特許第6643888号(P6643888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643888
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/167 20060101AFI20200130BHJP
   G21F 9/04 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   G01T1/167 A
   G21F9/04 D
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-242108(P2015-242108)
(22)【出願日】2015年12月11日
(65)【公開番号】特開2017-106858(P2017-106858A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】江原 克信
(72)【発明者】
【氏名】伊東 裕一
(72)【発明者】
【氏名】坂東 直人
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013-234868(JP,A)
【文献】 特開平6-344979(JP,A)
【文献】 特開平9-189797(JP,A)
【文献】 特開2011-191090(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0114833(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/167
G21F 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を測定対象物とする測定装置であって、
水に含まれる放射線量を測定する放射線測定手段と、
水の物性に関する指標を少なくとも2以上測定する水質測定手段と、
前記放射線測定手段及び前記水質測定手段が同じ測定領域において同じタイミングで測定した測定データを受け付けて、
測定データを逐次表示するための表示データであって、測定された前記放射線量が、前記指標のうち、いずれの指標とより相関しているのかを判断させるための表示データを出力する表示データ出力部とを備え
前記指標のうちいずれの指標が前記放射線量とより相関しているのかを判断することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
水を測定対象物とする測定装置であって、
水に含まれる放射線量を測定する放射線測定手段と、
水の物性に関する指標を少なくとも2以上測定する水質測定手段と、
前記放射線測定手段及び前記水質測定手段が同じ測定領域において同じタイミングで測定した測定データを受け付けて、
測定データを逐次表示するための表示データであって、測定された前記放射線量が、前記指標のうち、いずれの指標とより相関しているのかを判断させるための表示データを出力する表示データ出力部とを備え
前記放射線量とより相関している指標を強調して表示することを特徴とする測定装置。
【請求項3】
前記表示データを受信して、これを逐次表示する表示部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記放射線測定手段及び前記水質測定手段が同じ測定領域において同じタイミングで測定した測定データを受け付けて、該測定データに時間を示す時間データを紐付けて逐次記録する記録部をさらに備え、
前記表示部が、前記記録部が所定の時間データに紐付けて記録した測定データをさらに表示することを特徴とする請求項記載の測定装置。
【請求項5】
前記水質測定手段が測定する水の物性に関する指標が、濁度及びpH又は電気伝導率のいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至のうちいずれか記載の測定装置。
【請求項6】
前記指標が、濁度とpH又は電気伝導度であり、
測定された放射線量の増加に伴い濁度が増加した場合には放射線量と濁度とが相関していることを判断させるための表示データを出力し、測定された放射線量の増加に伴いpH又は電気伝導度が増加した場合には放射線量とpH又は電気伝導度とが相関していることを判断させるための表示データを出力することを特徴とする請求項記載の測定装置。
【請求項7】
前記表示部が、放射線量の時間変化と、濁度の時間変化と、pH、電気伝導率、ORP又はイオン濃度の時間変化とを比較可能に表示することを特徴とする請求項又は記載の測定装置。
【請求項8】
前記測定領域における位置データ、天候データ又は水深データを取得する領域データ取得手段をさらに備え、
前記放射線測定手段及び前記水質測定手段が測定した測定データに、前記放射線測定手段及び前記水質測定手段が測定した測定領域において、前記領域データ取得手段が取得した前記位置データ、前記天候データ又は水深データを紐付けて記録することを特徴とする請求項1乃至いずれか記載の測定装置。
【請求項9】
水を測定する方法であって、
水に含まれる放射線量及び少なくとも2以上の水の物性に関する指標を同じ測定領域において逐次同じタイミングで測定し、
測定された前記放射線量と前記指標とに基づいて、前記指標のうちいずれの指標が前記放射線量とより相関しているのかを判断することを特徴とする測定方法。
【請求項10】
請求項9記載の測定方法を使用して放射線源の状態を特定し、放射線源を除去することを特徴とする除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水中に浸漬して用いられる測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば原子力発電所から排出される排水や油・ガスを採掘する時に副次的に発生する随伴水の放射線量を測定して安全管理を行うものとして、例えば、水中に浸漬して放射線量を測定する特許文献1記載の装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−191090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の測定装置では、水中に存在する放射線量を測定することはできるが、その放射線源が水中でどのような状態で存在しているのかを特定することはできないので、特許文献1記載の測定装置を用いて、水中の放射線源の除去処理方法を確立することはできない。
【0005】
本願は上述した課題に鑑みてなされたものであって、水中に存在する放射線量を測定するとともに、水中に存在する放射線源の除去処理方法を確立することができる測定装置を提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の測定装置は、水を測定対象物とする測定装置であって、水に含まれる放射線量を測定する放射線測定手段と、水の物性に関する指標を少なくとも2以上測定する水質測定手段と、前記放射線測定手段及び前記水質測定手段が同じ測定領域において同じタイミングで測定した測定データを受け付けて、該測定データを逐次表示するための表示データを出力する表示データ出力部とを備えることを特徴とする。
より好ましくは、前記表示データを受け付けて表示する表示部をさらに備えるものを挙げることができる。
【0007】
これにより、放射線測定手段が測定した放射線量と、水質測定手段が測定した2以上の水の物性に関する指標とを表示部に逐次表示することが可能になるので、これらをそれぞれ比較して、いずれの指標が放射線量とより相関しているのかを見出すことができる。そして、この相関関係から水中に存在する放射線源の状態を特定することができるので、放射線源の除去処理プロセスを確立して放射線源を除去することができる。
【0008】
また、1つの測定装置に放射線測定手段及び水質測定手段を設けるとともに、同じ測定領域において同じタイミングでこれらが測定を行うので、別々に放射線測定手段及び水質測定手段を設けた場合と比べて、ほぼ同一の測定条件下で測定を行うことができ、信頼性の高い相関を見出すことができる。
【0009】
本発明の測定装置の具体的な一態様としては、前記放射線測定手段及び前記水質測定手段が同じ測定領域において同じタイミングで測定した測定データを受け付けて、該測定データに時間を示す時間データを紐付けて逐次記録する記録部をさらに備え、前記表示部が、前記記録部が所定の時間データに紐付けて記録した測定データをさらに表示するものを挙げることができる。
【0010】
これにより、放射線測定手段及び水質測定手段が測定した過去の測定データが時間に紐付けられて記録部に記録されるとともに、この記録部に記録された過去の測定データが表示部に表示されるので、過去の測定データが示す測定値を併せて確認すれば、測定値の変化が分かり、相関をより見出しやすくすることができる。
【0011】
本発明の測定装置の別の具体的な一態様としては、前記水質測定手段が測定する水の物性に関する指標が、濁度及びpH又は電気伝導率のいずれかを含むものを挙げることができる。
【0012】
これにより、放射線量と、濁度と、pH(又は電気伝導率)とが測定されるので、例えば放射線量が増加するとともに濁度が増加してpH(又は電気伝導率)が変わらない場合には、放射線量と濁度とが相関することが分かる。そして、この相関関係から放射線源が水中に溶解せずに、水中の土砂等に放射線源が付いていることが分かるので、放射線源の除去方法として、土砂等を除去する処理プロセスを確立することができる。一方で、放射線量が増加するとともに、濁度が変化せずpH(又は電気伝導率)が変化した場合には、放射線量とpH(又は電気伝導率)とが相関することが分かる。そして、この相関関係から放射線源が水中に溶解してイオン化していることが分かるので、放射線源の除去方法として、イオン交換膜や凝固剤等を用いてイオンを除去する処理プロセスを確立することができる。つまり、放射線量と、濁度と、pH(又は電気伝導率)とを測定することによって、放射線源が、水に溶解しているか否かとか、アルカリで溶けるのか酸性で溶けるのか、とか、固形物質に付着しているのか、イオンの状態で存在しているのかなどといった放射線源の状態を特定することができ、放射線源の除去処理プロセスを最適化することができる。
【0013】
本発明の測定装置の別の具体的な一態様としては、前記表示部が、放射線量の時間変化と、濁度の時間変化と、pH(又は電気伝導率)、ORP又はイオン濃度の時間変化とを比較可能に表示するものを挙げることができる。この比較可能に表示する方法としては、表示部が、放射線量の時間変化と、濁度の時間変化と、pH(又は電気伝導率)の時間変化とをグラフ形式で表示するものを挙げることができる。
【0014】
これにより、放射線量の時間変化と、濁度の時間変化と、pH(又は電気伝導率)の時間変化とを比較可能に表示するので、放射線量が、濁度又はpH(又は電気伝導率)のいずれと相関するのかを容易に判断することができ、また、これをグラフ形式で表示することによって視覚的な効果でより容易に、放射線量がいずれと相関しているのかを見出すことができる。そのため、水中における放射線源の状態をより簡単に特定することができ、迅速に放射線源の除去処理を行うことができる。
【0015】
本発明の測定装置の別の具体的な一態様としては、前記測定領域における位置データ又は天候データを取得する領域データ取得手段をさらに備え、前記放射線測定手段及び前記水質測定手段が測定した測定データに、前記放射線測定手段及び前記水質測定手段が測定した測定領域において、前記領域データ取得手段が取得した前記位置データ又は前記天候データを紐付けて記録するものを挙げることができる。
【0016】
これにより、例えば測定データに紐付けられた天候データから、測定データが取得されたときの天候が分かるので、例えば雨天の際に放射線量が増加していれば、雨による環境放射線によって放射線量が増加したこと等を推定することができる。また、例えば河川の上流側及び下流側にそれぞれ測定装置を配置して、上流側から下流側に移動する放射線量の推移を確認する場合、測定データに位置データを紐付けておけば、上流側の放射線量の測定データと下流側の放射線量の測定データとを比較して、放射線源が上流側から下流側へと流れる速度等を計測することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放射線量を測定するとともに、水中に存在する放射線源の除去処理方法を確立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態における測定装置の概略図。
図2】同実施形態における測定装置の回路図。
図3】同実施形態におけるディスプレイでの表示例を示す画面図。
図4】本発明の第2実施形態における測定装置の回路図。
図5】同実施形態における測定装置の配置位置を示した模式図。
図6】同実施形態におけるディスプレイでの表示例を示す画面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の測定装置の一実施形態について、以下図面を用いて説明する。
【0020】
本発明の測定装置は、水中に浸漬して用いられる可搬型のものであって、例えば河川や湖等の環境保全や、原子力発電所から排出される水の安全管理や、シェールガス等の油やガス等を採掘する際に副次的に発生する随伴水の安全管理を確認するために用いられるものである。
【0021】
<第1実施形態>
第1実施形態の測定装置1は、図1に示すように、水中に浸漬して使用されるセンサプローブ2と、センサプローブ2とリード線4によって接続されたセンサ本体3とを備えるものである。
【0022】
センサプローブ2は、略円筒棒形状をなすものであって、終端部分にはセンサ本体3に接続されるリード線4が取り付けられている。そして、図2に示すように、水に含まれる放射線量を測定する放射線測定手段5、及び、水の物性に関する指標を少なくとも2以上測定する水質測定手段6を備えるものである。
【0023】
放射線測定手段5は、水中に存在する電離性の放射線によって蛍光や燐光等を発生する物質(シンチレータ)を用いて放射線を測定するものであって、本実施形態ではシンチレーション性能を向上させるために、シンチレータにタリウム活性化ヨウ化セシウムが用いられている。また、放射線測定手段5は、所定時間間隔毎に放射線量の測定を行い、測定した放射線量を逐次センサ本体3に送信するものである。
【0024】
水質測定手段6は、水の物性に関する指標を少なくとも2以上測定するものであって、本実施形態では、pHを測定するpH計、電気伝導率を測定する電気伝導計、濁度を測定する濁度計としての機能を有するものである。また、水質測定手段6も、所定時間間隔毎に水の物性に関する指標(本実施形態では、pH、電気伝導率、濁度)の測定を行い、測定した測定値を逐次センサ本体3に送信するものである。
【0025】
センサ本体3は、放射線測定手段5が測定した放射線量を示す放射線量データと、水質測定手段6が測定した測定値を示す水質データ(pHデータ、濁度データ、電気伝導率データ)とを受け付けて、これらを表示する表示部7と、表示部7を制御する制御部8とを有するものである。
【0026】
表示部7は、センサ本体3に設けられた液晶ディスプレイ等で構成されるものであって、放射線測定手段5が測定した放射線量を示す放射線量データ及び水質測定手段6が測定した測定値を示す水質データ(pHデータ、濁度データ、電気伝導率データ)を受け付けて、該放射線量データ及び水質データを逐次表示するものである。ここで、放射線測定手段5及び水質測定手段6はそれぞれ所定時間間隔毎に測定を行うので、表示部7もこの時間間隔ごとにデータを受け付けて、次々と表示していく。
【0027】
なお、この実施形態において、該表示部7は、前記各データをディスプレイに表示出力するための表示データに変換するが、この表示データを外部に出力できるようにも構成してある。すなわち、この表示部7は、表示データ出力部としての機能も担う。この表示データ出力部から出力された表示データは、パソコン、タブレット、ポータブル機器等の外部機器に無線乃至有線で送信され、そのディスプレイに表示可能である。したがって、センサ本体3に表示部7を必ずしも設ける必要はない。
【0028】
制御部8は、構造的には、CPU、内部メモリ、I/Oバッファ回路、ADコンバータ等を有した所謂コンピュータ回路である。そして、内部メモリの所定領域に格納した制御プログラムに従って動作することでCPU及び周辺機器が協働動作して、図2に示すように、記録部9、制御本体部10としての機能を発揮する。
【0029】
記録部9は、放射線測定手段5が測定した放射線量を示す放射線量データと、水質測定手段6が測定した測定値を示す水質データ(pHデータ、濁度データ、電気伝導率データ)とを受け付けて、該放射線量データ及び水質データに時間を示す時間データを紐付けて逐次記録するものである。ここで、時間データとは、放射線測定手段5及び水質測定手段6に設けられたクロックが取得した測定開始時間を示すものであり、記録部9は、放射線測定手段5及び水質測定手段6から送信される時間データを放射線量データ及び水質データとともに取得している。
なお、時間データの取得方法は上述したものに限られず、制御部8に設けられたクロックから測定データを受け付けた時間を時間データとして用いてもよい。
【0030】
制御本体部10は、所定の時間データに紐付けられて記録部9に記録された放射線量データ及び水質データを取得して表示部7に表示させるものである。なお、本実施形態では、制御本体部10が、現在表示部7に表示されている放射線量データ及び水質データが測定される直前に、放射線測定手段5及び水質測定手段6で測定された放射線量データ及び水質データを記録部9から取得し、これらを表示部7に表示させている。
【0031】
上述のように構成した第1実施形態の測定装置1の動作について説明する。
【0032】
まず、センサプローブ2が水中に浸漬されると、放射線測定手段5及び水質測定手段6は同じ測定領域において同じタイミングでそれぞれ測定を行う。そして、放射線測定手段5が測定した放射線量を示す放射線量データ及び水質測定手段6が測定した測定値を示す水質データ(pHデータ、濁度データ、電気伝導率データ)が、表示部7及び記録部9に向けて送信される。このとき、放射線測定手段5及び水質測定手段6に設けられたクロックが取得した測定時の時間を示す時間データも、記録部9に送信される。放射線測定手段5及び水質測定手段6は所定時間間隔毎に上述した動作を繰り返す。
【0033】
表示部7は、放射線量データ及び水質データを受け付けて、該データを逐次表示する。また、記録部9は、放射線量データ及び水質データと、時間データとを受け付けて、この時間データに放射線量データ及び水質データを紐付けて逐次記録する。
【0034】
制御本体部10は、現在表示部7に表示されている放射線量データ及び水質データが測定される直前に測定された放射線量データ及び水質データを、記録部9から取得して表示部7へ送信する。表示部7は、制御本体部10から送られてきた放射線量データ及び水質データを表示する。
【0035】
上述のように構成した測定装置1は、以下のような格別の効果を奏する。
【0036】
つまり、放射線測定手段5が測定した放射線量と、水質測定手段6が測定した指標(pH、濁度、電気伝導率)とが表示部7に表示され、さらに、記録部9を備えることで現在の測定値と過去の測定値とが表示部7に表示されるので、表示部7から測定値の変化を確認することができ、pH、濁度、電気伝導率のいずれが放射線量と相関しているのかを見出すことができる。そして、この相関関係から放射線源の状態を特定して、除去処理プロセスを確立することができる。
【0037】
具体的には、放射線量が増加するとともに濁度が増加してpH及び電気伝導率が変わらない場合には、放射線量と濁度とが相関することが分かる。そして、この相関関係から放射線源が水中に溶解せずに、水中の土砂等に放射線源が付いていることが分かるので、放射線源の除去方法として、土砂等を除去する処理プロセスを確立することができる。
【0038】
一方で、放射線量が増加するとともに、濁度が変化せずpHが酸性又はアルカリ性に移行したり、電気伝導率が変化したりする場合には、放射線量とpH及び電気伝導率とが相関することが分かる。そして、この相関関係から放射線源が水中に溶解してイオン化していることが分かるので、放射線源の除去方法として、イオン交換膜や凝固剤等を用いてイオンを除去する処理プロセスを確立することができる。
【0039】
つまり、放射線量と、濁度と、pH(又は電気伝導率)とを測定して、その相関関係を見出すことによって、放射線源が水に溶解しているか否かという状態を特定することができ、放射線源の除去処理プロセスを最適化することができる。
【0040】
また、1つの測定装置1に放射線測定手段5及び水質測定手段6を設けるとともに、同じ測定領域において同じタイミングでこれらが測定を行うので、別々に放射線測定手段及び水質測定手段を設けた場合と比べて、ほぼ同一の測定条件下で測定を行うことができ、信頼性の高い相関を見出すことができる。
【0041】
測定値の変化を表示する方法としては、上述した方法の他に、図3に示すようなグラフ形式で表示する方法を用いてもよい。この場合、制御本体部10が、所定時間の間に記録された全てのデータを記録部9から取得し、これらのデータをもとに、放射線量データの時間変化、濁度データの時間変化、pHデータの時間変化、及び電気伝導率の時間変化を示すグラフデータを生成して表示部7に送信する。表示部7はグラフデータを受け付けて、これらグラフデータが示すグラフを表示する。このとき、放射線量の時間変化を示すグラフ、濁度の時間変化を示すグラフ、pHの時間変化を示すグラフ、電気伝導率の時間変化を示すグラフを並べて表示してもよいし、これら4つのグラフを重ねて表示してもよい。図4の場合であれば、放射線量と濁度との関連性が高いことがわかる。
【0042】
このように構成すれば、放射線量の時間変化と、濁度の時間変化と、pHの時間変化と、電気伝導率の時間変化とが比較可能にグラフ形式で表示されるので、視覚的な効果でより容易に、放射線量がいずれの指標と相関しているのかを見出すことができる。
【0043】
また、制御本体部10が、放射線量が濁度又はpH(又は電気伝導率)のいずれと相関しているのかを判断するように構成してもよい。この場合、制御本体部10は、相関している指標を強調して表示するようにしてもよい。
【0044】
<第2実施形態>
第2実施形態における測定装置11について以下に説明する。
なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0045】
第2実施形態における測定装置21は、図4に示すように、放射線測定手段5及び水質測定手段6が測定を行った測定領域の位置データ又は天候データの少なくともいずれかを取得する領域データ取得手段22をさらに備えるものである。なお、本実施形態では、位置データ及び天候データの両方を取得するものとする。
【0046】
この領域データ取得手段22としては、センサプローブ2に設けられた測定領域の位置データを取得するGPS位置センサや、測定領域の天候データを例えば気象庁等から取得するアプリケーション等を用いることができる。なお、領域データ取得手段22が取得するデータは、位置データや天候データに限られず、例えば湿度データ、温度データ、水深データ等を取得するものであってもよい。
なお、GPS位置センサは、水中ではGPS信号を受信できないので、GPS位置センサ22のみを、例えば図5に示すように、センサプローブ2のケーシングから分離させて水中から浮上させればよいし、あるいは、これをセンサ本体3に設けてもよい。
【0047】
領域データ取得手段22は、取得した位置データ及び天候データを記録部9へと送信する。記録部9は放射線測定手段5及び水質測定手段6が測定した測定データ、放射線測定手段5及び水質測定手段6が取得した時間データにこれら位置データ及び天候データを紐つけて記録する。
【0048】
上述のように構成した第2実施形態の測定装置21は、以下のような格別の効果を奏する。
【0049】
つまり、放射線量が増加している場合に、この放射線量を示す測定データに紐つけられた天候データを確認することができる。このとき、例えば雨天の際に放射線量が増加していれば、雨による環境放射線によって放射線量が増加したこと等を推定することができる。
【0050】
また、図5に示すように、本実施形態の測定装置21を2台用いて、河川の上流側と下流側にそれぞれ配置した場合に、上流及び下流側でそれぞれ同じタイミングで測定を行い、これら測定値を位置データに紐つけてそれぞれの測定装置21の記録部9で記録すれば、上流側の位置データに紐つけられた測定データと、下流側の位置データに紐漬けられた測定データとを比較することによって、河川を流れる放射線源が流れる速度等を計測することができる。
また、河川の3箇所(ア、イ、ウ)それぞれで、測定装置21を用いてそれらの測定データを処理し、統合して表示した表示例を図6に示す。この例からは、A川におけるB川との合流点より上流側の地点アに比べ、B川が合流した後の地点イで放射線量が増えているから、B川の上流に放射線源があって、それがA川に流れ込んでいることが推測できる。また、そのときに、地点イでは地点アに比べ、pHがかなり増加しているから、B川には、アルカリで溶ける成分に付着又は化合した放射線源が多く流れていることが推測される。なお、ここでは横軸を例えば位置としたグラフ形式で表示しているが、マップ形式(例えば、地図上の所定各地点に各測定データの値を棒の高さで表したもの)で表示するようにしてもよい。
【0051】
本発明は上記実施形態に限られたものではない。
【0052】
例えば、放射線測定手段はシンチレータ方式に限られたものではなく、ガイガーミュラー計数管や半導体検出器等を用いたものであってもよい。
【0053】
水質測定手段が測定する水の物性を表す指標は、上述の指標に限られたものではなく、例えば、酸化還元電位(ORP)、イオン濃度、溶存酸素、不純物総溶解度(TDS)、比抵抗、残留塩素等に適宜変更することが可能である。
【0054】
センサプローブとセンサ本体とはリード線を用いて接続されたものではなく、無線接続のものであってもよい。また、記録部は、センサ本体に設けられたUSBやSDカード等の外部記録装置であってもよい。
前記制御部は、センサプローブに設けられていてもよい。
【0055】
本発明は、その他その趣旨に反しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1・・・測定装置
5・・・放射線測定手段
6・・・水質測定手段
7・・・表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6