【実施例】
【0061】
以下,実施例を用いて,本発明を具体的に説明する。ただし,本発明は,以下の実施例に限定されることなく,公知の手法に基づく様々な改良を加えることができるものである。
【0062】
<実施例1> 発酵乳基材の低温保持:有
生乳:500g,脱脂粉乳:76g,生クリーム:23g,水道水:401gを混合して,原料乳(ヨーグルトミックス,無脂乳固形分(SNF):9.5重量%,乳脂肪分:3.0重量%)を調製し,95℃に5分間で加熱殺菌した後に,約10℃(8℃〜12℃)に冷却した。冷却後の原料乳に,乳酸菌スタータ(明治社製,明治ブルガリア ヨーグルトLB81から分離した乳酸菌)を2重量%で添加(接種)して,発酵乳基材(ヨーグルトベース)を得た。実験の再現性の確認のため,発酵乳基材を製造する操作を2回で行った。1回目と2回目の発酵乳基材のそれぞれについて,ブルガリア菌の菌数とサーモフィルス菌の菌数を測定した。
【0063】
1回目の発酵乳基材では,ブルガリア菌の菌数が0.1×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が1.5×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.067であった。
2回目の発酵乳基材では,ブルガリア菌の菌数が0.3×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が1.1×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.273であった。
【0064】
そして,この発酵乳基材を,5〜10℃に,3日間(72時間)で低温保持した。また,発酵乳基材を低温保持している間,発酵乳基材に対して窒素ガス(N
2)を注入して嫌気状態とした。その後,この発酵乳基材を40℃に加温してから,窒素ガス(N
2)を注入し,発酵乳基材の溶存酸素濃度(DO)を5ppmに低減した。その後,この発酵乳基材をカップ容器(容量:100g,プラスチック製)へ充填し,発酵室(40℃)に,乳酸酸度が0.8%に到達するまで,約3時間で静置してから,冷蔵室(10℃以下)で冷却して,発酵乳(セットタイプヨーグルト)[実施例1]を製造した。上記1回目の発酵乳基材と2回目の発酵乳基材を用いて,実施例1の発酵乳を製造する操作を2回で行った。1回目と2回目の実施例1のそれぞれについて,ブルガリア菌の菌数とサーモフィルス菌の菌数を測定した。
【0065】
1回目の実施例1(発酵乳)では,ブルガリア菌の菌数が38.5×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が40.0×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.963であった。
2回目の実施例1(発酵乳)では,ブルガリア菌の菌数が33.5×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が38.0×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.882であった。
【0066】
<比較例1> 発酵乳基材の低温保持:無
発酵乳基材を低温保持することの効果を確認するために,低温保持せずに,発酵乳(セットタイプヨーグルト)[比較例1]を製造した。低温保持の有無以外について,比較例1の製造条件は,上記実施例1と同じ条件とした。
【0067】
すなわち,生乳:500g,脱脂粉乳:76g,生クリーム:23g,水道水:401gを混合して,原料乳(ヨーグルトミックス,無脂乳固形分(SNF):9.5重量%,乳脂肪分:3.0重量%)を調製し,95℃に5分間で加熱殺菌した後に,約10℃(8℃〜12℃)に冷却した。そして,冷却後の原料乳に,乳酸菌スタータ(明治社製,明治ブルガリア ヨーグルトLB81から分離した乳酸菌)を2重量%で添加(接種)して,発酵乳基材(ヨーグルトベース)を得た。実験の再現性の確認のため,発酵乳基材を製造する作業を2回で行った。1回目と2回目の発酵乳基材のそれぞれについて,ブルガリア菌の菌数とサーモフィルス菌の菌数を測定した。
【0068】
1回目の発酵乳基材では,ブルガリア菌の菌数が0.6×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が2.0×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.300であった。
2回目の発酵乳基材では,ブルガリア菌の菌数が0.3×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が2.2×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.136であった。
【0069】
乳酸菌スタータの添加後,すぐに,この発酵乳基材を40℃にまで加温してから,窒素ガス(N
2)を注入し,発酵乳基材の溶存酸素濃度(DO)を5ppmに低減した。その後,この発酵乳基材をカップ容器(容量:100g,プラスチック製)へ充填し,発酵室(40℃)に,乳酸酸度が0.8%に到達するまで,約3時間で静置してから,冷蔵室(10℃以下)で冷却して,発酵乳(セットタイプヨーグルト)[比較例1]を製造した。上記1回目の発酵乳基材と2回目の発酵乳基材を用いて,比較例1の発酵乳を製造する操作を2回で行った。1回目と2回目の実施例1のそれぞれについて,ブルガリア菌の菌数とサーモフィルス菌の菌数を測定した。
【0070】
1回目の比較例1(発酵乳)では,ブルガリア菌の菌数が16.5×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が91.5×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.180であった。
2回目の比較例1(発酵乳)では,ブルガリア菌の菌数が10.0×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が86.0×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.116であった。
【0071】
[発酵乳基材の菌数の比較]
以下の表1は,実施例1で用いた発酵乳基材と比較例1で用いた発酵乳基材における,ブルガリア菌とサーモフィルス菌の菌数の対比を示している。
【0072】
【表1】
【0073】
[発酵乳の菌数の比較]
以下の表2は,実施例1の発酵乳と比較例1の発酵乳における,ブルガリア菌とサーモフィルス菌の菌数の対比を示している。
【0074】
【表2】
【0075】
実施例1において,発酵乳基材の菌数比(α)と発酵乳基材の菌数比(β)を比較すると,発酵乳基材の菌数比(β)が発酵乳基材の菌数比(α)よりも大きい数値となった(β>α)。1回目の実施例1では,β/αの値が,0.963÷0.067=14.373…となった。2回目の実施例1では,β/αの値が,0.882÷0.273=3.230…となった。
【0076】
<実施例2> 発酵乳基材の低温保持:有
脱脂粉乳:124g,無塩バター:4,砂糖:54g,水道水:818gを混合して,原料乳(ヨーグルトミックス,無脂乳固形分(SNF):9.5重量%,乳脂肪分:3.0重量%)を調製し,95℃に5分間で加熱殺菌した後に,約10℃(8℃〜12℃)に冷却した。冷却後の原料乳に,乳酸菌スタータ(明治社製,明治ヨーグルトR−1から分離した乳酸菌)を2重量%で添加(接種)して,発酵乳基材(ヨーグルトベース)を得た。実験の再現性の確認のため,発酵乳基材を製造する操作を2回で行った。1回目と2回目の発酵乳基材のそれぞれについて,ブルガリア菌の菌数とサーモフィルス菌の菌数を測定した。
【0077】
1回目の発酵乳基材では,ブルガリア菌の菌数が0.4×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が1.1×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.364であった。
2回目の発酵乳基材では,ブルガリア菌の菌数が0.3×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が1.1×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.273であった。
【0078】
そして,この発酵乳基材を,5〜10℃に,2日間(48時間)で低温保持した。また,発酵乳基材を低温保持している間,発酵乳基材に対して窒素ガス(N
2)を注入して嫌気状態とした。その後,発酵乳基材を38℃にまで加温してから,窒素(N
2)を注入し,発酵乳基材の溶存酸素濃度(DO)を3ppmに低減した後に,小型のバット(容量:2kg,ステンレス製)へ充填し,発酵室(38℃)に,乳酸酸度が0.8%に到達するまで,約4時間で静置してから,発酵乳のカードを破砕した。その後,得られた発酵乳をカップ容器(容量:100g,プラスチック製)へ充填し,冷蔵室(10℃以下)で冷却して,発酵乳(ソフトタイプヨーグルト)[実施例2]を製造した。上記1回目の発酵乳基材と2回目の発酵乳基材を用いて,実施例2の発酵乳を製造する操作を2回で行った。1回目と2回目の実施例2のそれぞれについて,ブルガリア菌の菌数とサーモフィルス菌の菌数を測定した。
【0079】
1回目の実施例2(発酵乳)では,ブルガリア菌の菌数が43.0×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が51.0×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.843であった。
2回目の実施例2(発酵乳)では,ブルガリア菌の菌数が41.0×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が46.5×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.882であった。
【0080】
<比較例2> 発酵乳基材の低温保持:無
発酵乳基材を低温保持することの効果を確認するために,低温保持せずに,発酵乳(ソフトタイプヨーグルト)[比較例2]を製造した。低温保持の有無以外について,比較例2の製造条件は,上記実施例2と同じ条件とした。
【0081】
すなわち,脱脂粉乳:124g,無塩バター:4,砂糖:54g,水道水:818gを混合して,原料乳(ヨーグルトミックス,無脂乳固形分(SNF):9.5重量%,乳脂肪分:3.0重量%)を調製し,95℃に5分間で加熱殺菌した後に,約10℃(8℃〜12℃)に冷却した。冷却後の原料乳に,乳酸菌スタータ(明治社製,明治ヨーグルトR−1から分離した乳酸菌)を2重量%で添加(接種)して,発酵乳基材(ヨーグルトベース)を得た。実験の再現性の確認のため,発酵乳基材を製造する操作を2回で行った。1回目と2回目の発酵乳基材のそれぞれについて,ブルガリア菌の菌数とサーモフィルス菌の菌数を測定した。
【0082】
1回目の発酵乳基材では,ブルガリア菌の菌数が0.2×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が0.7×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.286であった。
2回目の発酵乳基材では,ブルガリア菌の菌数が0.3×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が1.3×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.231であった。
【0083】
乳酸菌スタータの添加後,すぐに,発酵乳基材を38℃にまで加温してから,窒素(N
2)を注入し,発酵乳基材の溶存酸素濃度(DO)を3ppmに低減した後に,小型のバット(容量:2kg,ステンレス製)へ充填し,発酵室(38℃)に,乳酸酸度が0.8%に到達するまで,約4時間で静置してから,発酵乳のカードを破砕した。その後,得られた発酵乳をカップ容器(容量:100g,プラスチック製)へ充填し,冷蔵室(10℃以下)で冷却して,発酵乳(ソフトタイプヨーグルト)[比較例2]を製造した。上記1回目の発酵乳基材と2回目の発酵乳基材を用いて,比較例2の発酵乳を製造する操作を2回で行った。1回目と2回目の実施例2のそれぞれについて,ブルガリア菌の菌数とサーモフィルス菌の菌数を測定した。
【0084】
1回目の比較例2(発酵乳)では,ブルガリア菌の菌数が28.0×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が73.5×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.381であった。
2回目の比較例2(発酵乳)では,ブルガリア菌の菌数が21.5×10
7cfu/gであり,サーモフィルス菌の菌数が111.5×10
7cfu/gであった。そして,この菌数比(ブルガリア菌/サーモフィルス菌)は,0.193であった。
【0085】
[発酵乳基材の菌数の比較]
以下の表3は,実施例2で用いた発酵乳基材と比較例2で用いた発酵乳基材における,ブルガリア菌とサーモフィルス菌の菌数の対比を示している。
【0086】
【表3】
【0087】
[発酵乳の菌数の比較]
以下の表4は,実施例2の発酵乳と比較例2の発酵乳における,ブルガリア菌とサーモフィルス菌の菌数の対比を示している。
【0088】
【表4】
【0089】
実施例2において,発酵乳基材の菌数比(α)と発酵乳基材の菌数比(β)を比較すると,発酵乳基材の菌数比(β)が発酵乳基材の菌数比(α)よりも大きい数値となった(β>α)。1回目の実施例2では,β/αの値が,0.843÷0.364=2.315…となった。2回目の実施例2では,β/αの値が,0.882÷0.273=3.230…となった。
【0090】
[発酵乳の多糖体の濃度の比較]
以下の表5は,実施例2の発酵乳に含まれる多糖体の濃度(産生量)と,比較例2の発酵乳に含まれる多糖体の濃度(産生量)の対比を示している。
【表5】
【0091】
上記の表5に示されるように,実施例2の発酵乳では,比較例2の発酵乳よりも,多糖体の濃度が高くなっていた。この結果は,表4に示されるように,実施例2の発酵乳では,比較例2の発酵乳よりも,ブルガリア菌の菌数が多いことに起因するものであると考えられる。
【0092】
なお,発酵乳に含まれる多糖体の濃度を測定する際には,100gの発酵乳から多糖体を分離し,この菌体外の多糖体をフェノール−硫酸法により定量した。なお,発酵乳から多糖体を分離する方法には,以下の工程a)〜d)を行なった。
a)トリクロロ酢酸を用いて,除タンパクする。
b)エタノール沈殿法により,多糖体を沈澱させる。
c)透析膜を用いて,前記の多糖体の水溶液を透析する。
d)高分子側の水溶液を得る。
ただし,除タンパクや,エタノール沈殿法,透析などの工程では,乳酸菌,培養液,培養条件などに応じて,その操作条件などを適宜調整して行うことができる。
【0093】
上記の表1〜表4に示されるとおり,発酵前の発酵乳基材に低温保持処理を行った実施例1及び2では,発酵前の発酵乳基材に低温保持処理を行わなかった比較例1及び2と比較して,いずれも,ブルガリア菌の菌数が多くなり,サーモフィルス菌の菌数が少なくなった。このことから,発酵前に発酵乳基材を,発酵促進温度(例えば,30℃〜40℃)よりも低温(例えば,15℃以下)で保持することにより,ブルガリア菌の増殖が促進されて,サーモフィルス菌の増殖が抑制されることが確認された。一方,上記表5に示されるとおり,発酵前の発酵乳基材に低温保持処理を行った実施例2では,発酵前の発酵乳基材に低温保持処理を行わなかった比較例2と比較して,発酵乳に含まれる多糖体の総量が多くなった。このことから,発酵前に発酵乳基材を,発酵促進温度よりも低温で保持してから発酵させることにより,ブルガリア菌に由来する多糖体を多く含む発酵乳を製造できることが確認された。