に1つの酸素原子と正確に1つの窒素原子とを含む5員環を含む複素環式化合物を表す。殊に、オキサゾリン基は、2−オキサゾリン基であり、この2−オキサゾリン基を、次の構造要素により記述することができる。
【化1】
【0050】
好ましくは、モノマー(c)は、式(IV):
【化2】
[式中、基は次の意味を示す:
Rは、少なくとも1つのエチレン系不飽和基を含むC2〜C20−アルケニル基であり;
3、R4、R5、R6は、互いに無関係に、H、ハロゲン、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル、C6〜C20−アリール、C7〜C32−アリールアルキル、C1〜C20−ヒドロキシアルキル、C1〜C20−アミノアルキル及びC1〜C20−ハロアルキルから選択され、好ましくはH、ハロゲン及びC1〜C20−アルキルから選択される]の化合物である。
【0051】
エチレン系不飽和基は、末端C=C−二重結合を表す。
【0052】
アルキルは、殊に1〜20の炭素原子、好ましくは1〜18の炭素原子、特に好ましくは1〜12の炭素原子を含む、線状、分枝状又は環状の炭化水素基からなる、好ましくは線状又は分枝状の炭化水素鎖からなる一価の基を表す。例えば、アルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル又はイソプロピルであってよい。
【0053】
アルケニルは、殊に2〜20の炭素原子、好ましくは2〜18の炭素原子、特に好ましくは2〜12の炭素原子を含み、1つ又は複数のC=C−二重結合を含む、線状又は分枝状の炭化水素鎖からなり、ここで、このC=C−二重結合は、炭化水素鎖内に又は炭化水素鎖の末端(末端C=C−二重結合)にあってよい一価の基を表す。例えば、アルケニル基は、アリル基であってよい。
【0054】
アリールは、殊に6〜20の炭素原子を含む置換された又は非置換の芳香族炭化水素基を表す。例えば、アリール基は、フェニル基であってよい。
【0055】
アリールアルキルは、殊に1〜20の炭素原子、好ましくは2〜18の炭素原子、特に好ましくは2〜12の炭素原子を含む線状又は分枝状のアルキル基から、1つ又は複数の水素原子がアリール基と置き換えられることにより誘導された一価の基を表し、ここで、このアリール基は、殊に6〜14の炭素原子を含む置換された又は非置換の芳香族炭化水素基である。例えば、芳香族炭化水素基は、フェニルであってよく;例えば、アリールアルキル基は、ベンジル基であってよい。
【0056】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選択される置換基、好ましくは塩素を表す。
【0057】
ハロアルキルは、殊に2〜20の炭素原子、好ましくは2〜18の炭素原子、特に好ましくは2〜12の炭素原子を含む線状又は分枝状のアルキル基から、1つ又は複数の水素原子がハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、−I、殊にCl)に置き換えられることにより誘導された一価の基を表す。同様のことが、ヒドロキシアルキル基及びアミノアルキル基にも当てはまる。
【0058】
好ましくは、Rは、少なくとも1つのエチレン系不飽和基を含むC1〜C10−アルケニル基、好ましくはC1〜C6−アルケニル基である。好ましい実施形態の場合に、基Rは、正確に1つのエチレン系不飽和基を含む。基Rは、殊に、ビニル、アリル、イソプロペニル(2−プロペン−2−イル)、2−プロペン−1−イル、3−ブテン−1−イル、又は4−ブテン−1−イルから選択される。特に好ましくは、Rは、ビニル又はイソプロペニル、特に好ましくはイソプロペニルである。
【0059】
好ましくは基R3、R4、R5及びR6は、互いに無関係に、H、ハロゲン、C1〜C10−アルキル、C6〜C12−アリール、C7〜C13−アリールアルキル、C1〜C10−アルコキシ、C1〜C10−ヒドロキシアルキル、C1〜C10−アミノアルキル及びC1〜C10−ハロアルキルから選択される;殊にH及びC1〜C6−アルキルから選択される、特に好ましくは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル及びn−ヘキシルから選択される、殊に、H、メチル及びエチルから選択される。
【0060】
好ましい実施形態の場合に、基R3、R4、R5及びR6の少なくとも2つはHである。好ましい実施形態の場合に、基R3及びR4はHである。好ましい実施形態の場合に、基R3、R4、R5及びR6の全てはHである。好ましい実施形態の場合に、基R3、R4、R5及びR6の少なくとも2つはHである。
【0061】
好ましい実施形態の場合に、基R3、R4、R5及びR6は、互いに無関係に、H、メチル及びエチルから選択され、かつ基R3、R4、R5及びR6の少なくとも2つはHであり、好ましくは基R3及びR4はHである。
【0062】
殊に好ましくは、モノマー(c)は、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−エチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5,5−ジメチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4,4,5,5−テトラメチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5,5−ジメチル−2−オキサゾリン及び2−イソプロペニル−4,4,5,5−テトラメチル−2−オキサゾリンからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである。2−ビニル−2−オキサゾリン及び/又は2−イソプロペニル−2−オキサゾリンの使用が特に好ましく、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(iPOx)の使用が殊に好ましい。
【0063】
少なくとも1種のモノマー(c)は、好ましくは、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として、1〜45質量%、好ましくは10〜39.5質量%、殊に好ましくは20〜35質量%の範囲の量で含まれている。
【0064】
任意のモノマー(d)
本発明によるコポリマーAは、任意に少なくとも1種の別のモノマー(d)及び/又は添加物を含むことができる。例えば、コポリマーAは、上述のモノマー(a)、(b)及び(c)の他に、任意に別のモノマー(d)、例えば不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリル及びメタクリロニトリル;不飽和アミド、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド;ビニルエステル及びビニルエーテル、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシビニルエチルエーテル、ヒドロキシビニルプロピルエーテル、ヒドロキシビニルブチルエーテル、及びN−ビニル誘導体、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムから選択される別のモノマー(d)を含むことができる。この任意のモノマーは、殊に、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド及びN−ビニルピロリドンから選択されていてよい。
【0065】
別のモノマー(d)として、親水性の非イオン性のC1〜C20−アルキル(メタ)アクリラート誘導体が、コポリマーA中に含まれていることも可能であり、この場合、殊に、本発明の意味範囲の水溶性モノマーであってよい。殊に別のモノマーとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、3−ヒドロキシプロピル−(メタ)アクリラート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリラート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリラート、メトキシポリエチレングリコールアクリラート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリラート、エチレングリコール(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリラート、グリシジル(メタ)アクリラート及び2−アミノエチルアクリラートからなる群から選択されるC1〜C20−アルキル(メタ)アクリラート誘導体が使用されてよい。
【0066】
別のモノマーとして、親水性の酸性の基を含むモノマーが含まれていることも可能であり、この場合、殊に、本発明の意味範囲の水溶性モノマーであってよい。殊に、この場合には、脱プロトンされて又は好ましくは完全に脱プロトンされて存在する酸性の基である。殊に、別のモノマー(d)として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及び/又はフマル酸を、そのアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の形で使用してよい。
【0067】
典型的には、少なくとも1種のモノマー(d)は、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として、0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、殊に好ましくは0〜1質量%、殊に好ましくは0.1〜1質量%の範囲の量で含まれている。
【0068】
上述の任意の別のモノマー(d)は、本発明の意味範囲内の水溶性モノマーであってよい。本発明の場合に、コポリマーAは、モノマー(b)、モノマー(c)及び任意の別の水溶性モノマーを含めて合計で、水溶性モノマーを、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として50質量%未満含む。
【0069】
特に好ましい実施形態の場合に、本発明によるコポリマーAは、専らモノマー(b)及び(c)を、本発明の意味範囲の水溶性モノマーとして含み、この場合、モノマー(b)及び(c)の合計が、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として50質量%未満である。
【0070】
好ましい実施形態の場合に、本発明によるコポリマーAは、カルボキシ基(−COOH)をプロトン化された形又は脱プロトンされた形で含むモノマーを含まない。好ましい実施形態の場合に、本発明によるコポリマーAは、酸性の基、例えば−COOH、−SO3H、−PO32をプロトン化された形で含むモノマーを含まない。好ましい実施形態の場合に、本発明によるコポリマーAは、カルボキシ基(−COOH)をプロトン化された形で含むモノマーを含まない。典型的には、プロトン化された形の酸性の基の存在は、コポリマーAの重合の際に、オキサゾリン基との不所望な反応(副反応)及びコポリマーAの架橋を引き起こす。
【0071】
例えば、コポリマーAは、別の添加物として任意に1種又は数種の化合物、例えば界面活性剤及びラジカル開始剤を含んでいてよく、これらの化合物はラジカル重合(コポリマーAの製造)の際に、典型的に助剤として使用される。典型的には、コポリマーAは、任意の添加物を、0〜1質量%、好ましくは0〜0.1質量%、好ましくは0.01〜0.1質量%の量で含んでいてよい。
【0072】
好ましい実施形態の場合に、本発明は、
少なくとも1種のモノマー(a)50〜98質量%、好ましくは50.5〜85質量%、殊に好ましくは55〜72質量%;
少なくとも1種のモノマー(b)1〜45質量%、好ましくは5〜29.5質量%、殊に好ましくは8〜15質量%;
少なくとも1種のモノマー(c)1〜45質量%、好ましくは10〜39.5質量%、殊に好ましくは20〜35質量%;
少なくとも1種の別のモノマー(d)及び/又は添加物0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、殊に好ましくは0〜1質量%、好ましくは0.1〜1質量%を含むコポリマーAであって、
この場合、モノマー(b)及び(c)の割合は、合計で、コポリマーAのモノマーの全体の量を基準として、50質量%未満、好ましくは2〜49.9質量%、好ましくは10〜49.5質量%、殊に好ましくは25〜49質量%、特に好ましくは30〜45質量%であるコポリマーAに関する。
【0073】
本発明によるコポリマーAのモノマーに関連する質量%で示す記載は、他に記載がない限り、コポリマーA中の全てのモノマーの全体の量を基準とする。
【0074】
特に好ましい実施形態の場合に、本発明は、
少なくとも1種のモノマー(a)50〜98質量%、好ましくは50.5〜85質量%、殊に好ましくは55〜72質量%、ここで、モノマー(a)は少なくとも1種のC1〜C12−アルキル(メタ)アクリラートであり、好ましくはメチルアクリラート(MA)、メチルメタクリラート(MMA)、エチルアクリラート(EA)、エチルメタクリラート(EMA)、n−ブチルアクリラート(n−BA)及びn−ブチルメタクリラート(n−BMA)から選択される少なくとも1種のC1〜C6−アルキル(メタ)アクリラートであり;
少なくとも1種のモノマー(b)1〜45質量%、好ましくは5〜29.5質量%、殊に好ましくは8〜15質量%、ここで、モノマー(b)は、正確に1つのスルホン酸基(−SO3H)を含むモノエチレン系不飽和のモノマー(b)であり、好ましくはモノマー(b)は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩、好ましくは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸−ナトリウム塩(AMPS−Na)であり;
少なくとも1種のモノマー(c)1〜45質量%、好ましくは10〜39.5質量%、殊に好ましくは20〜35質量%、ここで、モノマー(c)は、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−エチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5,5−ジメチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4,4,5,5−テトラメチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5,5−ジメチル−2−オキサゾリン及び2−イソプロペニル−4,4,5,5−テトラメチル−2−オキサゾリンから選択される少なくとも1種のモノマーであり、好ましくはモノマー(c)は2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(iPOx)であり;
少なくとも1種の別のモノマー(d)及び/又は添加物0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、殊に好ましくは0〜1質量%、好ましくは0.1〜1質量%を含むコポリマーAであって、
ここで、モノマー(b)及び(c)の割合は、合計で、コポリマーAのモノマーの全体の量を基準として、50質量%未満、好ましくは2〜49.9質量%、好ましくは10〜49.5質量%、殊に好ましくは25〜49質量%、特に好ましくは30〜45質量%であるコポリマーAに関する。
【0075】
特に好ましい実施形態の場合に、本発明は、
モノマー(a)として、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、エチルアクリラート、エチルメタクリラート、n−ブチルアクリラート及びn−ブチルメタクリラートから選択される少なくとも1種のC1〜C12−アルキル(メタ)アクリラート50.5〜85質量%、殊に好ましくは55〜72質量%;
モノマー(b)として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸−ナトリウム塩(AMPS−Na)5〜15質量%、好ましくは8〜13質量%;
モノマー(c)として、イソプロペニルオキサゾリン(iPOx)10〜34.5質量%、好ましくは20〜32質量%;
少なくとも1種の別のモノマー(d)及び/又は添加物0〜1質量%を含むコポリマーAであって、
この場合、モノマー(b)及び(c)の割合は、合計で、コポリマーAのモノマーの全体の量を基準として、50質量%未満、好ましくは2〜49.9質量%、好ましくは10〜49.5質量%、殊に好ましくは25〜49質量%、特に好ましくは30〜45質量%であるコポリマーAに関する。
【0076】
本発明は、更に、
a) C1〜C20−アルキル(メタ)アクリラート及びC8〜C20−ビニル芳香族化合物からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(a);
b) 少なくとも1つのスルホン酸基(−SO3M)を含む少なくとも1種のエチレン系不飽和のモノマー(b);
c) 少なくとも1つのオキサゾリン基を含む少なくとも1種のエチレン系不飽和のモノマー(c);
d) 及び、任意に、少なくとも1種の別のモノマーを重合させる、
上述のコポリマーAの製造方法に関する。好ましくは、この方法は、専らモノマー(a)、(b)及び(c)の使用を含み、つまり任意のモノマー(d)は重合されない。
【0077】
好ましい実施形態の場合に、少なくとも1種のモノマー(a)、少なくとも1種のモノマー(b)、少なくとも1種のモノマー(c)及び任意に1種又は数種の別のモノマー(d)を含むモノマー混合物を重合する。好ましくはモノマー混合物は、水、極性有機溶媒又はこれらの混合物中の、上述のモノマー(a)、(b)、(c)及び任意に(d)の溶液である。適切な極性溶媒は下記される。
【0078】
好ましい実施形態の場合に、モノマー(a)、(b)、(c)及び任意に(d)をラジカル重合する。本発明によるコポリマーAを、ラジカル重合の公知の方法により、例えば塊状重合、溶液重合、ゲル重合、乳化重合、分散重合又は懸濁重合により製造することができる。
【0079】
ラジカル重合(コポリマーAの製造)は、典型的には、0〜170℃、好ましくは20〜150℃、特に好ましくは50〜100℃の範囲の温度で行われる。
【0080】
好ましい実施形態の場合に、モノマー(a)、(b)、(c)及び任意に(d)をラジカル重合し、この場合、このラジカル重合は、溶液重合として、殊に好ましくは水と極性有機溶媒との混合物中での溶液重合として実施される。
【0081】
好ましくは、モノマー(a)、(b)、(c)及び任意に(d)を、ラジカル溶液重合で重合し、この場合、溶媒、モノマー(a)、(b)、(c)及び任意に(d)、任意に1種又は数種の開始剤(ラジカル開始剤)及び任意に別の添加物を含むモノマー混合物を重合する。
【0082】
溶媒として、モノマー混合物は、好ましくは水と極性有機溶媒との混合物を含む。極性有機溶媒は、典型的には、水と混合可能な、1種又は数種の適切な有機溶媒である。溶媒中の水の割合は、原則として、全体の溶媒を基準として、0〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。
【0083】
有機溶媒として、水と混合可能な、公知の極性溶媒、例えばアルコール、エステル、エーテル又はジメチルスルホキシド(DMSO)を使用してよい。有機溶媒として、殊に水と混合可能なアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールを使用してよい。
【0084】
極性有機溶媒として、殊に、メタノール、エタノール、イソプロパノール及び酢酸エステルからなる、好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール及びイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を使用してよい。
【0085】
好ましくは、溶媒として、水と、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びイソプロパノールから選択される少なくとも1種のアルコール、殊にイソプロパノールとの、1:2〜2:1、好ましくは約1:1の質量比の混合物を使用する。
【0086】
好ましくは、本発明によるコポリマーAの製造方法は、ラジカル重合用の公知の開始剤(ラジカル開始剤)の使用下でのモノマー(a)、(b)、(c)及び任意に(d)のラジカル重合を含む。典型的には、開始剤として、過酸化物化合物、例えばヒドロペルオキシド、過酸エステル及び過硫酸塩、アゾ化合物、置換エタン(例えばベンゾピナコール)、無機成分及び有機成分からなるレドックス系から選択される少なくとも1種の化合物、熱、UV線又は他の高エネルギー線を使用してよい。
【0087】
典型的な過酸化物開始剤は、例えばアセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルボナート、t−アミルペルネオデカノアート、t−ブチルペルネオデカノアート、t−ブチルペルピバラート、t−アミルペルピバラート、ビス−(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(2−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジスクシノイルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペル−2−エチルヘキサノアート、t−ブチル−2−エチルヘキサノアート、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、t−ブチルペルイソブチラート、t−ブチルペルマレアート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボナート、t−ブチルペルイソノナノアート、t−ブチルペルアセタート、t−アミルペルベンゾアート、t−ブチルペルベンゾアート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン(ジ−t−ブチルペルオキシド)、2,2−ビス−10−(t−ブチルペルオキシ)プロパン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−ヘキサン、3−(t−ブチルペルオキシ)−3−フェニルフタリド、ジ(t−アミル)ペルオキシド、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,5−ジメチル−1,2−ジオキソラン、ジ(t−ブチル)ペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン、3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5−テトラオキサシクロノナン、p−メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼン、モノ−α−ヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、スクシニルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド又は過酸化水素である。
【0088】
典型的なアゾ開始剤は、例えば4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸(ACVA)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)−二塩酸塩、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)、2,2′−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1′−アゾビス(シアノシクロヘキサン)、1,1′−アゾビス(N,N−ジメチルホルムアミド)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1′−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチラート、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)−塩酸塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′−アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド)、アゾビス(2−アミドプロパン)−二塩酸塩又は2,2′−アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]−プロピオンアミド)である。
【0089】
典型的なレドックス開始剤は、例えば酸化剤、例えば過酸化水素、ペルオキソ二硫酸塩又は上述の過酸化物化合物と、還元剤、例えば鉄(II)塩、銀(I)塩、コバルト(II)塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩又はチオ硫酸塩との混合物である。無機成分と有機成分とからなる典型的なレドックス系は、過酸化水素又はその誘導体と、還元性成分、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシラート及び−ヒドラジン、アスコルビン酸又は二ナトリウム−2−ジヒドロキシ−2−スルフィナトアセタートとの組み合わせである。
【0090】
好ましくは、開始剤として、殊に2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)−二塩酸塩、及び2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)−二塩酸塩から選択されるアゾ開始剤を使用する。
【0091】
典型的には、開始剤は、モノマーを基準として0.5〜5質量%、好ましくは1〜4質量%の範囲の量で使用される。
【0092】
好ましくは、モノマー(a)、(b)、(c)及び任意に(d)のラジカル重合は溶液重合として行われ、この場合、溶液のpH値は、5〜8、好ましくは6〜8である。酸性又は塩基性のモノマーは、重合の前に完全に又は部分的に中和されてよい。好ましくは酸性の基、例えば−COOH、−SO3H、−PO32は完全に脱プロトンされた形で存在する。典型的には、プロトン化された形の酸性の基の存在は、コポリマーAの重合の際に、オキサゾリン基との不所望な反応(副反応)を引き起こす。
【0093】
少なくとも1つのスルホン酸基(−SO3M)を含むモノエチレン系不飽和の親水性モノマー(b)は、好ましくは中和された形で、殊にアルカリ金属塩の形で存在する。
【0094】
好ましい実施形態の場合に、少なくとも1種のモノマー(a)、少なくとも1種のモノマー(b)、少なくとも1種のモノマー(c)及び任意に1種又は数種の別のモノマー(d)を含むモノマー混合物を重合させ、この場合、モノマー混合物は次の成分を含む:
少なくとも1種のモノマー(a)、全体のモノマー混合物を基準として7〜15質量%、好ましくは8〜10質量%;
少なくとも1種のモノマー(b)、全体のモノマー混合物を基準として0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%;
少なくとも1種のモノマー(c)、全体のモノマー混合物を基準として0.5〜10質量%、好ましくは2〜8質量%、殊に好ましくは2.5〜3.4質量%;
少なくとも1種の別のモノマー及び/又は添加物、全体のモノマー混合物を基準として0〜5質量%、好ましくは0〜1質量%、
少なくとも1種の開始剤、全体のモノマー混合物を基準として0.001〜2質量%、好ましくは0.01〜1質量%、
少なくとも1種の溶媒、全体のモノマー混合物を基準として58〜91.991質量%、好ましくは75〜88.99質量%、この場合、溶媒は、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール及びイソプロパノールからなる群から選択される極性溶媒、及びこれらの極性溶媒と水との混合物から選択される。
【0095】
記載されたこれらの成分について、コポリマーA及びその製造方法との関連で上述された好ましい実施態様が当てはまる。
【0096】
コポリマーAは、典型的には、通常の方法を用いて、例えば沈殿又は蒸留により、得られた生成物混合物から単離することができる。しかしながら、コポリマーAは、水蒸気蒸留によって水に移し、かつ水溶液の形で架橋剤として使用することも可能である。
【0097】
更に、本発明は、上述の本発明によるコポリマーAの架橋剤としての使用、殊に、カルボキシ基(−COOH)、リン酸基(−OP(OH)3)、フェノール系ヒドロキシ基及び芳香族チオール基から選択される、好ましくはカルボキシ基(−COOH)から選択される少なくとも2つの官能基を含む多官能性ポリマーPを架橋するための使用に関する。好ましくは、本発明は、ポリカルボン酸ポリマー用の架橋剤としての、上述の本発明によるコポリマーAの使用に関する。
【0098】
コポリマーAの本発明による使用に関して、コポリマーAの上述の好ましい実施形態が当てはまる。
【0099】
フェノール系ヒドロキシ基の用語は、本発明の意味範囲で、芳香環、殊にベンゼン環に直接結合しているヒドロキシ基(−OH)を表す。
【0100】
芳香族チオール基の用語は、本発明の意味範囲で、芳香環、殊にベンゼン環に直接結合しているチオール基(−SH)を表す。
【0101】
ポリカルボン酸ポリマーの用語は、本発明の意味範囲で、少なくとも2つの遊離カルボキシ基(−COOH)を含むポリマーを表す。
【0102】
ポリカルボン酸ポリマーは、例えば(メタ)アクリル酸及び任意に1種又は数種の別のモノエチレン系不飽和モノマーを含むポリマー又はコポリマーであってよい。殊に、ポリカルボン酸ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸と、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリラート、殊にC1〜C12−アルキル(メタ)アクリラート;C8〜C20−ビニル芳香族化合物、殊にC8〜C10−ビニル芳香族化合物;不飽和ニトリル、例えば(メタ)アクリルニトリル;不飽和アミド、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)−アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド;ビニルエステル;例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル;ビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシビニルエチルエーテル、ヒドロキシビニルプロピルエーテル、ヒドロキシビニルブチルエーテル、及びN−ビニル誘導体、例えばN−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムからなる群から選択される少なくとも1種の別のモノマーとのコポリマーであってよい。
【0103】
殊に、ポリカルボン酸ポリマーは、(メタ)アクリル酸と、C1〜C12−アルキル(メタ)アクリラート、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド及びN−ベンジル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種の別のモノマーを含む。
【0104】
好ましい実施形態の場合に、ポリカルボン酸ポリマーは、少なくとも2つのカルボキシ基(−COOH)を含むポリカルボン酸ポリマー分散液である。殊に、ポリカルボン酸ポリマー分散液は、ラテックスともいわれる乳化重合の生成物である。好ましくは、ポリカルボン酸ポリマーは、(メタ)アクリル酸及び/又はイタコン酸と、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリラートからなる、殊にC1〜C12−アルキル(メタ)アクリラート;C8〜C20−ビニル芳香族化合物、殊にC8〜C10−ビニル芳香族化合物;不飽和ニトリル、例えば(メタ)アクリルニトリル;不飽和アミド、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、Ν,N′−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)−アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド;ビニルエステル;例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル;ビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシビニルエチルエーテル、ヒドロキシビニルプロピルエーテル、ヒドロキシビニルブチルエーテル、及びN−ビニル誘導体、例えばN−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムからなる群から選択される少なくとも1種の別のモノマーとを含むポリマー分散液(ラテックス)である。
【0105】
好ましくは、ポリカルボン酸ポリマーは、(メタ)アクリル酸及び/又はイタコン酸と、スチレン、メチル(メタ)アクリラート、n−ブチル(メタ)アクリラート、エチルヘキシル−(メタ)アクリラート及び(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種の別のモノマーとを含むポリマー分散液(ラテックス)である。
【0106】
典型的には、ポリカルボン酸ポリマーは、(メタ)アクリル酸及び/又はイタコン酸0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、及び上述の少なくとも1種の別のモノマー50〜99.9質量%、好ましくは50〜99.9質量%を含む。
【0107】
殊に、ポリスチレン−シードラテックスから出発して製造されたポリマー分散液(ラテックス)であってよい。
【0108】
エチレン系不飽和のモノマーのラジカル乳化重合の実施は、当業者に公知でありかつ先行技術においてたびたび記載されている。
【0109】
典型的には、ポリマー分散液(ラテックス)は、20〜60質量%、好ましくは40〜60質量%の範囲の固体含有率を示す。典型的には、ポリマー分散液(ラテックス)は、50〜500nm、好ましくは100〜200nmの範囲の粒度を示す。典型的には、ポリマー分散液(ラテックス)は、−40〜100℃、好ましくは−10〜40℃の範囲のガラス転移温度を示す。
【0110】
典型的には、ポリマー分散液(ラテックス)は、0.2〜20質量%の範囲の酸価を示す。酸価とは、典型的に、全体のモノマーに対する、酸基を含むモノマーの質量割合をいう。
【0111】
典型的には、ポリカルボン酸ポリマーとして、市場で入手可能なラテックス分散液、例えばBASF SE社のAcronal(登録商標)製品シリーズからの分散液を使用してよい。
【0112】
殊に、本発明によるコポリマーAの使用は、接着剤、シーラント、プラスチック化粧塗り、紙用塗工剤、繊維不織布、フレキシブルな屋根用被覆及び塗料の製造における並びに砂用凝固剤における結合剤として、繊維用助剤又は皮革用助剤及び耐衝撃性改良剤の製造における構成成分としての、又は鉱物性結合剤及びプラスチックの改質のための使用に関する。殊に、本発明によるコポリマーAの使用は、例えば、紙、厚紙又は硬質固定板を製造する際に使用される被覆組成物中の及び/又は結合剤組成物中の架橋剤としての使用に関する。
【0113】
本発明によるコポリマーAの使用により、例えばセルロース繊維の、例えば紙製品中でのセルロース繊維の結合及び架橋を改善することができる。
【0114】
本発明は、更に、カルボキシ基、リン酸基、フェノール系ヒドロキシ基及び芳香族チオール基から選択される少なくとも2つの官能基を含む多官能性ポリマーPを架橋する方法において、多官能性ポリマーPに少なくとも1種の本発明によるコポリマーAを添加する、多官能性ポリマーPを架橋する方法に関する。架橋は室温で行われる。ポリマーPと本発明によるコポリマーAとを含む混合物を、60〜200℃、好ましくは80〜150℃の温度に加熱することも可能である。
【0115】
典型的には、架橋は、混合物中に含まれる揮発性の塩基性化合物の気化及び/又は蒸発により行われ、この場合、pH値の低下及び多官能性ポリマーPの上述の官能基、例えばカルボキシ基(−COOH)、リン酸基(−OP(OH)3)、フェノール系ヒドロキシ基及び芳香族チオール基のプロトン化が生じる。プロトン化された基は、次いで、典型的には、本発明によるコポリマーAのオキサゾリン基と開環しながら反応し、これは所望の架橋を引き起こす。
【0116】
本発明による架橋方法には、コポリマーA及び多官能性ポリマーPの上述の好ましい実施形態が相応して当てはまる。本発明による架橋方法についても同様に、次に記載する実施形態が当てはまる。
【0117】
更に、本発明は、
i) 上述の少なくとも1種のコポリマーA;このコポリマーAは、次の:
a) C1〜C20−アルキル(メタ)アクリラート及びC8〜C20−ビニル芳香族化合物からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(a);
b) 少なくとも1つのスルホン酸基(−SO3M)を含む少なくとも1種のエチレン系不飽和のモノマー(b);
c) 少なくとも1つのオキサゾリン基を含む少なくとも1種のエチレン系不飽和のモノマー(c);
d) 及び任意に少なくとも1種の別のモノマー(d)及び/又は添加物;を含み、
この場合、モノマー(b)及び(c)の割合は、合計で、コポリマーA中のモノマーの全体の量を基準として、50質量%未満であり;
ii) カルボキシ基(−COOH)、リン酸基(−OP(OH)3)、フェノール系ヒドロキシ基及び芳香族チオール基から選択される、好ましくはカルボキシ基(−COOH)から選択される少なくとも2つの官能基を含む少なくとも1種の多官能性ポリマーP、及び
iii) 少なくとも1種の揮発性の塩基性化合物、殊にアンモニア
を含む組成物、殊に被覆組成物及び/又は結合剤組成物に関する。
【0118】
コポリマーA及び多官能性ポリマーPについて、上述の好ましい実施形態が相応して当てはまる。
【0119】
殊に、本発明は、
i) 上述の少なくとも1種のコポリマーA、
ii) (メタ)アクリル酸と、スチレン、α−メチルスチレン、C1〜C12−アルキル(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリルニトリルから選択される少なくとも1種の別のモノマーとを含むラテックスである、少なくとも1種の多官能性ポリマーP、及び
iii) 少なくとも1種の揮発性の塩基性化合物、殊にアンモニア
を含む組成物、殊に被覆組成物及び/又は結合剤組成物に関する。
【0120】
殊に、本発明は、
i) 上述の少なくとも1種のコポリマーA、全体の組成物を基準として10〜80質量%、好ましくは20〜50質量%、
ii) 少なくとも1種の多官能性ポリマーP、全体の組成物を基準として10〜80質量%、好ましくは20〜50質量%、
iii) 少なくとも1種の揮発性の塩基性化合物、殊にアンモニア、全体の組成物を基準として0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、
iv) 少なくとも1種の溶媒、殊に水及び/又は極性有機溶媒、殊にメタノール、エタノール、イソプロパノール及び酢酸エステルから選択される極性有機溶媒、全体の組成物を基準として0〜79.9質量%、好ましくは0〜60質量%
を含む組成物に関する。
【0121】
本発明は、更に、上述の組成物を室温で放置する及び/又は60〜200℃、好ましくは80〜150℃の温度に加熱する、架橋方法に関する。
【0122】
典型的には、上述の組成物の架橋は、少なくとも1種の揮発性の塩基性化合物の気化及び/又は蒸発により行われ、この場合、pH値の低下及び多官能性ポリマーPの上述の官能基、例えばカルボキシ基(−COOH)、リン酸基(−OP(OH)3)、フェノール系ヒドロキシ基及び芳香族チオール基のプロトン化が生じる。プロトン化された基は、次いで、典型的には、本発明によるコポリマーAのオキサゾリン基と開環しながら反応することができ、これは所望の架橋を引き起こす。
【0123】
本発明による架橋方法には、コポリマーA及び多官能性ポリマーPの上述の好ましい実施形態が相応して当てはまる。
【0124】
更に、本発明は、
i) 上述の少なくとも1種の本発明によるコポリマーA、
ii) カルボキシ基(−COOH)、リン酸基(−OP(OH)3)、フェノール系ヒドロキシ基及び芳香族チオール基から選択される、好ましくはカルボキシ基(−COOH)から選択される少なくとも2つの官能基を含む少なくとも1種の多官能性ポリマーP、及び
iii) 少なくとも1種の揮発性の塩基性化合物、殊にアンモニア
を含む上述の組成物の、接着剤、シーラント、プラスチック化粧塗り、紙用塗工剤、繊維不織布、フレキシブルな屋根用被覆及び塗料の製造における並びに砂用凝固剤における結合剤として、繊維用助剤又は皮革用助剤及び耐衝撃性改良剤の製造における構成成分として、又は鉱物性結合剤及びプラスチックの改質のための使用に関する。
【0125】
上述の好ましい実施形態が重要である。
【0126】
本発明を、次の実施例及び特許請求の範囲により詳細に説明する。
【0127】
次の略語が使用される:
AMPS−Na 2−アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸−ナトリウム塩
iPOx イソプロペニルオキサゾリン
IT 内部温度
MMA メチルメタクリラート
nBA n−ブチルアクリラート
MPEG MA メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−メタクリラート
VE水 完全脱塩水
IPA イソプロパノール
h 時間
【0128】
実施例1 − AMPSコポリマーの製造
アンカー型攪拌機、熱電素子及び還流冷却器を備えた2Lガラス反応器中で、VE水635g、アゾラジカル開始剤(Wako V 59、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))16g及びイソプロパノール680gからなる装入物を、軽度なN2流で70℃のITに加熱した。達成されたITで次の供給を開始した:
供給物1: 2−アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸−ナトリウム塩(AMPS−Na、水中50%の溶液) 63g、VE水 10g
供給物2: n−ブチルアクリラート 88g及びメチルメタクリラート 104g
供給物3: イソプロペニルオキサゾリン 96g
この供給物を2hにわたり供給した。供給が終わった後に、70℃で9時間後重合させた。引き続く水蒸気蒸留の後に、不透明なポリマー溶液(コポリマーP1)が得られた。
【0129】
上述の試験実施と同様にして、3種の別のコポリマーP2、P3及びP4を製造した。コポリマーP1〜P4の製造のための反応バッチは、次の表1にまとめられている。
【0130】
表1:AMPSコポリマーの製造
【表1】
コポリマーP1及びP4は、本発明によるコポリマーであり、コポリマーP2及びP3は比較例である。
【0131】
実施例2(比較例) − ポリエチレングリコールを含むコポリマー(ポリマーP5)の製造
アンカー型攪拌機、熱電素子及び還流冷却器を備えた2Lガラス反応器中で、VE水1512g及びアゾラジカル開始剤(Wako V 50、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)18gからなる装入物を、軽度なN2流で60℃のITに加熱した。達成されたITで次の供給を開始した:
供給物1: n−ブチルアクリラート 90g及びメチルメタクリラート 90g
供給物2: イソプロパノール 108g及びMPEG MA 72g
この供給物を2hにわたり供給した。供給が終わった後に、60℃で9時間後重合させた。コポリマーP5の白色の分散液が得られた。
【0132】
実施例3: モデル分散液(結合剤I)の合成
次のモノマーエマルションを製造した:
水 287.96g
12/C14−アルキルポリエチレングリコールスルファート(BASF SE社のDisponil FES 77、水中32%の溶液) 28.13g
16/C18−脂肪アルコールポリエチレングリコール(BASF SE社のLutensol AT18、水中20%の溶液) 15.0g
メチルメタクリラート 282g
n−ブチルアクリラート 300g
アクリル酸 12g及び
アクリルアミド(水中50%の溶液) 12g
アンカー型攪拌機、熱電素子及び還流冷却器を備えた2リットル反応器中に、水210.5gを、ポリスチレンシードラテックス(BASF SE、水中33%の溶液)21.82g及び4%のペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液15.0gと一緒に装入し、90℃で10分間攪拌した。引き続き、更に、モノマーエマルション937.09g及び更に7%のペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液60gを、3hの期間にわたり供給した。供給が終わった後に、この溶液を更に90℃で60分間攪拌した。引き続き、この分散液を室温に冷却し、25%のアンモニア溶液でpH8.1に中和した。
【0133】
この分散液は、49.9%の固体含有率を示し、平均粒度(流体力学的クロマトグラフィーにより測定)は139nmであった。ガラス転移温度Tgは16.9℃にあった。
【0134】
実施例4: 繊維結合用途のためのモデル分散液(結合剤II)の合成
次のモノマーエマルションを製造した:
水 142.5g
3%のピロリン酸ナトリウム溶液 25.0g
ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸のナトリウム塩(Dow ChemicalのDowfax 2A1、水中45%の溶液) 3.33g
ラウリルポリエトキシ硫酸ナトリウム(BASF SEのDisponil FES27、水中28%の溶液) 26.79g
スチレン 395.48g
n−ブチルアクリラート 303.75g
アクリル酸 36.75g及び
メタクリルアミド(水中15%の溶液)93.5g
アンカー型攪拌機、熱電素子及び還流冷却器を備えた2リットル反応器中に、水427.21gを、ポリスチレンシードラテックス(BASF SE、水中33%)14.09g及び7%のペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液17.7gと一緒に装入し、95℃で5分間攪拌した。引き続き、モノマーエマルション1027.09g及び7%のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液41.25gを140分の期間にわたり供給した。供給が終わった後に、この溶液を更に90℃で15分間攪拌した。
【0135】
75℃に冷却後に、tert−ブチルヒドロペルオキシド溶液(水中10%の溶液)7.5g及びアセトンビスルフィット(水中13.3%の溶液)5.08gを60分間にわたり供給した。引き続き、この分散液を室温に冷却した。
【0136】
この分散液は、49.3%の固体含有率を示し、粒度(流体力学的クロマトグラフィーにより測定)は186nmであった。ガラス転移温度(DSCにより測定)は36℃にあった。
【0137】
実施例5: コポリマーの膨潤率の決定
架橋した塗膜の製造のために、実施例3によるモデル分散液(結合剤I)を、それぞれコポリマーP2、P3又はP4(オキサゾリン−コポリマー)のそれぞれ1つを含むポリマー溶液と混合した。この場合、結合剤及びオキサゾリン−コポリマーの量を、カルボン酸基のオキサゾリン基に対する等モル比が生じるように選択した。
【0138】
この調製物を、20質量%の固体含有率に希釈し、塗膜形成のためにシリコーン型に注ぎ込んだ。塗膜形成を、a)1週間の期間にわたり、b)4週間の期間にわたり、又はc)1週間の期間にわたり、引き続き100℃で1時間の熱処理で行った。
【0139】
こうして得られた塗膜を、その膨潤性に関してテトラヒドロフラン(THF)中で決定した。このために、塗膜を室温で24h、THF中で実験室振盪器で振盪した。引き続き、塗膜をTHFから取り出し、たたくように拭って乾かし、秤量した。
【0140】
塗膜の膨潤率を、次の式にしたがって決定する:
膨潤率[%]=膨潤した塗膜の質量/乾燥した塗膜の質量×100
低い膨潤率は、塗膜の高い架橋を意味する。
【0141】
この結果は、次の表2にまとめられている:
表2: THF中の塗膜の膨潤率
【表2】
【0142】
本発明によるコポリマーP4は、殊に4週間にわたり又は100℃での熱処理のもとで製造した塗膜において、iPOx及びAMPS−Naの割合が50質量%以上を示す比較試験P2及びP3と比べて低い膨潤率を示す。本発明によるコポリマーP4は、殊に、4週間にわたり又は100℃での熱処理のもとで製造した塗膜において、比較例P5(MPEG/MAコポリマー)と比べていくらか低い又は同じ膨潤率を示す。
【0143】
実施例6: 機械特性の調査
600μmの厚さを示す塗膜を製造した。結合剤として、実施例3によるモデル分散液(結合剤I)を使用した。
【0144】
この塗膜から試験体S3Aを打ち抜き、ISO37による引張試験を行った。この場合、引張応力σ(Pa又はMPaで示す)を伸び率(道程)に依存して決定した。クランプ力は2barであり、試験速度は100mm/分であった。この引張試験は23℃で実施した。
【0145】
更に、市場で入手可能な架橋剤と比較するために、オキサゾリンで官能化されたMPEG−MAコポリマーであるEpocros(登録商標)WS700(日本触媒)を使用した。
【0146】
引張試験の結果は、次の表3にまとめられている:
表3: 引張伸び試験
【表3】
【0147】
実施例7: 繊維結合用途についての調査
実施例4によるモデル分散液(結合剤II)を、オキサゾリン−コポリマーP4及びP5と混合した。この場合、オキサゾリン−コポリマーの0.4mol eq量を、配合に使用した酸量を基準として添加した。
【0148】
比較として、市場で入手可能な、ホルムアルデヒド不含の自己架橋性分散液、Acronal(登録商標)2416を使用した。
【0149】
記載された架橋性分散液を、含浸された濾紙の製造のために使用し、この場合、原紙として103g/m2の面積質量を示すセルロース濾紙を使用した。
【0150】
水性結合剤液(含浸)を施すために、全紙を、縦方向でエンドレス−PES−スクリーンベルトを用いて、2.0m/分のベルト走行速度で、それぞれ10.0質量%の水性結合剤液に導通させた。水性結合剤液の吸収によって、塗工量を206g/m2(固体として計算して結合剤20.6g/m2に相当)に調節した。こうして得られた含浸された濾紙を、Mathis炉内で支持体としてプラスチックネット上で90℃で5分間、最大熱風流で乾燥し、直接引き続いてMathis炉内で160℃で1分間、最大熱風流で架橋させた。室温に冷却した後、それぞれ10の試験体を、6mm幅の試験部を備えた115mmの長さのダンベル型に、走行方向に対して縦及び横に打ち抜いた。得られた試験体を、引き続き23℃及び50%の相対湿度で24時間、空調室内で貯蔵した。
【0151】
機械安定性についての次に記載する調査を実施した。この結果は表4にまとめられている。
【0152】
i) 極限引張強さ及び伸び率の決定
引張力の決定を、標準雰囲気(23℃及び50%の相対湿度)でZwick-Roell社のTyp Z005の引張試験機で行った。この場合、試験体をテンション装置中に垂直方向で導入したため、露出した張られた長さは70mmであった。引き続き、張られた試験体を50mm/分の速度で互いに反対方向に試験体が破断するまで引っ張った。極限引張強さの記載を、N/mm2で行った。縦方向及び横方向でそれぞれ5回の測定を行った。表4中に記載された値は、それぞれこれらの測定の平均値である。
【0153】
伸び率は、張られた長さから出発して、試験体の破断が測定された長さの変化によって算出した。伸び率の記載を、%で行った。表4に記載された値は、5つの個々の測定からの平均値である。
【0154】
ii) 湿潤極限引張強さ及び伸び率の決定
湿潤極限引張強さの決定のために、試験体を、アルキルスルホン酸ナトリウム(乳化剤E30)の2%溶液中で2分間貯蔵した。その後、過剰な溶液を木綿織物でたたくようにして拭った。湿潤極限引張強さの決定は、Zwick-Roell社のTyp Z005の引張試験機で行った。この場合、試験体をテンション装置中に垂直方向で導入したため、露出した張られた長さは70mmであった。引き続き、張られた試験体を50mm/分の速度で互いに反対方向に試験片が破断するまで引っ張った。極限引張強さの記載を、N/mm2で行った。縦方向及び横方向でそれぞれ5回の測定を行った。表4中に記載された値は、それぞれこれらの測定の平均値である。
【0155】
伸び率は、張られた長さから出発して、試験体の破断が測定された長さの変化によって算出した。伸び率の記載を、%で行った。表4に記載された値は、5つの個々の測定からの平均値である。
【0156】
iii) 熱間引張力及び伸び率の決定
熱間引張力の決定のために、含浸された濾紙の全紙から走行方向に対して縦方向で50×200mmの5つの試験ストリップを打ち抜いた。
【0157】
熱間引張力の決定をZwick-Roell社のTyp Z010の引張試験機で行い、その試験機のテンション装置は加熱可能なチャンバ内に存在した。試験体を、150℃に予熱したチャンバ内で、テンション装置中に垂直方向に導入したため、露出した張られた長さは100mmであった。目標温度(149℃に再達成してから)で1分間の待機時間の後、張られた試験ストリップを50mm/分の速度で、互いに反対方向に試験ストリップが破断するまで引っ張った。熱間引張力の記載を、N/m(サンプル幅に関して)で行った。それぞれ5回の個別の測定を行った。表4中に記載された値は、それぞれこれらの測定の平均値である。
【0158】
伸び率は、張られた長さから出発して、試験体の破断が測定された長さの変化によって算出した。伸び率の記載を、%で行った。表4に記載された値は、5つの個々の測定からの平均値である。
【0159】
iv) 破裂圧の決定
破裂圧の決定を、破裂圧試験モデルを備えたZwick/Roell社のTyp Z005の試験機で行った。0.86mmの厚みを示す膜を使用し、これは30kPaの圧力で約9.0mm膨らんだ。液圧システムの送り量は95ml/minであった。破裂圧の決定は、DIN ISO 2758及びDIN ISO 2759に記載されている。
【0160】
破裂圧の決定のために、含浸された濾紙の全紙から175×230mmの5つのサンプルを切り出した。これらのサンプルを、標準雰囲気(23℃及び50%の相対湿度)で少なくとも15h調整した。
【0161】
これらのサンプルを、弾性の円形の膜上に締め付けたため、これらのサンプルは膜によって自由に膨らむことができた。この膜を液圧液体の均一な送り量でサンプルが破裂するまで膨らませた。最大に使われた圧力を、破裂圧としてkPaで表す。
【0162】
湿潤試験のために、サンプルを、アルキルスルホン酸ナトリウム(乳化剤E30)の2%溶液中で2分間貯蔵した。引き続き、これを木綿織物でたたくように拭って乾かし、かつ上述のように測定した。表4に記載された値は、5つの個々の測定からの平均値である。
【0163】
表4: 含浸された濾紙の機械的調査についての結果
【表4】
【0164】
本発明によるコポリマーP4を架橋剤として使用した場合、含浸された濾紙は、試験V7−2及びV7−3と比べて明らかに改善された機械的安定性を示す。本発明による架橋剤は、改善された繊維結合を示す。