(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定段階では、等価直列抵抗値の前記変動値が前記所定の閾値を超える前記回数が1以上の所定の回数を超える場合に、前記水晶振動子が寿命に達したと判定する請求項1に記載の水晶振動子の寿命判定方法。
前記膜厚算出ユニットは、前記水晶振動子の等価直列抵抗値の前記変動値が前記所定の閾値を超える前記回数が1以上の所定の回数を超える場合に、前記水晶振動子が寿命に達したと判定する請求項4に記載の膜厚測定装置。
前記膜厚モニタは複数の水晶振動子を含み、前記膜厚算出ユニットが使用中の水晶振動子が寿命に達したと判定した場合、当該水晶振動子を前記膜厚モニタの他の水晶振動子に切り替える請求項4〜6のいずれか一項に記載の膜厚測定装置。
前記判定段階において、等価直列抵抗値の前記変動値が前記所定の閾値を超える前記回数が1以上の所定の回数を超える場合に、前記水晶振動子が寿命に達したと判定する請求項8に記載の成膜方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
本発明は、水晶振動子の寿命判定方法、これを用いる成膜方法、膜厚測定装置、これを含んだ成膜装置、及び電子デバイス製造方法に関するもので、特に、成膜装置内で基板に蒸着される蒸着材料の膜厚及び成膜レートを測定するための水晶振動子の寿命をより正確に判定するためのものである。
【0017】
本発明は、フラットな基板の表面に真空蒸着によってパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好適に適用することができる。基板の材料では硝子、樹脂、金属などの任意の材料を選択することができる。また、蒸着材料としても有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択することができる。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。その中でも、有機EL表示装置の製造装置は、蒸着材料を蒸発させて有機EL表示素子を形成するものであり、本発明の好ましい適用例の一つである。
【0018】
<電子デバイスの製造ライン>
図1は、電子デバイスの製造ラインの構成の一部を模式的に示す上視図である。
図1の製造ラインは、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば約1800mm×約1500mmのサイズの基板に有機ELの成膜を行った後、該基板をダイシングして複数の小サイズのパネルが作製される。
【0019】
電子デバイスの製造ラインは、一般に、
図1に示すように、複数の成膜室11、12と、搬送室13とを有する。搬送室13内には、基板10を保持し搬送する搬送ロボット14が設けられている。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板を保持するロボットハンドが取り付けられた構造をもつロボットであり、各成膜室への基板10の搬入/搬出を行う。
【0020】
各成膜室11、12にはそれぞれ成膜装置(蒸着装置とも呼ぶ)が設けられている。搬送ロボット14との基板10の受け渡し、基板10とマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板10の固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置によって自動で行われる。
以下、成膜室の成膜装置の構成に対して説明する。
【0021】
<成膜装置>
図2は成膜装置2の構成を概略的に示した断面図である。
【0022】
成膜装置2は成膜工程が行われる空間を定義する真空チャンバー20を具備する。真空チャンバー20の内部は真空雰囲気或いは窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気で維持される。
【0023】
真空チャンバー20内部の上部には、搬送室13の搬送ロボット14から受取った基板10を保持する基板保持ユニット21が設置され、真空チャンバー20内部の下部には、基板保持ユニット21と対向する位置に蒸着材料が収納される蒸着源22が設置される。基板保持ユニット21は基板ホルダとも呼ぶ。
図2には図示しなかったが、基板保持ユニット21の下には、フレーム状のマスク台が設置されて、マスク台の上には、基板10上
に形成される薄膜パターンに対応する開口パターンを持つマスクが置かれる。
【0024】
成膜時には、基板保持ユニット21によって保有支持された基板10がマスクの上に置かれて、蒸着源22から蒸発された蒸着材料がマスクを介して基板10に蒸着される。
【0025】
蒸着源22は、基板に成膜される蒸着材料が収納されるるつぼ(未図示)、るつぼを加熱するためのヒータ(未図示)、蒸着源からの蒸発レートが一定になるまで蒸着材料が基板に飛散することを防ぐシャッタ23を含む。蒸着源22は、点(point)蒸着源、線形(linear)蒸着源、リボルバ式の蒸着源など、用途によって多様な構成を持つことができる。
【0026】
本発明の実施例に係る成膜装置は、共振周波数を測定するのに使われる膜厚モニタ24及び膜厚モニタ24からの測定結果を受信して基板上の膜厚ないし成膜レートを算出する膜厚算出ユニット25を含む。本発明の実施例に係る膜厚測定装置は、膜厚モニタ24及び膜厚算出ユニット25を含んで構成される。
【0027】
膜厚モニタ24は、蒸着源22から噴射される蒸着材料が基板10に到逹して薄膜を形成することを邪魔しない位置に設置される。膜厚モニタ24は、後述する水晶振動子30を含み、膜厚算出ユニット25は、水晶振動子30に蒸着源22からの蒸着材料が堆積されることによる水晶振動子30の共振周波数の変化に基づいて、基板上に蒸着された蒸着材料の膜厚及び成膜レートを間接的に算出する。
【0028】
本発明の実施例に係る膜厚測定装置は、後述するように、膜厚モニタ24に使われる水晶振動子の寿命を、水晶振動子のインピーダンス値(等価直列抵抗値)の変動値が所定の閾値を超える回数に基づいて判定する。
【0029】
加熱制御部26は、膜厚算出ユニット25によって算出された成膜レートに基づいて蒸着源22のヒータに加えられる電力を制御することで蒸着源22からの蒸着材料の蒸発レートをフィードバック制御する。
【0030】
基板に蒸着された蒸着材料の膜厚が所定の厚さに到逹すれば、搬送ロボット14が基板を真空チャンバー20から搬送室13に搬出する。
【0031】
<膜厚測定装置>
本発明の実施例に係る膜厚測定装置の膜厚モニタ24には水晶振動子30が設置される。
図3(a)は水晶振動子30の概略的断面図である。
【0032】
水晶振動子30は、一定の結晶方向で切断された水晶板31の表面及び裏面に電極膜32、33を形成した構造を持つ。
【0033】
水晶振動子30に用いられる水晶板31には、比較的温度特性に優れたAT−カット(AT−cut)型の水晶を使うのが望ましい。
図3(a)に示したように、水晶板31の表面または裏面を凸状の曲面にすることができ、好ましくは蒸着材料が堆積される電極膜32側の表面ではなく電極膜33側の裏面を曲面にして、蒸着材料が堆積される電極膜32側の表面を平面にすることで水晶振動子30の振動の安全性を高めることができる。
【0034】
水晶振動子30の電極膜32、33は、アルミニウム(Al)を主成分とする合金、或いは、金(Au)からなるものが望ましい。これはアルミニウム合金或いは金電極膜32、33が蒸着材料との密着性がよく、水晶振動子30の電極膜32上に堆積された蒸着膜が水晶振動子30の共振振動に良好に追従することができるからである。
図3(a)では
電極膜32上に直接蒸着材料が堆積される様子を図示したが、電極膜32上には電極材料との密着性をさらに高めつつ、蒸着材料との境界を連続的に変化させるように第3の膜(例えば、蒸着材料と異なる炭素を含む有機材料)を追加で形成しても良い。
【0035】
水晶振動子30の電極膜32、33に交流電位を印加すると、水晶の圧電特性によって水晶振動子30は振動を生じるが、水晶板の厚さが所定の条件を満たす場合、水晶振動子30は共振周波数で振動をするようになる。このような水晶振動子30の共振周波数は、電極膜32上に堆積される蒸着材料の質量変動によって変わり、水晶振動子30の共振周波数の変動値と蒸着材料の質量の変動値と間には以下のような関係式(Sauerbrey式)が成り立つ。
【0037】
ここで、Δfは共振周波数の変動値、Δmは水晶振動子の電極32上に堆積された蒸着材料の質量変動値、fは水晶の基本周波数、μは水晶のせん断係数(shear modulus)、ρ
Qは水晶の密度、Aは電極面積である。すなわち、水晶振動子30の電極32上に蒸着材料が堆積されてその質量が増加するにつれて、水晶振動子30の共振周波数は小さくなる。
【0038】
本発明の実施例に係る膜厚算出ユニット25は、このような関係を利用して、測定された水晶振動子30の共振周波数の変動値から電極膜32上に堆積された膜の質量の変動値、さらに膜厚及び成膜レートを求めることができる。
【0039】
本発明の実施例における膜厚モニタ24は、
図3(b)に図示されたように、複数の(例えば、10個の)水晶振動子30を含む。複数の水晶振動子30中開口34に対応する位置にある水晶振動子30だけが蒸着源22に露出していて蒸着源22から飛散してきた蒸着材料が堆積される。これによって基板に蒸着される蒸着材料の膜厚及び成膜レートが測定される。その間残り水晶振動子30は蒸着源22に露出しない状態で維持され、蒸着源22に露出されていた水晶振動子30が寿命に達すれば、他の水晶振動子30を開口34に対応する位置に、例えば、回転移動させて、同様に膜厚及び成膜レートの測定を続ける。このようにして、膜厚モニタ24に備えられた水晶振動子30すべての寿命が尽きれば、膜厚モニタ24を交換する。これによって、膜厚モニタ24の全体的な寿命を長くすることができ、膜厚モニタ24の交換によって蒸着工程が中止される時間を減らすことで生産ラインの全体的なスループットを増加させることができる。
【0040】
本発明の実施例における膜厚モニタ24には、
図3(b)に示したように、回転可能なチョッパ35を使って、開口34に対応する位置にある水晶振動子30に堆積される蒸着材料の量を調節することができる。すなわち、開口部356を持ったチョッパ35を一定の速度で回転させることで、開口34に対応する位置にある水晶振動子30が周期的に蒸着源22から隠れるようになることで、当該水晶振動子30に堆積される蒸着材料の量を調節する。
【0041】
<水晶振動子の寿命判定方法>
水晶振動子30に蒸着材料が堆積されるにつれて、水晶振動子30の共振周波数は前記関係式1に従って減少する。水晶振動子30の電極膜32上に堆積される蒸着材料の膜厚が薄くて蒸着膜が完全弾性体またはリジッド(rigid)なものと見なされる場合(すなわち、蒸着膜が完全弾性体またはリジッドな膜として挙動する場合)には、蒸着膜が水
晶振動子30の共振振動をそのまま追従するので、前記関係式1によって共振周波数の変動値から蒸着膜厚を正確に算出することができる。
【0042】
しかし、水晶振動子30の電極膜32上に堆積された蒸着材料がある程度以上厚くなると、堆積された蒸着膜をこれ以上完全弾性体またはリジッドなものと見なすことができなくなる。従って、水晶振動子30の共振振動を正確に追従することはできなくなり、水晶振動子30のインピーダンス値の中で抵抗成分が上昇する。すなわち、水晶振動子30は電気的には直列RLC回路と等価であると見なすことができるが、蒸着膜が厚くなって蒸着膜が水晶振動子30の共振振動を正確に追従することができなくなれば、蒸着膜が水晶振動子30の振動に対してダンピング(damping)として作用するようになる。これは水晶振動子30の等価回路上で抵抗(R)値の上昇をもたらし、水晶振動子30の振動エネルギーの損失をもたらす。
【0043】
水晶振動子30が共振周波数で振動している場合、等価回路のインピーダンス値は等価回路の抵抗(R)値と同じくなるが、この際の抵抗(R)値を等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)と呼ぶ。蒸着膜厚がある程度以上厚くなれば、
図4に示したように、等価直列抵抗値が上昇する。ただ、等価直列抵抗値がある程度まで上昇する(
図4のt1)までは、蒸着膜の挙動を完全弾性体やリジッドなもので近似することができるので、関係式1によって共振周波数の変動値から蒸着膜厚を算出することができる。
【0044】
ところが、蒸着膜厚がさらに厚くなって蒸着膜内部の応力によって蒸着膜に変形、クラック、剥がれなどの現象が現われるようになれば、電極膜32上の蒸着膜は水晶振動子30の共振振動を全然追従することができなくなり、これは
図4に図示したように等価直列抵抗値の大きな変動として現われる。この場合、これ以上水晶振動子30の共振周波数の変動値から蒸着材料の質量の変動値(膜厚の変動値)を求めることができなくなるため、水晶振動子30は寿命が尽きたと判定する。すなわち、本発明における水晶振動子30の寿命は、水晶振動子の時間による劣化(aging)によって迎える寿命ではなく、水晶振動子上に蒸着された蒸着膜が変形、クラック、剥がれなどの多様な原因によってその挙動を予測することができなくなることによって迎える寿命を意味する。
【0045】
従来には、水晶振動子30の寿命判定方法として水晶振動子30の等価直列抵抗値(またはここに相応するパラメーター)の閾値(ESR
TH)を決めておいて、水晶振動子30の等価直列抵抗値が当該の閾値を越えれば水晶振動子30が寿命に達したものと判定した。しかし、この場合、水晶振動子30の発振回路上のノイズなどによって一度でも当該の閾値を超えれば水晶振動子30が正常に動作しているにもかかわらず寿命に達したものと判定してしまう問題があった。また、等価直列抵抗の閾値を作業者が経験に依存して設定する場合、閾値が小さ過ぎると、正常作動する水晶振動子30を寿命に達したものと判定してしまうことがあり、大き過ぎると、水晶振動子30が異常挙動を見せているにも関わらずこれに基づいて基板上に蒸着された膜厚及び成膜レートを算出するようになって、その測定が不正確になる。
【0046】
ここで本発明の実施例においては、水晶振動子30が蒸着膜厚が増加したことにより異常挙動を見せているのか否か(すなわち、その寿命)を、等価直列抵抗値(ESR)が閾値(ESR
TH)を超えているのか否かではなく、等価直列抵抗値の変動値(ΔESR)が閾値(ΔESR
TH)を超えているのか否かに基づいて判定する。この際の閾値(ΔESR
TH)は、回路ノイズによる等価直列抵抗値の変動値より大きく設定することが好ましいが、大き過ぎると、水晶振動子30の異常挙動を適時に検出することができないので、例えば、通常の回路ノイズによる変動値より2−3倍位の値で設定するのが好ましい。回路ノイズによる等価直列抵抗値の変動幅は、回路の構成に基づいて通常の技術者が適宜
把握することができる。
【0047】
さらに好適には、水晶振動子の寿命を等価直列抵抗値の変動値(ΔESR=今度のサンプリングの際の等価直列抵抗値−直前のサンプリングの周期での等価直列抵抗値)が閾値(ΔESR
TH)を越える回数に基づいて判定することができる。すなわち、等価直列抵抗値の変動値(ΔESR)が閾値(ΔESR
TH)を越える回数がn回(n=1以上の整数)より大きくなる場合(ΔESR>ΔESR
THな関係を満足する回数>n)に水晶振動子が寿命に達したものと判定する。例えば、瞬間的な大きいノイズによって等価直列抵抗値の変動が大きく生じる場合を考慮して、少なくとも2回以上(すなわち、n=1)等価直列抵抗値の変動値(ΔESR)が閾値(ΔESR
TH)を越える場合に水晶振動子が寿命に達したものと判定する。ただ、n値が大き過ぎると、すでに水晶振動子30が異常挙動を見せているにもかかわらず、適切な時点に水晶振動子の寿命到達を検出することができなくなるので、n値は1または1に近い整数(例えば、2ないし3)にすることが好ましい。
【0048】
また、n値は閾値(ΔESR
TH)の大きさによって異なるように設定することができる。例えば、閾値(ΔESR
TH)を相対的に小さく設定する場合にはnを大きく設定するのが好ましく、閾値(ΔESR
TH)を相対的に大きく設定する場合にはnを小さく設定するのが好ましく、これにより水晶振動子の寿命判断の正確性を向上させることができる。
【0049】
ここで、閾値(ΔESR
TH)及びn値は、水晶振動子30に堆積される蒸着材料の種類(有機蒸着材料なのか金属性蒸着材料なのか、具体的に、どのような有機蒸着材料なのか、どのような金属性蒸着材料なのか)などによって変えられる。
【0050】
水晶振動子30の共振周波数での等価インピーダンス値である等価直列抵抗値は、インピーダンス分析機を利用して測定することができるが、本発明はこれに限定されない。
【0051】
本発明の実施例に係る膜厚測定装置において、このような水晶振動子の寿命判定は膜厚算出ユニット25が行う。すなわち、膜厚算出ユニット25は、膜厚モニタ24の水晶振動子30の等価直列抵抗値の変動値が所定の閾値を超える回数に基づいて、水晶振動子30の寿命を判定する。
【0052】
本発明の実施例に係る成膜方法においては、基板10上にマスクを介して有機または金属性蒸着材料を成膜する工程の間、基板10上の堆積された蒸着材料の膜厚及び成膜レートを測定するのに使われる水晶振動子の寿命を、水晶振動子30の等価直列抵抗値の変動値が所定の閾値を超える回数に基づいて判定する。これによって、成膜工程において膜厚及び成膜レートを正確に制御することができるようになる。
【0053】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施例の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0054】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図5(a)は有機EL表示装置60の全体図、
図5(b)は1画素の断面構造を表している。
【0055】
図5(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。
本実施例に係る有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0056】
図5(b)は、
図5(a)のA−B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R、66G、66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施例では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0057】
図5(b)では正孔輸送層(65)や電子輸送層67が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、第1電極(64)と正孔輸送層(65)との間には第1電極(64)から正孔輸送層(65)への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極68と電子輸送層67の間にも電子注入層を形成することができる。
【0058】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成された基板63を準備する。
【0059】
第1電極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0060】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の有機材料成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0061】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の有機材料成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて保持する。基板とマスクとのアライメント(第1アライメント及び第2アライメント)を行い、基板をマスクの上に載置し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。
【0062】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する
。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0063】
電子輸送層67まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて第2電極68を成膜する。
【0064】
本発明によれば、有機EL表示素子の製造のために、多様な有機材料及び金属性材料を基板上に蒸着する際において、基板上に蒸着された蒸着材料の膜厚及び成膜レートを測定するのに使われる水晶振動子の寿命をより正確に判定することができるようになるので、基板上に目標とした厚さで正確に成膜することができるようになり、また、水晶振動子を正確な寿命まで最大限で活用することができるようになる。
【0065】
その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0066】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0067】
上記実施例は本発明の一例を示すものでしかなく、本発明が適用可能な構成は上記実施例の構成に限定されないし、その技術思想の範囲内で適宜に変形しても良い。