特許第6640220号(P6640220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640220
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】プラジカンテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20200127BHJP
   A61P 33/10 20060101ALN20200127BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALN20200127BHJP
【FI】
   C07D471/04 120
   !A61P33/10
   !A61K31/4985
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-527334(P2017-527334)
(86)(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公表番号】特表2017-535565(P2017-535565A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】EP2015002296
(87)【国際公開番号】WO2016078758
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2018年11月16日
(31)【優先権主張番号】14003934.8
(32)【優先日】2014年11月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】ヴェヒトラー アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】サレハ−カシム ハディア
(72)【発明者】
【氏名】ジャスパー クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】コルブ イェルン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤール ダヴィド
【審査官】 伊藤 佑一
(56)【参考文献】
【文献】 EBBERS E J; ET AL,CONTROLLED RACEMIZATION OF OPTICALLY ACTIVE ORGANIC COMPOUNDS: PROSPECTS FOR 以下備考,TETRAHEDRON,NL,ELSEVIER SCIENCE PUBLISHERS,1997年 7月14日,VOL:53, NR:28,PAGE(S):9417 - 9476,ASYMMETRIC TRANSFORMATION,URL,http://dx.doi.org/10.1016/S0040-4020(97)00324-4
【文献】 MUNEER AHAMED; ET AL,THE OUTCOME OF THE OXIDATIONS OF UNUSUAL ENEDIAMIDE MOTIFS IS GOVERNED BY THE STABILITIES 以下備考,PLOS ONE,PUBLIC LIBRARY OF SCIENCE,2012年10月19日,VOL:7, NR:10,PAGE(S):E47224-1/7,OF THE INTERMEDIATE IMINIUM IONS,URL,http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0047224
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基を使用することを特徴とする鏡像体上純粋な又は鏡像体濃縮されたプラジカンテル:
【化1】
(I)
のラセミ化方法であって、前記塩基がターシャリーアルカリアルコキシドである、方法
【請求項2】
ターシャリーアルカリアルコキシドがカリウムtert.-ブトキシドであり、ラセミ化に使用される、請求項記載の方法。
【請求項3】
ラセミ化を双極性非プロトン性反応媒体中で行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
双極性非プロトン性反応媒体がN-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン及びあらゆる比のこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項記載の方法。
【請求項5】
ラセミ化を-50 ℃〜+40 ℃の範囲の温度で行なう、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ラセミ化に使用される塩基の量が0.05当量〜1.5 当量の範囲である、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
・ターシャリーアルカリアルコキシドをラセミ化に使用し、
・双極性非プロトン性反応媒体がN-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン及びあらゆる比のこれらの混合物からなる群から選ばれ、
・ラセミ化に使用される塩基の量が0.05当量〜1.5 当量の範囲であり、
・ラセミ化を-50 ℃〜+40 ℃の範囲の温度で行なう、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項8】
下記の工程:
a.請求項1からのいずれかに記載の鏡像体上純粋な又は鏡像体濃縮された(S)-プラジカンテルのラセミ化、及び
b.a)で得られた鏡像体(S)-(I) 及び(R)-プラジカンテルの混合物のキラル分割
を含む、鏡像体上純粋な又は鏡像体濃縮された形態の(R)-プラジカンテルの製造方法。
【請求項9】
工程b)のキラル分割をクロマトグラフィーを使用して行なう、請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塩基性条件を使用する鏡像体上純粋な又は鏡像体濃縮されたプラジカンテルのラセミ化方法及びそのラセミ化方法を含む、鏡像体上純粋な又は鏡像体濃縮された形態のプラジカンテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駆虫性プラジカンテルは昨世紀の80年代の初期にラセミ体として登録され、認可され、商業化されていた。しかしながら、その活性分子(ユートマー)は(R)-鏡像体である(P.Andrews, H.Thomas, R.Pohlke, J.Seubert 著Medical Research Reviews 3, 147(1983))。
ラセミ体のプラジカンテルは多くの方法により入手し得る (Domling ら著ChemMedChem 2010, 5, 1420 - 1434を参照のこと) 。殆どの開発された技術規模の方法は初期のMerck 方法及びShing-Poong 方法又はその改良の一つである。ラセミ体のプラジカンテルは不快な程に苦い味を有する。これは特に幼児の治療において許容上の問題をもたらす。(R)-プラジカンテルユートマーは(S)-プラジカンテルディストマーよりも苦くない味を有すると考えられる (T.Meyer ら著 (2009) PLoS Negl Trop Dis 3(1): e357)。こうして、鏡像体上純粋な(R)-プラジカンテルのコスト有効な製造方法についての強い要望がある。
多くの努力が過去二十年にわたって(R)-プラジカンテル又はその類似体の製造方法を開発するのに費やされていた。これらの方法は二つのグループ、第一にエナンチオ選択的合成経路及び第二にキラル分割と組み合わせてラセミ方法を使用する方法に分けられる。今まで、二三のエナンチオ選択的方法が報告されていたが、それらの全てが労力を要し、しかもコストがかかる。
【0003】
Woelfle らは(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸によるプラジカンテル前駆体プラジカンアミン (1,2,3,6,7,11b-ヘキサヒドロ-ピラジノ[2,1-a]イソキノリン-4-オン) のキラル分割を記載している (“プラジカンテルの分割”, M.Woelfle, J-P.Seerden, J.de Gooijer, Krees Pouwer, P.Olliaro, M.H.Todd 著, (2011) PLoS Negl.Trop.Dis 5(9):e1260.doi:10.1371/ journal.pntd.000260)。この分割は二つの結晶化工程が充分に高い光学純度に達するのに必要であるという事実のためにかなり低い収率に達する。この操作と関連する別の問題は順序:アシル化、酸化脱水素、水素化そして最後に脱アシル化を使用して行い得る(S)-プラジカンアミンの労力を要し、かつ時間を浪費する循環である。この他に、(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸の循環が問題を生じる。何とならば、それがケン化及びエステル交換を受け易い傾向があるからである。両方の局面は製造規模で特に困難である。
Alberto Cedillo Cruzら著Tetrahedron: Asymmetry (2014), 25(2), 133-140 はアキラル相による、ジアステレオマーナプロキセン-(R)/(S)-プラジカンアミド, ((11bS)- 及び(11bR)- [(2S)-2-(6-メトキシ-2-ナフタレニル)-1-オキソプロピル]-1,2,3,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2-4H-ピラジノ[2,1-a]イソキノリン-4-オン(これらは(S)-ナプロキセン-酸クロリド及びラセミ体のプラジカンアミンから合成される))のクロマトグラフィー分離を記載している。(R)-プラジカンアミンを得るために、(11bR)-[(2S)-2-(6-メトキシ-2-ナフタレニル)-1-オキソプロピル]-1,2,3,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2-4H-ピラジノ[2,1-a]イソキノリン-4-オン中の共有結合が苛酷な条件(85%-リン酸、150 ℃) 下で開裂される必要がある。この方法は労力を有し、しかも経済的ではない。更に、望ましくない(S)-プラジカンアミンの有効な循環がない。
ラセミ体のプラジカンテルはクロマトグラフィーによりその鏡像体に分離し得る。模擬向流(模擬移動床)クロマトグラフィー (Chi-Bung Chin ら著Journal of Chromatography A, 734 (1996) 247-258, J. Pharm. Sciences 93, 3039 (2004), J. Chrom 634, 215(1993)) が大規模で特に有効である。最終段階におけるキラルAPI のキラル分離の欠点は、循環のための操作が存在しない限り、望ましくない鏡像体、ディストマーが廃棄物であるということである。(S)-プラジカンテルの長たらしく、実際に適用し得ない順序:選択的脱水素(硫黄による酸化、Ahmed Muneerら著PLos One 7(10), e 47224, 2012) 続いて水素化の他に、(S)-プラジカンテルについての容易に適用可能な循環操作が存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は(S)-プラジカンテルの循環に有効な方法を提供することであり、この方法は大規模でさえも信頼できる程に働き、しかもコスト有効であり、しかも鏡像体上純粋な又は鏡像体濃縮された形態のプラジカンテルの製造方法で利用し得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くことに、この目的は塩基を使用する式 (I):
【化1】
(I)
の鏡像体純粋な又は鏡像体濃縮されたプラジカンテルのラセミ化方法により解決された。
【0006】
プラジカンテルはキラリティーの中心を有し、従って、それは2種の鏡像体形態(S)-(I) 及び(R)-(I) で生じる。
【化2】
【0007】
本発明のラセミ化方法は簡単かつ有効な循環方法を提供し、ラセミ体(これは既知の高度に有効な方法により生成し得る)のキラル分離により鏡像体上純粋な又は鏡像体濃縮されたプラジカンテル (特に(R)-プラジカンテル) を調製するための経済的前提条件である。これらの既存の方法(例えば、Shin-Poong方法又は初期のMerck 方法) は良く確立されており、大規模でさえも高度に最適化されている。
本発明の目的のために、“鏡像体の混合物”という用語は鏡像体の比が50:50 であるラセミ混合物だけでなく、鏡像体濃縮された混合物を含む。“鏡像体上純粋な”という用語は一種の鏡像体が>95%ee、好ましくは>98%eeの光学純度で存在することを意味する。こうして、“鏡像体濃縮された”はここでは鏡像体の比が50:50 より大きいが、97.5:2.5より小さい、2種の鏡像体の混合物を表す。
一般に、両方の鏡像体形態(S)-(I) 及び(R)-(I) は本発明の方法でラセミ化し得る。しかしながら、明らかに本発明の特別な重要な実施態様はラセミ化に使用される鏡像体がプラジカンテルの(S)-鏡像体 (S)-(I)である方法を含む。この場合には、その方法が生成物の望ましくない(S)-鏡像体を循環することにより鏡像体上純粋な又は鏡像体濃縮された(R)-プラジカンテルの調製方法を改良するのに利用し得る。
【0008】
本発明の方法は出発物質が完全に、又は部分的にラセミ化される方法を含む。部分的ラセミ化は副反応を低く保つのに有益であるかもしれず、このような操作が、例えば、サイクルの操作で依然として有効に使用されてもよく、この場合、ラセミ化がキラル分割工程と組み合わされる。
大いに予期しないことに、本発明者らは鏡像体上純粋な(R)-又は(S)-プラジカンテルが適当な条件下で適当な塩基による処理によりラセミ化することを見い出した。異なる塩基が適当な塩基性条件を得るのに使用されてもよい。しかしながら、塩基の適切な選択が可能な副反応(これらは出発物質の分解を通常もたらす)に鑑みて重要な因子であることが示された。
本発明の非常に重要な実施態様は、ラセミ化に使用される塩基がターシャリーアルカリアルコキシドである方法を含む。ターシャリーアルカリアルコキシド、例えば、アルカリtert.-ブトキシド又はアルカリtert.-ペントキシドだけでなくそれらの高級同族体が容易に入手し得る通常の試薬であるが、たいていは、それらは低レベルの望ましくない分解反応で非常に良好な収率でラセミ化反応を行なうことを可能にする。本発明の特別な有利な実施態様において、ターシャリーアルカリアルコキシドがナトリウム又は好ましくはカリウムtert.-ブトキシドである。この試薬は非常に短い反応時間内で著しく高い収率でラセミ化を行なうことを可能にする。
【0009】
本発明の別の特別な実施態様において、ラセミ化が双極性非プロトン性反応媒体、例えば、エーテル又はN-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミドもしくはジメチルスルホキシド中で行われる。特に、双極性非プロトン性反応媒体がN-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン及びあらゆる比のこれらの混合物からなる群から選ばれる。好適な混合物は、例えば、テトラヒドロフランとジメチルスルホキシドの混合物(特に0.3 当量〜1.0 当量のジメチルスルホキシドと組み合わせてのテトラヒドロフラン)を含み、これはラセミ化反応を促進するのに有益であるかもしれない。しかしながら、双極性非プロトン性媒体がテトラヒドロフランであることが最も好ましい。望ましくない副反応は反応混合物が水をほんのわずか含み、又は水を含まない場合(例えば、含水量:0.001 %-0.1%)に減少し得ることが注目された。
ラセミ化反応に影響するその他のパラメーターは塩基化学量論及び温度である。本発明の重要な実施態様は、ラセミ化方法に使用される塩基の量が0.05当量〜1.5 当量、好ましくは0.3 当量〜1.0 当量、最も好ましくは0.4 当量〜0.8 当量の範囲である方法を含む。更に、ラセミ化が-50 ℃〜+40 ℃、更に好ましくは-25 ℃〜+25 ℃、最も好ましくは-20 ℃〜-5℃の温度で行なわれることが好ましい。
【0010】
結局、本発明の非常に特別な実施態様は塩基性条件を使用する下記の式 (I)の鏡像体上純粋な又は鏡像体濃縮されたプラジカンテルのラセミ化方法に関する。
【化3】
(I)
【0011】
この場合、
・ターシャリーアルカリアルコキシド塩基、好ましくはナトリウム又はカリウム tert.-ブトキシド、更に好ましくはカリウム tert.-ブトキシドがラセミ化に使用され;
・双極性非プロトン性反応媒体がN-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン及びあらゆる比のこれらの混合物からなる群から選ばれ、反応媒体がテトラヒドロフランであることが好ましく;
・ラセミ化に使用される塩基の量が0.05当量〜1.5 当量、好ましくは0.3 当量〜1.0 当量、最も好ましくは0.4 当量〜0.8 当量の範囲であり;
・ラセミ化が-50 ℃〜+40 ℃、好ましくは-25 ℃〜+25 ℃、最も好ましくは-20 ℃〜-5℃の範囲の温度で行なわれる。
この特別な実施態様において、ラセミ化に使用される鏡像体が特に(S)-プラジカンテルであってもよい。先に示されたように、反応混合物がほんのわずかな水を含み、又は水を含まない場合(例えば、含水量:0.001 %-0.1%)に、副反応が減少されるかもしれない。この特別なラセミ化方法を利用してラセミ化によりプラジカンテルの分離された望ましくない(S)-鏡像体を循環することによりラセミアプローチに基づく鏡像体上純粋な又は鏡像体濃縮された(R)-プラジカンテルの調製方法を改良することが好ましい。
【0012】
本発明の別の重要な局面は下記の工程:
a.上記された本発明の鏡像体上純粋な又は鏡像体濃縮された(R)-プラジカンテルのラセミ化;及び
b.a)で得られた鏡像体(S)-(I) 及び(R)-(I) の混合物のキラル分割
を含む、鏡像体上純粋な又は鏡像体濃縮された形態の(R)-プラジカンテルの製造方法に関する。
本発明のラセミ化とキラル分割工程の組み合わせは非常に有益な循環操作を提供し、これは本発明の製造方法内で1回のみで、又は一列で数回行なわれてもよい。望ましくない鏡像体の循環は廃棄物を減少し、こうして総合の効率を有意に改良する。本発明の方法は鏡像体純粋な又は鏡像体濃縮された(R)-プラジカンテルの調製に利用し得る簡単かつ有効な方法を提供し、これはラセミ体のプラジカンテルの調製のための既存の非常に良く確立された方法に統合し得る。こうして、本発明の特別な重要な実施態様は、工程a)のラセミ化に使用される(S)-鏡像体がラセミ体合成経路により得られるプラジカンテルのタセミ体混合物の既に行なわれたキラル分割から誘導される方法を含む。
本発明によれば、ラセミ化方法a)で得られる物質がキラル分割工程b)で直接適用されてもよいだけでなく、前もって精製されてもよい。
式 (I)の化合物のキラル分割は、例えば、クロマトグラフィー分離(特に模擬床クロマトグラフィー (SMB))のような異なる方法を使用して行ない得る。例えば、Chi-Bung Chin ら著Journal of Chromatography A, 734 (1996) 247-258, J. Pharm. Sciences 93, 3039 (2004), J. Chrom 634, 215(1993)) に記載された方法が使用されてもよい。
【実施例】
【0013】
実験部分:
略号:
ee 鏡像体過剰率
HPLC 高性能液体クロマトグラフィー
KOtBu カリウム tert.-ブトキシド
mL ミリリットル
(S)-PZQ (S)-プラジカンテル
(R)-PZQ (R)-プラジカンテル
RT 室温
THF テトラヒドロフラン
【0014】
実施例 1: HPLCを使用する相当するラセミ体混合物のキラル分割による(R)-2-シクロヘキサンカルボニル-1,2,3,6,7,11b-ヘキサヒドロ-ピラジノ[2,1-a]イソキノリン-4-オン ((R)-プラジカンテル) の調製
【化4】
ラセミ体のプラジカンテルは多くのキラル静止相を使用する分取クロマトグラフィーで良く分離/分割し得る。高い生産性が分離条件の最適化後に得られた。
条件の例:
静止相: Chiralpak AD (20μm)
波長: 230nm
溶離剤: メタノール
静止相: Chiralpak ID (20μm)
波長: 230nm
溶離剤: アセトニトリル/メタノール
静止相: Chiralpak IA又はIC (20μm)
波長: 230nm
溶離剤:メタノール/ジクロロメタン
【0015】
実施例 2: (S)-プラジカンテルのラセミ化
カリウムtert.-ブトキシド8.94g (79.7ミリモル) を不活性雰囲気(酸素及び水分を排除した)下で乾燥THF 150mL 中で撹拌下で溶解する。-10 ℃に冷却した後、温度を-7℃より低く保って乾燥THF 130mL 中の(S)-プラジカンテル (HPLC純度99.6%, ee=98.2%(S)) 50g (159.4ミリモル) の溶液を滴下して添加する。-10 ℃で4時間撹拌した後、その混合物を脱イオン水 300mL中の酢酸27g (449.6ミリモル) の氷冷溶液に注ぐ。更に30分間撹拌し、その間にその溶液を放置して室温に徐々に温めた後、ジクロロメタン 250mLを添加し、相を分離し、水層をジクロロメタン150mL で2回抽出する。次いで合わせた有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。濾過し、蒸発させた後、明オレンジ色の結晶性残渣45.75g (146.4 ミリモル) を単離し、ラセミ体のプラジカンテル (理論値の92%, HPLC純度96.2%, ee=2.5%(R)) として特性決定する。
【0016】
実施例 3: 異なる反応条件を使用する(S)-プラジカンテルのラセミ化
表1は異なる反応条件下の(S)-プラジカンテルのラセミ化で得られる幾つかの結果を例示する。
【表1】