【文献】
Current Opinion in Biotechnology,2014年 8月28日,30,p.211-217
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、
(a).インスリンの少なくとも1つのアナログおよび/または誘導体;および
(b).Zn(II);および
(c).ソルビトール;および
(d).場合によりプロタミン
を含む医薬製剤に関する。
【0011】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、本発明による水性医薬製剤を200mOsmol/kgから350mOsmol/kgまで、200mOsmol/kgから300mOsmol/kgまで、230mOsmol/kgから290mOsmol/kgまでの範囲にあるモル浸透圧濃度に、または260mOsmol/kgにあるモル浸透圧濃度に適用させるのに十分な濃度で存在するソルビトールを含む。
【0012】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、水性医薬製剤である。
【0013】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、4.0から6.0まで、4.5から6.0まで、4.5から5.5まで、5.0から5.5まで、5.0から5.2までの等電点(IEP)、または5.1の等電点を有する、インスリンの少なくとも1つのアナログおよび/または誘導体を含む。
【0014】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、6.0から9.0までの範囲、6.5から8.5までの範囲、7.0から8.0までの範囲、7.0から7.8までの範囲、7.1から7.6までの範囲のpH値を、もしくは7.2の、7.3の、7.4のもしくは7.5の、または7.4のpH値を有する。
【0015】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、インスリンアスパルト、インスリンリスプロおよび/またはインスリングルリジンからなる群から選択される、インスリンの少なくとも1つのアナログを含む。一実施形態では、本発明による医薬製剤は、インスリンリスプロである、インスリンのアナログを含む。一実施形態では、本発明による医薬製剤は、インスリンアスパルトである、インスリンのアナログを含む。一実施形態では、本発明による医薬製剤は、インスリングルリジンである、インスリンのアナログを含む。
【0016】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、インスリンデテミルおよび/またはインスリンデグルデクからなる群から選択されるインスリンの誘導体を含む。一実施形態では、本発明による医薬製剤は、インスリンデテミルである、インスリンの誘導体を含む。一実施形態では、本発明による医薬製剤は、インスリンデグルデクである、インスリンの誘導体を含む。
【0017】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、10U/mLから1000U/mLまで、10U/mLから600U/mLまで、10U/mLから300U/mLまで、50U/mLから300U/mLまでの濃度で、または100U/mLの濃度で存在する、インスリンの少なくとも1つのアナログおよび/または誘導体を含む。
【0018】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、60nmol/mLから6000nmol/mLまで、60nmol/mLから3600nmol/mLまで、60nmol/mLから1800nmol/mLまで、300nmol/mLから1800nmol/mLまでの濃度で、または600nmol/mLの濃度で存在するインスリンのアナログおよび/または誘導体を含む。
【0019】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、0.0100mg/mLから0.0600mg/mLまで、0.0150mg/mLから0.0500mg/mLまで、0.0150mg/mLから0.0300mg/mLまで、0.0150mg/mLから0.0200mg/mLまで、0.0190mg/mLから0.0200mg/mLまでの濃度で、または0.0196mg/mLの濃度で存在するZn(II)を含む。
【0020】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、塩化亜鉛(ZnCl
2)もしくは酸化亜鉛(ZnO)または酢酸亜鉛(無水:C
4H
6O
4Znまたは脱水C
4H
6O
4Zn・2H
2O)を含む。
【0021】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、0.0100mg/100Uから0.0600mg/100Uまで、0.0150mg/100Uから0.0500mg/100Uまで、0.0150mg/100Uから0.0300mg/100Uまで、0.0150mg/100Uから0.0200mg/100Uまで、0.0190mg/100Uから0.0200mg/100Uまでの濃度で、または0.0196mg/100Uの濃度で存在するZn(II)を含む。
【0022】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、塩化ナトリウムをさらに含む。
【0023】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、0.01mg/mLから15mg/mLまで、0.1mg/mLから15mg/mLまで、0.1mg/mLから10mg/mLまで、1mg/mLから10mg/mLまで、2.0mg/mLから10mg/mLまで、3.0mg/mLから9.0mg/mLまで、4.0mg/mLから9.0mg/mLまで、5.0mg/mLから9.0mg/mLまで、6.0mg/mLから9.0mg/mLまで、6.8mg/mLから8.3mg/mLまでの濃度で、6.9mg/mL、7.0mg/mL、7.1mg/mL、7.2mg/mL、7.3mg/mL、7.4mg/mL、7.5mg/mL、7.6mg/mL、7.7mg/mL、7.8mg/mL、7.9mg/mL、8.0mg/mL、8.1mg/mL、8.2mg/mLもしくは8.3mg/mL、または6.8mg/mLの濃度で存在する塩化ナトリウムを含む。
【0024】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、緩衝剤をさらに含む。
【0025】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3−ジオール(TRIS)、リン酸塩、クエン酸またはクエン酸塩、酢酸およびその塩、グリシルグリシンならびにメチオニンを含む群から選択される緩衝剤をさらに含む。一実施形態では、本発明による医薬製剤は、リン酸塩である、すなわちNa
2HPO
4またはNa
2HPO
4x7H
2Oである緩衝剤をさらに含む。
【0026】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、0.10から、0.15、0.20、0.25、0.30、0.32、0.35、0.40、0.45または0.5mg/mLの濃度で存在するプロタミンまたは硫酸プロタミンを含む。
【0027】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、安定剤を含み、それは一実施形態では界面活性剤であり、ソルビタンモノラウレートのポリオキシエチレン誘導体(例えばポリソルベート20)、オレイン酸のポリエトキシルエチレン誘導体(例えばポリソルベート80)、ポロキサマー(これはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーである)、またはポリソルベート20もしくはポリソルベート80もしくはそれらの混合物である。別の実施形態では、安定剤は、一実施形態では界面活性剤は、ソルビタンモノラウレートのポリオキシエチレン誘導体(例えばポリソルベート20)、オレイン酸のポリエトキシルエチレン誘導体(例えばポリソルベート80)、ポロキサマー(これはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーである)、またはポリソルベート20もしくはポリソルベート80もしくはそれらの混合物は、0.01から0.05mg/mLまでの濃度で、もしくは0.010mg/mL、0.015mg/mL、0.020mg/mL、0.025mg/mL、0.03mg/mL、または0.02mg/mLの濃度で存在する。
【0028】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、インスリンのアナログおよび/または誘導体を複数含み、ここで、インスリンのアナログおよび/または誘導体の1つは速効型インスリンであり、インスリンのアナログおよび/または誘導体の1つは持効型インスリンである。別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、インスリンアスパルト、インスリンリスプロおよび/またはインスリングルリジンを含む群から選択される速効型インスリンならびにインスリングラルギン、インスリンデテミルおよび/またはインスリンデグルデクを含む群から選択される持効型インスリンを含む。
【0029】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、1つまたはそれ以上のさらなる活性医薬成分を含む。一実施形態では、さらなる活性医薬成分は抗糖尿病剤である。別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、さらなる活性医薬成分として:GLP−1受容体アゴニスト、デュアルGLP−1受容体/グルカゴン受容体アゴニスト、ヒトFGF−21、FGF−21アナログ、FGF−21誘導体、インスリン、ヒトインスリン、インスリンのアナログ、およびインスリンの誘導体を含む群から選択される1つまたはそれ以上の抗糖尿病剤を含む。別の実施形態では、本発明による医薬製剤は:インスリンおよびインスリン誘導体、GLP−1、GLP−1アナログおよびGLP−1受容体アゴニスト、ポリマー結合したGLP−1およびGLP−1アナログ、デュアルGLP1/GIPアゴニスト、デュアルGLP1/グルカゴン受容体アゴニスト、PYY3−36またはそのアナログ、膵ポリペプチドまたはそのアナログ、グルカゴン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、GIP受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、グレリンアンタゴニストまたはインバースアゴニスト、キセニンおよびそのアナログ、DDP−IV阻害薬、SGLT2阻害薬、デュアルSGLT2/SGLT1阻害薬、ビグアニドチアゾリジンジオン、デュアルPPARアゴニスト、スルホニル尿素、メグリチニド、アルファ−グルコシダーゼ阻害薬、アミリンおよびアミリンアナログ、GPR119アゴニスト、GPR40アゴニスト、GPR120アゴニスト、GPR142アゴニスト、全身性または低吸収性TGR5アゴニスト、シクロセット(Cycloset)、11−ベータ−HSDの阻害薬、グルコキナーゼの活性化物質、DGATの阻害薬、タンパク質チロシンホスファターゼ1の阻害薬、グルコース−6−ホスファターゼの阻害薬、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼの阻害薬、グリコーゲンホスホリラーゼの阻害薬、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの阻害薬、グリコーゲンシンターゼキナーゼの阻害薬、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼの阻害薬、アルファ2−アンタゴニスト、CCR−2アンタゴニスト、グルコース輸送体−4のモジュレーター、ソマトスタチン受容体3アゴニスト、HMG−CoA−レダクターゼ阻害薬、フィブラート、ニコチン酸およびその誘導体、ニコチン酸受容体1アゴニスト、PPAR−アルファ、ガンマもしくはアルファ/ガンマアゴニストまたはモジュレーター、PPAR−デルタアゴニスト、ACAT阻害薬、コレステロール吸収阻害薬、胆汁酸−結合物質、IBAT阻害薬、MTP阻害薬、PCSK9のモジュレーター、肝選択的甲状腺ホルモン受容体βアゴニストによるLDL受容体上方制御物質、HDL上昇化合物、脂質代謝モジュレーター、PLA2阻害薬、ApoA−Iエンハンサー、コレステロール合成阻害薬、脂質代謝モジュレーター、オメガ−3脂肪酸およびそれらの誘導体、肥満処置の活性物質、例えばシブトラミン、テソフェンシン、オーリスタット、CB−1受容体アンタゴニスト、MCH−1アンタゴニスト、MC4受容体アゴニストおよび部分アゴニスト、NPY5アンタゴニストまたはNPY2アンタゴニスト、NPY4アゴニスト、ベータ−3−アゴニスト、レプチンまたはレプチンミメティック、5HT2c受容体のアゴニスト、またはブプロピオン/ナルトレキソンの組合せ(CONTRAVE)、ブプロピオン/ゾニサミド(EMPATIC)、ブプロピオン/フェンテルミンまたはプラムリンチド/メトレレプチン、QNEXA(フェンテルミン+トピラメート)、リパーゼ阻害薬、血管新生阻害薬、H3アンタゴニスト、AgRP阻害薬、三重モノアミン取り込み阻害薬(ノルエピネフリンおよびアセチルコリン)、MetAP2阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬ジルチアゼムの経鼻製剤、線維芽細胞増殖因子受容体4の産生に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチド−1を標的とするプロヒビチン、高血圧、慢性心不全またはアテローム性動脈硬化症に作用する薬物、例えばアンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、ACE阻害薬、ECE阻害薬、利尿薬、ベータ遮断薬、カルシウムアンタゴニスト、中枢作用高血圧薬、アルファ−2−アドレナリン作動性受容体のアンタゴニスト、中性エンドペプチダーゼの阻害薬、血小板凝集阻害薬を含む群から選択される1つまたはそれ以上のさらなる活性医薬成分を含む。
【0030】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、インスリンのアナログおよび/または誘導体を複数含み、ここで、インスリンのアナログおよび/または誘導体の1つは速効型インスリンであり、インスリンのアナログおよび/または誘導体の1つは持効型インスリンである。一実施形態では、速効型インスリンは、インスリンアスパルト、インスリンリスプロおよび/またはインスリングルリジンを含む群から選択され、ここで、持効型インスリンは、インスリンデテミルおよび/またはインスリンデグルデクを含む群から選択される。
【0031】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、(a).インスリンアスパルト3.5mg/mL;および(b).ソルビトール31.62mg/mL;および(c).メタクレゾール1.72mg/mL;および(d).フェノール1.50mg/mL;および(e).Zn(II)0.0196mg/mL;および(f).塩化ナトリウム0.58mg/mL;および(g).Na
2HPO
4x7H
2O1.88mg/mL;および(h).pHを7.4に調整する水酸化ナトリウムおよび/または塩酸;および(i).水からなる。
【0032】
別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、(a).インスリンアスパルト3.5mg/mL;および(b).ソルビトール31.62mg/mL;および(c).メタクレゾール1.72mg/mL;および(d).フェノール1.50mg/mL;および(e).Zn(II)0.0196mg/mL;および(f).塩化ナトリウム0.58mg/mL;および(g).Na
2HPO
4x7H
2O1.88mg/mL;および(h).プロタミン0.1mg/mLから0.5mg/mLまで;(i)pHを7.1から7.6までの範囲のpHに調整する水酸化ナトリウムおよび/または塩酸;および(j).水からなる。
【0033】
また、本発明は、真性糖尿病、高血糖症の処置に使用するための、および/または血糖値を低下させることに使用するための医薬製剤も提供する。
【0034】
また、本発明は、本発明による医薬製剤を製造する方法であって、構成成分を溶液または懸濁液の形態で一緒に混合し、所望のpHを調整し、水を用いて混合物を最終的な容積とする方法も提供する。
【0035】
また、本発明は、本発明による医薬製剤および医療器具の個別のパッケージを含むキットまたは組合せにも関する。一実施形態では、医療器具は:シリンジ、インスリン注射システム、インスリン輸注システム、インスリンポンプ、インスリンペン型注射デバイスを含む群から選択される。
【0036】
また、本発明は、本発明による医薬製剤および少なくとも1つのさらなる活性医薬成分および場合により医療器具の個別のパッケージを含むキットまたは組合せにも関する。一実施形態では、医療器具は、シリンジ、インスリン注射システム、インスリン輸注システム、インスリンポンプ、インスリンペン型注射デバイスを含む群から選択される。
【0037】
また、本発明は、本発明による医薬製剤および少なくとも1つのさらなる活性医薬成分および場合により医療器具の個別のパッケージを含むキットまたは組合せであって、さらなる活性医薬成分は抗糖尿病剤である、キットまたは組合せにも関する。
【0038】
また、本発明は、本発明による医薬製剤および少なくとも1つのさらなる活性医薬成分および場合により医療器具の個別のパッケージを含むキットまたは組合せであって、さらなる活性医薬成分は:GLP−1受容体アゴニスト、デュアルGLP−1受容体/グルカゴン受容体アゴニスト、ヒトFGF−21、FGF−21アナログ、FGF−21誘導体、インスリン、ヒトインスリン、インスリンのアナログ、およびインスリンの誘導体を含む群から選択される抗糖尿病剤である、キットまたは組合せにも関する。別の実施形態では、本発明による医薬製剤は:インスリンおよびインスリン誘導体、GLP−1、GLP−1アナログおよびGLP−1受容体アゴニスト、ポリマー結合したGLP−1およびGLP−1アナログ、デュアルGLP1/GIPアゴニスト、デュアルGLP1/グルカゴン受容体アゴニスト、PYY3−36またはそのアナログ、膵ポリペプチドまたはそのアナログ、グルカゴン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、GIP受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、グレリンアンタゴニストまたはインバースアゴニスト、キセニンおよびそのアナログ、DDP−IV阻害薬、SGLT2阻害薬、デュアルSGLT2/SGLT1阻害薬、ビグアニドチアゾリジンジオン、デュアルPPARアゴニスト、スルホニル尿素、メグリチニド、アルファ−グルコシダーゼ阻害薬、アミリンおよびアミリンアナログ、GPR119アゴニスト、GPR40アゴニスト、GPR120アゴニスト、GPR142アゴニスト、全身性または低吸収性TGR5アゴニスト、シクロセット、11−ベータ−HSDの阻害薬、グルコキナーゼの活性化物質、DGATの阻害薬、タンパク質チロシンホスファターゼ1の阻害薬、グルコース−6−ホスファターゼの阻害薬、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼの阻害薬、グリコーゲンホスホリラーゼの阻害薬、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの阻害薬、グリコーゲンシンターゼキナーゼの阻害薬、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼの阻害薬、アルファ2−アンタゴニスト、CCR−2アンタゴニスト、グルコース輸送体−4のモジュレーター、ソマトスタチン受容体3アゴニスト、HMG−CoA−レダクターゼ阻害薬、フィブラート、ニコチン酸およびその誘導体、ニコチン酸受容体1アゴニスト、PPAR−アルファ、ガンマもしくはアルファ/ガンマアゴニストまたはモジュレーター、PPAR−デルタアゴニスト、ACAT阻害薬、コレステロール吸収阻害薬、胆汁酸−結合物質、IBAT阻害薬、MTP阻害薬、PCSK9のモジュレーター、肝選択的甲状腺ホルモン受容体βアゴニストによるLDL受容体上方制御物質、HDL上昇化合物、脂質代謝モジュレーター、PLA2阻害薬、ApoA−Iエンハンサー、コレステロール合成阻害薬、脂質代謝モジュレーター、オメガ−3脂肪酸およびそれらの誘導体、肥満処置の活性物質、例えばシブトラミン、テソフェンシン、オーリスタット、CB−1受容体アンタゴニスト、MCH−1アンタゴニスト、MC4受容体アゴニストおよび部分アゴニスト、NPY5アンタゴニストまたはNPY2アンタゴニスト、NPY4アゴニスト、ベータ−3−アゴニスト、レプチンまたはレプチンミメティック、5HT2c受容体のアゴニスト、またはブプロピオン/ナルトレキソンの組合せ(CONTRAVE)、ブプロピオン/ゾニサミド(EMPATIC)、ブプロピオン/フェンテルミンまたはプラムリンチド/メトレレプチン、QNEXA(フェンテルミン+トピラメート)、リパーゼ阻害薬、血管新生阻害薬、H3アンタゴニスト、AgRP阻害薬、三重モノアミン取り込み阻害薬(ノルエピネフリンおよびアセチルコリン)、MetAP2阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬ジルチアゼムの経鼻製剤、線維芽細胞増殖因子受容体4の産生に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチド−1を標的とするプロヒビチン、高血圧、慢性心不全またはアテローム性動脈硬化症に作用する薬物、例えばアンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、ACE阻害薬、ECE阻害薬、利尿薬、ベータ遮断薬、カルシウムアンタゴニスト、中枢作用高血圧薬、アルファ−2−アドレナリン作動性受容体のアンタゴニスト、中性エンドペプチダーゼの阻害薬、血小板凝集阻害薬を含む群から選択される1つまたはそれ以上のさらなる活性医薬成分を含む。
【0039】
また、本発明は、本発明による医薬製剤および少なくとも1つのさらなる活性医薬成分および場合により医療器具の個別のパッケージを含むキットまたは組合せであって、キットはインスリンのアナログおよび/または誘導体を複数含み、インスリンのアナログおよび/または誘導体の1つは速効型インスリンであり、インスリンのアナログおよび/または誘導体の1つは持効型インスリンである、キットまたは組合せにも関する。一実施形態では、速効型インスリンは、インスリンアスパルト、インスリンリスプロおよび/またはインスリングルリジンを含む群から選択され、ここで、持効型インスリンは、インスリングラルギン、インスリンデテミルおよび/またはインスリンデグルデクを含む群から選択される。
【0040】
また、本発明は、真性糖尿病、高血糖症の処置に使用するための、および/または血糖値を低下させることに使用するための、本発明による医薬製剤および少なくとも1つのさらなる活性医薬成分および場合により医療器具の個別のパッケージを含むキットまたは組合せにも関する。
【0041】
別の実施形態では、本発明はまた、本発明による医薬製剤および少なくとも1つのさらなる活性医薬成分および場合により医療器具の個別のパッケージを含むキットまたは組合せであって、本発明による医薬製剤およびさらなる活性医薬成分は、一実施形態では抗糖尿病剤は、連続的に、別々に、経時的におよび/または段階的に投与される、キットまたは組合せにも関する。
【0042】
また、本発明は、動物および/またはヒトに医薬製剤を投与するための医療器具の使用にも関する。別の実施形態では、医療器具は:シリンジ、インスリン注射システム、インスリン輸注システム、インスリンポンプ、インスリンペン型注射デバイスを含む群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書で使用される、単数形の表現(「a」、「an」および「the」)であっても、文脈上明らかに他のことを示していない限り、複数形の言及を含んでいる。したがって、例えば、「担体(a carrier)」を含む充填材への言及は、1つまたはそれ以上の担体を含んでおり、「添加剤(an additive)」への言及は、そのような添加剤の1つまたはそれ以上への言及を含む。
【0044】
本明細書で使用される、「活性医薬成分」(API)という用語は、いくつかの薬理学的効果をもたらし、かつ状態の処置または予防に使用される薬学的に活性な任意の化学的または生物学的化合物およびそれの薬学的に許容される任意の塩ならびにそれらの任意の混合物を含む。例示的な薬学的に許容される塩には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、パモ酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリル硫酸、ナフタレンスルホン酸、リノール酸、リノレン酸、などが含まれる。本明細書で使用される、「活性医薬成分」、「薬物」、「活性剤」、「活性成分」、「活性物質」および「薬物」という用語は、同義語であることを意味し、すなわち、同一の意味を有する。
【0045】
一実施形態では、活性医薬成分は、抗糖尿病剤である。抗糖尿病剤の例は、Rote Liste 2012年、第12章に見いだされる。抗糖尿病剤の例としては、次に詳述するように、(a)インスリン、インスリンアナログおよびインスリン誘導体、(b)グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)およびそのアナログおよび受容体アゴニスト、(c)デュアルGLP−1/GIPアゴニスト、ならびに(d)デュアルGLP−1/グルカゴン受容体アゴニストが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0046】
(a).インスリン、インスリンアナログおよびインスリン誘導体
インスリン、インスリンアナログおよびインスリン誘導体の例としては、インスリングラルギン(Lantus(登録商標))、インスリングルリジン(Apidra(登録商標))、インスリンデテミル(Levemir(登録商標))、インスリンリスプロ(Humalog(登録商標)/Liprolog(登録商標))、インスリンデグルデク(Tresiba(登録商標))、インスリンアスパルト(NovoLog(登録商標)/NovoRapid(登録商標))、基礎インスリンおよびアナログ(例えばLY2605541、LY2963016)、PEG化インスリンリスプロ、Humulin(登録商標)、Linjeta(登録商標)、SuliXen(登録商標)、NN1045、インスリン+Symlin(登録商標)、速効型および短時間作用型インスリン(例えばLinjeta(登録商標)、PH20インスリン、NN1218、HinsBet(登録商標))、経口、吸入、経皮および舌下インスリン(例えばExubera(登録商標)、Nasulin(登録商標)、Afrezza(登録商標)、インスリントレゴピル(tregopil)、TPM−02/インスリン、Capsulin(登録商標)、Oral−lyn(登録商標)、Cobalamin(登録商標)、経口インスリン、ORMD0801、NN1953、VIAtab(登録商標))が含まれるが、これらに限定されるわけではない。また、さらに、二官能性リンカーによってアルブミンまたは別のタンパク質に結合されたインスリン誘導体も含まれている。
【0047】
(b).グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、GLP−1アナログおよびGLP−1受容体アゴニスト
GLP−1、GLP−1アナログおよびGLP−1受容体アゴニストの例としては、リキシセナチド(AVE0010/ZP10/Lyxumia(登録商標))、エキセナチド/エキセンディン−4(Byetta(登録商標)/Bydureon(登録商標)/ITCA650、リラグルチド/Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、rエキセンディン−4(rExendin−4)、CJC−1134−PC、PB−1023、TTP−054、HM−11260C、CM−3、GLP−1エリゲン(GLP−1 Eligen)、ORMD−0901、NN9924、Nodexen、Viador−GLP−1、CVX−096、ZYOG−1、ZYD−1、MAR−701、ZP−2929、ZP−3022、CAM−2036、DA−15864、ARI−2651、ARI−2255、エキセナチド−XTENおよびグルカゴン−XTEN、AMX−8089+VRS−859ならびにポリマー結合したGLP−1およびGLP−1アナログが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0048】
(c).デュアルGLP−1/GIPアゴニスト
例えば:MAR701、MAR−709、BHM081/BHM089/BHM098。
【0049】
(d).デュアルGLP−1/グルカゴン受容体アゴニスト
デュアルGLP−1/グルカゴン受容体アゴニストの例としては、OAP−189(PF−05212389、TKS−1225)、TT−401/402、ZP2929、LAPS−HMOXM25、MOD−6030が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0050】
本発明の医薬製剤中に含めることができる他の適した活性医薬成分には、以下が含まれるが、これらに限定されるわけではない:
さらなる胃腸ペプチド、例えばペプチドYY3−36(PYY3−36)またはそのアナログおよび膵ポリペプチド(PP)またはそのアナログ。
グルカゴン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、GIP受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、グレリンアンタゴニストまたはインバースアゴニストならびにキセニンおよびそのアナログ。
ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP−4)阻害薬、例えば:アログリプチン/Nesina(登録商標)、リナグリプチン/BI−1356/Ondero(登録商標)、/Trajenta(登録商標)/Tradjenta(登録商標)/Trayenta(登録商標)、サクサグリプチン/Onglyza(登録商標)、シタグリプチン/Januvia(登録商標)/Xelevia(登録商標)/Tesavel(登録商標)、シタグリプチン+メトホルミン/Janumet(登録商標)/Velmetia(登録商標)、アイルダグリプチン(aildagliptin)、アナグリプチン、アエミグリプチン(aemigliptin)、テネグリプチン、メログリプチン(melogliptin)、トレラグリプチン、DA−1229、MK−3102、KM−223、KRP−104およびAri−2243。
ナトリウム依存性グルコース輸送体2(SGLT2)阻害薬、例えば:カナグリフロジン、ダパグリフロジン、レモグリフロジン、セルグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン(RO−4998452)、ルセオグリフロジン、LX−4211、エルツグリフロジン(PF−04971729)、EGT−0001442およびDSP−3235。
デュアルSGLT2/SGLT1阻害薬。
ビグアニド(例えばメトホルミン、ブホルミン、フェンホルミン)、チアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン、リボグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン)、デュアルPPARアゴニスト(例えばアレグリタザール、ムラグリタザール、テサグリタザール)、スルホニル尿素(例えばトルブタミド、グリベンクラミド、グリメピリド/Amaryl(登録商標)、グリピジド)、メグリチニド(例えばナテグリニド、レパグリニド、ミチグリニド)、アルファ−グルコシダーゼ阻害薬(例えばアカルボーズ、ミグリトール、ボグリボーズ)、アミリンおよびアミリンアナログ(例えばプラムリンチド/Symlin(登録商標))。
G−タンパク質共役受容体119(GPR119)アゴニスト(例えばGSK−1292263、PSN−821、MBX−2982、APD−597、ARRY−981)。
GPR40アゴニスト(例えばTAK−875、TUG−424、P−1736、JTT−851、GW9508)。
GPR120アゴニストおよびGPR142アゴニスト。
全身性または低吸収性TGR5(GPBAR1=G−タンパク質共役胆汁酸受容体1)アゴニスト(例えばINT−777、XL−475、SB756050)。
ブロモクリプチン/Cycloset(登録商標)、11−ベータ−ヒドロキシステロイド脱水素酵素(11−ベータ−HSD)の阻害薬(例えばLY2523199、BMS770767、RG−4929、BMS816336、AZD−8329、HSD−016、BI−135585)、グルコキナーゼの活性化物質(例えばPF−04991532、TTP−399、GK1−399、ARRY−403(AMG−151)、TAK−329、ZYGK1)、ジアシルグリセリンO−アシルトランスフェラーゼ(DGAT)の阻害薬(例えばプラジガスタット(pradigastat)(LCQ−908)、LCQ−908)、タンパク質チロシンホスファターゼ1の阻害薬(例えばトロデュスケミン)、グルコース−6−ホスファターゼの阻害薬、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼの阻害薬、グリコーゲンホスホリラーゼの阻害薬、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの阻害薬、グリコーゲンシンターゼキナーゼの阻害薬、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼの阻害薬、アルファ2アドレナリン作動性受容体アンタゴニスト、C−Cケモカイン受容体2型(CCR−2)アンタゴニスト、グルコース輸送体−4のモジュレーターおよびソマトスタチン受容体3アゴニスト(例えばMK−4256)。
【0051】
また、1つまたはそれ以上の脂質低下剤、例えば:3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−コエンザイム−A−レダクターゼ(HMG−CoA−レダクターゼ)阻害薬(例えばシンバスタチン、アトロバスタチン、ロスバスタチン)、フィブラート(例えばベザフィブラート、フェノフィブラート)、ニコチン酸およびその誘導体(例えばナイアシン、ナイアシンの遅延放出製剤を含む)、ニコチン酸受容体1アゴニスト(例えばGSK−256073)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR−)(アルファ、ガンマまたはアルファ/ガンマ)アゴニストまたはモジュレーター(例えばアレグリタザール)、PPAR−デルタアゴニスト、アセチル−CoA−アセチルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害薬(例えばアバシミブ)、コレステロール吸収阻害薬(例えばエゼチミブ)、胆汁酸−結合物質(例えばコレスチラミン、コレセベラム)、回腸胆汁酸輸送阻害薬(IBAT)(例えばGSK−2330672)、ミクロソームトリグリセリド転送タンパク(MTP)阻害薬(例えばロミタピド(AEGR−733)、SLx−4090、グラノタピド(granotapide))、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシンタイプ9(PCSK9)のモジュレーター(例えばREGN727/SAR236553、AMG−145、LGT−209、PF−04950615、MPSK3169A、LY3015014、ALD−306、ALN−PCS、BMS−962476、SPC5001、ISIS−394814、1B20、LGT−210、1D05、BMS−PCSK9Rx−2、SX−PCK9、RG7652)、LDL受容体上方制御物質、例えば肝選択的甲状腺ホルモン受容体ベータアゴニスト(例えばエピロチローム(KB−2115)、MB07811、ソベチロム(QRX−431)、VIA−3196、ZYT1)、HDL上昇化合物、例えば:CETP阻害薬(例えばトルセトラピブ、アナセトラピブ(MK0859)、ダルセトラピブ、エバセトラピブ、JTT−302、DRL−17822、TA−8995、R−1658、LY−2484595)またはABC1制御物質、脂質代謝モジュレーター(例えばBMS−823778、TAP−301、DRL−21994、DRL−21995)、ホスホリパーゼA2(PLA2)阻害薬(例えばダラプラジブ/Tyrisa(登録商標)、バレスプラジブ、リラプラジブ)、ApoA−Iエンハンサー(例えばRVX−208、CER−001、MDCO−216、CSL−112、VRX−HDL、VRX−1243、VIRxSYS)、コレステロール合成阻害薬(例えばETC−1002)および脂質代謝モジュレーター(例えばBMS−823778、TAP−301、DRL−21994、DRL−21995)ならびにオメガ−3脂肪酸およびそれらの誘導体(例えばイコサペントエチル(AMR101)、Epanova(登録商標)、AKR−063、NKPL−66)も、活性医薬成分として適している。
【0052】
医薬製剤中に含めることができる他の適した活性医薬成分としては、限定されるわけではないが:
シブトラミン、テソフェンシン、オーリスタット、カンナビノイド受容体1(CB1)アンタゴニスト(例えばTM−38837)、メラニン凝集ホルモン(MCH−1)アンタゴニスト(例えばBMS−830216、ALB−127158(a))、MC4受容体アゴニストおよび部分アゴニスト(例えばAZD−2820、RM−493)、神経ペプチドY5(NPY5)アンタゴニストまたはNPY2アンタゴニスト(例えばベルネペリト、S−234462)、NPY4アゴニスト(例えばPP−1420)、ベータ−3−アドレナリン作動性受容体アゴニスト、レプチンまたはレプチンミメティック、5−ヒドロキシトリプタミン2c(5HT2c)受容体のアゴニスト(例えばロルカセリン)、またはブプロピオン/ナルトレキソン(Contrave(登録商標))、ブプロピオン/ゾニサミド(Empatic(登録商標))、ブプロピオン/フェンテルミンもしくはプラムリンチド/メトレレプチン、フェンテルミン/トピラメート(Qsymia(登録商標))の組合せ、リパーゼ阻害薬(例えばセチリスタット/Cametor(登録商標))、血管新生阻害薬(例えばALS−L1023)、ヒスタミンH3アンタゴニスト(例えばHPP−404)、AgRP(アグーチ関連タンパク質)阻害薬(例えばTTP−435)、三重モノアミン取り込み阻害薬(ドパミン、ノルエピネフリンおよびセロトニン再取り込み)(例えばテソフェンシン)、メチオニンアミノペプチダーゼ2(MetAP2)阻害薬(例えばベロラニブ(beloranib))、カルシウムチャネル遮断薬ジルチアゼムの経鼻製剤(例えばCP−404)および線維芽細胞増殖因子受容体4(FGFR4)の産生に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えばISIS−FGFR4Rx)またはペプチド−1を標的とするプロヒビチン(例えばAdipotide(登録商標))を含む肥満処置のための1つまたはそれ以上の活性物質が含まれる。
【0053】
医薬製剤中に含めることができるさらなる適した活性医薬成分としては:
アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト(例えばテルミサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、ロサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、タソサルタン、アジルサルタン)、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、エンドセリン変換酵素(ECE)阻害薬、利尿薬、ベータ遮断薬、カルシウムアンタゴニスト、中枢作用性高血圧薬、アルファ−2−アドレナリン作動性受容体のアンタゴニスト、中性エンドペプチダーゼの阻害薬、血小板凝集阻害薬などまたは適切なそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0054】
本明細書で使用される、「インスリンのアナログ」および「インスリンアナログ」という用語は、天然のインスリン中に存在する少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失することによっておよび/もしくは置換することによって、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって、天然のインスリンの構造から、例えばヒトインスリンの構造から形式的に誘導することができる分子構造を有するポリペプチドのことをいう。付加および/または置換されたアミノ酸残基は、コード化可能なアミノ酸残基もしくは他の天然の残基、またはまったくの合成アミノ酸残基のいずれかでありうる。インスリンのアナログの例には、以下が含まれるが、これらに限定されるものではない:
(i).「インスリンアスパルト」は、プロリンであるヒトインスリン中のアミノ酸B28(すなわちヒトインスリンのB鎖中の28番のアミノ酸)が、アスパラギン酸によって置き換えられるように組換えDNA技術により作製される;
(ii).「インスリンリスプロ」は、ヒトインスリンのB鎖のC末端上の最後から2番目のリシン残基とプロリン残基とが逆転するように組換えDNA技術により作製される(ヒトインスリン:Pro
B28Lys
B29;インスリンリスプロ:Lys
B28Pro
B29);
(iii).「インスリングルリジン」は、B3位のアミノ酸アスパラギンがリシンと置き換えられ、かつB29位のリシンがグルタミン酸と置き換えられている点でヒトインスリンと異なる;
(iv).「インスリングラルギン」は、A21位のアスパラギンがグリシンと置き換えられ、かつB鎖がカルボキシ末端で2つのアルギニンによって延長されている点でヒトインスリンと異なる。
【0055】
本明細書で使用される、「水性」という用語は、溶媒が水である溶液のことをおよび/または外部相が水である懸濁液のことをおよび/または分散相もしくは連続相が水である乳濁液のことをいう。
【0056】
本明細書で使用される、「緩衝剤」という用語は、別の酸または塩基を添加しても、溶液、懸濁液および/または乳濁液の酸性度(pH)を指定された値の近くに維持するために使用する弱酸または弱塩基のことをいう。緩衝剤の機能は、酸または塩基を溶液に加えた場合にpH値の急激な変化を防ぐことである。水溶液、懸濁液および/または乳濁液中で、緩衝剤は、弱酸とその共役塩基との混合物でまたは弱塩基とその共役酸との混合物で存在する。緩衝剤の例には、以下が含まれるが、これらに限定されるわけではない:炭酸水素ナトリウム;酢酸または酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム、酢酸亜鉛);ホウ酸またはホウ酸塩;N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)またはその塩;3−[[1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−イル]アミノ]プロパン−1−スルホン酸(TAPS)またはその塩;2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)およびその塩;ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸(PIPES)およびその塩;N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタン−スルホン酸(ACES)およびその塩;コラミンクロリド;BES;2−[[1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−プロパン−2−イル]アミノ]エタンスルホン酸(TES)およびその塩;2−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]エタンスルホン酸(HEPES)およびその塩;アセトアミドグリシン;N−(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシル−メチル)エチル)グリシン(トリシン);グリシンアミド;2−(ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸(ビシン)およびその塩;プロピオン酸塩;3−[[1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−イル]−アミノ]−2−ヒドロキシ−プロパン−1−スルホン酸(TAPSO)およびその塩;3−モルホリノプロパン−1−スルホン酸(MOPS)およびその塩;生理食塩水−クエン酸ナトリウム(SSC)緩衝液;2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3−ジオール(同義語:TRIS、トリスアミン、THAM、トロメタミン、トロメタモール、トロメタン);クエン酸またはクエン酸塩(例えばクエン酸ナトリウム);リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二カリウム、リン酸一カリウムおよび/またはリン酸塩を含む他のいかなる緩衝剤。
【0057】
また、アミノ酸(遊離塩基性官能基または遊離酸性官能基を有する、例えばメチオニン、アルギニン)またはペプチド(遊離塩基性官能基または遊離酸性官能基を有する)を緩衝剤として使用してもよい。本明細書で使用される、「緩衝剤」という用語は、アミノ酸、ペプチドおよびタンパク質も含む。インスリンアナログおよび/もしくはインスリン誘導体ならびに/またはプロタミンは、ペプチドまたはペプチドの誘導体であるので(すなわち、いずれも遊離塩基性官能基または遊離酸性官能基を有するアミノ酸を含む)、これらは、ある種の緩衝能有することもあり、すなわち、緩衝剤ともみなされる。
【0058】
本明細書で使用される、「速効型インスリン」または「短時間作用型インスリン」という用語は、インスリンが介在する効果が、5〜15分以内に開始されかつ3〜4時間活性であり続けるインスリンアナログおよび/またはインスリン誘導体のことをいう。速効型インスリンの例には、以下が含まれるが、これらに限定されるわけではない:(i).インスリンアスパルト;(ii).インスリンリスプロ、および(iii).インスリングルリジン。
【0059】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して使用される、「含む(comprise)」という単語およびその単語の変化形、例えば「含んでいる(comprising)」および「含む(comprises)」は、他の添加剤、構成成分、整数または工程を除外することを意図するものではない。
【0060】
本明細書で使用される、「インスリンの誘導体」および「インスリン誘導体」という用語は、1つまたはそれ以上の有機置換基(例えば脂肪酸)が1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合している、天然のインスリンの構造から、例えばヒトインスリンの構造から形式的に誘導することができる分子構造を有するポリペプチドのことをいう。場合により、天然のインスリン中に存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸を、欠失していてもよいし、および/もしくはコード化不可能なアミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えてもよいし、またはコード化不可能なものを含めてアミノ酸を天然のインスリンに付加してもよい。インスリンの誘導体の例には、以下が含まれるが、これらに限定されるわけではない:
(i).B30位のC末端トレオニンが除去され、かつB29位のリシンのイプシロン−アミノ官能基に脂肪酸残基(ミリスチン酸)が結合された点でヒトインスリンと異なる、「インスリンデテミル」。(ii).最後のアミノ酸がB鎖から欠失している点で、かつLys
B29からヘキサデカン二酸までグルタミルリンクが付加されることにより、ヒトインスリンと異なる「インスリンデグルデク」。
【0061】
本明細書で使用される、「FGF−21」という用語は、「線維芽細胞増殖因子21」を意味する。FGF−21化合物は、ヒトFGF−21、FGF−21のアナログ(「FGF−21アナログ」と呼ぶ)またはFGF−21の誘導体(「FGF−21誘導体」と呼ぶ)であってもよい。
【0062】
本明細書で使用される、「製剤」という用語は、規定の成分を所定の量または割合で含む生成物、ならびに規定の成分を規定の量で組み合わせることから直接または間接的に得られる任意の生成物のことをいう。医薬製剤に関して、この用語は、1つまたはそれ以上の活性成分と場合により不活性成分を含む担体とを含む生成物を包含し、ならびに成分のいずれか2以上の組合せ、錯体形成もしくは会合から、または1つもしくはそれ以上の成分の解離から、または1つもしくはそれ以上の成分の他の種類の反応もしくは相互作用から、直接または間接的に得られる任意の生成物を包含する。一般に、医薬製剤は、活性医薬成分(すなわちインスリンのアナログおよび/または誘導体)と液体担体もしくは微粉固体担体または両方を共に均一に混合し、次いで、必要に応じて、生成物を所望の製剤に成形することによって製造される。医薬製剤は、疾患の経過または状態へ所望の効果を生じるように十分な活性医薬成分を含む。本明細書で使用される、「製剤」という用語は、溶液を、ならびに懸濁液または乳濁液をいうことができる。本明細書で使用される、「製剤」および「組成物」という用語は、同義語であることを意味し、すなわち、同一の意味を有する。医薬組成物は、所望の経口製品、非経口製品、直腸製品、経皮的製品または局所製品を得るように、適宜、成分を混合する、充填するかつ溶解することを含む製薬技術の慣用の手法に従って作られる。
【0063】
本明細書で使用される、「GLP−1受容体アゴニスト」という用語は、グルカゴン様ペプチド−1受容体でアゴニスト活性を有する化合物のことをいう。GLP−1受容体アゴニストの例には、以下が含まれるが、これに限定されるわけではない:エキセナチド/エキセンディン−4、リラグルチド、リキシセナチド、デュラグルチド、アルビグルチド、セマグルチド、タスポグルチド、rエキセンディン−4、CJC−1134−PC、PB−1023、TTP−054、HM−11260C、CM−3、GLP−1エリゲン、ORMD−0901、NN9924、Nodexen、Viador−GLP−1、CVX−096、ZYOG−1、ZYD−1、MAR−701、ZP−2929、ZP−3022、CAM−2036、DA−15864、ARI−2651、ARI−2255、エキセナチド−XTENおよびグルカゴン−XTEN、AMX−8089+VRS−859ならびにポリマー結合したGLP−1およびGLP−1アナログ。
【0064】
本明細書で使用される、「デュアルGLP−1受容体/グルカゴン受容体アゴニスト」という用語は、GLP−1受容体およびグルカゴン受容体の両方でアゴニスト活性を有する化合物のことをいう。デュアルGLP−1受容体/グルカゴン受容体アゴニストの例には、以下が含まれるが、これらに限定されるわけではない:オキシントモジュリン、MAR701、MAR−709およびBHM081/BHM089/BHM098。
【0065】
本明細書で使用される、「ヒトインスリン」という用語は、その構造および性質が周知であるヒトホルモンのことをいう。ヒトインスリンは、2つのポリペプチド鎖(鎖Aおよび鎖B)を有し、2つのポリペプチド鎖はシステイン残基、すなわちA鎖とB鎖との間でジスルフィド架橋によって連結している。A鎖は、21個のアミノ酸ペプチドであり、B鎖は30個のアミノ酸ペプチドであり、2つの鎖は、3つのジスルフィド架橋:1つは、A鎖の6位と11位のシステイン間;2つ目は、A鎖の7位のシステインとB鎖の7位のシステインとの間;および3つ目は、A鎖の20位のシステインとB鎖の19位のシステインとの間、によって連結している。
【0066】
本明細書で使用される、「含む(including)」という用語は、「含むが、これらに限定されるわけではない(including but not limited to)」ことを意味するために使用される。「含む」および「含むが、これらに限定されるわけではない」は、同じ意味で使用される。
【0067】
本明細書で使用される、「等電点」(pI、IEP)という用語は、特定の分子が正味の電荷を担持しないpH値のことをいう。等電点は等電点電気泳動法を使用して決定することができるが、この泳動法は、異なる分子をそれらの等電点の差よって分離するための技術であり、かつ当分野で周知である。また、それは計算することもできる(例えば、LeveneおよびSimms、「Calculation of isoelectric point」 J.Biol.Chem.、1923年、801〜813頁を参照のこと)。
【0068】
本明細書で使用される、「キット」という用語は:
(i).活性医薬成分と少なくとも1つのさらなる活性医薬成分と場合により医療器具とを含む医薬製剤。少なくとも1つのさらなる活性医薬成分は、前記医薬製剤中に存在しもよく、すなわち、キットは1つまたはそれ以上のパッケージを含んでもよく、ここで、各パッケージは、2以上の活性医薬成分を含む1つの医薬製剤を含む。また、さらなる活性医薬成分はさらなる医薬製剤中に存在してもよく、すなわち、キットは2以上の医薬製剤の個別のパッケージを含んでもよく、ここで、それぞれの医薬製剤は、1つの活性医薬成分を含む;
または
(ii).活性医薬成分と医療器具とを含む医薬製剤;
の1つのパッケージまたは1つもしくはそれ以上の個別のパッケージを含む製品(例えば薬剤、キットオブパーツ)のことをいう。
【0069】
キットは、1つのパッケージのみを含んでいてもよく、または1つまたはそれ以上の個別のパッケージを含んでいてもよい。例えば、キットは、規定の医薬製剤をそれぞれ含む、2以上のバイアルを含む製品(例えば薬剤)であってもよく、ここで、それぞれの医薬製剤は、少なくとも1つの活性医薬成分を含む。例えば、キットは、(i).規定の医薬製剤を含むバイアルおよび(ii).少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を含む錠剤、カプセル剤、散剤または他のいかなる経口剤形をさらに含んでいてもよい。キットは、医薬製剤および少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を投与する方法に関する指示のパッケージリーフレットを更に含んでいてもよい。
【0070】
本明細書で使用される、「医療器具」という用語は、疾患その他の状態を診断するか、予防するかまたは処置するのに使用され、かつ体内でまたは体表で薬理学的作用を通してその目的を達成することがない、任意の機器、装置、挿入物、in vitro試薬または類似のもしくは関連する製品を意味する。本明細書で使用される、医療器具は、シリンジ、インスリン注射システム、インスリン輸注システム、インスリンポンプまたはインスリンペン型注射デバイスであってもよい。本明細書で使用される、医療器具は、機械的に、または電気機械的に駆動することができる。
【0071】
本明細書で使用される、特に明記しない限り、「または(or)」という接続詞は、「および/または(and/or)」の包括的な意味で使用され、かつ「いずれか/または(either/or)」の排他的な意味で使用されるものではない。
【0072】
本明細書で使用される、「pH」および「pH値」という用語は、溶液中の水素イオン活量の逆数の十進法による対数のことをいう。
【0073】
本明細書で使用される、「薬学的」という用語は、疾患の医学的な診断、治癒、処置および/または予防における意図された使用のことをいう。
【0074】
本明細書で使用される、「薬学的に許容される」という用語は、哺乳動物またはヒトによって生理学的に十分に許容されることをいう。
【0075】
本明細書で使用される、「プロタミン」という用語は、強塩基性のペプチドの混合物のことをいう。当初、それはサケおよび他種の魚の精子から単離されたが、現在では、バイオテクノロジーにより主に組換えで産生される。それは、2/3を超えるL−アルギニンを含む。プロタミンは、遊離塩基性側鎖を有するアミノ酸を含むので、ある種の緩衝能を有し、したがって緩衝剤とみなされる。プロタミンは、硫酸プロタミンおよび塩酸プロタミンとして使用することができる。
【0076】
濃度、量、溶解度、粒径、波長、pH値、質量、分子量、パーセントおよび他の数値的な日時については、本明細書において範囲のフォーマットで表現されるかまたは提示されることもある。このような範囲フォーマットは、単に便宜および簡潔のために使用されているものであり、したがって、範囲の限界として明確に述べられている数値を含むとともに、各数値および部分範囲が明確に述べられている場合と同様に、すべての個々の数値またはその範囲内に包含される部分範囲も含むと柔軟に解釈すべきであることを理解しなければならない。
【0077】
本明細書で使用される、「持効型インスリン」という用語は、インスリンが介在する効果が0.5〜2時間以内に開始され、かつ約24時間またはそれを超えて活性であり続ける、インスリンアナログおよび/またはインスリン誘導体のことをいう。速効型インスリンの例には、以下が含まれるが、これらに限定されるわけではない:(i).インスリングラルギン;(ii).インスリンデテミル、および(iii).インスリンデグルデク。
【0078】
本明細書で使用される、「安定性」という用語は、活性医薬成分、特にインスリンアナログおよび/または誘導体の化学的および/または物理的安定性のことをいう。安定性試験の目的は、活性医薬成分または剤形の品質が、温度、湿度および光のようなさまざまな環境要因の影響下で経時的にどのように変化するかについての証拠を提供すること、ならびに活性医薬成分または剤形に関する有効期間および推奨保存条件を確立することである。安定性試験は、保存中に変化を受けやすい、ならびに品質、安全性および/または効能に影響を与える可能性がある、活性医薬成分の特色を試験することを含むことができる。試験には、適宜、物理的、化学的、生物学的、および微生物学的な特色、保存剤含量(例えば、抗酸化剤、抗菌保存剤)、ならびに機能性試験(例えば用量送達システムに関して)が含まれる。分析方法は、十分に妥当性が確認されかつ安定性を示しうる。一般に、安定性に関する活性医薬成分および/または剤形の有意な変化は、以下のように定義される:
・その初期値からの含量で5%の変化;または生物学的もしくは免疫学的方法を使用する場合は、力価に関する判定基準を満たしていない;
・いずれかの分解生成物がその判定基準を超える;
・外観、物理的特色および機能性試験(例えば、色、相、分離、再懸濁性、固化、硬度、1作動当たりの用量送達)に関して判定基準を満たしていない;しかし、加速条件下では物理的特色のいくつかの変化(例えば、坐剤の軟化、乳剤の融解)を、予想することができる;
ならびに、適宜、剤形に関して:
・pHに関する判定基準を満たしていない;または
・12投与単位で溶出に関する判定基準を満たしていない。
【0079】
また、安定性の評価の開始前に、確立された判定基準に対して有意な変化を評価することもできる。
【0080】
判定基準は、モノグラフ(例えば、欧州薬局方(European Pharmacopeia)に関するモノグラフ、米国薬局方(United States Pharmacopeia)のモノグラフ、イギリス薬局方(British Pharmacopeia)のモノグラフなど)から、ならびに前臨床試験および臨床試験で使用した活性医薬成分および医薬製品の分析バッチから導くことができる。許容限界は、前臨床試験および臨床試験で使用した物質で観察されたレベルを考慮して提案しかつ正当化しなければならない。製品の特性は、目視による外観、純度、溶液/懸濁液の色および透明度、溶液中の目視できる微粒子、ならびにpHであってもよい。非限定的な例として、インスリンアスパルト製剤に関する適切な判定基準を下に示す:
【0082】
上に示した判定基準は、モノグラフの許容限界(例えば英国薬局方、第III巻、2012年または、Pharmacopoeial Forum、36巻(6)、2010年11月−12月)に基づいており、かつ/またはインスリン製剤の開発における広範な経験から導かれる。
【0083】
本明細書で使用される、「処置」という用語は、哺乳動物、例えばヒトの状態または疾患の任意の処置のことをいい、かつ(1)疾患または状態を阻害すること、すなわち、その発生を停止すること、(2)疾患または状態を軽減すること、すなわち、その状態を消失すること、または(3)疾患の症状を停止することが含まれる。
【0084】
本明細書で使用される、測定単位「U」および/または「国際単位」は、インスリンの血糖低下活性のことをいい、かつ(世界保健機構、WHOによれば)以下のように定義される:1Uは、(WHOによって定義される場合)ウサギ(2〜2.5kgの体重を有する)の血糖値を1時間以内に50mg/100mLに、および2時間以内に40mg/100mLに低下させるのに十分な高度に精製されたインスリンの量に相当する。ヒトインスリンに関して、1Uは、約35μgに相当する(Lill、Pharmazie in unserer Zeit、1号、56〜61頁、2001年)。インスリンアスパルトに関して、100Uは、3.5mgに相当する(製品情報NovoRapid(登録商標))。インスリンリスプロに関して、100Uは、3.5mgに相当する(製品情報Humalog(登録商標))。インスリングルリジンに関して、100Uは、3.49mgに相当する(製品情報Apidra(登録商標)カートリッジ)。インスリンデテミルに関して、100Uは、14.2mgに相当する(製品情報Levemir(登録商標))。インスリングラルギンに関して、100Uは、3.64mgに相当する(製品情報Lantus(登録商標))。
【0085】
本発明のさらなる実施態様には、以下が含まれる:
【0086】
一態様において、本発明は、(a).インスリンの少なくとも1つのアナログおよび/または誘導体;および(b).Zn(II);および(c).ソルビトール;および(d).場合によりプロタミンを含む医薬製剤を提供する。
【0087】
一態様において、本発明の医薬製剤は、水性医薬製剤である。
【0088】
一態様において、本発明の医薬製剤は、6.0から9.0まで範囲のpH値を有する。
【0089】
一態様において、本発明の医薬製剤は、7.0から7.8まで範囲のpH値を有する。
【0090】
一態様において、本発明の医薬製剤は、インスリンアスパルト、インスリンリスプロおよびインスリングルリジンからなる群から選択されるインスリンのアナログを含む。
【0091】
一態様において、本発明の医薬製剤は、インスリンデテミルおよび/またはインスリンデグルデクであるインスリンの誘導体を含む。
【0092】
一態様において、本発明の医薬製剤は、10U/mLから1000U/mLまでの濃度で存在するインスリンのアナログおよび/または誘導体を含む。
【0093】
一態様において、本発明の医薬製剤は、インスリンのアナログおよび/または誘導体100U当たり0.0100から0.0600mgまでの濃度で存在するZn(II)を含む。
【0094】
一態様において、本発明の医薬製剤は、塩化ナトリウムをさらに含む。
【0095】
一態様において、本発明の医薬製剤は、0.01から6.0mg/mLまでの濃度で存在する塩化ナトリウムを含む。
【0096】
一態様において、本発明の医薬製剤は、0.1から0.5mg/mLまでの濃度で存在するプロタミンを含む。
【0097】
一態様において、本発明の医薬製剤は、1つまたはそれ以上のさらなる活性医薬成分を含む。
【0098】
一態様において、本発明の医薬製剤は、抗糖尿病剤であるさらなる活性医薬成分を含む。
【0099】
一態様において、本発明の医薬製剤は、(a).GLP−1受容体アゴニスト;(b).デュアルGLP−1受容体/グルカゴン受容体アゴニスト;(c).ヒトFGF−21;(d).FGF−21アナログ;(e).FGF−21誘導体;(f).インスリン;(g).ヒトインスリン;(h).インスリンのアナログ;および(i).インスリンの誘導体からなる群から選択される抗糖尿病剤であるさらなる活性医薬成分を含む。
【0100】
一態様において、本発明の医薬製剤は、インスリンのアナログおよび/または誘導体を複数含み、ここで、インスリンのアナログおよび/または誘導体の1つは速効型インスリンであり、インスリンのアナログおよび/または誘導体の1つは持効型インスリンである。
【0101】
一態様において、本発明の医薬製剤は、インスリンのアナログおよび/または誘導体を複数含み、ここで、インスリンのアナログおよび/または誘導体の1つは速効型インスリンであり、インスリンのアナログおよび/または誘導体の1つは持効型インスリンであり、ここで、速効型インスリンはインスリンアスパルト、インスリンリスプロおよびインスリングルリジンからなる群から選択される1つまたはそれ以上のインスリンであり、持効型インスリンはインスリンデテミルおよびインスリンデグルデクからなる群から選択される1つまたはそれ以上のインスリンである。
【0102】
一態様において、本発明による医薬製剤は、(a).インスリンアスパルト3.5mg/mL;(b).ソルビトール31.62mg/mL;(c).メタクレゾール1.72mg/mL;(d).フェノール1.50mg/mL;(e).Zn(II)0.0196mg/mL;(f).塩化ナトリウム0.58mg/mL;(g).Na
2HPO
4x7H
2O1.88mg/mL;(h).pHを7.4に調整する水酸化ナトリウムおよび/または塩酸;および(i).水からなる。
【0103】
一態様において、本発明による医薬製剤は、(a).インスリンアスパルト3.5mg/mL;(b).ソルビトール31.62mg/mL;(c).メタクレゾール1.72mg/mL;(d).フェノール1.50mg/mLの;(e).Zn(II)0.0196mg/mL;(f).塩化ナトリウム0.58mg/mL;(g).Na
2HPO
4x7H
2O1.88mg/mL;(h).プロタミン0.1mg/mLから0.5mg/mLまで;(i)pHを7.1から7.6までの範囲のpHに調整する水酸化ナトリウムおよび/または塩酸;および(j).水からなる。
【0104】
一態様において、本発明は、本発明の医薬製剤を製造する方法であって、構成成分を溶液または懸濁液の形態で一緒に混合し、所望のpHに達するようにpHを調整し、最終的な容積に達するように水を加える、方法を提供する。
【0105】
一態様において、本発明は、(a).本発明の医薬製剤;および(b).医療器具の個別のパッケージを複数含むキットを提供する。
【0106】
一態様において、本発明は、(a).本発明の医薬製剤;および(b).少なくとも1つのさらなる活性医薬成分;および(c).場合により医療器具の個別のパッケージを複数含むキットを提供する。
【0107】
一態様において、本発明のキットは、抗糖尿病剤であるさらなる活性医薬成分を含む。
【0108】
一態様において、本発明のキットは、
(a).GLP−1受容体アゴニスト;(b).デュアルGLP−1受容体/グルカゴン受容体アゴニスト;(c).ヒトFGF−21;(d).FGF−21アナログ;(e).FGF−21誘導体;(f).インスリン;(g).ヒトインスリン;(h).インスリンのアナログ;および(i).インスリンの誘導体
からなる群から選択される抗糖尿病剤であるさらなる活性医薬成分を含む。
【0109】
一態様において、本発明のキットは、インスリンのアナログおよび/または誘導体を複数含み、ここで、インスリンのアナログおよび/または誘導体の1つは速効型インスリンであり、インスリンのアナログおよび/または誘導体の1つは持効型インスリンである。
【0110】
一態様において、本発明のキットは、インスリンのアナログおよび/または誘導体を複数含み、ここで、インスリンのアナログおよび/または誘導体の1つは速効型インスリンであり、インスリンのアナログおよび/または誘導体の1つは持効型インスリンであり、ここで、速効型インスリンはインスリンアスパルト、インスリンリスプロおよびインスリングルリジンからなる群から選択され、持効型インスリンはインスリングラルギン、インスリンデテミルおよび/またはインスリンデグルデクからなる群から選択される。
【0111】
一態様において、本発明は、真性糖尿病の処置に使用するための医薬製剤またはキットを提供する。
【0112】
一態様において、本発明は、高血糖症の処置に使用するための医薬製剤またはキットを提供する。
【0113】
一態様において、本発明は、血糖値を低下させることに使用するための医薬製剤またはキットを提供する。
【0114】
一態様において、本発明は、本発明の医薬製剤を投与することを含む、その必要のある対象における真性糖尿病を処置する方法を提供する。
【0115】
一態様において、本発明は、本発明の医薬製剤を投与することを含む、その必要のある対象における高血糖症を処置する方法を提供する。
【0116】
一態様において、本発明は、本発明の医薬製剤を投与することを含む、その必要のある対象における血糖値を低下させる方法を提供する。
【0117】
一態様において、本発明は、動物および/またはヒトに本発明の医薬製剤を投与するための医療器具を提供する。
【実施例】
【0118】
本発明を、以下の実施例によって説明する。しかし、本発明がこれらの実施例の具体的な詳細に限定されないことを理解すべきである。
【実施例1】
【0119】
製造方法
(a)塩化亜鉛溶液
塩化亜鉛溶液は、塩化亜鉛2.00gを注射用水に溶解し、かつ1000mLの最終容積になるまで注射用水を加えることによって調製した。
【0120】
(b)溶液A
溶液Aの最終的な組成を表1に示す:
【0121】
【表2】
【0122】
溶液Aは、以下に記載したように調製した:
1.注射用水約1000gから始めた。
2.常に撹拌しながら、リン酸水素二ナトリウムx7H
2O18.8g、塩化ナトリウム5.8g、ソルビトール316.2g、フェノール15.0gおよびm−クレゾール17.2gを溶解した。
3.溶液が約1800gになるまで注射用水を加えた。
4.マグネティックスターラーを使用して、溶液を約15分間撹拌した。
5.pHを確認した(pHは、8.65、でなければならない)。pH値が8.65でない場合、0.03N塩酸または1N水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを前記範囲に調整した。
6.溶液が2015g(2000mL)になるまで注射用水を加えた。
【0123】
(c)最終的な溶液
最終的な溶液の最終的な組成を表2に示す:
【0124】
【表3】
【0125】
最終的な溶液は、以下に記載したように調製した:
1.注射用水300mLから始めた。
2.常に撹拌しながら、インスリンアスパルト7.0gを注射用水300mLに加えた(注射用水中のインスリンアスパルトの懸濁液が形成される)。
3.pH値を確認した。
4.0.03N塩酸または0.02N水酸化ナトリウム溶液を加えてpH値を約3.1〜3.2に変化させてインスリンアスパルトを溶解した。
5.マグネティックスターラーを使用して溶液を約15分間撹拌した。
6.常に撹拌しながら、塩化亜鉛溶液41mLを上記溶液に加えた。
7.溶液が600gになるまで注射用水を加えた。
8.常に撹拌しながら、溶液A400mLをゆっくりと注意深く加えた。
9.0.03N塩酸または0.02N水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを7.4(7.2〜7.6の範囲)に調整した。
10.溶液が2010g(最終的な溶液の100%に相当する)になるまで注射用水を加えた。
【0126】
品質管理:最終的な溶液は、透明で無色の溶液であり、pH値7.4を示した(プラス/マイナス0.2;20〜25℃で)。
【0127】
「Sartopore Minisart high flow」フィルター(フィルター材料:ポリエーテルスルホン;孔径:0.2μm;供給元:ザルトリウス(Sartorius))を使用して、最終的な溶液を滅菌濾過にかけた。
【0128】
滅菌濾過後の最終的な溶液は、透明で無色の溶液であり、260mOsmol/kg(プラス/マイナス30)のモル浸透圧濃度を示した。
【0129】
滅菌濾過後の最終的な溶液を、適切なバイアルに充填した(容積:5および10mL;13mm;透明なガラス;ガラスタイプ1)。
【0130】
滅菌濾過後の最終的な溶液を含むバイアルは+2℃から+8℃の間で保存し、かつ遮光した。
【実施例2】
【0131】
製剤の管理
(a)分析方法
該当する場合、公定書に定められた分析試験法を使用して、試験を実施した。品質管理の概念は、cGMP要件ならびにICHプロセスの現状を考慮して確立されている。
【0132】
製剤を管理するために使用した、公定書外のクロマトグラフィー分析方法を以下にまとめる:
【0133】
性状
判定基準への適合に関していくつかの容器を目視により試験した。
【0134】
同定(HPLC)
活性成分の同一性は、逆相HPLC方法を使用して薬物製剤サンプルの保持時間を、標準試料の保持時間と比較することによって保証した。また、この方法は、活性成分含量の確認試験に、関連化合物および不純物の確認試験に、ならびに保存剤m−クレゾールおよびフェノールの定量にも使用した。
【0135】
定量法(HPLC)
試験は、逆相液体クロマトグラフィー(HPLC)によって実施した。また、この方法は、同定に、活性成分含量の確認試験に、関連化合物および不純物の確認試験に、ならびに保存剤m−クレゾールおよびフェノールの定量にも使用した。カラム:Lichrosorb RP18、粒径5μm、孔径100Å(250mm×4.0mm)、+35℃でサーモスタット調節した。オートサンプラー:≦+8℃でサーモスタット調節した。移動相A:硫酸ナトリウムを水に溶解した、14g/mL、リン酸および水酸化ナトリウムを使用してpH3.4に調整した。移動相B:水/アセトニトリル(50:50v/v)。勾配を表3に示す。
【0136】
【表4】
【0137】
流速:1.0mL/分。注射容積:10μL。検出:214nm(活性成分に関して)および260nm(m−クレゾールおよびフェノールに関して)。一般的な実施時間:60分。
活性成分、m−クレゾールおよびフェノールの含量は、外部標準によって算出した。不純物は、ピーク面積パーセント法を使用して算出した。
試験液:製剤は、なんら希釈せず、またはさらなる処置を行わずに使用した。
【0138】
関連化合物および不純物(HPLC)
関連化合物および不純物の確認試験に関しては、「定量法(HPLC)」と同じクロマトグラフィー条件を使用した。関連化合物および不純物は、ピーク面積パーセント法を使用して算出した。
【0139】
高分子量タンパク質(HMWP)
高分子量タンパク質は、高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)を使用して決定した。カラム:Waters Insulin HMWP、粒径5〜10μm、孔径12〜12.5nm(300mm×7.8mm)、室温でサーモスタット調節した。オートサンプラー:≦+8℃でサーモスタット調節した。移動相:アルギニン溶液(1g/L)650mLを、アセトニトリル200mLおよび氷酢酸150mLと混合した。定組成溶離流速:1.0ml/分。注射容積:100μL。検出:276nm。典型的な実行時間:35分。
HMWPは、ピーク面積パーセント法を使用して算出した。試験液:製剤は、なんら希釈せずにまたはさらなる処置なしで使用した。
【0140】
抗菌保存剤の定量法
m−クレゾールおよびフェノールの含量確認試験に関しては、「定量法(HPLC)」と同じクロマトグラフィー条件を使用した。m−クレゾールおよびフェノールは、外部標準によって算出した。
【0141】
(b)分析方法の妥当性確認
同定の確認試験、定量法、関連化合物および不純物に関する製剤のHPLC分析方法については妥当性を確認して、特異性、直線性、検出限界および定量限界、真度、精度ならびに範囲を実証した。
【0142】
(c)判定基準の設定根拠
前に示した試験および判定基準は、ICHのQ6Bおよび公開されたモノグラフ、得られた分析結果、使用した方法の精度、薬局方および/または規制当局のガイドラインに基づいて選択されており、かつこの開発段階での標準限界と一致するものである。
【実施例3】
【0143】
製剤の安定性
(a)製剤の安定性
製剤の安定性試験は、以下の表に記載された安定性試験計画書の概要に従って開始した。安定性バッチの組成および製造方法は、その物質の代表例であった。ICHガイドラインに従って、長期、加速および苛酷試験条件下で、保存に関して、安定性プロファイルを評価した。挿入ディスクおよびフリップオフ式の蓋を有するフランジキャップを備えたガラスバイアル中にサンプルを詰め、保存した。この包装物質を使用して得られた安定性データは、両包装形状(10mLガラスバイアルおよび3mLカートリッジ)に関する予備的な有効期間および保管指示のための代表例であった。
製剤に関する進行中の安定性試験から6ヵ月の安定性データが利用可能である。
【0144】
【表5】
【0145】
安定性試験では以下の試験を実施した:外観、含量、関連不純物、高分子量タンパク質、pH、粒状物質(目視できる粒子および目視できない粒子)、抗菌保存剤(m−クレゾールおよびフェノール)の含量、亜鉛(II)の含量。+5℃の長期保存条件で6ヵ月の保存後、物理的および化学的性質に関する検査により、推奨された保存条件で保存した場合の製剤の安定性が確認された。関連不純物については非常に僅かな変化のみが観察された。
【0146】
加速条件で(+25℃/60%RHで6ヵ月)保存した場合、関連不純物および高分子量タンパク質が増加し、かつ3ヵ月後規格範囲外であることがわかった。加速条件で(+40℃/75%RHで1ヵ月)保存した場合、関連不純物の1つが判定基準を超えて増加した。活性成分の含量は低下したが、+40℃での保存1ヵ月後規格判定基準内であることがわかった。微生物保存剤、m−クレゾールおよびフェノールの含量は、加速条件下で基本的に不変のままであった。
【0147】
光曝露で保存した場合(ICHガイドラインによる1日間日光試験および14日間の室内光試験)、関連不純物(他の不純物の総量)および高分子量タンパク質は判定基準を超えて増加した。活性成分、m−クレゾール、およびフェノール含量は、光安定性試験の後基本的に不変のままであった。
【0148】
製剤の安定性試験の本結果により、製剤の化学的および物理的安定性を確認することができた。
【0149】
表5〜8は、長期安定性の結果を示しており、ここで、バッチ番号「_0026」とは、本発明による製剤である。
【0150】
本明細書で特許請求する製剤の安定性は、優れた化学的および物理的安定性を示しており、この安定性によって前記水性医薬製剤は、所定の有効期間を有する医薬製品として適している。
【0151】
【表6】
【0152】
【表7】
【0153】
【表8】
【0154】
【表9】
【0155】
【表10】
【0156】
【表11】
【0157】
【表12】
【0158】
【表13】