特許第6642443号(P6642443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6642443
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】基板検査装置、及び基板検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20200127BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20200127BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20200127BHJP
   G01R 27/02 20060101ALN20200127BHJP
【FI】
   G01R31/00
   G06F3/041 660
   G06F3/044 126
   !G01R27/02 A
【請求項の数】12
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-556404(P2016-556404)
(86)(22)【出願日】2015年8月7日
(86)【国際出願番号】JP2015072558
(87)【国際公開番号】WO2016067709
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2018年7月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-220189(P2014-220189)
(32)【優先日】2014年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】日本電産リード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100143373
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正
(72)【発明者】
【氏名】▲ひばり▼野 俊寿
(72)【発明者】
【氏名】本田 睦博
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−122989(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/121862(WO,A1)
【文献】 特開平03−046572(JP,A)
【文献】 特開平05−099788(JP,A)
【文献】 特開2013−088510(JP,A)
【文献】 特開昭60−216493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
G01R 27/02
G06F 3/041
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の第1方向に沿って延びる複数の第1電極と、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延びる複数の第2電極とが互いに対向するように形成された基板を検査する基板検査装置であって、
所定の交流電圧を出力する交流電圧出力部と、
電流を検出する電流検出部と、
前記複数の第1電極とそれぞれ電気的に接続可能な複数の第1接続端子と、
前記複数の第2電極とそれぞれ電気的に接続可能な複数の第2接続端子と、
前記複数の第1接続端子と前記複数の第2接続端子とをそれぞれ組み合わせて得られる複数の組み合わせに対応し、前記各組み合わせに対応する第1及び第2接続端子について、その第2接続端子に対して前記交流電圧出力部によって前記交流電圧を供給させ、その第1接続端子に流れる電流を前記電流検出部によって検出させることにより、前記各組み合わせに対応する電流を取得する測定処理を実行する測定処理部と、
前記測定処理において前記電流検出部によって検出された電流の大きさと位相を示す情報とに基づいて、前記各組み合わせに対応する静電容量と抵抗値とを算出する算出処理を実行する算出部と、
前記各組み合わせに対応して前記基板検査装置内部で生じる静電容量と抵抗値とを、内部静電容量と内部抵抗値として記憶する内部パラメータ記憶部とを備え、
前記算出部は、さらに、前記各組み合わせに対応する静電容量と抵抗値とを、当該各組み合わせに対応して前記内部パラメータ記憶部に記憶された内部静電容量と内部抵抗値とに基づいて補正する内部パラメータ補正処理を実行する基板検査装置。
【請求項2】
前記複数の第1及び第2電極と前記複数の第1及び第2接続端子とが接続されない状態で前記測定処理と前記算出処理とを前記測定処理部と前記算出部とによって実行させることにより前記各組み合わせに対応して得られる静電容量及び抵抗値を、当該各組み合わせに対応して前記内部静電容量及び前記内部抵抗値として前記内部パラメータ記憶部に記憶させる内部パラメータ取得処理部をさらに備える請求項1に記載の基板検査装置。
【請求項3】
所定の第1方向に沿って延びる複数の第1電極と、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延びる複数の第2電極とが互いに対向するように形成された基板を検査する基板検査装置であって、
所定の交流電圧を出力する交流電圧出力部と、
電流を検出する電流検出部と、
前記複数の第1電極とそれぞれ電気的に接続可能な複数の第1接続端子と、
前記複数の第2電極とそれぞれ電気的に接続可能な複数の第2接続端子と、
前記複数の第1接続端子と前記複数の第2接続端子とをそれぞれ組み合わせて得られる複数の組み合わせに対応し、前記各組み合わせに対応する第1及び第2接続端子について、その第2接続端子に対して前記交流電圧出力部によって前記交流電圧を供給させ、その第1接続端子に流れる電流を前記電流検出部によって検出させることにより、前記各組み合わせに対応する電流を取得する測定処理を実行する測定処理部と、
前記測定処理において前記電流検出部によって検出された電流の大きさと位相を示す情報とに基づいて、前記各組み合わせに対応する静電容量と抵抗値とを算出する算出処理を実行する算出部と、
前記各組み合わせに対応して前記基板に生じる浮遊容量を記憶する浮遊容量記憶部とを備え、
前記算出部は、前記各組み合わせに対応する静電容量を、当該各組み合わせに対応して前記浮遊容量記憶部に記憶された浮遊容量に基づいて補正する浮遊容量補正処理を実行する基板検査装置。
【請求項4】
前記各組み合わせに対応して基板内部で生じる静電容量である基準静電容量が予め判っている基準基板の前記各組み合わせに対応する前記基準静電容量を記憶する基準容量記憶部と、
前記基準基板に対して前記複数の第1及び第2接続端子が接続された状態で、前記測定処理と前記算出処理とを前記測定処理部と前記算出部とによって実行させることにより前記各組み合わせに対応して得られる静電容量と、前記基準容量記憶部によって前記各組み合わせに対応して記憶されている前記基準静電容量とに基づいて、前記各組み合わせに対応する浮遊容量を算出し、前記浮遊容量記憶部に記憶させる浮遊容量取得処理部とをさらに備える請求項3に記載の基板検査装置。
【請求項5】
前記基板は、
前記複数の第1電極とそれぞれ導通する複数の第1基板端子と、
前記複数の第2電極とそれぞれ導通する複数の第2基板端子とを含み、
前記複数の第1接続端子は、前記複数の第1基板端子とそれぞれ接続され、当該複数の第1基板端子を介して前記複数の第1電極とそれぞれ電気的に接続され、
前記複数の第2接続端子は、前記複数の第2基板端子とそれぞれ接続され、当該複数の第2基板端子を介して前記複数の第2電極とそれぞれ電気的に接続される請求項1〜4のいずれか1項に記載の基板検査装置。
【請求項6】
前記基板は、前記各第1電極と前記各第2電極とが交差する位置の静電容量を読み取るために予め設定された読取周波数の交流信号が前記各第1及び第2電極に供給されることが予定されたタッチパネルであり、
前記交流電圧の周波数は、前記読取周波数と略等しい請求項1〜5のいずれか1項に記載の基板検査装置。
【請求項7】
前記各組み合わせに対応する前記抵抗値の良否判定の基準となる判定値を予め記憶する判定値記憶部と、
前記算出部により得られた前記各組み合わせに対応する抵抗値と、当該各組み合わせに対応して前記判定値記憶部に記憶された判定値との差を、前記各組み合わせに対応してそれぞれ算出し、当該各組み合わせに対応する差が予め設定された差分判定値を超えたとき、当該差分判定値を超えた組み合わせに対応する前記第1及び第2電極によって表される座標位置を、前記基板の不良位置と判定する判定部とを備える請求項1〜6のいずれか1項に記載の基板検査装置。
【請求項8】
前記算出処理により算出された、前記各組み合わせに対応する抵抗値を、三次元的なグラフで表した画像を表示する表示部をさらに備える請求項1〜7のいずれか1項に記載の基板検査装置。
【請求項9】
前記算出処理により算出された、前記各組み合わせに対応する静電容量を、三次元的なグラフで表した画像を表示する表示部をさらに備える請求項1〜8のいずれか1項に記載の基板検査装置。
【請求項10】
前記判定部により算出された、前記各組み合わせに対応する差を、三次元的なグラフで表した画像を表示する表示部をさらに備える請求項7に記載の基板検査装置。
【請求項11】
所定の第1方向に沿って延びる複数の第1電極と、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延びる複数の第2電極とが互いに対向するように形成された基板を、基板検査装置を用いて検査する基板検査方法であって、
複数の第1接続端子を前記複数の第1電極とそれぞれ電気的に接続する工程と、
複数の第2接続端子を前記複数の第2電極とそれぞれ電気的に接続する工程と、
前記複数の第1接続端子と前記複数の第2接続端子とをそれぞれ組み合わせて得られる複数の組み合わせに対応し、前記各組み合わせに対応する第1及び第2接続端子について、その第2接続端子に対して交流電圧を供給し、その第1接続端子に流れる電流を検出することにより、前記各組み合わせに対応する電流を取得する測定処理を実行する測定処理工程と、
前記測定処理において前記検出された電流の大きさと位相を示す情報とに基づいて、前記各組み合わせに対応する静電容量と抵抗値とを算出する算出処理を実行する算出工程と、
前記各組み合わせに対応して前記基板検査装置内部で生じる静電容量と抵抗値とを、内部静電容量と内部抵抗値として内部パラメータ記憶部に記憶する工程とを含み、
前記算出工程において、さらに、前記各組み合わせに対応する静電容量と抵抗値とを、当該各組み合わせに対応して前記内部パラメータ記憶部に記憶された内部静電容量と内部抵抗値とに基づいて補正する内部パラメータ補正処理を実行する基板検査方法。
【請求項12】
所定の第1方向に沿って延びる複数の第1電極と、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延びる複数の第2電極とが互いに対向するように形成された基板を検査する基板検査方法であって、
複数の第1接続端子を前記複数の第1電極とそれぞれ電気的に接続する工程と、
複数の第2接続端子を前記複数の第2電極とそれぞれ電気的に接続する工程と、
前記複数の第1接続端子と前記複数の第2接続端子とをそれぞれ組み合わせて得られる複数の組み合わせに対応し、前記各組み合わせに対応する第1及び第2接続端子について、その第2接続端子に対して交流電圧を供給し、その第1接続端子に流れる電流を検出することにより、前記各組み合わせに対応する電流を取得する測定処理を実行する測定処理工程と、
前記測定処理において前記検出された電流の大きさと位相を示す情報とに基づいて、前記各組み合わせに対応する静電容量と抵抗値とを算出する算出処理を実行する算出工程と、
前記各組み合わせに対応して前記基板に生じる浮遊容量を浮遊容量記憶部に記憶する工程とを含み、
前記算出工程において、前記各組み合わせに対応する静電容量を、当該各組み合わせに対応して前記浮遊容量記憶部に記憶された浮遊容量に基づいて補正する浮遊容量補正処理をさらに実行する基板検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を検査する基板検査装置、及び基板検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレットを始めとした電子機器の急速な普及に伴い、人間の指やスタイラスペンがタッチした位置を検出するタッチパネルの需要が特に高まっている。このようなタッチパネルとして、二枚の抵抗膜を対向配置させてタッチ面に配置し、ユーザがタッチ面をタッチしたときの抵抗値からタッチ位置を検出する抵抗膜方式のタッチパネルが知られている。このような抵抗膜方式のタッチパネルの検査方法として、例えば特許文献1が知られている。
【0003】
一方、近年、格子状に配置した透明電極をタッチ面に配置し、ユーザがパネルを指でタッチしたときに生じる静電容量に基づき、タッチ位置を検出する静電容量方式のタッチパネルが広く用いられている。静電容量方式のタッチパネルは、パネル表面にX−Yの二次元座標が設定され、X−Y座標に対応するように、例えばガラス等の透明基板上にX方向に延びる複数の透明電極と、Y方向に延びる複数の透明電極とが互いに絶縁されて対向配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−274225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような静電容量方式のタッチパネルを検査する場合、X方向に延びる透明電極とY方向に延びる透明電極との間に生じる静電容量と、透明電極の抵抗とを測定する必要がある。静電容量の測定には静電容量用の測定装置が用いられ、抵抗値の測定にはテスターなどの抵抗用の測定装置が用いられる。そのため、静電容量の測定工程と、抵抗値の測定工程とが必要となり、検査工数が増大するという不都合があった。
【0006】
本発明の目的は、例えばタッチパネルのように、所定の第1方向に沿って延びる複数の第1電極と、第1方向と交差する第2方向に沿って延びる複数の第2電極とが互いに対向するように形成された基板を検査するにあたって、静電容量及び抵抗値の測定工数を低減することが容易な基板検査装置、及び基板検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る基板検査装置は、所定の第1方向に沿って延びる複数の第1電極と、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延びる複数の第2電極とが互いに対向するように形成された基板を検査する基板検査装置であって、所定の交流電圧を出力する交流電圧出力部と、電流を検出する電流検出部と、前記複数の第1電極とそれぞれ電気的に接続可能な複数の第1接続端子と、前記複数の第2電極とそれぞれ電気的に接続可能な複数の第2接続端子と、前記複数の第1接続端子と前記複数の第2接続端子とをそれぞれ組み合わせて得られる複数の組み合わせに対応し、前記各組み合わせに対応する第1及び第2接続端子について、その第2接続端子に対して前記交流電圧出力部によって前記交流電圧を供給させ、その第1接続端子に流れる電流を前記電流検出部によって検出させることにより、前記各組み合わせに対応する電流を取得する測定処理を実行する測定処理部と、前記測定処理において前記電流検出部によって検出された電流の大きさと位相を示す情報とに基づいて、前記各組み合わせに対応する静電容量と抵抗値とを算出する算出処理を実行する算出部とを備える。
【0008】
また、本発明に係る基板検査方法は、所定の第1方向に沿って延びる複数の第1電極と、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延びる複数の第2電極とが互いに対向するように形成された基板を検査する基板検査方法であって、複数の第1接続端子を前記複数の第1電極とそれぞれ電気的に接続する工程と、複数の第2接続端子を前記複数の第2電極とそれぞれ電気的に接続する工程と、前記複数の第1接続端子と前記複数の第2接続端子とをそれぞれ組み合わせて得られる複数の組み合わせに対応し、前記各組み合わせに対応する第1及び第2接続端子について、その第2接続端子に対して交流電圧を供給し、その第1接続端子に流れる電流を検出することにより、前記各組み合わせに対応する電流を取得する測定処理を実行する測定処理工程と、前記測定処理において前記検出された電流の大きさと位相を示す情報とに基づいて、前記各組み合わせに対応する静電容量と抵抗値とを算出する算出処理を実行する算出工程とを含む。
【0009】
これらの構成によれば、所定の第1方向に沿って延びる複数の第1電極と、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延びる複数の第2電極とが互いに対向するように形成された基板を検査するにあたって、複数の第1接続端子と複数の第2接続端子とをそれぞれ組み合わせて得られる複数の組み合わせ、すなわち複数の第1電極と、複数の第2電極との各組み合わせに対応し、第2接続端子に対して交流電圧を供給し、第1接続端子に流れる電流を検出することにより、検出された電流の大きさと位相を示す情報とに基づいて、各組み合わせに対応する静電容量と抵抗値とが算出される。その結果、静電容量の測定工程と、抵抗値の測定工程とを別々に実行する必要がない。従って、所定の第1方向に沿って延びる複数の第1電極と、第1方向と交差する第2方向に沿って延びる複数の第2電極とが互いに対向するように形成された基板を検査するにあたって、静電容量及び抵抗値の測定工数を低減することが容易となる。
【0010】
また、前記基板は、前記複数の第1電極とそれぞれ導通する複数の第1基板端子と、前記複数の第2電極とそれぞれ導通する複数の第2基板端子とを含み、前記複数の第1接続端子は、前記複数の第1基板端子とそれぞれ接続され、当該複数の第1基板端子を介して前記複数の第1電極とそれぞれ電気的に接続され、前記複数の第2接続端子は、前記複数の第2基板端子とそれぞれ接続され、当該複数の第2基板端子を介して前記複数の第2電極とそれぞれ電気的に接続されることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、第1及び第2電極に直接第1及び第2接続端子を接続することなく、第1及び第2基板端子に第1及び第2接続端子を接続し、第1及び第2基板端子を介して第1及び第2電極を検査することができるので、第1及び第2電極に傷をつけるなどして損傷を生じるおそれを低減しつつ、基板検査を行うことが容易となる。
【0012】
また、前記基板は、前記各第1電極と前記各第2電極とが交差する位置の静電容量を読み取るために予め設定された読取周波数の交流信号が前記各第1及び第2電極に供給されることが予定されたタッチパネルであり、前記交流電圧の周波数は、前記読取周波数と略等しいことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、タッチパネルが使用されるときに用いられる読取周波数と略等しい周波数の交流電圧を用いてタッチパネルの検査が行われるので、実使用条件に近い条件でタッチパネルを検査することができる。
【0014】
また、前記各組み合わせに対応して前記基板検査装置内部で生じる静電容量と抵抗値とを、内部静電容量と内部抵抗値として記憶する内部パラメータ記憶部をさらに備え、前記算出部は、さらに、前記各組み合わせに対応する静電容量と抵抗値とを、当該各組み合わせに対応して前記内部パラメータ記憶部に記憶された内部静電容量と内部抵抗値とに基づいて補正する内部パラメータ補正処理を実行することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、第1及び第2電極の組み合わせに対応して測定、算出された静電容量と抵抗値とから、基板検査装置内部で生じる静電容量と抵抗値との影響を低減することができるので、検査対象箇所の静電容量と抵抗値との取得精度を向上させることができる。
【0016】
また、前記複数の第1及び第2電極と前記複数の第1及び第2接続端子とが接続されない状態で前記測定処理と前記算出処理とを前記測定処理部と前記算出部とによって実行させることにより前記各組み合わせに対応して得られる静電容量及び抵抗値を、当該各組み合わせに対応して前記内部静電容量及び前記内部抵抗値として前記内部パラメータ記憶部に記憶させる内部パラメータ取得処理部をさらに備えることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、基板検査装置内部で生じる静電容量及び抵抗値を測定、算出し、内部静電容量及び内部抵抗値として内部パラメータ記憶部に記憶させることができる。
【0018】
また、前記各組み合わせに対応して前記基板に生じる浮遊容量を記憶する浮遊容量記憶部をさらに備え、前記算出部は、前記各組み合わせに対応する静電容量を、当該各組み合わせに対応して前記浮遊容量記憶部に記憶された浮遊容量に基づいて補正する浮遊容量補正処理を実行することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、第1及び第2電極の組み合わせに対応して測定、算出された静電容量から、基板に生じる浮遊容量の影響を低減することができるので、検査対象箇所の静電容量の取得精度を向上させることができる。
【0020】
また、前記各組み合わせに対応して基板内部で生じる静電容量である基準静電容量が予め判っている基準基板の前記各組み合わせに対応する前記基準静電容量を記憶する基準容量記憶部と、前記基準基板に対して前記複数の第1及び第2接続端子が接続された状態で、前記測定処理と前記算出処理とを前記測定処理部と前記算出部とによって実行させることにより前記各組み合わせに対応して得られる静電容量と、前記基準容量記憶部によって前記各組み合わせに対応して記憶されている前記基準静電容量とに基づいて、前記各組み合わせに対応する浮遊容量を算出し、前記浮遊容量記憶部に記憶させる浮遊容量取得処理部とをさらに備えることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、各組み合わせに対応して基板に生じる浮遊容量を測定、算出し、浮遊容量記憶部に記憶させることができる。
【0022】
また、前記算出処理により算出された、前記各組み合わせに対応する抵抗値を、三次元的なグラフで表した画像を表示する表示部をさらに備えることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、各組み合わせは、複数の第1電極と複数の第2電極との組み合わせに対応し、すなわち基板上の座標位置に対応しているので、各組み合わせに対応する抵抗値を三次元的なグラフで表すことにより、基板上の位置に対応する抵抗値を、ユーザが視覚的に確認することができる。
【0024】
また、前記算出処理により算出された、前記各組み合わせに対応する静電容量を、三次元的なグラフで表した画像を表示する表示部をさらに備えることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、各組み合わせは、複数の第1電極と複数の第2電極との組み合わせに対応し、すなわち基板上の座標位置に対応しているので、各組み合わせに対応する静電容量を三次元的なグラフで表すことにより、基板上の位置に対応する静電容量を、ユーザが視覚的に確認することができる。
【0026】
また、前記判定部により算出された、前記各組み合わせに対応する差を、三次元的なグラフで表した画像を表示する表示部をさらに備えることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、各組み合わせは、複数の第1電極と複数の第2電極との組み合わせに対応し、すなわち基板上の座標位置に対応しているので、各組み合わせに対応する、抵抗値の算出値と判定値との差を三次元的なグラフで表すことにより、基板上の位置に対応する抵抗値のずれを、ユーザが視覚的に確認することができる。
【0028】
また、前記各組み合わせに対応する前記抵抗値の良否判定の基準となる判定値を予め記憶する判定値記憶部と、前記算出部により得られた前記各組み合わせに対応する抵抗値と、当該各組み合わせに対応して前記判定値記憶部に記憶された判定値との差を、前記各組み合わせに対応してそれぞれ算出し、当該各組み合わせに対応する差が予め設定された差分判定値を超えたとき、当該差分判定値を超えた組み合わせに対応する前記第1及び第2電極によって表される座標位置を、前記基板の不良位置と判定する判定部とを備えることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、第1及び第2電極の組み合わせに対応して測定、算出された各抵抗値について良否を判定すると共に、その不良位置を判定することができる。
【発明の効果】
【0030】
このような構成の基板検査装置、及び基板検査方法は、所定の第1方向に沿って延びる複数の第1電極と、第1方向と交差する第2方向に沿って延びる複数の第2電極とが互いに対向するように形成された基板を検査するにあたって、静電容量及び抵抗値の測定工数を低減することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る基板検査装置の構成の一例を概念的に示すブロック図である。
図2図1に示す基板検査装置を簡略化して概念的に示す概念図である。
図3図1に示す測定処理部の測定処理において、接続端子Txm,Tynが選択された場合に測定処理を実行するときの測定回路を等価的に示した等価回路である。
図4】交流信号の電圧波形と、電流計で検出される電流波形との関係を示す波形図である。
図5】測定インピーダンスと位相差とから抵抗値と静電容量とを算出する方法を説明するための説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る基板検査方法を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る基板検査方法を示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態に係る基板検査方法を示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態に係る基板検査方法を示すフローチャートである。
図10】タッチパネル基板の各座標位置に対応する測定静電容量と、測定に用いられる交流信号の周波数との関係の一例を示す説明図である。
図11】タッチパネル基板の各座標位置に対応する測定静電容量と、測定に用いられる交流信号の周波数との関係の一例を示す説明図である。
図12】タッチパネル基板の各座標位置に対応する測定静電容量と、測定に用いられる交流信号の周波数との関係の一例を示す説明図である。
図13図12に示す測定静電容量を補正した結果を示す説明図である。
図14】タッチパネル基板の各座標位置に対応する抵抗値の理論値を表すグラフである。
図15】タッチパネル基板の各座標位置に対応する測定抵抗値と、測定周波数との関係を示すグラフである。
図16】タッチパネル基板の各座標位置に対応する測定抵抗値と、測定周波数との関係を示すグラフである。
図17】タッチパネル基板の電極に不良が生じた場合を説明するための説明図である。
図18図17に示すタッチパネル基板についての各座標位置に対応する測定抵抗値を示すグラフである。
図19図1に示す基板検査装置の変形例を示す説明図である。
図20図19に示す基板検査装置における、タッチパネル基板についての各座標位置に対応する測定抵抗値のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。図1は、本発明の一実施形態に係る基板検査装置の構成の一例を概念的に示すブロック図である。図1に示す基板検査装置1は、交流電源2(交流電圧出力部)、電流計3(電流検出部)、制御部4、表示部5(報知部)、操作部6、接続端子Tx1〜Tx4(第1接続端子)、接続端子Ty1〜Ty4(第2接続端子)、及び切替スイッチSW1,SW2を備える。なお、接続端子Tx1〜Tx4を第2接続端子、接続端子Ty1〜Ty4を第1接続端子としてもよい。
【0033】
図1に示す基板検査装置1には、検査対象のタッチパネル基板P(基板)が接続されている。図1に示すタッチパネル基板Pには、X−Y座標が設定されており、図1に示す例では横方向がX軸、縦方向がY軸とされている。
【0034】
タッチパネル基板Pには、板状の例えばガラス等の透明な基材Paの表面に、互いに離間してY軸方向(第1方向)に沿って延びる複数のX電極X1〜X4(第1電極)と、互いに離間してY軸方向と垂直に交差するX軸方向(第2方向)に沿って延びる複数のY電極Y1〜Y4(第2電極)とがタッチパネル基板Pの厚み方向(紙面奥行き方向)に互いに対向するように形成されている。これにより、X電極X1〜X4がX座標に対応し、Y電極Y1〜Y4がY座標に対応する。
【0035】
すなわち、X電極X1とY電極Y1の組み合わせは、タッチパネル基板Pにおける座標位置(X1,Y1)と対応し、X電極XmとY電極Ynの組み合わせは、タッチパネル基板Pにおける座標位置(Xm,Yn)と対応している(m、nは任意の整数)。
【0036】
なお、基板は、必ずしもタッチパネル用の基板でなくてもよく、例えばプリント配線基板、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ用の電極板、及び半導体パッケージ用のパッケージ基板やフィルムキャリアなど種々の基板であってもよい。
【0037】
なお、図1に示す例では説明を簡単にするため便宜上、X電極、Y電極がそれぞれ4つずつの例を示したが、電極の数は、タッチパネル基板Pの大きさや位置検出精度に応じて適宜設定される。
【0038】
X電極X1〜X4及びY電極Y1〜Y4は、いわゆる透明電極であり、例えば酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide、ITO)や、酸化インジウム亜鉛(Indium Zinc Oxide、IZO)等により構成されている。なお、X電極X1〜X4及びY電極Y1〜Y4としては種々の材料を用いることができ、必ずしも透明電極でなくてもよい。
【0039】
X電極X1〜X4とY電極Y1〜Y4とが交差する位置には、X電極X1〜X4とY電極Y1〜Y4との間に絶縁被膜が形成され、互いに電気的に絶縁されている。また、絶縁被膜の厚みによって、X電極X1〜X4とY電極Y1〜Y4との間に微少な間隔が生じている。
【0040】
X電極X1〜X4、及びY電極Y1〜Y4の形状は、それぞれ、一定の大きさの小さな複数の菱形を串刺ししたようなパターンとされ、幅広部と幅狭部とが長手方向で繰返し交互に現れている。X電極X1〜X4、及びY電極Y1〜Y4は、上記の幅狭部の部分において、平面視で互いに交差している。これにより、X電極X1〜X4、及びY電極Y1〜Y4のうち何れかによって、タッチ位置検出可能な領域(以下、タッチ領域と称する)のほぼ全体が覆われている。
【0041】
タッチパネル基板Pには、X電極X1〜X4と導通接続された基板端子Px1〜Px4(第1基板端子)と、Y電極Y1〜Y4と導通接続された基板端子Py1〜Py4(第2基板端子)とが形成されている。基板端子Px1〜Px4及び基板端子Py1〜Py4は、例えば銀ペーストや銅ペースト等の導電性を有するペースト材料を用いて、スクリーン印刷により形成されている。
【0042】
なお、基板端子Px1〜Px4,Py1〜Py4は、例えばコネクタであってもよく、他の接続手段であってもよい。基板端子Px1〜Px4,Py1〜Py4は、X電極X1〜X4,Y電極Y1〜Y4と、接続端子Tx1〜Tx4,Ty1〜Ty4とを導通接続させるものであればよく、上述の例に限らない。また、基板端子Px1〜Px4,Py1〜Py4を設けず、X電極X1〜X4,Y電極Y1〜Y4と、接続端子Tx1〜Tx4,Ty1〜Ty4とを直接導通接続させる構成としてもよい。
【0043】
図2は、図1に示す基板検査装置1を簡略化して概念的に示す概念図である。図2に示す基板検査装置1では、7つのX電極X1〜X7と、5つのY電極Y1〜Y5とを備える例を示している。図2では図示を省略しているが、以下の説明では、基板検査装置1は、X電極X1〜X7に対応する基板端子Px1〜Px7(第1基板端子)、接続端子Tx1〜Tx7(第1接続端子)、及び切替スイッチSW1を備え、Y電極Y1〜Y5(第2電極)に対応する基板端子Py1〜Py5(第2基板端子)、接続端子Ty1〜Ty(第2接続端子)、及び切替スイッチSW2を備えているものとして説明する。
【0044】
以下、図1図2とを適宜参照しつつ基板検査装置1の構成を説明する。以下、X電極X1〜X7,Y電極Y1〜Y5を総称してそれぞれX電極X、Y電極Yと称し、基板端子Px1〜Px7,Py1〜Py5を総称してそれぞれ基板端子Px,Pyと称し、接続端子Tx1〜Tx7,Ty1〜Ty5を総称してそれぞれ接続端子Tx,Tyと称する。
【0045】
タッチパネル基板Pは、タッチパネル基板Pが製品に組み込まれて使用される際に、X電極XとY電極Yとが交差する位置の静電容量を読み取るために予め設定された読取周波数f0の交流信号が、接続端子Ty及び基板端子Pyを介してY電極Yへ供給され、その交差する位置の静電容量を介してX電極Xに供給されることが予定されている。読取周波数f0は、高くなるほどタッチパネルの位置検出速度を高速化することができ、タッチパネルの応答性が向上する。
【0046】
一方、読取周波数f0は、高くなるほどノイズが発生し易くなり、ノイズ対策が困難になる。そこで、ユーザがタッチパネルを操作するときの操作性の観点、及び設計上の制約から、タッチパネルの適切な応答性が得られる読取周波数f0として、例えば100kHz〜1MHzの周波数、より好ましくは300kHz〜500kHz程度の周波数が用いられる。
【0047】
接続端子Tx1〜Tx7,Ty1〜Ty5は、基板端子Px1〜Px7,Py1〜Py5と接続可能に構成された接続端子である。接続端子Tx1〜Tx7,Ty1〜Ty5は、例えばユーザが検査対象のタッチパネル基板Pを基板検査装置1の所定の取り付け位置に取り付けることによって、基板端子Px1〜Px7,Py1〜Py5と接続され、接続端子Tx1〜Tx7及び接続端子Ty1〜Ty5が、X電極X1〜X7及びY電極Y1〜Y5と導通するようになっている。
【0048】
切替スイッチSW1は、制御部4からの制御信号に応じて、接続端子Tx1〜Tx7の接続先を、それぞれ、電流計3と回路グラウンドとの間で切り替える。切替スイッチSW2は、制御部4からの制御信号に応じて、接続端子Ty1〜Ty5の接続先を、それぞれ、交流電源2と回路グラウンドとの間で切り替える。
【0049】
交流電源2は、切替スイッチSW2によって選択された接続端子Tyへ例えば実効値で出力電圧Vの交流信号SAを供給する。交流信号SAは、例えば正弦波、あるいは矩形波にされている。また、交流信号SAの周波数fは、読取周波数f0と略等しい周波数、例えばf0×0.9〜f0×1.1の周波数の範囲内に設定されている。周波数fを、読取周波数f0と略等しい周波数にすることによって、タッチパネル基板Pの使用条件と同等の条件でタッチパネル基板Pを検査することができるので、検査の信頼性を向上することができる。
【0050】
電流計3は、切替スイッチSW1によって選択された接続端子Txに流れる電流を検出し、その電流値Iとその位相差θとを示す情報を制御部4へ出力する。位相差θは、交流信号SAに対する検出電流の位相の差を示している。なお、電流計3は、位相を示す情報として位相差θを出力する例を示したが、位相を示す情報は位相差θに限らない。例えば、検出された電流の位相をリアルタイムで出力してもよい。この場合、例えば制御部4で、交流信号SAと検出電流の位相差θを算出するようにしてもよい。
【0051】
表示部5は、例えば液晶表示装置や有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイ等の表示装置である。操作部6は、ユーザの操作入力を受け付ける操作装置である。操作部6としては、例えば操作スイッチやキーボード、タッチパネル等が用いられる。
【0052】
制御部4は、例えば所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、所定の制御プログラムを記憶する不揮発性のROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、HDD等の記憶装置によって構成された内部パラメータ記憶部45、浮遊パラメータ記憶部46(浮遊容量記憶部)、基準パラメータ記憶部47(基準容量記憶部)、判定値記憶部48等の記憶部、及びこれらの周辺回路等から構成されている。そして、制御部4は、例えば上述の記憶装置に記憶された制御プログラムを実行することによって、測定処理部41、算出部42、内部パラメータ取得処理部43、浮遊パラメータ取得処理部44(浮遊容量取得処理部)、及び判定部49として機能する。
【0053】
測定処理部41は、接続端子Tx1〜Tx7と、接続端子Ty1〜Ty5とをそれぞれ組み合わせて得られる複数の組み合わせに対応し、それらの各組み合わせに対応する接続端子Txm及び接続端子Tynについて、その接続端子Tynに対して交流電源2によって交流信号SAを供給させ、その接続端子Txmに流れる電流を電流計3によって検出させる。これにより、測定処理部41は、それらの各組み合わせに対応する電流の電流値I及び位相差θを取得する測定処理を実行する。
【0054】
測定処理部41は、接続端子Txmを選択するときは、切替スイッチSW1により接続端子Txmを電流計3と接続させ、接続端子Txm以外の接続端子Txを回路グラウンドと接続させる。また、測定処理部41は、接続端子Tynを選択するときは、切替スイッチSW2により接続端子Tynを交流電源2と接続させ、接続端子Tyn以外の接続端子Tyを回路グラウンドと接続させる。
【0055】
なお、測定処理部41及び切替スイッチSW1,SW2は、選択された接続端子以外の接続端子をオープンにする(開放する)構成としてもよい。
【0056】
ここで、接続端子Tx1〜Tx7、接続端子Ty1〜Ty5は、それぞれX電極X1〜X7、Y電極Y1〜Y5と電気的に接続されるから、接続端子Txと接続端子Tyとの組み合わせはX電極XとY電極Yの組み合わせに対応する。すなわち接続端子Txと接続端子Tyとの組み合わせは座標位置(Xm,Yn)に対応している。
【0057】
すなわち、測定処理部41は、測定処理において、タッチパネル基板Pのすべての座標位置(X1,Y1)〜(X7,Y5)に対応して、電流値I及び位相差θを取得する。以下、座標位置(Xm,Yn)に対応する電流値Iを電流値I(m,n)と称し、座標位置(Xm,Yn)に対応する位相差θを位相差θ(m,n)と称する。また、測定処理部41が、測定処理において切替スイッチSW1,SW2によって接続端子Txm,Tynを選択させ、電流値I(m,n)及び位相差θ(m,n)を電流計3によって測定させることを簡略化して、ただ単に、電流値I(m,n)及び位相差θ(m,n)を測定する、と称する。
【0058】
算出部42は、測定処理部41の測定処理において電流計3によって検出された電流の大きさである電流値Iと、位相を示す情報である位相差θとに基づいて、接続端子の各組み合わせ、すなわちタッチパネル基板Pのすべての座標位置(X1,Y1)〜(X7,Y5)に対応する静電容量Cと、X電極、Y電極の抵抗値Rとを算出する。以下、座標位置(Xm,Yn)に対応する静電容量Cを静電容量C(m,n)と称し、座標位置(Xm,Yn)に対応する抵抗値Rを抵抗値R(m,n)と称する。
【0059】
図3は、図1に示す測定処理部41の測定処理において、接続端子Txm,Tynが選択された場合、すなわち座標位置(Xm,Yn)の測定処理を実行する場合の測定回路を等価的に示した等価回路である。この場合の測定回路では、接続端子Tynと基板端子Pynとの接続点からY電極YnがX電極Xmと交差するまでの区間の抵抗値が、抵抗値Ry(m,n)となり、Y電極YnとX電極Xmとの交差部分で形成される静電容量が静電容量C(m,n)となり、Y電極YnとX電極Xmとの交差部分から基板端子Pxmと接続端子Txmとの接続点に達するまでの区間の抵抗値が抵抗値Rx(m,n)となる。
【0060】
座標位置(Xm,Yn)の測定処理を実行する場合、その測定対象の回路は、抵抗値Ry(m,n)、静電容量C(m,n)、及び抵抗値Rx(m,n)の直列回路で表される。さらに、図示しない基板検査装置1内部の抵抗値である内部抵抗値Ri(m,n)と、基板検査装置1内部の内部静電容量Ci(m,n)とが生じる。
【0061】
また、タッチパネル基板Pには、浮遊静電容量Cf(m,n)と、浮遊静電容量Cf(m,n)に付随して生じる浮遊抵抗値Rf(m,n)とが形成される。図3では、説明の都合により浮遊静電容量Cf(m,n)と浮遊抵抗値Rf(m,n)とが、静電容量C(m,n)と抵抗値Rx(m,n)との間に接続されるように記載したが、実際には、測定対象の回路全体に分布して浮遊静電容量Cf(m,n)及び浮遊抵抗値Rf(m,n)が生じることになる。
【0062】
算出部42は、測定処理部41の測定処理において得られた電流値I(m,n)及び位相差θ(m,n)と、交流電源2の出力電圧Vとに基づいて、例えば下記の式(1)を用いて測定インピーダンスZ(m,n)を算出する。
【0063】
Z(m,n)=V/I(m,n) ・・・(1)
但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5である。
【0064】
図4は、交流信号SAの電圧波形と、電流計3で検出される電流波形との関係を示す波形図である。図5は、測定インピーダンスZ(m,n)と位相差θ(m,n)とから抵抗値R(m,n)と静電容量C(m,n)とを算出する方法を説明するための説明図である。交流信号SAの周波数fは、読取周波数f0と略等しい周波数である。読取周波数f0は、人が指をタッチパネル上で動かす速度を読み取る程度の周波数であるため、比較的低周波数である。そのため、交流信号SAの周波数fに応じて生じる測定インピーダンスZ(m,n)に含まれるインダクタンス成分は微小であり、図3に示すように、測定回路をRC回路で近似することができる。
【0065】
従って、図5に示すように、位相差θ(m,n)に基づくベクトル演算によって、測定インピーダンスZ(m,n)を抵抗成分と容量成分とに分解することができる。具体的には、算出部42は、下記の式(2)、式(3)に基づいて、測定抵抗値Rmes(m,n)と測定静電容量Cmes(m,n)とを算出する算出処理を実行する。
【0066】
Rmes(m,n)=Z(m,n)×COSθ ・・・(2)
【0067】
Cmes(m,n)=1/{2×π×f×Z(m,n)×SINθ} ・・・(3)
(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)
【0068】
ここで、測定抵抗値Rmes(m,n)には、上述の内部抵抗値Ri(m,n)と、浮遊抵抗値Rf(m,n)とが含まれる。測定静電容量Cmes(m,n)には、上述の内部静電容量Ci(m,n)と、浮遊静電容量Cf(m,n)とが含まれる。そのため、抵抗値R(m,n)及び静電容量C(m,n)を精度よく取得するためには、内部抵抗値Ri(m,n)、浮遊抵抗値Rf(m,n)、内部静電容量Ci(m,n)及び浮遊静電容量Cf(m,n)を、測定抵抗値Rmes(m,n)及び測定静電容量Cmes(m,n)から取り除く必要がある。そこで、内部パラメータ取得処理部43と浮遊パラメータ取得処理部44とが設けられている。
【0069】
内部パラメータ取得処理部43は、例えばタッチパネル基板Pを基板検査装置1から取り外してX電極XとY電極Yとが接続端子Tx,Tyと電気的に接続されていない状態で、すなわち接続端子Tx,Tyが開放された状態で、上述の測定処理と算出処理とを測定処理部41と算出部42とによって実行させる。これにより、内部パラメータ取得処理部43は、すべての座標位置に対応して得られる測定静電容量Cmes及び測定抵抗値Rmesを、接続端子Tx,Tyの組み合わせに相当する座標位置(Xm,Yn)に対応する内部静電容量Ci(m,n)及び内部抵抗値Ri(m,n)(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)として内部パラメータ記憶部45に記憶させる。
【0070】
なお、必ずしも内部パラメータ取得処理部43を備えていなくてもよい。例えば予め実験的に内部静電容量Ci(m,n)及び内部抵抗値Ri(m,n)(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)を測定し、予め内部パラメータ記憶部45に記憶させておいてもよい。
【0071】
基準パラメータ記憶部47には、タッチパネル基板P内部で生じる静電容量及び抵抗値である基準静電容量Cref及び基準抵抗値Rrefが予め判っている基準基板Prefについて、すべての座標位置(X1,Y1)〜(X7,Y5)に対応して、基準静電容量Cref(m,n)及び基準抵抗値Rref(m,n)(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)が、例えば予め実験的に測定されて記憶されている。
【0072】
浮遊パラメータ取得処理部44は、例えばユーザが基準基板Prefを基板検査装置1に取り付けて、基板端子Px1〜Px7,Py1〜Py5と接続端子Tx1〜Tx7,Ty1〜Ty5とが接続された状態で、操作部6によるユーザの浮遊パラメータ取得処理(浮遊容量取得処理)の実行を指示する操作指示が受け付けられたとき、上述の測定処理と算出処理とを測定処理部41と算出部42とによって実行させることによりすべての座標位置(X1,Y1)〜(X7,Y5)に対応して得られる測定静電容量Cmes(m,n)及び測定抵抗値Rmes(m,n)(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)を算出させる。
【0073】
そして、浮遊パラメータ取得処理部44は、このようにして得られた測定静電容量Cmes(m,n)及び測定抵抗値Rmes(m,n)と、基準パラメータ記憶部47によって記憶されている基準静電容量Cref(m,n)及び基準抵抗値Rref(m,n)(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)とに基づいて、すべての座標位置(X1,Y1)〜(X7,Y5)に対応する浮遊静電容量Cf(m,n)及び浮遊抵抗値Rf(m,n)(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)を算出し、浮遊パラメータ記憶部46に記憶させる。
【0074】
具体的には、浮遊パラメータ取得処理部44は、例えば下記の式(4)、(5)に基づき、浮遊静電容量Cf(m,n)及び浮遊抵抗値Rf(m,n)(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)を算出する。
【0075】
浮遊静電容量Cf(m,n)=Cmes(m,n)−Cref(m,n)・・・(4)
【0076】
浮遊抵抗値Rf(m,n)=Rmes(m,n)−Rref(m,n) ・・・(5)
(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)
【0077】
算出部42は、検査対象のタッチパネル基板Pの測定静電容量Cmes(m,n)及び測定抵抗値Rmes(m,n)を、内部パラメータ記憶部45に記憶された内部静電容量Ci(m,n)及び内部抵抗値Ri(m,n)と、浮遊パラメータ記憶部46に記憶された浮遊静電容量Cf(m,n)及び浮遊抵抗値Rf(m,n)とに基づいて補正し、検査対象のタッチパネル基板Pの抵抗値R(m,n)及び静電容量C(m,n)(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)を取得する。
【0078】
具体的には、算出部42は、例えば下記の式(6)、(7)に基づいて、検査対象のタッチパネル基板Pの静電容量C(m,n)及び抵抗値R(m,n)を取得する。
静電容量C(m,n)=Cmes(m,n)−Ci(m,n)−Cf(m,n) ・・・(6)
抵抗値R(m,n)=Rmes(m,n)−Ri(m,n)−Rf(m,n) ・・・(7)
(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)
【0079】
なお、算出部42は、浮遊静電容量Cf(m,n)及び浮遊抵抗値Rf(m,n)を補正に用いず、下記の式(8)、(9)に基づき補正を行ってもよい。
静電容量C(m,n)=Cmes(m,n)−Ci(m,n) ・・・(8)
抵抗値R(m,n)=Rmes(m,n)−Ri(m,n) ・・・(9)
(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)
【0080】
また、算出部42は、内部静電容量Ci(m,n)及び内部抵抗値Ri(m,n)を補正に用いず、下記の式(10)、(11)に基づき補正を行ってもよい。
静電容量C(m,n)=Cmes(m,n)−Cf(m,n) ・・・(10)
抵抗値R(m,n)=Rmes(m,n)−Rf(m,n) ・・・(11)
(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)
【0081】
また、算出部42は、補正を行わなくてもよい。
【0082】
判定値記憶部48には、抵抗値R(m,n)及び静電容量C(m,n)に対応する良否判定の基準となる判定値である抵抗判定値Rj(m,n)及び容量判定値Cj(m,n)が予め記憶されている。抵抗判定値Rj(m,n)及び容量判定値Cj(m,n)は、良品のタッチパネル基板Pの実測値を用いてもよく、設計上の理論値を用いてもよく、例えば基準抵抗値Rref(m,n)及び基準静電容量Cref(m,n)を抵抗判定値Rj(m,n)及び容量判定値Cj(m,n)として用いてもよい(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)。
【0083】
判定部49は、算出部42により得られた抵抗値R(m,n)と、判定値記憶部48に記憶された抵抗判定値Rj(m,n)との差分Dr(m,n)を、すべての座標位置(X1,Y1)〜(X7,Y5)に対応してそれぞれ算出し、当該各座標位置に対応する差分Dr(m,n)が予め設定された差分判定値Drjを超えたとき、当該差分判定値Drjを超えた座標位置(Xm,Yn)を、タッチパネル基板Pの抵抗不良位置と判定し、その抵抗不良位置を表示部5に表示させる。
【0084】
また、判定部49は、算出部42により得られた静電容量C(m,n)と、判定値記憶部48に記憶された容量判定値Cj(m,n)との差分Dc(m,n)を、すべての座標位置(X1,Y1)〜(X7,Y5)に対応してそれぞれ算出し、当該各座標位置に対応する差分Dc(m,n)が予め設定された差分判定値Dcjを超えたとき、当該差分判定値Dcjを超えた座標位置(Xm,Yn)を、タッチパネル基板Pの静電容量不良位置と判定し、その静電容量不良位置を表示部5に表示させる。
【0085】
次に、上述のように構成された基板検査装置1の動作について説明する。図6図9は、本発明の一実施形態に係る基板検査方法を示すフローチャートである。まず、例えば、タッチパネル基板Pが基板検査装置1に取り付けられず、接続端子Tx1〜Tx7,Ty1〜Ty5が開放された状態で、例えばユーザが操作部6を操作して基板検査装置1の内部パラメータの測定を指示する内部パラメータ取得指示を入力した場合、操作部6によって内部パラメータ取得指示が受け付けられ(ステップS1でYES)、内部パラメータ取得処理部43が、図8に示す内部パラメータ取得処理を実行する(ステップS2)。
【0086】
一方、操作部6によって内部パラメータ取得指示が受け付けられない場合(ステップS1でNO)、内部パラメータ取得処理部43は、内部パラメータ取得処理を実行することなく、ステップS3へ移行する。
【0087】
まず、図8に示す内部パラメータ取得処理について説明する。内部パラメータ取得処理では、まず、内部パラメータ取得処理部43によって、変数m及びnが1に初期化される(ステップS101)。次に、内部パラメータ取得処理部43は、測定処理部41によって電流値I(m,n)と位相差θ(m,n)とを測定させる(ステップS102)。
【0088】
ステップS102では、タッチパネル基板Pが基板検査装置1に取り付けられていない。この状態では、基板検査装置1内部において、交流電源2に接続された切替スイッチSW2や接続端子Tynと、電流計3に接続された切替スイッチSW1や接続端子Txmとの間の容量結合を介して電流が流れる。このようにして流れた電流をステップS102において測定し、その電流の電流値I(m,n)と位相差θ(m,n)とを取得する。
【0089】
次に、内部パラメータ取得処理部43は、算出部42によって、電流値I(m,n)と出力電圧Vとから例えば式(1)に基づき測定インピーダンスZ(m,n)を算出させる(ステップS103)。
【0090】
次に、内部パラメータ取得処理部43は、測定インピーダンスZ(m,n)と位相差θ(m,n)とから、例えば式(2)、(3)に基づき測定静電容量Cmes(m,n)と測定抵抗値Rmes(m,n)とを算出させる(ステップS104)。このようにして得られた測定静電容量Cmes(m,n)と測定抵抗値Rmes(m,n)とは、基板検査装置1内部のパラメータが反映されたものである。
【0091】
そこで、内部パラメータ取得処理部43は、測定静電容量Cmes(m,n)を内部静電容量Ci(m,n)とし、測定抵抗値Rmes(m,n)を内部抵抗値Ri(m,n)として内部パラメータ記憶部45に記憶させる(ステップS105)。
【0092】
内部パラメータ取得処理部43は、変数mが7でなければ(ステップS106でNO)、すなわち座標Ynにまだ処理の終わっていないX座標が残っていれば、新たなX座標に対応する内部静電容量Ci(m,n)と内部抵抗値Ri(m,n)とを取得するべく変数mに1を加算して(ステップS107)、再びステップS102〜S106を繰り返す。
【0093】
一方、変数mが7のとき(ステップS106でYES)、すなわち座標YnのすべてのX座標について処理を終了したとき、内部パラメータ取得処理部43は、変数mを1に初期化し(ステップS108)、変数nを5と比較する(ステップS109)。
【0094】
内部パラメータ取得処理部43は、変数nが5でなければ(ステップS109でNO)、すなわちまだ処理の終わっていないY座標が残っていれば、新たなY座標に対応する内部静電容量Ci(m,n)と内部抵抗値Ri(m,n)とを取得するべく変数nに1を加算して(ステップS110)、再びステップS102〜S109を繰り返す。
【0095】
一方、変数nが5のとき(ステップS109でYES)、すなわちタッチパネル基板Pのすべての座標位置(X1,Y1)〜(X7,Y5)に対応する接続端子Txと接続端子Tyの組み合わせについて、内部静電容量Ci(m,n)と内部抵抗値Ri(m,n)とが内部パラメータ記憶部45に記憶されたことになるから、内部パラメータ取得処理部43は、内部パラメータ取得処理を終了し、図6のステップS3へ移行する。
【0096】
浮遊パラメータ取得処理を行う場合、ユーザは、基準基板Prefを基板検査装置1に取り付けて、基板端子Px1〜Px7,Py1〜Py5と接続端子Tx1〜Tx7,Ty1〜Ty5とが接続された状態にする。この状態で、例えばユーザが操作部6を操作して浮遊パラメータの測定を指示する浮遊パラメータ取得指示を入力した場合、操作部6によって浮遊パラメータ取得指示が受け付けられ(ステップS3でYES)、浮遊パラメータ取得処理部44が、図9に示す浮遊パラメータ取得処理を実行する(ステップS4)。一方、操作部6によって浮遊パラメータ取得指示が受け付けられなければ(ステップS3でNO)、浮遊パラメータ取得処理部44は、ステップS4を実行することなくステップS5へ移行する。
【0097】
図9に示す浮遊パラメータ取得処理において、浮遊パラメータ取得処理部44によって、ステップS201〜S204が実行される。ステップS201〜S204は、内部パラメータ取得処理部43の代わりに浮遊パラメータ取得処理部44が処理を行う点を除いて図8におけるステップS101〜S104と同様であるのでその説明を省略する。
【0098】
ステップS205において、浮遊パラメータ取得処理部44は、ステップS204で得られた測定静電容量Cmes(m,n)と、基準パラメータ記憶部47によって記憶されている基準静電容量Cref(m,n)とに基づいて例えば式(4)を用いて浮遊静電容量Cf(m,n)を算出し、浮遊パラメータ記憶部46に記憶させる(ステップS205)。
【0099】
次に、浮遊パラメータ取得処理部44は、ステップS204で得られた測定抵抗値Rmes(m,n)と、基準パラメータ記憶部47によって記憶されている基準抵抗値Rref(m,n)とに基づいて例えば式(5)を用いて浮遊抵抗値Rf(m,n)を算出し、浮遊パラメータ記憶部46に記憶させる(ステップS206)。
【0100】
浮遊パラメータ取得処理部44は、変数mが7でなければ(ステップS207でNO)、すなわち座標Ynにまだ処理の終わっていないX座標が残っていれば、新たなX座標に対応する浮遊静電容量Cf(m,n)と浮遊抵抗値Rf(m,n)とを取得するべく変数mに1を加算して(ステップS208)、再びステップS202〜S207を繰り返す。
【0101】
一方、変数mが7のとき(ステップS207でYES)、すなわち座標YnのすべてのX座標について処理を終了したとき、浮遊パラメータ取得処理部44は、変数mを1に初期化し(ステップS209)、変数nを5と比較する(ステップS210)。
【0102】
浮遊パラメータ取得処理部44は、変数nが5でなければ(ステップS210でNO)、すなわちまだ処理の終わっていないY座標が残っていれば、新たなY座標に対応する浮遊静電容量Cf(m,n)と浮遊抵抗値Rf(m,n)とを取得するべく変数nに1を加算して(ステップS211)、再びステップS202〜S210を繰り返す。
【0103】
一方、変数nが5のとき(ステップS210でYES)、すなわちタッチパネル基板Pのすべての座標位置(X1,Y1)〜(X7,Y5)に対応する接続端子Txと接続端子Tyの組み合わせについて、浮遊静電容量Cfと浮遊抵抗値Rfとが浮遊パラメータ記憶部46に記憶されたことになるから、浮遊パラメータ取得処理部44は、浮遊パラメータ取得処理を終了し、図6のステップS5へ移行する。
【0104】
ユーザは、タッチパネル基板Pの検査を行う場合、検査対象のタッチパネル基板Pを基板検査装置1に取り付けて、基板端子Px1〜Px7,Py1〜Py5と接続端子Tx1〜Tx7,Ty1〜Ty5とが接続された状態にする。この状態で、例えばユーザが操作部6を操作して検査の開始を指示する検査開始指示を入力した場合、操作部6によって検査開始指示が受け付けられ(ステップS5でYES)、測定処理部41が、タッチパネル基板Pの検査を開始するべく変数m及びnを1に初期化する(ステップS6)。
【0105】
次に、測定処理部41によって、電流値I(m,n)と位相差θ(m,n)とが測定される(ステップS7)。次に、算出部42によって、電流値I(m,n)と出力電圧Vとから例えば式(1)に基づき測定インピーダンスZ(m,n)が算出される(ステップS8)。
【0106】
次に、算出部42は、測定インピーダンスZ(m,n)と位相差θ(m,n)とから、例えば式(2)、(3)に基づき測定静電容量Cmes(m,n)と測定抵抗値Rmes(m,n)とを算出する(ステップS9)。このようにして得られた測定静電容量Cmes(m,n)、測定抵抗値Rmes(m,n)には、検査対象のタッチパネル基板Pの静電容量C(m,n)、抵抗値R(m,n)の他、内部静電容量Ci(m,n)、内部抵抗値Ri(m,n)や浮遊静電容量Cf(m,n)、浮遊抵抗値Rf(m,n)がそれぞれ含まれている。
【0107】
そこで、算出部42は、測定静電容量Cmes(m,n)を、内部パラメータ記憶部45に記憶された内部静電容量Ci(m,n)と浮遊パラメータ記憶部46に記憶された浮遊静電容量Cf(m,n)とに基づき例えば式(6)を用いて補正し、静電容量C(m,n)を取得する(ステップS10、内部パラメータ補正処理、浮遊容量補正処理)。
【0108】
これにより、内部静電容量Ci(m,n)と浮遊静電容量Cf(m,n)との影響を低減することができるので、静電容量C(m,n)の測定精度を向上させることができる。
【0109】
次に、算出部42は、測定抵抗値Rmes(m,n)を、内部パラメータ記憶部45に記憶された内部抵抗値Ri(m,n)と浮遊パラメータ記憶部46に記憶された浮遊抵抗値Rf(m,n)とに基づき例えば式(7)に基づいて補正し、抵抗値R(m,n)を取得する(ステップS11、浮遊容量補正処理)。
【0110】
これにより、内部抵抗値Ri(m,n)と浮遊抵抗値Rf(m,n)との影響を低減することができるので、抵抗値R(m,n)の測定精度を向上させることができる。
【0111】
次に、判定部49は、算出部42により得られた抵抗値R(m,n)と、判定値記憶部48に記憶された抵抗判定値Rj(m,n)との差分Dr(m,n)を算出する(ステップS21)。
【0112】
そして、判定部49は、差分Dr(m,n)と予め設定された差分判定値Drjとを比較し(ステップS22)、差分Dr(m,n)が差分判定値Drjを超えていれば(ステップS22でYES)、座標位置(Xm,Yn)に抵抗不良が生じている旨のメッセージを表示部5によって表示させる(ステップS23)。一方、差分Dr(m,n)が差分判定値Drjを超えていなければ(ステップS22でNO)、判定部49は、ステップS23を実行することなくステップS24へ移行する。差分判定値Drjは、タッチパネル基板Pに対して要求される性能に応じて適宜設定される。
【0113】
ステップS24において、判定部49は、算出部42により得られた静電容量C(m,n)と、判定値記憶部48に記憶された容量判定値Cj(m,n)との差分Dc(m,n)を算出する(ステップS24)。
【0114】
そして、判定部49は、差分Dc(m,n)と予め設定された差分判定値Dcjとを比較し(ステップS25)、差分Dc(m,n)が差分判定値Dcjを超えていれば(ステップS25でYES)、座標位置(Xm,Yn)に静電容量不良が生じている旨のメッセージを表示部5によって表示させる(ステップS26)。一方、差分Dc(m,n)が差分判定値Dcjを超えていなければ(ステップS25でNO)、判定部49は、ステップS26を実行することなくステップS27へ移行する。差分判定値Dcjは、タッチパネル基板Pに対して要求される性能に応じて適宜設定される。
【0115】
ステップS27において、測定処理部41は、変数mが7でなければ(ステップS27でNO)、すなわち座標Ynにまだ処理の終わっていないX座標が残っていれば、新たなX座標に対応する検査を実行するべく変数mに1を加算して(ステップS28)、再びステップS7〜S27を繰り返す。
【0116】
一方、変数mが7のとき(ステップS27でYES)、すなわち座標YnのすべてのX座標について処理を終了したとき、測定処理部41は、変数mを1に初期化し(ステップS29)、変数nを5と比較する(ステップS30)。
【0117】
測定処理部41は、変数nが5でなければ(ステップS30でNO)、すなわちまだ処理の終わっていないY座標が残っていれば、新たなY座標に対応する検査を実行するべく変数nに1を加算して(ステップS31)、再びステップS7〜S30を繰り返す。
【0118】
一方、変数nが5のとき(ステップS30でYES)、すなわちタッチパネル基板Pのすべての座標位置(X1,Y1)〜(X7,Y5)に対応する接続端子Txと接続端子Tyの組み合わせについて、検査を終了したことになるから、処理を終了する。
【0119】
以上、ステップS7,S102,S202の測定処理(測定工程)とステップS8,S9,S103,S104,S203,S204の算出処理(算出工程)とによれば、各座標位置についてそれぞれ一回、電流値Iと位相差θとを測定するだけで、各座標位置に対応する静電容量及び抵抗値を得ることができるので、静電容量の測定工程と、抵抗値の測定工程とを別々に実行するよりも、静電容量及び抵抗値の測定工数を低減することが容易となる。
【0120】
また、ステップS10,S11の処理により、内部静電容量Ci、内部抵抗値Ri、浮遊静電容量Cf、及び浮遊抵抗値Rfの影響を低減することができるので、静電容量C、及び抵抗値Rの測定精度を向上することができる結果、タッチパネル基板Pの検査精度を向上させることができる。
【0121】
図10図12は、タッチパネル基板Pの各座標位置に対応する測定静電容量Cmesと、測定に用いられる交流信号SAの周波数fとの関係の一例を示す説明図である。図10は、周波数fが低周波数の場合、図11は、周波数fが図10よりも高い中程度の周波数の場合、図12は、図1に示す基板検査装置1の例を示しており、周波数fが読取周波数f0と略等しい高周波数の場合の例を示している。
【0122】
タッチパネル基板Pの各座標位置に対応する静電容量C(m,n)は、製造バラツキによる多少のバラツキはあるものの、原則的には互いに略等しい値となっている。そして、周波数fを低周波数とした場合には、図10に示すように、その各座標位置に対応する測定静電容量Cmesは、互いに略等しい値となっており、ほぼ実際の静電容量C(m,n)がそのまま測定可能であることが判る。
【0123】
しかしながら、周波数fを高めると、図11に示すように、内部静電容量Ciや浮遊静電容量Cfの影響が増大し、座標位置によって測定静電容量Cmesに差が生じる。さらに上述のように検査の信頼性を向上させる必要から、周波数fを読取周波数f0と略等しい高周波数にすると、図12に示すように、内部静電容量Ciや浮遊静電容量Cfの影響がさらに顕著に増大し、座標位置による測定静電容量Cmesの差が大きくなるため、測定静電容量Cmesに基づきタッチパネル基板Pの良否を判定することが難しくなる。
【0124】
図13は、図12に示す測定静電容量Cmesを、ステップS10の処理により補正した結果得られた静電容量Cを示す説明図である。図13に示すように、ステップS10,S11の処理により、内部静電容量Ciや浮遊静電容量Cfの影響が低減され、座標位置による静電容量Cの差が低減できることが確認できた。
【0125】
図14は、タッチパネル基板Pの各座標位置に対応する抵抗値Rの理論値を表すグラフである。抵抗値Rは、座標位置に応じて抵抗測定経路のX電極X及びY電極Yの長さが異なることに起因して、座標位置に応じて異なる値となる。しかしながら、その値は図14に示すように、座標位置に対して略直線的に変化する。
【0126】
図15図16は、タッチパネル基板Pの各座標位置に対応する測定抵抗値Rmesと、測定周波数fとの関係を示すグラフである。図15図16の、底面が座標位置を示し、高さが測定抵抗値Rmesを示している。図15は、周波数fが読取周波数f0より低い低周波数の場合を示し、図16は、図1に示す基板検査装置1の例を示しており、周波数fが読取周波数f0と略等しい高周波数の場合の例を示している。
【0127】
周波数fが読取周波数f0より低い低周波数の場合、図15に示すように、座標位置に対する測定抵抗値Rmesのバラツキが増大するのに対し、周波数fが読取周波数f0と略等しい高周波数の場合、図16に示すように、測定抵抗値Rmesのバラツキは、図14に示す理論値と略同程度になることが確認できた。
【0128】
図17は、タッチパネル基板PのX電極X2に不良Fが生じた場合を説明するための説明図である。図17では、不良Fは、座標位置(X2,Y1)及び座標位置(X2,Y2)に生じている。図18は、図17に示すタッチパネル基板Pについての各座標位置に対応する差分Dr(m,n)(但し、m=1,2,3,4,5,6,7、n=1,2,3,4,5)を示すグラフである。図18の底面が座標位置を示し、高さが差分Drを示している。
【0129】
図18に示すように、不良Fが生じている座標位置(X2,Y1)及び座標位置(X2,Y2)で抵抗値の大きなピークが確認でき、これにより、不良Fの発生箇所が特定できることが確認できた。
【0130】
図19は、図1に示す基板検査装置1の変形例を示す説明図である。図1に示す基板検査装置1では、電流計3はX電極Xの一端にのみ接続され、交流電源2はY電極Yの一端にのみ接続される例を示した。しかしながら、図19に示すように、電流計3がX電極Xの両端に接続され、交流電源2がY電極Yの両端に接続される構成としてもよい。この場合、図20に示すように、タッチパネル基板Pについての各座標位置に対応する測定抵抗値Rmesのグラフは、図14に示すようなフラットな形状にならず、山形となる。この場合であっても、図6図9に示すステップS1〜S211の処理により、タッチパネル基板Pを検査することができる。
【0131】
なお、算出部42は、例えば図16に示すグラフで測定抵抗値Rmesの代わりに抵抗値Rを表したグラフを、表示部5で表示させてもよい。具体的には、X電極X1〜X7に対応するX座標と、Y電極Y1〜Y5に対応するY座標と、そのX−Y座標に対応する座標位置(Xm,Yn)の抵抗値R(m,n)とを、例えば図16に示すグラフのように三次元的なグラフで表した画像を表示部5で表示させてもよい。
【0132】
また、算出部42は、例えば図13に示すグラフを表示部5で表示させてもよい。具体的には、X電極X1〜X7に対応するX座標と、Y電極Y1〜Y5に対応するY座標と、そのX−Y座標に対応する座標位置(Xm,Yn)の静電容量C(m,n)とを、例えば図13に示すグラフのように三次元的に表した画像を表示部5で表示させてもよい。
【0133】
また、図18に示すように、X電極X1〜X7に対応するX座標と、Y電極Y1〜Y5に対応するY座標と、そのX−Y座標に対応する座標位置(Xm,Yn)の差分Dr(m,n)とを、三次元的に表した画像を表示部5で表示させてもよい。
【0134】
また、図18に示す差分Dr(m,n)の代わりに差分Dc(m,n)を表示してもよい。すなわち、X電極X1〜X7に対応するX座標と、Y電極Y1〜Y5に対応するY座標と、そのX−Y座標に対応する座標位置(Xm,Yn)の差分Dc(m,n)とを、三次元的に表した画像を表示部5で表示させてもよい。
【符号の説明】
【0135】
1 基板検査装置
2 交流電源(交流電圧出力部)
3 電流計(電流検出部)
4 制御部
5 表示部
6 操作部
41 測定処理部
42 算出部
43 内部パラメータ取得処理部
44 浮遊パラメータ取得処理部(浮遊容量取得処理部)
45 内部パラメータ記憶部
46 浮遊パラメータ記憶部(浮遊容量記憶部)
47 基準パラメータ記憶部
48 判定値記憶部
49 判定部
C 静電容量
Cf 浮遊静電容量
Ci 内部静電容量
Cj 容量判定値
Cmes 測定静電容量
Cref 基準静電容量
Dc 差分
Dcj 差分判定値
Dr 差分
Drj 差分判定値
f 周波数
f0 読取周波数
I 電流値
P タッチパネル基板(基板)
Pref 基準基板
Px,Px1〜Px7 基板端子(第1基板端子)
Py,Py1〜Py5 基板端子(第2基板端子)
R 抵抗値
Rf 浮遊抵抗値
Ri 内部抵抗値
Rj 抵抗判定値
Rmes 測定抵抗値
Rref 基準抵抗値
SA 交流信号
SW1,SW2 切替スイッチ
Tx1〜Tx7 接続端子(第1接続端子)
Ty1〜Ty5 接続端子(第2接続端子)
V 出力電圧
X1〜X7 電極(第1電極)
Y1〜Y5 電極(第2電極)
Z 測定インピーダンス
θ 位相差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20