特許第6644086号(P6644086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644086
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/12 20060101AFI20200130BHJP
   F27B 14/06 20060101ALN20200130BHJP
   F27D 17/00 20060101ALN20200130BHJP
【FI】
   G01N31/12 A
   !F27B14/06
   !F27D17/00 104G
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-555096(P2017-555096)
(86)(22)【出願日】2016年12月7日
(86)【国際出願番号】JP2016086364
(87)【国際公開番号】WO2017099120
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年12月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-238773(P2015-238773)
(32)【優先日】2015年12月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴仁
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−266741(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/064631(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/045869(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0213244(US,A1)
【文献】 米国特許第04234541(US,A)
【文献】 特開2010−008229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/12
G01N 31/00
F27B 14/06
F27D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料収容部内で試料を加熱し、それにより生じる試料ガスを分析する分析装置において、
前記試料収容部内に連通するとともに、前記試料を加熱することにより生じるダストを排出するダスト排出路と、
前記ダスト排出路から排出されたダストを収容するダスト収容部と、
前記ダスト排出路に設けられて前記ダスト排出路に負圧を発生させる負圧発生機構とを具備し、
前記負圧発生機構が発生させた負圧によって、前記ダストを前記試料収容部から前記ダスト排出路に導くように構成されており、
前記負圧発生機構が、
前記ダスト排出路の一部をなす貫通孔と、前記貫通孔にガスを供給するガス供給路とを有するボディを備えており、
前記ガスが前記貫通孔を試料収容部側からダスト収容部側に向かって流れて、前記貫通孔の試料収容部側に負圧が発生するように構成されていることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記負圧発生機構が、前記ダスト排出路における試料収容部側の端部に配置されていることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記ガス供給路が、
前記貫通孔を形成する内周面に周回するように開口し、深さ方向が前記貫通孔から離れるに連れてダスト収容部側から試料収容部側に向かう方向に設定された傾斜溝と、
一端が前記傾斜溝に開口するとともに、他端が前記ボディの外周面に開口する連通孔とから形成されており、
前記連通孔が、前記深さ方向に対して傾いていることを特徴とする請求項記載の分析装置。
【請求項4】
前記ボディが、試料収容部側に配置される第1要素と、ダスト収容部側に配置される第2要素とを備えており、
前記第1要素及び前記第2要素は、前記貫通孔が形成されるとともに、互いに接触する接触面を有したものであり、
前記第1要素は、前記接触面の内側に前記第2要素に向かって突出する突出部をさらに有し、
前記第2要素は、前記接触面の内側に前記第1要素と反対側に向かってへこむ凹部が形成されており、
前記第1要素及び前記第2要素の前記接触面が互いに接触した状態において、前記凹部に前記突出部が嵌め込まれるとともに、前記突出部の外周面と前記凹部の内周面との間に前記傾斜溝が形成されており、
前記連通孔が、前記第1要素又は前記第2要素の周壁部を貫通して形成されていることを特徴とする請求項記載の分析装置。
【請求項5】
前記ダスト排出路における前記貫通孔と前記ガス供給路との合流部分よりもダスト収容部側が閉塞可能に構成されており、
前記ダスト排出路が閉塞されることにより、前記ガス供給路から供給されたガスが、ダスト収容部側から試料収容部側に流れて前記試料収容部内に流入することを特徴とする請求項記載の分析装置。
【請求項6】
前記ガス供給路から前記貫通孔に供給されるガスを可燃性ガス又は不燃性ガスに切り替えるガス種切替機構をさらに具備することを特徴とする請求項記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄鋼や非鉄金属、セラミックスなどの試料に含まれる炭素(C)、硫黄(S)等の元素を分析する元素分析装置等の分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の元素分析装置は、試料を収容したるつぼを加熱炉内に設置し、るつぼの周囲に設けたコイルに高周波交流電圧を印加して、高周波誘導加熱によりるつぼ内の試料を加熱して燃焼させ、それによって生じたガスから当該試料に含まれる元素を分析するものがある。
【0003】
上述した元素分析装置は、試料の燃焼によりスス等のダストが発生し、このダストに測定ガスが吸着すると測定誤差が生じることから、特許文献1に示すように、ダストボックスと、その下流側に設けたダスト吸引機構とを具備し、ダスト吸引機構によりダストを吸引してダストボックスに排出するように構成されている。
【0004】
ところが、上述した構成では、ダストボックスの下流側にダスト吸引機構があるので、ダスト吸引機構がダストボックスを介して加熱炉内のダストを吸引することになり、ダストボックスが抵抗となってダスト吸引機構の吸引力が加熱炉まで効率良く届かず、ダストを十分に除去することができないという問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−266741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであって、加熱炉内で生じたダストを従来よりも効率良く除去できるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る分析装置は、試料収容部内で試料を加熱し、それにより生じる試料ガスを分析するものにおいて、前記試料収容部内に連通するとともに、前記試料を加熱することにより生じるダストを排出するダスト排出路と、前記ダスト排出路から排出されたダストを収容するダスト収容部と、前記ダスト排出路に設けられて前記ダスト排出路に負圧を発生させる負圧発生機構とを具備し、前記負圧発生機構が発生させた負圧によって、前記ダストを前記試料収容部から前記ダスト排出路に導くことを特徴とするものである。
【0008】
このような分析装置であれば、負圧発生機構がダスト排出路に設けられて試料収容部とダスト収容部との間に配置されるので、この負圧発生機構が発生させた負圧による吸引力がダスト収容部を介さず試料収容部に届き、試料収容部内のダストを従来よりも効率良く除去することができるようなる。
【0009】
負圧発生機構の具体的な実施態様としては、前記ダスト排出路の一部をなす貫通孔と、前記貫通孔にガスを供給するガス供給路とを有するボディを備えており、前記ガスが前記貫通孔を試料収容部側からダスト収容部側に向かって流れて、前記貫通孔の試料収容部側に負圧が発生するように構成されているものが挙げられる。
【0010】
負圧による吸引力をより効率良く用いてダストを除去するためには、前記負圧発生機構が、前記ダスト排出路における試料収容部側の端部に配置されていることが好ましい。
【0011】
ここで、例えば加熱炉に設けられた開口からガスを吹き付けて加熱炉内のダストをダスト排出路に送り込もうとした場合、前記開口を介して加熱炉内にガスが所定方向から吹き付けられることになり、加熱炉内でガスの流れに偏りが生じてしまい、ダストの一部が加熱炉内に溜まってしまう。
そこで、前記ガス供給路が、前記貫通孔を形成する内周面に周回するように開口し、深さ方向が前記貫通孔から離れるに連れてダスト収容部側から試料収容部側に向かう方向に設定された傾斜溝と、一端が前記傾斜溝に開口するとともに、他端が前記ボディの外周面に開口する連通孔とから形成されており、前記連通孔が、前記深さ方向に対して傾いていることが好ましい。
このような構成であれば、連通孔から傾斜溝に流入したガスは傾斜溝を周回しながら開口に向かい、内周面の全周から貫通孔に流れ出る。これにより、貫通孔を試料収容部側からダスト収容部側に向かうガスの流れには偏りが生じにくく、試料収容部内のダストをより確実にダスト排出路に導くことができる。
【0012】
具体的な実施態様としては、前記ボディが、試料収容部側に配置される第1要素と、ダスト収容部側に配置される第2要素とを備えており、前記第1要素及び前記第2要素は、前記貫通孔が形成されるとともに、互いに接触する接触面を有したものであり、前記第1要素は、前記接触面の内側に前記第2要素に向かって突出する突出部をさらに有し、前記第2要素は、前記接触面の内側に前記第1要素と反対側に向かってへこむ凹部が形成されており、前記第1要素及び前記第2要素の前記接触面が互いに接触した状態において、前記凹部に前記突出部が嵌め込まれるとともに、前記突出部の外周面と前記凹部の内周面との間に前記傾斜溝が形成されており、前記連通孔が、前記第1要素又は前記第2要素の周壁部を貫通して形成されている構成が挙げられる。
このような構成であれば、第1部材及び第2部材を対向させて組み合わせることで、簡単に傾斜溝及び連通孔を形成することができる。
【0013】
前記ダスト排出路における前記貫通孔と前記ガス供給路との合流部分よりもダスト収容部側が閉塞可能に構成されており、前記ダスト排出路が閉塞されることにより、前記ガス供給路から供給されたガスが、ダスト収容部側から試料収容部側に流れて前記試料収容部内に流入することが好ましい。
このような構成であれば、分析時にダスト排出路を閉塞することにより、ガス供給路から供給されて試料収容部内に流入するガスが、試料ガスを例えば試料収容部の上部に位置する分析計に導くことができる。
つまり、ダスト排出路を閉塞又は開放することにより、ガス供給路から供給するガスを、試料収容部内のダストを除去するための清掃用ガスと、試料ガスを分析計に導くためのキャリアガスとの両方に兼用することができるようになる。
【0014】
清掃時と分析時とでガスを適切な種類に切り替え可能にするためには、前記ガス供給路から前記貫通孔に供給されるガスを可燃性ガス又は不燃性ガスに切り替えるガス種切替機構をさらに具備することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、試料収容部内で生じたダストを従来よりも効率良く除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の分析装置の構成を模式的に示す図。
図2】同実施形態の負圧発生機構の構成を模式的に示す図。
図3】同実施形態の負圧発生機構の構成を模式的に示す図。
図4】同実施形態におけるガスの流れを説明する図。
図5】変形実施形態の分析装置の構成を模式的に示す図。
図6】変形実施形態の負圧発生機構の構成を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0017】
100・・・分析装置
X ・・・試料
10 ・・・加熱炉(試料収容部)
L ・・・ダスト排出路
30 ・・・ダスト収容部
90 ・・・負圧発生機構
9S ・・・貫通孔
9L ・・・ガス供給路
B ・・・ボディ
91 ・・・第1要素
92 ・・・第2要素
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明に係る分析装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る分析装置100は、例えば鉄鋼や非鉄金属、セラミックスなどの試料Xを加熱して燃焼させ、それによって生じる試料ガスから当該試料Xに含まれる炭素(C)、硫黄(S)等の元素を分析する元素分析装置である。
【0020】
具体的にこのものは、図1に示すように、試料Xが収容されたるつぼRが設置される試料収容部たる加熱炉10と、試料Xを加熱する加熱機構20と、試料Xが加熱されて燃焼することにより生じる試料ガスを分析する図示しないガス分析計と、試料Xの燃焼により生じたダストを加熱炉10内から排出するダスト排出路Lと、ダスト排出路Lから排出されたダストを収容するダスト収容部30とを具備している。
【0021】
加熱炉10は、内部で試料Xを燃焼させ、それにより生じる試料ガスを図示しないガス分析計へ導くように構成されており、図1に示すように、下端が開口するとともに上部に試料ガスをガス分析計に導くための図示しないガス導出口が形成された概略円筒形状などの筒状をなすものである。
この加熱炉10内には、例えばセラミック等の磁性体や黒鉛からなるるつぼRが収容されており、ここでは、前記るつぼRが、加熱炉10の管軸方向に沿って上下に移動する設置台40に取り付けられている。
【0022】
前記設置台40は、後述する昇降機構50により、るつぼR内の試料Xが加熱炉10内で加熱される加熱位置と、るつぼRが加熱炉10外に位置して設置台40から着脱される着脱位置との間で昇降移動するように構成されている。
【0023】
加熱機構20は、るつぼR内に収容された試料Xに高周波誘導加熱によって誘導電流を生じさせる誘導電流生成機構であり、具体的には、コイル21と、このコイル21に高周波交流電圧を印加する図示しない電源とを具備するものである。コイル21は、加熱炉10における周壁に沿って設けられており、このコイル21に高周波交流電圧が印加される際に、コイル21の内側にるつぼRが位置するように設置台40の高さが設定されている。そして、コイル21に高周波交流電圧が印加されると、るつぼRが高周波誘導加熱により発熱し、るつぼR内の試料Xが加熱される。
【0024】
図示しないガス分析計は、当該ガス分析計に導かれた試料ガスを分析して試料Xに含まれる各成分の含有量を求めるものであり、本実施形態では、例えば非分散型赤外線吸収法(NDIR法)を用いて分析するものである。具体的にこのガス分析計は、図示しない非分散方赤外線検出器を有しており、試料ガスに含まれるCO、CO、SO等を検出することで、試料Xに含まれる炭素(C)や硫黄(S)等の含有量を求めるものである。
【0025】
ダスト排出路Lは、加熱炉10内で生じたダストをダスト収容部30に排出するものであり、図1に示すように、一端が加熱炉10の下端開口に連通するとともに、他端がダスト収容部30に接続されている。
本実施形態では、前記ダスト排出路Lの一部が、加熱炉10の下方に位置するブロック体60に貫通して形成された内部空間6Sと、前記ブロック体60及び前記ダスト収容部30を接続する配管部材70の内部流路7Sとから形成されている。
【0026】
前記ブロック体60は、前記内部空間6Sを形成する内周面61の少なくとも一部が、下方に向かって徐々に縮径する逆切頭円錐形状をなすとともに、前記内部空間6Sが回転体形状をなすものであり、前記内部空間6Sの回転軸が加熱炉10の管軸と一致するように配置されている。
かかる構成により、この内部空間6Sを加熱炉10側からダスト収容部30側に向かうガスの流れを乱れにくくすることができる。
【0027】
本実施形態では、一端部が前記ブロック体60の内部空間6Sにガタなく嵌め込まれるとともに、他端部が前記設置台40に取り付けられた連結部材80が設けられており、この連結機構80によって、昇降機構50がブロック体60と設置台40とを一体的に昇降移動させるように構成されている。
【0028】
前記昇降機構50は、ブロック体60を支持する支持部51と、支持部51を鉛直方向に沿って昇降移動させる駆動部52とを具備し、前記駆動部52が、ブロック体60から水平方向にオフセットした位置で前記支持部51を昇降移動させるように構成されている。
具体的には、前記支持部51を支持するシャフト部材521が、シリンダによって昇降移動するように構成されており、このシャフト部材521が、鉛直下方から視て、少なくとも加熱炉10やダスト排出路Lに重ならないように水平方向に離間して配置されている。
これにより、上述したように、ダスト収容部30を前記加熱炉10や前記ブロック体60の鉛直下方に配置することができる。
【0029】
前記配管部材70は、一端が前記ブロック体60の下端部に接続されるとともに、他端がダスト収容部30に接続されており、この配管部材70の内部流路7Sは前記ダスト排出路Lの下流側を形成している。
具体的にこの配管部材70は、樹脂等から形成された弾性を有する直管状をなすものであり、例えばフルランチューブ等のシリコンチューブである。
【0030】
前記ダスト収容部30は、ダストを捕捉するフィルタなどを有したものであり、ダスト排出路から流入した空気は、前記フィルタにほとんど妨げられることなく外部に流出するように構成されている。
【0031】
しかして、本実施形態の分析装置100は、図1に示すように、上述したダスト排出路Lに設けられて当該ダスト排出路Lに負圧を発生させる負圧発生機構90をさらに具備しており、この負圧発生機構90が発生させた負圧によって、ダストを加熱炉10からダスト排出路Lに導くように構成されている。言い換えれば、この負圧発生機構90は、ダスト排出路Lにおける負圧発生機構90の上流側を加熱炉10内よりも、低い圧力にするものである。その結果、加熱炉10内のガスがダスト排出路Lに向かって流れ込み、このガスの流れに巻き込まれて加熱炉10内のダストがダスト排出路Lに導かれる。
【0032】
本実施形態では、前記負圧発生機構90は、ダスト排出路Lにおける加熱炉10側の端部に配置されており、加熱炉10の直下に設けられている。
具体的にこの負圧発生機構90は、図2及び図3に示すように、ダスト排出路Lの一部をなす貫通孔9Sと、前記貫通孔9Sにガスを供給するガス供給路9Lとを有するボディBを備えており、前記ガスが前記貫通孔9Sを加熱炉10側からダスト収容部30側に流れることにより、前記貫通孔9Sの加熱炉10側に負圧を発生させるように構成された、いわゆるエジェクタ作用(エジェクタ機構)を利用したものである。つまり、前記ガス供給路9Lを流れるガスの向きは、少なくとも貫通孔9Sに供給される直前において、加熱炉10からダスト収容部30に向かう方向成分を有しており、これにより上述した負圧が発生する。ここでは、図1に示すように、前記ボディBが、加熱炉10の下端部に例えばOリング等のシール部材を介して外嵌されるとともに、ブロック体60の上端部に例えばOリング等のシール部材を介して嵌め込まれており、前記貫通孔9Sが前記ダスト排出路Lの上流側(加熱炉10側)を形成している。
【0033】
前記ガス供給路9Lは、加熱炉10内のダストを清掃する際に清掃用のガスを前記貫通孔9Sに供給するものであり、一端開口9Laに図示しないガス源からのガスが流入し、他端開口9Lbから前記ガスを前記貫通孔9Sに流出するように構成されている。
具体的にこのガス供給路9Lは、図2に示すように、前記貫通孔9Sを形成するボディBの内周面B1全周を周回するように開口し、深さ方向が前記貫通孔9Sから離れるに連れてダスト収容部30側から加熱炉10側に向かう方向に設定された傾斜溝9L1と、一端が前記傾斜溝9L1に開口するとともに、他端がボディBの外周面B2に開口する連通孔9L2とを有している。
なお、ここでいう前記深さ方向とは、一端開口9Laから前記傾斜溝9L1と前記連通孔9L2との接続箇所に向かう方向である。
【0034】
本実施形態では、図2及び図3に示すように、前記ボディBが、加熱炉10側に配置される第1要素91と、ダスト収容部30側に配置される第2要素92とからなる。
これらの第1要素91及び第2要素92は、貫通孔91S、92Sが形成されるとともに(以下、第1要素貫通孔91S及び第2要素貫通孔92Sという)、互いに対向して接触する接触面911、921(以下、第1要素側接触面911及び第2要素側接触面921という)を有する。そして、前記第1要素側接触面911及び前記第2要素側接触面921を互いに接触させて第1要素91及び第2要素92を組み合わせることにより、図2に示すように、前記貫通孔9S及び前記ガス供給路9Lが形成されるようにしてある。
【0035】
より具体的に説明すると、図3に示すように、第1要素91は、第2要素92に対向する第1要素側対向面912の外側部分が前記第1要素側接触面911として形成されており、この第1要素側接触面911の内側に前記第2要素92に向かって突出する突出部913が設けられている。
この突出部913は、基端から先端に向かって徐々に縮径する切頭円錐形状をなし、その外周面914、すなわち前記第1要素側対向面912における内側部分は、先端から基端に向かうに連れて第1要素貫通孔91Sに近づくように傾斜している。
本実施形態では、前記突出部913の基端が、前記第1要素側接触面911から第2要素92側に所定の第1距離H1離間して設けられている。
なお、前記第1要素貫通孔91Sは回転体形状をなし、前記第1要素91は前記第1要素貫通孔91Sの回転軸を中心に回転させた例えば筒状などの回転体形状をなす。
【0036】
第2要素92は、図3に示すように、第1要素91に対向する第2要素側対向面922の外側部分が前記第2要素側接触面921として形成されており、この第2要素側接触面921の内側に前記第1要素91と反対側に向かってくぼんだ凹部923が形成されている。
この凹部923は、第1要素91側からその反対側に向かって徐々に縮径する切頭円錐形状をなし、前記第2要素貫通孔92Sの一部を形成している。この凹部923を形成する内周面924、すなわち前記第2要素側対向面922における内側部分は、第1要素91側からその反対側に向かうに連れて前記第2要素貫通孔92Sに近づくように傾斜している。
本実施形態では、前記凹部923の第1要素91側の開口が、前記第2要素側接触面921から第1要素91と反対側に、前記第1距離H1よりも長い第2距離H2離間して設けられている。
なお、前記第2貫通孔は回転体形状をなし、前記第2要素92は前記第2要素貫通孔92Sの回転軸を中心に回転させた例えば筒状などの回転体形状をなす。
【0037】
上述した構成により、前記第1距離H1よりも前記第2距離H2の方が長いので、第2要素92の凹部923に第1要素91の突出部913を嵌め込むことにより、前記第1要素側接触面911と前記第2要素側接触面921とが互いに接触するとともに、突出部913の外周面914と凹部923を形成する内周面924との間、すなわち第1要素側対向面912の外側部分と第2要素側対向面922の外側部分との間に、前記第1距離H1及び前記第2距離H2の差分に応じた隙間が生じ、この隙間が上述した傾斜溝9L1となる。
なお、本実施形態では、前記突出部913の外周面914と前記凹部923を形成する内周面924とが平行な状態で離間して前記傾斜溝9L1を形成するようにしているが、傾斜溝9L1の形状は適宜変更して構わない。
【0038】
一方、前記傾斜溝9L1に連通する連通孔9L2は、前記第1要素91又は前記第2要素92の周壁部を径方向(中心軸と直交する方向)に貫通して形成されており、ここでは、前記第2要素92における周壁部の上部を貫通して前記傾斜溝9L1の上流側端部に接続されている。つまり、前記連通孔9L2は、前記傾斜溝9L1の底における周方向の一箇所に接続されている。
なお、この連通孔9L2には、図示しないガス源からのガスを当該連通孔9L2に導入するための導入管Pが差し込まれている。
【0039】
また、前記第1要素側接触面911と前記第2要素側接触面921とを互いに接触させることにより、前記第1要素貫通孔91Sと前記第2要素貫通孔92Sとが連通して、貫通孔9Sが形成される。
本実施形態では、前記第1要素貫通孔91Sの中心軸と前記第2要素貫通孔92Sの中心軸が一致するように構成されており、前記貫通孔9Sは概略円柱形状をなす。
【0040】
このように構成された負圧発生機構90によれば、図示しないガス源からのガスを前記ガス供給路9Lに流入させると、前記ガスは傾斜溝9L1を周回しながら貫通孔9Sに向かい、ボディBの内周面B1の全周から前記貫通孔9Sに流れ出る。そして、このガスが、前記貫通孔9Sを加熱炉10側からダスト収容部30側に流れるので、ダスト排出路Lにおける前記ガス供給路9Lと前記貫通孔9Sとの合流部分よりも加熱炉10側に負圧が発生する。
【0041】
ここで、本実施形態では、上述したダスト排出路Lにおける貫通孔9Sとガス供給路9Lとの合流部分よりもダスト収容部30側が閉塞可能に構成されている。
より具体的には、図1に示すように、前記ダスト排出路Lの一部を形成する配管部材70に、当該配管部材70を開閉する開閉機構Zが設けられている。
この開閉機構Zは、例えばピンチバルブを使用しており、配管部材70であるシリコンチューブを押し潰すことにより、ダスト排出路Lを開状態から閉状態に切り替えるように構成されている。
【0042】
かかる構成により、ダスト排出路Lを開状態にした場合は、図4の上段に示すように、負圧発生機構90によって負圧を発生させることができ、ダスト排出路Lを閉状態にした場合は、図4の下段に示すように、ガス供給路9Lから貫通孔9Sに供給されたガスがダスト収容部30側から加熱炉10側に流れて、加熱炉10内に流入する。
このことから、試料Xの分析時に前記開閉機構Zによってダスト排出路Lを閉状態に切り替えることで、ダスト排出路Lから加熱炉10内に流入したガスが、加熱炉10内で生じた試料ガスを、加熱炉10の上側に形成されたガス導出口に導く。
つまり、分析時には、ガス供給路9Lから貫通孔9Sに供給されるガスを、試料ガスを分析計に導くためのキャリアガスとして用いることができる。
【0043】
貫通孔9Sに供給されるガスとしては、不燃性ガス及び可燃性ガスが用意されており、本実施形態の分析装置100は、前記貫通孔9Sに供給されるガスを不燃性ガス又は可燃性ガスに切り替える図示しないガス種切替機構をさらに具備している。
このガス種切替機構は、例えばガス源からのガスを前記ガス供給路9Lに導く流路上に設けられた開閉弁などを使用したものであり、ここでは、加熱炉10内のダストを排出させる清掃時には、清掃用ガスとして不燃性ガスである窒素が前記ガス供給路9Lに流入し、分析時には、可燃性ガスである酸素が前記ガス供給路9Lに流入するようにしている。
【0044】
このように構成された本実施形態に係る分析装置100によれば、負圧発生機構90がダスト排出路Lにおける加熱炉10側の端部に設けられているので、この負圧発生機構90が発生させた負圧による吸引力をほとんど圧損させることなく用いることができ、加熱炉10内のダストを従来に比べて効率良く除去することが可能となる。
【0045】
また、ガス供給路9Lに流入させたガスが内周面B1の全周から貫通孔9Sに供給されるので、貫通孔9Sを加熱炉10側からダスト収容部30側に向かうガスの流れには偏りが生じにくく、加熱炉10内のダストをより確実にダスト排出路Lに導くことができる。
【0046】
さらに、第1部材及び第2部材を対向させて組み合わせることで、貫通孔9S及びガス供給路9Lを形成することができるので、負圧発生機構90を簡単な構成にすることができ、低コストで製造することが可能となる。
【0047】
加えて、開閉機構Zによってダスト排出路Lを閉塞又は開放することにより、ガス供給路9Lから貫通孔9Sに供給するガスを、加熱炉10内のダストを除去するための清掃用ガスと、試料ガスを分析計に導くためのキャリアガスとの両方に兼用することができるようになる。
【0048】
さらに加えて、従来ダスト収容部30の下流側に設けられていた吸引機構を不要にすることができるので、装置全体を小型化することができる。
【0049】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0050】
例えば、前記実施形態では、負圧発生機構が、ダスト排出路Lにおける加熱炉側の端部に配置されていたが、負圧発生機構は、加熱炉とダスト収容部との間、すなわちダスト排出路上に設けられていれば良く、例えば図5に示すように、ブロック体60と配管部材70との間に設けられていても良いし、図示しないが一対の配管部材の間に設けられていても良い。
【0051】
また、前記実施形態の負圧発生機構は、第2要素に連通孔が設けられていたが、図6に示すように、第1要素91に連通孔9L2が設けられていても構わない。
【0052】
さらに、前記実施形態の傾斜溝は、ボディの内周面全周を周回するように開口していたが、傾斜溝は、ボディの内周面の一部に開口していても構わない。
【0053】
そのうえ、連通孔は、必ずしも傾斜溝の底に接続されている必要はないし、必ずしも貫通孔の中心軸に直交して形成されている必要もない。また、複数の連通孔が形成されていても良く、この場合は、各連通孔がそれぞれ傾斜溝の互いに異なる部分(例えば貫通孔の中心軸を中心とした点対称となる部分)に接続されていれば良い。
【0054】
さらに、前記実施形態の開閉機構は、ピンチバルブを使用して配管部材であるシリコンチューブを押し潰すように構成されていたが、例えば蓋体を使用して負圧発生機構の貫通孔におけるガス供給路との合流部分よりもダスト収容部側を閉塞するように構成されていても良い。
なお、ダスト排出路Lは必ずしも閉塞可能にする必要はなく、分析装置は開閉機構を具備していなくても良い。
【0055】
加えて、前記実施形態の加熱機構は、高周波誘導加熱法式のものであったが、例えば試料を黒鉛のるつぼに収容させ、加熱機構としてるつぼを通電加熱する通電加熱法式のものを用いても構わない。
【0056】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、試料収容部内で生じたダストを従来よりも効率良く除去することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6