(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸基含有樹脂が酸基含有ポリアクリル酸エステル樹脂、酸基含有ポリウレタン樹脂、酸基含有ポリオレフィン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の接着剤。
前記エポキシ化合物がエポキシ化合物A以外のエポキシ化合物をさらに含み、前記エポキシ化合物Aと前記エポキシ化合物以外のエポキシ化合物との総量における前記エポキシ化合物以外のエポキシ化合物の配合量は95モル%以下である請求項1〜7のいずれかに記載の接着剤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<酸基含有樹脂>
本発明の接着剤は、酸基含有樹脂と、芳香環および炭素数4−10のアルキレン鎖及び2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ化合物Aとを含有することを特徴とする。
【0014】
酸基含有樹脂とは、樹脂中に酸基を有する樹脂である。酸基としては、カルボキシル基、無水カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。酸基含有樹脂としては、酸価が1〜200mgKOH/gであると、金属との密着性が向上する為好ましい。特に好ましくは5〜165mgKOH/gである。200mgKOH/g以下であれば柔軟性に優れるため接着強度が高くなり、1mgKOH/g以上であれば耐熱性が良好である。
【0015】
(酸価測定方法)
酸価とは、試料1g中に存在する酸分を、中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数である。具体的には、秤量した試料を体積比でトルエン/メタノール=70/30の溶媒に溶かし、1%フェノールフタレインアルコール溶液を数滴滴下しておき、そこに0.1mol/Lの水酸化カリウムアルコール溶液を滴下して、変色点を確認する方法により測定することができ、下記の計算式で求めることができる。
【0016】
酸価測定方法−1
酸価(mgKOH/g)=(V×F×5.61)/S
V:0.1mol/L水酸化カリウムアルコール溶液の使用量(mL)
F:0.1mol/L水酸化カリウムアルコール溶液の力価
S:試料の採取量(g)
5.61:0.1mol/L水酸化カリウムアルコール溶液1mL中の水酸化カリウム相当量(mg)
【0017】
試料が樹脂溶液の場合は、下記の計算式で樹脂酸価(mgKOH/g)を求めることができる。
【0018】
樹脂酸価(mgKOH/g)=樹脂溶液の酸価(mgKOH/g)/NV(%)×100
NV:不揮発分(%)
【0019】
また、有機溶媒への試料の溶解性が低く、析出などをして、測定困難な場合は、以下の方法でも酸価を測定することができる。
【0020】
酸価測定方法−2
酸価(mgKOH/g−resin)とは、FT−IR(日本分光社製、FT−IR4200)を使用し、無水マレイン酸のクロロホルム溶液によって作成した検量線から得られる係数(f)、無水マレイン酸変性ポリオレフィン溶液における無水マレイン酸の無水環の伸縮ピーク(1780cm-1)の吸光度(I)とマレイン酸のカルボニル基の伸縮ピーク(1720cm-1)の吸光度(II)を用いて下記式により算出した値である。
酸価(mgKOH/g−regin)=[(吸光度(I)×(f)×2×水酸化カリウムの分子量×1000(mg)+吸光度(II)×(f)×水酸化カリウムの分子量×1000(mg))/無水マレイン酸の分子量]
無水マレイン酸の分子量:98.06、水酸化カリウムの分子量:56.11
【0021】
酸基含有樹脂としては、樹脂骨格にとくに限定は無いが、酸基含有ポリアクリル酸エステル樹脂、酸基含有ポリウレタン樹脂及びまたは酸基含有ポリオレフィン樹脂などが好ましい樹脂として挙げられる。
【0022】
(酸基含有ポリアクリル酸エステル樹脂)
前記酸基含有ポリアクリル酸エステル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する重合性単量体の共重合体が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸;β―カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸及びこれらのラクトン変性物等エステル結合を有する不飽和モノカルボン酸;マレイン酸等が挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体と必要に応じて重合させる他の重合性不飽和単量体としては、例えば、以下の重合性単量体と等が挙げられる。
【0024】
(1)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ドコシル等の炭素数1〜22のアルキル基を持つ(メタ)アクリル酸エステル類;
【0025】
(2)(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等の脂式のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;
【0026】
(3)(メタ)アクリル酸ベンゾイルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル等の芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル類;
【0027】
(4)(メタ)アクリル酸ヒドロキエチル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリセロール;ラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステル等のヒドロキシアルキル基を有するアクリル酸エステル類;
【0028】
(5)フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、フマル酸メチルエチル、フマル酸メチルブチル、イタコン酸メチルエチルなどの不飽和ジカルボン酸エステル類;
【0029】
(6)スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレンなどのスチレン誘導体類;
【0030】
(7)ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、ジメチルブタジエンなどのジエン系化合物類;
【0031】
(8)塩化ビニル、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニルやハロゲン化ビニリデン類;
【0032】
(9)メチルビニルケトン、ブチルビニルケトンなどの不飽和ケトン類;
【0033】
(10)酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類;
【0034】
(11)メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;
【0035】
(12)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどのシアン化ビニル類;
【0036】
(13)アクリルアミドやそのアルキド置換アミド類;
【0037】
(14)N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのN−置換マレイミド類;
【0038】
(15)フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン若しくはヘキサフルオロプロピレンの如きフッ素含有α−オレフィン類;またはトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル若しくはヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテルの如き(パー)フルオロアルキル基の炭素数が1から18なる(パー)フルオロアルキル・パーフルオロビニルエーテル類;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート若しくはパーフルオロエチルオキシエチル(メタ)アクリレートの如き(パー)フルオロアルキル基の炭素数が1から18なる(パー)フルオロアルキル(メタ)アクリレート類等のフッ素含有エチレン性不飽和単量体類;
【0039】
(16)γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有(メタ)アクリレート類;
【0040】
(17)N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート若しくはN,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
これらの酸基含有ポリアクリル酸エステルを調製する際に用いる他の重合性不飽和単量体は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0042】
前記酸基含有ポリアクリル酸エステルは、公知慣用の方法を用いて重合(共重合)させれば得られ、その共重合形態は特に制限されない。触媒(重合開始剤)の存在下に、付加重合により製造することができ、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよい。また共重合方法も塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法が使用できる。
【0043】
(酸基含有ポリウレタン樹脂)
前記酸含有ポリウレタン樹脂としては、下記式(1)で表される化合物Bと、下記式(2)で表される化合物Cとを反応して得られた樹脂が挙げられる。
【0045】
(式(1)において、X
1は芳香環または脂環構造を表し、n1およびn2はそれぞれ独立して0〜3の整数を表す。)
【0047】
(式(2)において、R
1は水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基またはカルボニル基を表し、m1〜m3はそれぞれ独立して0〜3の整数を表す。)
【0048】
<化合物B>
化合物Bは、前記式(1)で表されるイソシアネート基を有する化合物である。化合物Bにおいて、X
1は芳香環または脂環構造を表す。
【0049】
芳香環構造としては、炭素数6〜18の芳香環であることが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環などが挙げられる。前記芳香環としては、少なくとも1つのフッ素原子により置換されていてもよく、少なくとも1つのフッ素原子で置換された芳香環としては、パーフルオロフェニル基などが挙げられる。
また、脂環構造としては炭素数3〜20の脂環が好ましく、単環であっても縮合環であってもかまわない。単環としては、シクロアルカンにはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカンなどがある。また、単環のシクロアルケンにはシクロプロペン、シクロブテン、シクロプロペン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどが挙げられる。縮合環としては、ビシクロウンデカンやデカヒドロナフタレン、ノルボルネンやノルボルナジエンなどがある。
また多環式化合物にはキュバン、バスケタン、ハウサン等が挙げられる。
また、芳香環と脂環を組み合わせた環構造であっても構わない。
【0050】
化合物Bにおいて、X
1は好ましくはベンゼン環またはナフタレン環である。
また、n1およびn2はそれぞれ独立して0〜1であることが好ましい。
【0051】
化合物Bのさらに好ましい構造としては、以下の構造が挙げられる。
【0057】
<化合物C>
化合物Bは、前記式(2)で表される、カルボキシル基を有するジオール化合物である。
【0058】
化合物Cにおいて、好ましくは、m3が0である化合物であり、更に好ましくはR1が炭素数1〜3の炭化水素基である場合である。
【0059】
化合物Cのさらに好ましい構造としては、ジメチロールプロピオン酸、及びジメチロールブタン酸が挙げられる。
【0060】
(酸基含有ポリオレフィン樹脂)
前記酸基含有ポリオレフィン樹脂の骨格としては、具体的には、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン樹脂などのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ4−メチルペンテン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・へキセン共重合体などのα−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・酢酸ビニル・メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂などを挙げることができる。更に、これらポリオレフィンを塩素化した塩素化ポリオレフィンも使用することができる。
【0061】
樹脂に酸基を導入するには、公知慣用の方法を用いればよい。酸基含有モノマーを重合して樹脂を合成しても良いし、樹脂に後から酸基を付加してもよい。好ましくは、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性し、合成する方法である。この変性方法としては、グラフト変性や共重合化を用いることができる。
【0062】
好ましい酸変性ポリオレフィン樹脂は、少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体を、変性前のポリオレフィン樹脂にグラフト変性あるいは共重合化したグラフト変性ポリオレフィンである。変性前のポリオレフィン樹脂としては上述のポリオレフィン樹脂が挙げられるが、その中でもプロピレンの単独重合体、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体、等が好ましい。これらは1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0063】
変性前のポリオレフィン樹脂にグラフト変性あるいは共重合化するエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、4−メチルシクロヘキセ−4−エン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10−オクタヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−オクタ−1,3−ジケトスピロ[4.4]ノン−7−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレオピマル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルネン−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルン−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物などをあげることができる。好ましくは無水マレイン酸が使用される。これらは単独で、あるいは2種以上併用して使用することができる。
【0064】
エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体から選ばれるグラフトモノマーを変性前のポリオレフィン樹脂にグラフトさせるには、種々の方法を採用することができる。例えば、ポリオレフィン樹脂を溶融し、そこにグラフトモノマーを添加してグラフト反応させる方法、ポリオレフィン樹脂を溶媒に溶解して溶液とし、そこにグラフトモノマーを添加してグラフト反応させる方法、有機溶剤に溶解したポリオレフィン樹脂と、前記不飽和カルボン酸等とを混合し、前記ポリオレフィン樹脂の軟化温度または融点以上の温度で加熱し溶融状態にてラジカル重合と水素引き抜き反応を同時に行う方法等が挙げられる。いずれの場合にも前記グラフトモノマーを効率よくグラフト共重合させるためには、ラジカル開始剤の存在下にグラフト反応を実施することが好ましい。グラフト反応は、通常60〜350℃の条件で行われる。ラジカル開始剤の使用割合は変性前のポリオレフィン樹脂100重量部に対して、通常0.001〜1重量部の範囲である。
【0065】
これらの酸変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体、またはエチレン−メタクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体が挙げられる。具体的には、三菱化学(株)製「モディック」、三井化学(株)製「アドマー」、「ユニストール」、東洋紡(株)製「トーヨータック」、三洋化成(株)製「ユーメックス」、日本ポリエチレン(株)製「レクスパールEAA」「レクスパールET」、ダウ・ケミカル(株)製「プリマコール」、三井・デュポンポリケミカル製「ニュクレル」、アルケマ製「ボンダイン」として市販されている。
【0066】
(その他酸基含有樹脂)
その他酸基含有樹脂としては、酸含有エラストマーとして、例えば旭化成株式会社製のタフテックMシリーズや、クレイトンポリマージャパン株式会社製のクレイトンFGシーリーズ等が挙げられる。
【0067】
<芳香環および炭素数4−10のアルキレン鎖及び2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ化合物A>
本発明の接着剤は、芳香環および炭素数4−10のアルキレン鎖及び2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ化合物Aも含有する。
【0068】
芳香環としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよいナフタレン環、置換基を有していてもよいビスフェノール構造、置換基を有していてもよいビフェニル構造等が挙げられ、例えば、o−、m−、p−にそれぞれ結合部位を有するフェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェニル基、メチレンジフェニレン基、2,2−プロパン−ジフェニル基、1,6−ナフタレン基、2,7−ナフタレン基、1,4−ナフタレン基、1,5−ナフタレン基、2,3−ナフタレン基、及び下記構造式
【0070】
で表される基等を挙げる事ができ、得られる硬化物の柔軟性と強靭性のバランスに優れる点からメチレンジフェニレン基、2,2−プロパン−ジフェニル基であることが好ましい。
【0071】
エポキシ化合物Aとしては、具体的には以下の式(8)で表されるエポキシ化合物(A1)が好ましい。
【0073】
(式中、Ar
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4は同一でも異なっていても良い、置換基を有していてもよい芳香環であり、X
1、X
2は脂肪族炭化水素基であり、R
1、R
2、R
3は同一でも異なっていても良い水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、p、q、rは繰り返し数の平均値でpは0.5〜5.0であり、qは0.5〜5.0であり、rは0.05〜0.5である。)
【0074】
エポキシ化合物(A1)について、エポキシ当量が150〜900g/eqであるものは、得られる硬化物の架橋密度が適当であり、柔軟強靭性と耐熱性とを兼備できる点から好ましいものである。又、前記エポキシ化合物(A1)の25℃における粘度が2,000〜20,000Pa・sであるものが、作業性が良好で、硬化物の柔軟性と密着性に優れる点から好ましく、特に2,000〜15,000Pa・sであることが好ましい。
【0075】
前記式(1)中のX
1、X
2のうち少なくとも1つが炭素数4〜10の直鎖状のアルキレン鎖である。炭素数が短すぎると柔軟性が損なわれて接着力が低くなり、長すぎると反応性が低下し接着力が低くなるからである。好ましくは、X
1、X
2の両方が炭素数4〜10の直鎖状のアルキレン鎖である場合である。又、得られる硬化物の耐熱性や硬度、耐湿性を重要視する場合には、前記式(1)中のX
1、X
2として、脂環構造を含有するものを用いることもできる。
【0076】
前記式(1)中のAr
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4としては、前述の芳香環を用いることが出来る。すなわち、置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよいナフタレン環、置換基を有していてもよいビスフェノール構造、置換基を有していてもよいビフェニル構造等が挙げられ、例えば、o−、m−、p−にそれぞれ結合部位を有するフェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェニル基、メチレンジフェニレン基、2,2−プロパン−ジフェニル基、1,6−ナフタレン基、2,7−ナフタレン基、1,4−ナフタレン基、1,5−ナフタレン基、2,3−ナフタレン基、及び下記構造式
【0078】
で表される基等を挙げる事ができ、得られる硬化物の柔軟性と強靭性のバランスに優れる点からメチレンジフェニレン基、2,2−プロパン−ジフェニル基であることが好ましい。
【0079】
エポキシ化合物(A1)として、好ましい構造としては以下の(A1−1)から(A1−9)の構造が挙げられる。
【0083】
上記各構造式において、Gはグリシジル基であり、p、q、rは繰り返し数の平均値であってpは0.5〜5.0であり、qは0.5〜5.0であり、rは0.05〜0.5である。又、各芳香環には炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子等を置換基として有していても良い。これらの中でも、得られる硬化物の物性バランスに優れる点から、前記構造式(A1−3)、(A1−4)で表されるものを用いることが最も好ましい。
【0084】
エポキシ化合物(A1)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、脂肪族系ジヒドロキシ化合物のジグリシジルエーテル又は脂肪族系酸化合物のジグリシジルエステル(c1)と芳香族系ジヒドロキシ化合物(c2)とを、モル比(c1)/(c2)が1/1.1〜1/5.0の範囲で反応させて得られるヒドロキシ化合物を更にエピハロヒドリン類(c3)と反応ささる方法を用いることが、原料入手や反応が容易である点から好ましい。
【0085】
<接着剤>
本発明の接着剤は、酸基含有樹脂と、芳香環および炭素数4−10のアルキレン鎖及び2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ化合物Aとを含有する。
本発明の接着剤は接着強度、特に初期接着力に優れ、積層体であるラミネート物が柔軟なことから、ラミネート用の接着剤として好適に使用可能である。また、本発明の接着剤は、金属層に良好に接着することから、金属用接着剤としても好適である。また、硬化後の本接着剤は耐電解液性にも優れることから、電池用接着剤としても好適である。
【0086】
<その他エポキシ化合物>
本発明の接着剤には、エポキシ化合物A以外のエポキシ化合物を含んでよい。例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、アントラセン、ビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSの構造を有する3官能以上のエポキシ化合物、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0087】
エポキシ化合物としては、1種のエポキシ化合物を単独で用いてよく、複数のエポキシ化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
本発明において、エポキシ化合物Aとその他のエポキシ化合物との比率は、モル比で100:0〜5:95が好ましい。ラミネート用接着剤としては、柔軟性の面から100:0〜10:90が特に好ましい。
【0089】
<配合比>
接着剤を調整するには、上記した酸基含有樹脂が含有する酸基と、エポキシ化合物Aを含むエポキシ化合物が含有するエポキシ基との当量比(エポキシ/酸価)が、0.01〜10となるように配合することが好ましい。より好ましくは、0.1〜5となるように配合する。
当量比が0.01以上であれば耐熱性に優れ、10以下であれば接着力に優れるからである。
【0090】
<その他樹脂>
また、本発明の接着剤は、発明の効果を損ねない範囲で、酸基含有樹脂とエポキシ化合物以外の樹脂を含有しても構わない。樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0091】
熱硬化性樹脂とは、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、熱硬化性樹脂とは、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、活性エステル樹脂、アニリン樹脂、シアネートエステル樹脂、スチレン・無水マレイン酸(SMA)樹脂、などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0092】
熱可塑性樹脂とは、加熱により溶融成形可能な樹脂を言う。その具体例としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、酢酸セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0093】
<硬化触媒>
本発明の接着剤は、硬化触媒を使用してもよい。
硬化触媒としては、一般的なエポキシ硬化剤を利用することができ、具体的にはアミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、カルボキシル基含有硬化剤、チオール系硬化剤などの各種の硬化剤を併用してもかまわない。
【0094】
具体的には、アミン系硬化剤としてはジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、オルトフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体、グアナミン誘導体等が挙げられる。
【0095】
アミド系硬化剤としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
フェノール系硬化剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、ナフタレンジオール、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、カリックスアレーン、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
これらの硬化触媒は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
【0096】
さらに、硬化促進剤を単独で、あるいは前記の硬化触媒と併用することもできる。硬化促進剤としてエポキシ化合物の硬化反応を促す種々の化合物が使用でき、例えば、リン系化合物、第3級アミン化合物、イミダゾール化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。この中でも、イミダゾール化合物、リン系化合物、第3級アミン化合物の使用が好ましく、特に硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)、イミダゾール化合物では2-エチル-4-メチルイミダゾールが好ましい。
【0097】
硬化触媒及び硬化促進剤は配合してもしなくても構わないが、配合する場合、接着剤中の全固形分合計100重量部に対し、0.001〜10重量部であることが好ましい。特に好ましくは0.005〜5重量部である。
【0098】
<溶剤>
接着剤は、使用用途に応じて溶剤を含有してもよい。溶剤としては有機溶剤が挙げられ、例えばメチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。溶剤の種類及び使用量は使用用途によって適宜選択すればよい。
【0099】
特にドライラミネート用接着剤とする場合は、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤又はアルコール系溶媒が好ましく用いられる。
【0100】
溶剤を用いる場合、酸基含有樹脂及びエポキシ化合物Aを配合した後に配合しても構わないし、酸基含有樹脂またはエポキシ化合物Aをあらかじめ溶剤に溶解させワニスとして用いても構わない。
【0101】
溶剤を用いる場合、接着剤全量100重量部のうち、溶剤成分が50〜90重量部であることが好ましい。より好ましくは、60〜85重量部となるように配合される。
【0102】
接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、触媒、界面活性剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、防錆剤、反応性エラストマー、カップリング剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、酸素捕捉機能を有する化合物、粘着付与剤等が例示できる。これらの添加剤の含有量は、本発明の接着剤の機能を損なわない範囲内で適宜調整して用いることができる。
【0103】
<積層体>
本発明の積層体は、本発明の接着剤層を中間層に有することを特徴とする。
積層体の上層および下層については特に限定は無く、用途に応じて選択すればよい。たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック;鉄、アルミニウム、銅、銀、チタン等の金属や金属酸化物、木材、紙、それらの複合材等が挙げられる。
【0104】
この中でも、本発明の接着剤は、金属または金属酸化物層に対する接着性が非常に良好であることから、金属または金属酸化物用接着剤として良好である。特に好ましくはアルミニウム用である。
【0105】
積層体の上層および下層の形状は特に限定は無く、平板、シート状、あるいは3次元形状全面にまたは一部に曲率を有するもの等目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。
【0106】
本発明の積層体において、接着剤層の塗工方法としては特に限定は無く、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。
【0107】
<ラミネート>
本発明の接着剤は、接着強度が非常に高いことから、ラミネート用として好適に使用可能である。ラミネート用接着剤とする場合、乾燥塗布重量は0.5〜20.0g/m
2の範囲内が好ましい。0.5g/m
2以上であれば連続均一塗布性が良好であり、20.0g/m
2以下であれば塗布後における溶剤離脱性が良好であることから、作業性と脱溶剤性のバランスに優れている。
【0108】
ラミネート方法としては、下層に本発明の接着剤を塗工後、上層を重ねてドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせることで、ラミネート積層体が得られる。ラミネートロールの温度は室温〜120℃程度、圧力は、3〜300kg/cm
2程度が好ましい。
また、本発明のラミネート積層体は、作製後エージングを行うことが好ましい。エージング条件は、好ましい温度は25〜100℃、時間は12〜240時間であり、この間に接着強度が生じる。
【0109】
<電池用部材>
金属層とプラスチック層とで構成された本発明の積層体は、電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム等として好適に使用可能である。この場合、プラスチック層側に極性有機溶媒及び/または塩類等と接触させて使用する。特に極性有機溶媒及び塩を含む非水電解質と接触させる状態で使用することにより、特に非水電解質電池、固体電池等の二次電池電解液封止フィルムまたは二次電池電極部保護フィルムとして好適に使用することができる。この場合、プラスチック層が対向するように折り重ねてヒートシールすることにより、電池用封止袋として使用することができる。本発明で用いている接着剤はヒートシール性に優れるため、非水電解質の漏洩を防止し、電池として長期使用が可能になる。
【0110】
前記極性有機溶媒としては、非プロトン性の極性溶媒、例えばアルキルカーボネート、エステル、ケトンなどがあげられる。具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラハイドロフラン、2−メチルテトラハイドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、メチルフォーメート、4−メチル−1,3−ジオキソメチルフォーメート、メチルアセテート、メチルプロピオネートなどが挙げられる。
塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩があげられる。電池用としてはLiPF
6、LiBF
4、Li−イミド等のリチウム塩が一般的に使用される。
【0111】
非水電解質は環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、それらの混合物等の非プロトン性極性有機溶媒に前記アルカリ金属塩が0.5〜3mmol溶解したものである。
本発明の積層体は前記極性溶媒及び/または塩類、特にそれらの混合物である非水電解質と接触する状態で使用しても金属層、接着層、プラスチック層の層間剥離を生じることなく、長期にわたって使用することができる。
【0112】
<電池>
本発明の電池は、本発明の電池用部材を含有するものである。本発明の積層体を有する電池用部材としては、電池電解液封止フィルムや電池電極部保護フィルムなどが挙げられる。本発明の電池は、上記フィルムが層間剥離を生じず、しかも非水電解質の漏洩を防止することができるので、電池として長期間安定して使用することができる。
【実施例】
【0113】
本発明を以下実施例を持って説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特に記述のない場合、単位は重量換算である。
【0114】
(調整例1) ワニス1の調整
プロピレン/1−ブテン共重合体300gとトルエン1Lを窒素雰囲気下で145℃に昇温し、プロピレン/1−ブテン共重合体をトルエンに溶解させた。さらに撹拌しながら無水マレイン酸38g、ジ−tert−ブチルパーオキシド16gを4時間かけて系に供給し、続けて145℃で2時間撹拌した。冷却後、多量のアセトンを投入して、無水マレイン酸変性プロピレン/1−ブテン共重合体(1)を沈殿させ、ろ過し、アセトンで洗浄した後、真空乾燥して白色の固体を得た。得られた固体を20部、メチルシクロヘキサン72部、酢酸エチル7部、イソプロピルアルコール(IPA)1部をよく撹拌し、不揮発分が20.0%の溶液であるワニス1を得た。
【0115】
(調整例2) ワニス2の調整
GMP7550E(酸変性オレフィン樹脂、ロッテケミカル社製)16部、アウローレン350S(酸変性オレフィン樹脂、日本製紙製)4部、メチルシクロヘキサン72部、酢酸エチル5部、イソプロピルアルコール(IPA)3部をよく撹拌し、不揮発分が20.5%の溶液であるワニス2を調整した。
【0116】
(調整例3) ワニス3の調整
Poly(ethylene-co-acrylie acid)を20部、トルエンを72部、イソプロピルアルコール(IPA)を8部入れて良く攪拌し、不揮発分が19.9%であるワニス3を作成した。
【0117】
(調整例4) ワニス4の調整
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、トルエン120 gを仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約100℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめスチレン117g、アクリル酸12.6g、ラウリルメタクリレート50.4g、t−ブチルパーオキシエチルヘキサノエイト(日産化学株式会社製パーブチルO)3.6gからなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を約4時間要して系内に滴下し、6時間同温度に保温した。冷却して、トルエン90gを加えることで、不揮発分が46.8%である酸基含有アクリル酸エステル樹脂(E)の溶液であるワニス4を得た。
【0118】
(調整例5) ワニス5の調整
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、トルエン50mLを仕込んだ後、30分間アルゴンガスをバブリングして系内を置換した。アルゴン導入口を液面から上げ、フローに変更後、浴温135℃のオイルバスに浸漬し、攪拌を開始した。系内が一定温度に到達した後、メタクリル酸シクロヘキシル38.20g、メタクリル酸イソボルニル8.65g、アクリル酸3.20g、2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル118mgの5mLトルエン溶液、の4種を混合した溶液を1時間かけて滴下した。アルゴンフロー下、浴温を保ったまま4時間加熱攪拌後、2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル119mgの5mLトルエン溶液を滴下し、再び浴温を保ったまま4時間加熱攪拌した。室温に冷却後、得られた僅かに白色に濁った均一な溶液を、約1.2リットルのメタノールに投入し、再沈させた。引き続き、沈殿をメタノールにて3回洗浄し、ついで40℃にて一晩減圧乾燥したところ、白色の固体が48g得られた。得られた白色個体をトルエンに溶解し、酸基含有アクリル酸エステル樹脂(F)の溶液であるワニス5を得た。酸価が、11.3mgKOH/g、不揮発分が30.0%であった。
【0119】
(調整例6) ワニス6の調整
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、DMPA(2,2−ジメチロールプロパン酸)90重量部、溶媒としてメチルエチルケトン54重量部、テトラヒドロフラン81重量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌した。次いで、XDI(キシリレンジイソシアネート、商品名:タケネート500、三井化学製)56重量部を仕込み、60℃に昇温した。1時間撹拌した後、40℃以下まで温度を下げてから、更にXDI56重量部を仕込み、再度60℃に昇温した。赤外分光法でイソシアネート基の消失が確認されるまで反応を継続した。次いで、希釈溶媒としてメタノール148重量部を加え、カルボキシル基を含有するウレタン樹脂「DMPA/XDI」を50重量%含有する酸基含有ポリウレタン樹脂(G)の溶液であるワニス6を得た。
【0120】
(調整例7) ワニス7の調整
ポリオレフィン樹脂ハイワックスNL100(三井化学社製)を20部、トルエンを80部を入れて良く攪拌し、不揮発分が20.1%の溶液であるワニス7を作成した。
【0121】
用意した酸基含有樹脂について、各樹脂の酸価を以下表1に示す。なお、酸価の測定方法としては、酸基含有ポリオレフィン樹脂は前述した酸価測定方法−2、酸基含有ポリアクリル酸エステル樹脂及び酸基含有ポリウレタン樹脂については酸価測定方法−1を利用した。
【0122】
【表1】
【0123】
合成例1 ジヒドロキシ化合物(Ph−1)の合成
温度計、撹拌機を取り付けたフラスコに1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル(DIC株式会社製:商品名EPICLON 726D、エポキシ当量124g/eq)744g(6当量)とビスフェノールA(水酸基当量114g/eq)1368g(12当量)を仕込み、140℃まで30分間要して昇温した後、4%水酸化ナトリウム水溶液5gを仕込んだ。その後、30分間要して150℃まで昇温し、さらに150℃で3時間反応させた。その後、中和量のリン酸ソーダを添加し、ヒドロキシ化合物(Ph−1)2090gを得た。このヒドロキシ化合物(Ph−1)は、NMRスペクトル(
13C)から、また、マススペクトルで前記一般式(1)のnが1の理論構造に相当するM
+=687、及びnが2の理論構造に相当するM
+=1145のピークが得られたことから下記構造式(B−1)で表される構造のヒドロキシ化合物を含有することが確認された。このヒドロキシ化合物(Ph−1)のGPCより算出した水酸基当量は262g/eq、水酸基当量から算出した構造式(B−1)中のnの平均値は0.6であった。
【0124】
【化14】
【0125】
合成例2 エポキシ化合物(Ep−1)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに実施例1で得られたヒドロキシ化合物(Ph−1)261g(水酸基当量261g/eq.)、エピクロルヒドリン1110g(12モル)、n−ブタノール222gを仕込み溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、65℃に昇温した後に、共沸する圧力までに減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液122g(1.5モル)を5時間かけて滴下した。次いでこの条件下で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸で留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離して、水層を除去し、有機層を反応系内に戻しながら反応した。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留して留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン1000gとn−ブタノール100gを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液20gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水300gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し精密濾過を経た後に溶媒を減圧下で留去して液状のエポキシ樹脂(Ep−1)380gを得た。このエポキシ樹脂(Ep−1)は、NMRスペクトル(
13C)から、またマススペクトルで前記構造式(A1−3)中のp=1、q=1、r=0の理論構造に相当するM+=798、p=2、q=2、r=0の理論構造に相当するM+=1257のピークが得られたことから前記構造式(A1−3)で表される構造のエポキシ樹脂を含有することが確認された。得られたエポキシ樹脂(Ep−1)は、前記構造式(A1−3)においてp=0、q=0、r=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中p=0、q=0、r=0の化合物を29重量%の割合で含有するものであった。また、このエポキシ樹脂(Ep−1)のエポキシ当量は350g/eq.、粘度は2000Pa・s(25℃,E型粘度法)、エポキシ当量から算出される前記構造式(A1−3)中のrの平均値は0.1であった。
【0126】
(実施例1)接着剤1の作成
ワニス1を100部、エポキシ化合物(Ep−1)を0.7部、Triphenylphosphineを0.01部、酢酸エチルを3部、イソプロピルアルコールを1部入れてよく攪拌し、不揮発分20%の接着剤1を作成した。
【0127】
<積層体の作成>
アルミフォイル(「1N30H」30μm 東洋アルミニウム社製)に実施例1で作成した接着剤1をバーコーターで5g/m
2(dry)塗布し、80℃−1分乾燥させた後、CPPフィルム(ポリオレフィンフィルム「ET−20」40μm オカモト社製)と100℃で貼り合せて積層体1を作製した。
その後、70℃−5日エージングさせた後に初期接着強度を測定した。
【0128】
<初期接着強度の測定>
(株)エー・アンド・ディー製テンシロン試験において、積層体を15mm幅にカットし、180°剥離強度を測定した。
【0129】
<耐電解液性>
電解液として、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1(wt%)混合液にLiPF6:1mol%とビニレンカーボネート:1wt%を添加した溶液を用意した。
積層体1を電解液35gに85℃−7日間浸漬させ、浸漬前後の接着強度の保持率から以下のとおりに評価を実施した。
接着強度保持率(%)=浸漬後の接着強度(N/15mm)/浸漬前の接着強度(N/15mm)
◎:80%以上、○:80〜60%、×:60%以下
【0130】
実施例2〜7
実施例1に記載の方法と同様にして、表2に示す配合に従って各成分を混合し、接着剤および積層体を作製した。
各例で得られた積層体において、接着性能ならびに耐電解質性を評価しその結果を表2示す。
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
キュアゾール2E4MZ(四国化成工業社製イミダゾール系硬化剤) 不揮発分100%
エピクロンHP−4700(DIC社製ナフタレン型エポキシ) 不揮発分100%