(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アキラル成分Tの全重量に対して、化合物(1)を合計で10重量%〜30重量%含有し、化合物(3)を合計で20重量%〜60重量%、化合物(7)を合計で30重量%〜70重量%含有する、請求項3〜5のいずれかに記載の液晶組成物。
一方または両方の基板に電極が配置され、基板間に配置された液晶媒体、および電極を介して液晶媒体に電界を印加する電界印加手段を備えた光素子であって、液晶媒体が、請求項1〜10のいずれか1項に記載の液晶組成物または請求項12に記載の高分子/液晶複合材料である、光素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記状況の下、熱、光などに対する安定性、広い液晶相温度範囲を有し、駆動電圧が低く、誘電率は小さく、また光学的に等方性の液晶相を発現する液晶媒体が求められている。また、広い温度範囲で使用可能であり、短い応答時間、大きなコントラスト比、および駆動電圧が低く、かつ誘電率が小さい光素子などが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、たとえば、以下のような液晶化合物、液晶媒体(液晶組成物、高分子/液晶複合材料等)、重合モノマーと液晶組成物との混合物、液晶媒体等を含有する光素子、液晶化合物等を提供する。
【0008】
本発明は以下のような化合物、液晶媒体(液晶組成物または高分子/液晶複合体)および液晶媒体を含有する光素子等を提供する。本発明は以下の項を含む。
【0009】
[1] 式(1)で表される化合物(1)を第1成分として少なくとも1つ含むアキラル成分(T)とキラル剤とを含有し、光学的等方性の液晶相を発現する液晶組成物。
(式中、R
1は水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数2〜12のアルキニル、または炭素数1〜11のアルコキシであり;
A
1、およびA
2はそれぞれ独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−5−クロロ−1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイルであり;
Z
1、およびZ
2はそれぞれ独立して単結合、または炭素数1〜4のアルキレンであり;
Z
3は、−COO−、または−CF
2O−であり;
L
11は水素、フッ素または塩素であり;
Y
1はフッ素、塩素、−CF
3、または−OCF
3であり;
n1、およびn2は、それぞれ独立して0または1であり、n1+n2≧1である。)
【0010】
[2] 式(1−1)〜(1−12)のいずれかで表される化合物を少なくとも1つ含むアキラル成分(T)とキラル剤とを含有し、光学的に等方性の液晶相を発現する、[1]に記載の液晶組成物。
(上記式中、R
1Aは炭素数1〜12のアルキル、または炭素数2〜12のアルケニルであり;
Z
1およびZ
2はそれぞれ独立して単結合、または炭素数1〜4のアルキレンであり;
Y
1Aはフッ素、−OCF
3、または−CF
3であり;
(F)はフッ素または水素である。)
【0011】
[3] アキラル成分Tの第2成分として、さらに、式(3)で表される化合物(3)および式(7)で表される化合物(7)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、[1]または[2]に記載の液晶組成物。
(式(3)中、R
3は水素または炭素数1〜12のアルキルであり、R
3中の少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、R
3中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、R
3中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、R
3において−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−が隣接することはなく;
Z
31、Z
32、Z
33、およびZ
34はそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、当該アルキレン中の少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−または−CF
2O−で置き換えられてもよく;
L
31、L
32、L
33、L
34、L
35およびL
36はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
X
3は水素、ハロゲン、−SF
5または炭素数1〜10のアルキルであり、X
3中の少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、X
3中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、X
3中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、X
3において−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−とが隣接することはない。
n31、およびn32は、それぞれ独立して0または1であり;
但し、Z
33が−CF
2O−または−COO−であり、Z
34が単結合であり、かつL
34がフッ素であるとき、L
35およびL
36はともにフッ素である。)
(式(7)中、R
7は水素または炭素数1〜12のアルキルであり、R
7中の少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、R
7中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、R
7中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、R
7において−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−が隣接することはなく;
L
71、L
72、L
73、L
74、L
75、およびL
76、L
77、およびL
78はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
Z
71、Z
72、およびZ
73はそれぞれ独立して、単結合、−COO−または−CF
2O−であり;
X
7は水素、ハロゲン、−SF
5または炭素数1〜10のアルキルであり、X
7中の少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、X
7中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、X
7中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
但し、X
7において−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−とが隣接することはない。
n71は0または1である;
但し、n71=1であり、Z
72が−CF
2O−または−COO−であり、Z
73が単結合であり、かつL
75およびL
76がともにフッ素であるとき、L
77およびL
78がともにフッ素である。また、n71=0であり、Z
71が−CF
2O−または−COO−であり、Z
73が単結合であり、かつL
75およびL
76がともにフッ素であるとき、L
77およびL
78がともにフッ素である。)
【0012】
[4] 化合物(3)が、式(3−1)〜(3−3)のいずれかで表される化合物である、[3]に記載の液晶組成物。
(上記式中、R
3Aはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、または炭素数1〜11のアルコキシであり;
L
31、L
33,L
34およびL
36は、それぞれ独立して水素またはフッ素であり; X
3Aはフッ素、塩素、−CF
3または−OCF
3である。)
【0013】
[5] 化合物(7)が、式(7−1)〜(7−8)のいずれかで表される化合物である、[3]に記載の液晶組成物。
(上記式中、R
7Aはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、または炭素数2〜12のアルケニル、または炭素数1〜11のアルコキシ、であり;
L
72、L
74、L
76、L
77およびL
78はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
X
7Aはそれぞれ独立して、フッ素、塩素、−CF
3または−OCF
3である。
Z
71およびZ
72はそれぞれ独立して、単結合、−COO−または−CF
2O−であるが、少なくとも1つは−COO−または−CF
2O−である;
但し、L
76がフッ素であるとき、L
77およびL
78はともにフッ素である。)
【0014】
[6] 化合物(7)が、式(7−2−1)〜(7−2−7)のいずれかで表される化合物である、[3]に記載の液晶組成物。
(上記式中、R
7Aは、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、または炭素数1〜11のアルコキシであり;
X
7Aは、フッ素、塩素、−CF
3または−OCF
3である。)
【0015】
[7] アキラル成分Tの全重量に対して、化合物(1)を合計で10重量%〜30重量%含有し、化合物(3)を合計で20重量%〜60重量%、化合物(7)を合計で30重量%〜70重量%含有する、[3]〜[6]のいずれかに記載の液晶組成物。
【0016】
[8] アキラル成分Tの第3成分として、さらに、式(4)で表される化合物(4)および式(2)で表される化合物(2)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
(式(4)中、R
4は、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、または炭素数1〜11のアルコキシであり;
B
41、B
42、およびB
43はそれぞれ独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジクロロ−1,4−フェニレンまたはピリミジン−2,5−ジイルであるが、B
41、B
42、およびB
43の少なくとも1つは1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
Z
41、Z
42、Z
43、およびZ
44はそれぞれ独立して、単結合、エチレン、−COO−、−OCO−、−CF
2O−または−OCF
2−であり;
L
46、L
47、L
48およびL
49はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
X
4はフッ素、塩素、−CF
3または−OCF
3であり;
n41およびn42は、それぞれ独立して0または1であり;
但し、Z
43が−CF
2O−または−COO−であり、Z
44が単結合であり、かつL
46およびL
47がともにフッ素である場合には、L
48およびL
49がともにフッ素である。)
(式(2)中、R
2は水素または炭素数1〜12のアルキルであり、R
2中の少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、R
2中の少なくとも1つの−CH
2−が−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、R
2中の少なくとも1つの水素がハロゲンまたは炭素数1〜3のアルキルで置き換えられてもよく;
但し、R
2において−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−が隣接することはなく;
A
21、A
22、A
23、およびA
24はそれぞれ独立して、1,4−シクロへキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、1つまたは2つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、2つの水素がそれぞれフッ素と塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルであり;
Z
21、Z
22、Z
23、Z
24、Z
25およびZ
26はそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、当該アルキレン中の少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−または−CF
2O−で置き換えられてもよく;
L
21、L
22およびL
23はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
X
2はフッ素、塩素、−CF
3、または−OCF
3であり;
n21、n22、n23およびn24は、それぞれ独立して0または1であり、1≦n21+n22+n23+n24≦2であり;
但し、Z
26が単結合であり、かつL
21がフッ素である場合は、L
22およびL
23はともにフッ素である。)
【0017】
[9] 化合物(4)が、式(4−1)〜(4−10)のいずれかで表される化合物である、[8]に記載の液晶組成物。
(上記式中、R
4Aはそれぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、または炭素数1〜11のアルコキシであり;
X
4Aはフッ素、塩素、−CF
3または−OCF
3であり;
L
40〜L
49はそれぞれ独立して水素またはフッ素であるが、L
46およびL
47がともにフッ素である場合は、L
48およびL
49はいずれもフッ素である。)
【0018】
[10] 化合物(2)が、式(2−1−1−2)、(2−1−2−1)、(2−1−3−1)、(2−1−3−2)、(2−1−4−2)、または(2−1−4−3)のいずれかで表される化合物である、[8]に記載の液晶組成物。
(上記式中、R
2Aはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、または炭素数1〜11のアルコキシであり;
(F)はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
X
2Aは、フッ素、塩素、−CF
3または−OCF
3である。)
【0019】
[11] キラル剤が、式(K1)〜(K7)で表される化合物(K1)〜(K7)からなる群から選ばれる少なくとも1つである、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
(上記式中、R
Kはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=O、−N=C=Sまたは炭素数1〜12のアルキルであり、R
K中の少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、R
K中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、R
K中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
A
Kはそれぞれ独立して、芳香族性の6〜8員環、非芳香族性の3〜8員環、または、炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の少なくとも1つの水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、環の−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;
Y
Kはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のハロアルキル、芳香族性の6〜8員環、非芳香族性の3〜8員環、または、炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の少なくとも1つの水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、当該アルキル中の−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;
Z
Kはそれぞれ独立して、単結合、炭素数1〜8のアルキレンであり、Z
K中の少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−または−N=CH−で置き換えられてもよく、Z
K中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、Z
K中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
X
Kはそれぞれ独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、または−CH
2CH
2−であり;
mKはそれぞれ独立して、1〜3の整数である。)
【0020】
[12] −20℃〜70℃のいずれかの温度においてキラルネマチック相を示し、この温度範囲の少なくとも一部において螺旋ピッチが700nm以下である、[1]〜[11]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0021】
[13] [1]〜[11]のいずれか1項に記載の液晶組成物と、重合性モノマーとを含む混合物。
【0022】
[14] [13]に記載の混合物を重合して得られる、光学的に等方性の液晶相で駆動される素子に用いられる高分子/液晶複合材料。
【0023】
[15] 一方または両方の基板に電極が配置され、基板間に配置された液晶媒体、および電極を介して液晶媒体に電界を印加する電界印加手段を備えた光素子であって、液晶媒体が、[1]〜[12]のいずれか1項に記載の液晶組成物または[14]に記載の高分子/液晶複合材料である、光素子。
【0024】
[16] [1]〜[11]のいずれか1項に記載の液晶組成物または[14]に記載の高分子/液晶複合材料の光素子への使用。
【0025】
[17] 式(1A)で表される化合物。
(上記式中、R
1Aはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数2〜12のアルキニル、または炭素数1〜11のアルコキシであり;
A
1、およびA
2はそれぞれ独立して、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、または3−フルオロ−5−クロロ−1,4−フェニレンであり;
Z
1、およびZ
2はそれぞれ独立して単結合、または炭素数1〜4のアルキレンであり;
Z
3は、−COO−、または−CF
2O−であり;
L
11はそれぞれ独立して水素、フッ素または塩素であり;
Y
1Aはフッ素、塩素、−CF
3、または−OCF
3であり;
n1、およびn2は、それぞれ独立して0または1であり、n1+n2≧1である。)
【0026】
[18] 式(1−1−1)〜(1−1−3)、(1−3−1)〜(1−3−3)、(1−5−1)〜(1−5−3)、および(1−7−1)〜(1−7−3)で表される化合物。
(上記式中、R
1Aは炭素数1〜12のアルキルであり、(F)は水素またはフッ素である。)
【0027】
本明細書において、「液晶化合物」とはメソゲンを有する化合物を表し、液晶相を発現する化合物に限定されない。具体的には、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を発現する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。
「液晶媒体」とは、液晶組成物および高分子/液晶複合体の総称である。
「アキラル成分」とはアキラルなメソゲン化合物であって、光学活性化合物および重合性官能基を有する化合物を含まない成分である。したがって、「アキラル成分」には、キラル剤、モノマー、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、硬化剤、安定剤等は含まれない。
「キラル剤」は、光学活性化合物であり、液晶組成物に所望のねじれた分子配列を与える為に添加されるために用いられる成分である。
「液晶表示素子」は、液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。
また、「光素子」とは、電気光学効果を利用して、光変調や光スイッチングなどの機能を奏する各種の素子を指し、たとえば、表示素子(液晶表示素子)、光通信システム、光情報処理や種々のセンサーシステムに用いられる光変調素子が挙げられる。光学的に等方性の液晶媒体への電圧印加による屈折率の変化を利用した光変調については、カー効果が知られている。カー効果とは電気複屈折値Δn(E)が電場Eの二乗に比例する現象であり、カー効果を示す材料ではΔn(E)=KλE
2が成立する(K:カー係数(カー定数)、λ:波長))。ここで、電気複屈折値とは、等方性媒体に電界を印加した時に誘起される屈折率異方性値である。
【0028】
「液晶化合物」、「液晶組成物」、「液晶表示素子」をそれぞれ「化合物」、「組成物」、「素子」と略すことがある。
また、たとえば液晶相の上限温度は液晶相−等方相の相転移温度であり、そして単に透明点または上限温度と略すことがある。液晶相の下限温度を単に下限温度と略すことがある。化合物(2)〜(5)において、六角形で囲んだA
1、B
1、C
1などの記号はそれぞれ環A
1、環B
1、環C
1などに対応する。百分率で表した化合物の量は組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。環A
1、Y
1、B
1など複数の同じ記号を同一の式または異なった式に記載したが、これらはそれぞれが同一であってもよいし、または異なってもよい。
【0029】
本明細書中の「アルキル」は直鎖でも分岐でもよく、具体例としては、−CH
3、−C
2H
5、−C
3H
7、−C
4H
9、−C
5H
11、−C
6H
13、−C
7H
15、−C
8H
17、−C
9H
19、−C
10H
21、−C
11H
23、および−C
12H
25が挙げられる。
【0030】
本明細書中の「アルケニル」は直鎖でも分岐でもよく、具体例としては、−CH=CH
2、−CH=CHCH
3、−CH
2CH=CH
2、−CH=CHC
2H
5、−CH
2CH=CHCH
3、−(CH
2)
2−CH=CH
2、−CH=CHC
3H
7、−CH
2CH=CHC
2H
5、−(CH
2)
2−CH=CHCH
3、および−(CH
2)
3−CH=CH
2が挙げられる。
また、−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH
3、−CH=CHC
2H
5、−CH=CHC
3H
7、−CH=CHC
4H
9、−C
2H
4CH=CHCH
3、および−C
2H
4CH=CHC
2H
5のような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CH
2CH=CHCH
3、−CH
2CH=CHC
2H
5、および−CH
2CH=CHC
3H
7のような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。また、アルケニル基の位置はベンゼン環と共役を作らない位置が好ましい。
本明細書中、「アルキニル」は直鎖でも分岐でもよく、具体例としては、−C≡CH、−C≡CCH
3、−CH
2C≡CH、−C≡CC
2H
5、−CH
2C≡CCH
3、−(CH
2)
2−C≡CH、−C≡CC
3H
7、−CH
2C≡CC
2H
5、−(CH
2)
2−C≡CCH
3、および−C≡C(CH
2)
5が挙げられる。
本明細書中、「アルコキシ」は直鎖でも分岐でもよく、具体例としては、−OCH
3、−OC
2H
5、−OC
3H
7、−OC
4H
9、−OC
5H
11、−OC
6H
13および−OC
7H
15、−OC
8H
17、−OC
9H
19、−OC
10H
21、および−OC
11H
23が挙げられる。
【0031】
本明細書中、「アルコキシアルキル」は直鎖でも分岐でもよく、具体例としては、−CH
2OCH
3、−CH
2OC
2H
5、−CH
2OC
3H
7、−(CH
2)
2−OCH
3、−(CH
2)
2−OC
2H
5、−(CH
2)
2−OC
3H
7、−(CH
2)
3−OCH
3、−(CH
2)
4−OCH
3、および−(CH
2)
5−OCH
3が挙げられる。
【0032】
本明細書中、「アルケニルオキシ」は直鎖でも分岐でもよく、具体例としては、−OCH
2CH=CH
2、−OCH
2CH=CHCH
3、および−OCH
2CH=CHC
2H
5が挙げられる。
【0033】
本明細書中、「ハロゲン」の具体例としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の好ましい化合物は液晶性を示し、比較的高い透明点、広いネマチック相温度範囲、比較的大きな誘電率異方性を有する。また、本発明の化合物を含有する光学的に等方性の液晶組成物を使用した高分子/液晶複合材料等は、駆動電圧は低いが誘電率は小さい。
本発明の好ましい液晶組成物および高分子/液晶複合材料等は、熱、光などに対する安定性、光学的に等方性の液晶相の高い上限温度と低い下限温度を示し、駆動電圧が低いが誘電率は小さい。
さらに、本発明の好ましい態様の光学的に等方性の液晶相で駆動される光素子は、幅広い温度範囲で使用可能であり、低電圧駆動が可能であり、かつ動作温度を中心とした温度範囲で駆動電圧の温度依存性が小さく、高速な電気光学応答が可能であり、大きなコントラスト比を有する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の光学的に等方性の液晶相を有する液晶組成物は、アキラル成分Tとキラル剤を含有し、アキラル成分Tは第1成分として化合物(1)を含む。本発明の液晶組成物の第1の態様は、第1成分と本明細書中で特に成分名を示していないその他の成分を含有する組成物である。まず、化合物(1)について説明する。また、本発明の液晶組成物は上記成分の他に、溶媒、モノマー、重合開始剤、硬化剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)等をさらに含有してもよい。
【0037】
1−1 化合物(1)
化合物(1)において、R
1は水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数2〜12のアルキニル、または炭素数1〜11のアルコキシである。
R
1は式(CHN−1)〜(CHN−4)で表される構造が好ましい。より好ましくは(CHN−1)または(CHN−2)である。
(上記式中、R
1aは水素または炭素数1〜12のアルキルである。)
A
1、およびA
2はそれぞれ独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−5−クロロ−1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイルである。
Z
1、およびZ
2は、それぞれ独立して単結合、または炭素数1〜4のアルキレンである。好ましくは単結合、またはエチレンである。
Z
3は、−COO−、または−CF
2O−である。
Y
1はフッ素、塩素、−CF
3、または−OCF
3である。好ましくはフッ素、−OCF
3または−CF
3である。
L
11は水素、フッ素または塩素である。
n1、およびn2は、それぞれ独立して0または1であり、n1+n2≧1である。
【0038】
化合物(1)において、化合物(1−1)〜(1−12)を用いることが好ましい。
(上記式中、R
1Aは炭素数1〜12のアルキレン、または炭素数2〜12のアルケニルであり; Z
1およびZ
2はそれぞれ独立して単結合、または炭素数1〜4のアルキレンであり;
Y
1Aはフッ素、−OCF
3、または−CF
3であり; (F)はフッ素または水素である。)
【0039】
1−2 化合物(1)の性質
化合物(1)は、素子が通常使用される条件下で物理的および化学的に極めて安定であり、比較的大きな誘電率異方性と大きな屈折率異方性を有し、透明点が高く、他の化合物との相溶性が比較的に良い。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。
【0040】
化合物(1)において、A
1、およびA
2が、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるものは、誘電率異方性が大きく、屈折率異方性が大きい。A
1、およびA
2が1,4−フェニレン、または3−フルオロ−5−クロロ−1,4−フェニレンであるものは、融点が低く、他の化合物との相溶性が良好である。A
1、およびA
2が1,4−シクロヘキシレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルのものは、液晶相が広く、他の化合物との相溶性が比較的に良い。A
1、およびA
2が1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであるものは、誘電率異方性が極めて大きい。A
1、およびA
2がピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルのものは、誘電率異方性が極めて大きく、屈折率異方性が大きい。
Z
1、およびZ
2が単結合のときは誘電率異方性が大きく、屈折率異方性が大きい。またZ
1、およびZ
2が炭素数1〜4のアルキレンのものは、融点が低く、他の化合物との相溶性が良好である。
Z
3が−COO−のものは、融点が高く、液晶相が広く、また誘電率異方性が大きい。また、Z
3が−CF
2O−のものは、融点が低く、誘電率異方性が大きく、他の化合物との相溶性が良好である。
L
11が水素であるものは、透明点が高く、低温での相溶性が良好である。L
11がフッ素であるものは融点が低く、誘電率異方性が極めて大きい。また、L
11が塩素であるものは、融点が低く、誘電率異方性が大きく、他の化合物との相溶性が良好である。
【0041】
Y
1はフッ素、塩素、−CF
3、または−OCF
3である。Y
1がフッ素、または−OCF
3であるものは誘電率異方性が大きく、他の化合物との相溶性がよい。Y
1が−CF
3であるものは誘電率異方性が極めて大きい。Y
1が塩素であるものは屈折率異方性が大きい。
n1が0であるものは、透明点が比較的高く、誘電率異方性が大きく、屈折率異方性が大きい。また、n1が1であるものは、透明点が非常に高く、誘電率異方性が大きく、屈折率異方性が極めて大きい。
【0042】
従って、液晶組成物において、例えばA
1およびA
2が1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンのいずれかであり、L
11がフッ素であり、Y
1がフッ素または−OCF
3である化合物(1)を用いると、液晶相の温度範囲を広げることが可能となり、駆動電圧が低く、幅広い温度範囲で表示素子として使用することができる。
また、液晶組成物において、A
1が1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり、A
2が3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、L
11がフッ素であり、かつY
1がフッ素または−CF
3である化合物(1)を用いると、駆動電圧が非常に低く、幅広い温度範囲で表示素子として使用することができる。
化合物(1)は、液晶組成物の成分として少量使用するだけで駆動電圧を低下させ、かつ誘電率を小さくするという優れた特長を有する。
【0043】
最も好適な化合物としては、化合物 (1−1−1)〜(1−1−3)、(1−3−1)〜(1−3−3)、(1−5−1)〜(1−5−3)、(1−7−1)〜(1−7−3)が挙げられる。
(上記式中、R
1Aは炭素数1〜12のアルキルであり; (F)は水素またはフッ素である。)
【0044】
化合物(1−1−1)〜(1−1−3)で表される化合物は、比較的に高い透明点、および大きな誘電率異方性を有し、化合物(1−3−1)〜(1−3−3)で表される化合物は、極めて大きな誘電率異方性を有し、低温での比較的相溶性が良好である。
化合物(1−5−1)〜(1−5−3)で表される化合物は、極めて高い透明点、大きな誘電率異方性、および大きな屈折率異方性を有し、化合物(1−7−1)〜(1−7−3)で表される化合物は、極めて大きな透明点、および極めて大きな誘電率異方性を有する。
これらの化合物を含有する液晶組成物を用いた高分子/液晶複合材料は、広い液晶相温度範囲を有し、駆動電圧は低いが誘電率は小さいことから、液晶組成物の成分として有用である。
【0045】
1−3 化合物(1)の合成
化合物(1)は公知の有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成できる。化合物(1)を合成する方法は複数あり、市販の試薬から適宜、合成することが可能である。
また、化合物(1)を合成する際、出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載されている。
【0046】
化合物(1)のZ
3が−COO−である化合物の合成は容易であるので、以下に、化合物(1)において、Z
3が−CF
2O−で表される化合物を合成するスキームの一例を示す。尚、化合物(1)の合成が当該スキームに限定されることはない。
(スキーム中のR
1、A
1、Z
2、L
13、n
1、n
2、およびY
1は化合物(1)と同じ定義である。)
【0047】
化合物(101)、(104)および(106)は市販されているか、もしくは一般的な有機化学合成法により準備できる。3,5−ジフルオロフェノール(101)をイミダゾールなどの塩基の存在下で、塩化シリルを用いて水酸基を保護して化合物(102)を得る。化合物(102)にブチルリチウムなどを用いてリチウム試薬を調製し、次いでヨウ素を作用させて得られた生成物を酸性条件下で撹拌して保護基を除去することによりヨウ素誘導体(103)を得る。
【0048】
ハロゲン化合物(103)と(104)の混合物に、塩基の存在下でパラジウムなどの金属触媒を作用させてカップリング反応を行うことにより、フェノール誘導体(105)を得る。
【0049】
化合物(106)にブチルリチウムなどを用いてリチウム試薬を調製し、次いでジブロモフジフルオロメタンを作用させることにより化合物(107)を得る。
【0050】
得られた化合物(107)とフェノール誘導体(105)を塩基の存在下でエーテル化反応を行うことにより、化合物(1)においてZ
3が−CF
2O−で表される化合物が得られる。
【0051】
2−1 液晶組成物
本発明の液晶組成物は、化合物(1)を含有し、光学的に等方性の液晶相を発現する組成物である。また、光学的に等方性の液晶組成物は化合物(1)を含むアキラル成分Tの他に、キラル剤を含み、さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤等を含んでもよい。
【0052】
アキラル成分Tは、1種類の化合物(1)を含む組成物、および2種類以上の化合物(1)を含む液晶組成物である。本発明のアキラル成分Tは、必要に応じて、後述する化合物(2)〜(7)から選ばれる化合物をさらに少なくとも1つ含んでもよい。
【0053】
化合物(1)は比較的高い透明点、比較的大きな誘電率異方性、良好な低温での相溶性を併せ持つ。化合物(1)を用いたアキラル成分Tは、広い液晶相温度範囲を示し、駆動電圧は低いが、誘電率は小さい。このため、アキラル成分Tを用いた光学的に等方性の液晶組成物も、光素子に用いる組成物として有用である。
【0054】
アキラル成分Tの全重量に対して、化合物(1)を合計で1重量%〜60重量%含有することが好ましく、5重量%〜40重量%含有することがさらに好ましく、10重量%〜30重量%含有することが特に好ましい。
【0055】
2−2 化合物(2)
本発明のアキラル成分Tは、化合物(1)に加えて、さらに化合物(2)を少なくとも1つ含んでもよい。また本発明の液晶組成物は、化合物(1)の他に、化合物(3)〜(7)から選ばれる化合物を少なくとも1つ含んでもよい。
化合物(2)において、R
2は水素または炭素数1〜12のアルキルであり、R
2中の少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、R
2中の少なくとも1つの−CH
2−が−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、R
2中の少なくとも1つの水素がハロゲンまたは炭素数1〜3のアルキルで置き換えられてもよく、
但し、R
2において−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−が隣接することはない。
R
2は、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、または炭素数1〜11のアルコキシが好ましい。
A
21〜A
24はそれぞれ独立して、1,4−シクロへキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、1つまたは2つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、2つの水素がそれぞれフッ素と塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルである。
A
21〜A
24は、1,4−フェニレン、1つまたは2つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンが好ましく、化合物の安定性や誘電率異方性が大きい。
Z
21〜Z
26はそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、当該アルキレン中の少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、または−CF
2O−で置き換えられてもよい。
Z
21〜Z
26は、すべて単結合であるか、少なくとも1つが−CF
2O−であることが好ましく、他の液晶化合物との相溶性が良い。n24=1であり、かつZ
25が−CF
2O−である場合が特に好ましい。
L
21、L
22およびL
23はそれぞれ独立して、水素またはフッ素である。但し、Z
26が単結合であり、かつL
21がフッ素であるとき、L
22およびL
23がともにフッ素である。L
22、およびL
23がともにフッ素であるものが好ましく、誘電率異方性が大きい。
X
2はフッ素、塩素、−CF
3、または−OCF
3であり、好ましくはフッ素および−CF
3である。
n21、n22、n23およびn24は、それぞれ独立して0または1であり、1≦n21+n22+n23+n24≦2である。
n21+n22+n23+n24=2の化合物は透明点が高く、n21+n22+n23+n24=1の化合物は融点が低い。
【0056】
化合物(2)はクロロフェニレン環を有する。化合物(2)は、素子が通常使用される条件下で物理的および化学的に極めて安定であり、他の液晶化合物との相溶性がよい。さらにスメクチック相を発現しにくい。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。
【0057】
化合物(2)の環構造、末端基、結合基などの種類を適当に選択することにより目的の物性を有する化合物を得ることができる
化合物(2)において、結合基Z
21〜Z
26は単結合、または−CF
2O−であるとき、化学的に比較的安定であって、比較的劣化を起こしにくい。さらに結合基が単結合であるときは、粘度が小さい。また、結合基が−CF
2O−であるときは、誘電率異方性が大きい。また、X
2がフッ素、塩素、−OCF
3であるときは、他の液晶化合物との低温相溶性に優れ、−CF
3であるときは、誘電率異方性が大きい。
【0058】
化合物(2)において、式(2−1)で表される化合物を用いることが好ましい。
式中、R
2Aは、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、または炭素数1〜11のアルコキシであり; Z
21、Z
22、Z
23、Z
24、Z
25、およびZ
26はそれぞれ独立して、単結合または−CF
2O−であり; L
21、L
22、およびL
23は、それぞれ独立して、水素またはフッ素であり; n22、n23、およびn24はそれぞれ独立して、0または1であり、n22+n23+n24は、0または1の整数であり; X
2Aはフッ素、塩素、−CF
3および−OCF
3であり;(F)はそれぞれ独立して水素またはフッ素であり;
但し、Z
26が単結合、かつL
21がフッ素のとき、L
22およびL
23はともにフッ素である。
【0059】
化合物(2)において、化合物(2−1−1)〜(2−1−5)を用いることが好ましい。
(式中、R
2A、X
2A、Z
21〜Z
26、および(F)の定義は、化合物(2−1)と同じである。)
【0060】
化合物(2)において、化合物(2−1−1−1)〜(2−1−1−3)、(2−1−2−1)〜(2−1−2−3)、(2−1−3−1)〜(2−1−3−3)、(2−1−4−1)〜(2−1−4−3)、または(2−1−5−1)〜(2−1−5−3)を用いることが好ましく、式(2−1−1−1)、(2−1−1−2)、式(2−1−2−1)、(2−1−2−2)、式(2−1−3−1)、(2−1−3−2)、(2−1−4−2)、(2−1−4−3)、または(2−1−5−3)を用いることがさらに好ましい。
(上記式中、R
2A、(F)、およびX
2Aの定義は化合物(2−1)と同じである。)
【0061】
化合物(2)は、良好な相溶性と大きな誘電率異方性と大きな屈折率異方性を有する。アキラル成分Tの全重量に対して、化合物(2)を合計で0.5重量%〜70重量%含有することが好ましく、5重量%〜60重量%含有することがさらに好ましく、10重量%〜50重量%含有することが特に好ましい。
【0062】
2−3 化合物(3)
本発明のアキラル成分Tは、化合物(1)に加えて、さらに少なくとも1つの化合物(3)を含んでもよい。また本発明の液晶組成物は、化合物(1)と化合物(3)の他に、化合物(2)、および(4)〜(7)をすくなくとも1つ含んでもよい。
化合物(3)において、R
3は水素または炭素数1〜12のアルキルであり、R
3中の少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、R
3中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、R
3中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、R
3において−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−が隣接することはない。
R
3は炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、または炭素数1〜11のアルコキシが好ましい。
【0063】
Z
31、Z
32、Z
33、およびZ
34はそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、当該アルキレン中の少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−または−CF
2O−で置き換えられてもよい。
Z
31、Z
32、Z
33、およびZ
34は、単結合、−COO−または−CF
2O−が好ましく、すべてが単結合であるか、いずれか1つが−CF
2O−であることがさらに好ましい。特に、n31+n32=2の場合、Z
31、Z
32、Z
33およびZ
34のうち、少なくとも1つは−CF
2O−であることが好ましい。
L
31、L
32、L
33,L
34、L
35およびL
36は水素またはフッ素であるが、n32が1であり、かつZ
34が−COO−または−CF
2O−である場合は、L
32、およびL
35がフッ素であることが好ましく、Z
33が−COO−または−CF
2O−である場合は、L
33、およびL
35がフッ素であることが好ましい
【0064】
X
3は水素、ハロゲン、−SF
5または炭素数1〜10のアルキルであり、X
3中の少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、X
3中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、X
3中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、X
3において−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−とが隣接することはない。
X
3における少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられたアルキルの具体的な例として、−CH
2F、−CHF
2、−CF
3、−(CH
2)
2−F、−CF
2CH
2F、−CF
2CHF
2、−CH
2CF
3、−CF
2CF
3、−(CH
2)
3−F、−(CF
2)
3−F、−CF
2CHFCF
3、−CHFCF
2CF
3、−(CH
2)
4−F、−(CF
2)
4−F、−(CH
2)
5−F、および−(CF
2)
5−Fが挙げられる。
少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられたアルコキシの具体的な例として、−OCH
2F、−OCHF
2、−OCF
3、−O−(CH
2)
2−F、−OCF
2CH
2F、−OCF
2CHF
2、−OCH
2CF
3、−O−(CH
2)
3−F、−O−(CF
2)
3−F、−OCF
2CHFCF
3、−OCHFCF
2CF
3、−O(CH
2)
4−F、−O−(CF
2)
4−F、−O−(CH
2)
5−F、および−O−(CF
2)
5−Fが挙げられる。
少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられたアルケニルの具体的な例として、−CH=CHF、−CH=CF
2、−CF=CHF、−CH=CHCH
2F、−CH=CHCF
3、−(CH
2)
2−CH=CF
2、−CH
2CH=CHCF
3、−CH=CHCF
3、および−CH=CHCF
2CF
3が挙げられる。
X
3は、フッ素、塩素、−CF
3、−CHF
2、−OCF
3、または−OCHF
2が好ましく、フッ素、塩素、−CF
3、または−OCF
3がさらに好ましい。
【0065】
n31、およびn32は、それぞれ独立して0または1である。
但し、Z
33が−CF
2O−または−COO−であり、Z
34が単結合であり、かつL
34がフッ素であるとき、L
35およびL
36はともにフッ素である。
【0066】
化合物(3)は、素子が通常使用される条件下で物理的および化学的に極めて安定であり、そして他の液晶化合物との相溶性がよい。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。化合物(3)は透明点が比較的高く、大きな誘電率異方性と大きな屈折率異方性を有する。
【0067】
化合物(3)において、化合物(3−1)〜(3−3)を用いることが好ましく、化合物(3−2)および(3−3)で表される化合物を用いることがより好ましい。
(式中、R
3Aはそれぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、または炭素数1〜11のアルコキシであり; L
31、L
33、L
34、およびL
36はそれぞれ独立して水素またはフッ素であり; X
3Aはフッ素、塩素、−CF
3、または−OCF
3である。)
【0068】
化合物(3−1)においては、化合物(3−1A)〜(3−2B)を用いることがさらに好ましく、化合物(3−1A)を用いることが特に好ましい。
化合物(3−2)においては、化合物(3−2A)〜(3−2D)を用いることがさらに好ましく、化合物(3−2C)用いることが特に好ましい。
化合物(3−3)においては、化合物(3−3A)〜(3−3D)を用いることがさらに好ましく、化合物(3−3A)および(3−3C)を用いることが特に好ましく、化合物(3−3A)を用いることが最も好ましい。
(上記式中、R
3Aは独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、または炭素数1〜11のアルコキシであり;
X
3Aはフッ素、塩素、−CF
3または−OCF
3である。)
【0069】
アキラル成分Tの全重量に対して、化合物(3)を合計で0.5重量%〜70重量%含有することが好ましく、5重量%〜60重量%含有することがさらに好ましく、10重量%〜50重量%含有することが特に好ましくである。
【0070】
化合物(3)において、R
3、フェニレン環上の基(L
31〜L
36およびX
3)、あるいはZ
31〜Z
34を適切に選択することによって、透明点、屈折率異方性、誘電率異方性などの物性を任意に調整することが可能である。
L
31〜L
36におけるフッ素の数が多いときは誘電率異方性が大きい。L
31が水素であるときは他の液晶との相溶性に優れる。L
35およびL
36がともにフッ素であるときは、誘電率異方性が特に大きい。
Z
31〜Z
34が単結合、または−CF
2O−であるときは粘度が小さく、化学的に安定である。Z
31〜Z
34のいずれか1つが−CF
2O−であるときは誘電率異方性が大きい。
【0071】
X
3がフッ素、塩素、−SF
5、−CF
3、−CHF
2、−CH
2F、−OCF
3、−OCHF
2または−OCH
2Fであるときは誘電率異方性が大きい。X
3がフッ素、−OCF
3、または−CF
3であるときは、化学的に特に安定である。
【0072】
n31+n32=0のとき、透明点が低く、粘性が低く、他の液晶化合物との相溶性が良い。n31+n32=1のとき、透明点が比較的高く、誘電率異方性が大きく、屈折率異方性が大きい。また、n31+n32=1のとき、透明点が非常に高く、誘電率異方性が大きく、屈折率異方性が極めて大きい。
【0073】
2−4 化合物(4)
本発明のアキラル成分Tは、化合物(1)に加えて、さらに少なくとも1つの化合物(4)を含んでもよい。また本発明の液晶組成物は、化合物(1)と化合物(4)の他に、化合物(2)、(3)および(5)〜(7)を少なくとも1つ含んでもよい。
【0074】
化合物(4)において、R
4は炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、または炭素数1〜11のアルコキシである。
B
41、B
42、およびB
43は独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジクロロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであるが、B
41、B
42、およびB
43のすべてがフッ素で置き換えらえた1,4−フェニレンであることはない。
B
41、B
42、およびB
43は光学異方性を上げるために1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレンまたは3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、粘度を下げるために1,4−シクロへキシレンであることが好ましい。
【0075】
Z
41、Z
42、Z
43、およびZ
44は独立して、単結合、エチレン、−COO−、−OCO−、−CF
2O−または−OCF
2−であるが、誘電率異方性を上げるため、および相溶性を良好にするためには、Z
41、Z
42、Z
43、およびZ
44のいずれか1つは−CF
2O−であるものが好ましい。Z
41、Z
42、Z
43、およびZ
44が単結合のとき、粘度が低い。
L
46、L
47、L
48およびL
49は独立して、水素、またはフッ素であるが、Z
43が−CF
2O−または−COO−であり、Z
44が単結合であり、かつL
46およびL
47がともにフッ素である場合には、る場合には、L
48およびL
49がともにフッ素である。L
48およびL
49がともにフッ素のとき誘電率異方性が大きい。L
47およびL
49ともに水素のときは透明点が高い。
X
4は、フッ素、塩素、−CF
3または−OCF
3である。X
4がフッ素または−CF
3であるとき、誘電率異方性が大きい。X
4は、フッ素または−OCF
3がであるとき化合物との相溶性が良好である。X
4が塩素であるとき、屈折率異方性を大きい。
【0076】
n41およびn42はそれぞれ独立して0または1である。n41+n42=1であり、かつZ
43が−CF
2O−である場合には、L
48およびL
49がともにフッ素であることが好ましい。n41+n42が1または2である場合、Z
41、Z
42、Z
43、およびZ
44のいずれかは−CF
2O−であることが特に好ましい。
【0077】
化合物(4)において、化合物(4−1)〜(4−10)を用いることが好ましい。
(式(4−1)〜(4−10)において、R
4Aはそれぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、または炭素数1〜11のアルコキシであり;
X
4Aはフッ素、塩素、−CF
3、−OCF
3であり、L
40〜L
49はそれぞれ独立して水素またはフッ素であるが、L
46およびL
47がともにフッ素である場合は、L
48およびL
49はいずれもフッ素である。)
【0078】
化合物(4−1)〜(4−3)は透明点が高く、5環化合物としては相溶性に優れる。化合物(4−4)〜(4−6)は透明点が高く、屈折率異方性が大きく、化合物(4−7)〜(4−10)は相溶性に優れる。なお、L
40〜L
49において、フッ素の数が多いほど、誘電率異方性が大きい。
【0079】
化合物(4)は、大きな誘電率異方性あるいは低温での良好な相溶性を有する組成物の調製に適している。アキラル成分Tの全重量に対して、化合物(4)を合計で5重量%〜40重量%含有することが好ましく、5重量%〜30重量%含有することがさらに好ましく、5重量%〜20重量%含有することが特に好ましい。
【0080】
2−5 化合物(5)
本発明のアキラル成分Tは、化合物(1)に加えて、さらに少なくとも1つの化合物(5)を含んでもよい。また本発明の液晶組成物は、化合物(1)と化合物(5)の他に、化合物(2)〜(4)、(6)および(7)から選ばれる化合物を少なくとも1つ含んでもよい。
【0081】
化合物(5)において、R
5は水素または炭素数1〜12のアルキルであり、R
5中の少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、R
5中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、R
5中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、R
5において−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−が隣接することはない。
【0082】
X
5は水素、ハロゲン、−SF
5または炭素数1〜10のアルキルであり、X
5中の少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、X
5中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−が−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、X
5中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、X
5において−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−とが隣接することはない。)
X
5の具体的な例として、フッ素、塩素、−CF
3、−CHF
2、−OCF
3および−OCHF
2が挙げられ、フッ素、塩素、−CF
3および−OCF
3が好ましい。X
5が塩素またはフッ素であるとき、融点が比較的低く、他の液晶化合物との相溶性が特に優れている。X
5が−CF
3、−CHF
2、−OCF
3および−OCHF
2であるとき、比較的大きな誘電率異方性を示す。
X
5がフッ素、塩素、−SF
5、−CF
3、−OCF
3、または−CH=CH−CF
3であるとき、誘電率異方性が比較的大きく、X
5がフッ素、−CF
3、または−OCF
3であるときは、特に化学的に安定する。
【0083】
(F)はそれぞれ独立して、水素またはフッ素である。
【0084】
R
5またはX
5において、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルキルの具体的な例は、−CHF
2、−CF
3、−CF
2CH
2F、−CF
2CHF
2、−CH
2CF
3、−CF
2CF
3、−(CH
2)
3−F、−(CF
2)
3−F、−CF
2CHFCF
3、および−CHFCF
2CF
3である。
R
5とX
5において、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルコキシの具体的な例は、−OCHF
2、−OCF
3、−OCF
2CH
2F、−OCF
2CHF
2、−OCH
2CF
3、−O−(CF
2)
3−F、−OCF
2CHFCF
3、および−OCHFCF
2CF
3である。
【0085】
R
5とX
5において、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの具体的な例は、−CH=CF
2、−CF=CHF、−CH=CHCH
2F、−CH=CHCF
3、−(CH
2)
2−CH=CF
2、−CH
2CH=CHCF
3、および−CH=CHCF
2CF
3である。
【0086】
化合物(5)はジオキサン環と3個のフェニレン環を有する。化合物(5)は、素子が通常使用される条件下で物理的および化学的に極めて安定であり、そして透明点が高いにも関らず、他の液晶化合物との相溶性が比較的よい。化合物(5)を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。したがって、化合物(5)を含む組成物では、光学的に等方性の液晶相の温度範囲を広げることが可能となり、幅広い温度範囲で表示素子として使用することができる。また、化合物(5)は光学的に等方性の液晶相で駆動される組成物の駆動電圧を下げるための成分として有用である。キラル剤および化合物(5)を含む好ましい態様の組成物でブルー相を発現させると、N*相や等方相との共存がない均一なブルー相となる。このように、化合物(5)を含む好ましい態様の組成物は均一なブルー相を発現しやすい。また、化合物(5)を用いると液晶組成物の透明点が高くなる傾向がある。
【0087】
化合物(5)において、化合物(5−1)〜(5−4)を用いることが好ましく、(5−1)〜(5−3)を用いることがさらに好ましい。これらの化合物のうち、化合物(5−1−1)、(5−1−2)、(5−2−1)〜(5−2−4)、(5−3−1)、または(5−3−2)を用いることが特に好ましく、化合物(5−2−1)、(5−2−2)、または(5−3−2)を用いることが最も好ましい。
(式中、R
5Aは、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、または炭素数1〜11のアルコキシであり; (F)はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり; X
5Aは、フッ素、塩素、−CF
3または−OCF
3である。)
【0088】
化合物(5)は、大きな誘電率異方性を有する組成物の調製に適している。透明点を上げるために、アキラル成分Tの全重量に対して、化合物(5)を合計で約1.0重量%以上含有することが好ましい。また、液晶相の下限温度を下げるために、アキラル成分Tの全重量に対して、化合物5を合計で1重量%〜50重量%含有することが好ましい。さらに、アキラル成分Tの全重量に対して、化合物(5)を1重量%〜25重量%含有することが好ましく、1重量%〜15重量%含有することがさらに好ましい。
【0089】
2−6 化合物(6)
本発明のアキラル成分Tは、化合物(1)に加えて、さらに化合物(6)を1つ以上含んでもよい。また、例えば、本発明の液晶組成物は化合物(1)と化合物(6)の他に、化合物(2)〜(5)および(7)を1つ以上含んでもよい。
化合物(6)中のrは、1、2または3である。
【0090】
化合物(6)においてrが1の化合物は主として粘度調整または屈折率異方性の調整に効果があり、またrが2または3である化合物は透明点を高くするなどの光学的に等方性の液晶相の温度範囲を広げる効果、または屈折率異方性を調整する効果がある。
【0091】
化合物(6)で表される化合物の含有量を増加させると液晶組成物の駆動電圧が高くなり、粘度が低くなるので、液晶組成物の粘度の要求値を満たす限り、駆動電圧の観点から含有量は少ないほうが望ましい。アキラル成分Tの化合物6の含有量は、アキラル成分Tの全重量に対して、0重量%〜40重量%含有することが好ましく、1重量%〜40重量%含有することがさらに好ましく、1重量%〜20重量%含有することが特に好ましい。
【0092】
R
6AおよびR
6Bは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数1〜12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルである。化合物(6)の、粘度を下げるためには、化合物(6)中のR
6AおよびR
6Bは炭素数2〜12のアルケニルが好ましい。紫外線に対する安定性を上げるため、または熱に対する安定性を上げるためには、R
6AおよびR
6Bは炭素数1〜12のアルキルであることが好ましい。
【0093】
R
6AおよびR
6Bにおくるアルキルは、粘度を下げるために、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルであることが好ましい。
【0094】
R
6AおよびR
6Bにおけるアルコキシは、粘度を下げるためには、メトキシまたはエトキシが好ましい。
R
6AおよびR
6Bにおいて、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルケニルは、2,2−ジフルオロビニル、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル、5,5−ジフルオロ−4−ペンテニル、および6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニルが好ましい。
化合物(6)を含む組成物の粘度を下げるためにはR
6AおよびR
6Bは2,2−ジフルオロビニル、および4,4−ジフルオロ−3−ブテニルであることが好ましい。
【0095】
環CおよびDは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、rが2以上である時、そのうちの少なくとも2つの環Cは同じであっても、異なってもよい。化合物(6)の光学異方性を上げるためには、環Cおよび環Dは1,4−フェニレンまたは3−フルオロ−1,4−フェニレンであることが好ましい。化合物6の粘度を下げるためには、環Cおよび環Dは1,4−シクロへキシレンである。
【0096】
化合物(6)中のZ
61はそれぞれ独立して、単結合、エチレン、または−COO−、−OCO−であり、rが2以上である時、そのうちの少なくとも2つのZ
61は同じであっても、異なってもよい。好ましいZ
61は、粘度を下げるために単結合である。
【0097】
化合物(6)は、誘電率異方性値の絶対値が小さく、中性に近い化合物である。
化合物(6)において、式(6−1)〜(6−13)で表される化合物を用いることが好ましい。
(式中、R
6AおよびR
6Bはそれぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数1〜11のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルである。)
【0098】
これらの化合物の中で、化合物(6−1)〜(6−3)は比較的粘度が低く、化合物(6−4)〜(6−8)は透明点が比較的高く、化合物(6−9)〜(6−13)は比較的透明点が高い。
【0099】
化合物(6)は、必要に応じて粘度を下げるため、あるいは透明点を上げるために用いられる。ただし、駆動電圧を上昇させるので、駆動電圧を重視する場合は、使用しないか、少ない使用量で使用されることが好ましい。化合物(6)を合計で0重量%〜30重量%含有することが好ましく、0重量%〜20重量%含有することがさらに好ましく、0重量%〜10重量%含有することが特に好ましい。
【0100】
2−7−1 化合物(7)
本発明のアキラル成分は、化合物(1)に加えて、さらに少なくとも1つの化合物(7)を含んでもよい。また、例えば、本発明の液晶組成物は化合物(1)と化合物(7)の他に、化合物(2)〜(6)から選ばれた化合物を少なくとも1つ含んでもよい。
【0101】
化合物(7)において、R
7は水素または炭素数1〜12のアルキルであり、R
7中の少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、R
7中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、R
7中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、R
7において−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−が隣接することはない。R
7は、炭素数1〜12のアルキルが好ましい。
【0102】
L
71〜L
78はそれぞれ独立して、水素またはフッ素である。
但し、n71=1であり、Z
72が−CF
2O−または−COO−であり、Z
73が単結合であり、かつL
75およびL
76がともにフッ素であるとき、L
77およびL
78がともにフッ素である。また、n71=0であり、Z
71が−CF
2O−または−COO−であり、Z
73が単結合であり、かつL
75およびL
76がともにフッ素であるとき、L
77およびL
78がともにフッ素である。
L
72は水素であるものは、化合物との相溶性が良好である。L
77およびL
78がフッ素であるものは、誘電率異方性が大きく好ましい。
【0103】
Z
71、Z
72、およびZ
73はそれぞれ独立して、単結合、−COO−または−CF
2O−である。Z
71、Z
72、およびZ
73はのいずれかが−CF
2O−であるものは、誘電率異方性が大きく、かつ他の化合物との相溶性が良く好ましい。
【0104】
X
7は水素、ハロゲン、−SF
5または炭素数1〜10のアルキルであり、X
7中の少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、X
7中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、X
7中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、X
7において−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−とが隣接することはない。)
X
7において、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルキルの具体的な例は、−CHF
2、−CF
3、−CF
2CH
2F、−CF
2CHF
2、−CH
2CF
3、−CF
2CF
3、−(CH
2)
3−F、−(CF
2)
3−F、−CF
2CHFCF
3、および−CHFCF
2CF
3である。
X
7において、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルコキシの具体的な例は、−OCHF
2、−OCF
3、−OCF
2CH
2F、−OCF
2CHF
2、−OCH
2CF
3、−O−(CF
2)
3−F、−OCF
2CHFCF
3、および−OCHFCF
2CF
3である。
【0105】
X
7において、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの具体的な例は、−CH=CF
2、−CF=CHF、−CH=CHCH
2F、−CH=CHCF
3、−(CH
2)
2−CH=CF
2、−CH
2CH=CHCF
3、および−CH=CHCF
2CF
3である。
【0106】
X
7の好ましい具体的としては、フッ素、塩素、−CF
3、−CHF
2、−OCF
3および−OCHF
2が挙げられ、フッ素、塩素、−CF
3および−OCF
3がさらに好ましい。X
7が塩素、フッ素である場合は化合物(7)の融点が比較的低く、他の液晶化合物との相溶性が特に優れている。X
7が−CF
3、−SF
5、−CHF
2、−OCF
3および−OCHF
2である場合は、化合物7は比較的大きな誘電率異方性を示す。
X
7がフッ素、−CF
3、または−OCF
3であるときは、化学的に安定である。
n71は0または1である。n71=1であるものは、誘電率異方性が大きく、透明点が高い。n71=0であるものは、誘電率異方性が大きく、他の化合物との相溶性がよい。
【0107】
化合物(7)はジオキサン環と2〜4個のフェニレン環を有し、かつ少なくとも一つの−CF
2O−または−COO−連結基を有する。化合物(7)は、素子が通常使用される条件下で物理的および化学的に極めて安定であり、そして透明点が高いにも関らず、他の液晶化合物との相溶性が比較的よい。化合物(7)を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で比較的安定している。したがって、化合物7を含む組成物において光学的に等方性の液晶相の温度範囲を広げることが可能となり、幅広い温度範囲で表示素子として使用することができる。さらに化合物7は光学的に等方性の液晶相で駆動される組成物の駆動電圧を下げるための成分として有用である。また、化合物(7)とキラル剤とを含む組成物においてブルー相を発現させると、N*相や等方相との共存がない均一なブルー相となりやすい。すなわち、化合物(7)は均一なブルー相を発現させやすい化合物である。また、極めて大きな誘電率異方性を発現する。
【0108】
化合物(7)において、化合物(7−1)〜(7−8)で表される化合物を用いることが好ましく、化合物(7−1−1)、(7−1−2)、(7−2−1)〜(7−2−7)、(7−3−1)〜(7−3−4)、(7−4−1)、(7−5−1)、または(7−5−2)を用いることがより好ましく、化合物(7−2−1)〜(7−2−7)を用いることがさらに好ましく、(7−2−2−E)、(7−2−5−E)、(7−2−7-E)、(7−2−2−F)、(7−2−5−F)、(7−2−6-F)、または(7−2−7−F)を用いることが特に好ましい。
(式中、R
7Aは、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数1〜11のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり; X
7Aは、フッ素、塩素、−CF
3または−OCF
3であり;Z
71、およびZ
72はそれぞれ独立して、単結合、−COO−または−CF
2O−であるが、少なくとも一つは−COO−または−CF
2O−である;
但し、L
76がフッ素であるとき、L
77およびL
78はともにフッ素である。)
【0109】
化合物(7)は、大きな誘電率異方性を有する組成物の調製に適しており、本発明の素子における駆動電圧を低下させることができる。アキラル成分Tの全重量に対して、化合物7を合計で5重量%〜80重量%含有することが好ましく、20重量%〜75重量%含有することがさらに好ましく、30重量%〜70重量%含有することが特に好ましい。
【0110】
3 光学的等方性の液晶相を発現する組成物
本発明の液晶組成物は、アキラル成分Tとキラル剤とを含み、光学的等方性の液晶相を発現する組成物(以下では、光学的等方性の液晶組成物とよぶことがある)の態様を含む。
【0111】
3−1 アキラル成分T
本発明の光学的等方性の液晶組成物に含まれるアキラル成分Tは化合物(1)を含み、必要に応じて化合物(2)〜(7)を1つ以上含む。すなわち、アキラル成分Tは、化合物(1)の他に、化合物(2)、(3)、(5)または(7)から選ばれる化合物を少なくとも1つ含むことが好ましく、化合物(3)または(7)を含むことが特に好ましい。また求められる性質に応じて、化合物(4)または(6)を含む。化合物(1)〜(7)は液晶化合物である。
大きな誘電率異方性を発現させるためには、化合物(3)または(7)をさらに添加することが好ましい。これらの組成物は非常に大きな誘電率異方性を発現するため、光素子の低電圧化に極めて有効な組成物である。
【0112】
3−2 キラル剤
本発明の光学的等方性の液晶組成物が含有するキラル剤は光学活性化合物であり、ラジカル重合性基を有さない化合物から選ばれた化合物からなることが好ましい。
本発明の液晶組成物に用いられるキラル剤としては、ねじり力(Helical Twisting Power,HTP)が大きい化合物が好ましい。ねじり力が大きい化合物は所望のピッチを得るために必要な添加量が少なくできるので、駆動電圧の上昇を抑えられ、実用上有利である。具体的には、化合物(K1)〜(K7)で表される化合物が好ましい。なお、化合物(K4)〜(K7)は、ビナフチル基、オクタヒドロナフチル基が光学活性部位であり、かつ、キラル剤の掌性は問わない。
(式中、R
Kは独立して、炭素数3〜10のアルキルまたは炭素数3〜10のアルコキシであり、アルキル中またはアルコキシ中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)
【0113】
これらの化合物の中で、液晶組成物に添加されるキラル剤としては、化合物(K4−1)〜(K4−6)、(K5−1)〜(K5−3)、(K6−1)〜(K6−6)、および(K7−1)〜(K7−2)が好ましく、化合物(K4−5)、(K5−1)〜(K5−3)、(K6−5)〜(K6−6)、および(K7−1)〜(K7−2)がさらに好ましい。
(式中のR
Kは、式(K1)〜(K7)と同じ定義である。)
【0114】
液晶組成物に含有されるキラル剤として1つの化合物を用いても、複数の化合物を用いてもよい。
【0115】
光学的に等方性の液晶相の発現を容易にするために、本発明の液晶組成物の全重量に対して、キラル剤を1〜40重量%含有することが好ましく、3〜25重量%含有することがさらに好ましく、3〜15重量%含有することが特に好ましい。
【0116】
3−3 光学的に等方性の液晶相
本明細書において、液晶組成物が光学的に等方性を有するとは、巨視的には液晶分子配列は等方的であるため光学的に等方性を示すが、微視的には液晶秩序が存在することをいう。「液晶組成物が微視的に有する液晶秩序に基づくピッチ(以下では、単に「ピッチ」と呼ぶことがある)」は700nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがさらに好ましく、350nm以下であることが最も好ましい。
【0117】
本明細書において、「非液晶等方相」とは一般的に定義される等方相、すなわち、無秩序相であり、局所的な秩序パラメーターがゼロでない領域が生成したとしても、その原因がゆらぎによるものである等方相である。たとえばネマチック相の高温側に発現する等方相は、本明細書では非液晶等方相に該当する。本明細書におけるキラルな液晶についても、同様の定義があてはまるものとする。
【0118】
本明細書において「光学的に等方性の液晶相」とは、ゆらぎではなく光学的に等方性の液晶相を発現する相を表し、プレートレット組織を発現する相(狭義のブルー相)はその一例である。
本明細書において、特に言及がなければ、ネマチック相はキラルネマチック相を含まない、狭義のネマチック相を意味する。
【0119】
本発明の光学的に等方性の液晶組成物において、光学的に等方性の液晶相ではあるが、偏光顕微鏡観察下、ブルー相に典型的なプレートレット組織が観測されないことがある。そこで本明細書において、プレートレット組織を発現する相をブルー相と称し、ブルー相を含む光学的に等方性の液晶相を光学的に等方性の液晶相と称する。すなわちブルー相は光学的に等方性の液晶相に包含される。
【0120】
一般的に、ブルー相は、ブルー相I、ブルー相II、ブルー相IIIの3種類に分類され、これら3種類のブルー相はすべて光学活性であり、かつ、等方性である。ブルー相Iやブルー相IIのブルー相では異なる格子面からのブラッグ反射に起因する2種以上の回折光が観測される。ブルー相は一般的に非液晶等方相とキラルネマチック相の間で観測される。
【0121】
光学的に等方性の液晶相が2色以上の回折光を示さない状態とは、ブルー相I、ブルー相IIに観測されるプレートレット組織が観測されず、概ね一面単色であることを意味する。2色以上の回折光を示さない光学的に等方性の液晶相では、色の明暗が面内で均一であることまでは不要である。
【0122】
2色以上の回折光を示さない光学的に等方性の液晶相は、ブラッグ反射による反射光強度が抑えられる、あるいは低波長側にシフトするという利点がある。
また、可視光の光を反射する液晶媒体では、表示素子として利用する場合に色味が問題となることがあるが、2色以上の回折光を示さない液晶では、反射波長が低波長シフトするため、狭義のブルー相(プレートレット組織を発現する相)より長いピッチで可視光の反射を消失させることができる。
【0123】
アキラル成分Tとキラル剤とを含む本発明の液晶組成物において、キラル剤は好ましくはピッチが700nm以下になるような濃度で添加される。なお、ネマチック相を発現する組成物は、化合物1および必要に応じてその他の成分を含む。
【0124】
また、本発明の光学的等方性液晶組成物は、キラルネマチック相を有し、光学的に等方性の液晶相を有さない組成物にキラル剤を添加して得ることもできる。なお、キラルネマチック相を有し光学的に等方性の液晶を有さない組成物は、化合物1、光学活性化合物および必要に応じてその他の成分を含む。この際、光学的に等方性の液晶相を発現させないために、好ましくはピッチが700nm以上になるような濃度でキラル剤が添加される。ここで、添加されるは、前述のねじり力が大きい化合物(K1)〜(K7)が使用でき、より好ましくは、化合物(K2−1)〜(K2−8)、(K4−1)〜(K4−6)、(K5−1)〜(K5−3)、(K6−1)〜(K6−6)、または(K7−1)〜(K7−2)が用いられる。
【0125】
本発明の好ましい態様の液晶組成物が光学的に等方性の液晶相を発現する温度範囲は、ネマチック相またはキラルネマチック相と等方相の共存温度範囲が広い液晶組成物に、キラル剤を添加し、光学的に等方性の液晶相を発現させることにより、広くすることができる。たとえば、透明点の高い液晶化合物と透明点の低い液晶化合物とを混合し、広い温度範囲でネマチック相と等方相の共存温度範囲が広い液晶組成物を調製し、これにキラル剤を添加することで、広い温度範囲で光学的に等方性の液晶相を発現する組成物を調製することができる。
【0126】
ネマチック相またはキラルネマチック相と等方相の共存温度範囲が広い液晶組成物としては、キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3〜150℃である液晶組成物が好ましく、差が5〜150℃である液晶組成物が更に好ましい。また、ネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3〜150℃である液晶組成物が好ましい。
【0127】
光学的に等方性の液晶相において本発明の液晶媒体に電界を印加すると、電気複屈折が生じるが、必ずしもカー効果である必要はない。
光学的に等方性の液晶相における電気複屈折はピッチが長くなるほど大きくなるので、その他の光学特性(透過率、回折波長など)の要求を満たす限り、キラル剤の種類と含有量を調整して、ピッチを長く設定することにより、電気複屈折を大きくすることができる。
【0128】
3−4 その他の成分
本発明の液晶組成物は、その組成物の特性に大きな影響を与えない範囲で、さらに、溶媒、モノマー、高分子物質、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、硬化剤、安定剤、二色性色素、フォトクロミック化合物等を含んでもよい。
また、本発明の液晶組成物に用いられる二色性色素の例としては、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などが挙げられる。
【0129】
4 光学的に等方性の高分子/液晶複合材料
4−1 高分子/液晶複合材料
本発明の高分子/液晶複合材料は、液晶組成物と高分子とを含む複合材料であり、光学的に等方性を示すものであり、光学的に等方性の液晶相で駆動される光素子に用いることができる。本発明の高分子/液晶複合材料に含まれる液晶組成物は本発明の液晶組成物である。
【0130】
本明細書中、「高分子/液晶複合材料」とは、液晶組成物と高分子の化合物の両者を含む複合材料であれば特に限定されないが、高分子の一部または全部が液晶組成物や溶媒等に溶解していない状態で高分子が液晶組成物と相分離している状態でもよい。
【0131】
本発明の好ましい態様に係る光学的に等方性の高分子/液晶複合材料は、光学的に等方性の液晶相を広い温度範囲で発現させることが可能である。また、本発明の好ましい態様に係る高分子/液晶複合材料は、応答速度が極めて速い。また、本発明の好ましい態様に係る高分子/液晶複合材料は、これらの効果に基づいて表示素子等の光素子等に好適に用いることができる。
【0132】
4−2 高分子化合物
本発明の複合材料は、光学的に等方性の液晶組成物と、予め重合されて得られた高分子とを混合しても製造できるが、高分子の材料となる低分子量のモノマー、マクロモノマー、オリゴマー等(以下、まとめて「モノマー等」という)と液晶組成物とを混合してから、当該混合物において重合反応を行うことによって、製造されることが好ましい。モノマー等と液晶組成物とを含む混合物を本件明細書では、「重合性モノマー/液晶混合物」と呼ぶ。「重合性モノマー/液晶混合物」には必要に応じて、後述する重合開始剤、硬化剤、触媒、安定剤、二色性色素、またはフォトクロミック化合物等を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。たとえば、本件発明の重合性モノマー/液晶混合物には必要に応じて、重合開始剤を重合性モノマー100重量部に対して0.1〜20重量部含有してもよい。「重合性モノマー/液晶混合物」は、ブルー相で重合する場合は液晶媒体であることが必須となるが、等方相で重合する場合は、必ずしも液晶媒体である必要はない。
【0133】
重合温度は、高分子/液晶複合材料が高透明性と等方性を示す温度であることが好ましい。より好ましくはモノマーと液晶材料の混合物が等方相またはブルー相を発現する温度で、かつ、等方相ないしは光学的に等方性の液晶相で重合を終了する。すなわち、重合後は高分子/液晶複合材料が可視光線より長波長側の光を実質的に散乱せずかつ光学的に等方性の状態を発現する温度とするのが好ましい。
【0134】
本発明の複合材料を構成する高分子の原料としては、たとえば低分子量のモノマー、マクロモノマー、オリゴマーを使用することができ、本明細書において高分子の原料モノマーとは低分子量のモノマー、マクロモノマー、オリゴマー等を包含する意味で用いる。また、得られる高分子が三次元架橋構造を有するものが好ましく、そのために、高分子の原料モノマーとして2つ以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーを用いることが好ましい。重合性の官能基は特に限定されないが、アクリル基、メタクリル基、グリシジル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニル基などを上げることができるが、重合速度の観点からアクリル基およびメタクリル基が好ましい。高分子の原料モノマー中、二つ以上の重合性のある官能基を持つモノマーをモノマー中に10重量%以上含有させると、本発明の複合材料において高度な透明性と等方性を発現しやすくなるので好ましい。
また、好適な複合材料を得るためには、高分子はメソゲン部位を有するものが好ましく、高分子の原料モノマーとしてメソゲン部位を有する原料モノマーをその一部に、あるいは全部に用いることができる。
【0135】
4−2−1 メソゲン部位を有する単官能性・二官能性モノマー・三官能性モノマー
メソゲン部位を有する単官能性、または二官能性モノマーは構造上特に限定されないが、たとえば下記の式(M1)または式(M2)で表される化合物を挙げることができる。
R
MA−Y
M−(A
M−Z
M)
m1−A
M−Y
M−R
MB(M1)
R
MB−Y
M−(A
M−Z
M)
m1−A
M−Y
M−R
MB(M2)
【0136】
化合物(M1)において、R
MAは、水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=O、−N=C=S、または炭素数1〜20のアルキルであり、これらのアルキルにおいて少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−S−、−CO−、−COO−、または−OCO−、で置き換えられてもよく、このアルキル中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は−CH=CH−、−CF=CF−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらのアルキル基中、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH
2−が−O−、−S−、−COO−、または−OCO−で置き換えられた基中、または当該アルキル中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−が−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられた基中の少なくとも1つの水素はハロゲンまたは−C≡Nで置き換えられてもよい。R
MBは、それぞれ独立して、式(M3−1)〜(M3−7)の重合性基である。
【0137】
好ましいR
MAは、水素、ハロゲン、−C≡N、−CF
3、−CF
2H、−CFH
2、−OCF
3、−OCF
2H、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜19のアルコキシ、炭素数2〜21のアルケニル、および炭素数2〜21のアルキニルである。特に好ましいR
aは、−C≡N、炭素数1〜20のアルキルおよび炭素数1〜19のアルコキシである。
【0138】
化合物(M1)および(M2)において、R
MBは、それぞれ独立して、式(M3−1)〜(M3−7)の重合性基である。
【0139】
ここで、式(M3−1)〜(M3−7)におけるR
dは、それぞれ独立して水素、ハロゲンまたは炭素数1〜5のアルキルであり、これらのアルキルにおいて少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。好ましいR
dは、水素、ハロゲンおよびメチルである。特に好ましいR
dは、水素、フッ素およびメチルである。
また、式(M3−2)〜(M3−4)、および(M3−7)はラジカル重合で重合するのが好適である。式(M3−1)、(M3−5)、および(M3−6)はカチオン重合で重合するのが好適である。いずれも少量のラジカルあるいはカチオン活性種が反応系内に発生すれば重合は開始する。活性種の発生を加速する目的で重合開始剤を使用できる。活性種の発生にはたとえば光または熱を使用できる。
【0140】
化合物(M1)および(M2)において、A
Mは、それぞれ独立して芳香族性または非芳香族性の5員環、6員環または炭素数9以上の縮合環であるが、環中の−CH
2−は−O−、−S−、−NH−、または−NCH
3−で、環中の−CH=は−N=で置き換わってもよく、環上の水素原子はハロゲン、および炭素数1〜5のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換わってもよい。好ましいA
Mの具体例は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、またはビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイルであり、これらの環において少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH=は−N=で置き換えられてもよく、これらの環において少なくとも1つの水素はハロゲン、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよい。
化合物の安定性を考慮して、酸素と酸素とが隣接した−CH
2−O−O−CH
2−よりも、酸素と酸素とが隣接しない−CH
2−O−CH
2−O−の方が好ましい。硫黄においても同様である。
【0141】
これらの中で、特に好ましいA
Mは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、およびピリミジン−2,5−ジイルである。なお、前記1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はシスよりもトランスの方が好ましい。
2−フルオロ−1,4−フェニレンは、3−フルオロ−1,4−フェニレンと構造的に同一であるので、後者は例示しなかった。この規則は、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンと3,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンの関係などにも適用される。
【0142】
Y
Mは、それぞれ独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、これらのアルキレンにおいて少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−S−で置き換えられてもよく、このアルキル中の少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよい。好ましいY
Mは、単結合、−(CH
2)
m2−、−O(CH
2)
m2−、および−(CH
2)
m2O−(前記式中、m2は1〜20の整数である)である。特に好ましいY
Mは、単結合、−(CH
2)
m2−、−O(CH
2)
m2−、および−(CH
2)
m2O−(前記式中、m2は1〜10の整数である)である。化合物の安定性を考慮して、−Y
M−R
MAおよび−Y
M−R
MBは、それらの基中に−O−O−、−O−S−、−S−O−、または−S−S−を有しない方が好ましい。
【0143】
Z
Mは、それぞれ独立して単結合、−(CH
2)
m3−、−O(CH
2)
m3−、−(CH
2)
m3O−、−O(CH
2)
m3O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CF
2)
2−、−(CH
2)
2−COO−、−OCO−(CH
2)
2−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CH=CH−(CH
2)
2−、−(CH
2)
2−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−CH=CH−、−CH=CH−C≡C−、−OCF
2−(CH
2)
2−、−(CH
2)
2−CF
2O−、−OCF
2−または−CF
2O−(前記式中、m3は1〜20の整数である)である。
【0144】
好ましいZ
Mは単結合、−(CH
2)
m3−、−O(CH
2)
m3−、−(CH
2)
m3O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CH
2)
2−COO−、−OCO−(CH
2)
2−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCF
2−、および−CF
2O−である。
【0145】
m1は1〜6の整数である。好ましいm1は、1〜3の整数である。m1が1のときは、6員環などの環を2つ有する二環の化合物である。m1が2と3のときは、それぞれ三環と4環の化合物である。たとえばm1が1であるとき、2つのA
Mは同一であってもよいし、または異なってもよい。また、たとえばm1が2であるとき、3つのA
M(または2つのZ
M)は同一であってもよいし、または異なってもよい。m1が3〜6であるときについても同様である。R
MA、R
MB、R
d、Z
M、A
M、およびY
Mについても同様である。
【0146】
化合物(M1)および(M2)は
2H(重水素)、
13Cなどの同位体を天然存在比の量よりも多く含んでいても同様の特性を有するので好ましく用いることができる。
【0147】
化合物(M1)および化合物(M2)の更に好ましい例は、化合物(M1−1)〜(M1−41)、および(M2−1)〜(M2−27)である。これらの化合物において、R
MA、R
MB、R
d、Z
M、A
M、Y
Mおよびpの定義は、本発明の態様に記載した化合物(M1)および式(M2)のそれらと同一である。
【0148】
化合物(M1−1)〜(M1−41)および(M2−1)〜(M2−27)における下記の部分構造について説明する。部分構造(a1)は、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンを表す。部分構造(a2)は、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンを表す。部分構造(a3)は、少なくとも1つの水素がフッ素またはメチルのいずれかで置き換えられてもよい1,4−フェニレンを表す。部分構造(a4)は、9位の水素がメチルで置き換えられてもよいフルオレンを表す。
【0149】
高分子の原料モノマーとして、前述のメソゲン部位を有さないモノマー、およびメソゲン部位を持つモノマー(M1)、および(M2)以外の重合性化合物を必要に応じて使用することができる。
【0150】
本発明の高分子/液晶複合材料の光学的に等方性を最適化する目的で、メソゲン部位を持ち3つ以上の重合性官能基を持つモノマーを使用することもできる。メソゲン部位を持ち3つ以上の重合性官能基を持つモノマーとしては公知の化合物を好適に使用できるが、たとえば、化合物(M4−1)〜(M4−3)であり、より具体的な例として、特開2000−327632、特開2004−182949、特開2004−59772に記載された化合物をあげることができる。ただし、(M4−1)〜(M4−3)において、R
MB、Z
M、Y
M、および(F)は前述と同一の定義を示す。
【0151】
4−2−2 メソゲン部位を有さない重合性官能基を持つモノマー
メソゲン部位を有さない重合性官能基を持つモノマーとして、たとえば、炭素数1〜30の直鎖あるいは分岐鎖のアクリレート、炭素数1〜30の直鎖あるいは分岐鎖のジアクリレート、三つ以上の重合性官能基を有するモノマーとしては、グリセロール・プロポキシレート(1PO/OH)トリアクリレート、ペンタエリスリトール・プロポキシレート・トリアクリレート、ペンタエリスリトール・トリアクリレート、トリメチロールプロパン・エトキシレート・トリアクリレート、トリメチロールプロパン・プロポキシレート・トリアクリレート、トリメチロールプロパン・トリアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ペンタエリスリトール・テトラアクリレート、ジ(ペンタエリスリトール)ペンタアクリレート、ジ(ペンタエリスリトール)ヘキサアクリレート、トリメチロールプロパン・トリアクリレートなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0152】
4−2−3 重合開始剤
本発明の複合材料を構成する高分子の製造における重合反応は特に限定されず、たとえば、光ラジカル重合、熱ラジカル重合、光カチオン重合等が行われる。
【0153】
光ラジカル重合において用いることができる光ラジカル重合開始剤の例は、ダロキュア(DAROCUR)1173および4265(いずれも商品名、BASFジャパン(株))、イルガキュア(IRGACURE)184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、および2959(いずれも商品名、BASFジャパン(株))である。
【0154】
熱ラジカル重合において用いることができる熱によるラジカル重合の好ましい開始剤の例は、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル(MAIB)、ジt−ブチルパーオキシド(DTBPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ACN)である。
【0155】
光カチオン重合において用いることができる光カチオン重合開始剤の例は、ジアリールヨードニウム塩(以下、「DAS」という。)およびトリアリールスルホニウム塩(以下、「TAS」という。)である。
【0156】
DASの例は、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、および4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホナートである。
【0157】
DASには、チオキサントン、フェノチアジン、クロロチオキサントン、キサントン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ルブレンなどの光増感剤を添加することで高感度化することもできる。
【0158】
TASの例は、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、および4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホネートである。
【0159】
光カチオン重合開始剤の具体的な商品名の例は、サイラキュア(Cyracure)UVI−6990、サイラキュアUVI−6974、サイラキュアUVI−6992(それぞれ商品名、UCC(株))、アデカオプトマーSP−150、SP−152、SP−170、SP−172(それぞれ商品名、(株)ADEKA)、Rhodorsil Photoinitiator 2074(商品名、ローディアジャパン(株))、イルガキュア(IRGACURE)250(商品名、BASFジャパン(株))、およびUV−9380C(商品名、GE東芝シリコーン(株))である。
【0160】
4−2−4 硬化剤等
本発明の複合材料を構成する高分子の製造において、前記モノマー等および重合開始剤の他にさらに1つまたは2つ以上の他の好適な成分、たとえば、硬化剤、触媒、安定剤等を加えてもよい。
【0161】
硬化剤としては、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されている従来公知の潜在性硬化剤が使用できる。潜在性エポキシ樹脂用硬化剤の例は、アミン系硬化剤、ノボラック樹脂系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等である。アミン系硬化剤の例は、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ラロミン等の脂環式ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、メタフェニレンジアミン等の芳香族ポリアミンである。
【0162】
ノボラック樹脂系硬化剤の例は、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂である。イミダゾール系硬化剤の例、2−メチルイミダゾール、2−エチルへキシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウム・トリメリテートである。
【0163】
酸無水物系硬化剤の例は、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルへキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物である。
【0164】
また、グリシジル基、エポキシ基、オキセタニル基を有する重合性化合物と硬化剤との硬化反応を促進するための硬化促進剤をさらに用いてもよい。硬化促進剤の例は、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン類、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等の有機リン系化合物、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類、三フッ化ホウ素、トリフェニルボレート等のホウ素化合物である。これらの硬化促進剤は単独または複数を混合して使用することができる。
【0165】
また、たとえば貯蔵中の不所望な重合を防止するために、安定剤を添加することが好ましい。安定剤として、当業者に知られているすべての化合物を用いることができる。安定剤の代表例としては、4−エトキシフェノール、ハイドロキノン、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)等が挙げられる。
【0166】
4−3 高分子/液晶複合材料の組成
本発明の高分子/液晶複合材料中における液晶組成物の含有率は、複合材料が光学的に等方性の液晶相を発現できる範囲であれば、可能な限り高含有率であることが好ましい。液晶組成物の含有率が高い方が、本発明の複合材料の電気複屈折値が大きくなるからである。
【0167】
本発明の高分子/液晶複合材料において、液晶組成物の含有率は複合材料に対して60〜99重量%であることが好ましく、60重量%〜98重量%がさらに好ましく、80重量%〜97重量%が特に好ましい。また、本発明の高分子/液晶複合材料において、高分子の含有率は複合材料に対して1重量%〜40重量%であることが好ましく、2重量%〜40重量%がさらに好ましく、3重量%〜20重量%が特に好ましい。
【0168】
5 光素子
本発明の光素子は、液晶組成物または高分子/液晶複合材料(以下では、本発明の液晶組成物および高分子/液晶複合材料を総称して液晶媒体と呼ぶことがある)を含む光学的に等方性の液晶相で駆動される光素子である。
電界無印加時には液晶媒体は光学的に等方性であるが、電場を印加すると、液晶媒体は光学的異方性を生じ、電界による光変調が可能となる。
液晶表示素子の構造例としては、
図1に示すように、櫛型電極基板の電極が、左側から伸びる電極1と右側から伸びる電極2が交互に配置された構造を挙げることができる。電極1と電極2との間に電位差がある場合、
図1に示すような櫛型電極基板上では、1本の電極に注目すると、図面上の上方向と下方向の2つの方向の電界が存在する状態を提供できる。
【0169】
本発明の液晶組成物は光素子に利用できる。本発明の液晶組成物は、低い駆動電圧と短い応答時間を示すため、本発明の好ましい態様の光素子は低電圧で駆動が可能であり、高速応答が可能である。
【実施例】
【0170】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。なお特に言及のない限り、「%」は「重量%」を意味する。
また、得られた化合物は、
1H−NMR分析で得られる核磁気共鳴スペクトル、ガスクロマトグラフィー(GC)分析で得られるガスクロマトグラムなどにより同定した。分析方法は以下のとおりであった。
【0171】
1)分析方法
1−1)
1H−NMR分析
測定装置は、DRX−500(商品名、ブルカーバイオスピン(株))を用いた。測定は、実施例等で製造したサンプルを、CDCl
3等のサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数24回の条件で行った。なお、得られた核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットであることを意味する。また、化学シフトδ値のゼロ点の基準物質としてはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0172】
1−2)GC分析
測定装置は、島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M25−025(長さ25m、内径0.22mm、膜厚0.25μm);固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウムを用い、流量は1ml/分に調整した。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。
【0173】
試料はトルエンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。
記録計としては島津製作所製のC−R6A型Chromatopac、またはその同等品を用いた。得られたガスクロマトグラムには、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積値が示されている。
【0174】
なお、試料の希釈溶媒としては、たとえば、クロロホルム、ヘキサンを用いてもよい。また、カラムとしては、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty.Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)などを用いてもよい。
【0175】
ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。一般には、分析サンプルの成分化合物の重量%は、分析サンプルの各ピークの面積%と完全に同一ではないが、本発明において上述したカラムを用いる場合には、実質的に補正係数は1であるので、分析サンプル中の成分化合物の重量%は、分析サンプル中の各ピークの面積%とほぼ対応している。成分の液晶化合物における補正係数に大きな差異がないからである。ガスクロマトグラムにより液晶組成物中の液晶化合物の組成比をより正確に求めるには、ガスクロマトグラムによる内部標準法を用いる。一定量正確に秤量された各液晶化合物成分(被検成分)と基準となる液晶化合物(基準物質)を同時にガスクロ測定して、得られた被検成分のピークと基準物質のピークとの面積比の相対強度をあらかじめ算出する。基準物質に対する各成分のピーク面積の相対強度を用いて補正すると、液晶組成物中の液晶化合物の組成比をガスクロ分析からより正確に求めることができる。
【0176】
1−3)液晶化合物等の物性値の測定試料
液晶化合物の物性値を測定する試料としては、化合物そのものを試料とする場合、化合物を母液晶と混合して試料とする場合の2種類がある。
【0177】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる後者の場合には、以下の方法で測定を行う。まず、得られた液晶化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を作製する。そして、得られた試料の測定値から、下記の計算式に基づく外挿法にしたがって、外挿値を計算する。この外挿値をこの化合物の物性値とする。
【0178】
〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈液晶化合物の重量%〉
【0179】
液晶化合物と母液晶との割合がこの割合(15重量%:85重量%)であっても、スメクチック相、または結晶が25℃で析出する場合には、液晶化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、スメクチック相、または結晶が25℃で析出しなくなった組成で試料の物性値を測定し上記式にしたがって外挿値を求めて、これを液晶化合物の物性値とする。
【0180】
測定に用いる母液晶としては様々な種類が存在するが、たとえば、母液晶Aの組成(重量%)は以下のとおりである。
(母液晶A)
【0181】
1−4)液晶化合物等の物性値の測定方法
液晶化合物の物性値の測定は後述する方法で行った。これら測定方法の多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。また、測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0182】
測定値のうち、液晶化合物そのものを試料とした場合は、得られた値を実験データとして記載した。液晶化合物と母液晶との混合物を試料として用いた場合は、外挿法で得られた値を実験データとして記載した。
【0183】
1−4−1)相構造および相転移温度(℃)
以下(1)、および(2)の方法で測定を行った。
(1)偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に化合物を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、液晶相の種類を特定した。
(2)パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度、または5℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め(on set)、相転移温度を決定した。
【0184】
以下、結晶はCと表し、さらに結晶の区別がつく場合は、それぞれC
1またはC
2と表した。また、スメクチック相はSm、ネマチック相はN、キラルネマチック相はN
*と表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。スメクチック相の中で、スメクチックB相、またはスメクチックA相の区別がつく場合は、それぞれSmB、またはSmAと表した。BPはブルー相または光学的に等方性の液晶相を表す。2相の共存状態は(N
*+I)、(N
*+BP)という形式で表記することがある。具体的には、(N
*+I)は、それぞれ非液晶等方相とキラルネマチック相がと共存する相を表し、(N
*+BP)は、BP相または光学的に等方性の液晶相とキラルネマチック相が共存した相を表す。Unは光学的等方性ではない未確認の相を表す。相転移温度の表記として、たとえば、「C 50.0 N 100.0 I」とは、結晶からネマチック相への相転移温度(CN)が50.0℃であり、ネマチック相から液体への相転移温度(NI)が100.0℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0185】
1−4−2)ネマチック相の上限温度(T
NI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に、試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を置き、1℃/分の速度で加熱しながら偏光顕微鏡を観察した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度をネマチック相の上限温度とした。以下、ネマチック相の上限温度を、単に「上限温度」と略すことがある。
【0186】
1−4−3)低温相溶性
母液晶と液晶化合物とを、液晶化合物が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%の量となるように混合した試料を作製し、試料をガラス瓶に入れる。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶もしくはスメクチック相が析出しているかどうか観察をした。
【0187】
1−4−4)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
液晶化合物と母液晶との混合物を、E型粘度計を用いて測定した。
【0188】
1−4−5)屈折率異方性(Δn)
測定は25℃の温度下で、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。屈折率異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥の式から計算した。
【0189】
1−4−6)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
1−4−7)ピッチ(P;25℃で測定;nm)
ピッチ長は選択反射を用いて測定した(液晶便覧196頁 2000年発行、丸善)。選択反射波長λには、関係式<n>p/λ=1が成立する。ここで<n>は平均屈折率を表し、次式で与えられる。<n>={(n
‖2+n
⊥2)/2}
1/2。選択反射波長は顕微分光光度計(日本電子(株)、商品名MSV-350)で測定した。得られた反射波長を平均屈折率で除すことにより、ピッチを求めた。可視光より長波長領域に反射波長を有するコレステリック液晶のピッチは、光学活性化合物濃度が低い領域では光学活性化合物の濃度の逆数に比例することから、可視光領域に選択反射波長を有する液晶のピッチ長を数点測定し、直線外挿法により求めた。「光学活性化合物」は本発明におけるキラル剤に相当する。
【0190】
1−5)液晶組成物等の物性値の測定方法
液晶組成物の特性値の測定は下記の方法にしたがって行うことができる。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0191】
1−5−1)ネマチック相の上限温度(NI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0192】
1−5−2)ネマチック相の下限温度(T
C;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。たとえば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶(またはスメクチック相)に変化したとき、T
Cを≦−20℃と記載する。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0193】
1−5−3)光学的に等方性の液晶相の転移温度
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、クロスニコルの状態で、まず試料が非液晶等方相になる温度まで昇温した後、1℃/分の速度で降温し、完全にキラルネマチック相または光学的に等方性の液晶相を出現させた。その降温過程での相転移した温度を測定し、次いで1℃/分の速度で昇熱し、その昇温過程における相転移した温度を測定した。本発明において、特に断りの無い限り、昇温過程での相転移した温度を相転移温度とした。光学的に等方性の液晶相においてクロスニコル下では暗視野で相転移温度の判別が困難な場合は、偏光板をクロスニコルの状態から1〜10°ずらして相転移温度を測定した。
【0194】
1−5−4)粘度(回転粘度;γ1(25℃で測定);mPa・s)
(1)誘電率異方性が正である試料:測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。TN素子に16ボルト〜19.5ボルトの範囲で0.5ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文の40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度の測定で使用した素子にて、下記の誘電率異方性の測定方法で求めた。
【0195】
(2)誘電率異方性が負である試料:測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に30ボルト〜50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、下記の誘電率異方性で測定した値を用いた。
【0196】
1−5−5)屈折率異方性(Δn;25℃で測定)
測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビング(rubbing)したあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。屈折率異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。試料が組成物のときはこの方法によって屈折率異方性を測定した。
【0197】
1−5−6)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
(1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0198】
(2)誘電率異方性が負である組成物:ホメオトロピック配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε‖)を測定した。ホモジニアス配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0199】
1−5−7)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が(0.5/Δn)μmであり、ツイスト角が80度である、ノーマリーホワイトモード(normally white mode)の液晶表示素子に試料を入れた。Δnは上記の方法で測定した屈折率異方性の値である。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率が90%になったときの電圧の値を測定した。
【0200】
2)誘電率異方性が負である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μmであり、ホメオトロピック配向に処理したノーマリーブラックモード(normally black mode)の液晶表示素子に試料を入れた。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率10%になったときの電圧の値を測定した。
【0201】
1−5−8)電圧保持率(VHR;25℃で測定;%)
測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は6μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0202】
1−5−9)螺旋ピッチ(P;20〜25℃で測定;nm)
螺旋ピッチの測定には、カノのくさび型セル法を用いた。カノのくさび型セルに試料を注入し、セルから観察されるディスクリネーションラインの間隔(a;単位はμm)を測定した。螺旋ピッチ(P)は、式P=2・a・tanθから算出した。θは、くさび型セルにおける2枚のガラス板の間の角度である。
【0203】
あるいは、ピッチ長の測定に選択反射を用いた(液晶便覧196頁 2000年発行、丸善)。選択反射波長λには、関係式<n>p/λ=1が成立する。ここで<n>は平均屈折率を表し、次式で与えられる。<n>={(n‖
2+n⊥
2)/2}
1/2。選択反射波長は顕微分光光度計(日本電子(株)、商品名MSV-350)で測定した。得られた反射波長を平均屈折率で除すことにより、ピッチを求めた。
可視光より長波長領域に反射波長を有するコレステリック液晶のピッチは、キラル剤濃度が低い領域ではキラル剤の濃度の逆数に比例することから、可視光領域に選択反射波長を有する液晶のピッチ長を数点測定し、直線外挿法により求めた。
【0204】
1−6)高分子/液晶複合材料の誘電率(ε’(PSBP),25℃)
誘電率は、LCRメーター(E4980A、Agilent)を使用し、四端子対法より測定した。測定セルは、平行平板セル(電極材質:ITO、電極間距離:4μm、電極面積:0.16cm
2)を用いた。測定条件は下記の通りとした。
測定温度:25℃
印加波形:正弦波
印加電圧:2.0V
測定周波数:100Hz
【0205】
また、成分または液晶化合物の割合(百分率)は、液晶化合物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。組成物は、液晶化合物などの成分の重量を測定してから混合することによって調製される。したがって、成分の重量%を算出するのは容易である。
【0206】
[実施例1]
本願の化合物(1−1−1S)を下記のスキームにて合成した。
(式(1−1−1)において、R
1Aがブチルである化合物。)
【0207】
(第1段) 化合物(102S)の合成
窒素気流下で、化合物(101S)(30.0g,0.230mol)、イミダゾール(36.1g,0.531mol)のジクロロメタン(210mL)溶液を0〜10℃まで冷却し、tert−ブチルジメチルクロロシラン(38.2g,0.254mol)をゆっくりと加え、そのままの温度で3時間撹拌した。反応液を水に開けてジクロロメタン(200mL)を加え、水で3回洗浄した後に有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン/n−ヘプタン=1/5)にて精製し、化合物(102S)(56.0g,0.228mol)を得た。
【0208】
(第2段) 化合物(103S)の合成
窒素気流下で、化合物(102S)(56.0g,0.229mol)のTHF(400mL)溶液に、−40℃でn−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液(1.60mol/L)(157mL, 0.252mol)をゆっくりと滴下し、そのままの温度で1時間撹拌した。次いで、そのままの温度で系内にヨウ素(69.7g,0.275mol)のTHF(150mL)溶液をゆっくりと滴下し、そのままの温度で30分間撹拌し、その後徐々に室温に戻しながら1時間撹拌した。反応液を水に開けてトルエン(500mL)にて2回抽出し、チオ硫酸ナトリウム水溶液で2回、水で3回洗浄した後に有機相を減圧濃縮して粗体(83.0g,0.227mol)を得た。得られた粗体(83.0g,0.227mol)にテトラブチルアンモニウムフルオライドのTHF溶液(1.0M)(400mL,0.400mol)を加え、30℃で3時間撹拌した。反応液を水に開けてトルエン(500mL)で2回抽出し、水で3回洗浄した後に有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン/酢酸エチル=1/10)にて精製し、化合物(103S)(56.8g,0.222mol)を得た。
【0209】
(第3段) 化合物(105S)の合成
窒素気流下で、化合物(103S)(56.8g, 0.222mol)、化合物(104S)(36.8g,0.233mol)、炭酸カリウム(64.3g,0.466mol)、パラジウム/炭素(NXタイプ)(1.70g)、テトラブチルアンモニウムブロミド(7.14g,0.0222mol)、トルエン(200mL)、イソプロパノール(200mL)の混合溶液を80℃で5時間加熱撹拌した。反応液を水に開けてジエチルエーテル(500mL)を加え、水で3回洗浄した後に有機相を減圧濃縮した。残渣残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン/酢酸エチル=1/10)、さらに再結晶ろ過(溶媒:ヘプタン/THF=10/1)にて精製し、化合物(105S)(28.0g,0.116mol)を得た。
【0210】
(第4段) 化合物(107S)の合成
窒素気流下で、化合物(106S)(30.0g,0.114mol)のTHF(130mL)溶液に、−40℃でn−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液(1.62mol/L)(74.0mL, 0.120mol)をゆっくりと滴下し、そのままの温度で1時間撹拌した。次いで、そのままの温度で系内にジブロモジフルオロエタン(28.8g,0.137mol)/THF(70mL)溶液をゆっくりと滴下し、徐々に室温に戻しながら1時間撹拌した。反応液を水に開けてトルエン(250mL)にて抽出し、水で3回洗浄した後に有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン/n−ヘプタン=1/1)にて精製し、化合物(107S)(45.5g(78%), 0.115mol)を得た。次反応には混合物のまま使用した。
【0211】
(第5段) 化合物(1−1−1S)の合成
窒素気流下で、第3段で得られた化合物(105S)(3.23g,13.4mmol)、前段で得られた化合物(107S)(7.00g(78%),13.4mmol)、炭酸カリウム(3.87g,28.0mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(1.29g,4.01mmol)の1,4−ジオキサン(40mL)混合溶液を70℃で2時間加熱撹拌した。反応液を水に開けてトルエン(100mL)にて抽出し、水で3回、重層水で2回洗浄した後に有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン/n−ヘプタン=1/5)、さらに再結晶ろ過(溶媒:エタノール/n−ヘプタン=1/1)にて精製し、最終目的物である化合物(1−1−1S)(4.30g,7.76mmol)を得た。この化合物の相転移温度(℃)は、C 73.3 N 83.3 Iであった。
【0212】
1H−NMR(CDCl
3):δ(ppm)0.939-0.968(3H, t), 1.35-1.42(2H, m), 1.60-1.67(2H, m), 2.65-2.68(2H, t), 6.98-7.04(1H, dd), 7.06-7.08(1H, dd), 7.21-7.25(6H, m), 7.32-7.36(2H, t)
19F−NMR(CDCl
3):δ(ppm)-61.87- -61.98(2F, t), -111.32- -111.46(2F, dt), -112.94- -112.95(2F, d), -118.31- -118.36(1F, dd), -137.96- -138.13(2F, m)
【0213】
次に、上述した母液晶Aとして記載された4つの化合物を混合し、ネマチック相を有する母液晶Aを調製した。この母液晶Aの物性は以下の通りであった。
上限温度(T
NI)=71.7℃; 誘電率異方性(Δε)=11.0; 屈折率異方性(Δn)=0.137。
【0214】
母液晶A(85重量%)と、得られた化合物(1−1−1S)(15重量%)とからなる液晶組成物AS1を調製した。得られた液晶組成物AS1の物性値を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−1−1S)の物性の外挿値を算出した。その値は以下の通りであった。
上限温度(T
NI)=53.0℃; 誘電率異方性(Δε)=42.1; 屈折率異方性(Δn)=0.164。
これらのことから化合物(1−1−1S)は、大きい誘電率異方性(Δε)、大きい屈折率異方性、良好な相溶性を有する化合物であることが分かった。
【0215】
[実施例2]
本願の化合物(1−3−1S)を下記のスキームにて合成した。
(式(1−3−1)において、R
1Aがプロピルである化合物。)
【0216】
(第1段) 化合物(132S)の合成
窒素気流下で、化合物(131S)(60.0g,0.422mol)、2−プロピルプロパン−1,3−ジオール(54.8g,0.464mol)、p−トルエンスルホン酸一水和物(1.80g)のトルエン(300mL)溶液を、生成した水を系外に除きながら110℃で2時間加熱還流した。反応液を水に空けてトルエン(200mL)を加え、水で3回洗浄した後に有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン/n−ヘプタン=1/1)にて精製し、化合物(132S)(94.0g,0.388mol)を得た。
【0217】
(第2段) 化合物(133S)の合成
窒素気流下で、化合物(132S)(50.0g,0.206mol)のTHF(500mL)溶液に、−40℃でn−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液(1.65mol/L)(121mL, 0.200mol)をゆっくりと滴下し、そのままの温度で1時間撹拌した。次いで、そのままの温度で系内にジブロモジフルオロエタン(51.8g,0.247mol)/THF(50mL)溶液をゆっくりと滴下し、徐々に室温に戻しながら1時間撹拌した。反応液を水に空けてトルエン(400mL)にて2回抽出し、水で3回洗浄した後に有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン/n−ヘプタン=1/2)にて精製し、化合物(133S)(67.1g(72%), 0.132mol)を得た。次反応には混合物のまま使用した。
【0218】
(第3段) 化合物(1−3−1S)の合成
窒素気流下で、実施例1の第5段で得られた化合物(105S)(3.28g,13.6mmol)、前段で得られた化合物(133S)(7.00g(72%),13.6mmol)、炭酸カリウム(3.94g,28.5mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(1.31g,4.07mmol)の1,4−ジオキサン(35mL)混合溶液を70℃で2時間加熱撹拌した。反応液を水に空けてトルエン(100mL)にて抽出し、水で3回、重層水で2回洗浄した後に有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン/n−ヘプタン=1/1)、さらに再結晶ろ過(溶媒:エタノール/n−ヘプタン=2/1)にて精製し、最終目的物である化合物(1−3−1S)(4.00g,7.51mmol)を得た。この化合物の相転移温度(℃)は、C 85.2 N 90.3 Iであった。
【0219】
1H−NMR(CDCl
3):δ(ppm)0.917-0.946(3H, t), 1.07-1.12(2H, m), 1.31-1.38(2H, m), 2.01-2.15(1H, m), 3.51-3.55(2H, dd), 4.22-4.26(2H, dd), 5.38(1H, s), 6.93-6.98(2H, d), 7.14-7.19(3H, m), 7.22-7.26(1H, m), 7.26-7.30(1H, m)
19F−NMR(CDCl
3):δ(ppm)-61.75- -61.86(2F, t), -110.49- -110.63(2F, dt), -112.90- -112.92(2F, d), -138.02- -138.15(2F, m)
【0220】
母液晶A(85重量%)と、得られた化合物(1−3−1S)(15重量%)とからなる液晶組成物AS2を調製した。得られた液晶組成物AS2の物性値を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−3−1S)の物性の外挿値を算出した。その値は以下の通りであった。
上限温度(T
NI)=63.0℃; 誘電率異方性(Δε)=41.4; 屈折率異方性(Δn)=0.124。
これらのことから化合物(1−3−1S)は、大きい誘電率異方性(Δε)、大きい屈折率異方性、良好な相溶性を有する化合物であることが分かった。
【0221】
[実施例3]
本願の化合物(1−1−2S)を実施例1と同様のスキームにて合成した。
(式(1−1−2)において、R
1Aがプロピルである化合物。)
実施例1と同様の方法にて、化合物(106S)のアルキル鎖がプロピルである化合物、および化合物(104S)の代わりに化合物(104T)を使用することにより、化合物(1−1−2S)(4.4g, 7.26mmol)を得た。この化合物の相転移温度(℃)は、C 52.9 N 111.5 Iであった。
1H−NMR(CDCl
3):δ(ppm)0.962-0.991(3H, t), 1.65-1.72(2H, m), 2.63-2.66(2H, t), 7.00-7.03(3H, m), 7.07-7.08(1H, dd), 7.22-7.24(2H, d), 7.26-7.28(1H, dd), 7.33-7.36(2H, m), 7.38-7.41(1H, dt).
19F−NMR(CDCl
3):δ(ppm)-59.08- -59.13(3F, d), -61.88- -61.99(2F, t), -111.30- -111.44(2F, dt), -112.75- -112.77(2F, d), -118.31- -118.36(1F, dd), -128.94- -129.00(1F, m)
母液晶A(85重量%)と、得られた化合物(1−1−2S)(15重量%)とからなる液晶組成物AS3を調製した。得られた液晶組成物AS3の物性値を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−1−2S)の物性の外挿値を算出した。その値は以下の通りであった。
上限温度(T
NI)=61.7℃; 誘電率異方性(Δε)=48.1; 屈折率異方性(Δn)=0.170。
これらのことから化合物(1−1−2S)は、大きい誘電率異方性(Δε)、大きい屈折率異方性、良好な相溶性を有する化合物であることが分かった。
【0222】
[実施例4]
本願の化合物(1−1−3S)を実施例1と同様のスキームにて合成した。
(式(1−1−3)において、R
1Aがブチルである化合物。)
実施例1と同様の方法にて、化合物(104S)の代わりに化合物(104U)を使用することにより、化合物(1−1−3S)(8.7g, 14.4mmol)を得た。この化合物の相転移温度(℃)は、C 81.8(N 74.1)Iであった。
1H−NMR(CDCl
3):δ(ppm)0.939-0.968(3H, t), 1.35-1.41(2H, m), 1.60-1.65(2H, m), 2.65-2.68(2H, t), 7.01-7.04(3H, m), 7.07-7.09(1H, dd), 7.22-7.24(2H, d), 7.32-7.37(3H, m), 7.68-7.71(1H, t).
19F−NMR(CDCl
3):δ(ppm)-61.91- -61.94(3F, d), -61.91- -62.02(2F, t), -111.32- -111.45(2F, dt), -112.58- -112.59(2F, d), -114.63- -114.75(1F, m), -118.31- -118.35(1F, dd)
母液晶A(85重量%)と、得られた化合物(1−1−3S)(15重量%)とからなる液晶組成物AS4を調製した。得られた液晶組成物AS4の物性値を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−1−3S)の物性の外挿値を算出した。その値は以下の通りであった。
上限温度(T
NI)=39.7℃; 誘電率異方性(Δε)=57.9; 屈折率異方性(Δn)=0.150。
これらのことから化合物(1−1−3S)は、大きい誘電率異方性(Δε)、大きい屈折率異方性、良好な相溶性を有する化合物であることが分かった。
[実施例5]
本願の化合物(1−1−3T)を実施例1と同様のスキームにて合成した。
(式(1−1−3)において、R
1Aがブチルである化合物。)
実施例1と同様の方法にて、化合物(106S)のアルキル鎖がブチルである化合物、および化合物(104S)の代わりに化合物(104U)を使用することにより、化合物(1−1−3T)(6.1g, 9.86mmol)を得た。この化合物の相転移温度(℃)は、C 63.5(SmA 61.8)N 81.8 Iであった。
1H−NMR(CDCl
3):δ(ppm)0.899-0.953(3H, t), 1.30-1.40(4H, m), 1.64-1.67(2H, m), 2.64-2.67(2H, t), 7.01-7.04(3H, m), 7.07-7.08(1H, dd), 7.22-7.26(2H, d), 7.32-7.37(3H, m), 7.68-7.71(1H, t).
19F−NMR(CDCl
3):δ(ppm)-61.91- -61.93(3F, d), -61.82- -62.00(2F, t), -111.31- -111.44(2F, dt), -112.52- -112.58(2F, d), -114.61- -114.73(1F, m), -118.28- -118.33(1F, dd)
母液晶A(85重量%)と、得られた化合物(1−1−3T)(15重量%)とからなる液晶組成物AS5を調製した。得られた液晶組成物AS5の物性値を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−1−3T)の物性の外挿値を算出した。その値は以下の通りであった。
上限温度(T
NI)=45.7℃; 誘電率異方性(Δε)=56.8; 屈折率異方性(Δn)=0.157。
これらのことから化合物(1−1−3T)は、大きい誘電率異方性(Δε)、大きい屈折率異方性、良好な相溶性を有する化合物であることが分かった。
[実施例6]
本願の化合物(1−3−2S)を実施例2と同様のスキームにて合成した。
(式(1−3−2)において、R
1Aがプロピルである化合物。)
実施例2と同様の方法にて、化合物(105S)の代わりに化合物(105T)を使用することにより、化合物(1−3−2S)(3.8g, 6.35mmol)を得た。この化合物の相転移温度(℃)は、C 93.7 N 96.8 Iであった。
1H−NMR(CDCl
3):δ(ppm)0.918-0.947(3H, t), 1.07-1.12(4H, dt), 1.31-1.37(2H, m), 2.11-2.15(1H, m), 3.51-3.55(2H, dd), 4.23-4.26(2H, m), 5.38(1H, s), 6.95-6.99(2H, d), 7.14-7.16(2H, d), 7.25-7.26(1H, dd), 7.31-7.34(1H, dd), 7.37-7.40(1H, dd).
19F−NMR(CDCl
3):δ(ppm)-59.13- -59.14(3F, d), -61.78- -61.89(2F, t), -110.49- -110.63(2F, dt), -112.73- -112.75(2F, d), -128.98- -129.05(1F, m).
母液晶A(90重量%)と、得られた化合物(1−3−2S)(10重量%)とからなる液晶組成物AS6を調製した。得られた液晶組成物AS6の物性値を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−3−2S)の物性の外挿値を算出した。その値は以下の通りであった。
上限温度(T
NI)=67.7℃; 誘電率異方性(Δε)=43.1; 屈折率異方性(Δn)=0.137。
これらのことから化合物(1−3−2S)は、大きい誘電率異方性(Δε)、大きい屈折率異方性、良好な相溶性を有する化合物であることが分かった。
【0223】
[実施例7]
本願の化合物(1−5−1S)を実施例1と同様のスキームにて合成する。
(式(1−5−1)において、R
1Aがペンチルである化合物。)
【0224】
[実施例8]ネマチック液晶組成物(NLC)の調製
下記に示す化合物を混合して、実施例1または2で合成した化合物(1−1−1S)、または(1−3−1S)を含むネマチック液晶組成物NLC−A〜NLC−Cを調製した。また、比較例として液晶組成物NLC−Rを調製した。NLC−A〜NLC−Cは、NLC−Rの一部の化合物を化合物(1)で置き換えた組成物である。
【0225】
(表1)
NLC−A〜NLC−C、およびNLC−Rの相転移温度(℃)は、下記表2の通りであった。
【0226】
(表2)
【0227】
[実施例9]キラル液晶組成物(CLC)の調製
実施例8で得た各ネマチック液晶組成物と、下記に示すキラル剤(CD1)と混合して、キラル液晶組成物CLC−A〜CLC−C、およびCLC−Rを調製した。当該キラル液晶組成物の組成と相転移温度は、下記の表3の通りであった。尚、表中のCD1の構造は下記のとおりである。
CD1
【0228】
(表3)
【0229】
[実施例10]重合性モノマーとの混合物である液晶組成物(MLC)の調製
実施例9で調製された各キラル液晶組成物(CLC)を重合性モノマーとの混合物を等方相で加熱混合することで、液晶組成物MLC−A〜MLC−C、およびMLC−Rを調製した。これらの液晶組成物の組成、および相転移点(℃)を下記の表4に示した。
尚、LCA−12は、1,4−ジ(4−(6−(アクリロイルオキシ)ドデシルオキシ)ベンゾイルオキシ)−2−メチルベンゼンであり、DMPAは2,2’−ジメトキシフェニルアセトフェノンであり、光重合開始剤である。
LCA−12
【0230】
[実施例11]高分子/液晶複合材料の調製が狭持されたセル
実施例10で得られたキラル液晶組成物と重合性モノマーとの混合物である液晶組成物(MLC−A〜MLC−C)を配向処理の施されていない櫛型電極基板と対向ガラス基板(非電極付与)の間に狭持し、ブルー相まで加熱した。
【0231】
この状態で、紫外光(紫外光強度23mWcm
−2(365nm))を1分間照射して重合反応を行い、高分子/液晶複合材料(PSBP−A〜PSBP−C)が挟持されたセルを作成した(セル厚7〜9μm)。得られた高分子/液晶複合材料(PSBP−A〜PSBP−C)は、室温まで冷却しても光学的に等方性の液晶相を維持していた。
【0232】
(比較例1)高分子/液晶複合材料の調製が狭持されたセル
実施例10で得られたキラル液晶組成物と重合性モノマーとの混合物である液晶組成物(MLC−R)を配向処理の施されていない櫛型電極基板と対向ガラス基板(非電極付与)の間に狭持し、ブルー相まで加熱した。
この状態で、紫外光(紫外光強度23mWcm
−2(365nm))を1分間照射して重合反応を行い、高分子/液晶複合材料(PSBP−R)が挟持されたセルを作成した(セル厚7〜9μm)。このようにして得られた高分子/液晶複合材料(PSBP−R)は、室温まで冷却しても光学的に等方性の液晶相を維持していた。
【0233】
[実施例12]セルを用いた光学系
実施例11、および比較例1で得られた高分子/液晶複合材料が狭持されたセルを、
図2に示した光学系にセットした。具体的には、光源として偏光顕微鏡(ニコン製 エクリプス LV100POL)の白色光源を用い、セルへの入射角度がセル面に対して垂直となるようにし、櫛型電極の線方向がPolarizerとAnalyzer偏光板に対してそれぞれ45°となるように高分子/液晶複合材料が狭持されたセルがセットされた(
図2)。
【0234】
当該光学系を用いて、高分子/液晶複合材料(PSBP−A〜PSBP−C、およびPSBP−R)の室温における印加電圧と透過率との関係をそれぞれ調べた。セルに挟持された高分子/液晶複合材料(PSBP−A〜PSBP−C、およびPSBP−R)の飽和電圧(Vmax)、飽和電圧印加時の透過率(%)、コントラスト比、および応答速度(ms)は表5に示すとおりであった。なお応答時間のデータは、飽和電圧印加、および除去時のものである。
【0235】
さらに、高分子/液晶複合材料(PSBP−A〜PSBP−C、およびPSBP−R)の誘電率(ε’(PSBP) )を既述の方法で測定した。PSBP−A〜PSBP−C、およびPSBP−Rの誘電率(ε’(PSBP))は表5に示す通りであった。
【0236】
(表5)
【0237】
表5より、PSBP−A〜PSBP−Cは、いずれも飽和電圧(Vmax)が53.4〜59.3(V)であり、誘電率(ε’(PSBP))が65.1〜68.4となった。比較例として示したPSBP−Rの飽和電圧(Vmax)は55.9(V)であり、誘電率(ε’(PSBP))は80.6であった。この結果から、PSBP−A〜PSBP−Cは、PSBP−Rと比較して飽和電圧が同程度であるにもかかわらず、誘電率が約12〜15も低いことが分かった。化合物(1)は、高分子/液晶複合材料の誘電率を低下させることに有効な化合物であることが分かった。
[実施例13]ネマチック液晶組成物(NLC)の調製
下記表6に示す化合物を混合して、実施例3〜6で合成した化合物(1−1−2S)、(1−1−3S)、(1−1−3T)、または(1−3−2S)を含むネマチック液晶組成物NLC−D〜NLC−Hを調製した。また、比較例として液晶組成物NLC−Sを調製した。NLC−D〜NLC−Hは、NLC−Sの一部の化合物を化合物(1)で置き換えた組成物である。
【0238】
(表6)
NLC−D〜NLC−H、およびNLC−Sの相転移温度(℃)は、下記表7の通りであった。
【0239】
(表7)
【0240】
[実施例14]キラル液晶組成物(CLC)の調製
実施例13で得た各ネマチック液晶組成物と、下記に示すキラル剤(CD1)と混合して、キラル液晶組成物CLC−D〜CLC−H、およびCLC−Sを調製した。当該キラル液晶組成物の組成と相転移温度は、下記の表8の通りであった。尚、表中のCD1の構造は前述のものと同じである。
【0241】
(表8)
【0242】
[実施例15]重合性モノマーとの混合物である液晶組成物(MLC)の調製
実施例14で調製された各キラル液晶組成物(CLC)を重合性モノマーとの混合物を等方相で加熱混合することで、液晶組成物MLC−D〜MLC−H、およびMLC−Sを調製した。これらの液晶組成物の組成、および相転移点(℃)を下記の表9に示した。
尚、LCA−12は、1,4−ジ(4−(6−(アクリロイルオキシ)ドデシルオキシ)ベンゾイルオキシ)−2−メチルベンゼンであり、DMPAは2,2’−ジメトキシフェニルアセトフェノンであり、光重合開始剤である。
【0243】
[実施例16]高分子/液晶複合材料の調製が狭持されたセル
実施例15で得られたキラル液晶組成物と重合性モノマーとの混合物である液晶組成物(MLC−D〜MLC−H)を配向処理の施されていない櫛型電極基板と対向ガラス基板(非電極付与)の間に狭持し、ブルー相まで加熱した。
【0244】
この状態で、紫外光(紫外光強度23mWcm
−2(365nm))を1分間照射して重合反応を行い、高分子/液晶複合材料(PSBP−D〜PSBP−H)が挟持されたセルを作成した(セル厚7〜9μm)。得られた高分子/液晶複合材料(PSBP−D〜PSBP−H)は、室温まで冷却しても光学的に等方性の液晶相を維持していた。
【0245】
(比較例2)高分子/液晶複合材料の調製が狭持されたセル
実施例15で得られたキラル液晶組成物と重合性モノマーとの混合物である液晶組成物(MLC−S)を配向処理の施されていない櫛型電極基板と対向ガラス基板(非電極付与)の間に狭持し、ブルー相まで加熱した。
この状態で、紫外光(紫外光強度23mWcm
−2(365nm))を1分間照射して重合反応を行い、高分子/液晶複合材料(PSBP−S)が挟持されたセルを作成した(セル厚7〜9μm)。このようにして得られた高分子/液晶複合材料(PSBP−S)は、室温まで冷却しても光学的に等方性の液晶相を維持していた。
【0246】
[実施例17]セルを用いた光学系
実施例16、および比較例2で得られた高分子/液晶複合材料が狭持されたセルを、
図2に示した光学系にセットした。具体的には、光源として偏光顕微鏡(ニコン製 エクリプス LV100POL)の白色光源を用い、セルへの入射角度がセル面に対して垂直となるようにし、櫛型電極の線方向がPolarizerとAnalyzer偏光板に対してそれぞれ45°となるように高分子/液晶複合材料が狭持されたセルがセットされた(
図2)。
【0247】
当該光学系を用いて、高分子/液晶複合材料(PSBP−D〜PSBP−H、およびPSBP−S)の室温における印加電圧と透過率との関係をそれぞれ調べた。セルに挟持された高分子/液晶複合材料(PSBP−D〜PSBP−H、およびPSBP−S)の飽和電圧(Vmax)、飽和電圧印加時の透過率(%)、コントラスト比、および応答速度(ms)は表10に示すとおりであった。なお応答時間のデータは、飽和電圧印加、および除去時のものである。
【0248】
さらに、高分子/液晶複合材料(PSBP−D〜PSBP−H、およびPSBP−S)の誘電率(ε’(PSBP) )を既述の方法で測定した。PSBP−D〜PSBP−H、およびPSBP−Sの誘電率(ε’(PSBP))は表10に示す通りであった。
【0249】
(表10)
【0250】
表10より、PSBP−D〜PSBP−Hは、いずれも飽和電圧(Vmax)が47.8〜52.8(V)であり、誘電率(ε’(PSBP))が67.5〜75.3となった。比較例として示したPSBP−Sの飽和電圧(Vmax)は50.3(V)であり、誘電率(ε’(PSBP))は77.0であった。この結果から、PSBP−D〜PSBP−Hは、PSBP−Sと比較して飽和電圧が同程度であるにもかかわらず、誘電率が1.7〜9.5程度低いことが分かった。化合物(1)は、高分子/液晶複合材料の誘電率を低下させることに有効な化合物であることが分かった。