(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
最初にプラズマ処理装置について説明する。本実施例では、
図1のプラズマ処理装置の構成図に示すようにプラズマ処理装置1は、プラズマ処理部10と解析部20と入力部30と出力部31と通信インタフェース部(通信IF部)32とを有し、これらはバス33を介して相互に接続されている。
【0017】
プラズマ処理部10はプラズマ処理室11と分光器12と制御部13と記憶部14とインタフェース部(IF部)15とを備え、プラズマ処理室11は、プラズマを生成させてウェハをエッチングし、分光器12は、プラズマ処理が行われる間にプラズマの発光データやウェハ表面やプラズマ処理室内壁面での反射光である分光器計測データを取得する。分光器計測データは、IF部15を介して解析部20の有する記憶部22に格納される。
【0018】
制御部13は、プラズマ処理室11での処理を制御する。制御部13は、後述の予測モデルを用いてプラズマ処理の処理結果指標を予測し、プラズマ処理条件を調整する処理(Advanced Process Control:APC、以下、APCと称する。)を行う。プラズマ処理部10の詳細を後述の
図2にて説明する。また、制御部13のAPCの処理の詳細についても後述の
図3にて説明する。
【0019】
解析部20は、処理結果指標の予測に用いるデータ項目を特定し、予測モデルを作成する処理を行う。解析部20は、データを解析する演算部21と、記憶部22と、インタフェース部(IF部)212を備えている。
【0020】
記憶部22は、プラズマ処理を行ったときに得られた分光器の計測値を記憶する分光器計測データ記憶領域23と、プラズマ処理を行ったときの処理結果指標を記憶する処理結果指標データ記憶領域24と、プラズマに含まれる元素や化合物の発する光の波長を記憶するエレメント波長データ記憶領域25と、分光器計測データのばらつきを比較するための参照用データである参照用分光器計測データ記憶領域26と、解析の判定に用いる閾値を記憶する閾値データ記憶領域27と、予測モデルの作成に用いるデータの候補を記憶するモニタ候補データ記憶領域28と、発光強度と処理結果指標の相関係数や発光強度のばらつきを示す値を記憶する相関・ばらつきデータ記憶領域29と、予測モデルの作成に用いるデータを記憶するモニタデータ記憶領域210と、作成した予測モデルを記憶するための予測モデルデータ記憶領域211とを備えている。尚、エレメントとは、原子や化合物等のことである。
【0021】
演算部21は、記憶部22の分光器計測データ記憶領域23に記憶された分光器計測データと、処理結果指標データ記憶領域24に記憶された処理結果指標データと、エレメント波長データ記憶領域25に記憶された波長の情報と、参照用分光器計測データ記憶領域26に記憶された参照用の分光器計測データと、閾値データ記憶領域27に格納された閾値データと、を用いて予測モデル作成に用いるデータを特定し、特定したデータを用いてプラズマ処理の結果指標を予測する予測モデルを作成して予測モデルデータ記憶領域211に格納する処理を行う。また、演算部21の行う解析処理の詳細については、後述する。
【0022】
入力部30は、ユーザ操作による情報入力を受け付ける機器であり、例えば、マウスやキーボード等である。出力部31は、ユーザに対して情報を出力するディスプレイやプリンタ等である。通信IF部32は、バス33や外部ネットワーク等を介して他の装置(処理結果指標を計測する検査装置等とも接続可能である)やシステム(既存の生産管理システム等とも接続可能である)と接続し情報送受信を行うためのインタフェースである。
【0023】
バス33は、各部(10,20,30,31,32)を連結する。各部のIF部(15,212等)は、バス33を介して情報送受信を行うためのインタフェースである。なお、解析部20を解析装置として独立させて、プラズマ処理部10からなるプラズマ処理装置にIF部212を介して接続される形態としても良い。
【0024】
次にプラズマ処理部について説明する。プラズマ処理部10は、プラズマ処理室11と分光器12と制御部13と記憶部14とIF部15とを備えている。プラズマ処理室11は、
図2に示すように真空排気手段(図示せず)で内部を真空に排気されるチャンバ111と、電源(図示せず)により高周波電力が供給されて真空に排気されたチャンバ111の内部にプラズマを生成させる一対の電極112a及び112bと、チャンバ111の内部を外側から観察する窓115と、真空に排気されたチャンバ111の内部にウェハ114をプラズマ処理するためのプラズマ処理ガスを供給するガス供給部117とを備えている。尚、ガス供給部117は、複数の種類のガス(CF
4、CHF
3、Ar等)をそれぞれ供給することが可能となっている。
【0025】
このような構成において、制御部13からの指示によってプラズマ処理室11は、試料であるウェハ114をチャンバ111の内部に配置された試料台である電極112bに載置してチャンバ111の内部を排気手段(図示せず)で真空に排気した状態で、ガス供給部117からプラズマ処理ガスを供給し、電源(図示せず)により電極112a及び電極112bに高周波電力を印加することによって、電極112aと112bとの間にプラズマ処理ガスをプラズマ化させる。プラズマ化されたガスをウェハ114に反応させることによりウェハ114をエッチングする。
【0026】
プラズマ113は、ガス供給部117から供給されたプラズマ処理ガスに含まれるエレメントやウェハ114からエッチングの過程で発生したエレメントを含んでおり、プラズマ化されたガスに含まれているエレメントに応じた波長の光116を発生させる。
【0027】
発生した光116は、窓115を通して分光器12にて計測され、IF部15を介して解析部20の記憶部22の分光器計測データ記憶領域23に記憶される。尚、外部光源(図示せず)を用いてチャンバ111の壁面やウェハ114に光を照射し、分光器12でその反射光や透過光を計測するようにしても良い。
【0028】
制御部13は、プラズマ処理室11の制御に加えて、後述の処理結果指標の予測とプラズマ処理条件の制御(APC)に示す、分光器12で計測された分光器計測データを入力としてレシピを変更する処理も行う。記憶部14は、処理結果指標の予測値を算出するための計算式として、後述の予測モデルデータ記憶領域211に記憶されるデータのコピーが記憶される。
【0029】
プラズマ処理の終了後、処理されたウェハ114は、チャンバ111から搬出されて検査装置等の別の装置に搬送される。また、新たな別のウェハ114がプラズマ処理部10に搬入されてプラズマ処理が行われる。処理されたウェハ114は、検査装置等の別の装置にてプラズマ処理の結果として得られるパターンの形状の寸法などが計測される。この形状の寸法などは処理結果指標データとして、記憶部22の処理結果指標データ記憶領域24に記憶される。
【0030】
次に分光器計測データについて説明する。
図5に分光器12にて計測されたプラズマ発光の分光器計測データの例として波形信号301を示す。分光器計測データの波形信号301は、波長と時間の2次元の要素を持ち、各波長、各時間についてそれぞれ計測された発光強度の値を表している。
【0031】
また、
図4に分光器計測データの各波長についてそれぞれ計測された発光強度の値の時間平均を計算した値の例を示す。時間平均は、例えば、所定のプラズマ処理ガスによるプラズマ処理の開始から終了までの時間について平均が取れられる。この分光器計測データの平均値は、計測されたウェハのIDと共に後述の分光器計測データ記憶領域23に格納される。尚、分光器計測データ記憶領域23に格納される値は、時間区間の平均値に限らず、最大値や最小値、中央値などの値でも良い。
【0032】
次にAPCを用いたプラズマ処理条件の制御について説明する。
図3に制御部13にて行われるAPCの処理の例を示す。ウェハのプラズマ処理が完了すると、APCを実行するように設定されている場合、制御部13は、記憶部14に格納されている予測モデルで指定された波長や波長の組合せについて分光器12で計測した分光器計測データの発光強度の平均値を算出する。または発光強度の平均値を別の発光強度の平均値で除した値を算出する(S101)。以降では、発光強度の平均値や発光強度の平均値を別の発光強度の平均値で除した値を発光強度モニタ値と呼ぶ。なお、発光強度の最大値や最小値、中央値を発光強度モニタ値としてもよい。
【0033】
次に制御部13は、記憶部14に格納されている予測モデルで指定された係数を発光強度モニタ値に掛けることにより、処理結果指標の予測値を算出する(S102)。さらに制御部13は、処理結果指標の予測値と目標値の差分に基づいてプラズマ処理条件を調整する(S103)。プラズマ処理条件としては、例えば、ガス供給部1117から供給するプラズマ処理ガスの流量(ガス流量)が調整される。また、S103においては、プラズマ処理条件の調整をするだけでなく、処理結果指標の予測値と目標値の差分が予め定めた閾値よりも大きい場合に異常としてアラームを報知する構成としても良い。
【0034】
次に解析部について説明する。
図1に示すように解析部20は、演算部21と記憶部22とIF部212を備える。記憶部22は、分光器計測データ記憶領域23と処理結果指標データ記憶領域24とエレメント波長データ記憶領域25と参照用分光器計測データ記憶領域26と閾値データ記憶領域27とモニタ候補データ記憶領域28と相関・ばらつきデータ記憶領域29とモニタデータ記憶領域210と予測モデルデータ記憶領域211とを備えている。
【0035】
分光器計測データ記憶領域23には、ウェハ毎にプラズマ処理中に分光器12で計測されて得られた分光器計測データを特定する情報が格納される。
図6は、分光器計測データ記憶領域23の例である分光器計測データテーブル23aを示す。本テーブルは、ウェハID欄23b、発光強度欄23c等の各フィールドを有する。ウェハID欄23bには、ウェハ114を特定する情報が格納される。ウェハID欄23bに格納される値は、後述する処理結果指標データテーブル24aのウェハID欄24bに格納された値と対応付けられており、それぞれのウェハをプラズマ処理する際に得られた分光器計測データと処理結果指標とを対応付けられるようになっている。
【0036】
発光強度欄23cには、分光器12により計測された分光器計測データを特定する情報が格納される。発光強度欄23cは、
図6の23dに示すように波長ごとにフィールドが分割されており、それぞれのフィールドには各波長における発光強度をプラズマ処理時間で平均した値が格納される。また、各行がその分光器計測データを計測したウェハのIDと対応付くようになっている。
【0037】
尚、格納される分光器計測データは、ウェハをエッチングするためのプラズマ処理の際に得られた分光器計測データであっても良いし、ウェハをエッチングする前にプラズマ処理室11の状態を整えるために行われるプラズマ処理の際に得られた分光器計測データであってもよい。また、格納される値は、発光強度のプラズマ処理時間での平均値ではなく、最大値や最小値、中央値であっても良いし、プラズマ処理の中間時点での発光強度の値など、ある指定した時間における発光強度の値であっても良い。
【0038】
処理結果指標データ記憶領域24には、ウェハ毎のプラズマ処理の結果を特定する情報が格納される。
図7は、処理結果指標データ記憶領域24の例である処理結果指標データテーブル24aを示す。本テーブルは、ウェハID欄24b、処理結果指標欄24c等の各フィールドを有する。ウェハID欄24bには、ウェハ114を特定する情報が格納される。ウェハID欄24bに格納される値は、分光器計測データテーブル23aのウェハID欄23bに格納された値と対応付けられている。処理結果指標欄24cには、プラズマ処理の結果を特定する情報が格納される。
【0039】
例えば、プラズマ処理後にプラズマ処理装置1に接続された計測装置などを用いてウェハID欄23bにて特定されるウェハ114の表面形状を計測した結果(例えば、測長SEMや光学式計測装置などの計測装置で計測したウェハ114上に形成されたパターンの寸法、パターン間の寸法など)が格納される。ウェハ毎に表面形状の寸法情報が通信IF部32を介して処理結果指標データ記憶領域24に格納される。また、ウェハ毎にプラズマ処理条件が調整された場合には、プラズマ処理条件の調整量と処理結果指標の変更量の相関関係の関数を用いてプラズマ処理条件の調整量による処理結果指標の変更量を算出し、計測された処理結果指標を処理結果指標の変更量により補正した値を処理結果指標データ記憶領域24に格納してもよい。
【0040】
エレメント波長データ記憶領域25には、プラズマに含まれるエレメントの発する光の波長を特定する情報が格納される。
図8は、エレメント波長データ記憶領域25の例であるエレメント波長データテーブル25aを示す。本テーブルは、エレメント欄25bと波長欄25c等の各フィールドを有する。エレメント欄25bには、プラズマ中に含まれるエレメント(元素や化合物)の候補を特定する情報が格納される。波長欄25cには、エレメントの発する光の波長を特定する情報が格納される。
【0041】
参照用分光器計測データ記憶領域26には、分光器計測データの参照値として処理結果指標データと対応付けられていない分光器計測データがウェハ毎に格納される。格納される分光器計測データは、例えば、抜き取り計測を行ったために処理結果指標を計測できないウェハをプラズマ処理した場合の分光器計測データや寸法など処理結果指標を計測できないダミーのウェハをプラズマ処理したときの分光器計測データが格納される。尚、格納されるデータは、プラズマ処理装置1以外のプラズマ処理装置で計測された分光器計測データであってもよい。
【0042】
図9は、参照用分光器計測データ記憶領域26の例である参照用分光器計測データテーブル26aを示す。本テーブルは、参照用ウェハID欄26b、参照用ウェハ発光強度欄26c、等の各フィールドを有する。参照用ウェハID欄26bには、ウェハ114を特定する情報が格納される。参照用ウェハ発光強度欄26cには、分光器12で計測された分光器計測データを特定する情報が格納される。参照用ウェハ発光強度欄26cは、
図9の26dに示すように波長毎にフィールドが分割されており、それぞれのフィールドには各波長における発光強度をプラズマ処理時間で平均した値が格納される。
【0043】
また、各行がその分光器計測データを計測したウェハのIDと対応付くようになっている。参照用ウェハ発光強度欄26cは、分光器計測データテーブル23aの発光強度欄23cと対応付く発光強度の計算値が格納される。例えば、発光強度欄23cにウェハを加工するためのプラズマ処理の際に得られた分光器計測データが格納される場合には、参照用ウェハ発光強度欄26cにも同様の分光器計測データが格納され、発光強度欄23cにウェハをエッチングする前にプラズマ処理室11の状態を整えるために行われるプラズマ処理の際に得られた分光器計測データが格納される場合には、参照用ウェハ発光強度欄26cにも同様の分光器計測データが格納される。閾値データ記憶領域27には、後述する解析処理に用いる閾値を特定する情報が格納される。
【0044】
図10は、閾値データ記憶領域27の例である閾値データテーブル27aを示す。本テーブルは、閾値1欄27b、閾値2欄27c、閾値3欄27d等の各フィールドを有する。
閾値1欄27bには、後述する解析処理にて相関係数の判定に用いる閾値が格納される。
閾値2欄27cには、後述する解析処理にて変動係数の判定に用いる閾値が格納される。
そして閾値3欄27dには、後述する解析処理にて標準偏差比の判定に用いる閾値が格納される。モニタ候補データ記憶領域28には、予測モデルの作成に用いるデータ項目の候補について発光強度モニタ値を特定する情報が格納される。
【0045】
図11は、モニタ候補データ記憶領域28の例であるモニタ候補データテーブル28aを示す。本テーブルは、ウェハID欄28b、発光強度モニタ値候補欄28c等の各フィールドを有する。ウェハID欄28bには、ウェハ114を特定する情報が格納される。ウェハID欄28bに格納される値は、前述の分光器計測データテーブル23aのウェハID欄23bに格納された値と対応付けられている。従って、処理結果指標データテーブル24aのウェハID欄24bに格納された値と対応付けられている。
【0046】
発光強度モニタ値候補欄28cには、分光器計測データテーブル23aの発光強度欄23cの特定の波長に格納された値、または複数の波長に格納された値の比が格納される。発光強度モニタ値候補欄28cは、
図11の28dに示すようにデータ項目ごとにフィールドが分割されており、それぞれのフィールドは波長または複数の波長の比を表している。例えば、「707nm」の列には、各ウェハにおける707nmの波長における発光強度の値が格納される。また「288nm/707nm」の列には、各ウェハにおいて288nmの波長における発光強度の値を707nmの波長における発光強度で除した値が格納される。尚、格納される値は、指定された波長を含む予め定められた範囲(プラスマイナス数nmの範囲)における発光強度の最大値や平均値としてもよい。
【0047】
相関・ばらつきデータ記憶領域29には、発光強度モニタ値を算出するデータ項目(波長または複数の波長の組合せ)毎に発光強度モニタ値と処理結果指標データとの相関を特定する情報や発光強度モニタ値のばらつきを特定する情報と、データ項目を相関やばらつきで評価した結果を特定する情報が格納される。
図12は、相関・ばらつきデータ記憶領域29の例である相関・ばらつきデータテーブル29aを示す。本テーブルは、データ項目欄29b、相関係数欄29c、相関判定欄29d、変動係数欄29e、標準偏差比欄29f、変動係数判定欄29g、標準偏差比判定欄29h、選択データ項目欄29i等の各フィールドを有する。
【0048】
データ項目欄29bには、発光強度モニタ値を算出するための波長または複数の波長を特定する情報が格納される。データ項目欄29bの各行は、モニタ候補データテーブル28aの発光強度モニタ値候補欄28cの各列と対応付けられている。相関係数欄29cには、データ項目欄29bで特定される発光強度モニタ値と処理結果指標データとの相関係数を特定する情報が格納される。相関判定欄29dには、相関係数欄29cに格納された相関係数が所定の閾値よりも大きいデータ項目を特定するための情報が格納される。変動係数欄29eには、データ項目欄29bで特定される発光強度モニタ値の変動係数を特定する情報が格納される。
【0049】
標準偏差比欄29fには、データ項目欄29bで特定される発光強度モニタ値の標準偏差比を特定する情報が格納される。変動係数判定欄29gには、変動係数欄29eに格納された変動係数が、所定の閾値より大きいデータ項目を特定するための情報が格納される。標準偏差比判定欄29hには、標準偏差比欄29fに格納された標準偏差比が所定の閾値より大きいデータ項目を特定するための情報が格納される。選択データ項目欄29iには、データ項目欄29bに格納されたデータ項目の中で予測モデルの作成に用いるデータ項目を特定するための情報が格納される。モニタデータ記憶領域210には、予測モデルの作成に用いる発光強度モニタ値を特定する情報が格納される。
【0050】
図13は、モニタデータ記憶領域210の例であるモニタデータテーブル210aを示す。本テーブルは、ウェハID欄210b、発光強度モニタ値欄210c、等の各フィールドを有する。ウェハID欄210bには、ウェハ114を特定する情報が格納される。ウェハID欄210bに格納される値は、前述のモニタ候補データテーブル28aのウェハID欄28bと対応付けられている。発光強度モニタ値欄210cには、分光器計測データテーブル23aの発光強度欄23cの特定の波長に格納された値、または複数の波長に格納された値の比が格納される。
【0051】
発光強度モニタ値210cは、
図13の210dに示すようにデータ項目ごとにフィールドが分割されており、それぞれのフィールドは波長または複数の波長の組合せを表している。前述のモニタ候補データテーブル28aの発光強度モニタ値候補欄28cのデータ項目うち、後述の解析処理で選択されたデータ項目の発光強度モニタ値が格納される。予測モデルデータ記憶領域211には、作成した予測モデルのデータ項目や係数を特定する情報が格納される。
【0052】
図14は、予測モデルデータ記憶領域211の例である予測モデルデータテーブル211aを示す。本テーブルは、定数項欄211b、予測モデルデータ項目欄211c、係数欄211d、等の各フィールドを有する。定数項欄211bには、予測モデルの定数項(切片)の値を特定する情報が格納される。予測モデルデータ項目欄211cには、発光強度モニタ値を算出する波長また波長の組合せを特定する情報が格納される。格納される情報は、後述の解析処理で選択されたデータ項目であり、相関・ばらつきデータテーブル29aの選択データ項目欄29iに格納された情報と対応付けられている。
【0053】
係数欄211dには、予測モデルデータ項目欄211cに格納された波長または波長の組合せで計算される発光強度モニタ値に掛ける係数を特定する情報が格納される。定数項欄211bに格納された情報と、発光強度モニタ値に係数欄211dの係数を掛けた値と、の和が処理結果指標データの予測値として利用される。
【0054】
次に解析部20の解析処理について説明する。本実施例による解析処理の方法は、プラズマを用いてウェハを処理するプラズマ処理において、処理結果指標を予測するための分光器計測データのデータ項目(波長または波長の組合せ)を特定する解析方法である。本実施例による解析処理の方法は、分光器計測データのデータ項目それぞれについて発光強度モニタ値と処理結果指標との相関の強さと、発光強度モニタ値のばらつきの大きさを示す変動係数と標準偏差比の大きさを評価し、処理結果指標の予測に用いるデータ項目を特定し、処理結果指標を予測する予測モデルを作成する。以下に、本実施例による解析処理の方法を具体的に説明する。
【0055】
生産工程でプラズマ処理装置1を用いて複数のウェハを順次、プラズマ処理する前の段階としてプラズマ処理装置1を使用する装置管理者が処理結果指標の予測に用いる予測モデルを作成するために解析部20において解析処理を実行する。予測モデルは、プラズマ処理の対象であるウェハ表面上の膜の構成などによって変化するため、プラズマ処理の立上げ時には、適宜、本解析処理を実行することが必要になる。本解析処理により決定したプラズマ処理の条件を用いて生産工程(量産工程)においてプラズマ処理装置1を用いて複数のウェハが順次、プラズマ処理される。次に解析部20において実行される解析処理の流れを
図15を用いて説明する。
【0056】
図16に示すような表示画面D100上で装置管理者が解析処理の実行を入力すると解析部20は解析処理を行う。最初にエレメント指定による予測モデルの作成の場合には(S201、Yes)、指定されたエレメントの発光を示す波長および波長の組合せを発光強度モニタ値の算出に用いるデータ項目として相関・ばらつきデータ記憶領域29に格納する(S202)。波長指定による予測モデルの作成の場合には、装置管理者の指定した波長をデータ項目として相関・ばらつきデータ記憶領域29に格納する(S201、No)。
【0057】
次に格納されたデータ項目それぞれについて発光強度モニタ値を算出し、発光強度モニタ値と処理結果指標データとの相関係数を算出し(S203〜S206)、相関の強いデータ項目を特定する(S207)。相関の強いデータ項目については、それぞれ、発光強度モニタ値のばらつきを表す指標である変動係数と標準偏差比を算出する(S208〜S211)。さらに算出した変動係数の大きいデータ項目と標準偏差比の大きいデータ項目を特定し(S212、S213)、両者の大きいデータ項目(発光強度モニタ値のばらつきの大きいデータ項目)を予測モデルに用いるデータ項目として特定する(S214)。
【0058】
特定したデータ項目における発光強度モニタ値と処理結果指標データとを用いて予測モデルを作成し(S215)、作成した予測モデルを表示画面D200上で装置管理者に提示することにより(S216)解析処理を終了する。次に、各ステップの詳細を説明する。
【0059】
S201における演算部21は、
図16に示す表示画面D100上で、装置管理者によって指定エレメント欄D101に波長を計算するエレメントが入力され、実行1ボタンD102がクリックされた場合、または、装置管理者によって指定データ項目欄D103に波長または波長の組合せが入力され、実行2ボタンD104がクリックされると、解析処理を開始する。演算部21は、実行1ボタンD102がクリックされた場合、すなわちエレメント指定による解析処理を実行する場合には、次に処理S202に進む。また、実行2ボタンD104がクリックされた場合、すなわち、波長指定により解析処理を実行する場合には、指定データ項目欄D103に格納された情報を相関・ばらつきデータテーブル29aのデータ項目欄29bに格納し、処理S203に進む。
【0060】
S202における演算部21は、エレメントの情報を用いて相関・ばらつきデータテーブル29aのデータ項目欄29bに格納する情報を作成する。演算部21は、指定エレメント欄D101に格納されたエレメントの情報を用いてエレメント波長データテーブル25aのエレメント欄25bについて該当するエレメントを特定し、当該エレメントと同一行に格納されている波長欄25cの情報を全て取得する。取得した波長については、波長の比を取る組合せ(例:252nm/707nm)を作成し、取得した波長および作成した波長の組合せの情報を相関・ばらつきデータテーブル29aのデータ項目欄29bに格納する。S203における演算部21は、相関・ばらつきデータテーブル29aのデータ項目欄29bに格納されたそれぞれのデータ項目について次の処理S204、205を実行する。
【0061】
S204における演算部21は、データ項目欄29bに格納された波長または波長の組合せの情報を用いて分光器計測データテーブル23aの発光強度欄23cの当該波長にて指定される発光強度をウェハIDそれぞれについて取得し、取得した値を発光強度モニタ値としてモニタ値候補データテーブル28aの発光強度モニタ値候補欄28cに格納する。さらに発光強度モニタ値候補欄28cには、データ項目(波長・波長の組合せ)を併せて格納する。また、データ項目が波長の組合せの場合には、1つの指定される波長における発光強度をもう1つの指定される波長における発光強度で除した値を発光強度モニタ値として発光強度モニタ値候補欄28cに格納する。
【0062】
S205における演算部21は、さらに発光強度モニタ値と処理結果指標の相関の強さを示す情報である相関係数を以下の式(1)を用いて算出する。
【0064】
上記の式において、crは相関係数を示している。eiは発光強度モニタ値の第i番目の値(発光強度モニタ値候補欄28cの当該データ項目の第i行に格納された値)を、riは処理結果指標データテーブル24aの処理結果指標データ欄24bの第i行目に格納された値を示している。meは、発光強度モニタ値の平均値を示し、mrは処理結果指標データ欄24bに格納された値の平均値を示している。nは、処理結果指標データテーブル24aおよびモニタ候補データテーブル28aの行数を示している。Σ記号は、処理結果指標データテーブル24aおよびモニタ候補データテーブル28aの全ての行についての和をとることを示している。演算部21は、算出した相関係数(cr)を相関・ばらつきデータテーブル29aの相関係数欄29cの当該データ項目の行に格納する。
【0065】
S206における演算部21は、全てのデータ項目について相関係数の算出を行った場合には、処理S207に進む。まだ計算していないデータ項目がある場合には、再度、処理S204、S205を実行する。S207における演算部21は、相関・ばらつきデータテーブル29aの相関係数欄29cを参照し、相関の強いデータ項目を特定する。演算部21は、相関・ばらつきデータテーブル29aの各行について相関係数欄29cに格納された値の絶対値と、閾値データテーブル27aの閾値1欄27bに格納された値とを比較し、相関係数欄29cに格納された値の絶対値の方が大きい場合には、当該行の相関判定欄29dに相関の強いことを示す「○」を入力する。
【0066】
尚、相関の強さを判定するための閾値は、ウェハ数(モニタ候補データテーブル28aの行数)に基づいてウェハ数が小さいほど大きくなるように補正をしてもよい。また、本実施例では絶対値に基づいて相関の強さを判定したが、相関の検定を用いて相関の有無を判定し、相関のあると判定された場合に「○」を入力する方式としてもよい。S208における演算部21は、相関の強いと判定したデータ項目それぞれについて以下の処理S209、S210を実行する。
【0067】
S209における演算部21は、相関の強いと判定したデータ項目、すなわち相関・ばらつきデータ項テーブル29aの相関判定欄29dに「○」の格納されたデータ項目について発光強度モニタ値のばらつきの大きさを示す値として発光強度モニタ値の標準偏差を平均値で除した値である変動係数を以下の式(2)を用いて算出する。
【0069】
上記の式において、cvは変動係数を示している。eiは、発光強度モニタ値の第i番目の値(発光強度モニタ値候補欄28cの当該データ項目の第i行に格納された値)を示している。meは、発光強度モニタ値の平均値を示している。nは、モニタ候補データテーブル28aの行数を示している。Σ記号は、モニタ候補データテーブル28aの全ての行についての和をとることを示している。演算部21は、算出した変動係数(cv)を相関・ばらつきデータテーブル29aの変動係数欄29eの当該データ項目の行に格納する。尚、ここで変動係数を式(2)において平均値meの代わりに中央値を用いて算出してもよい。
【0070】
S210における演算部21は、相関の強いと判定したデータ項目、すなわち相関・ばらつきデータ項テーブル29aの相関判定欄29dに○の格納されたデータ項目について発光強度モニタ値のばらつきの大きさを示す値として発光強度モニタ値の標準偏差を参照用ウェハの分光器計測データで算出した発光強度モニタ値の標準偏差で除した値である標準偏差比を以下の式(3)を用いて算出する。
【0072】
上記の式において、srは標準偏差比を示している。eiは発光強度モニタ値の第i番目の値(発光強度モニタ値候補欄28cの当該データ項目の第i行に格納された値)を示している。meは発光強度モニタ値の平均値を示している。nは、モニタ候補データテーブル28aの行数を示している。また、reiは参照用分光器計測データテーブル26aの参照用ウェハ発光強度欄26cについて当該データ項目で指定される波長または波長の組合せで算出した発光強度モニタ値の第i番目の値(参照用ウェハ発光強度欄26cの第i行について算出した値)を示している。
【0073】
mreは、reiの平均値を示している。mは、参照用分光器計測データテーブル26aの行数を示している。Σ記号は、モニタ候補データテーブル28aまたは参照用分光器計測データテーブル26aの全ての行についての和をとることを示している。演算部21は、算出した標準偏差比(sr)を相関・ばらつきデータテーブル29aの標準偏差比欄29fの当該データ項目の行に格納する。尚、ここで標準偏差比を式(3)において平均値meやmreの代わりに中央値を用いて算出してもよい。
【0074】
S211における演算部21は、相関の強いと判定した全てのデータ項目について変動係数および標準偏差比の算出を行った場合には、処理S212に進む。まだ計算していないデータ項目がある場合には、再度、処理S209、S210を実行する。S212における演算部21は、相関・ばらつきデータテーブル29aの変動係数欄29eを参照し、変動係数の大きいデータ項目を特定する。演算部21は、相関・ばらつきデータテーブル29aのうち変動係数を計算した行、すなわち相関が強いと判定した行について、変動係数欄29eに格納された値の大きいものから順に順位付けを行い、各データ項目について順位と相関が強いと判定した行数の比を算出し、前記比が閾値データテーブル27aの閾値2欄27cに格納された値よりも小さい行については、当該行の変動係数判定欄29gに変動係数が大きいことを示す「○」を入力する。本処理により、相関が強いと判定したデータ項目の中で相対的に変動係数が大きいデータ項目には「○」が入力される。
【0075】
尚、変動係数の判定方法として閾値2欄27cに変動係数の値と比較するための値を格納し、相関・ばらつきデータテーブル29aの各行について変動係数欄29eに格納された値と、閾値2欄27cに格納された値とを比較し、変動係数欄29eに格納された値の方が大きい場合には、当該行の変動係数判定欄29gに変動係数の大きいことを示す「○」を入力する形式としても良い。
【0076】
S213における演算部21は、相関・ばらつきデータテーブル29aの標準偏差比欄29fを参照し、標準偏差比の大きいデータ項目を特定する。演算部21は、相関・ばらつきデータテーブル29aのうち標準偏差比を計算した行、すなわち相関が強いと判定した行について標準偏差比欄29fに格納された値の大きいものから順に順位付けを行い、各データ項目について順位と相関が強いと判定した行数の比を算出し、前記比が閾値データテーブル27aの閾値3欄27dに格納された値よりも小さい行については、当該行の標準偏差比判定欄29hに標準偏差比が大きいことを示す「○」を入力する。本処理により、相関が強いと判定したデータ項目のうち、相対的に標準偏差比が大きいデータ項目には「○」が入力される。
【0077】
尚、標準偏差比の判定方法として閾値3欄27dに標準偏差比の値と比較するための値を格納し、相関・ばらつきデータテーブル29aの各行について標準偏差比欄29fに格納された値と、閾値3欄27dに格納された値とを比較し、標準偏差比欄29fに格納された値の方が大きい場合には、当該行の標準偏差比判定欄29hに標準偏差比の大きいことを示す「○」を入力する形式としても良い。
【0078】
S214における演算部21は、相関が強く、かつ、変動係数および標準偏差比の大きいデータ項目を予測モデルに用いるデータ項目として特定し、当該データ項目の発光強度モニタ値をモニタデータテーブル210aに格納する。演算部21は、相関・ばらつきデータテーブル29aの変動係数判定欄29gおよび標準偏差比判定欄29hのそれぞれに値の大きいことを示す「○」が格納された行を特定し、選択データ項目欄29iの当該行に予測モデルに用いるデータ項目を示す○を入力する。
【0079】
尚、本実施例においては、複数のデータ項目が選択されているが、後述の予測モデル作成処理(S215)において、1つのデータ項目を用いる単回帰によって予測モデルを作成する場合には、変動係数判定欄29gおよび標準偏差比判定欄29hに「○」の格納された行の中で相関係数の絶対値の最も大きい行を予測モデルに用いるデータ項目として特定してもよい。さらに演算部21は、モニタ候補データテーブル28aの発光強度モニタ値候補欄28cのうち、予測モデルに用いるデータ項目、すなわち選択データ項目欄29iに○の格納されたデータ項目に該当する列の情報をモニタデータテーブル28aの発光強度モニタ値欄210cに複製する。
【0080】
S215における演算部21は、選択されたデータ項目の発光強度モニタ値を用いて以下の式(4)で表される予測モデルを作成する。
【0082】
上記の式において、yは処理結果指標の予測値を示している。bは定数項(切片)を示している。xiは、選択したデータ項目における発光強度モニタ値を示している。aiは、選択したデータ項目における発光強度モニタ値に掛ける係数を示している。lは、選択したデータ項目の個数を示している。Σ記号は、選択したデータ項目について、発光強度モニタ値と係数の積の和を取ることを示している。式(4)は、一般的な線形回帰の形式であるので、特許文献1にある部分最小二乗法や最小二乗法で定数項および係数を算出することができる。最小二乗法を用いる場合には、定数項bおよび係数aiは以下の式(5)(6)(7)(8)(9)で求めることができる。
【0088】
上記の式において、Aは、定数項(切片)であるbの元となるa0と、係数であるai(i=1,…l)で表される行列を表している。Xは、モニタデータテーブル210aの発光強度モニタ値欄210cに格納される値であるxjk(j=1,…n,k=1,…l)と1により構成される行列を示している。xjkは、発光強度モニタ値欄210cのk番目のデータ項目(第k列)のj番目のウェハID(第j行)における発光強度モニタ値を示す。mxkは、発光強度モニタ値欄210cのk番目のデータ項目(第k列)に格納される発光強度モニタ値の行方向の平均値を示す。Yは、処理結果指標データテーブル24aの処理結果指標欄24cに格納される値であるyj(j=1,…n)により構成される行列を示している。yjは、処理結果指標欄24cのj番目のウェハID(第j行)における処理結果指標を示す。
【0089】
尚、式(5)により係数aiを算出する前に選択したデータ項目間において発光強度モニタ値の同士の相関が強い場合には、どちらか一方のデータ項目を削除して計算してもよい。演算部21は、予測モデルに用いるデータ項目を予測モデルデータテーブル211aの予測モデルデータ項目欄211cに格納し、作成した予測モデルの定数項を定数項欄211bに格納し、係数を係数欄211dの予測モデルデータ項目欄211cに対応付けて格納する。
【0090】
S216における演算部21は、解析処理の結果として作成した予測モデルを画面上に出力して処理を終了する。演算部21が装置管理者に提示する出力画面の一例を
図17に示す。
図17に示した出力画面には、予測モデルデータテーブル211に格納された予測モデルの情報をD201の表として表示する。装置管理者がこの予測モデルを用いてAPCを行う場合には、D202の「Yesボタン」をクリックする。クリックされると演算部21は、プラズマ処理部10の記憶部14に予測モデルのコピーを格納し、制御部13にAPCの実行指示を出し、解析処理を終了する。
【0091】
装置管理者がこの予測モデルを利用しない場合には、D203の「Noボタン」をクリックし、演算部21は、解析処理を終了する。また、相関・ばらつきデータテーブル29aに格納された情報がD204の表として表示する。装置管理者は、予測モデルに用いるデータ項目および予測モデルに用いるデータ項目の候補について相関やばらつきなどの情報を参照することができる。
【0092】
次に「ばらつき」によるデータ項目の選択について説明する。演算部21の行う、変動係数および標準偏差比によるデータ項目の選択の意味を
図18a、
図18b、
図19a、
図19bを用いて説明する。
【0093】
先ず、変動係数による選択の意味を
図18a及び
図18bを用いて説明する。
図18a及び
図18bのそれぞれの図は、発光強度モニタ値を横軸にとり、処理結果指標を縦軸にとった散布図である。
図18aは、変動係数の大きいデータ項目の例を示し、
図18bは、変動係数の小さいデータ項目の例を示している。
図18aのa1、a3、
図18bのb1、b3などの各点は、各ウェハにおける計測値を示しており、a1、b1は、予測モデルを作成する前に取得された発光強度モニタ値と処理結果指標の例を示している、
また、a3、b3は、予測モデル作成後にAPCを行う際に新たに取得された発光強度モニタ値と処理結果指標の例を示している。a3、b3などの各点は、a1、b1等の各点から発光強度モニタ値を同じ割合(Δm)だけ減じた点である。これは、分光器の接する計測窓の曇りなどにより、発光強度モニタ値がある一定の割合で減少した状態を示している。a1を用いて処理結果指標の予測モデルを作成する場合には、各点からの距離が最小となる直線としてa2の直線を示す関数が作成される。また、同様にb1を用いて予測モデルを作成する場合には、b2の直線を示す関数が作成される。
【0094】
このa2またはb2の予測モデルを用いてa3およびb3のデータについて発光強度モニタ値から処理結果指標を予測する場合、発光強度モニタ値の減少により処理結果指標の予測に誤差が生じる。この場合の誤差は、ΔpaおよびΔpbで与えられ、Δpaは、Δpbよりも小さい。変動係数の大きいデータ項目を用いて予測モデルを作成することにより、計測窓の曇りなどに起因する発光強度モニタ値の減少(もしくは増加)に対して誤差の小さい、ロバスト性を有する予測モデルを作成できる。次に、標準偏差比によるデータ項目の選択の意味を
図19a及び
図19bを用いて説明する。
【0095】
図19a及び
図19bのそれぞれの図の上部にあるグラフは、参照用分光器計測データにおける発光強度モニタ値を横軸にとった散布図であり、下部にあるグラフは、発光強度モニタ値を横軸にとり、処理結果指標を縦軸にとった散布図である。
図19aは、標準偏差比の大きいデータ項目の例を示し、
図19bは、標準偏差比の小さいデータ項目の例を示している。
図19aのa0、b0などの各点は、参照用分光器計測データの各ウェハにおける計測値を示しており、そのばらつきの大きさは、「stdRa」および「stdRb」で表される。
【0096】
図19aのa1、a3、
図19bのb1、b3などの各点は、各ウェハにおける計測値を示しており、a1、b1は、予測モデルを作成する前に取得された発光強度モニタ値と処理結果指標の例を示し、a3、b3は、予測モデル作成後にAPCを行う際に新たに取得された発光強度モニタ値と処理結果指標の例を示している。a1およびb1のばらつきは、「stda」、「stdb」で表される。
【0097】
a1を用いて処理結果指標の予測モデルを作成する場合には、各点からの距離が最小となる直線としてa2の直線を示す関数が作成される。また、同様にb1を用いて予測モデルを作成する場合には、b2の直線を示す関数が作成される。
【0098】
標準偏差比が大きい場合と比較して標準偏差比が小さい場合には、予測モデルの作成に用いたデータ(b1)の分布より、発光強度モニタ値が大きくばらつく可能性が高い。そのため。APCを行う際には、b3に示すようにb1の発光強度モニタ値の分布の外側に新たに発光強度モニタ値が計測される可能性が高い。分布の外側にデータが出力されると、予測モデルをデータの計測されていない範囲へ拡張(外挿)することになるため、誤差が拡大しやすい。標準偏差比の大きいデータ項目を用いて予測モデルを作成することにより、外挿による誤差の発生する可能性を低減できる。
【0099】
上述した通り、
図18及び19に示すように変動係数及び標準偏差比の大きいデータ項目を選択することにより、ロバスト性を有する予測モデルを作成できるが、理由は以下のように考えられる。
【0100】
通常の量産において、経時変化等により、例えば発光強度値は大きくばらつく場合がある。一方、発光強度値のばらつきが小さい発光の波長において予測モデルを作成した場合、量産データの発光強度値のばらつきが大きい場合における処理結果指標を前記作成された予測モデルによって予測モデル作成時における発光強度値のばらつき範囲外の量産データの発光強度値を予測することは困難となる。このような理由により、ロバスト性を有する予測モデルを作成するためには、変動係数及び標準偏差比の大きいデータ項目を選択して予測モデルを作成することが必要である。
【0101】
以上、本実施例に係る本発明は、プラズマ処理装置より所得されたデータを用いたデータの解析方法において、プラズマ処理の際に得られる複数の波長における発光強度を示す分光器計測データと、プラズマ処理をした半導体ウェハの寸法や加工の速度を示す処理結果指標データを取得し、分光器計測データの波長または波長の組合せであるデータ項目について、発光強度と処理結果指標データの間の相関係数と、発光強度のばらつきを示す変動係数または標準偏差比とを算出し、前記相関係数が大きく、かつ、変動係数または標準偏差比の大きいデータ項目を特定することであり、さらに当該データ項目の発光強度を用いて処理結果指標を予測する予測モデルを作成するようにしたものである。また、これらをプラズマ処理装置に適用したものである。
【0102】
尚、本発明の適用例は、プラズマ処理装置に限定されず、本発明に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法、本実施例に係るデータ解析を行う解析装置及び解析方法に適用することも可能である。
【0103】
前述したように本実施形態のプラズマ処理装置1(解析部20)が実行する解析方法を用いることによって、処理結果指標の高い予測精度を維持できるデータ項目を特定して予測モデルを作成できる。
【0104】
本実施例によれば、分光器計測データから発光強度モニタ値を算出するデータ項目(波長や波長の組合せ)を適切に求めることができるようになった。これにより、処理結果指標を高精度に予測でき、処理結果指標を更にばらつきを小さく制御することができるようになった。
【0105】
また、本発明により、変動係数の大きな波長を選択することで、発光強度の減少や増加に起因する予測精度の悪化を低減できる。また、標準偏差比の大きな波長を選択することで予測モデルの外挿による予測精度の悪化を低減できる。この2つの効果により、高い予測精度を維持するデータ項目を選択し、処理結果指標を予測することができる。
【0106】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。