【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
YAG系蛍光体の製造例
酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ガドリニウム(Gd
2O
3)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)を実施例及び比較例の組成比となるように、それぞれ計量して原料混合物とし、フラックスとしてフッ化バリウム(BaF
2)を添加し、原料混合物及びフラックスをボールミルで混合した。この混合物をアルミナルツボに入れ、還元性雰囲気下、1400℃から1600℃の範囲で10時間焼成して焼成物を得た。得られた焼成物を、純水中に分散させ、ふるいを介して種々の振動を加えながら溶媒流を流して、湿式ふるいを通過させ、次いで脱水、乾燥し、乾式ふるいを通過させて分級し、目的の組成を有する実施例1から19及び比較例1から4で用いる各蛍光体を準備した。各蛍光体の組成及び平均粒径は、以下の方法によって測定した。結果を表1に示す。
【0051】
平均粒径
得られた蛍光体について、レーザー回折式粒度分布測定装置(製品名:MASTER SIZER(マスターサイザー)3000、MALVERN(マルバーン)社製)により測定した小径側からの体積累積頻度が50%に達する体積平均粒径(メジアン径)を平均粒径粒径とした。
【0052】
組成分析
得られた蛍光体について、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分析装置)(製品名:Perkin Elmer(パーキンエルマー)社製)により、YAG系蛍光体を構成する酸素を除く各元素(Y、Gd、Ce、Al、O)の質量百分率(質量%)を測定し、各元素の質量百分率の値から各元素のモル比を算出した。表1に示すGdのモル比(変数a)及びCeのモル比(変数b)は、測定されたAlのモル比を5とし、このAlのモル比5を基準として算出した値である。
【0053】
実施例1
YAG系蛍光体の製造例によって得られた平均粒径5μmの(Y
0.921Gd
0.070Ce
0.009)
3Al
5O
12で表されるYAG系蛍光体を25質量部と、平均粒径0.40μmのαアルミナ粒子(品名:AHP200、日本軽金属株式会社製、アルミナ純度99.5質量%)75質量部とを秤量し、乾式ボールミルで混合し、成形体用の混合粉体を準備した。αアルミナ粒子のアルミナ純度は、後述するアルミナ純度の測定方法と同様の方法により測定した。混合粉体から混合媒体に用いたボールを除いた後、混合粉体を金型に充填し、19.6MPa(200kgf/cm
2)の圧力で直径20mm、厚さ20mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を包装容器に入れて真空包装し、冷間静水等方加圧装置(KOBELCO社製)により176MPaでCIP処理を行った。得られた成形体を焼成炉(丸祥電器社製)、大気雰囲気(酸素濃度:約20体積%)で、1700℃の温度で6時間保持して、一次焼成を行い、第一の焼結体を得た。得られた第一の焼結体を、HIP装置(KOBELCO社製)を用いて、圧力媒体に窒素ガスを用いて窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)のもとで、1750℃、198MPa、2時間、HIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体を得て、この第二の焼結体を波長変換部材とした。
【0054】
実施例2
YAG系蛍光体を40質量部と、αアルミナ粒子を60質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、実施例1と同様にして、波長変換部材を得た。
【0055】
実施例3
YAG系蛍光体を50質量部と、αアルミナ粒子を50質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、実施例1と同様にして波長変換部材を得た。
【0056】
実施例4
YAG系蛍光体の製造例によって得られた平均粒径5μmの(Y
0.862Gd
0.130Ce
0.008)
3Al
5O
12で表されるYAG系蛍光体を15質量部と、平均粒径0.40μmのαアルミナ粒子(品名:AHP200、日本軽金属株式会社製、アルミナ純度99.5質量%)を85質量部とを秤量し、乾式ボールミルで混合し、成形体用の混合粉体を準備した。混合粉体から混合媒体に用いたボールを除いた後、混合粉体を金型に充填し、19.6MPa(200kgf/cm
2)の圧力で直径20mm、厚さ20mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を包装容器に入れて真空包装し、冷間静水等方加圧装置(KOBELCO社製)により176MPaでCIP処理を行った。得られた成形体を焼成炉(丸祥電器社製)、大気雰囲気(酸素濃度:約20体積%)で、1700℃の温度で6時間保持して、一次焼成を行い、第一の焼結体を得た。
得られた第一の焼結体を、HIP装置(KOBELCO社製)を用いて、圧力媒体に窒素ガスを用いて窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)のもとで、1750℃、198MPa、2時間、HIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体を得て、この第二の焼結体を波長変換部材とした。
【0057】
実施例5
YAG系蛍光体を20質量部と、αアルミナ粒子を80質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、実施例4と同様にして波長変換部材を得た。
【0058】
実施例6
YAG系蛍光体の製造例によって得られた平均粒径5μmの(Y
0.746Gd
0.250Ce
0.004)
3Al
5O
12で表されるYAG系蛍光体を25質量部と、平均粒径0.40μmのαアルミナ粒子(品名:AHP200、日本軽金属株式会社製、アルミナ純度99.5質量%)を75質量部とを秤量し、乾式ボールミルで混合し、成形体用の混合粉体を準備した。混合粉体から混合媒体に用いたボールを除いた後、混合粉体を金型に充填し、19.6MPa(200kgf/cm
2)の圧力で直径20mm、厚さ20mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を包装容器に入れて真空包装し、冷間静水等方加圧装置(KOBELCO社製)により176MPaでCIP処理を行った。得られた成形体を焼成炉(丸祥電器社製)、大気雰囲気(酸素濃度:約20体積%)で、1700℃の温度で6時間保持して、一次焼成を行い、第一の焼結体を得た。
得られた第一の焼結体を、HIP装置(KOBELCO社製)を用いて、圧力媒体に窒素ガスを用いて窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)のもとで、1750℃、198MPa、2時間、HIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体を得て、この第二の焼結体を波長変換部材とした
【0059】
実施例7
YAG系蛍光体の製造例によって得られた平均粒径5μmの(Y
0.927Gd
0.070Ce
0.003)
3Al
5O
12で表されるYAG系蛍光体を用いたこと以外は、実施例6と同様にして波長変換部材を得た。
【0060】
実施例8
YAG系蛍光体の製造例によって得られた平均粒径5μmの(Y
0.897Gd
0.100Ce
0.003)
3Al
5O
12で表されるYAG系蛍光体を用いたこと以外は、実施例6と同様にして波長変換部材を得た。
【0061】
実施例9
YAG系蛍光体の製造例によって得られた平均粒径5μmの(Y
0.867Gd
0.130Ce
0.003)
3Al
5O
12で表されるYAG系蛍光体を用いたこ以外は、実施例6と同様にして波長変換部材を得た。
【0062】
実施例10
YAG系蛍光体の製造例によって得られた平均粒径5μmの(Y
0.797Gd
0.200Ce
0.003)
3Al
5O
12で表されるYAG系蛍光体を用いたこと以外は、実施例6と同様にして波長変換部材を得た。
【0063】
実施例11
YAG系蛍光体の製造例によって得られた平均粒径12μmの(Y
0.922Gd
0.070Ce
0.008)
3Al
5O
12で表されるYAG系蛍光体を25質量部と、平均粒径0.40μmのαアルミナ粒子(品名:AHP200、日本軽金属株式会社製、アルミナ純度99.5質量%)を75質量部とを秤量し、乾式ボールミルで混合し、成形体用の混合粉体を準備した。混合粉体から混合媒体に用いたボール除いた後、混合粉体を金型に充填し、19.6MPa(200kgf/cm
2)の圧力で直径20mm、厚さ20mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を包装容器に入れて真空包装し、冷間静水等方加圧装置(KOBELCO社製)により176MPaでCIP処理を行った。得られた成形体を焼成炉(丸祥電器社製)、大気雰囲気(酸素濃度:約20体積%)で、1700℃の温度で6時間保持して、一次焼成を行い、第一の焼結体を得た。
得られた第一の焼結体を、HIP装置(KOBELCO社製)を用いて、圧力媒体に窒素ガスを用いて窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)のもとで、1750℃、198MPa、2時間、HIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体を得て、この第二の焼結体を波長変換部材とした。
【0064】
実施例12
YAG系蛍光体を30質量部と、αアルミナ粒子を70質量部とを用いた混合粉体を準備したこと以外は、実施例11と同様にして波長変換部材を得た。
【0065】
実施例13
YAG系蛍光体を40質量部と、αアルミナ粒子を60質量部とを用いた混合粉体を準備したこと以外は、実施例11と同様にして波長変換部材を得た。
【0066】
実施例14
YAG系蛍光体を50質量部と、αアルミナ粒子を50質量部とを用いた混合粉体を準備したこと以外は、実施例11と同様にして波長変換部材を得た。
【0067】
実施例15
YAG系蛍光体の製造例でよって得られた平均粒径12μmの(Y
0.921Gd
0.070Ce
0.009)
3Al
5O
12で表されるYAG系蛍光体を用いたこと以外は、実施例11と同様にして波長変換材料を得た。
【0068】
実施例16
YAG系蛍光体を5質量部と、αアルミナ粒子を95質量部とを用いた混合粉体を準備したこと以外は、実施例11と同様にして波長変換部材を得た。
【0069】
実施例17
YAG系蛍光体を7質量部と、αアルミナ粒子を93質量部とを用いた混合粉体を準備したこと以外は、実施例11と同様にして波長変換部材を得た。
【0070】
実施例18
YAG系蛍光体を9質量部と、αアルミナ粒子を91質量部とを用いた混合粉体を準備したこと以外は、実施例11と同様にして波長変換部材を得た。
【0071】
実施例19
YAG系蛍光体を15質量部と、αアルミナ粒子を85質量部とを用いた混合粉体を準備したこと以外は、実施例11と同様にして波長変換部材を得た。
【0072】
比較例1
平均粒径5μmの(Y
0.976Ce
0.024)
3Al
5O
12で表されるYAG系蛍光体7質量部と、平均粒径0.40μmのαアルミナ粒子(品名:AHP200、日本軽金属株式会社製、アルミナ純度99.5質量%)93質量部とを秤量し、乾式ボールミルで混合して、成形体用の混合粉体を準備した。混合粉体から混合媒体に用いたボールを除いた後、混合粉体を金型に充填し、19.6MPa(200kgf/cm
2)の圧力で直径20mm、厚さ20mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を包装容器に入れて真空包装し、冷間静水等方加圧装置(KOBELCO社製)により176MPaでCIP処理を行った。得られた成形体を焼成炉(丸祥電器社製)、大気雰囲気(酸素濃度:約20体積%)で、1700℃の温度で6時間保持して、一次焼成を行い、第一の焼結体を得た。
得られた第一の焼結体を、HIP装置(KOBELCO社製)を用いて、圧力媒体に窒素ガスを用いて窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)のもとで、1750℃、198MPa、2時間、HIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体を得て、この第二の焼結体を波長変換部材とした。
【0073】
比較例2
YAG系蛍光体を11質量部と、αアルミナ粒子を89質量部とを用いた混合粉体を準備したこと以外は、比較例1と同様にして波長変換部材を得た。
【0074】
比較例3
YAG系蛍光体を15質量部と、αアルミナ粒子を85質量部とを用いた混合粉体を準備したこと以外は、比較例1と同様にして波長変換部材を得た。
【0075】
比較例4
YAG系蛍光体を20質量部と、αアルミナ粒子を80質量部とを用いた混合粉体を準備したこと以外は、比較例1と同様にして波長変換部材を得た。
【0076】
第一の焼結体の相対密度の測定
実施例1から19及び比較例1から4において、各第一の焼結体の相対密度を測定した。結果を表1に示す。
相対密度は下記式(1)により算出した。
相対密度(%)=(第一の焼結体の見掛け密度÷第一の焼結体の真密度)×100 (1)
【0077】
第一の焼結体の真密度は、下記式(2)より算出した。実施例及び比較例で用いたαアルミナ粒子の真密度は3.98g/cm
3とし、実施例1〜3、実施例7、実施例11〜19を4.69g/cm
3、実施例4〜5、実施例9を4.77g/cm
3、実施例6を4.92g/cm
3、実施例8を4.73g/cm
3、実施例10を4.86g/cm
3、比較例1〜4を4.60g/cm
3として算出した。
第一の焼結体の真密度=(YAG系蛍光体とアルミナ粒子の合計量に対するYAG系蛍光体の質量割合×YAG系蛍光体の真密度)+(YAG系蛍光体とアルミナ粒子の合計量に対するアルミナ粒子の質量割合×アルミナ粒子の真密度) (2)
【0078】
第一の焼結体の見掛け密度は、下記式(3)により算出した。
第一の焼結体の見掛け密度=第一の焼結体の質量÷第一の焼結体のアルキメデス法により求められた体積 (3)
【0079】
波長変換部材の相対密度の測定
実施例1から19及び比較例1から4の波長変換部材の相対密度を測定した。結果を表1に示す。
相対密度は下記式(4)により算出した。
相対密度(%)=(波長変換部材の見掛け密度÷波長変換部材の真密度)×100 (4)
【0080】
波長変換部材の真密度の算出方法は、YAG系蛍光体とαアルミナ粒子の合計量に対するアルミナ粒子の質量割合にアルミナ粒子の真密度を乗じて得られた値と、YAG系蛍光体とαアルミナ粒子の合計量に対するYAG系蛍光体粒子の質量割合にYAG系蛍光体粒子の真密度を乗じて得られた値との和である。各YAG系蛍光体の真密度及びαアルミナ粒子の真密度は、第一の焼結体の真密度の算出方法で用いた数値と同じ数値を用いた。
【0081】
波長変換部材の見掛け密度は、下記式(5)により算出した。
波長変換部材の見掛け密度=波長変換部材の質量÷波長変換部材のアルキメデス法により求められた体積 (5)
【0082】
相対発光強度の測定
実施例1から19及び比較例1から4の波長変換部材を、ワイヤーソーを用いて厚さ300μmに切断し、サンプルを形成した。発光ピーク波長が455nmである窒化物半導体からなるLEDチップを光源として用いて、この光源から波長変換部材のサンプルに光を照射し、光源からの光を受けて実施例1から19及び比較例1から4の各波長変換部材のサンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光ピーク波長の発光強度を、分光蛍光光度計(日亜化学工業株式会社製)を用いて測定した。比較例1の波長変換部材のサンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光ピーク波長の発光強度を100%として、各サンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光ピーク波長の発光強度を相対発光強度(%)として表した。結果を表1に示す。
【0083】
光変換効率の測定
実施例1から19及び比較例1から4の波長変換部材を、ワイヤーソーを用いて厚さ300μmに切断し、サンプルを形成した。発光ピーク波長が455nmである窒化物半導体からなるLEDチップを光源として用いて、この光源から波長変換部材のサンプルに光を照射し、430nm以上480nm以下の波長範囲にある波長変換部材のサンプルが吸収する光子量と、490nm以上800nm以下の波長範囲にある波長変換部材のサンプルから放出される光子量とを以下の測定条件で、積分球を用いて測定した。430nm以上480nm以下の波長範囲にある波長変換部材のサンプルが吸収した光子量に対する490nm以上800nm以下の波長範囲にある波長変換部材のサンプルから放出される光子量の割合を百分率で表し、光変換効率(%)とした。結果を表1に示す。
光変換効率の測定条件
励起光源電流値:800mA
励起光源駆動方式:パルス(周期:5msec、Duty:1%)
検出器:マルチチャンネル分光器
【0084】
SEM写真
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、実施例1及び実施例11の波長変換部材の断面のSEM写真を得た。
図3は、実施例1の波長変換部材の断面のSEM写真である。
図4は、実施例11の波長変換部材の断面のSEM写真である。
【0085】
外観写真
実施例1の外観写真を得た。
図5は、実施例1の波長変換部材の外観写真である。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示すように、式(I)で表される組成を有するYAG系蛍光体とアルミナ純度99.0質量%以上のアルミナ粒子とを含む成形体を準備し、一次焼成及び二次焼成して得られた実施例1から19の波長変換部材は、式(I)で表される組成を有していないYAG系蛍光体とアルミナ粒子とを含む成形体を準備し、一次焼成及び二次焼成して得られた比較例1から4の波長変換部材よりも高い相対発光強度を有し、比較例1よりも高い光変換効率を有していた。
【0088】
表1に示すように、実施例14の波長変換部材は、YAG系蛍光体の平均粒径が10μmを超えて大きく、成形体を構成する混合粉体のうち、YAG系蛍光体の含有量が50質量%と大きくなると、相対発光強度も高く、光変換効率も高いものの、相対
密度が97%以下となった。
【0089】
表1に示すように、実施例16から18の波長変換部材は、YAG系蛍光体の平均粒径が10μmを超えて大きい場合には、YAG系蛍光体とアルミナ粒子の合計量100質量%に対してYAG系蛍光体の含有量が5質量%以上10質量%以下と少なくしても、比較例1又は比較例2の波長変換部材よりも相対発光強度が120%以上と高くなった。
【0090】
図3のSEM写真に示すように、実施例1の波長変換部材は、焼結体のマトリックスを構成する溶融したアルミナ2中に、アルミナのマトリックスとは粒界によって区別されたYAG系蛍光体粒子1が存在し、マトリックスを構成するアルミナ2とYAG系蛍光体粒子1が一体となってセラミックスの波長変換部材が形成されていた。
【0091】
図4のSEM写真に示すように、平均粒径が12μmと大きいYAG系蛍光体粒子1を含む実施例11の波長変換部材は、粒界によってマトリックスを構成するアルミナ2とははっきり区別されたYAG系蛍光体粒子1を確認することができる。
図示を省略したが、実施例1から19の波長変換部材は、予め製造したYAG系蛍光体粒子とアルミナ粒子とを混合した混合粉体を一次焼成及び二次焼成して波長変換部材とするため、波長変換部材中のYAG系蛍光体の特性が損なわれることなく、高い発光強度と、高い光変換効率とを有する波長変換部材が得られる。
【0092】
図5の外観写真に示すように、実施例1の波長変換部材は、全体的に明るく、YAG系蛍光体の本来の体色を維持しており、一次焼成及びHIP処理による二次焼成によって変質していないことが確認できた。
【0093】
表1の比較例1から4に示すように、式(I)で表される組成を有していないYAG系蛍光体とアルミナ粒子とを含む成形体を一次焼成及び二次焼成して得られた波長変換部材は、成形体を構成する混合粉体中のYAG系蛍光体の含有量を20質量%まで増やしても、YAG系蛍光体の含有量20質量%と同じである実施例5よりも相対発光強度が低く、また、光変換効率も低くなった。
【0094】
次に、実施例21から29、32、34から36と、比較例31、33について説明する。
【0095】
製造例1−1から製造例1−3
平均粒径20μmのY
3Al
5O
12:Ce((Y
0.978Ce
0.022)
3Al
5O
12とも表すことができる。)で表されるYAG系蛍光体20質量部と、平均粒径0.40μmのαアルミナ粒子(品名:AHP200、日本軽金属株式会社製)80質量部とを秤量し、乾式ボールミルで混合した。混合媒体に用いたボールを混合粉体から除いた後、混合粉体を金型に充填し、19.6MPa(200kgf/cm
2)の圧力で直径20mm、厚さ20mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を包装容器に入れて真空包装し、冷間静水等方加圧装置(KOBELCO社製)により176MPaでCIP処理を行った。得られた成形体を焼成炉(ADVANTEC社製)、大気雰囲気(酸素濃度:約20体積%)で、1700℃、1750℃、1780℃の各温度で6時間保持して、各温度で一次焼成を行い、製造例1−1、製造例1−2、製造例1−3の各第一の焼結体を得た。
【0096】
製造例2−1から製造例2−3
平均粒径0.46μmのαアルミナ粒子(品名:AKP−20、住友化学株式会社製)を用いたこと以外は、製造例1−1から製造例1−3と同様にして製造例2−1から製造例2−3の各第一の焼結体を得た。
【0097】
製造例3−1から製造例3−3
平均粒径1.00μmのαアルミナ粒子(品名:RA−40、岩谷産業株式会社製)を用いたこと以外は、製造例1−1から製造例1−3と同様にして製造例3−1から製造例3−3の各第一の焼結体を得た。
【0098】
製造例4−1から製造例4−3
平均粒径1.30μmのαアルミナ粒子(品名:AHP300、日本軽金属株式会社製)を用いたこと以外は、製造例1−1から製造例1−3と同様にして製造例4−1から製造例4−3の各第一の焼結体を得た。
【0099】
製造例5−1から製造例5−3
平均粒径0.51μmの活性アルミナ粒子(γアルミナ)(品名:RG−40、岩谷産業株式会社製)を用いたこと以外は、製造例1−1から製造例1−3と同様にして製造例5−1から製造例5−3の各第一の焼結体を得た。
製造例6
得られた成形体を焼成炉(ADVANTEC社製)、大気雰囲気(酸素濃度:約20体積%)で、1650℃の温度で6時間保持して、一次焼成を行う他は、製造例1−1と同様にして、製造例6の第一の焼結体を得た。
【0100】
第一の焼結体の相対密度の測定
製造例1−1から製造例5−3および製造例6の各第一の焼結体の相対密度を測定した。結果を表2に示す。
相対密度は下記式(1)により算出した。
相対密度(%)=(第一の焼結体の見掛け密度÷第一の焼結体の真密度)×100 (1)
第一の焼結体の真密度は、下記式(2)より算出した。実施例及び比較例で用いたαアルミナ粒子の真密度は3.98g/cm
3とし、各YAG系蛍光体の真密度は、4.60g/cm
3として算出した。各製造例における第一の焼結体の真密度は、表2に示す。
第一の焼結体の真密度=(YAG系蛍光体とアルミナ粒子の合計量に対するYAG系蛍光体の質量割合×YAG系蛍光体の真密度)+(YAG系蛍光体とアルミナ粒子の合計量に対するアルミナ粒子の質量割合×アルミナ粒子の真密度) (2)
第一の焼結体の見掛け密度は、下記式(3)により算出した。
第一の焼結体の見掛け密度=第一の焼結体の質量÷第一の焼結体のアルキメデス法により求められた体積 (3)
【0101】
アルミナ純度の測定
アルミナ粒子の質量を測定した後、各アルミナ粒子を800℃で1時間、大気雰囲気で焼成し、アルミナ粒子に付着している有機分やアルミナ粒子が吸湿している水分を除去した。焼成後のアルミナ粒子の質量を測定し、焼成後のアルミナ粒子の質量を焼成前のアルミナ粒子の質量で除すことによって、アルミナ純度を以下の式(6)により算出した。各アルミナ粒子のアルミナ純度は、表2に示す。
アルミナ純度(質量%)=(焼成後のアルミナ粒子の質量÷焼成前のアルミナ粒子の質量)×100 (6)
【0102】
【表2】
【0103】
表2に示すように、アルミナ純度が99.0質量%以上であり、平均粒径が0.2μm以上1.3μm以下のアルミナ粒子は、YAG系蛍光体粒子と共に、相対密度が95%以上の高い密度を有する第一の焼結体を形成することができる。アルミナ粒子の平均粒径が0.2μm以上1.0μm以下であると、一次焼成の温度が1700℃以上1750℃以下の範囲であれば、相対密度が95.9%以上のより高い密度を有する第一の焼結体を形成することができる。アルミナ純度が99.0質量%未満のアルミナ粒子を用いた場合は、製造例5−1から製造例5−3に示すように第一の焼結体の相対密度が95%未満と低下した。
【0104】
次に、製造例1−1で得られた第一の焼結体を用いて製造した波長変換部材の実施例21から29、32、34から36および37と、HIP処理及びアニーリングを行っていない比較例31と、アルミナ粒子の代わりにガラス粒子を用いた比較例33について説明する。
【0105】
実施例21
製造例1−1で得られた第一の焼結体を、HIP装置(KOBELCO社製)を用いて、圧力媒体に窒素ガスを用いて窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)のもとで、1700℃、198MPa、2時間、HIP処理を行い、第二の焼結体を得た。得られた第二の焼結体を、大気焼成炉(丸祥電器社製)を用いて、大気雰囲気(酸素:約20体積%)で、1500℃、5時間、アニーリングし、波長変換部材を得た。
【0106】
実施例22
アニーリングを1600℃で行ったこと以外は、実施例21と同様にして、波長変換部材を得た。
【0107】
実施例23
アニーリングを1700℃で行ったこと以外は、実施例21と同様にして、波長変換部材を得た。
【0108】
実施例24
HIP処理を1740℃で行い、アニーリングを1600℃で行ったこと以外は、実施例21と同様にして、波長変換部材を得た。
【0109】
実施例25
HIP処理を1750℃で行い、アニーリングを1600℃で行ったこと以外は、実施例21と同様にして、波長変換部材を得た。
【0110】
実施例26
HIP処理を1760℃で行い、アニーリングを1600℃で行ったこと以外は、実施例21と同様にして、波長変換部材を得た。
【0111】
実施例27
HIP処理を1770℃で行い、アニーリングを1600℃で行ったこと以外は、実施例21と同様にして、波長変換部材を得た。
【0112】
実施例28
HIP処理を1780℃で行い、アニーリングを1600℃で行ったこと以外は、実施例21と同様にして、波長変換部材を得た。
【0113】
実施例29
HIP処理を1790℃で行い、アニーリングを1600℃で行ったこと以外は、実施例31と同様にして、波長変換部材を得た。
【0114】
比較例31
製造例1−1で得られた第一の焼結体を、HIP処理及びアニーリングを行うことなく、比較例31の波長変換部材とした。
【0115】
実施例32
製造例1−1で得られた第一の焼結体を、HIP装置(品名:KOBELCO社製)を用いて、圧力媒体に窒素ガスを用いて窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)のもとで、1700℃、198MPa、2時間、HIP処理を行い、第二の焼結体を得た。第二の焼結体を、アニーリングを行うことなく、実施例32の波長変換部材とした。
【0116】
比較例33
平均粒径20μmのY
3Al
5O
12:Ceで表されるYAG系蛍光体11質量部と、硼珪酸ガラス粉末(松波硝子工業社製) 89質量部とを秤量し、乾式ボールミルで混合した。混合媒体に用いたボールを混合粉体から除いた後、混合粉体を金型に充填し、19.6MPa(200kgf/cm
2)の圧力で直径20mm、厚さ20mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を包装容器に入れて真空包装し、冷間静水等方加圧装置(KOBELCO社製)により176MPaでCIP処理を行った。得られた成形体を焼成炉(ADVANTEC社製)、大気雰囲(酸素濃度:約20体積%)で、800℃の温度で6時間保持して、一次焼成を行い、焼結体を得ようとしたが、焼成炉内で溶融して取り出すことができなかった。
【0117】
実施例34
アニーリングを、酸素濃度が1体積%未満の還元雰囲気のもとで、1400℃、5時間行ったこと以外は、実施例21と同様にして、波長変換部材を得た。
【0118】
実施例35
アニーリングを1500℃で行ったこと以外は、実施例34と同様にして、波長変換部材を得た。
【0119】
実施例36
アニーリングを1600℃で行ったこと以外は、実施例34と同様にして、波長変換部材を得た。
【0120】
実施例37
製造例6で得られた第一の焼結体を、HIP装置(品名:KOBELCO社製)を用いて、圧力媒体に窒素ガスを用いて窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)のもとで、1650℃、198MPa、2時間、HIP処理を行い、第二の焼結体を得た。第二の焼結体を、アニーリングを行うことなく、実施例37の波長変換部材とした。
実施例21から29、32、34から36、37及び比較例31の波長変換部材の相対密度、相対発光強度、光変換効率は、実施例1から19及び比較例1から4の波長変換部材を測定した方法と同様の方法を用いて測定した。
波長変換部材の真密度の算出方法は、YAG系蛍光体とαアルミナ粒子の合計量に対するアルミナ粒子の質量割合にアルミナ粒子の真密度を乗じて得られた値と、YAG系蛍光体とαアルミナ粒子の合計量に対するYAG系蛍光体粒子の質量割合にYAG系蛍光体粒子の真密度を乗じて得られた値との和である。αアルミナ粒子の真密度は3.98g/cm
3とし、各YAG系蛍光体の真密度は、4.60g/cm
3として算出した。
相対発光強度は、比較例31の波長変換部材のサンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光ピーク波長の発光強度を100%として、各サンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光ピーク波長の発光強度を相対発光強度(%)として表した。結果を表3に示す。
【0121】
SEM写真
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、実施例21及び比較例31の波長変換部材の断面のSEM写真を得た。
図6は、実施例21の波長変換部材の断面のSEM写真である。
図7は、比較例31の波長変換部材の断面のSEM写真である。
【0122】
外観写真
比較例31、実施例32、実施例21、実施例34の外観写真を得た。
図8は、比較例31の波長変換部材の外観写真である。
図9は、実施例32の波長変換部材の外観写真である。
図10は、実施例21の波長変換部材の外観写真である。
図11は実施例34の波長変換部材の外観写真である。
【0123】
【表3】
【0124】
表3に示すように、実施例21から29、32、34から36および37の波長変換部材は、比較例31の波長変換部材よりも相対密度が高く、相対発光強度及び光変換効率が高くなった。特に、一次焼成の温度が1600℃以上1780℃以下であり、かつ、二次焼成の温度が1600℃以上1780℃以下である、実施例32および37の波長変換部材は、相対発光強度及び光変換効率が高くなった。二次焼成の温度が1700℃以上1780℃以下であり、かつ、アニーリングの温度が1400℃以上1700℃以下である、実施例21から28、34から36の波長変換部材は、相対発光強度及び光変換効率が高くなった。
【0125】
一方、二次焼成及びアニーリングを行っていない比較例31の波長変換部材は、実施例21から29、32、34から36および37の波長変換部材と比べて、相対密度が低く、光変換効率が低かった。
【0126】
実施例32の波長変換部材は、HIP処理により二次焼成した後、アニーリングを行っておらず、HIP処理による二次焼成によって、波長変換部材の外観は、表面が全体的に暗く黒っぽい色となっていたが、比較例31の波長変換部材よりも、相対発光郷土及び光変換効率は高くなった。
【0127】
比較例33は、二次焼成でガラスが溶融して形状が変化し、焼結体を容器から取り出せず、焼結体の特性が得られなかった。また、HIP処理を1800℃で行った場合も、焼結体が溶融し、容器から取り出せない状態であった。
【0128】
実施例34から36の波長変換部材は、HIP処理による二次焼成後、さらに還元雰囲気のもとでアニーリングを行っており、波長変換部材の外観は、表面が全体的に暗く黒っぽい色となっていたが、比較例31の波長変換部材よりも、相対発光強度及び光変換効率は高くなった。実施例34から36の波長変換部材の外観が暗く黒っぽい色であるのは、HIP処理によるYAG系蛍光体の酸素組成比の変化がアニーリングを行っても修復されなかったためであると推測される。
【0129】
図6のSEM写真に示すように、実施例21の波長変換部材は、成形体を一次焼成した後、HIP処理により二次焼成しているため、YAG系蛍光体粒子1と焼結体のマトリックスを構成しているアルミナ2との間の空隙3が少なくなり、また、焼結体のマトリックスを構成しているアルミナ2中に形成されている微小な空隙3も少ないことが確認できた。
【0130】
図6に示すように、実施例21の波長変換部材は、二次焼成工程において、アルミナ粒子が溶融してマトリックスを構成したアルミナ2中に、アルミナのマトリックスとは粒界によって区別されたYAG系蛍光体粒子1が存在し、マトリックスを構成するアルミナ2とYAG系蛍光体粒子1が一体となってセラミックスの波長変換部材が形成されていた。波長変換部材中のYAG系蛍光体粒子は、一次焼成の前の成形体準備工程において、YAG系蛍光体粒子の原料とアルミナ粒子を混合して成形体とするのではなく、YAG系蛍光体粒子とアルミナ粒子とを混合して成形体とするため、YAG系蛍光体粒子1は、波長変換部材の断面写真において、粒子が溶融して一体となってマトリックスを構成するアルミナ2とは粒界によって区別することができた。
図6に示すように、波長変換部材中のYAG系蛍光体粒子1は、YAG系蛍光体粒子の個々の粒子の形状を保ったまま、マトリックスを構成するアルミナ2中に点在していることが確認できた。
【0131】
一方、
図7のSEM写真に示すように、比較例31の波長変換部材は、成形体を一次焼成した後、HIP処理による二次焼成を行っていないため、YAG系蛍光体粒子1と、焼結体のマトリックスを構成しているアルミナ2との間に比較的大きな空隙3が形成されており、焼結体のマトリックスを構成しているアルミナ2中にも微小な空隙3が形成されていることが確認できた。
【0132】
図8に示すように、比較例31の波長変換部材は、成形体を一次焼成したものであり、一次焼成後の第一の焼結体は、全体的に明るく、YAG系蛍光体の本来の体色を維持しており、第一の焼結体に含まれるYAG系蛍光体粒子は一次焼成によって変質していないことが確認できた。
【0133】
図9に示すように、実施例32の波長変換部材は、第一の焼結体をHIP処理により二次焼成した第二の焼結体であり、この第二の焼結体は、表面が全体的に暗く黒っぽい色となっており、第二の焼結体に含まれるYAG系蛍光体粒子はHIP処理による二次焼成によって変質する場合があった。
【0134】
図10に示すように、実施例21の波長変換部材は、HIP処理による二次焼成後、さらに酸素含有雰囲気のもとでアニーリングを行うことにより、YAG系蛍光体の本来の体色に戻すことができ、波長変換部材は全体的に明るい色となっていた。
【0135】
図11に示すように、実施例34の波長変換部材は、HIP処理による二次焼成後、さらに還元雰囲気のもとでアニーリングを行ったため、全体的に暗く黒っぽい色のままであった。
【0136】
上述した実施例32は、表3に示されるように、波長変換部材全体としては相対発光強度及び光変換効率が高いが、
図9に示されるように、波長変換部材の一部に暗く黒っぽい色の部分が存在する場合もある。そのような部分を有する波長変換部材は、黒っぽい色の部分が光を吸収するため、好ましくない。実施例32のように、第二の焼結体に含まれるYAG系蛍光体がHIP処理により二次焼成によって変質し、第二の焼結体の一部が黒っぽい色になる場合には、第二の焼結体を酸素含有雰囲気のもとでアニーリングすることにより、
図10の実施例21に示すように、YAG系蛍光体の本来の体色に戻すことができる。