特許第6640985号(P6640985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社KOKUSAI ELECTRICの特許一覧

特許6640985基板処理装置、半導体装置の製造方法および記録媒体
<>
  • 特許6640985-基板処理装置、半導体装置の製造方法および記録媒体 図000002
  • 特許6640985-基板処理装置、半導体装置の製造方法および記録媒体 図000003
  • 特許6640985-基板処理装置、半導体装置の製造方法および記録媒体 図000004
  • 特許6640985-基板処理装置、半導体装置の製造方法および記録媒体 図000005
  • 特許6640985-基板処理装置、半導体装置の製造方法および記録媒体 図000006
  • 特許6640985-基板処理装置、半導体装置の製造方法および記録媒体 図000007
  • 特許6640985-基板処理装置、半導体装置の製造方法および記録媒体 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640985
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法および記録媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20200127BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20200127BHJP
   C23C 16/46 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   H01L21/31 B
   H01L21/31 C
   H01L21/324 J
   C23C16/46
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-506658(P2018-506658)
(86)(22)【出願日】2016年3月22日
(86)【国際出願番号】JP2016059003
(87)【国際公開番号】WO2017163314
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】竹田 剛
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−078830(JP,A)
【文献】 特開2005−093911(JP,A)
【文献】 特開2002−124483(JP,A)
【文献】 特開2011−077502(JP,A)
【文献】 特開昭61−129823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/46
H01L 21/324
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持具と、
前記基板を処理する処理室と、
前記処理室内に設けられ、前記基板を処理する処理ガスを供給するガス供給部と、
前記処理室外に設けられ、前記処理室内を加熱する熱エネルギーを放射する加熱装置と、
前記基板保持具の基板載置領域の側面において30%以上95%以下の面積を覆うように前記処理室内に設けられ、前記加熱装置から放射された熱エネルギーを吸収して、少なくとも前記熱エネルギーとは異なる波長の熱エネルギーを放射する輻射部材と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記輻射部材は、前記処理室内の内壁に沿うように円弧状に湾曲した板状部材で構成され、前記板状部材には、切欠きが形成されている請求項に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記加熱装置が放射する熱エネルギーは近赤外線を含み、前記輻射部材が放射する熱エネルギーは遠赤外線を含む請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記輻射部材が前記基板表面を所定の温度に加熱するよう前記加熱装置の出力を制御するよう構成される制御部をさらに有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板を保持する基板保持具と、前記基板を処理する処理室と、前記処理室内に設けられ、前記基板を処理する処理ガスを供給するガス供給部と、前記処理室内を加熱する熱エネルギーを放射する加熱装置と、前記基板保持具の基板載置領域の側面において30%以上95%以下の面積を覆うように前記処理室内に設けられ、前記加熱装置から放射された熱エネルギーを吸収して、前記熱エネルギーとは異なる波長の熱エネルギーを放射する輻射部材と、を有する基板処理装置の処理室内に前記基板を搬入する工程と、
前記基板に前記処理ガスを供給する基板処理工程と、
前記基板を前記処理室から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項6】
基板を保持する基板保持具と、前記基板を処理する処理室と、前記処理室内に設けられ、前記基板を処理する処理ガスを供給するガス供給部と、前記処理室内を加熱する熱エネルギーを放射する加熱装置と、前記基板保持具の基板載置領域の側面において30%以上95%以下の面積を覆うように前記処理室内に設けられ、前記加熱装置から放射された熱エネルギーを吸収して、前記熱エネルギーとは異なる波長の熱エネルギーを放射する輻射部材と、を有する基板処理装置の処理室内に前記基板を搬入する手順と、
前記基板に前記処理ガスを供給する基板処理手順と、
前記基板を前記処理室から搬出する手順と、
を前記基板処理装置に実行させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置、半導体装置の製造方法および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板(ウエハ)に対して、例えばシリコンを含む原料や、窒化ガスや酸化ガス等のリアクタントを供給し、基板上に窒化膜や酸化膜等の膜を形成する工程やエッチングガスを供給して所定の膜を除去する工程などの基板処理が行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−139084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような基板処理を行う場合、抵抗加熱ヒータやランプヒータ等の加熱装置は、加熱装置自身が成膜やエッチングされることを回避する必要があるなどの理由から、基板処理空間の外部に設けられることが多く、熱エネルギーを十分に基板に伝達することができずに均一な基板処理を行うことが困難となる場合があった。
【0005】
本発明の目的は、均一な基板処理を可能とする基板処理技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基板を保持する基板保持具と、前記基板を処理する処理室と、前記処理室内に設けられ、前記基板を処理する処理ガスを供給するガス供給部と、前記処理室内を加熱する熱エネルギーを放射する加熱装置と、前記処理室内に設けられ、前記加熱装置から放射された熱エネルギーを吸収して、前記熱エネルギーとは異なる波長の熱エネルギーを放射する輻射部材と、を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、均一な基板処理を可能とする基板処理技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明における実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図2】本発明における実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図1のA−A線断面図で示す図である。
図3】本発明における実施形態で好適に用いられる輻射板の設置例を示す図である。
図4】(a)本発明における実施形態で好適に用いられる輻射板の上面を示す図である。(b)本発明における実施形態で好適に用いられる輻射板の正面図である。(c)本発明における実施形態で好適に用いられる輻射板の斜視図である。
図5】本発明における実施形態で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図6】本発明における基板処理プロセスのフローを示す図である。
図7】本発明における第1の実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について図1から図6を参照しながら説明する。
(1)基板処理装置の構成
(加熱装置)
図1に示すように、処理炉202は加熱装置(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。具体的には、ヒータ207は、抵抗加熱ヒータやランプ加熱ヒータ等の熱エネルギーを放出し、当該熱エネルギーをウエハ200に吸収させることでウエハ200を加熱する加熱装置であり、より詳しくは、熱エネルギーとしての電磁波を放射する加熱装置である。さらにより詳しくは、電磁波としての赤外線、特に2〜6μmの波長を有する赤外線(好ましくは3μm以下の近赤外線)を放射する加熱装置である。
【0010】
(処理室)
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)等の熱エネルギー透過性のよい耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、反応管203は垂直に据え付けられた状態となる。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を、収容可能に構成されている。なお、処理容器は上記の構成に限らず、反応管203のみを処理容器と称する場合もある。
【0011】
(輻射板)
図1に示すように、処理室201内にはヒータ207から放出された熱エネルギーを吸収し、異なる波長の熱エネルギーに変換して処理室201内に輻射する輻射部材(波長変換部)としての輻射板101が設けられている。具体的には、ヒータ207から放出された2〜6μmの波長を有する赤外線(好ましくは3μmよりも短い波長を有する近赤外線)の少なくとも一部または全部を吸収し、3μm以上の波長を有する赤外線(好ましくは6μm以上の波長を有する遠赤外線)に変換して処理室201内に輻射する輻射板101が設けられる。
【0012】
図1および図2に示すように、輻射板101は、反応管203の内壁に沿うようにボート217の基板配列領域に設けられている。図2に示すように、輻射板101は、排気管と温度センサ263との間に設置された輻射板101aと、排気管231とノズル249bとの間に設置された輻射板101bと、ノズル249a,249bの間に設置された輻射板101cの複数種類が設けられている。なお、上述されたものも含め、輻射板101a,101b,101cを総称する場合には、単に輻射板101として説明を行う。
【0013】
図3に示すように、輻射板101は反応管203の内側に設けられ、輻射板固定部材301によって、マニホールド209の上面に載置されて固定される。
【0014】
図4(a)〜(c)にそれぞれ示すように、輻射板101は、円弧状に湾曲した板状部材で形成されており、板状部材には、所定の幅で切り欠かれた切欠き部102が複数設けられている。また、輻射板101は、例えばSiC、SiN、AlOやZrOといった耐熱性セラミックスなどの絶縁性を有する耐熱性部材で構成されており、基板に形成された膜の種類に応じて適宜選択される。
【0015】
ここで、輻射板101は上述した切欠き部102を有さない単なる板状の形状としてもよいが、切欠き部102を有することによって、ヒータ207から放射される熱エネルギーと、輻射板101によって波長が変換されて輻射される熱エネルギーとのバランスを制御することが可能となる。これによってヒータ207から放射される熱エネルギーを吸収しやすいウエハ200と、輻射板101から輻射される熱エネルギーを吸収しやすいウエハ200表面に形成された膜とを効果的に加熱することが可能となる。
したがって、輻射板101によって覆われる基板載置領域側面の面積は、30%〜95%の比率で覆うことが好ましい。このように構成することによって、ウエハ200がヒータ207の熱エネルギーを吸収して加熱されるとともに、ウエハ200の表面に形成された所定の膜とをバランスよく加熱することが可能となり、効率よくウエハ200を処理することが可能となる。すなわち、ウエハ200を積極的に加熱したい場合には、輻射板101によって覆う面積を小さくし、逆にウエハ200上の所定の膜を積極的に加熱したい場合には輻射板101によって覆う面積を大きくするとよい。
【0016】
(ガス供給部)
処理室201内には、ノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bが、それぞれ接続されている。このように、処理容器には2本のノズル249a,249bと、2本のガス供給管232a,232bとが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することが可能となっている。なお、反応管203のみを処理容器とした場合、ノズル249a,249bは反応管203の側壁を貫通するように設けられていてもよい。ここで、後述する原料ガス、反応ガス、不活性ガスなどを含めて、基板処理工程時に供給されるガスを総称して処理ガスと称する。
【0017】
ガス供給管232a,232bには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232c,232dがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232dには、上流方向から順に、MFC 241c,241dおよびバルブ243c,243dがそれぞれ設けられている。
【0018】
ノズル249a,249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、処理室201内へ搬入された各ウエハ200の端部(周縁部)の側方にウエハ200の表面(平坦面)と垂直にそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、それぞれ、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0019】
このように、本実施形態では、反応管203の側壁の内壁と、反応管203内に配列された複数枚のウエハ200の端部と、で定義される平面視において円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内に配置したノズル249a,249bを経由してガスを搬送している。そして、ノズル249a,249bにそれぞれ開口されたガス供給孔250a,250bから、ウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させている。そして、反応管203内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、すなわち、水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される膜の膜厚の均一性を向上させることが可能となる。ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れる。但し、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0020】
ガス供給管232aからは、所定元素(第1元素)およびハロゲン元素を含む原料として、例えば、所定元素としてのシリコン(Si)およびハロゲン元素を含むハロシラン原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0021】
ハロシラン原料ガスとは、気体状態のハロシラン原料、例えば、常温常圧下で液体状態であるハロシラン原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態であるハロシラン原料等のことである。ハロシラン原料とは、ハロゲン基を有するシラン原料のことである。ハロゲン元素は、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群より選択される少なくとも1つを含む。すなわち、ハロシラン原料は、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基からなる群より選択される少なくとも1つのハロゲン基を含む。ハロシラン原料は、ハロゲン化物の一種ともいえる。本明細書において「原料」という言葉を用いた場合は、「液体状態である液体原料」を意味する場合、「気体状態である原料ガス」を意味する場合、または、それらの両方を意味する場合がある。
【0022】
ハロシラン原料ガスとしては、例えば、SiおよびClを含む原料ガス、すなわち、クロロシラン原料ガスを用いることができる。クロロシラン原料ガスとしては、例えば、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガスを用いることができる。
【0023】
ガス供給管232bからは、上述の所定元素とは異なる元素を含むリアクタント(反応体)として、例えば、反応ガスとしての窒素(N)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給されるように構成されている。N含有ガスとしては、例えば、窒化水素系ガスを用いることができる。窒化水素系ガスは、NおよびHの2元素のみで構成される物質ともいえ、窒化ガス、すなわち、Nソースとして作用する。窒化水素系ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガスを用いることができる。
【0024】
ガス供給管232c,232dからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N)ガスが、それぞれMFC 241c,241d、バルブ243c,243d、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。
【0025】
ガス供給管232aから上述の原料ガスを供給する場合、主に、ガス供給管232a、MFC 241a、バルブ243aにより、第1の供給系としての原料供給系が構成される。ノズル249aを原料供給系に含めて考えてもよい。
【0026】
また、ガス供給管232bから上述の反応体を供給する場合、主に、ガス供給管232b、MFC 241b、バルブ243bにより、第2の供給系としての反応体供給系(リアクタント供給系)が構成される。ノズル249bを反応体供給系に含めて考えてもよい。
【0027】
また、主に、ガス供給管232c,232d、MFC 241c,241d、バルブ243c,243dにより、不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス供給系を、パージガス供給系、希釈ガス供給系、或いはキャリアガス供給系と称することもできる。
また、原料供給系、反応体供給系、不活性ガス供給系を含めてガス供給系(ガス供給部)とも称する。
【0028】
(基板支持具)
図1に示すように基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、所定の間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が多段に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱が後述するシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。但し、本実施形態はこのような形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料からなる筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0029】
(排気部)
反応管203には、図1に示すように処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および排気バルブ(圧力調整部)としてのAPC(AUTO Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気部(排気系)が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気管231は、反応管203に設ける場合に限らず、ノズル249a,249bと同様にマニホールド209に設けてもよい。
【0030】
(周辺装置)
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。
【0031】
シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。
【0032】
ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。また、マニホールド209の下方には、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を降下させている間、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としての図示しないシャッタが設けられている。シャッタは、例えばSUS等の金属により構成され、円盤状に形成されている。シャッタの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構により制御される。
【0033】
図2に示すように反応管203の内部には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、ノズル249a,249bと同様に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0034】
(制御装置)
次に制御装置について図5を用いて説明する。図5に示すように、制御部(制御装置)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0035】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する各種処理(成膜処理)における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0036】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241d、バルブ243a〜243d、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0037】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、回転機構267の制御、MFC 241a〜241dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243dの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の正逆回転、回転角度および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0038】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリや等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0039】
(2)基板処理工程
次に、基板処理装置100を使用して、ウエハ200上に薄膜を形成する工程について、図6を参照しながら説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0040】
ここでは、第1元素含有ガスとしてDCSガスを供給するステップと、第2元素含有ガスとしてNHガスを供給するステップとを非同時に、すなわち同期させることなく所定回数(1回以上)行うことで、ウエハ200上に、SiおよびNを含む膜として、シリコン窒化膜(Si膜、以下、SiN膜と称する)を形成する例について説明する。また、例えば、ウエハ200上には、予め所定の膜が形成されていてもよい。また、ウエハ200または所定の膜には予め所定のパターンが形成されていてもよい。
【0041】
本明細書では、図6に示す成膜処理のシーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の実施形態の説明においても、同様の表記を用いることとする。
【0042】
(DCS→NH)×n ⇒ SiN
【0043】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合、すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
【0044】
従って、本明細書において「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書において「ウエハ上に所定の層(または膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)上に所定の層(または膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち、積層体としてのウエハの最表面の上に所定の層(または膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
【0045】
また、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0046】
(搬入ステップ:S1)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構によりシャッタが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0047】
(圧力・温度調整ステップ:S2)
処理室201の内部、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。真空ポンプ246は、少なくとも後述する成膜ステップが終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。
【0048】
また、処理室201内のウエハ200が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。ヒータ207より放射された熱エネルギーとしての2〜6μmの波長を有する赤外線(好ましくは3μmよりも短い波長の近赤外線)の少なくとも一部または全部を輻射板101が吸収し、3μm以上の波長を有する赤外線(好ましくは6μm以上の波長を有する遠赤外線)に変換して輻射熱となる熱エネルギーを放射する。この輻射熱としての熱エネルギーによってウエハ200の表面に形成された所定の膜が加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する後述する成膜ステップが終了するまでの間は継続して行われる。輻射板101は、ヒータ207から放射される赤外線が供給されなくなることで変換する熱エネルギーの供給が停止し、自ずと輻射による加熱が停止する。また、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも成膜ステップが終了するまでの間は継続して行われる。
【0049】
(成膜ステップ:S3,S4,S5,S6)
その後、ステップS3,S4,S5,S6を順次実行することで成膜ステップを行う。
【0050】
(原料ガス供給ステップ:S3,S4)
ステップS3では、処理室201内のウエハ200に対してDCSガスを供給する。
【0051】
バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へDCSガスを流す。DCSガスは、MFC 241aにより流量調整され、ノズル249aを介して、ガス供給孔250aから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してDCSガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243cを開き、ガス供給管232c内へNガスを流す。Nガスは、MFC 241cにより流量調整され、DCSガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0052】
また、ノズル249b内へのDCSガスの侵入を防止するため、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へNガスを流す。Nガスは、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0053】
MFC 241aで制御するDCSガスの供給流量は、例えば1sccm以上、5000sccm以下の範囲内の流量とする。MFC 241c,241dで制御するNガスの供給流量は、それぞれ例えば100sccm以上、10000sccm以下の範囲内の流量とする。処理室201内の圧力は大気圧未満、例えば0Pa以上、1000Pa以下の範囲内の圧力とする。DCSガスにウエハ200を晒す時間は、例えば1秒以上、120秒以下の範囲内の時間とする。
【0054】
処理温度は、ウエハ200の温度が例えば100℃以上、700℃以下、より好ましくは100℃以上、550℃以下、さらに好ましくは250℃以上、450℃以下の範囲内の温度となるような温度に設定する。
【0055】
上述の条件下でウエハ200に対してDCSガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、例えば1原子層(1分子層)未満から数原子層(数分子層)程度の厚さのSi含有層が形成される。Si含有層はSi層であってもよいし、DCSの吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。
【0056】
Si層とは、Siにより構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるSi薄膜をも含む総称である。Si層を構成するSiは、Cl基との結合が完全に切れていないものや、Hとの結合が完全に切れていないものも含む。
【0057】
DCSの吸着層は、DCS分子で構成される連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。DCSの吸着層を構成するDCS分子は、SiとClとの結合が一部切れたものや、SiとHとの結合が一部切れたもの等も含む。すなわち、DCSの吸着層は、DCSの物理吸着層であってもよいし、DCSの化学吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。
【0058】
ここで、1原子層(1分子層)未満の厚さの層とは不連続に形成される原子層(分子層)のことを意味しており、1原子層(1分子層)の厚さの層とは連続的に形成される原子層(分子層)のことを意味している。Si含有層は、Si層とDCSの吸着層との両方を含み得る。但し、上述の通り、Si含有層については「1原子層」、「数原子層」等の表現を用いることとし、「原子層」を「分子層」と同義で用いる。
【0059】
DCSガスを供給した後、バルブ243aを閉じ、処理室201内へのDCSガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244を開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはSi含有膜の形成に寄与した後のDCSガスや反応副生成物等を処理室201内から排除する(S4)。また、バルブ243c,243dは開いたままとして、処理室201内へのNガスの供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用する。なお、このステップS4を省略して原料ガス供給ステップと称してもよい。
【0060】
原料ガスとしては、DCSガスのほか、テトラキスジメチルアミノシラン(Si[N(CH、略称:4DMAS)ガス、トリスジメチルアミノシラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)ガス、ビスジメチルアミノシラン(Si[N(CH、略称:BDMAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(Si[N(C、略称:BDEAS)ガス、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH[NH(C)]、略称:BTBAS)ガス等を好適に用いることができる。このほか、原料ガスとしては、ジメチルアミノシラン(DMAS)ガス、ジエチルアミノシラン(DEAS)ガス、ジプロピルアミノシラン(DPAS)ガス、ジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)ガス、ブチルアミノシラン(BAS)ガス、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)ガス等の各種アミノシラン原料ガスや、モノクロロシラン(SiHCl、略称:MCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)ガス、テトラクロロシランすなわちシリコンテトラクロライド(SiCl、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(SiCl、略称:OCTS)ガス等の無機系ハロシラン原料ガスや、モノシラン(SiH、略称:MS)ガス、ジシラン(Si、略称:DS)ガス、トリシラン(Si、略称:TS)ガス等のハロゲン基非含有の無機系シラン原料ガスを好適に用いることができる。
【0061】
不活性ガスとしては、Nガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0062】
(反応ガス供給ステップ:S5,S6)
成膜処理が終了した後、処理室201内のウエハ200に対して反応ガスとしてのNHガスを供給する(S5)。
【0063】
このステップでは、バルブ243b〜243dの開閉制御を、ステップS3におけるバルブ243a,243c,243dの開閉制御と同様の手順で行う。NHガスは、MFC 241bにより流量調整され、ノズル249bを介してガス供給孔250bから処理室201内へ供給される。処理室201内へ供給されたNHガスはガス供給孔250bを介してウエハ200に対して供給され、排気管231から排気される。このようにしてウエハ200に対して、NHガスが均一に供給されることとなる。
【0064】
MFC 241bで制御するNHガスの供給流量は、例えば10sccm以上、10000sccm以下の範囲内の流量とする。処理室201内の圧力は、例えば10Pa以上、3000Pa以下の範囲内の圧力とする。なお、NHガスにウエハを晒す時間は、例えば1秒以上、120秒以下の範囲内の時間とし、処理温度は、ウエハ200の温度が例えば100℃以上、700℃以下、より好ましくは100℃以上、550℃以下、さらに好ましくは250℃以上、450℃以下の範囲の温度となるようにヒータ207、反応体供給系、排気系を制御する。このように反応ガスをウエハ200に供給することによって、原料ガス供給ステップで形成されたSi含有膜をSiN膜へと変化させる。
【0065】
Si含有膜をSiN膜へ変化させた後、バルブ243bを閉じ、NHガスの供給を停止する。そして、ステップS4と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するNHガスや反応副生成物を処理室201内から排除する(S6)。このとき、処理室201内に残留するNHガス等を完全に排出しなくてもよい点は、ステップS12と同様である。なお、このステップS6を省略して反応ガス供給ステップと称してもよい。
【0066】
窒化剤、すなわち、N含有ガスとしては、NHガスの他、亜酸化窒素(NO)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等を用いてもよい。
【0067】
不活性ガスとしては、Nガスの他、例えば、ステップS4で例示した各種希ガスを用いることができる。
【0068】
(所定回数実施:S7)
上述したS3,S4,S5,S6をこの順番に沿って非同時に、すなわち、同期させることなく行うことを1サイクルとし、このサイクルを所定回数(n回)、すなわち、1回以上行うことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚のSiN膜を形成することができる。
【0069】
(大気圧復帰ステップ:S8)
上述の成膜処理が完了したら、ガス供給管232c,232dのそれぞれから不活性ガスとしてのNガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するNHガス等が処理室201内から除去される(不活性ガスパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰:S8)。
【0070】
(搬出ステップ:S9)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリングを介してシャッタによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出されることとなる(ウエハディスチャージ)。なお、ウエハディスチャージの後は、処理室201内へ空のボート217を搬入するようにしてもよい。
【0071】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
(a)熱エネルギーの波長を変換させることが可能な輻射板を設けることで、ウエハが吸収しやすい熱エネルギーと、ウエハ表面に形成された所定の膜が吸収しやすい熱エネルギーとを供給することが可能となり、ウエハとウエハ表面の所定の膜それぞれの加熱を個々に制御することが可能となる。
(b)ウエハとウエハ表面の所定の膜をそれぞれ加熱することが可能となることによって、ウエハの昇温や成膜処理の効率を向上させることが可能となり、スループットを向上させることが可能となる。
(c)輻射板を処理室内に設けることが可能となるため、遮蔽物となり得る構成を介することなくウエハ近傍からウエハ表面の所定の膜を加熱することが可能となり、不要な熱エネルギーの消費を回避することが可能となる。
(d)輻射板に切欠きを設けることによってウエハ側面を覆う面積を調整することが可能となり、加熱装置からの熱エネルギーと輻射板からの熱エネルギーとのバランスを簡単に制御することが可能となる。
【0072】
(変形例)
次に図7を用いて本発明の変形例を説明する。本変形例は、反応体の活性化手段としてプラズマを用いて基板処理を行う装置構成としている。
【0073】
図7に示すように、細長い構造を有する第1の電極である第1の棒状電極269及び第2の電極である第2の棒状電極270が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿って、バッファ室237内に配設されている。第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれは、ノズル249bと平行に設けられている。第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれは、上部より下部にわたって各電極を保護する保護管である電極保護管275により覆われることで保護されている。この第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270のいずれか一方は整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は基準電位であるアースに接続されている。この結果、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。主に、第1の棒状電極269、第2の棒状電極270、電極保護管275、整合器272、高周波電源273によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としてのプラズマ源が構成される。なお、プラズマ源は、反応ガスをプラズマで活性化させる活性化機構として機能する。
【0074】
電極保護管275は、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれをバッファ室237の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237内に挿入できる構造となっている。ここで、電極保護管275の内部は外気(大気)と同一雰囲気であると、電極保護管275にそれぞれ挿入された第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270はヒータ207による熱で酸化されてしまう。そこで、電極保護管275の内部には窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えて第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構が設けられている。
【0075】
このように、基板処理にプラズマによる活性化機構を用いて、上述した第1の実施形態における基板処理工程を行う。本変形例における基板処理工程の処理条件は、反応ガス供給ステップS5以外は、上述した第1の実施形態における基板処理工程と同じ条件である。
【0076】
本変形例における反応ガス供給ステップS5における処理条件は以下の通りである。例えば、MFC241bで制御するNHガスの供給流量は、例えば100sccm以上、10000sccm以下の範囲内の流量とする。棒状電極269,270間に印加する高周波電力(RF電力)は、例えば50W以上、1000W以下の範囲内の電力とする。処理室201内の圧力は、例えば1Pa以上、500Pa以下、好ましくは1以上、100Pa以下の範囲内の圧力とする。プラズマを用いることで、処理室201内の圧力をこのような比較的低い圧力帯としても、NHガスを活性化させることが可能となる。NHガスをプラズマ励起させることにより得られる活性種をウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1秒以上、120秒以下、好ましくは1秒以上、60秒以下の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度はウエハ200の温度が例えば100℃以上、700℃以下、より好ましくは100℃以上、550℃以下、さらに好ましくは250℃以上、450℃以下の範囲の温度となるような温度に設定する。
【0077】
以上のように基板処理にプラズマによる活性化機構を用いて基板処理を行うことによって、第1の実施形態によって得られる効果に加え、低温条件下で基板処理を行うことが可能となり、サーマルバジェット等の悪影響をより抑制することが可能となる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0079】
例えば、上述の実施形態では、原料を供給した後に反応体を供給する例について説明した。本発明はこのような態様に限定されず、原料、反応体の供給順序は逆でもよい。すなわち、反応体を供給した後に原料を供給するようにしてもよい。供給順序を変えることにより、形成される膜の膜質や組成比を変化させることが可能となる。
【0080】
上述の実施形態等では、ウエハ200上にSiN膜を形成する例について説明した。本発明はこのような態様に限定されず、Oガスなどの酸化剤を用いてウエハ200上に、SiO膜、SiOC膜、SiOCN膜、SiON膜等のSi系酸化膜を形成する場合にも、好適に適用可能である。
【0081】
例えば、上述したガスの他、もしくは、これらのガスに加え、プロピレン(C)ガス等の炭素(C)含有ガス、三塩化硼素(BCl)ガス等の硼素(B)含有ガス等を用い、例えば、SiO膜、SiON膜、SiOCN膜、SiOC膜、SiCN膜、SiBN膜、SiBCN膜、BCN膜等を形成することができる。なお、各ガスを流す順番は適宜変更することができる。これらの成膜を行う場合においても、上述の実施形態と同様な処理条件にて成膜を行うことができ、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0082】
また、本発明は、ウエハ200上に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属元素を含む金属系酸化膜や金属系窒化膜を形成する場合においても、好適に適用可能である。すなわち、本発明は、ウエハ200上に、Ti膜、TiO膜、TiOC膜、TiOCN膜、TiON膜、TiN膜、TiBN膜、TiBCN膜、ZrN膜、ZrO膜、ZrOC膜、ZrOCN膜、ZrON膜、ZrN膜、ZrBN膜、ZrBCN膜、HfO膜、HfOC膜、HfOCN膜、HfON膜、HfN膜、HfBN膜、HfBCN膜、TaO膜、TaOC膜、TaOCN膜、TaON膜、TaN膜、TaBN膜、TaBCN膜、NbO膜、NbOC膜、NbOCN膜、NbON膜、NbN膜、NbBN膜、NbBCN膜、AlO膜、AlOC膜、AlOCN膜、AlON膜、AlN膜、AlBN膜、AlBCN膜、MoO膜、MoOC膜、MoOCN膜、MoON膜、MoN膜、MoBN膜、MoBCN膜、W膜、WO膜、WOC膜、WOCN膜、WON膜、WN膜、WBN膜、WBCN膜等を形成する場合にも、好適に適用することが可能となる。
【0083】
これらの場合、例えば、原料ガスとして、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(Ti[N(CH、略称:TDMAT)ガス、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(Hf[N(C)(CH)]、略称:TEMAH)ガス、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(Zr[N(C)(CH)]、略称:TEMAZ)ガス、トリメチルアルミニウム(Al(CH、略称:TMA)ガス、チタニウムテトラクロライド(TiCl)ガス、ハフニウムテトラクロライド(HfCl)ガス等を用いることができる。
【0084】
すなわち、本発明は、半金属元素を含む半金属系膜や金属元素を含む金属系膜を形成する場合に、好適に適用することができる。これらの成膜処理の処理手順、処理条件は、上述の実施形態や変形例に示す成膜処理と同様な処理手順、処理条件とすることができる。これらの場合においても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0085】
成膜処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各種処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各種処理を迅速に開始できるようになる。
【0086】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上述べたように、本発明は、均一な基板処理を可能とする基板処理技術を提供することができる。
【符号の説明】
【0088】
101…輻射板(輻射部材、波長変換部)、200…ウエハ、201…処理室、207…ヒータ(加熱装置)、217…ボート(基板保持具)、232a、232b、232c、232d…ガス供給管、249a,249b…ノズル、250a、250b…ガス供給孔。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7