【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、以下の実施例は例示を目的としたものに過ぎない。本発明の範囲は、本実施例に限定されない。
【0037】
実施例で用いた物性値の測定方法及び定義を以下に示す。
【0038】
<平均繊維径>
株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡SU8020を使用して、繊維を観察し、画像解析ソフトを用いて繊維50本の直径を測定した。繊維50本の繊維径の平均値を平均繊維径とした。
【0039】
<吸音率測定1>
各積層体より直径63mmのサンプルを採取し、各条件の積層をした後、垂直入射吸音率測定装置「ブリュエル&ケアー社製TYPE4206」を用いASTM E 1050に準拠し、周波数200〜3200Hzにおける試験片に平面音波が垂直に入射するときの垂直入射吸音率を測定した。
<低周波数領域の吸音性>
周波数xが200〜3200Hzの吸音率を1Hz間隔で測定し、得られる曲線をf(x)としたとき、200〜1000Hzの積分値Sが下記数式で得られる。
【0040】
【数1】
【0041】
積分値Sは200〜1000Hzの周波数領域の吸音性能を示し、数値が高ければ、吸音性が高いと判断される。S値が170以上の場合、低周波数領域の吸音性を良好(○)と評価し、170未満の場合、吸音性を不良(×)と評価した。積分値Sを、積分した周波数の幅(1000−200=800)で除した値が200〜1000Hzの周波数領域の平均吸音率を表す。
【0042】
<中周波数領域の吸音性>
周波数xが800〜2000Hzの吸音率を1Hz間隔で測定し、得られる曲線をf(x)としたとき、800〜2000Hzの吸音率の積分値Tが下記数式で得られる。
【0043】
【数2】
【0044】
積分値Tは800〜2000Hzの周波数領域の吸音性能を示し、数値が高ければ、吸音性が高いと判断される。T値が840以上の場合、中周波数領域の吸音性を良好(○)と評価し、840未満の場合、吸音性を不良(×)と評価した。積分値Tを積分した周波数の幅(2000−800=1200)で除した値が800〜2000Hzの周波数領域の平均吸音率を表す。
【0045】
<吸音率測定2>
各積層体より直径40mmのサンプルを採取し、各条件の積層をした後、垂直入射吸音率測定装置「日本音響エンジニアリング社製WinZacMTX」を用いASTM E 1050に準拠し、周波数200〜5000Hzにおける試験片に平面音波が垂直に入射するときの垂直入射吸音率を測定した。
【0046】
<高周波数領域の吸音性>
周波数xが200〜5000Hzの吸音率を3.9Hz間隔で測定し、得られる曲線をf
2(x)としたとき、2000〜5000Hzの吸音率の積分値Uが下記数式で得られる。
【0047】
【数3】
【0048】
積分値Uは2000〜5000Hzの周波数領域の吸音性能を示し、数値が高ければ、吸音性が高いと判断される。U値が2100以上の場合、高周波数領域の吸音性を良好(○)と評価し、2100未満の場合、吸音性を不良(×)と評価した。積分値Uを積分した周波数の幅(5000−2000=3000)で除した値が2000〜5000Hzの周波数領域の平均吸音率を表す。
【0049】
<通気度>
通気度測定は、株式会社東洋精機製作所製ガーレ式デンソメーター(型式:GB−3C)にてISO 5636に準拠し測定した。
【0050】
<MFR>
ポリプロピレン樹脂のMFRは、JIS K 7210(1999)に準拠し、2160g荷重条件下、230℃で測定した値である。
ポリエチレン樹脂のMFRは、JIS K 7210(1999)に準拠し、2160g荷重条件下、190℃で測定した値である。
【0051】
[実施例1]
繊維層の形成には、スクリュー(50mm径)、加熱体及びギアポンプを有する2機の押出機、混繊用紡糸口金(孔径0.3mm、2機の押出機より交互に樹脂が吐出される孔数501ホールが一列に並んだ、有効幅500mm)、圧縮空気発生装置及び空気加熱機、ポリエステル製ネットを備えた捕集コンベアー、及び巻取り機からなる不織布製造装置を用いた。
繊維層の原料のポリプロピレン樹脂として、ポリプロピレンホモポリマー1(MFR=82g/10分)と、ポリプロピレンホモポリマー2(LOTTE CHEMICAL社製「FR−185」(MFR=1400g/10分))を用い、不織布製造装置の2機の押出機に前記2種類のポリプロピレン樹脂を投入し、押出機を240℃で加熱溶融させ、ギアポンプの質量比が50/50になる様に設定し、紡糸口金から単孔あたり0.3g/minの紡糸速度で溶融樹脂を吐出させた。吐出した繊維を400℃に加熱した98kPa(ゲージ圧)の圧縮空気によって紡糸口金から30cmの距離で、捕集コンベアー上に吹き付け、繊維層を形成した。捕集コンベアーの速度を調整することによって、任意に目付を設定した。平均繊維径は、1.8μmであり、繊維層の目付けは、80g/m
2、厚みは0.6mmであった。
また、市販されている発泡ウレタン樹脂材料であるイノアック社製カームフレックス F−2(密度25kg/m
3)、厚み10mmを基材Dとした。得られた基材Dと繊維層とを使用し、繊維層/基材層D/繊維層となるように重ね合わせ、63mm径の円形に切り出し吸音率測定用サンプルを作成した。
垂直入射吸音率を測定し、低周波数領域の吸音性(200〜1000Hzの積分した値S)を評価したところ、280であり良好であった。中周波数領域の吸音性(800〜2000Hzの積分した値T)を評価したところ、996であり良好であった。40mm径の円形で切り出し、高周波吸音性評価サンプルを作製した。高周波数領域の吸音性(2000〜5000Hzの積分した値U)を評価したところ、2534であり良好であった。
【0052】
[実施例2]
市販されているウレタン発泡樹脂材料であるイノアック社製カームフレックス F−2(密度25kg/m
3)、厚み15mmを基材Eとした。得られた基材Eと実施例1で得られた繊維層とを使用し、繊維層/基材層E/繊維層となるように重ね合わせ、63mm径の円形に切り出し吸音率測定用サンプルを作成した。
垂直入射吸音率を測定し、低周波数領域の吸音性(200〜1000Hzの積分した値S)を評価したところ、343であり良好であった。中周波数領域の吸音性(800〜2000Hzの積分した値T)を評価したところ、1079であり良好であった。40mm径の円形で切り出し、高周波吸音性評価サンプルを作製した。高周波数領域の吸音性(2000〜5000Hzの積分した値U)を評価したところ、2599であり良好であった。
【0053】
[実施例3]
市販されているメラミン発泡樹脂材料であるイノアック社製バソテクト BAF-10G+(密度9.2kg/m
3)、厚み10mmを基材Fとした。得られた基材Fと実施例1で得られた繊維層とを使用し、繊維層/基材層F/繊維層となるように重ね合わせ、63mm径の円形に切り出し吸音率測定用サンプルを作成した。
垂直入射吸音率を測定し、低周波数領域の吸音性(200〜1000Hzの積分した値S)を評価したところ、300であり良好であった。中周波数領域の吸音性(800〜2000Hzの積分した値T)を評価したところ、1044であり良好であった。40mm径の円形で切り出し、高周波吸音性評価サンプルを作製した。高周波数領域の吸音性(2000Hzから〜5000Hzの積分した値U)を評価したところ、2656であり良好であった。
【0054】
[実施例4]
市販されているメラミン発泡樹脂材料であるイノアック社製バソテクト BAF-20G+(密度9.2kg/m
3)を厚み15mmに切り出し基材Gとした。得られた基材Gと実施例1で得られた繊維層を使用し、繊維層/基材層G/繊維層となるように重ね合わせ、63mm径の円形に切り出し吸音率測定用サンプルを作成した。
垂直入射吸音率を測定し、低周波数領域の吸音性(200〜1000Hzの積分した値S)を評価したところ、360であり良好であった。中周波数領域の吸音性(800〜2000Hzの積分した値T)を評価したところ、1045であり良好であった。40mm径の円形で切り出し、高周波吸音性評価サンプルを作製した。高周波数領域の吸音性(2000〜5000Hzの積分した値U)を評価したところ、2671であり良好であった。
【0055】
[比較例1]
繊維層2枚のみを使用した以外は実施例1と同様に実施し、繊維層/繊維層となるように積層し、63mm径の円形に切り出し吸音率測定用サンプルを作成した。
垂直入射吸音率を測定し、低周波数領域の吸音性(200〜1000Hzの積分した値S)を評価したところ、167であり不良であった。中周波数領域の吸音性(800〜2000Hzの積分した値T)を評価したところ、897であり良好であった。高周波数領域の吸音性(2000〜5000Hzの積分した値U)を評価したところ、2294であり良好であった。
【0056】
[比較例2]
市販されているポリプロピレン樹脂製不織布(3M社製シンサレートT2203、繊維径0.7〜4.0μm、厚み29mm)を直径63mmの円形に打ち抜き、吸音率測定をし、低周波数領域の吸音性(200〜1000Hzの積分した値S)を評価したところ、129であり低周波数領域の吸音性が得られず、不良であった。中周波数領域の吸音性(800〜2000Hzの積分した値T)を評価したところ、804であり不良であった。高周波数領域の吸音性(2000〜5000Hzの積分した値U)を評価したところ、2580であり良好であった。
【0057】
[比較例3]
実施例1で得られた基材層Dのみで、63mm径の円形に切り出し吸音率測定用サンプルを作成した。垂直入射吸音率を測定し、低周波数領域の吸音性(200〜1000Hzの積分した値S)を評価したところ、131であった。中周波数領域の吸音性(800〜2000Hzの積分した値T)を評価したところ、408であった。40mm径の円形で切り出し、高周波吸音性評価サンプルを作製した。高周波数領域の吸音性(2000〜5000Hzの積分した値U)を評価したところ、2102であった。
【0058】
[比較例4]
実施例3の基材層Fのみで、63mm径の円形に切り出し吸音率測定用サンプルを作成した。垂直入射吸音率を測定し、低周波数領域の吸音性(200〜1000Hzの積分した値S)を評価したところ、139であった。中周波数領域の吸音性(800〜2000Hzの積分した値T)を評価したところ、404であった。40mm径の円形で切り出し、高周波吸音性評価サンプルを作製した。高周波数領域の吸音性(2000〜5000Hzの積分した値U)を評価したところ、2124であった。
【0059】
[比較例5]
実施例3の基材層Dと繊維層1枚のみで、基材層D/繊維層となるように積層し、63mm径の円形に切り出し吸音率測定用サンプルを作成した。垂直入射吸音率を測定し、低周波数領域の吸音性(200〜1000Hzの積分した値S)を評価したところ、176であった。中周波数領域の吸音性(800〜2000Hzの積分した値T)を評価したところ、741であった。40mm径の円形で切り出し、高周波吸音性評価サンプルを作製した。高周波数領域の吸音性(2000〜5000Hzの積分した値U)を評価したところ、2653であった。
【0060】
[比較例6]
実施例3の基材層Fと繊維層1枚のみで、基材層F/繊維層となるように積層し、63mm径の円形に切り出し吸音率測定用サンプルを作成した。垂直入射吸音率を測定し、低周波数領域の吸音性(200〜1000Hzの積分した値S)を評価したところ、180であった。中周波数領域の吸音性(800〜2000Hzの積分した値T)を評価したところ、720であった。40mm径の円形で切り出し、高周波吸音性評価サンプルを作製した。高周波数領域の吸音性(2000〜5000Hzの積分した値U)を評価したところ、2707であった。
【0061】
実施例1〜4及び比較例1〜6のまとめを表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示されるとおり、本発明の実施例1〜4の積層吸音材はいずれも、低周波吸音性、中周波吸音性、高周波吸音性、及び省スペース性に優れていた。一方、基材層を挟まず、2層の繊維層のみで構成した比較例1は、中周波吸音性は優れていたが低周波吸音性が不十分であった。さらに、比較的細径の繊維のみで構成した単層の吸音材である比較例2は、厚みを大きくしても低周波数吸音性及び中周波数吸音性が不十分であった。また、発泡体層のみ(基材層のみ)である比較例3,4は、高周波吸音性で良好であるが、低周波吸音性、中周波吸音性、ともに不十分であった。比較例5,6は、低周波数域と高周波数域の吸音性は良好であったが、中周波数域の吸音性は不十分であった。