特許第6640497号(P6640497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640497
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】試料ホルダ及び試料ホルダ群
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20200127BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   H01J37/20 A
   H01J37/20 D
   H01J37/20 Z
   H01J37/28 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-171867(P2015-171867)
(22)【出願日】2015年9月1日
(65)【公開番号】特開2017-50120(P2017-50120A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 和徳
【審査官】 橘 皇徳
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0133757(US,A1)
【文献】 特開2008−146990(JP,A)
【文献】 実開昭53−114288(JP,U)
【文献】 特開2003−257349(JP,A)
【文献】 特開平10−003875(JP,A)
【文献】 特開2012−256516(JP,A)
【文献】 特開2013−140846(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0126115(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00−37/02
37/05
37/09−37/21
37/24−37/244
37/252−37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の表面を露出させて保持し、それぞれ異なる測定原理による複数の測定装置の内部にそれぞれ取付け、前記試料をそれぞれ測定可能な試料ホルダであって、
前記試料を囲む本体部と、
前記本体部の表面の2以上の異なる位置にそれぞれ配置され、前記測定装置で検出可能なアライメントマークと、
前記本体部の内側に配置される試料保持部であって、前記アライメントマークのマーク面、前記試料の前記表面の高さの差が前記測定装置の焦点深度内であるように前記試料を保持する試料保持部と、
を備えることを特徴とする試料ホルダ。
【請求項2】
試料の表面を露出させて保持し、それぞれ異なる測定原理による複数の測定装置のうち、第1の測定装置の内部に取付け、前記試料を測定可能な第1の試料ホルダであって、
前記試料を囲む第1の本体部と、
前記第1の本体部の表面の2以上の異なる位置にそれぞれ配置され、前記第1の測定装置で検出可能なアライメントマークと、
前記第1の本体部の内側に配置される第1の試料保持部であって、前記アライメントマークのマーク面、前記試料の前記表面の高さの差が前記第1の測定装置の焦点深度内であるように前記試料を保持する第1の試料保持部と、
を備える第1の試料ホルダ;及び、
前記試料を保持した前記第1の試料ホルダを保持する第2の試料ホルダであって、
前記第1の試料ホルダを囲む第2の本体部と、
前記第2の本体部の内側に配置されて前記第1の試料ホルダを保持するホルダ保持部と、を備える第2の試料ホルダ;、を有する試料ホルダ群であり、
前記測定装置のうち、前記第1の測定装置よりも測定視野が広い第2の測定装置の内部に前記試料ホルダ群を取付け、前記アライメントマークを検出することで前記試料を測定可能とする試料ホルダ群。
【請求項3】
試料の表面を露出させて保持し、それぞれ異なる測定原理による複数の測定装置のうち、第1の測定装置の内部に取付け、前記試料を測定可能な第1の試料ホルダであって、
前記試料を囲む第1の本体部と、
前記第1の本体部の表面の2以上の異なる位置にそれぞれ配置され、前記第1の測定装置で検出可能な第1のアライメントマークと、
前記第1の本体部の内側に配置され、前記第1のアライメントマークのマーク面に対し、前記試料の前記表面の高さを一定に設定可能に前記試料を保持する第1の試料保持部と、
を備える第1の試料ホルダ;及び、
前記試料を保持した前記第1の試料ホルダを保持する第2の試料ホルダであって、
前記第1の試料ホルダを囲む第2の本体部と、
前記第2の本体部の表面の2以上の異なる位置にそれぞれ配置される第2のアライメントマークと、
前記第2の本体部の内側に配置されて前記第1の試料ホルダを保持するホルダ保持部と、を備える第2の試料ホルダ;、を有する試料ホルダ群であり、
前記測定装置のうち、前記第1の測定装置よりも測定視野が広い第2の測定装置の内部に前記試料ホルダ群を取付け、前記第2のアライメントマークを検出することで前記試料を測定可能とする試料ホルダ群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査電子顕微鏡、走査プローブ顕微鏡などの測定装置の内部に取付け、試料を測定するための試料ホルダ及び試料ホルダ群に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の測定装置(分析装置)は、それぞれ異なる測定原理に基づいて試料の測定を行う。例えば、カンチレバーを利用したプローブ顕微鏡では、表面形状測定以外に電流、粘弾性、摩擦、吸着などの物性のマッピングが可能である。一方、電子線を利用した走査電子顕微鏡(SEM)では、形状測定と元素マッピングが可能である。また、光やレーザを利用した光学顕微鏡、光干渉顕微鏡やレーザ顕微鏡では表面形状測定が可能である。
ところで、それぞれ異なる測定原理による複数の測定装置で、同一試料の同一場所を測定するためには、各測定装置を一台の装置として複合化した装置内に試料を設置する必要がある。このようなことから、SEM(走査電子顕微鏡)と光学鏡筒をV字型に配置し、各測定装置を切り替えて試料の同一場所を測定する装置が開発されている(特許文献1)。この装置は、搖動機構(チルト機構)によって試料面の向きを変えることで、それぞれSEMと光学鏡筒の軸に対して試料面を垂直にして測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-015033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術の場合、軸同士をumレべルで合わせるのが難しい。つまり、SEMの軸と光学顕微鏡の軸で異なる観察軸上に2つのフォーカス点が存在するが、このフォーカス点の位置合わせが非常に困難である。具体的には、2つのフォーカス点をμmレベルでクロスさせると同時に当該クロスした位置を試料の観察(測定)点に位置合わせすることが必要であるが、実際のフォーカス動作では理想の直進軸から機械的動作をする際のズレや、観察軸の搖動が外側の円弧に沿った動きとなるためである。
また、特許文献1記載の装置の場合、SEM観察と光学観察は行えるが、それ以外の測定原理による測定はできないので、別の測定装置での測定をしたい場合は、この測定装置をさらに組み込んだ複合装置が必要となり、臨機応変な対応が困難である。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、それぞれ異なる測定原理による複数の測定装置により、同一試料の同一場所を容易に測定できる試料ホルダ及び試料ホルダ群の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の試料ホルダは、試料の表面を露出させて保持し、それぞれ異なる測定原理による複数の測定装置の内部にそれぞれ取付け、前記試料をそれぞれ測定可能な試料ホルダであって、前記試料を囲む本体部と、前記本体部の表面の2以上の異なる位置にそれぞれ配置され、前記測定装置で検出可能なアライメントマークと、前記本体部の内側に配置される試料保持部であって、前記アライメントマークのマーク面、前記試料の前記表面の高さの差が前記測定装置の焦点深度内であるように前記試料を保持する試料保持部と、を備えることを特徴とする。
この試料ホルダによれば、異なる測定装置にて試料ホルダのアライメントマークの位置座標を基準とすることで、同一の試料の同一の測定位置を測定できる。又、アライメントマークのマーク面に対し、試料の表面の高さを一定に設定するので、アライメントマークのマーク面を検出するために測定装置でピントを合わせた後、試料の位置を観察するためにピントを再度合わせるための高さ方向の変位を同じ状態にすることができ、ピントの再合わせによる位置ズレを少なくできる。特に、マーク面と試料の表面との高さの差が測定装置の焦点深度内であれば、マーク面を検出するために測定装置でピントを合わせると、試料の表面もそのまま観察できるので、マーク面を検出した後に試料の表面を観察するために再度ピントを合わせる必要がなく、上記位置ズレを無くして試料の同一場所を精度よく測定できる。
【0007】
又、本発明の試料ホルダ群は、試料の表面を露出させて保持し、それぞれ異なる測定原理による複数の測定装置のうち、第1の測定装置の内部に取付け、前記試料を測定可能な第1の試料ホルダであって、前記試料を囲む第1の本体部と、前記第1の本体部の表面の2以上の異なる位置にそれぞれ配置され、前記第1の測定装置で検出可能なアライメントマークと、前記第1の本体部の内側に配置される第1の試料保持部であって、前記アライメントマークのマーク面、前記試料の前記表面の高さの差が前記第1の測定装置の焦点深度内であるように前記試料を保持する第1の試料保持部と、を備える第1の試料ホルダ;及び、前記試料を保持した前記第1の試料ホルダを保持する第2の試料ホルダであって、前記第1の試料ホルダを囲む第2の本体部と、前記第2の本体部の内側に配置されて前記第1の試料ホルダを保持するホルダ保持部と、を備える第2の試料ホルダ;、を有する試料ホルダ群であり、前記測定装置のうち、前記第1の測定装置よりも測定視野が広い第2の測定装置の内部に前記試料ホルダ群を取付け、前記アライメントマークを検出することで前記試料を測定可能とする。
異なる測定原理による複数の測定装置によっては、小さい第1の試料ホルダを固定ができない場合があるが、第1の試料ホルダをより大きい第2の試料ホルダで保持することで、複数の測定装置のそれぞれに第2の試料ホルダを介して第1の試料ホルダを固定することが出来る。

【0008】
又、本発明の試料ホルダ群は、試料の表面を露出させて保持し、それぞれ異なる測定原理による複数の測定装置のうち、第1の測定装置の内部に取付け、前記試料を測定可能な第1の試料ホルダであって、前記試料を囲む第1の本体部と、前記第1の本体部の表面の2以上の異なる位置にそれぞれ配置され、前記第1の測定装置で検出可能な第1のアライメントマークと、前記第1の本体部の内側に配置され、前記第1のアライメントマークのマーク面に対し、前記試料の前記表面の高さを一定に設定可能に前記試料を保持する第1の試料保持部と、を備える第1の試料ホルダ;及び、前記試料を保持した前記第1の試料ホルダを保持する第2の試料ホルダであって、前記第1の試料ホルダを囲む第2の本体部と、前記第2の本体部の表面の2以上の異なる位置にそれぞれ配置される第2のアライメントマークと、前記第2の本体部の内側に配置されて前記第1の試料ホルダを保持するホルダ保持部と、を備える第2の試料ホルダ;、を有する試料ホルダ群であり、前記測定装置のうち、前記第1の測定装置よりも測定視野が広い第2の測定装置の内部に前記試料ホルダ群を取付け、前記第2のアライメントマークを検出することで前記試料を測定可能とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、それぞれ異なる測定原理による複数の測定装置により、同一試料の同一場所を容易に測定できる試料ホルダ及び試料ホルダ群が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る試料ホルダの平面図である。
図2図1のA−A線に沿う断面図である。
図3】測定装置に備えられ、試料ホルダを載置するためのステージの平面図である。
図4】複数の測定装置の内部にそれぞれ試料ホルダを取付け、試料をそれぞれの測定装置で測定する態様を示す模式図である。
図5】アライメントマークの座標から、座標変換によって別の測定装置での試料の測定位置の座標を算出する方法を示す模式図である。
図6】本発明の実施形態に係る試料ホルダ群の平面図である。
図7図6のB−B線に沿う断面図である。
図8】第2の試料ホルダのホルダ保持部を示す平面図及び断面図である。
図9】ホルダ保持部に取付けられる第1の試料ホルダの凹部を示す底面図及び断面図である。
図10】複数の測定装置の内部にそれぞれ試料ホルダ群及び第1の試料ホルダを取付け、試料をそれぞれの測定装置で測定する態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る試料ホルダ10の平面図、図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。
試料ホルダ10は、試料100を囲む有底で略矩形枠状の本体部2と、本体部2の表面の2以上(図1では3つ)の異なる位置にそれぞれ配置されたアライメントマーク6a〜6cと、本体部2の内側に配置されて試料を保持する試料保持部4と、を備える。
ここで、本実施形態では、試料保持部4は高さが種々異なる複数の矩形のスペーサであり、試料100の高さ(厚み)に応じて所定高さの試料保持部4を選び、粘着テープ等によって本体部2の内側の底面に試料保持部4を固定し、試料保持部4の上面に粘着テープ等によって試料100を保持するようになっている。このため、アライメントマーク6a〜6cのマーク面に対し、試料100の表面の高さを所定の値に設定することができる。具体的には、図2に示すように、本実施形態では、試料100の表面と本体部2の表面とがほぼ面一になっており、本体部2の表面から凹むアライメントマーク6a〜6cのマーク面が、試料100の表面から一定の高さHだけ低くなるように設定されている。アライメントマーク6a〜6cは、大きさ(一辺)が数十μmの矩形状であり、Hは、例えば10μm程度である。
【0012】
高さHは、測定装置でアライメントマーク6a〜6cを検出する際に、マーク面と試料100の表面との高さの差がその測定装置の焦点深度内となるように設定することが好ましい。マーク面と試料100の表面との高さの差(=H)が測定装置の焦点深度内であれば、マーク面を検出するために測定装置でピントを合わせると、試料100の表面もそのまま観察できるので、マーク面を検出した後に試料100の表面を観察するために再度ピントを合わせる必要がない。
一般に、測定装置の観察軸と、被観察物(マーク面や試料表面)の垂直度は90度からわずかにズレており、再度ピントを合わせようとするとZ方向へわずかに移動し、XおよびY方向へもズレてしまう。つまり、マーク面のXY座標を基準にして試料100の同一場所を測定しようとしても、ピントを再度合わせる際に基準となるはずのXY座標がズレてしまう。
特に、後述するように、共通の試料ホルダ10を用いて複数の測定装置200,300で測定を行う場合には、測定装置200,300毎に上記垂直度が異なるため、ピントを再度合わせることによる誤差が相乗され、試料100の同一場所を測定することがさらに困難になる。
【0013】
そこで、マーク面と試料100の表面との高さの差(=H)を、その測定装置の焦点深度内に設定することで、マーク面と試料100とを同じ視野で観察できるので、ピントを再度合わせる必要がなくなる。
測定装置の視野が200μm×200μm程度であれば、高さHを10μm程度とすれば十分である。ただし、マーク面のXY座標を取得後、試料100の表面を観察するために再度ピントを合わせる必要がある場合において、試料100の観察領域の大きさとの関係でZ方向への移動が無視できる場合は、マーク面と試料100の表面との高さの差が測定装置の焦点深度外であってもよく、Hの大きさは上記値より大きくてもよい。もちろん、H=0とすることがより好ましい。
なお、アライメントマーク6a〜6cが凹部の場合、マーク面は凹部の底面である。
【0014】
一方、図3は、測定装置200(図4参照)に備えられ、試料ホルダ10を載置するためのステージ202の平面図である。ステージ202は略矩形をなし、対辺に沿って合計3つのガイドピン204が立設している(図3(a))。そして、各ガイドピン204の内側からステージ202に試料ホルダ10を載置し、試料ホルダ10の外周縁を各ガイドピン204に当接させることで、試料ホルダ10をステージ202上に位置決めすることができる(図3(b))。
【0015】
図4は、それぞれ異なる測定原理による複数の測定装置200、300の内部にそれぞれ試料ホルダ10を取付け、試料100をそれぞれの測定装置200、300で測定する態様を示す模式図である。なお、図4の例では、測定装置200,300はそれぞれSEM(走査電子顕微鏡)及び走査プローブ顕微鏡である。測定装置300は試料観察用の光学顕微鏡を備えている。
試料100の表面を露出させて保持した試料ホルダ10は、各測定装置200、300のそれぞれのステージ202,302に保持され、各測定装置200、300の内部にそれぞれ取付けられる。
【0016】
ここで、まず、試料ホルダ10を測定装置200の内部に取付け、各アライメントマーク6a〜6cの(少なくとも1つの)マーク面を測定装置200内の電子線による像(例えば二次電子像)として観察し、マーク面にフォーカス(ピント)が合うようにステージ202をZ方向へ移動させる。
次に、試料100表面の測定位置の座標と、各アライメントマーク6a〜6cの座標を測定装置200内でSEM像として取得する。具体的には、例えば図3(b)のように、アライメントマーク6bの例えば左下角に、測定装置200で観察するSEM像のクロスライン(十字線)CLを合わせたとき、ステージ202の初期位置からのXY方向へのそれぞれの移動量から、アライメントマーク6bの座標を取得できる。このようにして、各座標として、アライメントマーク6a(X1、Y1)、アライメントマーク6b(X2、Y2)、アライメントマーク6c(X3、Y3)を取得する。
なお、SEM像のクロスライン(十字線)CLをアライメントマークの中心に合わせる場合、アライメントマークの中心か否かを目視で判断するので位置決め精度が低下する。アライメントマークが矩形の場合に角部に合わせると、位置決め精度が向上する。又、クロスライン(十字線)CLをアライメントマークの左下角に合わせる場合、他のアライメントマークもすべて左下角に合わせるようにする。
【0017】
そして、試料100上の測定したい位置にステージ202を移動させて、そのときの測定位置MのXY座標(Xm、Ym)を取得し、測定装置200で試料100の走査電子顕微鏡像を測定する。測定が終了すると、測定装置200から試料ホルダ10を取り出し、次に試料ホルダ10を測定装置300の内部に取付け、まず、各アライメントマーク6a〜6cの(少なくとも1つの)マーク面を測定装置300内の光学顕微鏡で観察し、マーク面にフォーカスが合うようにステージ302をZ方向へ移動させる。
【0018】
なお、半導体ウエハでは、試料自身にアライメントマークを有しているが、一般の試料では試料自身にアライメントマークを形成することは困難である。又、試料の厚み(高さ)も種々変化する。そこで、本発明においては、試料ホルダ10にアライメントマーク6を設けることで、試料100上の測定したい位置のXY座標を特定することができる。
【0019】
次に、各アライメントマーク6a〜6cの座標を測定装置300内の光学顕微鏡で取得する。各座標を取得する方法は、上述の測定装置200の場合と同様である。このようにして、測定装置300内での各座標として、アライメントマーク6a(X'1、Y'1)、アライメントマーク6b(X'2、Y'2)、アライメントマーク6c(X'3、Y'3)を取得する。
そして、測定装置200での各アライメントマーク6a〜6cの座標と、測定装置300での各アライメントマーク6a〜6cの座標から、座標変換によって測定装置300での試料100の測定位置Mの座標(X'm、Y'm)を算出する。
具体的には、例えば図5に示すように、測定装置200でのアライメントマーク6b、6c間のX方向の長さは(X2−X1)であり、測定装置300でのアライメントマーク6b、6c間のX方向の長さは(X'2−X'1)である。従って、測定装置300での試料100の測定位置MのX座標であるX'm=Xm×(X'2−X'1)/(X2−X1)で求めることができる。測定位置MのY座標であるY'mも同様にして求められる。
このようにして、測定装置300上で測定位置Mにおける試料100の所定の物性をマッピング測定することで、異なる測定装置200,300により同一の試料100の同一の測定位置Mを測定できることになる。
【0020】
次に、図6図9を参照し、本発明の実施形態に係る試料ホルダ群について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る試料ホルダ群30の平面図、図7は、図6のB−B線に沿う断面図である。
試料ホルダ群30は、第1の試料ホルダ20と、第1の試料ホルダ20を囲むようにして第1の試料ホルダ20を保持する第2の試料ホルダ10Bと、を有する。
第2の試料ホルダ10Bは、上記した試料ホルダ10と略同一であり、有底で略矩形枠状の第2の本体部2Bと、第2の本体部2の表面の2以上(図では3つ)の異なる位置にそれぞれ配置された第2のアライメントマーク6と、第2の本体部2の内側に配置されて第1の試料ホルダ20を保持するホルダ保持部4Bと、を備える。つまり、試料ホルダ10Bは、試料保持部4の代わりにホルダ保持部4Bを備えた点が試料ホルダ10と異なる。ホルダ保持部4Bは、本体部2の内側の底面の3箇所から立設する3本のガイドピンである(図8参照)。
【0021】
一方、第1の試料ホルダ20は、試料100を囲む有底円筒状の第1の本体部22と、第1の本体部22の表面の2以上(図1では3つ)の異なる位置にそれぞれ配置された第1のアライメントマーク26と、第1の本体部22の内側に配置されて試料を保持する第1の試料保持部24と、を備える。第1の試料保持部24は、試料保持部4と同様、高さが種々異なる複数のスペーサであり、試料100の高さ(厚み)に応じて所定高さの第1の試料保持部4を選び、粘着テープ等によって第1の本体部22の内側の底面に試料保持部24を固定し、第1の試料保持部24の上面に粘着テープ等によって試料100を保持するようになっている。このため、アライメントマーク26のマーク面に対し、試料100の表面の高さを所定の値に設定することができる。具体的には、図7に示すように、本実施形態では、試料100の表面と、第1の本体部22の表面から突出する第1のアライメントマーク26のマーク面とがほぼ同一高さ(面一)になるように設定されている。
なお、アライメントマーク26は凸部であり、マーク面は凸部の頂面である。
一方、第2の試料ホルダ10Bの第2のアライメントマーク6は、試料100の表面から一定の高さHだけ低くなっている。
【0022】
さらに、図9に示すように、第1の本体部22の裏面には、ホルダ保持部4Bに対応した位置に3箇所の凹部22hが形成されている。そして、第2の試料ホルダ10Bの内部に第1の試料ホルダ20を収容し、ホルダ保持部4Bであるガイドピンを凹部22hに挿入することで、第1の試料ホルダ20を第2の試料ホルダ10B内に位置決めして保持することができる。
【0023】
図10は、それぞれ異なる測定原理による複数の測定装置200、400の内部にそれぞれ試料ホルダ群30、第1の試料ホルダ20を取付け、試料100をそれぞれの測定装置200、400で測定する態様を示す模式図である。なお、図10の例では、測定装置200はSEM(走査電子顕微鏡)であり、測定装置400は手動でステージ402を移動させるタイプの走査プローブ顕微鏡であって試料観察用の光学顕微鏡を備える。
そして、測定装置200は、測定装置400よりも測定領域が広い。測定装置200,400は、それぞれ特許請求の範囲の「第2の測定装置」、「第1の測定装置」に相当する。なお、ステージを電動等によって駆動する測定装置は、ステージを手動によって駆動する測定装置より一般に測定領域が広い。


【0024】
ここで、まず、試料ホルダ群30を測定装置200の内部のステージ202に取付け、上述のフォーカス調整をした後、試料100表面の測定位置の座標と、各アライメントマーク6の座標と、試料100の測定位置Mの座標を測定装置200内でSEM像として取得する。そして、試料100の走査電子顕微鏡像を測定する。
【0025】
測定装置200での測定が終了すると、測定装置200から試料ホルダ群30を取り出し、次に試料ホルダ群30から取り外した第1の試料ホルダ20を測定装置400の内部に取付け、上述のフォーカス調整を行う。そして、各マークと測定位置Mの位置のXY座標を取得する。なお、ステージ402には、ホルダ保持部4Bと同様の3本のガイドピン402pが立設しており、ガイドピン402pを凹部22hに挿入することで、第1の試料ホルダ20をステージ402上に位置決めして保持することができる。
なお、アライメントマーク6,26はそれぞれ凹部、凸部からなっており、試料100表面の高さに換算すると、両者の差はZ方向にHとなるが、上述の通り測定装置200,400の焦点深度内の差であればよい。
【0026】
次に、各アライメントマーク26の座標を測定装置400内の光学顕微鏡で取得する。
そして、試料ホルダ10の場合(図5参照)と同様にして、測定装置200での各アライメントマーク6の座標と、測定装置400での各アライメントマーク26の座標から、座標変換によって測定装置400での試料100の測定位置Mの座標(X'm、Y'm)を算出する。
このようにして、測定装置400上で測定位置Mにおける試料100の所定の物性をマッピング測定することで、異なる測定装置200,400により同一の試料100の同一の測定位置Mを測定できることになる。
なお、測定装置400は、ステージ402を手動によって駆動するため、ステージを電動等によって駆動する場合のように、ステージの移動量を検出することができない。そこで、測定装置400では、光学顕微鏡を観察する際にグリッドまたは格子ラインを表示させ、グリッドの目盛を目視で数えることで、各座標を取得できるようになっている。
【0027】
また、測定装置400はステージ402を手動で移動させるため、ステージ402の移動量を検出できず、各アライメントマークと測定位置Mの位置を正確に取得することが困難である。そこで、測定装置400で観察する際には、すべてのアライメントマークを同一視野内で同時に観察しながら基準となるXY座標を取得した後、測定位置Mを定めると、上記したグリッドや格子ラインの目盛をXY座標を取得する基準として利用し易くなる。
なお、測定装置200においても試料ホルダ20のアライメントマーク26を検出してもよく、測定に合わせて検出するアライメントマークを選択できる。また、場合によって、試料ホルダ10B上のアライメントマーク6は不要としてもよい。この場合は、アライメントマーク26を検出する。そして、異なる測定原理による複数の測定装置のステージによっては、小さい第1の試料ホルダ20を固定ができない場合があるが、第1の試料ホルダ20をより大きい第2の試料ホルダ10Bで保持することで、複数の測定装置の各ステージに第2の試料ホルダ10Bを介して第1の試料ホルダ20を固定することが出来る。
【0028】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、それぞれ異なる測定原理による複数の測定装置としては、上述のSEM,走査プローブ顕微鏡のほか、光干渉顕微鏡、レーザ顕微鏡、光学顕微鏡が挙げられる。
また、アライメントマークは3つ以上が好ましく、2つの場合は対角位置に配置すると好ましい。又、アライメントマークは、断面形状がシャープ(断面が垂直)であるほど、上述のフォーカス調整による読み取り精度が向上する。そして、アライメントマークを機 械加工やレーザ加工で形成すると、断面がテーパ状になって読み取り誤差が大きくなるので、エッチングプロセスで形成したドットパターンを利用するのが好ましい。
試料保持部4及び第1の試料保持部24はネジによって高さ方向に上下する機構を備えていてもよい。
ホルダ保持部4Bは、上記したガイドピンの他、嵌合、爪等による機械式係合等でもよい。
又、ステージ402を手動で移動させる測定装置400において、手動での移動量をある程度正確に読み取れるゲージを付帯する場合には、必ずしもすべてのアライメントマークを同一視野内で同時に観察しなくてもよく、一視野中ではすべてのアライメントマークの一部(例えば、1か所)の位置を検出してもよい。測定装置200等も同様である。
又、試料ホルダ10Bは、上記した円形状に限らず、多角形状であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
2 本体部
2B 第2の本体部
4 試料保持部
4B ホルダ保持部
6a〜6c アライメントマーク
6 第2のアライメントマーク
10 試料ホルダ
10B 第2の試料ホルダ
20 第1の試料ホルダ
22 第1の本体部
24 第1の試料保持部
26 第1のアライメントマーク
30 試料ホルダ群
100 試料
200、300、400 測定装置
200 第2の測定装置
400 第1の測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10