(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643057
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】ボイラーレス蒸機
(51)【国際特許分類】
A47J 27/16 20060101AFI20200130BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20200130BHJP
【FI】
A47J27/16 G
A23L7/109 K
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-228337(P2015-228337)
(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公開番号】特開2017-93767(P2017-93767A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安田 茂
(72)【発明者】
【氏名】武田 雅士
【審査官】
大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−142259(JP,A)
【文献】
特開2004−229796(JP,A)
【文献】
実開昭48−025080(JP,U)
【文献】
韓国登録特許第10−0877508(KR,B1)
【文献】
特開2015−139407(JP,A)
【文献】
特開平08−089401(JP,A)
【文献】
特開2002−106801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J27/16
A23L5/10
A23L7/109
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラー装置なしで食品を蒸煮することが可能なユニット型蒸機であって、
開閉式の上蓋を備えた筐体と、
前記筐体の内部に懸架された貯水タンクと、
前記貯水タンクの下方に設けられたガスバーナーと、
を備え、他のユニット型蒸機と連結可能である、ユニット型蒸機。
【請求項2】
前記上蓋と前記貯水タンクの間にネットコンベアが通過可能な第1の空間をさらに備える、
請求項1に記載のユニット型蒸機。
【請求項3】
前記ガスバーナーの下方に、ネットコンベアが通過可能な第2の空間をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載のユニット型蒸機。
【請求項4】
前記筐体の外部側面に、前記貯水タンクに連結された水位計をさらに備える、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のユニット型蒸機。
【請求項5】
互いに連結された請求項1ないし4のいずれか一項に記載の複数のユニット型蒸機より構成される食品蒸煮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラー装置なしで麺線群等の食品を蒸煮することが可能なユニット型蒸機、および互いに連結された複数のユニット型蒸機及びネットコンベア装置より構成される食品蒸煮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的に難民の増加が問題となっており、即席麺も難民キャンプへの食糧支援物資の一つとなっているが、食糧支援の課題として支援物資の輸送コストの問題がある。コスト面からみれば、即席麺の完成品を難民キャンプへ輸送するよりも、難民キャンプ、またはその近隣において、即席麺を製造することが望ましい。しかしながら、難民キャンプのようなインフラの整っていない環境下では、通常の工場で使用しているような大型機器、例えば麺線群の蒸煮に使用するボイラー装置を導入することはコスト面及び技術上の両面から難しい。
【0003】
麺の製造工程においては蒸煮を用いる場合が多く、麺線群の蒸煮装置としては、例えば、トンネル内に麺線移送用ネットコンベアを通過させる装置が知られている(特許文献1)。特許文献1に開示されている蒸煮装置では、トンネルの内部を仕切板によって数室に分画し、各室に蒸気量を調節自在の蒸気噴出口を設け、各室の蒸気量を独立的に調整している。ここで、特許文献1には明示されていないが、各室8の蒸気を供給するにはボイラー装置が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53−9364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、業務用の大型ボイラー装置を難民キャンプなどの屋外に一時的に設置するのは現実的ではない。そのため、ボイラー装置なしに麺線群等の食品を蒸煮することができ、さらに装置の取り扱いに不慣れな者にもハンドリングが容易な蒸煮装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究の結果、ボイラー装置なしで麺線群等の食品を蒸煮することが可能なユニット型蒸機、および互いに連結された複数のユニット型蒸機及びネットコンベア装置より構成される食品蒸煮装置を見出した。
【0007】
本発明のユニット型蒸機(1)は、開閉式の上蓋(10)を備えた筐体(11)と、筐体(11)の内部に懸架された貯水タンク(12)と、貯水タンク(12)の真下に設けられたガスバーナー(13)とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のユニット型蒸機(1)は、上蓋(10)と貯水タンク(12)の間に食品を搬送するネットコンベア(21)が通過可能な第1の空間(14)を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のユニット型蒸機(1)は、ガスバーナー(13)の下方に、ネットコンベア(21)が通過可能な第2の空間(15)を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のユニット型蒸機(1)は、他のユニット型蒸機と連結可能であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のユニット型蒸機(1)は、筐体(11)の外部側面に、貯水タンク(12)に連結された水位計(16)を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の食品蒸煮装置(5)は、互いに連結された複数のユニット型蒸機(1)と、複数の脚部(20)より支持されるネットコンベア(21)とを備えたネットコンベア装置(2)とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、難民キャンプのように、ボイラー装置を設置するのに適さない屋外等の環境においても、ボイラー装置を用いることなく麺線群等の食品を連続的に蒸煮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、ユニット型蒸機とネットコンベアの横断面図(使用前)である。
【
図2】
図2は、ユニット型蒸機とネットコンベアの横断面図(使用時)である。
【
図3】
図3は、ネットコンベア装置の斜視図である。
【
図4】
図4は、ネットコンベア装置の平面図である。
【
図5】
図5は 複数のユニット型蒸機をネットコンベア装置に設置した食品蒸煮装置の斜視図である。
【
図6】
図6は ネットコンベア装置のカバー部材の横面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施態様について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明はこの実施態様に限定されるものではない。下記の
図1は、本願の使用前のユニット型蒸機とネットコンベアの横断面図、
図2は使用時におけるユニット型蒸機とネットコンベアの横断面図を示したものである。
−ユニット型蒸機の構成−
【0016】
図1に示すように、本発明の実施態様のユニット型蒸機1は、筐体11内部に懸架された貯水タンク12と、貯水タンク12の下方に設けられたガスバーナー13と、貯水タンク12に連結された水位計16とを備えている。
【0017】
水位計16は筐体11の外部側面に設けられており、貯水タンク12の水位を目視によって確認することが可能である。また、水位計16は貯水タンク12への注水及び排水を行う機能も備えており、水位計16の上部に設けられた注水口17から水を貯水タンク12に供給し、水位計の底部に設けられた排水口18から、バルブを開閉することで貯水タンク12の水を排水することができる。
【0018】
また、ユニット型蒸機の筐体底部には複数の車輪19が設けられており、例えば
図3に示すようにネットコンベア装置2の搬送方向と直交して配置された移動用レール3上にユニット型蒸機1を載置し、移動用レール3上を手動で移動させることで、ネットコンベア装置2の下方に設けられた設置用レール4上に設置することも可能である。
【0019】
ユニット型蒸機1の筐体上部には開閉可能な上蓋10が設けられているが、
図1に示すように上蓋を開いた状態で移動用レール3上を移動させてネットコンベア装置2に設置し、設置後は
図2に示すように上蓋を閉じて使用する。このように、本発明のユニット型蒸機1は、移動用レール3上を移動させ、開閉可能な上蓋でネットコンベアを覆うように構成されているため、熟練した技術者でなくとも簡単に設置することが可能である。
【0020】
上記のようにネットコンベア21を覆うようにユニット型蒸機1を設置した後、ガスバーナー13により貯水タンク12内の水を沸騰させることで、筐体上部の上蓋10と貯水タンク12の間の第1の空間14を通過するネットコンベア上の麺線群を貯水タンク12からの蒸気によって蒸煮することができる。第1の空間14は、麺線群を搬送するネットコンベア21が通過できる程度の空間であれば十分である。ネットコンベア21は、金属製の網目部材より構成されてもよく、網目部材を通過した蒸気によって麺線群を蒸煮することができる。
【0021】
ネットコンベア21は、コンベア上に載置した麺線群をユニット型蒸機1の筐体内部へ搬送し、第1の空間14において蒸煮された麺線群を、ネットコンベアの終端部23から次工程へ向けて排出した後、ユニット型蒸機の筐体内のガスバーナー下方における第2の空間15を通過して、再度、ネットコンベア装置の始端部22へ戻るように構成される。
【0022】
なお、ユニット型蒸機の材質は特に限定されないが、剛性と保温性を持ったステンレス等の素材が好適である。
−複数のユニット型蒸機を連結させた食品蒸煮装置−
【0023】
ユニット式蒸機単体でも麺線群の蒸煮を行うことも可能であるが、蒸煮処理を短縮して生産性を向上させるには、複数のユニット式蒸機を連結させて使用するのが望ましい。
【0024】
下記の
図3はネットコンベア装置の斜視図であり、下記の
図4はネットコンベア装置の平面図であり、下記の
図5は複数のユニット型蒸機をネットコンベア装置に設置した食品蒸煮装置の斜視図であり、下記の
図6はネットコンベア装置のカバー部材の横面図である。
【0025】
図3に示すように、ネットコンベア装置2のネットコンベア21は、等間隔に配置された複数の脚部20により支持されている。ユニット型蒸機1は、ネットコンベア装置2の搬送方向に対して直交して配置された一組の移動用レール3上を移動させることで、
図5に示すようにネットコンベア装置の下方に設けられた設置用レール4上に設置される。レール同士の干渉を回避するため、
図4に示すようにネットコンベア装置の搬送方向に対して一組の移動用レール3を左右交互に設置するのが望ましい。
【0026】
ユニット型蒸機1をネットコンベア装置2に移動するための移動用レール3は、
図5に示すようにネットコンベア装置の脚部に収納するようにしてもよい。
【0027】
また、ネットコンベア装置の各脚部の上部には、装着した各ユニット型蒸機から蒸気が漏れるのを防ぐためにカバー部材24が設けられている。カバー部材24には、前後に装着されるユニット型蒸機の上蓋との接合部分を
図6に示すように耐熱パッキン25を設けるのが好ましい。
【0028】
ネットコンベア装置に装着するユニット型蒸機の数は、生産量や蒸煮時間に応じて適宜選択することができる。使用していないユニット型蒸機については、例えば、蒸煮した麺線群のフライに用いられるパーム油の入った一斗缶を貯水タンクに入れ、加熱・保温するために利用することも可能である。
【0029】
なお、本実施例では、蒸煮対象として麺線群を例示したが、本発明は、麺線群以外の食品の蒸煮にも利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ユニット型蒸機
10 上蓋
11 筐体
12 貯水タンク
13 ガスバーナー
14 第1の空間
15 第2の空間
16 水位計
17 注水口
18 排水口
19 車輪
2 ネットコンベア装置
20 脚部
21 ネットコンベア
22 始端部
23 終端部
24 カバー部材
25 耐熱パッキン
3 移動用レール
30 移動用レール脚部
4 設置用レール
5 食品蒸煮装置