特許第6640401号(P6640401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6640401
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】ヒートシンク
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20200127BHJP
   F28D 15/04 20060101ALI20200127BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20200127BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20200127BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   F28D15/02 L
   F28D15/02 101A
   F28D15/02 102H
   F28D15/04 B
   H01L23/36 Z
   H01L23/46 B
   H05K7/20 D
   H05K7/20 R
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-79602(P2019-79602)
(22)【出願日】2019年4月18日
【審査請求日】2019年6月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 陽介
(72)【発明者】
【氏名】川畑 賢也
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 義勝
(72)【発明者】
【氏名】三浦 達朗
(72)【発明者】
【氏名】青谷 和明
(72)【発明者】
【氏名】中村 敏明
【審査官】 飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−102889(JP,A)
【文献】 特開平10−209356(JP,A)
【文献】 特開2016−092173(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0163798(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00−15/06
H01L 23/34−23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と熱的に接続される受熱部を有する熱輸送部材と、該熱輸送部材の放熱部にて接続された、複数の第2の放熱フィンと、を備え、
前記熱輸送部材が、前記受熱部から前記放熱部まで連通し、且つ作動流体が封入された一体である内部空間を有し、
前記受熱部の内部空間に、複数の板状フィンが前記熱輸送部材の内面上に立設されていることで形成された受熱部内面表面積増大部と、前記複数の板状フィンと面接触する第1の平板部、該第1の平板部と対向した第2の平板部及び該第1の平板部と該第2の平板部を繋ぐ第3の平板部を有する支持部材と、が設けられているヒートシンク。
【請求項2】
前記熱輸送部材の放熱部にて接続された管体と、該管体と熱的に接続された、複数の第1の放熱フィンと、をさらに備え、
前記熱輸送部材の内部空間が、前記管体の内部空間と連通している請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記第1の平板部の面積が、前記第2の平板部の面積よりも大きい請求項1または2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記第3の平板部が、前記熱輸送部材の熱輸送方向に沿って延在している請求項1乃至3のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記第1の平板部の幅方向の一端及び他端からそれぞれ前記第3の平板部が延在し、前記第2の平板部が該第3の平板部から外方向へ延在している請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記第1の平板部の幅方向の一端及び他端からそれぞれ前記第3の平板部が延在し、前記第2の平板部が該第3の平板部から内方向へ延在している請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項7】
前記第1の平板部に貫通口が設けられている請求項1乃至6のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項8】
前記第1の平板部が、平面視において、前記受熱部内面表面積増大部全体を覆っている請求項1乃至7のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項9】
前記管体が、前記第1の放熱フィンの配置方向に沿って延在している請求項2に記載のヒートシンク。
【請求項10】
前記管体の延在方向が、前記熱輸送部材の熱輸送方向と平行ではない請求項2に記載のヒートシンク。
【請求項11】
前記管体が、複数設けられ、前記熱輸送部材から複数の方向に延在している請求項2に記載のヒートシンク。
【請求項12】
前記熱輸送部材の少なくとも一面が、平面形状である請求項1乃至11のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項13】
前記熱輸送部材の内部空間に、前記受熱部から前記放熱部へ延在したウィック構造体が収納され、前記管体の内面に、他のウィック構造体が設けられ、前記ウィック構造体と前記他のウィック構造体とが、毛細管力を有する接続部材を介して接続され、
前記熱輸送部材に設けられた前記ウィック構造体の種類と、前記管体に設けられた前記他のウィック構造体の種類と、前記接続部材との種類とが異なる請求項2に記載のヒートシンク。
【請求項14】
前記管体に設けられた前記他のウィック構造体が、前記管体の内面に形成されている複数の細溝である請求項13に記載のヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子部品等を冷却するヒートシンクに関し、特に、優れた耐圧性を有し、軽量化された熱輸送部材を備えたヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高機能化に伴い、電子機器内部には、基板上に電子部品等の発熱体が高密度に搭載されている。電子部品等の発熱体を冷却する手段として、ヒートシンクが使用されることがある。ヒートシンクとして、一般的には、熱輸送部材として機能する管形状のヒートパイプを複数備えたヒートシンク(ヒートパイプ式ヒートシンク)が使用される。
【0003】
ヒートパイプ式ヒートシンクとしては、例えば、複数設けられた管形状のヒートパイプの外周面に突出して平板状の多数の放熱フィンが設けられたヒートパイプ式ヒートシンクがある(特許文献1)。特許文献1のヒートシンクは、複数の管形状のヒートパイプの熱輸送機能によって発熱体の熱を放熱フィンへ輸送し、該放熱フィンから放熱させるように構成されたヒートシンクである。しかし、特許文献1のヒートシンクでは、多数のヒートパイプからなるヒートパイプ群を発熱体に熱的に接続すると、発熱体からの距離によってヒートパイプの受熱量が異なるので、各ヒートパイプの受熱を均一化できず、十分な冷却性能が得られない場合があった。また、各ヒートパイプの外周面にはR部があり、R部外側に生じる空隙はヒートパイプ群の熱輸送に寄与しないので、ヒートパイプ群の受熱部の体積が十分に得られず、やはり、十分な冷却性能が得られない場合があった。
【0004】
また、電子機器の高機能化に伴って発熱体の発熱量が増大していることから、冷却性能を向上させるために、管形状のヒートパイプを扁平加工し、ヒートパイプの扁平部を縦方向にして並列配置することで、ヒートパイプ群の受熱部の体積を増大させることも行われている。
【0005】
一方で、熱輸送部材の内部は減圧処理された密閉空間なので、熱輸送部材のコンテナに大気圧に対する耐圧性を付与することが要求される。コンテナの耐圧性が不足すると、コンテナが大気圧によって変形し、発熱体とコンテナの受熱部間の熱的接続性が損なわれることがある。特に、扁平加工された熱輸送部材等、平面部を有する熱輸送部材では、大気圧による変形で平面性が損なわれ易く、発熱体とコンテナの受熱部間の熱的接続性が損なわれ易い。
【0006】
しかし、熱輸送部材のコンテナに大気圧に対する耐圧性を付与するために、コンテナに十分な肉厚を設けると、コンテナの重量が増してしまい、コンテナに熱的に接続される電子部品等の発熱体にコンテナからの応力がかかってしまう。電子部品等に応力がかかると、電子部品等の性能に悪影響を与えることがある。
【0007】
また、コンテナを肉厚化することに代えて、中実である柱状部材やブロック部材をコンテナの内部空間全体にわたって収容して、コンテナに大気圧に対する耐圧性を付与することも検討されている。しかしながら、中実である柱状部材やブロック部材をコンテナの内部空間全体にわたって収容すると、耐圧性は得られるものの、中実である柱状部材やブロック部材は重量が嵩むため、やはり、コンテナに熱的に接続される電子部品等に柱状部材やブロック部材からの応力がかかってしまう。さらには、柱状部材やブロック部材が、コンテナの内部空間に封入された気相の作動流体の流通を阻害してしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−110072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、気相の作動流体の流通性を損なうことなく、大気圧に対する優れた耐圧性を有しつつ軽量化された熱輸送部材を備え、また、熱輸送部材の受熱部における入熱を均一化できるヒートシンクを提供することを目的とする。
【0010】
本発明のヒートシンクの構成の要旨は、以下の通りである。
[1]発熱体と熱的に接続される受熱部を有する熱輸送部材と、該熱輸送部材の放熱部にて接続された、複数の放熱フィンが配置された放熱フィン群と、を備え、
前記熱輸送部材が、前記受熱部から前記放熱部まで連通し、且つ作動流体が封入された一体である内部空間を有し、
前記受熱部の内部空間に、受熱部内面表面積増大部と支持部材が設けられ、該支持部材が、該受熱部内面表面積増大部と面接触しているヒートシンク。
[2]前記発熱体と熱的に接続される前記受熱部を有する熱輸送部材と、該熱輸送部材の放熱部にて接続された管体と、該管体と熱的に接続された、前記複数の放熱フィンが配置された放熱フィン群と、を備え、
前記熱輸送部材が、前記受熱部から前記管体との接続部まで連通し、且つ前記作動流体が封入された一体である内部空間を有し、前記熱輸送部材の内部空間が、前記管体の内部空間と連通し、
前記受熱部の内部空間に、前記受熱部内面表面積増大部と前記支持部材が設けられ、該支持部材が、該受熱部内面表面積増大部と面接触している[1]に記載のヒートシンク。
[3]前記支持部材が、前記受熱部内面表面積増大部と面接触する第1の平板部と、該第1の平板部と対向した第2の平板部と、該第1の平板部と該第2の平板部を繋ぐ第3の平板部と、を有する[1]または[2]に記載のヒートシンク。
[4]前記第1の平板部の面積が、前記第2の平板部の面積よりも大きい[3]に記載のヒートシンク。
[5]前記第3の平板部が、前記熱輸送部材の熱輸送方向に沿って延在している[3]または[4]に記載のヒートシンク。
[6]前記第1の平板部の幅方向の一端及び他端からそれぞれ前記第3の平板部が延在し、前記第2の平板部が該第3の平板部から外方向へ延在している[3]乃至[5]のいずれか1つに記載のヒートシンク。
[7]前記第1の平板部の幅方向の一端及び他端からそれぞれ前記第3の平板部が延在し、前記第2の平板部が該第3の平板部から内方向へ延在している[3]乃至[5]のいずれか1つに記載のヒートシンク。
[8]前記第1の平板部に貫通口が設けられている[3]乃至[7]のいずれか1つに記載のヒートシンク。
[9]前記第1の平板部が、平面視において、前記受熱部内面表面積増大部全体を覆っている[3]乃至[8]のいずれか1つに記載のヒートシンク。
[10]前記管体が、前記放熱フィンの配置方向に沿って延在している[2]に記載のヒートシンク。
[11]前記管体の延在方向が、前記熱輸送部材の熱輸送方向と平行ではない[2]に記載のヒートシンク。
[12]前記管体が、複数設けられ、前記熱輸送部材から複数の方向に延在している[2]に記載のヒートシンク。
[13]前記熱輸送部材の少なくとも一面が、平面形状である[1]乃至[12]のいずれか1つに記載のヒートシンク。
【0011】
上記態様では、熱輸送部材のうち、冷却対象である発熱体と熱的に接続される部位が受熱部として機能し、管体と接続された部位が熱輸送部材の放熱部として機能する。熱輸送部材の受熱部では、作動流体が発熱体から受熱して液相から気相へ相変化し、熱輸送部材の放熱部では、気相の作動流体の一部が潜熱を放出して気相から液相へ相変化する。本発明のヒートシンクの態様では、発熱体の熱は、熱輸送部材によって熱輸送部材の受熱部から熱輸送部材の放熱部まで輸送され、さらには、熱輸送部材の放熱部から管体まで輸送される。また、熱輸送部材が発熱体から受熱することで気相に相変化した作動流体は、熱輸送部材から管体へ流通する。気相の作動流体が熱輸送部材から管体へ流通することで、管体は、熱輸送部材から熱を受け、さらに、熱輸送部材から受けた熱を放熱フィン群へ伝達する。管体が熱輸送部材から受けた熱を放熱フィン群へ伝達する際に、熱輸送部材から管体へ流通した気相の作動流体は液相へ相変化する。管体から放熱フィン群へ伝達された熱は、放熱フィン群からヒートシンクの外部環境へ放出される。また、上記態様では、支持部材、例えば、第1の平板部と、該第1の平板部と対向した第2の平板部と、該第1の平板部と該第2の平板部を繋ぐ第3の平板部と、を有する支持部材が、受熱部の内部空間に設けられ、該支持部材が、コンテナをその内面から支持している。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒートシンクの態様では、受熱部を有する熱輸送部材の内部空間は、複数のヒートパイプが並列配置されたヒートパイプ群の内部空間とは異なり、全体が連通して一体となっている。よって、内部空間が一体である熱輸送部材が発熱体の熱を受熱部から放熱フィンと熱的に接続された管体との接続部まで輸送する本発明のヒートシンクの態様によれば、液相の作動流体の還流特性に優れ、また、発熱体からの発熱量が増大しても、受熱部における入熱を均一化でき、受熱部における熱抵抗を低減できる。また、本発明のヒートシンクの態様によれば、受熱部内面表面積増大部と面接触する支持部材が、コンテナをその内面から支持していることにより、大気圧に対する耐圧性を有しつつ軽量化された熱輸送部材を得ることができる。また、本発明のヒートシンクの態様によれば、受熱部内面表面積増大部と面接触する第1の平板部と、第1の平板部と対向した第2の平板部と、第1の平板部と第2の平板部を繋ぐ第3の平板部と、を有する支持部材が、コンテナをその内面から支持していることにより、大気圧に対する優れた耐圧性を有しつつ軽量化された熱輸送部材を得ることができる。また、本発明のヒートシンクの態様によれば、支持部材が平板部にて構成されていることにより、気相の作動流体の流通性が損なわれることを防止できる。
【0013】
本発明のヒートシンクの態様によれば、受熱部内面表面積増大部と面接触する第1の平板部の面積が第2の平板部の面積よりも大きいことにより、発熱体が熱的に接続される部位におけるコンテナの変形がより確実に防止されるので、熱輸送部材の受熱部と発熱体間の熱的接続性がさらに向上する。
【0014】
本発明のヒートシンクの態様によれば、第3の平板部が熱輸送部材の熱輸送方向に沿って延在していることにより、支持部材により、気相の作動流体の流通性が損なわれることをより確実に防止できる。
【0015】
本発明のヒートシンクの態様によれば、第1の平板部の幅方向の一端及び他端からそれぞれ第3の平板部が延在し、第2の平板部が第3の平板部から外方向へ延在していることにより、支持部材のコンテナに対する固定安定性が向上する。
【0016】
本発明のヒートシンクの態様によれば、第1の平板部の幅方向の一端及び他端からそれぞれ第3の平板部が延在し、第2の平板部が第3の平板部から内方向へ延在していることにより、熱輸送部材の小型化を図ることができる。
【0017】
本発明のヒートシンクの態様によれば、第1の平板部に貫通口が設けられていることにより、受熱部内面表面積増大部から受熱部の内部空間へ円滑に気相の作動流体が流通できる。
【0018】
本発明のヒートシンクの態様によれば、熱輸送部材の内部空間と連通した管体が放熱フィンの配置方向に沿って延在していることにより、気相の作動流体が、管体内部を放熱フィンの配置方向に沿って流通する。従って、放熱フィン群の放熱効率が向上して、ヒートシンクの冷却性能が確実に向上する。
【0019】
本発明のヒートシンクの態様によれば、管体の延在方向が熱輸送部材の熱輸送方向と平行ではないことにより、熱輸送部材から輸送された熱は熱輸送部材の延在方向(すなわち、熱輸送方向)とは異なる方向へ輸送される。従って、熱輸送部材の延在方向について、ヒートシンクの寸法の増大を防止することができ、結果、省スペース化を図ることができる。
【0020】
本発明のヒートシンクの態様によれば、複数の管体が熱輸送部材から複数の方向に延在していることにより、熱輸送部材から管体へ輸送された熱は熱輸送部材の延在方向とは異なる複数の方向へ輸送される。従って、熱輸送部材の延在方向について、ヒートシンクの寸法の増大をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態例に係るヒートシンクの概要を説明する斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態例に係るヒートシンクの概要を説明する側面断面図である。
図3】本発明の第1実施形態例に係るヒートシンクの概要を説明する図1のA−A断面図である。
図4】本発明の第1実施形態例に係るヒートシンクの受熱部内部の概要を示す説明図である。
図5】本発明の第2実施形態例に係るヒートシンクに用いる支持部材を説明する斜視図である。
図6】本発明の第3実施形態例に係るヒートシンクに用いる支持部材を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態例に係るヒートシンクについて、図面を用いながら説明する。まず、本発明の第1実施形態例に係るヒートシンクについて説明する。なお、図1は、本発明の第1実施形態例に係るヒートシンクの概要を説明する斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態例に係るヒートシンクの概要を説明する側面断面図である。図3は、本発明の第1実施形態例に係るヒートシンクの概要を説明する図1のA−A断面図である。図4は、本発明の第1実施形態例に係るヒートシンクの受熱部内部の概要を示す説明図である。
【0023】
図1、2に示すように、本発明の第1実施形態例に係るヒートシンク1は、発熱体100と熱的に接続される受熱部41を有する熱輸送部材10と、熱輸送部材10と熱的に接続された放熱フィン群20と、放熱フィン群20と熱的に接続された管体31と、を備えている。放熱フィン群20は、管体31に取り付けられた複数の第1の放熱フィン21、21・・・と、熱輸送部材10に取り付けられた複数の第2の放熱フィン22、22・・・を備えている。管体31は、熱輸送部材10の放熱部42にて熱輸送部材10と接続されている。また、熱輸送部材10の内部空間が、管体31の内部空間と連通している。すなわち、ヒートシンク1では、熱輸送部材10は、受熱部41から管体31との接続部まで連通し且つ作動流体が封入された一体である内部空間を有している。
【0024】
熱輸送部材10は、中空の空洞部13を有するコンテナ19と、空洞部13を流通する作動流体(図示せず)と、を有している。また、空洞部13内には、毛細管力を有するウィック構造体14が収納されている。コンテナ19は、ヒートシンク1の設置面側に位置する一方の板状体11と一方の板状体11と対向する他方の板状体12とを重ね合わせることにより形成されている。
【0025】
一方の板状体11は平面部の縁部に平面部から立設した側壁を有する板状部材である。他方の板状体12も、平面部の縁部に平面部から立設した側壁を有する板状部材である。従って、一方の板状体11と他方の板状体12は、凹形状となっている。一方の板状体11と他方の板状体12とを凹形状を対向させた状態で重ね合わせることにより、コンテナ19の空洞部13が形成される。従って、コンテナ19の形状は平面型である。コンテナ19の空洞部13は、外部環境に対して密閉された内部空間であり、脱気処理により減圧されている。
【0026】
コンテナ19の外面のうち、冷却対象である発熱体100が熱的に接続される部位が受熱部41として機能する。発熱体100がコンテナ19に熱的に接続されることで、発熱体100がヒートシンク1によって冷却される。ヒートシンク1では、コンテナ19の外面のうち、一方の板状体11の外面に発熱体100が取り付けられている。熱輸送部材10では、一方端に発熱体100が熱的に接続されているので、一方端に受熱部41が形成されている。また、コンテナ19の内面のうち、受熱部41には、受熱部内面表面積増大部44が設けられている。受熱部内面表面積増大部44は、凹凸が繰り返し形成された部位である。ヒートシンク1では、複数の板状フィン45、45・・・が、一方の板状体11の内面上に立設されていることで、受熱部内面表面積増大部44が形成されている。受熱部41に受熱部内面表面積増大部44が設けられていることにより、受熱部41から液相の作動流体への熱伝達が円滑化される。
【0027】
熱輸送部材10は、発熱体100の位置から所定方向へ延在しており、一方端に対向する他方端に、放熱フィン群20を形成する複数の第2の放熱フィン22、22・・・が熱的に接続されている。放熱フィン群20が熱的に接続されている熱輸送部材10の他方端が、熱輸送部材10の放熱部42として機能する。空洞部13は、受熱部41から放熱部42まで延在している。
【0028】
熱輸送部材10は、コンテナ19の一方端に位置する受熱部41とコンテナ19の他方端に位置する放熱部42との間に位置する中間部が、断熱部43として機能する。熱輸送部材10の断熱部43は、放熱フィン群20も発熱体100も熱的に接続されていない部位である。発熱体100から受熱部41へ伝達された熱が、断熱部43の延在方向に沿って、受熱部41から放熱部42へ輸送される。
【0029】
熱輸送部材10の幅方向の寸法は、特に限定されず、ヒートシンク1の設置スペースや使用条件等により選択可能であり、ヒートシンク1では、受熱部41、断熱部43及び放熱部42は、略同じ寸法となっている。受熱部41における熱輸送部材10の幅方向の寸法は、発熱体100の幅方向の寸法等に応じて適宜選択可能である。また、ヒートシンク1では、受熱部41、断熱部43及び放熱部42は、同一平面上に位置している。
【0030】
図1〜4に示すように、空洞部13のうち、受熱部41には、支持部材50が設けられている。支持部材50は、受熱部内面表面積増大部44上に設置されている。また、支持部材50は、平面視において、受熱部内面表面積増大部44の領域内に設けられている。支持部材50は、第1の平板部51と、第1の平板部51と対向した第2の平板部52と、第1の平板部51と第2の平板部52を繋ぐ第3の平板部53と、を有している。従って、第3の平板部53は、第1の平板部51及び第2の平板部52と連続している。支持部材50は、薄板状の平板部から形成されている。
【0031】
第1の平板部51は、受熱部内面表面積増大部44の頂部と面接触している。また、第1の平板部51は、受熱部内面表面積増大部44に沿って延在している。上記から、第1の平板部51は、受熱部内面表面積増大部44を介して、受熱部41における一方の板状体11を抑えている。ヒートシンク1では、支持部材50の第1の平板部51は、平面視において、受熱部内面表面積増大部44の領域内の一部に設けられている。第1の平板部51の平面視の面積は、受熱部内面表面積増大部44の平面視の面積よりも小さい態様となっている。なお、「平面視」とは、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して鉛直方向、且つ熱輸送部材10の平面部に対して鉛直方向から視認した状態を意味する。
【0032】
図3、4に示すように、支持部材50は、第1の平板部51の幅方向の一端51−1及び幅方向の他端51−2から、それぞれ、第3の平板部53が第1の平板部51の平面に対し鉛直方向へ延在している。また、第3の平板部53は、熱輸送部材10の熱輸送方向、すなわち、受熱部41から放熱部42の方向に沿って延在している。上記から、第3の平板部53の長手方向が、熱輸送部材10の熱輸送方向に沿って延在している。また、第1の平板部51及び第2の平板部52は、第3の平板部53の長手方向の一端から他端まで延在している。支持部材50では、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して直交方向である幅方向には、第3の平板部53は設けられていない。
【0033】
第2の平板部52は、それぞれの第3の平板部53の頂部53−1から外方向へ延在している。また、第2の平板部52は、第1の平板部51に対して略平行方向、且つ第3の平板部53に対して鉛直方向へ延在している。第2の平板部52は、コンテナ19の内面のうち、他方の板状体12の内面と面接触している。従って、支持部材50は、一方の板状体11の内面と他方の板状体12の内面との間にて、より具体的には、受熱部内面表面積増大部44の頂部と他方の板状体12の内面との間にて、コンテナ19の内面から受熱部41を支持している。従って、ヒートシンク1では、コンテナ19の肉厚を薄くしつつ、熱輸送部材10に大気圧に対する耐圧性を付与することができる。
【0034】
第1の平板部51の平面視の面積と第2の平板部52の平面視の面積の関係は、特に限定されないが、ヒートシンク1では、第1の平板部51の平面視の面積が、第2の平板部52の平面視の合計面積よりも大きい態様となっている。第1の平板部51の平面視の面積が第2の平板部52の平面視の合計面積よりも大きいことにより、受熱部41におけるコンテナ19の変形がより確実に防止されるので、熱輸送部材10の受熱部41と発熱体100間の熱的接続性がさらに向上する。
【0035】
図1、2に示すように、ウィック構造体14は、コンテナ19の一方端から他方端まで延在している。ヒートシンク1では、コンテナ19の一方端に形成された受熱部内面表面積増大部44の放熱部42側端部からコンテナ19の他方端まで延在している。ウィック構造体14としては、特に限定されないが、例えば、銅粉等の金属粉の焼結体、金属線からなる金属メッシュ、グルーブ(複数の細溝)、不織布、金属繊維等を挙げることができる。熱輸送部材10では、ウィック構造体14として、金属粉の焼結体が用いられている。空洞部13のうち、ウィック構造体14の設けられていない部位が、気相の作動流体の流通する蒸気流路15として機能する。蒸気流路15は、ウィック構造体14がコンテナ19の一方端から他方端まで延在していることに対応して、コンテナ19の一方端から他方端まで延在している。熱輸送部材10は、作動流体の動作による熱輸送特性によって、受熱部41にて受けた発熱体100の熱を受熱部41から放熱部42へ輸送する。
【0036】
図1〜3に示すように、熱輸送部材10の他方端には、コンテナ19の空洞部13と内部空間の連通した管体31が設けられている。従って、空洞部13を流通する作動流体は、空洞部13から管体31内部までの空間に封入されている。管体31の形状は、特に限定されず、ヒートシンク1では、長手方向の形状は直線状であり、長手方向に対して直交方向(径方向)の形状は円形状となっている。また、いずれの管体31も、形状、寸法は、略同じとなっている。
【0037】
管体31は、熱輸送部材10の平面方向に沿って、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向に延在している。このように、ヒートシンク1では、管体31の延在方向が熱輸送部材10の熱輸送方向と平行ではないので、熱輸送部材10から輸送された熱は、管体31によって、熱輸送部材10の延在方向とは異なる方向へ輸送される。従って、熱輸送部材10の延在方向(熱輸送方向)におけるヒートシンク1の寸法の増大を防止することができるので、ヒートシンク1の省スペース化を図ることができる。
【0038】
また、管体31は、複数設けられており、熱輸送部材10から複数の方向に延在している。ヒートシンク1では、管体31は、熱輸送部材10を中心にして左右両方向、すなわち、2方向へ延在している。また、管体31は、熱輸送部材10を中心にして左右両方向に同じ本数ずつ(図1、2では、3本ずつ)設けられている。複数の管体31が熱輸送部材10から複数の方向(ヒートシンク1では2方向)に延在しているので、熱輸送部材10から輸送された熱は、熱輸送部材10の延在方向とは異なる複数の方向へ分岐して輸送される。従って、熱輸送部材10の延在方向におけるヒートシンク1の寸法の増大をより確実に防止することができる。
【0039】
管体31の空洞部13側端部(以下、「基部」ということがある。)32は開口しており、空洞部13とは反対の端部(以下、「先端部」ということがある。)33は閉塞している。また、コンテナ19の空洞部13と管体31の内部空間は連通しており、管体31の内部空間は、空洞部13と同様に、脱気処理により減圧されている。従って、作動流体は、減圧処理されているコンテナ19の空洞部13と管体31の内部空間との間で流通可能となっている。
【0040】
コンテナ19の側面部には、管体31をコンテナ19に取り付けるための貫通孔(図示せず)が形成されている。貫通孔の形状と寸法は、管体31の形状と寸法に対応しており、管体31の基部32が、コンテナ19の貫通孔に嵌挿されることで、管体31がコンテナ19に接続されている。従って、管体31とコンテナ19は、別の部材からなっている。コンテナ19に取り付けた管体31を固定する方法としては、特に限定されず、例えば、溶接、はんだ付け、ろう付け等を挙げることができる。
【0041】
ヒートシンク1では、管体31と熱輸送部材10とは別の部材からなっているので、管体31の配置や形状、寸法等を自由に選択でき、ヒートシンク1の設計の自由度が向上する。また、ヒートシンク1では、コンテナ19の貫通孔に管体31を嵌挿することで、管体31をコンテナ19に接続することができるので、組み立てが容易である。
【0042】
図3に示すように、管体31の内面には、コンテナ19に収納されたウィック構造体14とは異なる、毛細管力を生じる他のウィック構造体34が設けられている。他のウィック構造体34としては、特に限定されないが、例えば、銅粉等の金属粉の焼結体、金属線からなる金属メッシュ、複数の細溝(グルーブ)、不織布、金属繊維等を挙げることができる。管体31では、他のウィック構造体34として、管体31の内面全体を覆うように、複数の細溝が形成されている。細溝は、管体31の長手方向に沿って、管体31の基部32から先端部33まで延在している。
【0043】
また、必要に応じて、熱輸送部材10に設けられたウィック構造体14は、管体31に設けられた他のウィック構造体34と、毛細管力を有する接続部材(図示せず)を介して接続されていてもよい。管体31内部で気相から液相へ相変化した作動流体は、管体31内の他のウィック構造体34の毛細管力によって、他のウィック構造体34内を管体31の先端部33から基部32方向へ還流し、管体31の基部32まで還流した液相の作動流体は、他のウィック構造体34から接続部材の一端へ流通する。他のウィック構造体34から接続部材の一端へ流通した液相の作動流体は、接続部材を一端から他端へ流通し、接続部材の他端から熱輸送部材10のウィック構造体14へ還流することができる。接続部材により、管体31内部にて液相に相変化した作動流体が管体31から熱輸送部材10へより円滑に還流できる。接続部材としては、例えば、ウィック部材を挙げることができ、具体的には、金属メッシュ、金属線の編組体、金属繊維等を挙げることができる。
【0044】
コンテナ19、支持部材50及び管体31の材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス、チタン等を挙げることができる。コンテナ19の空洞部13及び管体31の内部空間に封入する作動流体としては、コンテナ19、支持部材50及び管体31の材料との適合性に応じて、適宜選択可能であり、例えば、水、フルオロカーボン類、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、シクロペンタン、エチレングリコール、これらの混合物等を挙げることができる。また、支持部材50は、平板状の板状部材を折り曲げ加工することにより形成することができる。
【0045】
コンテナ19の厚さとしては、機械的強度、重量等から適宜選択可能であるが、例えば、2.0〜5.0mmの厚さを挙げることができる。また、コンテナ19は、肉厚を薄くすることができ、例えば、0.5〜1.0mmの肉厚を挙げることができる。コンテナ19の幅は、例えば、4〜20mmを挙げることができる。また、管体31の直径としては、機械的強度、重量等から適宜選択可能であり、例えば、5〜10mmを挙げることができる。
【0046】
図1に示すように、放熱フィン群20は、複数の第1の放熱フィン21、21・・・、複数の第2の放熱フィン22、22・・・が、それぞれ、並列配置されて形成されている。第1の放熱フィン21、第2の放熱フィン22ともに、薄い平板状の部材である。放熱フィン群20のうち、両側部に位置する第1の放熱フィン21は、管体31の長手方向に対して略平行方向に所定間隔にて並列配置されている。従って、管体31は、第1の放熱フィン21の配置方向に沿って延在し、気相の作動流体が、管体31内部を第1の放熱フィン21の配置方向に沿って流通する。また、第1の放熱フィン21は、管体31の位置に取り付け、固定されて、管体31と熱的に接続されている。従って、放熱フィン群20の放熱効率が向上して、ヒートシンク1の冷却性能が確実に向上する。第1の放熱フィン21は、いずれも、同じ形状、寸法となっている。放熱フィン群20の中央部に位置する第2の放熱フィン22は、熱輸送部材10の位置に取り付け、固定されて、熱輸送部材10と熱的に接続されている。熱輸送部材10のうち、第2の放熱フィン22が取り付けられた部位が、放熱部42として機能する。第2の放熱フィン22は、熱輸送部材10に立設された状態で取り付けられている。
【0047】
第1の放熱フィン21の主表面が、主に、第1の放熱フィン21の放熱機能を発揮する面である。第2の放熱フィン22の主表面が、主に、第2の放熱フィン22の放熱機能を発揮する面である。第1の放熱フィン21の主表面、第2の放熱フィン22の主表面は、いずれも、管体31の延在方向、すなわち長手方向に対して、略直交方向となるように配置されている。第1の放熱フィン21の管体31への熱的接続方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用可能であり、例えば、第1の放熱フィン21に貫通孔(図示せず)を形成し、この貫通孔に管体31を嵌挿する方法が挙げられる。また、第2の放熱フィン22の熱輸送部材10への熱的接続方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用可能であり、例えば、第2の放熱フィン22の端部に、第2の放熱フィン22の主表面に対して鉛直方向に伸延した固定用片部を設け、この固定用片部を熱輸送部材10の他方端の平面に接続して、熱輸送部材10に放熱フィン22を立設させる方法が挙げられる。
【0048】
ヒートシンク1は、例えば、送風ファン(図示せず)により強制空冷される。図1に示すように、送風ファン由来の冷却風Fは、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略平行方向から供給される。冷却風Fが、第1の放熱フィン21の主表面及び第2の放熱フィン22の主表面に沿って供給されて、放熱フィン群20が冷却される。
【0049】
第1の放熱フィン21及び第2の放熱フィン22の材質は、特に限定されず、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属、黒鉛等の炭素材料、炭素材料を用いた複合部材などを挙げることができる。
【0050】
次に、図1〜3を用いて、ヒートシンク1の冷却機能のメカニズムについて説明する。まず、熱輸送部材10のコンテナ19の一方端(一方の板状体11の一方端)に被冷却体である発熱体100を熱的に接続して、一方端を受熱部41として機能させる。コンテナ19の一方端が発熱体100から受熱すると、コンテナ19の一方端において、受熱部内面表面積増大部44を浸漬している液相の作動流体を含め、空洞部13の液相の作動流体へ熱が伝達されて、コンテナ19の一方端の空洞部13にて、液相の作動流体が気相の作動流体へと相変化する。気相の作動流体は、蒸気流路15をコンテナ19の一方端から放熱部42である他方端へ流通する。気相の作動流体が、コンテナ19の一方端から他方端へ流通することで、熱輸送部材10が、その一方端から他方端へ熱を輸送する。コンテナ19の他方端へ流通した気相の作動流体の一部が、潜熱を放出して液相の作動流体へ相変化し、放出された潜熱は、熱輸送部材10と熱的に接続されている第2の放熱フィン22へ伝達される。第2の放熱フィン22へ伝達された熱は、第2の放熱フィン22からヒートシンク1の外部環境へ放出される。コンテナ19の他方端にて液相に相変化した作動流体は、ウィック構造体14の毛細管力により、コンテナ19の他方端からコンテナ19の一方端へ還流する。
【0051】
また、コンテナ19の空洞部13と管体31の内部空間とは連通しているので、液相の作動流体から相変化した気相の作動流体のうち、コンテナ19の他方端にて液相に相変化しなかった作動流体は、空洞部13から管体31の内部空間へ流入する。管体31の内部空間へ流入した気相の作動流体は、管体31内部にて潜熱を放出して、液相の作動流体へ相変化する。管体31内部にて放出された潜熱は、管体31と熱的に接続されている第1の放熱フィン21へ伝達される。第1の放熱フィン21へ伝達された熱は、第1の放熱フィン21からヒートシンク1の外部環境へ放出される。管体31内部にて気相から液相に相変化した作動流体は、管体31内面の他のウィック構造体34の毛細管力によって、管体31の中央部及び先端部33から、管体31の基部32へ還流する。管体31の基部32へ還流した液相の作動流体は、コンテナ19の他方端にて、他のウィック構造体34からウィック構造体14へ還流する。ウィック構造体14へ還流した液相の作動流体は、ウィック構造体14の毛細管力により、コンテナ19の他方端からコンテナ19の一方端へ還流する。
【0052】
ヒートシンク1では、熱輸送部材10の空洞部13は、複数のヒートパイプが並列配置されたヒートパイプ群の内部空間とは異なり、全体が連通して一体となっている。よって、ヒートシンク1では、空洞部13が一体である熱輸送部材10が発熱体100の熱を受熱部41から放熱フィン群20と熱的に接続された管体31との接続部まで輸送するので、液相の作動流体の還流特性に優れ、また、発熱体100からの発熱量が増大しても、受熱部41における入熱を均一化でき、受熱部41における熱抵抗を低減できる。また、ヒートシンク1では、支持部材50が、受熱部内面表面積増大部44の頂部と他方の板状体12の内面との間にて、コンテナ19の内面から受熱部41を支持していることにより、コンテナ19を肉厚化しなくても、熱輸送部材10に大気圧に対する優れた耐圧性を付与でき、結果として、熱輸送部材10を軽量化できる。熱輸送部材10が軽量化されることにより、コンテナ19に熱的に接続される発熱体100にコンテナ19からの応力がかかることを防止でき、結果、発熱体100の性能に悪影響を与えることを防止できる。
【0053】
また、ヒートシンク1では、第3の平板部53が熱輸送部材10の熱輸送方向に沿って延在していることにより、支持部材50により、受熱部41における気相の作動流体の流通性が損なわれることをより確実に防止できる。また、支持部材50が平板部にて構成されていることにより、受熱部41における気相の作動流体の流通性が損なわれることを防止できる。
【0054】
また、ヒートシンク1では、第1の平板部51の幅方向の一端51−1及び幅方向の他端51−2からそれぞれ第3の平板部53が延在し、第2の平板部52が第3の平板部53から外方向へ延在していることにより、支持部材50のコンテナ19に対する固定安定性が向上する。
【0055】
また、ヒートシンク1では、熱輸送部材10の内部空間は全体が連通して一体となっているので、発熱体100に発熱ムラが生じていても、発熱体100全体を均一に冷却できる。
【0056】
次に、本発明の第2実施形態例に係るヒートシンクについて、図面を用いながら説明する。なお、第2実施形態例に係るヒートシンクは、第1実施形態例に係るヒートシンクと主要部は共通しているので、同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。なお、図5は、本発明の第2実施形態例に係るヒートシンクに用いる支持部材を説明する斜視図である。
【0057】
第2実施形態例に係るヒートシンク2では、支持部材50の第1の平板部51に貫通口54が設けられている。貫通口54は、第1の平板部51の厚さ方向の貫通口である。また、貫通口54は、第1の平板部51の略中央部に設けられている。貫通口54から受熱部内面表面積増大部44の一部が露出している。
【0058】
ヒートシンク2では、受熱部内面表面積増大部44にて液相から気相へ相変化した作動流体は、第1の平板部51に貫通口54が設けられていることにより、受熱部内面表面積増大部44から蒸気流路15へ円滑に流通できる。
【0059】
次に、本発明の第3実施形態例に係るヒートシンクについて、図面を用いながら説明する。なお、第3実施形態例に係るヒートシンクは、第1、第2実施形態例に係るヒートシンクと主要部は共通しているので、同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。なお、図6は、本発明の第3実施形態例に係るヒートシンクに用いる支持部材を説明する斜視図である。
【0060】
第1、第2実施形態例に係るヒートシンクでは、第2の平板部は、第3の平板部から外方向へ延在していたが、これに代えて、図6に示すように、第3実施形態例に係るヒートシンク3では、支持部材50の第2の平板部52は、第3の平板部53から内方向へ延在している。
【0061】
ヒートシンク3では、第2の平板部52が第3の平板部53から内方向へ延在していることにより、コンテナ19の小型化を図ることができる。
【0062】
次に、本発明のヒートシンクの他の実施形態例について、以下に説明する。上記各実施形態例のヒートシンクでは、熱輸送部材には、コンテナの空洞部と内部空間の連通した管体が接続され、該管体に放熱フィン群の第1の放熱フィンが熱的に接続されていたが、熱輸送部材には管体が接続されていなくてもよく、従って、放熱フィン群には第1の放熱フィンが設けられていなくてもよい。また、上記各実施形態例のヒートシンクでは、第3の平板部の長手方向が熱輸送部材の熱輸送方向に沿って延在している支持部材が1つ設けられていたが、これに代えて、熱輸送部材の熱輸送方向に沿って、支持部材が複数設けられていてもよい。すなわち、支持部材が、熱輸送部材の熱輸送方向に沿って、分割されて設けられていてもよい。この場合、複数の支持部材が、受熱部内面表面積増大部上に設けられていてもよい。また、上記各実施形態例のヒートシンクでは、支持部材は、熱輸送部材の受熱部にのみ設けられていたが、これに代えて、熱輸送部材の受熱部と断熱部及び/または放熱部とに設けられていてもよい。すなわち、支持部材は、熱輸送部材の複数の箇所に設けられていてもよい。支持部材が熱輸送部材の複数の箇所に設けられることにより、コンテナの変形がより確実に防止され、蒸気流路等の作動流体の流路の減少が防止される。また、支持部材は、熱輸送部材の受熱部以外の部位にのみ、すなわち、熱輸送部材の断熱部及び/または放熱部にのみ設けられていてもよい。
【0063】
第1実施形態例に係るヒートシンクでは、支持部材について、第1の平板部の平面視の面積が第2の平板部の平面視の合計面積よりも大きい態様となっていたが、これに代えて、第2の平板部の平面視の合計面積が第1の平板部の平面視の面積よりも大きい態様となっていてもよい。また、第3実施形態例に係るヒートシンクについて、支持部材の第1の平板部に、第1の平板部の厚さ方向の貫通口が設けられていてもよい。
【0064】
第1実施形態例のヒートシンクでは、支持部材は、平面視において、受熱部内面表面積増大部の領域内の一部に設けられていたが、これに代えて、平面視において、支持部材の第1の平板部が、受熱部内面表面積増大部の領域全体と一致する態様でもよい。すなわち、平面視において、支持部材の第1の平板部が、受熱部内面表面積増大部全体を覆っていてもよい。この場合、第1の平板部の平面視の面積が受熱部内面表面積増大部の平面視の面積と一致している。また、平面視において、支持部材の第1の平板部が、受熱部内面表面積増大部の領域全体だけでなく、受熱部内面表面積増大部の領域外まで延在していてもよい。すなわち、平面視において、支持部材の第1の平板部が、受熱部内面表面積増大部全体を覆っているだけではなく、受熱部内面表面積増大部から外方向へ延出していてもよい。この場合、第1の平板部51の平面視の面積は、受熱部内面表面積増大部44の平面視の面積よりも大きくなる。
【0065】
上記各実施形態例のヒートシンクでは、受熱部内面表面積増大部と面接触する第1の平板部と、該第1の平板部と対向した第2の平板部と、該第1の平板部と該第2の平板部を繋ぐ第3の平板部と、を有する支持部材が用いられていたが、これに代えて、支持部材として、受熱部内面表面積増大部上に、中実である柱状部材やブロック部材を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のヒートシンクは、気相の作動流体の流通性を損なうことなく、大気圧に対する優れた耐圧性を有しつつ軽量化された熱輸送部材を備えるので、例えば、回路基板に搭載された高発熱量の電子部品、例えば、中央演算処理装置等の電子部品を冷却する分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0067】
1、2、3 ヒートシンク
10 熱輸送部材
14 ウィック構造体
20 放熱フィン群
31 管体
41 受熱部
42 放熱部
43 断熱部
44 受熱部内面表面積増大部
50 支持部材
51 第1の平板部
52 第2の平板部
53 第3の平板部
【要約】
【課題】本発明は、気相の作動流体の流通性を損なうことなく、大気圧に対する優れた耐圧性を有しつつ軽量化された熱輸送部材を備え、また、熱輸送部材の受熱部における入熱を均一化できるヒートシンクを提供する。
【解決手段】発熱体と熱的に接続される受熱部を有する熱輸送部材と、該熱輸送部材の放熱部にて接続された、複数の放熱フィンが配置された放熱フィン群と、を備え、前記熱輸送部材が、前記受熱部から前記放熱部まで連通し、且つ作動流体が封入された一体である内部空間を有し、前記受熱部の内部空間に、受熱部内面表面積増大部と支持部材が設けられ、該支持部材が、該受熱部内面表面積増大部と面接触しているヒートシンク。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6